説明

水溶性両性共重合体、その製造方法及び用途

【課題】 良好な親水性を有するとともに、吸着能が高く、高硬度下においても格段に優れた分散性を発揮し、例えば、洗剤組成物用途に好適に使用することが可能な水溶性両性共重合体及びその用途、並びに、このような水溶性両性共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 カチオン性単量体(a)、アニオン性単量体(b)及び不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)を必須とする単量体成分を共重合してなる水溶性両性共重合体であって、上記単量体(b)は、カルボキシル基含有単量体及び/又はスルホン酸基含有単量体(d)であり、上記単量体(b)がカルボキシル基含有単量体のみからなる場合、上記単量体(b)は、単量体(a)、(b)及び(c)の総量100モル%に対して、50モル%よりも多く、上記単量体(b)がスルホン酸基含有単量体(d)を含んでなる場合、上記単量体(a)、(d)及び(c)のうち少なくとも1種の単量体は、単量体(a)、(d)及び(c)の総量100モル%に対して、30モル%以下である水溶性両性共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性両性共重合体、その製造方法及び用途に関する。より詳しくは、構造中にカチオン性基とアニオン性基との両方を有する水溶性両性共重合体及びその製造方法、並びに、該水溶性両性共重合体を使用した洗剤組成物、洗浄剤及び液体洗剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性重合体は、その溶解性の点から、例えば、洗剤組成物、スケール防止剤、各種無機物や有機物の分散剤、増粘剤、粘着剤、接着剤、表面コーティング剤、架橋剤、保湿剤等の様々な用途に広く使用されている。このような水溶性重合体としては、従来、アクリル酸等の不飽和カルボン酸系単量体を重合して得られる重合体や他の単量体との共重合体、ポリエーテル化合物にアクリル酸等の不飽和カルボン酸系単量体をグラフト重合して得られるグラフト重合体等が汎用されており、近年では、相反する特性の発揮等を目的として、構造中にカチオン性基とアニオン性基との両方を有する両性共重合体が種々検討されている。
【0003】
ところで、このような水溶性重合体を、洗剤組成物、スケール防止剤、分散剤等の水系用途に使用する場合には、水源の種類等により硬度等の水質が国や地域等によって相違しているため、その水質に応じて求められる性能が異なり、要求される性能を充分に満足する剤の開発が要望されている。例えば、高硬度の水系に対して使用する場合には、カルシウムイオン等の硬度成分の影響によって当該重合体が失活し、洗浄力やスケール抑制能、分散能等を充分に発揮できないことがあるため、高硬度下においてもこれらの性能を充分に発揮できる剤が求められている。
【0004】
従来の両性共重合体に関し、カルボキシル官能基を有するアニオン性モノマーと、アミノ官能基を有するカチオン性モノマーと、非イオン性親水性モノマーと、疎水性モノマーと、架橋性モノマーとを共重合することによって形成される親水性両性ポリマーが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この親水性両性ポリマーでは、高硬度下においても洗浄力等の性能を充分に発揮させることにより、より多くの用途、特に洗剤組成物等の水系用途に有用なものとするための工夫の余地があった。
【0005】
また両性共重合体を含む抗菌組成物に関し、エチレンオキサイド単位を有するメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、2−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸及びジメチルアミノエチルメタクリレートを、モル比1:1:1で使用してなる両性共重合体が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、より経済性に優れたものとし、例えば、洗剤組成物等の水系用途に好適なものとするための工夫の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−533537号公報(第2頁)
【特許文献2】国際公開2004/100666号パンフレット(第33頁、実施例25、55頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、良好な親水性を有するとともに、吸着能が高く、高硬度下においても格段に優れた分散性を発揮し、例えば、洗剤組成物用途に好適に使用することが可能な水溶性両性共重合体及びその用途、並びに、このような水溶性両性共重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水溶性両性共重合体について種々検討したところ、カチオン性単量体及びアニオン性単量体に、更に不飽和ポリアルキレングリコール系単量体を用いて共重合することにより、吸着性や分散性、相溶性に優れた共重合体が得られることにまず着目し、当該アニオン性単量体としてカルボキシル基含有単量体及び/又はスルホン酸基含有単量体を用い、しかも単量体成分のモル比について、使用するアニオン性単量体の種類に応じて特定すると、高硬度下においても格段に優れた分散性を発揮することができるとともに、経済性に優れ、各種用途により有用なものとなることを見いだした。そして、このような水溶性両性共重合体を、例えば洗剤組成物用途に使用した場合には、高硬度下においても優れた洗浄力を発揮できることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、このような水溶性両性共重合体を、連鎖移動剤を用いて重合を行うことにより得ることとすると、単量体成分を高効率に重合することができるとともに、得られる水溶性両性共重合体の分子量を好適なものとすることができるため、当該共重合体が奏する作用効果を充分に発揮することが可能となることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち本発明は、カチオン性単量体(a)、アニオン性単量体(b)及び不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)を必須とする単量体成分を共重合してなる水溶性両性共重合体であって、上記単量体(b)は、カルボキシル基含有単量体及び/又はスルホン酸基含有単量体(d)であり、上記単量体(b)がカルボキシル基含有単量体のみからなる場合、上記単量体(b)は、単量体(a)、(b)及び(c)の総量100モル%に対して、50モル%よりも多く、上記単量体(b)がスルホン酸基含有単量体(d)を含んでなる場合、上記単量体(a)、(d)及び(c)のうち少なくとも1種の単量体は、単量体(a)、(d)及び(c)の総量100モル%に対して、30モル%以下である水溶性両性共重合体である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の水溶性両性共重合体は、カチオン性単量体(a)(以下、「単量体(a)」ともいう。)、アニオン性単量体(b)(以下、「単量体(b)」ともいう。)及び不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)(以下、「単量体(c)」ともいう。)を必須とする単量体成分を共重合して得られるものである。なお、これら各成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。但し、このような水溶性両性共重合体には、上記単量体成分の含有比(カチオン性単量体(a)/アニオン性単量体(b)/不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c))が1/1/1である形態のものは含まないものとする。また、本発明の効果を損なわない範囲で、上記単量体以外の他の単量体成分を含んでいてもよい。
【0011】
上記単量体成分において、カチオン性単量体(a)としては、カチオン性基を分子内に有する単量体であればよく、カチオン性基としては、例えば、アミノ基、イミノ基等が挙げられる。これらカチオン性基は、単量体(a)1分子中に1個又は2個以上有していてもよく、カチオン性基を2個以上有する場合は同種の基であってもよいし、2種以上のものであってもよい。中でも、少なくともアミノ基を有する単量体であることが好ましく、これにより、吸着性をより充分に発揮することが可能となる。このように、上記カチオン性単量体(a)がアミノ基含有単量体である形態は、本発明の好適な形態の1つである。
【0012】
上記アミノ基含有単量体としては、例えば、下記の単量体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;ビニルピロリドン;1−ビニルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール含有不飽和単量体;2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、3−(2−(メタ)アクリロキシ)エトキシカルボニルピリジン等のピリジン含有不飽和ビニル単量体;
【0013】
(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド又はブロマイド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等の(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムハロゲン化物又はその硫酸塩;(メタ)アクリロイロキシヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド等の(メタ)アクリロイロキシヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハロゲン化物又はその硫酸塩;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドハロゲン化物又はその硫酸塩;ジアルキルアミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドハロゲン化物又はその硫酸塩;N−メチル−2−ビニルピリジニウムクロリド等のN−アルキルビニルピリジニウムハロゲン化物;ジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のトリアルキルアリルアンモニウムハロゲン化物。
また、これらは他に、塩酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩等でもよく、更にハロゲン化物としては、例えば、ハロゲン化アルキル等の四級化剤による四級化物等が挙げられる。なお、ハロゲン化アルキルとしては、例えば、塩化メチル、塩化エチル、臭化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、ベンジルクロリド等が挙げられる。
【0014】
上記アミノ基含有単量体の中でも、(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムハロゲン化物又はその硫酸塩が好適であり、これにより、更に優れた吸着性を発揮することができるため、例えば洗剤組成物用途等により好適に用いることが可能となる。このように、上記アミノ基含有単量体が、(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムハロゲン化物及び(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウム硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の単量体である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
なお、(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート及び[2−(メタクリロイロキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドについて、下記一般式に示す。
【0015】
【化1】

【0016】
上記アニオン性単量体(b)としては、カルボキシル基含有単量体及び/又はスルホン酸基含有単量体(d)であることが適当である。
上記カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、ヒドロキシメチル(メタ)アクリル酸等や、これらの塩が好適であり、中でも、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。なお、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
上記塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等であることが好ましい。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適であり、また、有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩が好適である。
【0017】
上記スルホン酸基含有単量体(d)としては、例えば、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−1−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸、3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホン酸、3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールスルホネート、3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホネート、3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホネート、3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンプロパンスルホン酸、6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールスルホネート、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド及びこれらの塩や、これらの化合物のリン酸エステル又は硫酸エステル及びそれらの塩等が挙げられる。
なお、塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等であることが好ましく、金属塩を形成する金属原子や有機アミン塩の好適な形態は上述したとおりである。
【0018】
上記スルホン酸基含有単量体(d)の中でも、エステル結合を有さない単量体であることが好ましい。より好ましくは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸及びその塩、並びに、3−(メタ)アリルオキシ−1−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であることであり、これにより、高硬度下においても格段に優れた分散性をより充分に発揮でき、また、エステル結合を有さないため加水分解に強く、例えば洗剤組成物用途に使用した場合にエステル加水分解による洗浄力の低下を防ぐことが可能となる。
なお、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムについて、下記一般式に示す。
【0019】
【化2】

【0020】
上記アニオン性単量体(b)としてはまた、スルホン酸基含有単量体(d)を必須とすることが好ましく、これにより、高硬度下においても格段に優れた分散性をより充分に発揮することが可能となる。より好ましくは、カルボキシル基含有単量体とスルホン酸基含有単量体(d)とを併用することであり、この場合には、更に優れた分散能を有する共重合体をより低コストで得ることが可能となる。
なお、カルボキシル基含有単量体とスルホン酸基含有単量体(d)とを併用する場合、これらのモル比(カルボキシル基含有単量体/スルホン酸基含有単量体(d))としては、10〜90/90〜10であることが好適である。より好ましくは、15〜85/85〜15であり、更に好ましくは、20〜80/80〜20であり、特に好ましくは、25〜75/75〜25である。
【0021】
上記不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)としては、例えば、下記一般式(1)〜(4)で表される単量体等が好適である。なお、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)は、そのまま用いてもよいし、水溶液として用いてもよい。
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表し、かつ、R(又はR)及びRは同時にメチル基となることはない。Rは、−CH−、−(CH−、又は、C(CH−を表す。なお、R、R、R及びR中の合計炭素数は3である。Yは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数である。)
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、R1’、R2’及びR4’は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表し、かつ、R1’(又はR4’)及びR2’は同時にメチル基となることはない。R3’は、−CH−、−(CH−を表す。なお、R1’、R2’、R3’及びR4’中の合計炭素数は2である。Yは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数である。)
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、R、R及びRは、水素原子を表す。Rは、−CH−を表す。なお、R、R、R及びR中の合計炭素数は1である。Yは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数である。)
【0028】
【化6】

【0029】
(式中、R、R10及びR11は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表し、かつ、R(又はR10)及びR11は同時にメチル基となることはない。R12は、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。Yは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数である。)
【0030】
上記一般式(1)〜(4)におけるYは、炭素数2〜18のアルキレン基を表すが、具体的には、例えば、スチレンオキサイド、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド等が挙げられ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。中でも、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを用いることが好適であり、これにより、良好な親水性や相溶性を保持することができ、より充分な分散性を発揮することが可能となる。そのため、例えば洗剤組成物用途に使用した場合には、汚れが衣料等に付着することが充分に防止され、洗浄力がより向上されることとなる。なお、Yが2種以上のアルキレン基を表す場合、当該アルキレン基の結合順序は特に限定されるものではない。
【0031】
上記アルキレンオキシドの付加モル数を表すnとしては、1〜300であることが適当であるが、1モル未満である、すなわちアルキレンオキシドが付加しない場合には、充分な親水性や相溶性を発揮することができないおそれがあり、また、300モルを超えても、本発明の作用効果の向上は見られず、単に多量の添加量が必要となるだけとなるおそれがある。好ましくは、5〜100モルである。
【0032】
上記一般式(1)で表される単量体としては、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加した単量体等が好適であり、上記一般式(3)で表される単量体としては、アリルアルコール等にアルキレンオキサイドを付加した単量体等が好適であり、上記一般式(4)で表される単量体としては、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコール(PEG)とのエステル化物等が好適である。
なお、3−メチル−3−ブテン−1−オールEO付加物、アリルアルコールEO付加物、及びメトキシPEGメタクリル酸エステルについて、下記一般式に示す。
【0033】
【化7】

【0034】
上記単量体成分中の各単量体の使用量としては、用いるアニオン性単量体(b)の種類に応じて適宜設定することが適切である。
具体的には、上記アニオン性単量体(b)がカルボキシル基含有単量体のみからなる場合には、該単量体(b)が、単量体(a)、(b)及び(c)の総量100モル%に対して、50モル%よりも多いことが適当である。50モル%以下であると、高硬度下で充分な分散性を発揮できないおそれがあり、例えば洗剤組成物用途に有用なものとすることができないおそれがある。好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは65モル%以上である。
【0035】
また上記アニオン性単量体(b)がスルホン酸基含有単量体(d)を含んでなる場合には、単量体(a)、(d)及び(c)のうち少なくとも1種の単量体が、これらの3種の単量体の総量100モル%に対して30モル%以下であることが適当である。中でも、上記スルホン酸基含有単量体(d)が30モル%以下であることが好適であり、これにより、優れた性能を発揮する本発明の水溶性両性共重合体をより低コストで得ることが可能となる。このように、上記アニオン性単量体(b)が、スルホン酸基含有単量体(d)を含んでなり、該単量体(d)が、単量体(a)、(d)及び(c)の総量100モル%に対して、30モル%以下である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは28モル%以下であり、更に好ましくは25モル%以下である。また、高硬度下での分散性を向上するために、下限値は3モル%であることが好適であり、より好ましくは5モル%である。
【0036】
上記カチオン性単量体(a)の使用量としては、単量体(a)、(b)及び(c)の総量100モル%に対し、1モル%以上であることが好適であり、また、98モル%以下であることが好適である。1モル%未満であると、例えば洗剤組成物用途に使用した場合に疎水性汚れの洗浄力が充分とはならないおそれがあり、98モル%を超えると、例えば液体洗剤への相溶性が充分とはならないおそれがある。下限値としては、5モル%であることがより好ましく、また、上限値としては、90モル%であることがより好ましい。
上記カチオン性単量体(a)としてはまた、カチオン性単量体(a)の使用モル量が、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)の使用モル量と同等かそれ以上であることが好適である。カチオン性単量体(a)の使用モル量よりも不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)の使用モル量が多いと、汚れに対する吸着能を向上することができないおそれがあり、洗浄力を強力なものとすることができないおそれがある。
【0037】
上記不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)の使用量としては、単量体(a)、(b)及び(c)の総量100モル%に対し、0.1モル%以上であることが好適であり、また、98モル%以下であることが好適である。0.1モル%未満であると、例えば液体洗剤への相溶性が充分とはならないおそれがあり、98モル%を超えると、例えば洗剤組成物用途に使用した場合に、高硬度での分散性が低下し、洗浄力が充分とはならないおそれがある。上限値としては、60モル%であることがより好ましく、これにより、分散性や吸着性が更に向上され、その結果、洗浄力をより強力なものとすることが可能となる。
【0038】
上記単量体成分としてはまた、他の単量体を含んでもいてもよい。他の単量体としては特に限定されず、通常使用されるものを用いればよいが、例えば、スチレン;酢酸ビニル;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド;メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;ブチル(メタ)アクリレート;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル;フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル;アリルアルコール;3−メチル−3−ブテン−1−オール;3−メチル−2−ブテン−1−オール;2−メチル−3−ブテン−2−オール;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンホスフェート及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、又は、炭素数1〜4のアルキル基のモノ若しくはジエステル;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンサルフェート及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、又は、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオール;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールホスフェート;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールサルフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンホスフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパン;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンホスフェート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオール;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールホスフェート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタ(ポリ)オキシエチレンエーテルヘキサン;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタ(ポリ)オキシプロピレンエーテルヘキサン;ピロリドン;ヒドロキシメチル(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
上記他の単量体の含有割合としては特に限定されず、例えば、全単量体成分100質量%中、30質量%以下であることが好適である。30質量%を超えると、例えば洗剤組成物用途に用いた場合に、高硬度での分散性が低下し、洗浄力をより充分なものとすることができないおそれがある。より好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下である。
【0039】
本発明の水溶性両性共重合体としては、重量平均分子量が1000〜1000000であることが好適であり、これにより、例えば洗剤組成物用途に使用した場合には、より優れた洗浄力を発揮することが可能となる。より好ましくは1500〜200000であり、更に好ましくは2000〜50000である。
上記重量平均分子量としては、例えば、下記の条件下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
<重量平均分子量測定(GPC分析)>
装置:昭和電工社製「Shodex−GPC SYSTEM−21」
検出器:RI
カラム:昭和電工社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ、GF−710−HQ
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/分
検量線:ポリエチレングリコール標準サンプル(ジーエルサイエンス社品)
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=7/3(質量比)
【0040】
上記水溶性両性共重合体において、カチオン性単量体(a)の残存量は、添加した量100質量%に対して、10質量%以下であることが好適である。10質量%を超えると、吸着能を充分に向上させることができないおそれがあり、例えば洗剤組成物用途に用いた場合には、洗浄力をより優れたものとすることができないおそれがある。より好ましくは5質量%以下である。
またアニオン性単量体(b)としてカルボキシル基含有単量体を使用する場合、カルボキシル基含有単量体の残存量は、添加した量100質量%に対して、10質量%以下であることが好適である。10質量%を超えると、安全性に優れた共重合体とすることができないおそれがあり、また、共重合体中のカルボキシル基含有量が減少するため、分散能が充分とはならず洗浄力が低下するおそれがある。更に、水溶液中で使用する場合には、液のpHによっては残存するカルボキシル基含有単量体が不溶化するおそれもある。より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下である。また、アニオン性単量体(b)としてスルホン酸基含有単量体(d)を使用する場合、該スルホン酸基含有単量体(d)の残存量は、添加した量100質量%に対して、15質量%以下であることが好適である。15質量%を超えると、安全性に優れた共重合体とすることができないおそれがあり、また、共重合体中のスルホン酸含有量が減少するため、分散能が充分とはならず洗浄力が低下するおそれがある。更に、水溶液中で使用する場合には、液のpHによっては残存するスルホン酸基含有単量体が不溶化するおそれもある。より好ましくは10質量%以下である。
更に不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)の残存量は、添加した量100質量%に対して、40質量%以下であることが好適である。40質量%を超えると、共重合体中の有効成分量が減少するため、分散性や液体洗剤に対する相溶性等の物性が充分とはならないおそれがあり、また、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)は反応性であるために、経時変化を起こすおそれもある。より好ましくは30質量%以下である。
【0041】
本発明の水溶性両性共重合体としては、開始剤の存在下、カチオン性単量体(a)、アニオン性単量体(b)及び不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)を必須とする単量体成分を共重合することにより得ることができる。中でも、開始剤として連鎖移動剤を少なくとも使用して共重合を行うことが特に好適であり、これにより、得られる共重合体の高分子量化が充分に抑制されるとともに、重合効率が向上され、より優れた性能を発揮し得る共重合体を得ることが可能となる。このように、上記水溶性両性共重合体を製造する方法であって、該製造方法は、連鎖移動剤を用いて重合を行う工程を含む水溶性両性共重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0042】
上記共重合工程において、重合反応方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、沈殿重合等の通常の重合方法によって行うことができる。中でも、溶液重合が好適である。溶液重合の方法としては特に限定されず、通常の方法によればよいが、例えば、水、有機溶剤又は水可溶性有機溶剤と水との混合溶剤等の溶剤中での重合方法が挙げられる。有機溶剤としては特に限定されず、例えば、後述する溶媒の1種又は2種以上を使用することができる。
【0043】
上記連鎖移動剤としては、通常使用されるものを用いればよく特に限定されないが、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)等のリン系連鎖移動剤;イソプロピルアルコール等の2級アルコール;亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等)の低級酸化物及びその塩等の親水性連鎖移動剤や、また、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等の炭素原子数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤等の疎水性連鎖移動剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、チオール系連鎖移動剤やリン系連鎖移動剤を用いることが好適であり、これにより、重合効率を更に高めることが可能となる。このように、上記連鎖移動剤が、チオール系連鎖移動剤及び/又はリン系連鎖移動剤である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0044】
上記連鎖移動剤の使用量としては特に限定されず、例えば、共重合に使用する全単量体成分100重量部に対して0.1〜30重量部とすることが好ましい。0.1重量部未満であると、得られる共重合体が高分子量化してしまい、洗浄力を優れたものにすることができないおそれがあり、30重量部を超えると、経済性に優れた製法とすることができないおそれがある。より好ましくは0.5〜20重量部である。
【0045】
上記共重合工程においてはまた、重合開始剤を用いることもできる。重合開始剤としては特に限定されず、通常使用されるものを用いればよいが、過酸化物を用いることが特に好適である。過酸化物としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)p−ジイソプロピルヘキシン等のジアルキルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル類;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0046】
本発明においては、開始剤として上述した重合開始剤のみを用いることもできるが、連鎖移動剤と併用することが好適であり、中でも、過酸化物と連鎖移動剤とを併用する形態は、本発明の好適な形態の1つである。この場合には、得られる共重合体の高分子量化を充分に抑制するとともに、各単量体成分の重合を効率良く行うことができ、各単量体成分の残存量を充分に低減することが可能となる。その結果、得られる共重合体が、より優れた性能を発揮できることとなる。
上記重合開始剤と連鎖移動剤とを併用する場合、これらの質量比としては、例えば、重合開始剤100重量部に対し、連鎖移動剤の下限が30重量部、上限が300重量部であることが好適である。より好ましくは、下限が50重量部、上限が200重量部である。
【0047】
上記共重合では、溶媒を使用してもよいが、溶媒としては特に限定されず、通常使用されるものを用いればよい。例えば、水;アルコール類;エーテル類;ケトン類;エステル類;アミド類;スルホキシド類;炭化水素類等が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。これらの中でも、水、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トルエン、酢酸エチル及びこれらの混合溶媒が好ましく、水が特に好ましい。また、これら溶媒中には、カルボン酸又はスルホン酸の中和やpH制御の目的で有機アミン類やアンモニア等が添加されていてもよい。また、水を含む溶媒においては、アルカリ金属水酸化物を使用することもできる。
上記溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば、重合濃度が後述する好適な範囲内となるように設定することが好ましい。具体的には、単量体成分の総量100重量部に対して5〜900重量部であることが好ましい。より好ましくは25〜800重量部である。なお、上記溶媒は、初期一括仕込みしてもよく、逐次添加してもよい。
【0048】
上記共重合時の反応条件に関し、反応温度としては特に限定されず、例えば、0〜200℃とすることが好適であり、より好ましくは25〜150℃、更に好ましくは50〜130℃、特に好ましくは70〜100℃である。これにより、より好適な分子量の共重合体を得ることができる他、不純物量や重合時間を更に充分に低減又は短縮することができ、生産性に優れた製法とすることが可能となる。また、反応圧力も特に限定されず、例えば、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよい。なお、簡便かつ低コストに共重合を行うことができる点で、常圧(大気圧)下とすることが好適である。更に、上記共重合は、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0049】
上記共重合においては、重合濃度が10質量%以上であることが好適であり、これにより、重合効率が向上するため、各単量体成分の残存量を充分に低減することができ、種々の性能により優れた水溶性両性共重合体を得ることが可能となる。より好ましくは15質量%以上である。なお、本発明においては、上述したように連鎖移動剤を用いて重合を行うことにより、このような濃度条件下であっても、低分子量(最も好ましい重量平均分子量は2000〜50000)の共重合体を得ることが可能となる。
上記重合濃度とは、重合反応が終了した時点での溶液中の固形分濃度、すなわち重合反応系における固形成分の濃度(例えば、単量体の重合固形分濃度)であり、重合反応が終了した時点とは、例えば、上述した各成分の滴下終了後であってもよいし、また、より具体的には、上述した各成分の滴下終了後、反応溶液を保持(熟成)した後であってもよい。
【0050】
上記共重合工程において、単量体成分や開始剤(連鎖移動剤を含む)の各成分は、全量を滴下してもよいし、一部又は全量を反応系中に予め仕込んでおいてもよい。また、滴下する際、液状の成分はそのまま添加してもよいし、溶媒(好ましくは水)に溶かして滴下してもよく、固体成分については溶媒(好ましくは水)に溶かすか又は溶融させて滴下するのが好ましい。
また単量体成分や開始剤の反応系内への添加方法としては特に限定されず、通常の方法によればよいが、例えば、単量体成分を別々に又は混合物として、溶剤とともに又は溶剤と別々に、連続的又は間欠的に反応系内に添加することが好適である。より好ましくは、連続的に添加することである。開始剤についても同様に、溶剤とともに又は溶剤と別々に、連続的又は間欠的に添加することが好ましく、より好ましくは、連続的に添加することである。また、単量体成分と開始剤とを添加した後に開始剤のみを添加する形態を含んでいてもよい。
【0051】
上記単量体成分や開始剤(連鎖移動剤を含む)を添加する時間は特に限定されず、例えば、30分〜8時間とすることが好ましい。より好ましくは40分〜6時間、更に好ましくは60分〜4時間である。このうち、開始剤のみを添加する時間としては、3時間以下とすることが好ましく、より好ましくは2時間以下、更に好ましくは1時間以下である。
【0052】
上記共重合はまた、酸性条件下で行うことが好適であり、この場合には、重合反応系の溶液の粘度上昇を充分に抑制することができ、低分子量の共重合体を良好に製造することが可能となる。しかも、従来よりも高濃度で重合反応を進行させることができるため、製造効率を大幅に上昇させることができる点で極めて有利である。より好ましくは、重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6となるように調整することである。1未満であると、装置の腐食が生じるおそれがあり、6を超えると、重量平均分子量を充分に低減することができないおそれがある。更に好ましくは、当該pHが1〜5であり、更に好ましくは1〜4である。
なお、酸性条件下にするには、pH調整剤を用いることが好ましく、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、蓚酸等の有機酸や無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン等の1種又は2種以上を使用することができる。また、開始剤に加えて、重金属イオン、好ましくは鉄イオンを含んでもよい。重金属イオンが含まれていると、開始剤効率が向上し、少ない重合開始剤量で効率良く共重合体を合成することが可能となる。
【0053】
上記水溶性両性共重合体は、洗浄剤としたときの硬水100ppm中での洗浄率が17.0%以上であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記硬水100ppmとは、水1リットル(L)に溶けているカルシウム量を、炭酸カルシウム(CaCO)の重量(mg)に換算した値(mg/L=ppm)を意味するものである。
上記洗浄率は、下記洗浄力試験条件にしたがって算出される値である。
(洗浄力試験条件)
(1)日本規格協会より入手できるJIS L0803:1998綿布を5cm×5cmに切断し、白布を作成する。また湿式人工汚染布も洗濯科学協会より入手する。白布及び汚染布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE2000型を用い、白色度を反射率にて測定する。
(2)塩化カルシウム2水和物0.294gに純水を加えて2000gとし、硬水を調整する。
(3)ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1000mlと固形分換算で1質量%の水溶性両性共重合体の水溶液を洗浄剤として5.0gをポットに入れる。
上記洗浄率として好ましい形態のものを用いる場合は、ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1000mlと5質量%炭酸ナトリウム水溶液4.0g、5質量%LAS水溶液4.0g、ゼオライト0.15g、固形分換算で1質量%の水溶性両性共重合体の水溶液5.0gをポットに入れることになる。このように、洗浄力試験を実施するために、洗浄剤の配合を決めることによって、上記水溶性両性共重合体の洗浄剤としたときの硬水100ppm中での洗浄率を明確に決定することができる。
(4)汚染布7枚、白布7枚をポットに入れ、硬水1000ml及び該水溶性両性共重合体の水溶液を100rpmで10分間撹拌する。
(5)手で白布の水を切り、硬水1000mlをポットに入れ、100rpmで2分間撹拌する。これを2回行う。
(6)白布と汚染布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させ、上記測色色差計にて再度、白布及び汚染布の白色度を反射率にて測定する。
(7)以上の測定結果から、下式により洗浄率を求める。
洗浄率(%)={(洗浄後の汚染布の白色度−洗浄前の汚染布の白色度)/(原白布の白色度−洗浄前の汚染布の白色度)}×100
上記硬水100ppm中での洗浄率が17.0%以上である洗浄剤は、例えば、上記製造方法によって製造される水溶性両性共重合体によって達成することができる。前記水溶性両性共重合体を含有する洗浄剤とは、液体洗剤であっても粉末洗剤であってもよいが、界面活性剤との相溶性に優れ、高濃縮の液体洗剤とすることができる点から、液体洗剤であることが好ましい。上記洗浄率を達成できる水溶性両性共重合体を形成する単量体、各単量体成分の量の好ましい形態としては、上述したように重合体の製造方法を適宜設定すればよい。なお、JISL0803とは、日本工業標準調査会(JISC)が染色堅ろう度試験に用いる添付白布について標準化した規格である。また、上記LASとは、Linear Alkylbenzene Sulfonateの略であり、LAS水溶液とは、アルキルベンゼンスルホン酸塩の水溶液を意味する。
【0054】
本発明の水溶性両性共重合体としては、良好な親水性を有するとともに、吸着能が高く、高硬度下においても格段に優れた分散性を発揮することから、例えば、無機顔料の水系スラリー分散剤、セメント混和剤、スケール防止剤、防錆剤、防食剤、洗剤組成物、表面汚れ防止剤(表面処理剤)、水処理剤、繊維処理剤、古紙再生用脱墨剤、キレート剤、各種染料分散剤、農薬分散剤、綿の精錬洗浄剤、石炭用分散剤等の種々の用途(但し、抗菌剤を除く。抗菌剤と、洗剤組成物等の上記用途とは、作用効果が異なるためである。)に好適に使用することができる。中でも、洗剤組成物、表面汚れ防止剤、水処理剤、繊維処理剤、分散剤に用いると本発明の作用効果を一層発揮することができるため好適である。特に洗剤組成物、水処理剤、繊維処理剤に用いることが好ましく、このような上記水溶性両性共重合体を含有する洗剤組成物もまた、本発明の1つである。また、上記水溶性両性共重合体を含有する水処理剤及び繊維処理剤は、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0055】
本発明の洗剤組成物においては、上述した水溶性両性共重合体を含んでなるものとすると、高硬度下においても格段に優れた洗浄力を発揮することができるが、下記のような洗剤組成物としても本発明の作用効果を発揮することができる。
すなわち、水溶性両性共重合体を含有する洗剤組成物であって、該水溶性両性共重合体は、カチオン性単量体(a)、アニオン性単量体(b)及び不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)を必須とする単量体成分を共重合してなり、該単量体(b)は、カルボキシル基含有単量体及び/又はスルホン酸基含有単量体(d)である洗剤組成物もまた、本発明の1つである。
このような洗剤組成物に含まれる水溶性両性共重合体において、好適に使用される単量体成分や含有比、重合方法その他の好適な形態については、上記水溶性両性共重合体について上述したとおりである。但し、このような水溶性両性共重合体には、上記単量体成分の含有比(カチオン性単量体(a)/アニオン性単量体(b)/不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c))が1/1/1である形態のものは含まないものとする。
【0056】
本発明の洗剤組成物は、上述した水溶性両性共重合体を含有するものであるが、具体的には、このような洗剤組成物は、上記水溶性両性共重合体のみからなるものであってもよいし、他の通常使用される洗剤用ビルダー等の洗剤添加物等を含有するものであってもよい。
上記他の通常使用される洗剤用ビルダーとしては特に限定されず、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ポウ硝、炭酸ナトリウム、ニトリロトリ酢酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウムやカリウム、ゼオライト、多糖類のカルボキシル誘導体、(メタ)アクリル酸(共)重合体塩、フマル酸(共)重合体塩などの水溶性重合体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0057】
上記洗剤組成物の特に好適な形態としては、洗浄剤(洗剤)に配合して用いることであり、これにより、移染や疎水性汚れによる再汚染を充分に防止して高い洗浄力を発揮するという本発明の作用効果が充分に発揮されることとなる。このような上記洗剤組成物を含有する洗浄剤もまた、本発明の1つである。
上記洗浄剤において、本発明の洗剤組成物の含有割合としては、例えば、洗浄剤100質量%中、上記水溶性両性共重合体が0.1〜40質量%となるように設定することが好適である。0.1質量%未満であると、充分な洗剤性能を発揮できないおそれがあり、40質量%を超えると、経済性に優れたものとすることができないおそれがある。より好ましくは0.2〜30質量%である。
【0058】
上記洗浄剤としてはまた、上記洗剤組成物の他に、界面活性剤を含有することが好ましく、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキル又はアルケニルリン酸エステル又はその塩等が挙げられる。なお、これらのアニオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していてもよい。
【0059】
上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。なお、これらのノニオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していてもよい。
上記カチオン系界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシル型又はスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0060】
上記洗浄剤において、界面活性剤の含有割合としては、例えば、洗浄剤100質量%中、1〜70質量%であることが好適である。1質量%未満であると、充分な洗剤性能を発揮できないおそれがあり、70質量%を超えると、経済性に優れたものとすることができないおそれがある。より好ましくは15〜60質量%である。
【0061】
上記洗浄剤としては更に、色移り防止剤、蛍光増白剤、起泡剤、気泡抑制剤、腐食防止剤、防錆剤、汚れ懸濁剤、汚れ放出剤、pH調整剤、殺菌剤、キレート化剤、粘度調整剤、酵素、酵素安定剤、香料、繊維軟化剤、過酸化物、過酸化物安定剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、漂白剤、酵素、染料等の通常使用される添加剤や、溶媒等の1種又は2種以上を含有してもよく、その含有量は、求める性能等に応じて適宜設定すればよい。
【0062】
本発明の洗浄剤は、液体洗剤であっても粉末洗剤であってもよいが、界面活性剤との相溶性に優れ、高濃縮の液体洗剤とすることができる点から、液体洗剤であることが好ましい。このように、上記洗浄剤が液体洗剤である形態、すなわち、上記洗剤組成物を含んでなる液体洗剤もまた、本発明の1つである。
上記液体洗剤の好適な形態については、上記洗浄剤において上述したとおりである。
【0063】
本発明の水処理剤及び繊維処理剤においては、上述した本発明の水溶性両性共重合体を含んでなるものとすると、高硬度下においても格段に優れた洗浄力を発揮することができるが、下記のような構成としても本発明の作用効果を発揮することができる。
すなわち、水溶性両性共重合体を含有する水処理剤であって、該水溶性両性共重合体は、カチオン性単量体(a)、アニオン性単量体(b)及び不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)を必須とする単量体成分を共重合してなり、該単量体(b)は、カルボキシル基含有単量体及び/又はスルホン酸基含有単量体(d)である水処理剤もまた、本発明の1つである。
【0064】
また水溶性両性共重合体を含有する繊維処理剤であって、該水溶性両性共重合体は、カチオン性単量体(a)、アニオン性単量体(b)及び不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)を必須とする単量体成分を共重合してなり、該単量体(b)は、カルボキシル基含有単量体及び/又はスルホン酸基含有単量体(d)である繊維処理剤もまた、本発明の1つである。
このような水処理剤及び繊維処理剤に含まれる水溶性両性共重合体において、好適に使用される単量体成分や含有比、重合方法その他の好適な形態については、上記水溶性両性共重合体について上述したとおりである。
【発明の効果】
【0065】
本発明の水溶性両性共重合体は、上述のような構成からなり、良好な親水性を有するとともに、吸着能が高く、高硬度下においても格段に優れた分散性を発揮できることから、例えば、洗剤組成物、表面汚れ防止剤、水処理剤、分散剤等の種々の用途に好適に用いることが可能なものであり、特に洗剤組成物用途に使用した場合に高い洗浄力を発揮できることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
下記の実施例等において、重量平均分子量は、上述した方法にて測定した。
また洗浄率は、以下の試験条件の下で求めた。
【0067】
(洗浄力試験条件)
(1)日本規格協会より入手したJIS L0803:1998綿布を5cm×5cmに切断し、白布を作成した。また湿式人工汚染布も洗濯科学協会より入手した。白布及び汚染布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE2000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
(2)塩化カルシウム2水和物0.294gに純水を加えて2000gとし、硬水を調整した。
(3)ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1000mlと5質量%炭酸ナトリウム水溶液4.0g、5質量%LAS水溶液4.0g、ゼオライト0.15g、固形分換算で1質量%の重合体水溶液5.0gをポットに入れた。
(4)汚染布7枚、白布7枚をポットに入れ、100rpmで10分間撹拌した。
(5)手で白布の水を切り、硬水1000mlをポットに入れ、100rpmで2分間撹拌した。これを2回行った。
(6)白布と汚染布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度、白布及び汚染布の白色度を反射率にて測定した。
(7)以上の測定結果から、下式により洗浄率を求めた。
洗浄率(%)={(洗浄後の汚染布の白色度−洗浄前の汚染布の白色度)/(原白布の白色度−洗浄前の汚染布の白色度)}×100
【0068】
実施例1
還流冷却器、攪拌機を備えた2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、710gの純水を流し込み、攪拌しながら90℃まで昇温させた。
次に、60%(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(以下、「4DAM」と略す)38.1g、50%メトキシポリエチレンオキシドメタクリレート(EO付加モル数:23モル)(以下、「PGME」と略す)241.6g、25% 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下、「AMPS」と略す)54.7g、10%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「NaPS」と略す)34.3g、40%メルカプトプロピオン酸(以下、「MPA」と略す)11.8gを、それぞれ別々の滴下ノズルから同時に滴下を開始した。滴下は連続的に行なわれ、滴下速度は一定に保った。それぞれの滴下時間は、60%DAM、50%PGME、25%AMPS、40%MPAが180分間、10%NaPSが190分間とした。
10%NaPSの滴下終了後、90℃で60分間熟成し、重合を完結した。重合完結後、重合反応液を冷却し、共重合体(1)の水溶液を得た。実施例1における各種結果を表1に示した。
【0069】
実施例2
還流冷却器、攪拌機を備えた2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、690gの純水を流し込み、攪拌しながら90℃まで昇温させた。
次に、25%4DAM 74.8g、50%PGME 66.7g、30%アクリル酸(以下、「AA」と略す)43.2g、10%NaPS 36.0g、15%MPA 33.0gを、それぞれ別々の滴下ノズルから同時に滴下を開始した。滴下は連続的に行なわれ、滴下速度は一定に保った。それぞれの滴下時間は、25%4DAM、50%PGME、30%AA、15%MPAが180分間、10%NaPSが190分間とした。
10%NaPSの滴下終了後、90℃で60分間熟成し、重合を完結した。重合完結後、重合反応液を冷却し、共重合体(2)の水溶液を得た。実施例2における各種結果を表1に示した。
【0070】
実施例3
還流冷却器、攪拌機を備えた2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、660gの純水を流し込み、攪拌しながら90℃まで昇温させた。
次に、60%4DAM 38.1g、50%PGME 241.6g、10%AMPS 38.4g、80%AA 1.7g、10%NaPS 30.8g、40%MPA 10.6gを、それぞれ別々の滴下ノズルから同時に滴下を開始した。滴下は連続的に行なわれ、滴下速度は一定に保った。それぞれの滴下時間は、60%4DAM、50%PGME、10%AMPS、80%AA、40%MPAが180分間、10%NaPSが190分間とした。
10%NaPSの滴下終了後、90℃で60分間熟成し、重合を完結した。重合完結後、重合反応液を冷却し、共重合体(3)の水溶液を得た。実施例3における各種結果を表1に示した。
【0071】
比較例1
還流冷却器、攪拌機を備えた2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、630gの純水を流し込み、攪拌しながら90℃まで昇温させた。
次に、60%4DAM 38.1g、50%PGME 241.6g、15%AA 53.3g、10%NaPS 30.8g、40%MPA 10.6gを、それぞれ別々の滴下ノズルから同時に滴下を開始した。滴下は連続的に行なわれ、滴下速度は一定に保った。それぞれの滴下時間は、60%4DAM、50%PGME、15%AA、40%MPAが180分間、10%NaPSが190分間とした。
10%NaPSの滴下終了後、90℃で60分間熟成し、重合を完結した。重合完結後、重合反応液を冷却し、共重合体(4)の水溶液を得た。比較例1における各種結果を表1に示した。以上の結果より、本発明の水溶性両性共重合体としては、上記洗浄力試験条件における洗浄率が17.0(%)以上であることが好ましい。特に好ましくは19.0(%)以上である。
【0072】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性単量体(a)、アニオン性単量体(b)及び不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)を必須とする単量体成分を共重合してなる水溶性両性共重合体であって、
該単量体(b)は、カルボキシル基含有単量体及び/又はスルホン酸基含有単量体(d)であり、
該単量体(b)がカルボキシル基含有単量体のみからなる場合、該単量体(b)は、単量体(a)、(b)及び(c)の総量100モル%に対して、50モル%よりも多く、
該単量体(b)がスルホン酸基含有単量体(d)を含んでなる場合、該単量体(a)、(d)及び(c)のうち少なくとも1種の単量体は、単量体(a)、(d)及び(c)の総量100モル%に対して、30モル%以下であり、
該カチオン性単量体(a)は、(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムハロゲン化物及び(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウム硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ基含有単量体であり、
該カルボキシル基含有単量体は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、ヒドロキシメチル(メタ)アクリル酸、及び、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であり、
該スルホン酸基含有単量体(d)は、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−1−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸、3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホン酸、3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールスルホネート、3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホネート、3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホネート、3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンプロパンスルホン酸、6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールスルホネート、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド並びにこれらの塩、これらの化合物のリン酸エステル、これらの化合物の硫酸エステル及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であり、
該不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)は、下記一般式(1)〜(4)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であり、
該水溶性両性共重合体は、洗剤組成物、水処理剤又は繊維処理剤用途に用いられる
ことを特徴とする水溶性両性共重合体。
【化1】

式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表し、かつ、R(又はR)及びRは同時にメチル基となることはない。Rは、−CH−、−(CH−、又は、C(CH−を表す。なお、R、R、R及びR中の合計炭素数は3である。Yは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数である。
【化2】

式中、R1’、R2’及びR4’は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表し、かつ、R1’(又はR4’)及びR2’は同時にメチル基となることはない。R3’は、−CH−、−(CH−を表す。なお、R1’、R2’、R3’及びR4’中の合計炭素数は2である。Yは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数である。
【化3】

式中、R、R及びRは、水素原子を表す。Rは、−CH−を表す。なお、R、R、R及びR中の合計炭素数は1である。Yは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数である。
【化4】

式中、R、R10及びR11は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表し、かつ、R(又はR10)及びR11は同時にメチル基となることはない。R12は、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。Yは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数である。
【請求項2】
カチオン性単量体(a)、アニオン性単量体(b)及び不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)を必須とする単量体成分を共重合してなる水溶性両性共重合体であって、
該単量体(b)は、カルボキシル基含有単量体及び/又はスルホン酸基含有単量体(d)であり、
該単量体(b)がカルボキシル基含有単量体のみからなる場合、該単量体(b)は、単量体(a)、(b)及び(c)の総量100モル%に対して、50モル%よりも多く、
該単量体(b)がスルホン酸基含有単量体(d)を含んでなる場合、該単量体(a)、(d)及び(c)のうち少なくとも1種の単量体は、単量体(a)、(d)及び(c)の総量100モル%に対して、30モル%以下であり、
該カチオン性単量体(a)は、(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムハロゲン化物及び(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウム硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種のアミノ基含有単量体であり、
該カルボキシル基含有単量体は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、ヒドロキシメチル(メタ)アクリル酸、及び、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であり、
該スルホン酸基含有単量体(d)は、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−1−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸、3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホン酸、3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールスルホネート、3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホネート、3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホネート、3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンプロパンスルホン酸、6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールスルホネート、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド並びにこれらの塩、これらの化合物のリン酸エステル、これらの化合物の硫酸エステル及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であり、
該不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(c)は、下記一般式(1)〜(4)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であり、
該水溶性両性共重合体は、重量平均分子量が1000〜1000000である
ことを特徴とする水溶性両性共重合体。
【化5】

式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表し、かつ、R(又はR)及びRは同時にメチル基となることはない。Rは、−CH−、−(CH−、又は、C(CH−を表す。なお、R、R、R及びR中の合計炭素数は3である。Yは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数である。
【化6】

式中、R1’、R2’及びR4’は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表し、かつ、R1’(又はR4’)及びR2’は同時にメチル基となることはない。R3’は、−CH−、−(CH−を表す。なお、R1’、R2’、R3’及びR4’中の合計炭素数は2である。Yは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数である。
【化7】

式中、R、R及びRは、水素原子を表す。Rは、−CH−を表す。なお、R、R、R及びR中の合計炭素数は1である。Yは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数である。
【化8】

式中、R、R10及びR11は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表し、かつ、R(又はR10)及びR11は同時にメチル基となることはない。R12は、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。Yは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。nは、1〜300の整数である。
【請求項3】
前記アニオン性単量体(b)は、前記スルホン酸基含有単量体(d)を含んでなり、
該単量体(d)は、単量体(a)、(d)及び(c)の総量100モル%に対して、30モル%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水溶性両性共重合体。
【請求項4】
前記スルホン酸基含有単量体(d)は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸及びその塩、並びに、3−(メタ)アリルオキシ−1−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水溶性両性共重合体。
【請求項5】
前記水溶性両性共重合体は、過酸化物と連鎖移動剤とを併用して製造されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水溶性両性共重合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性両性共重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、連鎖移動剤を用いて重合を行う工程を含むことを特徴とする水溶性両性共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記連鎖移動剤は、チオール系連鎖移動剤及び/又はリン系連鎖移動剤であることを特徴とする請求項6に記載の水溶性両性共重合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性両性共重合体を含有することを特徴とする洗剤組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の洗剤組成物を含有することを特徴とする洗浄剤。
【請求項10】
請求項8に記載の洗剤組成物を含有することを特徴とする液体洗剤。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性両性共重合体を含有することを特徴とする水処理剤。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性両性共重合体を含有することを特徴とする繊維処理剤。

【公開番号】特開2012−251156(P2012−251156A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−170975(P2012−170975)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【分割の表示】特願2006−187710(P2006−187710)の分割
【原出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】