説明

水溶液に可溶であり、金属ポルフィリンを含む新規電解重合可能モノマー

本発明は、水溶液中で重合されることになっており、アセチレン、ピロール類、チオフェン類、インドール類、アニリン類、アジン類、p−フェニレンビニレン類、p−フェニレン類、ピレン類、フラン類、セレノフェン類、ピリダジン類、カルバゾール類、アクリラート類、メタクリラート類、及びそれらの誘導体から選択される電解重合可能パターン、並びに水溶液中で少なくとも2個のイオン化実体又はイオン化可能実体で置換されている金属ポルフィリンを含む新規電解重合可能モノマーに関する。本発明はまた、このようなモノマーの重合方法、このようなモノマーの重合によって得ることができる電気活性プローブ、及びこのような1つの電気活性プローブを使用して生体試料中の標的リガンドを検出する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、電解重合の技術分野に関する。特に、本発明の対象は、水溶液に可溶であり、金属ポルフィリンを含む新規電解重合可能モノマーである。本発明はまた、前記モノマーを重合する方法、前記モノマーを重合することによって得ることができる電気活性プローブ、及び前記電気活性プローブを使用して生体試料中の標的リガンドを検出する方法に関する。
【0002】
タンパク質や核酸配列などの生体分子の検出は、近年特に医療分野で迅速な技術的進歩を遂げている。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのDNA増幅方法の開発によって、非常に少量のDNAを検出することが可能になってきた。まず、感染因子又は試験される細胞のDNAを単離し、次いでPCRタイプの技術を使用して増幅し、最後にDNAの有無を検出及び定量化する。
【0003】
感受性が改善され、特異性が改善されたより低いコストのリアルタイム検出読取りに基づいて生体分子を検出するための新しい装置の開発は、完全な拡大を遂げつつある。
【0004】
現在、一般的に検出に使用されるトランスデューサーは蛍光検出器である。この方法は、光学式読取り、すなわち化学又は生化学反応の後に起こる吸収又は放出される光の測定に基づく。したがって、間接的方法である。多数の化合物、特にこの文脈で広く使用される金属ポルフィリンは、蛍光特性を有する。米国特許第6623973号明細書には、ポルフィリンフィルムの蛍光変化によって揮発性有機化合物を検出する方法を記載されている。Wandrekarらは、化合物メソ−トリ(N−メチル−4−ピリジニウム)ポルフィリニル−p−フェニレン−5’O−チミジン)とDNA分子との相互作用を記載している(J.Heterocyclic Chem.、1996、33、1775−1783)。米国特許第6004530号明細書には、タンパク質又はオリゴヌクレオチドの蛍光検出を可能にする生体分子と結合している金属ポルフィリン誘導体を調製する方法が記載されている。
【0005】
これらの間接的方法の重大な欠点は、その感受性と特異性が低いことである。
【0006】
電気化学検出などの直接検出技法が開発されている。この技法は、速く特異的な生体分子検出をもたらす。電気化学トランスデューサーの高感受性、そのマイクロファブリケーション技法及び小型化技術との両立、その低コスト、並びに最低限のメンテナンスによって、これらの装置は診断にとって重要である。さらに、電気化学的性質は、様々な変性方法、より一般的には電気信号を生じるDNAと様々な分子との特異的相互作用を検出する方法において、DNAハイブリッド形成にわたって唯一の電気制御経路をもたらす。
【0007】
電量及び電位差検出、又はインピーダンス測定による検出など、複数の電気化学検出モードが存在する。
【0008】
電気活性インターカレーターの使用に基づく電気化学センサーは、文献に広範囲に記載されている(Millanら、Anal.Chem.、1993、65、2317;Bardら、Anal.Chem.、1990、62、2658)。ハイブリッド形成後に形成されたプローブ−標的のデュプレックスを、インターカレーター溶液に曝露する。インターカレーターとデュプレックスの表面との結合による電気化学応答の増大は、ハイブリッド形成信号として働く。これらのバイオセンサーの大部分は、Co(phen)3+、Co(bpy)3+、又はダウノマイシンなどの金属カチオン錯体を使用する。ハイブリッド形成に対してこれらのインターカレーターの特異性が低いので、この方法の選択性が非常に限定されている。
【0009】
他の電気化学センサーは、電気化学プローブとしてフェロセンなどの電子供与体基を使用する。国際公開第01/81446号パンフレットには、フェロセンに結合しているポリヌクレオチドをピロール単位が有する電気活性ポリマーが記載されている。Bediouiらは、触媒系で使用されているポリ(ピロール−マンガンポルフィリン)フィルムを記載している(Journal of Molecular Catalysis、1989、56、267−275)。これらの構造では、使用されているモノマーは疎水性であり、電解重合は、一般に有機溶媒中で実施される。しかし、有機媒体中での操作は、生体分子の使用と両立しない。生体分子は、このような媒体に可溶でなく、及び/又はその中で変性されることが多く、その特性は劣化する。タンパク質に関して、ほとんどの場合、活性立体配座の損失が確認されている。
【0010】
この知見から、現在までに2つの戦略が出現している。第1の戦略は、電極から始めて、ポリピロール層(有機溶媒中で被着)、ピロール/ピロール−電子供与体基のコポリマー層(有機溶媒中で被着)、及び最後にピロール/生体分子に共有結合しているピロールのコポリマー層(水性媒体中で被着)を含む複数の導体ポリマー層を、電極を含むチップ上に形成することからなる。このいわゆる「多層」戦略は、例えば仏国特許第2849038号明細書に記載されている。この戦略のために使用することができるポリマーは、例えば国際公開第95/29199号パンフレット、及び国際公開第01/81446号パンフレットに記載されている。この「多層」戦略は、チップの複数のすすぎ操作の各時間において必要とされる有機溶媒/水性媒体の複数回の移行を用いるために時間がかかるので、完全には満足できるものではない。
【0011】
もう1つの戦略は、後官能化と呼ばれ、ポリマー層上に配置されている反応性官能基を使用して、水性媒体中で生体分子を後重合、すなわち共有結合することからなる。特に、Synthetic Metals 1999、89−94及びBiomacromolecules 2001、2、58−64を挙げることができる。この後官能化戦略は、生体分子のアドレス指定を可能にしない。さらに、生体分子のポリマーへの結合有効性が可変であるため、パッドツウパッド再現性に欠ける。
【0012】
したがって、改善された電気活性特性を有し、水溶液中での電解重合反応と両立することができるポリマーの開発が依然として待たれている。
【0013】
従来技術の欠点を解決するために、本発明は、水溶液中で重合されるよう意図されているモノマーであって、
− アセチレン、ピロール類、チオフェン類、インドール類、アニリン類、アジン類、p−フェニレンビニレン類、p−フェニレン類、ピレン類、フラン類、セレノフェン類、ピリダジン類、カルバゾール類、アクリラート類、メタクリラート類、及びそれらの誘導体の中から選択される電解重合可能単位と、
− 水溶液中でイオン化された又はイオン化可能な少なくとも2個の実体で置換されている金属ポルフィリンとを含むモノマーを提案する。
【0014】
有利なことには、上記に定義するものなどの電解重合可能モノマーは、下記に説明する特性のいずれか1つ、又は互いに除外しない場合には下記の特性の複数を有する。
− 金属ポルフィリンは、水溶液中でイオン化された又はイオン化可能な3個の実体で置換されている、
− モノマーは、少なくとも10mMまでの濃度、好ましくは少なくとも30mMまでの濃度で蒸留水に可溶である、
− 金属ポルフィリンは、金属ポルフィリンのメソ位に配置されている、水溶液中でイオン化された又はイオン化可能な少なくとも2個の実体で置換されている、
− イオン化実体又はイオン化可能実体は、アンモニウム、アミン、ポリアミン、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、及びホスファートの官能基の中から選択される、pHが3〜8である水溶液中でイオン化された又はイオン化可能な官能基を含む、
− 金属ポルフィリンを置換するイオン化実体又はイオン化可能実体の2つは、塩の形のN−メチルピリジニウム基又は−COOH官能基を含む、
− 金属ポルフィリンを置換するイオン化実体又はイオン化可能実体の2つは、同一である、
− 金属ポルフィリンは、水溶液中でイオン化された又はイオン化可能な少なくとも2個の異なる実体で置換されている、
− 金属ポルフィリン、特にそのメソ位の1つにおいて、有利にはポリヌクレオチド、特にオリゴヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗原、抗体、ハプテン、オリゴ糖、及びビオチンの中から選択され、ポリヌクレオチドが好ましい生体リガンドで置換されている、
− 電解重合可能単位と金属ポルフィリンとの結合は、金属ポルフィリンのメソ位で行われている、
− 電解重合可能単位と金属ポルフィリンとの結合は、スペーサーアームを介して行われている、
− 電解重合可能単位はピロールであり、好ましくはピロールと金属ポルフィリンとの結合は、確実にピロールの3位で行われている、
− 金属ポルフィリンは、好ましくはハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、(C〜C)アルキル基、(C〜C)アルケニル基、(C〜C)アルキニル基、及び(C〜C)アルコキシ基の中から選択される、1つ又は複数の電子供与体基又は電子吸引体基でも置換されている、
− 金属ポルフィリンの金属は、遷移金属(2005年7月版Mendeleievの表に定義)、又はMg、Al、Sn、若しくはGeであり、好ましくはCo、Ni、Mg、Fe、Zn、Mn、Pd、Cu、Pt、V、Mo、Al、Sn、及びGeの中から、好ましくはCo、Zn、及びMnの中から選択される、
− モノマーはいずれの生体リガンドも含まない。
【0015】
本発明のモノマーは、水溶液中でイオン化された又はイオン化可能な実体が少なくとも2個存在することにより、水溶液に可溶となり、それによって前記水性媒体中でその重合が可能になる。
【0016】
本発明をさらに詳細に説明する前に、本明細書及び特許請求の範囲で使用されるいくつかの用語を下記に定義する。
【0017】
「電解重合可能モノマー」は、電解重合可能単位を含むモノマーを意味し、前記モノマーは、電気化学重合によって、他のモノマーと反応して、ポリマーを生成することができる。電解重合可能構造は、単結合と二重結合が交互に並んでいる構造である。特に、本発明では、電解重合可能単位として、ピロール、アセチレン、チオフェン、アジン、p−フェニレン、p−フェニレンビニレン、ピレン、フラン、セレノフェン、ピリダジン、カルボアゾール、アニリン、インドール、アクリラート、メタクリラート類、及びそれらの誘導体が使用される。
【0018】
「水溶液中でイオン化可能な」「実体」又は「基」は、水溶液中でカチオン又はアニオンを生成することができる親水性化学基を意味する。水溶液中でイオン化された形は、加水分解又は減成のタイプの化学反応を実施することなく得られる。イオン化された形は、例えばプロトン交換によって、又は塩からイオン対が溶解した形で得られる。前記イオン化実体又はイオン化可能実体は、特にアンモニウム基、アミン基(−NHR”、式中、R”は水素原子又は(C〜C)アルキルである)、ポリアミン、カルボン酸(−COOH)、ホスホン酸(−OP(OH))、スルホン酸(−SOH)、ホスファート基(−O−P(O)(OR”)、式中、R”は水素原子又は(C〜C)アルキルである)を含む。イオン化可能実体は、pHが3〜8、好ましくは5〜8である水溶液中に置かれるとイオンの形で存在する。有利なことには、イオン化可能実体は、蒸留水中でイオン化された形で存在する。
【0019】
本発明では、「アルキル」は、1〜15個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の炭化水素基を意味する。(C〜C)アルキル基は、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。(C〜C)アルキル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基である。
【0020】
「アルケニル」は、1〜15個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子を有し、1つ又は複数の二重結合、好ましくは1又は2個の二重結合を含む直鎖又は分岐の炭化水素基を意味する。
【0021】
「アルキニル」は、1〜15個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子を有し、1つ又は複数の三重結合、好ましくは1又は2個の三重結合を含む直鎖又は分岐の炭化水素基を意味する。
【0022】
「アルコキシ」は−O−アルキル基を意味し、アルキルは上記に定義される。
【0023】
アンモニウム基は、N−メチルピリジニウムなど、塩の形の第四級アミンを意味する。N−メチルピリジニウム基は、好ましくは下記に対応する:
【化1】

【0024】
「ハロゲン原子」は、塩素、臭素、フッ素、又はヨウ素原子を意味する。
【0025】
整数が例えば1〜3の範囲に含まれていると示されている場合、この整数が1、2、又は3であり得ることを意味する。
【0026】
「水溶液に可溶なモノマー」は、重合条件下、すなわち電気化学経路を経由する重合反応に使用される温度、pH、及びイオン強度の条件下で水溶液に可溶なモノマーを意味する。電解重合は、一般にpHが3〜8の水溶液中、20〜30℃程度の温度で実施される。好ましくは、本発明のモノマーの溶解性は、前記モノマーを25℃の温度の蒸留水に少なくとも1mMまでの濃度、好ましくは少なくとも10mMまでの濃度、さらに好ましくは少なくとも30mMまでの濃度で添加すると、沈殿のない肉眼で見ると透明な均質溶液が生じる程度である。
【0027】
「重合」は、一定数のモノマーの組立が可能になって、ポリマーを生成する化学又は電気化学経路を経由する同じ化学タイプの単位の反応を意味する(r×M→(M)、式中、rは2以上である)。「重合」は、共重合及び単独重合を包含する。本発明では、重合は、有利にピロール単位が縮合して、ポリピロールを生成することに関する。共重合は、異なる単位の同時重合を意味する。「電解重合」、「電気化学共重合」、及び「電気化学重合」という用語は電気化学による重合を意味する。電解重合/電解共重合ステップは、当業者に周知の技法で行われる。例えば、酸化による重合、又は定電流(クロノポテンシオメトリー)若しくは定電位(クロノアンペロメトリー)による重合を引き起こすのに十分な電位走査にモノマーをかけることによって実施することができる。本発明の特定の一実施形態では、重合は、クロノアンペロメトリー堆積又は定電位堆積によって行われる。本方法は、電位を平衡電位(ゼロ電流)から反応が電極で起こる固定値まで上げることと、時間に対する電流を測定することからなる。
【0028】
「重合条件」は、重合に使用される水溶液のpH、温度、及びイオン強度を意味する。ピロールに関して、電解重合は、ポリピロールの生成をもたらすDiazメカニズム(Sadkiら、Chem.Soc.Rev.、29:283−293、2000)によって実施される。この重合は、ピロールモノマーの2位及び5位で起こる。したがって、ピロール核の3位又は4位が置換されているピロールは、2位及び5位で他のピロールと重合又は共重合することができる。3位が置換されているピロール単位が好ましい。
【0029】
「導体ポリマー」は、ほとんどの場合単結合及び二重結合(共役結合)の鎖に沿って電子が高度に非局在化し、それによって半導体又は導体のように挙動するポリマーを意味する。
【0030】
生体リガンドは、生物学的に興味のある標的分子と反応させることができる少なくとも1つの認識部位を有する化合物を意味する。本発明では、特異的に相互作用して、コンジュゲートを形成することができるリガンド/抗リガンド対は、プローブリガンド/標的リガンドとも呼ばれる。
【0031】
生体リガンドとしては、例えばポリヌクレオチド、特にオリゴヌクレオチド、抗原、抗体、ポリペプチド、タンパク質、ハプテン、オリゴ糖、及びビオチンを挙げることができる。したがって、これらの生体リガンドの大部分は、水溶液中でイオン化可能な官能基を含むことは明らかである。本発明の意味では、「生体リガンド」という用語、並びに「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「抗原」、「抗体」、「ポリペプチド」、「タンパク質」、「ハプテン」、「オリゴ糖」、及び「ビオチン」という用語は、問題の生体リガンドに結合し、生体リガンドを金属ポルフィリンと結合させるリンカーアームを包含し得る。これらのリンカーアームは、特に金属ポルフィリンが有する場合によっては活性形のアミン官能基又は酸官能基と生体リガンドが有する反応性官能基との結合によって生ずる−NH−CO−又は−CO−NH−鎖を含み得る。
【0032】
「ポリヌクレオチド」という用語は、適切なハイブリッド形成条件下で少なくとも部分相補的オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成することができる少なくとも2種類の天然又は修飾ヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)鎖を意味する。修飾ヌクレオチドは、例えば修飾塩基を含み、並びに/又はヌクレオチド間結合及び/若しくは主鎖で修飾を含むヌクレオチドを意味する。修飾塩基としては、例えばイノシン、メチル−5−デオキシシチジン、ジメチルアミノ−5−デオキシウリジン、ジアミノ−2,6−プリン、及びブロモ−5−デオキシウリジンを挙げることができる。修飾ヌクレオチド間結合を例示するために、ホスホロチオアート結合、H−ホスホナート結合、及びアルキル−ホスホナート結合を挙げることができる。仏国特許出願公開第62607507号明細書、及びM.Eghomら、J.Am.Chem.Soc(1992)114、1895−1897のPNAが主題の論文に記載されているものなどのα−オリゴヌクレオチドは、主鎖が修飾されているヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの例である。これらの修飾物はそれぞれ、組み合わせて使用することができる。ポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド、天然核酸、又はその断片、例えばDNA、リボソームRNA、メッセンジャーRNA、転移RNA、酵素増幅技法によって得られる核酸などとすることができる。
【0033】
「ポリペプチド」という用語は、特に、少なくとも2つのアミノ酸類の任意の鎖を意味する。アミノ酸類は、タンパク質をコードする第一級アミノ酸、trans−4−ヒドロキシプロリンなどの酵素作用後の誘導アミノ酸、及びノルバリン、N−メチル−Lロイシン、スタリン(Hunt S.、Chemistry and Biochemistry of the amino acids、Barett G.C.編、Chapman and Hall、London 1985を参照のこと)などのタンパク質に存在していない天然アミノ酸、固体担体上又は液相中での合成に使用することができる化学官能基で保護されているアミノ酸、並びに非天然アミノ酸を意味する。「タンパク質」という用語には、核タンパク質、リポタンパク質、リンタンパク質、金属タンパク質、及び糖タンパク質など、ホロタンパク質及び異種タンパク質が特徴的な立体配座の形が線維状でも球状でも共に包含される。
【0034】
「ハプテン」という用語は、すなわちそれ自体では抗体産生による免疫反応を引き起こすことができないが、周知の条件下で動物を免疫すること、特に複合ハプトタンパク質による免疫化によって得られた抗体によって認識されることができる非免疫原性化合物を意味する。これらの化合物は、一般的に3000Da未満、ほとんどの場合2000Da未満の分子量を有し、例えばグリコシル化されたペプチド、代謝産物、ビタミン、ホルモン、プロスタグランジン、毒素、抗生物質、又は様々な医薬品、ヌクレオシド、及びヌクレオチドとすることができる。
【0035】
「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体、遺伝的組換えによって得られる抗体、及びFa断片又はF(ab’)2断片又はFc断片などの抗体の断片、及び遺伝的修飾又は組換えによって得られる任意の抗体を包含する。「抗原」という用語は、免疫応答によってその合成が誘導された抗体によって認識されることができる化合物を意味する。
【0036】
本発明の対象は、その別の態様によれば、ピロール単位及び金属ポルフィリンを含む式(I)のモノマーである:
【化2】


式中、
− R基、R基、及びR基のうち少なくとも2つは、同じか異なるイオン化された又はイオン化可能な基であるという条件で、R基、R基、及びR基はそれぞれ互いに独立に、水素原子、水溶液中でイオン化された若しくはイオン化可能な基、又は生体リガンドを表し、
− A、A、及びAはそれぞれ互いに独立に、特に下記の鎖の中から選択されるスペーサーアームを表し:
・ −(CHn1−(式中、n1は0〜5の範囲にある整数である)、
・ −(CH−CH−O)n2−(式中、n2は1〜5の範囲にある整数である)、

【化3】



【化4】


(式中、n3は1〜5の範囲にある整数である)、

【化5】


− R基、R基、R基、R基、R基、R基、又はR基、R基、及びRはそれぞれ互いに独立に、水素原子、電子供与体基、又は電子吸引体基を表し、
− Xは、特に下記の鎖の中から選択されるスペーサーアームであり;
・ −(CHm1−(式中、m1は1〜6の範囲にある整数である)、

【化6】


(式中、m2及びm3はそれぞれ互いに独立に、1〜3にある整数であり、R’は水素原子又は(C〜C)アルキル基である)、
・ −C=(CH−CH−O)m4−(式中、m4は1〜3の範囲にある整数である)、
・ 1〜3種類のアミノ酸類を含むポリペプチド鎖、
・ −(CH=CH)m5−(式中、m5は1〜3の範囲にある整数である)、
− Mは、遷移金属、又はMg、Al、Sn、若しくはGeであり、
− Rは、水素原子、又はメチル基、エチル基、若しくはメトキシ基である。
【0037】
有利なことには、式(I)のモノマーは、互いに除外しない場合には下記の特性の1つ又は複数を有する。
− R基、R基、及びR基のうち少なくとも2つはそれぞれ独立に、アンモニウム、アミン、ポリアミン、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、及びホスファートの官能基の中から選択される、pHが5〜8である水溶液中でイオン化された若しくはイオン化可能な官能基であり、又はそれを含む、
− R基、R基、及びR基のうちただ1つ、好ましくはR基は、ポリヌクレオチド、特にオリゴヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗原、抗体、ハプテン、オリゴ糖、及びビオチンの中から選択される生体リガンドである、
− R基、R基、及びR基のうち少なくとも1つは、塩の形のN−メチルピリジニウム又は−COOHの形である、
− −A−R=−A−R、好ましくは−A−R=−A−R=塩の形のN−メチルピリジニウム又は:
【化7】


− −A−Rは下記の基である:
【化8】


− −A−R=−A−R=−A−R、好ましくは−A−R=−A−R=−A−R=塩の形のN−メチルピリジニウム、
− ピロールと金属ポルフィリンとの結合は、確実にピロールの3位で行われている、
− Rは水素原子である、
− R=R=R=R=R=R=R=R=H、
− R基、R基、R基、R基、R基、R基、R基、及びR基の少なくとも1つは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、(C〜C)アルキル基、(C〜C)アルケニル基、(C〜C)アルキニル基、及び(C〜C)アルコキシ基の中から選択される電子供与体基又は電子吸引体基である、
− 金属ポルフィリンの金属は、Co、Ni、Mg、Fe、Zn、Mn、Pd、Cu、Pt、V、Mo、Al、Sn、及びGeの中から、好ましくはCo、Zn、及びMnの中から選択される、
− モノマーはいずれの生体リガンドも含まない、
− Xは下記の基である:
【化9】

【0038】
金属ポルフィリンに存在するイオン化可能実体によって、金属ポルフィリンの疎水性にもかかわらず、水溶液に可溶なモノマーを得ることが可能になる。これらのイオン化可能実体は、存在している電解重合可能モノマーの特性を決して劣化させず、重合をおそらく水相で実施して、好ましくは伝導性であるポリマー層を形成する。
【0039】
さらに、錯化金属のタイプを選択することによって、所望の電気活性領域に対して選択された金属に応じて非常に広範囲の検出電位を得ることが可能である。このようにして得られたポリマーは電気活性が高く、検出電位が広範囲である。モノマー合成後の錯化金属の化学的性質、したがって電気化学活性領域におけるこの幅広い選択性によって、その後これらの検出系を多重化に使用することが可能になる。
【0040】
この電位範囲は、ポルフィリン環の置換基(供与体又は吸引体)の電子性を変えることによって広げることができる。例えば、本発明のポルフィリンのフェニル基又はピロール基を、有利にハロゲンの中から、並びにシアノ基、ニトロ基、(C〜C)アルキル基、及び(C〜C)アルコキシ基、(C〜C)アルケニル基、及び(C〜C)アルキニル基の中から選択される、酸化還元電位を改変することができる1つ又は複数の供与体基又は吸引体基で置換することが可能である。
【0041】
例として、ピロールで官能化されたトリカチオン性ポルフィリン、ピロールで官能化されたジアニオン性ポルフィリン、及び4つのメソ位が官能化されたポルフィリン(1つのメソ位がピロール基で官能化されて電気化学重合され、別のメソ位が活性エステル基で官能化されてプローブオリゴヌクレオチドをグラフトし、残りの2つのメソ位が2つのピリジニウム基で官能化されて水性媒体での溶解性が確実になる)の合成を下記に詳述する。これらの合成を本発明による他の化合物の調製に適応することは当業者の範囲内である。
【0042】
メソ位に−SOH基を有するポルフィリンの合成は、メソ位がフェニルで置換されているポルフィリンを濃硫酸で処理することからなる、Fleisher E.B.ら(J.Am.Chem.Soc.、1971、93、3162−3167)によって発表された方法を使用して行うことができる。引き続いて、トリメチルシリルフェニルポルフィリン基を有するポルフィリンを合成し、CISO SiMeの存在下でCCl中4時間還流することによってスルホン化を実施し、次いでNaOHの存在下で加水分解することからなる穏やかな方法が、Bao−Hui Yeら(Tetrahedron 2003、59、3593−3601)によって発表された。
【0043】
−OP(OH)基で置換されているポルフィリンの合成は、4ホルミルフェニルホスホナートを合成し、上述の所望のジピロメタンに縮合させ、続いてピリジンの存在下で加水分解することからなる、A.M.Massariら(Polyhedron、2003、22、3065−3072)によって記載された方法に従うことができる。
【0044】
吸引体基で置換されているポルフィリンの合成は、ホウ素について、例えばR.Kachadourainら(J.Inorganic.Biochemistry、2003、95、240−248)によって記載されており、クロロホルム中、液体二臭素の所望のポルフィリンに対する反応を用いる。
【0045】
当業者は、これらの方法を、所望のポルフィリンに到達するように適応させることができる。
【0046】
1)ピロールで官能化されたトリカチオン性ポルフィリンの合成
第1ステップは、フタルイミド基の形で保護されているアミン基で置換されているベンズアルデヒドの合成からなる。この反応は定量的である。例えば、下記のスキーム1に従って、3−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドを、炭酸カリウムの存在下3−ブロモプロピル−フタルアミドでアルキル化することによって実施する。
【化10】

【0047】
ポルフィリンの合成では、下記のスキーム2に示すAdlerらの方法(R.G.Little、J.A.Anton、P.A.Loach、J.A.Ibers、J.Heterocylic Chem.,1975,343;Journal of Organic Chemistry、1967(32)、476頁)に従って、先に合成されたフタルイミド基で置換されているベンズアルデヒド、4−ピリジン−カルボキサルデヒド、及びピロールをプロパン酸中で使用することができる。
【化11】

【0048】
6つのポルフィリンの混合物が得られる。これらをシリカゲルクロマトグラフィーで分離する。
【0049】
次いで、下記のスキーム3に従って、ジクロロメタン/エタノール混合物中、ヒドラジンで脱保護することによって、アミン官能基を得ることができる。
【化12】

【0050】
次いで、ポルフィリン−アミンとピロール酢酸とのペプチド結合を実施することができる。複数の合成経路が提案されており、下記のスキーム4に従う好ましい経路は、従来のカップリング剤N−ヒドロキシコハク酸イミドの存在下、ジシクロヘキシル−カルボジイミドの存在下でのカップリング反応からなる。このカップリング反応は、窒素が保護されていない(経路A)、又はトルエンスルホナート基(Tos)で窒素が保護されている(経路B)ピロール酢酸を使用して開発された。
【化13】


【化14】

【0051】
ポルフィリンのメタル化は、容易で且つ定量的である。下記のスキーム5に従って、一般にジメチルホルムアミド中、第2の酸化度で選択される金属塩化物の存在下で実施される。
【化15】

【0052】
最後の合成ステップでは、ポルフィリンのピリジル基をメチル化して、トリカチオン性にする。この反応は定量的であり、下記のスキーム6に従って、例えばDMF(ジメチルホルムアミド)中、大過剰のヨウ化メチルの存在下で行われる。
【化16】

【0053】
溶離液として水を用いてDOWEX−Clカラムに通すことによって、カウンターアニオン交換及び最終精製が行われる。
【0054】
2)ピロールで官能化されたジアニオン性ポルフィリンの合成
【化17】

【0055】
所望のポルフィリンは、3種類の異なる基でメソ置換されている。この場合、その合成のためのAdler法は、21種類のポルフィリンを分離する必要があるはずなのであまりよく適応していない。2つの異なる置換基がtransの位置にある場合、合成を次の2つのステップに分けることができる。ジピロメタンの合成(B.J.Littler、S.Lindsey、Journal of Organic Chemistry、1999(64)、1391頁;J.K.Laha、S.Lindsey、Organic Process Research Development、2003(7)、799頁)、次いでポルフィリン環の構築(D.T.Gryko、M.Tasior、Tetrahedron Letters、2003(44)、3317頁)。Rao O.D.、Dhanalekshmi S.、Littler B.J.、及びLindsey J.S.、Journal of Organic Chemistry、2000、65、7323−7344頁によって記載されているプロトコルに従うことも可能である。
【0056】
ジピロメタンの合成は、下記のスキーム7に従って、ルイス酸であるTFAの存在下で、対応するアルデヒドを、溶媒として使用されるピロールと反応させることによって実施することができる。
【化18】

【0057】
次いで、ポルフィリン環は、下記のスキーム8に従って、トリフルオロ酢酸(TFA)の存在下で、ジピロメタン2当量を必要な2つのアルデヒドのそれぞれ1当量と反応させることによって、Rao P.D.、Dhanalekshmi S.、Littler B.J.、及びLindsey J.S.、Journal of Organic Chemistry、2000、65、7323−7344頁に記載されているように構築することができる。例えば2,6−ジクロロ−3,5−ジシアノベンゾキノン(DDQ)を用いた酸化によって、環の共役が得られる。理論上は、合成の完了時に、混合物は、3つの異なるポルフィリンからなるはずである。
【化19】

【0058】
次いで、合成された3つのポルフィリンを、特にシリカゲルクロマトグラフィーによって分離することができる。
【0059】
次に、下記のスキーム9に従って、ヒドラジンで脱保護することによって、アミン官能基を得ることができる。
【化20】

【0060】
下記のスキーム10に従って、DCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)及びNHS(N−ヒドロキシコハク酸イミド)の存在下で、ポルフィリン−アミンとピロール−酸とのペプチド結合を実施する。
【化21】

【0061】
次いで、2つの−COOH基を有するポルフィリンを得るために、下記のスキーム11に従って、ニトリル基を塩基性媒体中で加水分解し、ポルフィリンを所望の金属でメタル化する。
【化22】

【0062】
3)ピロール基及び活性エステル基で官能化されたポルフィリンの合成:
【化23】

【0063】
明細書の残りの部分は、これらの4つのメソ位が官能化されたポルフィリン(1つのメソ位がピロール基で官能化されて電気化学重合され、別のメソ位が活性化エステル基で官能化されてオリゴヌクレオチドプローブをグラフトし、残りの2つのメソ位が2つのピリジニウム基で官能化されて水性媒体での溶解性が確実になる)の調製に関する。分子モデリング研究によって、ポルフィリンのパラ位にある2つの官能基ピロールと活性エステルを置換して、カップリング反応中に立体的遺伝子を回避することが好ましいと判明している。前記ポルフィリンの調製は、まずA官能基(エステル官能基でパラ置換されているフェニルを含むジピロメタン)及びB官能基(ピロール上で反応することができる官能基を有するスペーサーでパラ置換されているフェニルを含むジピロメタン)を有する2つのポルフィリン部分(ジピロメタン)を合成し、続いて環化反応を第3の基C(ピリジン−カルボキサルデヒド)の存在下で実施することによって実現することができる。この合成は、Lindseyらによって記載されている方法に従って実施される[D.T.Gryko、M.Tasior、Tetrahedron Letters、2003、44、3317;J.Littler、S.Lindsey、J.Org.Chem.、1999、64、1391;J.K.Laha、S.Lindsey、Org.Process Res.Develop.、2003、7、799]。
【0064】
2つのジピロメタンの合成は、対応するアルデヒドと、溶媒としてのピロール及びルイス酸としてのトリフルオロ酢酸(TFA)を使用して行うことができる。「ニトリル」アームを有するジピロメタンの場合、下記のスキーム12に従う操作モードに従うことができる。
【化24】

【0065】
「フタルイミド」アームを有するジピロメタンの場合、下記のスキーム13に従って反応を実施する。
【化25】

【0066】
TFAの存在下、2つのジピロメタン及びピリジン−カルボキサルデヒドから、ポルフィリン環が構築される。2,6−ジクロロ−3,5−ジシアノベンゾキノン(DDQ)を用いた酸化によって、環の共役を得ることができる(スキーム14)。合成の完了時に、反応混合物は、理論上、3つの異なるポルフィリンからなり、これらはシリカゲルクロマトグラフィーによって分離することができる。
【化26】

【0067】
合成中、ピロールの一部の官能基、特にアミン官能基を保護し、次いで脱保護することができる。アルコール、アミン、及びカルボン酸の保護基は、当業者に周知である。「Protective Groups in Organic Synthesis」第2版、Greene T.W.及びWuts P.G.M.編、John Wiley and Sons、1991を参照することができる。アミンのための保護基としては、例えばトリフルオロアセチル基、tert−ブトキシカルボニル基、又は9−フルオレニルメトキシカルボニル基を挙げることができる。
【0068】
4)ピロールで官能化されたジカチオン性ポルフィリン(26)の合成
ジアニオン性ポルフィリンの場合と同じ方式で、このジカチオン性ポルフィリンは、ほぼtrans軸に存在し、ODNプローブを受け入れる未来の結合手を模倣するメトキシ官能基を有する。
【化27】

【0069】
ジカチオン性モノマー(26)の一調製モードを、下記のスキーム15に示す。ポルフィリン環は3種類の異なる基で置換されているが、ほぼtrans軸に存在しているので、その合成に上述の(2+2)方法が使用される。上述のように、ポルフィリンに置換するアルコキシ鎖の末端アミンを、ポルフィリン環の構築中にフタルイミドの形で保護する。第1ステップは、ピリジルジピロメタン(21)の合成からなる。ポルフィリン環を構築し、アミンを脱保護した後(23)、アミンとピロール誘導体(1)を結合させる。最後に、メタル化及びペルメチル化反応によって、所望のジカチオン性モノマー26が得られる。
【化28】

【0070】
例えば、アミン又は−COOH型の少なくとも1つのイオン化された又はイオン化可能な反応性官能基を有する本発明のモノマーに関して、当業者に周知の技法を用いて、この官能基において生体リガンドとの結合を行うことが可能である。前記結合で得られたモノマーは、本発明の不可欠な部分である。
【0071】
アルデヒド、ヒドロキシル型の他の反応性官能基を有する金属ポルフィリンを中間体として生成することによって、生体リガンドを任意の適切な技法で添加することもできる。
【0072】
上述のように、本発明によるモノマーの使用によって、特に電極パッド上の生体分子をアドレス指定するために使用することができるポリマーの調製が可能になる。次いで、前記アドレス指定を単一ステップで実施することができる。
【0073】
本発明のモノマーは、水溶液中で重合できるという利点を有する。
【0074】
本発明の別の対象は、本発明のモノマーの少なくとも1つ、特に生体リガンドを有する少なくとも1つのモノマーを使用して、水溶液中で行われる電解重合方法である。電解重合は、NaCl、LiClOなどのキャリヤー電解質を有利に含有する緩衝溶液中で実施してもしなくてもよい。溶液のpHは3〜8であることが有利である。
【0075】
この電解重合は、単独重合、特に生体リガンドを有する本発明の可溶なモノマーを用いた単独重合とすることができる。単独重合は、反応性アミン、ヒドロキシル、又はカルボン酸官能基を場合によっては保護された形で有する本発明の可溶なモノマーを使用して行うこともできる。次いで、この単独重合の後に、前記反応性官能基と生体リガンドとの結合が続いてもよい。
【0076】
好ましくは、電解重合は、少なくとも2つの異なるモノマーの共重合であり、その少なくとも1つのモノマーは本発明によるものである。好ましくは、モノマーの少なくとも1つ、好ましくは1つのみが生体リガンドを有する。明らかに、本発明によるもの以外の使用モノマーは、水溶液に可溶である。共重合では、請求項1〜37のいずれか一項に記載の、金属が異なるモノマーを少なくとも2つ使用する。
【0077】
好ましい一変形によれば、少なくとも2つの異なる生体リガンドを有するポリマーが得られるように重合反応を実施する。
【0078】
使用モノマーがすべて、電解重合可能単位としてピロールを含むことも利点である。
【0079】
例えば、生体リガンドを有する本発明のモノマーと非置換ピロール若しくはピロール−3−アルカノールとの共重合、又は生体リガンド、非置換ピロール、若しくはピロール−3−アルカノールを含まない本発明のモノマーと3位に生体リガンドを有するピロールとの共重合を実施することができる。ピロール−3−アルカノールとしては、3−(ヒドロキシエチル)ピロールを挙げることができる。
【0080】
反応性アミン、ヒドロキシル、又はカルボン酸官能基を場合によっては保護された形で有する少なくとも1つの本発明による可溶なモノマーの共重合を実施することも可能である。水相でのこの共重合反応の後に、前記反応性官能基と生体リガンドとの結合が続くことが有利である。
【0081】
本発明の別の対象は、前記重合反応、場合によっては続いて生体リガンドとの結合によって得ることができるポリマーに関する。
【0082】
したがって、本発明の別の目的は、少なくとも1つの生体リガンドを有する本発明のポリマーに対応する電気活性プローブ、及び少なくとも一部分が前記プローブで被覆されており、生成がより容易であり、且つプローブリガンド/標的リガンドの相互作用のより直接的測定が可能になる電極を提供することである。
【0083】
「電気活性プローブ」は、標的リガンドとプローブが有するプローブリガンドとが特異的に相互作用する場合に電気化学応答が変更されるプローブを意味する。したがって、電気化学信号の変化は、被分析物との特異的相互作用の後に観察される。
【0084】
「標的リガンド」は、少なくとも1つの本発明のモノマーから得られた本発明によるポリマーのモノマー単位に固定されたプローブリガンドと特異的に相互作用することができ、したがってこのポリマーで検出することができる任意の分子を意味する。この標的リガンドは、例えばヌクレオチド、又はポリヌクレオチド、核酸、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、抗原、ペプチド、脂質、ステロイド、若しくは糖などの生体分子とすることができる。ポリマーが有するプローブリガンドは、検出対象の標的リガンドに特異的である。
【0085】
したがって、本発明の別の対象は、生体リガンドを有する本発明による可溶なモノマーの電解重合によって得ることができる導体ホモポリマーの形の電気活性プローブに関する。
【0086】
好ましくないが、反応性アミン、ヒドロキシル、又はカルボン酸官能基を場合によっては保護された形で有する本発明による可溶なモノマーの電解重合、続いて前記反応性官能基と生体リガンドとの結合によって得ることができる導体ホモポリマーの形の電気活性プローブは、本発明の不可欠な部分となる。
【0087】
好ましくは、本発明の対象は、少なくとも2つの異なるモノマーの共重合によって得ることができ、その少なくとも1つのモノマーが本発明によるものである導体コポリマーの形の電気活性プローブに関する。モノマーの少なくとも1つ、好ましくは1つのみが生体リガンドを有する。この方式では、感受性を改善する、生体プローブリガンドのスペーシングが得られる。特に、生体リガンド及び3−(ヒドロキシエチル)ピロールモノマーを有する本発明による可溶なモノマーが使用される。別の好ましいコポリマーは、生体リガンドを含まない本発明による可溶なモノマーと、生体リガンドを好ましくはピロールの3位に有するモノマー及び3−(ヒドロキシエチル)ピロールモノマーとの共重合によって得ることができる。
【0088】
ここで再び、好ましくない場合でも、反応性アミン、ヒドロキシル、又はカルボン酸官能基を場合によっては保護された形で有する少なくとも1つの本発明による可溶なモノマーの電解重合、続いて前記反応性官能基と生体リガンドとの結合によって得ることができる導体コポリマーの形の電気活性プローブは、本発明の不可欠な部分となる。
【0089】
その別の態様によれば、本発明の別の対象は、表面の全部又は一部分が上記に定義するものなどの電気活性プローブで被覆されている導体キャリヤーを含む電極に関する。
【0090】
本発明の別の対象は、試料と、先に定義するものなどプローブリガンドを有する電気活性プローブとをプローブリガンド/標的リガンドの相互作用に適した条件下で接触させ、試料との接触前後でプローブによって発生される電位又は電流の差を明示し、場合によっては定量化する、生体試料中の標的リガンドを検出する方法である。
【0091】
本発明のモノマーから得られたポリマーは、特に生体リガンドを固体キャリヤーにアドレス指定し、固定化する任意の用途で使用することができる。
【0092】
さらに特に、これらのポリマーはスタンドアロン型フィルムの形、又は電極上のフィルムの形で得ることができる。電極は、反応中に発生される電流を測定することによって、効果的に重合反応の進行を制御する。電極を使用して、その後のポリマーの電気化学応答を測定することもできる。したがって、本発明はまた、表面が本発明による生体リガンドで官能化された少なくとも1つの電気活性導体ポリマー、本発明による電気活性プローブで被覆されている、導体キャリヤーを含む電極に関する。
【0093】
従来技術では、電極用の導電性キャリヤーは周知であり、特に金属又は炭素誘導体の基板を挙げることができる。本発明による電極の製作では、一般に導電性キャリヤー上にポリマーを被着させる。電気化学重合を電極の表面で行って、本発明のポリマーでその表面が被覆された導電性キャリヤーを含む電極を得ることが有利である。本発明の有利な一実施形態では、金又は白金のキャリヤーの表面上にポリマー層を被着させることによって、電極が得られる。
【0094】
電極での電気化学重合反応を制限及び制御することが可能であるので、本発明のモノマーは、小さい表面上に生体リガンドを固定化及びアドレス指定することが可能である。このアドレス指定された電解重合によって、規則正しい小型ドットマトリックスが得られ、ドットはそれぞれ、限定された生体リガンドを有する。有利な一実施形態では、本発明はまた、電極マトリックスに関する。
【0095】
したがって、本発明は、少なくとも1つの本発明による電極を含む電極マトリックスにも関する。前記電極マトリックスは、一連のウェルを含み、各ウェルが電極に対応する解析カード又はチップの形とすることができる。
【0096】
有利な一実施形態では、マトリックスの異なる電極は異なる生体リガンドを有する。特定の一実施形態によれば、本発明は、固体キャリヤー上に固定された複数の電極又は微小電極に関し、これらの電極は、本発明によるコポリマーで被覆され、有利なことには異なる生体リガンドを有する。前記電極マトリックスは、本発明によるモノマーのアドレス指定された電解重合によって、特に生体リガンドを有するモノマーとリガンドで官能化されていないモノマーとの共重合によって有利に得ることができる。
【0097】
本発明の電極及び電極マトリックスを、特に試料中に存在している可能性があり、ポリマーが有する生体リガンドと特異的に反応する可能性がある被分析物の検出に使用することができる。
【0098】
本発明では、いずれのタイプの試料中でも標的リガンドを検出することが可能である。本発明の特定の一実施形態では、試料は生体試料である。有利なことには、この試料は診断のため患者から採取することができる。例えば、試料は、尿試料、血液、血清、又は血漿試料、体液の細胞抽出物とすることができる。プローブは電気活性であるので、その電気化学応答は、標的リガンドとポリマーが有するプローブリガンドとが特異的に相互作用する場合に変更される。したがって、本発明の電気活性導体ポリマーは、標的リガンドとの相互作用を電気化学信号に変換する。標的リガンドとポリマーが有するプローブリガンドとの特定の相互作用によって、標的リガンドを添加する前に得られた応答と比べて、検討中のポリマーの電気化学応答の変化が生じる。有利なことには、標的リガンドの検出が電気計測によって行われる。「電気計測」は、ポリマーの酸化電位の変動など、電位差タイプの変動の測定、又は電流タイプの変動の測定、すなわち所与の電位で観察された酸化電流の変動を意味する。これらの変動は、当業者に知られている方法に従って迅速に、感度よく、定量的に測定される。
【0099】
本発明の有利な一実施形態では、電気計測は電位又は電流の変動を測定することからなる。本発明の特定の一実施形態では、サイクリックボルタンメトリーが使用される。これは、電位範囲を一方向、次いで他方向に一定速度で走査することからなる電気分析法である。得られたボルタンペログラムは、被検電気化学系の電流応答を示し、その特徴付けを可能にする。
【0100】
電気計測による検出方法は、本発明のポリマーに好ましい。しかし、当業者に知られている他の従来の検出方法を使用することもできる。
【0101】
本発明の特に有利な一実施形態では、ポリマーの電解重合に使用される電極を用いて、標的リガンドとポリマーが有するプローブリガンドとの特定の相互作用の検出を実施することができる。例えば、ポリマーが有するオリゴヌクレオチドに相補的な核酸のハイブリッド形成を、本発明のポリマーを有する電極で電気計測によって検出することができる。
【0102】
オリゴヌクレオチドのハイブリッド形成は、検出された電気化学信号の変動を測定することによって、又は酵素反応を介して直接監視することができる。この場合、標的オリゴヌクレオチドは、例えばビオチンを含む。ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ及び酵素基質を添加した後、基質での又は電気化学信号による検出を実施することができる。
【0103】
同様に、電気化学信号の変動によって、特に抗体/抗原型及び抗体/タンパク質型のタンパク質/タンパク質相互作用を監視することが可能である。
【0104】
本発明のモノマーを用いて得ることができるポリマーを例えばPCR反応を監視する場合にホスファートイオンをアッセイするために使用して、例えばScience 2004、306、2048−2074に記載されているものなどの分子電子応用例で酵素の活性を調査することも可能である。
【0105】
本発明の特定の一実施形態では、電気活性ポリマーは様々なプローブ生体分子を含む。次いで、金属ポルフィリンは様々な金属によって錯体を形成し、それによって複数のタイプの標的分子の検出が可能になる。
【0106】
モノマーの調製、及び得られたポリマーの電気化学的特徴付けについて、下記の実施例を例として示す。
【0107】
A.モノマー調製の実施例:
I− 酸基及びアルコール基で置換されているピロールの合成(1H−ピロール−3−イル)酢酸(1)
【化29】

【0108】
3.37g(11.5mmol)の[1−(トルエン−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]メチルアセタートを、35mLのメタノール及び35mLの5N水酸化ナトリウム溶液に溶解する。反応媒体を4時間還流加熱し、濃縮乾固し、水に再溶解する。水相をジエチルエーテルで洗浄し、次いで氷浴中、6N塩酸溶液で、pHが約3になるまで徐々に酸性化する。水相をジエチルエーテルで抽出する。エーテル相を飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮乾固する。949mgの化合物(I)が白色結晶の形で得られる。収率66%。
【0109】
備考:化合物(I)をジエチルエーテルに溶かして貯蔵しなければならない。使用する前に、焼結ガラスフィルターを用いて溶液を濾過し、濃縮乾固しなければならない。
【0110】
モル質量 M(g.mol−1):125.13
TLC:CHCl/EtOH 95/5:R=0.16
H NMR:CDCl,δ(ppm):8.17(1H);6.78(2H;s);6.21(1H;s);3.58(2H;s)
【0111】
2−(1H−ピロール−3−イル)エタノール(2)
【化30】

【0112】
最少量の無水THF中5.0g(17mmol;1当量)の[1−(トルエン−4−スルホニル)−1H−ピロール−3−イル]メチルアセタートの溶液を、アルゴン中、60mLのTHF(ナトリウムで蒸留)及び12mL(24mml;1.4当量)の2M(BH)S(CHのTHF溶液の混合物に滴下する。反応媒体を4時間還流加熱し、次いで氷浴に置かれた100mLの6N水酸化ナトリウム溶液に、穏やかに注ぎ込んだ。水相をジクロロメタンで抽出する。次いで、有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮乾固する。混合物を、AcOEt/石油エーテルの4/6(v/v)混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0113】
粗生成物を60mLのメタノール及び60mlの5N水酸化ナトリウムに溶解する。反応媒体を3時間還流加熱し、次いで濃縮乾固し、酢酸エチル及び水に再溶解する。2相を分液する。水相を酢酸エチルで抽出する。有機相を水及び飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮乾固する。得られた生成物を水に可溶化し、セライトを用いて濾過する。720mgの化合物(2)が収率38%で得られる。
【0114】
M(g.mol−1):111.14
H NMR:CDOD,δ(ppm):6.61(1H;s);6.54(1H;s);5.96(1H;s);3.65(2H;t;7.5Hz);2.66(2H;t;7.5Hz)
【0115】
II−ピロール及び3つのピリジニウムで置換されているポルフィリンの合成
II−1 4−[1−プロポキシ−3−(N−フタルイミド)]ベンズアルデヒド(3)
【化31】

【0116】
アルゴン中、3.66g(30mmol;1当量)の4−ヒドロキシベンズアルデヒドを20mLのDMFに溶解し、8.3g(60mmol;2当量)のKCOを添加する。70℃で1時間攪拌した後、媒体は桃色になる。滴下漏斗を使用して、20mLのDMF中9.65g(36mmol;1.2当量)のN−(3−ブロモプロピル)フタルイミドの溶液を徐々に添加する。反応媒体を70℃で1時間、次いで90℃で2時間攪拌する。冷却した後、焼結ガラスフィルターを用いて媒体を濾過する。濾液を、沈殿するまでジクロロメタンで希釈し、次いで再度焼結ガラスを用いて濾過する。新たな濾液を濃縮乾固し、次いでジクロロメタンに再溶解する。有機相を水で2回、次いで飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮乾固する。10.03gの化合物(3)が得られ、さらに精製することなく使用される。
【0117】
M(g.mol−1):309.32
TLC:CHCL/MeOH 95/5:R=0.74
H NMR:CDCl,δ(ppm):9.80(1H;s);7.77(2H;dd;5.5Hz;3.1Hz);7.73(2H;d;8.8Hz);7.67(2H;dd;5.5Hz;3.1Hz);6.83(2H;d;8.8Hz);4.07(2H;t;6.4Hz);3.87(2H;t;6.4Hz);2.17(2H;qi;6.4Hz)。
【0118】
II−2 [5−(4−(3−(N−フタルイミド)−1−プロポキシ)フェニル]−10,15,20−トリ−ピリジン−4−イル]ポルフィリン(4)
【化32】

【0119】
225mLのプロパン酸に、4.30mL(45mmol;3当量)の4−ピリジン−カルボキサルデヒド及び4.64g(15mmol;1当量)の化合物(3)を溶解する。軽石を添加した後、温水器を使用して、反応媒体を10分間加熱還流する。
【0120】
滴下漏斗を使用して、20mLのプロパン酸中4.19mL(60mmol;4当量)の(蒸留した)ピロールの溶液を徐々に添加する。最初の数滴が添加されるとすぐに、媒体は黒色に変わる。反応媒体を1時間30分加熱還流する。薬匙半分のクロラニルを添加し、次いで媒体を還流下で30分間維持する。プロパン酸を完全に蒸発させる。最初に、CHCl/EtOHの9/1(v/v)混合物を用いてシリカで濾過した後、混合物を、600gのシリカゲルでクロマトグラフィーによって、CHClと増加比率のEtOH(1%から5%)を含有する混合物を用いて精製する。生成物を最少量のCHClに溶解した後、ヘキサンで沈殿させる。847mgの化合物(4)が収率6.9%で得られる。
【0121】
M(g.mol−1):820.92
TLC:CHCl/EtOH 95/5:R=0.17(第5ポルフィリン/6)
H NMR:CDCl,δ(ppm):9.04(6H;dd;4.4Hz;1.5Hz);8.95(2H;d;4.9Hz);8.85(4H;s);8.82(2H;d;4.9Hz);8.16(6H;d;4.4Hz);8.09(2H;d;8.3Hz);7.89(2H;dd;5.4Hz;2.9Hz);7.72(2H;dd;5.4Hz;2.9Hz);7.20(2H;d;8.3Hz);4.33(2H;t;6.4Hz);4.07(2H;t;6.4Hz);2.38(2H;qi;6.4Hz);−2.89(2H,s)
質量分析計(MS):陽イオンエレクトロスプレーイオン化:[M+H]=821。
【0122】
II−3 [5−(4−(3−アミノ−1−プロポキシ)フェニル−10,15,20−トリ−ピリジン−4−イル]ポルフィリン(5)
【化33】

【0123】
30mLのCHCl/EtOHの1/2(v/v)混合物に、800mg(0.97mmol;1当量)の化合物(4)及び0.5mL(9.75mmol;10当量)の64%ヒドラジン水溶液を溶解する。反応媒体を24時間加熱還流し、次いで周囲温度(AT)で24時間攪拌する。10%塩酸溶液を添加する。焼結ガラスを用いて、媒体を濾過し、濾液を10%水酸化ナトリウム溶液で、溶液が緑色から赤色に変わるまで中和する。CHCl/EtOH 95/5の95/5(v/v)溶液を使用して、水相を24時間にわたって連続抽出する。有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮乾固する。462mgの化合物(5)が収率69%で得られる。
【0124】
M(g/mol−1):690.81
TLC:CHCl/EtOH 9/1:R=0
H NMR:.CDCl,δ(ppm):9.05(6H;dd;4.4Hz;1.9Hz);8.97(2H;d;4.9Hz);8.86(4H;s);8.82(2H;d;4.9Hz);8.16(6H;;d;4.4Hz);8.10(2H;d;8.8Hz);7.30(2H;d;8.8Hz);4.37(2H;t;6.4Hz);3.14(2H;t;6.4Hz);2.17(2H;qi;6.4Hz);−2.86(2H;s)
MS:陽イオンエレクトロスプレーイオン化:;[M+H]=691;[M+2H]2+/2=346
【0125】
II−4 [5−(4−(3−(2−1H−ピロール−3−イル−アセチルアミノ)−1−プロポキシ)フェニル)−10,15,20−トリピリジン−4−イル]ポルフィリン(6)
【化34】

【0126】
アルゴン中、48mg(0.38mmol;1.2当量)の化合物(1)、ロータリーベーンポンプを使用して乾燥された78mg(0.38mmol;1.2当量)のジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC)、及び44mg(0.38mmol;1.2当量)のN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)を、2mLのCHClに溶解する。反応媒体を周囲温度で1時間攪拌して、活性エステルを得る。数滴のトリエチルアミンを加えた、2mLのCHCl中221mg(0.32mmol;1当量)の化合物(5)の溶液を徐々に添加する。媒体を3時間攪拌し、次いで焼結ガラスを用いて濾過し、濃縮乾固する。得られた混合物を、50gのシリカでフラッシュクロマトグラフィーによって、溶離液としてCHCl/EtOHの95/5(v/v)混合物を使用して精製する。252mgの化合物(6)が得られる。
【0127】
M(g.mol−1):797.93
TLC:CHCl/MeOH 85/15:R=0.64
H NMR 400MHz:CDOD,δ(ppm):8.99(m);8.91(m);8.29(m);8.10(d;7.7Hz);7.98(m);7.38(d;7.7Hz)
UV−Vis:DMF(200〜775nm)λ(nm):235;421(ソーレー);516、550、591、650(Q帯)
MS:陽イオンエレクトロスプレーイオン化:(M+2NH)=830
【0128】
11.5 化合物(6)のメタル化
【化35】


式中、M=Co
【0129】
1mLのDMFに、50mg(63μmol;1当量)の化合物(6)及び80mg(616μmol;10当量)のCoCl(ロータリーベーンポンプを使用して乾燥)を溶解する。反応媒体を80℃で2時間加熱し、次いで濃縮乾固する。混合物をエタノールに再溶解し、焼結ガラスフィルターを用いて濾過する。固体をMeOH/CHCl混合物で回収する。50mgの化合物(7)(式中、M=Co)[(7−Co)と称する]が、すなわち収率93%で得られる。
【0130】
M(g.mol−1):854.84
UV−Vis:ピリジン(200〜775nm)、λ(nm):255;341;440(ソーレー);559(Q帯)
【0131】
II−6 化合物(7)のメチル化
【化36】


式中、M=Co
【0132】
密閉雰囲気中、43mg(0.05mmol;1当量)の化合物(7−Co)を5mLのDMFに溶解し、0.6mL(10mmol;200当量)のヨウ化メチルを添加する。反応媒体を40℃で3時間攪拌し、次いで濃縮乾固し、水に再溶解する。混合物をイオン交換カラム(2gのDowec−Cl)に通し、次いで凍結乾燥する。38mgの化合物(8)(式中、M=Co)が、すなわち収率75%で得られる。質量分析によって、分子中に存在するアミンすべてにおいてメチル化された生成物が存在していることがわかる。
【0133】
M(g.mol−1);1034.36
MS:陽イオンエレクトロスプレーイオン化:[M−3Cl]3+=927
MALDI:[M−3Cl+3H]=930
UV−Vis:水(200〜775nm)、λ(nm):225;341;440(ソーレー);559(Q帯)
【0134】
II−7 化合物(6)のメチル化
【化37】

【0135】
100mg(0.125mmol;1当量)の化合物(6)を5mLのDMFに溶解し、次いで1.6mL(25mmol;200当量)のヨウ化メチルを添加する。反応媒体をATで18時間攪拌し、次いで濃縮乾固し、水に再溶解する。混合物をイオン交換カラム(10gのDowec−Cl)に通し、次いで凍結乾燥する。100mgの化合物(9)が、すなわち収率84%で得られる。質量分析によって、ピリジニウムにおいてのみメチル化されていることがわかる。
【0136】
M(g.mol−1):949.39
H NMR:318KのCDOD,δ(ppm):9.99(6H);9.73、9.61(8H);9.54(6H);8.63(2H);7.89(2H);7.4(1H);7.1(1H);6.6(1H);5.43(9H);4.86(2H);4.09(2H);(3.1);2.70(2H)。
UV−Vis:水(200〜800nm)、λ(nm):242;426(ソーレー);522(Q帯)
MS:M/Zエレクトロスプレー(M−1Cl/2)=877
【0137】
II−8 化合物(9)のメタル化
【化38】


式中、M=Mn
【0138】
20mLの水に、50mg(53μmol;1当量)の化合物(9)及び85mg(527μmol;10当量)のMnCl・2HOを溶解する。反応媒体を5時間加熱還流し、次いで濃縮乾固する。混合物を最少量のメタノールに溶解し、アセトニトリルで沈殿させ、焼結ガラスフィルターを用いて濾過する。固体をMeOH/HO混合物で回収する。
【0139】
M(g.mol−1):1002.31
UV−Vis:水(200〜800nm)、λ(nm):250;438(ソーレー);550(Q帯)
【0140】
III− 3つの異なる基で置換されているポルフィリンの合成
III−1 4−(4−ホルミルフェノキシ)ブチロニトリル(11)
【化39】

【0141】
アルゴン中、2.44g(20mmol;1当量)の4−ヒドロキシベンズアルデヒドを20mLのDMFに溶解し、5.53g(40mmol;2当量)のKCOを添加する。70℃で1時間攪拌した後、媒体は桃色になる。滴下漏斗を使用して、6mLのDMF中2.4mL(24mmol;1.2当量)の4−ブロモブチロニトリルの溶液を徐々に添加する。反応媒体を70℃で1時間、次いで90℃で2時間攪拌する。冷却した後、焼結ガラスフィルターを用いて媒体を濾過する。濾液を、沈殿するまでジクロロメタンで希釈し、次いで再度焼結ガラスフィルターを用いて濾過する。新たな濾液を濃縮乾固し、次いでジクロロメタンに再溶解する。有機相を水で2回、次いで飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮乾固する。4.15gの化合物(11)が得られ、さらに精製することなく使用される(定量的収率)。
【0142】
M(g.mol−1):189.22
TLC:CHCl/MeOH 9/1:R=0.55
H NMR:CDCl,δ(ppm):9.82(1H);7.77(2H;d;8.8Hz);6.94(2H;d;8.8Hz);4.11(2H;t;6.3Hz);2.56(2H;t;6.3Hz);2.12(2H;qi;6.3Hz)
【0143】
III−2 4−[4−(ビス−(1H−ピロール−2−イル)メチル)フェノキシ]ブチロニトリル(12)
【化40】

【0144】
アルゴン中、14mL(195.5mmol;25当量)の(蒸留した)ピロールに、1.48g(7.8mmol;1当量)の化合物(11)を溶解する。60μL(0.8mmol;0.1当量)のTFAを添加する。反応媒体をATで10分間攪拌する。10mL(1mmol)の0.1N水酸化ナトリウム溶液を添加する。溶液を水で希釈した後、水相を酢酸エチルで抽出する。有機相を水及び飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮乾固する。得られた混合物を、100gのシリカでクロマトグラフィーによって、溶離液としてCHCl/MeOHの95/5(v/v)溶液を使用して精製する。約1gの化合物(12)が、すなわち収率約42%で得られる。
【0145】
M(g.mol−1):305.38
TLC:CHCl/MeOH 99/1:R=0.57
H NMR:CDCl,δ(ppm):8.00(2H);7.21(2H;d;8.8Hz);6.94(2H;d;8.8Hz);6.69(2H;m);6.25(2H;m);5.97(2H;m);5.41(1H;s);4.07(2H;t;6.3Hz);2.56(2H;t;6.3Hz);2.12(2H;qi;6.3Hz)。
【0146】
III−3 2−[3−[4−(ビス−(1H−ピロール−2−イル)メチル)フェノキシ]プロピル]イソインドール−1,3−ジオン
【化41】

【0147】
アルゴン中、35mL(500mmol;25当量)の(蒸留した)ピロールに、6.19g(20mmol;1当量)の化合物(3)を溶解する。150μL(2mmol;0.1当量)のTFAを添加する。反応媒体をATで5分間攪拌する。2.4g(60mmol;3当量)の水酸化ナトリウム粉末を添加する。反応媒体をATで30分間攪拌し、焼結ガラスフィルターを用いて濾過し、ヘキサンで洗浄し、濃縮乾固する。得られた混合物を、400gのシリカでクロマトグラフィーによって、溶離液としてCHCl/MeOHの995/5(v/v)混合物を使用して精製する。約1.52gの化合物(13)が、すなわち収率約18%で得られる。
【0148】
M(g.mol−1):425.49
TLC:CHCl/MeOH 99/1:R=0.6
H NMR:CDCl,δ(ppm):8.21(2H);7.85(2H;m);7.75(2H;m);7.11(2H;d;8.3Hz);6.76(2H;d;8.3Hz);6.70(2H;m);6.20(2H;m);5.94(2H;m);5.40(1H;s);4.02(2H;t;6.1Hz);3.92(2H;t;6.1Hz);2.21(2H;qi;6.1Hz)。
【0149】
III−4 [5−[4−(3−(N−フタルイミド)−1−プロポキシ)フェニル]−15−[4−(3−シアノ−1−プロポキシ)フェニル]−10,20−トリ−ピリジン−4−イル]ポルフィリン(14)
【化42】

【0150】
500mLのCHClに、1.00g(3.27mmol;1当量)の化合物(12)、1.39g(3.27mmol;1当量)の化合物(13)、及び0.6mL(6.55mmol;2当量)の4−ピリジン−カルボキサルデヒドを溶解する。2mL(26.2mmol;8当量)のTFAを添加する。反応媒体をATで30分間攪拌する。250mLのTHF、3.6mL(26.2mmol;8当量)のトリエチルアミン、次いで2.22g(9.82mmol;3当量)のDDQのTHF溶液を添加する。反応媒体をATで3時間攪拌し、次いで濃縮乾固する。ジクロロメタンに再溶解し、中和するまでTFAを添加する。濃縮乾固し、最初にCHCl/EtOHの97/3(v/v)混合物を用いてシリカで濾過した後、混合物を、350gのシリカでカラムクロマトグラフィーによって、CHClと増加比率のEtOH(0.3%から0.5%)を含有する混合物を用いて精製する。得られた分画をプロトンNMRで分析し、正しい生成物が存在していることがわかる。
【0151】
M(g.mol−1):903.02
H NMR:CDCl,δ(ppm):8.85(8H;s);8.12(2H;d;8.8Hz);8.06(2H;d;8.8Hz);7.91(2H;dd;2.9Hz;5.4Hz);7.74(2H;dd;2.9Hz;5.4Hz);7.26(2H;d;8.8Hz);7.18(2H;d;8.8Hz);4.39(2H;t;6.2Hz);4.33(2H;t;6.5Hz);4.08(2H;t;6.5Hz);2.78(2H;t;6.2Hz);2.36(4H;m)。
【0152】
IV− ピロールで官能化されたジアニオン性ポルフィリンの合成
上述のスキーム7〜11に従って、合成を実施した。
【0153】
IV−1 5−(4−シアノフェニル)ジピロメタン(15)の合成
【化43】

【0154】
5−(4−シアノフェニル)ジピロメタン(15)の合成は、4−シアノベンズアルデヒドと、ピロール/アルデヒド比25/1及び0.1当量のTFAを周囲温度で10分間反応させることによって実施する。
【0155】
アルゴン中、3.28gの4−シアノベンズアルデヒド(25mmol;1当量)を44mL(630mmol;25当量)の(蒸留した)ピロールに溶解し、次いで0.2mL(2.5mmol;0.1当量)のTFAを添加する。反応媒体を周囲温度(AT)で10分間攪拌する。NaOH水溶液(30mL;0.1M)を添加する。混合物を酢酸エチルに希釈する。有機相をデカンテーションで分離し、中性になるまで水で洗浄し、次いで飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮乾固する。得られた混合物(7.83g)を、400gのシリカでクロマトグラフィーによって、溶離液としてCHClを使用して精製する。
【0156】
モル質量(g.mol−1):247.30(C1613
TLC:CHCl:R=0.4
H NMR:CDCl,δ(ppm):8.02(2H;s);7.60(2H;d;8Hz);7.31(2H;d;8Hz);6.73(2H;d;3Hz);6.16(2H;d;3Hz);5.85(2H;m);5.53(1H;s)。
【0157】
IV−2 ポルフィリン環(16)の構築
【化44】

【0158】
アルゴン中、2.47g(10mmol;2当量)の5−(4−シアノフェニル)ジピロメタン(15)、4−メトキシベンズアルデヒド(0.68g;5mmol;1当量)、及び1.55gの4−[1−プロポキシ−3−(N−フタルイミド)]ベンズアルデヒド(5mmol;1当量)をCHCl(1L)に溶解する。2.3mL(30mmol;6当量)のTFAを添加する。反応媒体を周囲温度で30分間攪拌する。次に、250mLのTHF、7mLのEtN(50mmol;10当量)、次いでDDQ(3.41g;15mmol;3当量)のTHF(250mL)溶液を添加する。反応媒体を周囲温度で2時間攪拌し、次いで濃縮乾固する。混合物(16.8)を、シリカゲルでCHCl/EtOHの99/1混合物を用いて濾過することによって精製する。得られた生成物(3.53g)を、400gのシリカでカラムクロマトグラフィーによって、CHCl混合物を用いて精製する。生成物(1.3g)を、もう一度シリカゲル(200g)でCHClを用いて精製する。ポルフィリン(16)(950mg)が得られる。
【0159】
M(g.mol−1):898.00(C5839
TLC:CHCl/MeOH 99/1:R=0.41
H NMR:CDCl,δ(ppm):8.94〜8.97(4H;2d;4.5Hz);8.74〜8.77(4H;2d;4.5Hz);8.28(4H;d;8Hz);8.13(2H;d;8.5Hz);8.07(2H;d;8.5Hz);7.98(4H;d;8Hz);7.78(2H;dd;5.5Hz;3Hz);7.58(2H;dd;5.5Hz;3Hz);7.29(2H;d;9Hz);7.16(2H;d;9Hz);4.24(2H;t;6Hz);4.07(3H;s);4.01(2H;t;6Hz);2.33(2H;qi;6Hz);−2.83(2H;広幅 s)。
質量分析計(MS):陽イオンエレクトロスプレーイオン化::188.0(100);[M]=898.3(30);[M+H]=899.3(19)
UV−Vis分光法:CHCl(350〜750nm)、λ(nm):422(ソーレー);518;552;592;648
【0160】
IV−3 アミン官能基の脱保護及びポルフィリン(17)の調製
【化45】

【0161】
アミン官能基は、先行するポルフィリンに使用する操作条件と比べて、異なる変更を行ってヒドラジンでの脱保護によって得られる。大過剰のヒドラジン(100当量)を使用し、反応媒体を60℃で24時間加熱する。
【0162】
ポルフィリン(16)(917mg;1.02mmol;1当量)を20mLのCHCl、次いで40mLのMeOHに溶解する。5mLの64% NHNH(102mmol;100当量)を添加する。反応媒体を60℃で24時間攪拌する。10% HCl溶液を、混合物が緑色に変わるまで添加する。次いで、溶液を濾過する。中性になるまで、水を添加する。溶液は紫色になる。CHCl及びMeOHを蒸発させる。溶液をCHClで数回抽出する。有機相を水で数回洗浄し、乾燥し、次いで濃縮乾固する。
【0163】
このジニトリルポルフィリン(17)の場合、水で洗浄することによって精製するための連続抽出アセンブリを使用する必要がないことに留意されたい。NMR分光法では、フタルイミド基の特徴である7.9及び7.7ppmにおける2本のシグナルが消失しているのが見られ、質量分析法では、プロピルオキシ鎖のエーテル架橋での分子断片に対応する711.2の主ピーク、及び768.3での[M+H]に対応するピーク(15%)が観測される。
【0164】
M(g.mol−1):767.90(C5037
TLC:CHCl/MeOH 95/5:R〜0
H NMR:CDCl,δ(ppm):8.93〜8.94(4H;2d;4.5Hz);8.73〜8.74(4H;2d;4.5Hz);8.31(4H;d;7.5Hz);8.12(2H;d;8Hz);8.10(2H;d;6Hz);8.04(4H;d;7.5Hz);7.30(2H;d;8H);7.27(2H;d;6Hz);4.34(2H;t;6.5Hz);4.10(3H;s);3.09(2H;t;6.5Hz);2.34(2H;qi;6.5Hz);−2.78(2H;s)
MALDI−TOFによる質量分析法(MS):[(ポルフィリン−O・)+2H]=711.2(100);[M+H]=768.3(15)
フーリエ変換赤外分光法(FTIR):ν(cm−1):3315;2930;2228;1604;1504;1472:1245;1173;982;966;790;734
【0165】
IV−4 ポルフィリン(17)とピロールのカルボン酸誘導体とのペプチド結合、ポルフィリン(18)の調製
ポルフィリン−アミン(17)とピロール−保護されていない酸とのペプチド結合は、スキーム16に従ってDCC/NHSの存在下で実施される。
【化46】

【0166】
中性アルミナゲルで精製を行って、シリカゲルでは起こるはずの化合物(18)の重合を防止し、トリエチルアミンを溶離液に添加する(上述)ことを回避する。ポルフィリンは、純度についてNMR分光法で特徴付けられ、特徴付けられていない907.0の主ピークと[M]及び[M+H]で875.1(65%)及び876.1(50%)にそれぞれ対応するピークとが存在していることがMALDI質量分析法で特徴付けられる。
【0167】
IV−5 化合物(18)のニトリル基のメタル化及び加水分解反応
メタル化ジアニオン性ポルフィリンを得るために、2つの反応:メタル化と加水分解をいずれの好ましい順序でも行うことができる。しかし、ポルフィリンと様々な金属で錯体形成することが望ましい場合、まず加水分解を行うことがより有利である。それにもかかわらず、この場合には、分子のカルボキシラート官能基は、金属塩を錯体形成し、反応性及び精製の問題が生じる可能性がある。したがって、加水分解する前に、メタル化を実施した。
【0168】
IV−5−1 メタル化、及びポルフィリン(19)の調製
【化47】

【0169】
ポルフィリン(18)を、DMF中、所望の金属塩の酢酸塩と40℃で24時間反応させる。
【0170】
所望の金属:コバルト、鉄、マンガン、及び亜鉛で錯体形成された複数の金属ポルフィリンを、金属に応じて収率94%〜100%で合成した。金属の付加は、UV−Vis分光法で4つのQ帯のうち2つの消失、並びにソーレー帯の422nmから419nmへのシフト(コバルト)、414nmへのシフト(鉄)、466nmへのシフト(マンガン)、及び428nmへのシフト(亜鉛)を観察することによって確認した。MALDI質量分析法では、コバルトポルフィリンは、[M+H]で932.3に対応する主ピークを示し、マンガンポルフィリンは、[M]で927.3に対応する主ピークを示す。
【0171】
操作モード
操作モード(M=Coの場合)
化合物(18)(350mg;0.4mmol;1当量)及びCo(アセタート)・4HO(5g;20mmol;50当量)を、アルゴン中、DMF(20mL)に溶解する。反応媒体を50℃で24時間加熱し、次いで濃縮乾固する。生成物を酢酸エチルに溶解し、有機相を水で数回洗浄する。濃縮した後、化合物(19)−Co(355mg)が得られる。
【0172】
M(g.mol−1):931.93(C56CoH40
TLC:CHCl/MeOH 95/5:R=0.35
MS:MALDI−TOF:[M+H]=932.3(100);[M+Na]=954.3(59);[M]=931.3(52)
UV−Vis:DMF(350〜750nm)。λ(nm):419(ソーレー);532
【0173】
M=Feの場合
化合物(18)(50mg;57μmol;1当量)及びFeCl・4HO(568mg;2.9mmol;>50当量)を、アルゴン中、DMF(5mL)に溶解する。反応混合物を50℃で48時間加熱し、次いで濃縮乾固する。生成物を酢酸エチルに溶解し、有機相を水で数回洗浄する。濃縮した後、化合物(19)−Fe(50mg)が得られる。
【0174】
M(g.mol−1):928.84(C5640FeN
TLC:CHCl/MeOH 85/15:R=0.67
MS:MALDI−TOF:568.1(100);[M+Na]=951.2(33);[M+H]=929.3(31);[M+35Cl]=963.3(16)
UV−Vis:DMF(350〜750nm)。λ(nm):414(ソーレー);574;622;649
【0175】
IV−5−2 ニトリル基の加水分解、及び金属ポルフィリン(20)の調製
【化48】

【0176】
ニトリル基からカルボン酸への加水分解反応は、一般にS.Gobbiらの研究でのものなどの酸性媒体中で実施される[Gobbi S.、Rampa A.、Bisi A.、Belluti F.、Valenti P.、Caputo A.、Zampiron A.、及びCarrara M.、「Synthesis and Antitumor Activity of New Derivatives of Xanthen−9−one−4−acetic Acid」、Journal of Medicinal Chemistry、2002、45、4931−4939頁]。しかし、酸性媒体に強い感受性を示すピロール置換基が分子中に存在する化合物(20)の調製では、加水分解を塩基性媒体中で実施することが有利である[Cignarella G.、Barlocco D.、Rossi G.及びRossi E.、「Spirocyclopropane Carboxylic Acids Derived from 1−Tetralone and 4−Chromanone and their Conversion to the Corresponding Pyridazinones」、Synthesis、1990、160−162頁;Furstner A.、Stelzer F.、Rumbo A.、及びKrause H.、「Total Synthesis of the Turrianes and Evaluation of Their DNA−Cleaving Properties」、Chemistry−A European Journal、2002、8、1856−1871頁]。プロトコル:塩基としてのHO、水−アルコール混合物、及び加熱還流は、すべて似ている。唯一の相違点は、使用するカウンターカチオン(K、Na、Li)に対して決定されるこの塩基の強さである。
【0177】
赤外分光光度法による分析によって、ニトリル基の特徴である2228cm−1における帯が完全に消失していることがわかる。
【0178】
操作モード(M=Coの場合)
化合物(19)−Co(355mg;0.4mmol;1当量)を、メタノール(20mL)中KOHの溶液(1N)に溶解する。反応混合物を50℃で24時間加熱し、次いで濃縮乾固する。生成物を水に溶解し、酢酸エチルを添加する。中和されるまで、1N HCl溶液を添加する。中和中、ピロールの重合を防止するようにpHを制御する。
【0179】
生成物を酢酸エチルで抽出し、有機相を水で洗浄する。濃縮した後、化合物(20)−Co(237mg)が得られる。
【0180】
M(g.mol−1):969.93(C56CoH42
MS:MALDI−TOF:[(ポルフィリンCN/COOH)+H+31]=982.2(100);[M+31]=1000.2(97);[M+H+31]=1001.2(86);[(ポルフィリンCN/COOH−O・)+H]=785.2(86);[(ポルフィリンCN/COOH)+31]=981.2(25);[(ポルフィリン−O・)+H]=804.2(25);[M]=969.2(21);[(ポルフィリンCN/COOH)+H]=951.2(19);[M+H]=970.2(16)
UV−Vis:DMF(350〜750nm)。λ(nm):420(ソーレー);536
FTIR:ν(cm−1):3381;2924;1714;1655;1247;1017;952;757
【0181】
V− ピロールで官能化されたジカチオン性ポルフィリン(26)の合成
ジカチオン性モノマー(26)の合成経路は上述のスキーム15に示す。
【0182】
V−1 5−(4−ピリジル)ジピロメタン(21)の合成
5−(4−ピリジル)ジピロメタンの合成は、異なる方法に従って実施することができる。J.−W.Ka及びC.−H.Leeによって使用される操作条件[Ka J.−W.及びLee C.−H.、「Optimizing the synthesis of 5,10−disubstituted tripyrromethanes」、Tetrahedron Letters、2000、41、4609−4613頁]は、ピロール/アルデヒド比5/1と共に、0.1当量のTFAを使用して周囲温度で5分間攪拌することを含む。得られた35%という低収率は、窒素ヘテロ環のプロトン付加によるものであり、それによって、媒体中の酸触媒の品質が低下し、多数の二次生成物が生じる。D.Gryko及びJ.S.Lindsey[Gryko D.及びLindsey J.S.、「Rational Synthesis of Mesa−Substituted Porphyrins Bearing One Nitrogen Heterocyclic Group」、Journal of Organic Chemistry、2000、65、2249−2252頁]は、ブレンステッド酸を使用しない別のプロトコルを提案した。彼らは、ピロール/アルデヒドの14/1混合物を85℃に15時間加熱することによって5−(4−ピリジル)ジピロメタンの合成を実施した(収率58%)。
【0183】
酸を高温で使用することなく、スキーム17で記載の操作条件に従って、5−(4−ピリジル)ジピロメタン(21)を調製した。
【化49】

【0184】
V−2 ポルフィリン環(22)の構築
スキーム18に従って、D.T.Gryko及びM.Tasiorによる上述の同じ操作条件下(5−ピリジルジピロメタンと5当量のTFA、周囲温度で30分間)で、2つの異なるアルデヒド:化合物(6)及び4−メトキシベンズアルデヒドを使用して、ポルフィリン環の構築を実施した。
【化50】

【0185】
次いで、3つのポルフィリンの混合物から、所望のポルフィリン(22)をシリカクロマトグラフィーによって単離する。ポルフィリンをNMR分光法で特徴付けた。
【0186】
V−3 アミン官能基の脱保護
ポルフィリン(23)のアミン官能基は、100当量のヒドラジンを用いて脱保護することによって得る(スキーム19)。
【化51】

【0187】
ポルフィリン(23)は、NMR及びMALDI質量分析法で、[M+H]で720.3に対応する主ピークが存在することが特徴付けられた。
【0188】
V−4 アミノポルフィリン(23)とピロールのカルボン酸誘導体(1)とのペプチド結合
アミン−ポルフィリン(23)と保護されていないピロール酸(1)とのペプチド結合を、DCC/NHSの存在下(スキーム20)、上記のモノマーと同じ操作条件下で実施する。
【化52】

【0189】
NMR及びMALDI質量分析法で、[M+Na+H]2+に対応する850.3における主ピーク、及び[M+Na]に対応する849.3(87%)におけるピークが存在する結合を監視した。
【0190】
V−5 ピリジル基のメタル化及びペルメチル化反応
上述のモノマーに関して、メタル化及びペルメチル化反応をいずれの好ましい順序でも行うことができるが、異なる金属を使用することが望ましい場合、まずメチル化することが常に好ましい。したがって、ペルメチル化反応を実施し、次いで異なる金属用に別々のバッチに分け、最後に水溶性ポルフィリンをメタル化することを選択した。
【0191】
V−5−1 メチル化
大過剰のヨウ化メチルを用いて、2つのピリジル基のペルメチル化反応を40℃で実施する(スキーム21)。
【化53】

【0192】
ポルフィリンを水溶性にするために、ジヨウ素化合物をDowex−Clカラムに通して、ヨージドをクロリドカウンターアニオンに交換する。この反応は定量的である。
【0193】
雰囲気中、化合物(24)(26mg;31μmol;1当量)をDMF(6mL)に溶解し、ヨードメタン(0,4mL;6.3mmol;200当量)を添加する。反応混合物を周囲温度で48時間攪拌し、次いで濃縮乾固し、水に溶解する。混合物をDowex−Clイオン樹脂交換カラムに通し、凍結乾燥する。57mgの化合物(25)を単離する。
【0194】
M(g.mol−1):927.94(C5448Cl
MS:MALDI−TOF:(M(−2Cl)+Na]=879.4(100);[(ポルフィリン−O・)(−2Cl)+H]=692.3(10)
UV−Vis:DMF(350〜750nm)、λ(nm):428(ソーレー);521;559;599;655
【0195】
V−5−2 メタル化
極めて大過剰の所望の金属の酢酸塩を用いて、ポルフィリンのメタル化をDMF中40℃で行う(スキーム22)。
【化54】

【0196】
UV−Vis分光法でソーレー帯が428nmに468nmにシフトしていることによって、大員環に金属が挿入されていることを検証した。
【0197】
沈殿によって、水溶性金属ポルフィリンから残留金属塩を分別する。水溶液では、過剰のヘキサフルオロホスファートアニオンを添加すると、ポルフィリンの沈殿が起こる。濾過した後、Dowex−Clカラムに通すことによって、可溶な金属ポルフィリンをクロリドカウンターアニオンで回収することが可能になる。実際に、ヨージドカウンターアニオンは、ポルフィリンを水溶液中で不溶にするには十分な程度に存在している。したがって、メチル化した後、ステップを進めるために、分子(25)をDowex−Clカラムに通さないことは興味深いことがある。
【0198】
化合物(25)(47mg;51μmol;1当量)及び乾燥Mn(アセタート)・4HO(750mg;3.1mmol;100当量)を、アルゴン中、DMF(5mL)に溶解する。反応混合物を50℃で48時間加熱し、次いで濃縮乾固する。混合物を水に溶解する。ポルフィリンを沈殿させるために、NHPFを添加する。濾過し、水で洗浄した後、生成物を水に溶解する。混合物をDowex−Clイオン樹脂交換カラムに通し、凍結乾燥する。35mgの化合物(26)−Mnを単離する。
【0199】
M(g.mol−1):980.86(C5446ClMnN
MS:MALDI−TOF:[M(−2Cl)+Na−H]=931.3(100);[M(−2Cl)+Na)=932.3(60);[M(メタル化されていない)(−2Cl)+Na]=879.4(60);[(ポルフィリン−O・)(−2Cl)+H]=759.3(25)
UV−Vis:DMF(350〜750nm)、λ(nm):429;468(ソーレー);524;573;632
【0200】
B.電気化学的特徴付け
付属の図1〜7について説明する。
【0201】
I− 4つのメソ位がピリジニウム基で置換され、様々な金属で錯体形成されたポルフィリン
この電気化学的分析を水性媒体中、0.5M NaClの存在下で実施する。図1は得られたボルタモグラムを示す。酸化還元電位は、金属の化学的性質に応じて−0.9V/ECS〜+0.9V/ECSの広範囲の電位にわたって非常に異なることが明らかである。したがって、使用する金属に対してポルフィリンの電気活性を約2Vに相当する広範囲の電位にわたって調節することが可能である。というのは、選択された錯化金属に応じて、酸化還元電位は極めて異なるからである。
【0202】
II− 含まれているトリカチオン性ポルフィリンの電気化学的分析
電気化学的分析は、まず直径1cmの白金マクロ電極で実施する。様々な重合試験は、0.9Vの一定電位で、0.5M塩化ナトリウム水溶液中、式(10)の亜鉛、コバルト、及びマンガンポルフィリンを用いて実施する。
【化55】


被着フィルムを0.5M塩化ナトリウム水溶液中、サイクリックボルタンメトリーで分析する。
【0203】
II−1 亜鉛ポルフィリン
0.9Vの電位を、0.5M塩化ナトリウム水溶液及び3mM亜鉛モノマー−金属ポルフィリンに30分間加える。電荷は20mCである。被着フィルムを0.5M塩化ナトリウム水溶液中、サイクリックボルタンメトリーで分析する(図2)。フィルムの分析によって、可逆的酸化還元対の酸化電位が+0.05Vであり、還元電位が−0.12Vであることがわかる。
【0204】
次に、フィルムの安定性を試験するために、フィルムを水溶液に12時間浸したままにして、次いで0.5M塩化ナトリウム水溶液中、サイクリックボルタンメトリーで分析する(図3)。フィルムの分析によって、ポリピロールに関係する酸化還元系が上述と同じ電位、すなわち酸化電位+0.08V、及び還元電位−0.13Vで存在することがわかる。酸化電位+0.45V、及び還元電位+0.40Vの第2の可逆的酸化還元対が観察される。
【0205】
II−2 コバルトポルフィリン
0.9Vの電位を、0.5M塩化ナトリウム水溶液及び12mM 式(10)のコバルトモノマー−金属ポルフィリンに30分間加える。被着電荷は325mCである。被着フィルムを0.5M塩化ナトリウム水溶液中、サイクリックボルタンメトリーで分析する(図4)。フィルムの分析によって、可逆的酸化還元対の酸化電位が+0.05Vであり、還元電位が−0.12Vであり、ポリピロール系に対応することがわかる。
【0206】
続いて、フィルムの安定性を試験するために、フィルムを水溶液に浸したままにして、次いで0.5M塩化ナトリウム水溶液中、サイクリックボルタンメトリーで分析する(図5)。フィルムの分析によって、ポリピロールの可逆的酸化還元対の酸化電位が+0.01Vであり、還元電位が−0.13Vであり、水和後の電気活性が改善されていることがわかる。フィルムの分析によって、コバルトポルフィリンの酸化電位が+0.42Vであり、還元電位が+0.35Vである電気化学信号も示されている。+0.42Vにおける酸化波でCo(I)/Co(II)とCo(II)/Co(III)の2つの系を作製することも可能である。
【0207】
II−3 マンガンポルフィリン
0.9Vの電位を、0.5M塩化ナトリウム水溶液及び4mM 式(10)のマンガンモノマー−金属ポルフィリンに30分間加える。被着電荷は40mCである。被着フィルムを0.5M塩化ナトリウム水溶液中、サイクリックボルタンメトリーで分析する(図6)。フィルムの分析によって、酸化電位が+0.07であるポリピロールの電気化学信号が示されている。フィルムの分析によって、マンガンポルフィリンの可逆的酸化還元対の酸化電位が−0.22Vであり、還元電位が−0.29Vであることもわかる。
【0208】
II−4 チップの試験
式(10)のコバルトポルフィリンの50mM溶液を、0.7Vの一定の電位で、3−(ヒドロキシエチル)ピロールを50mM溶液として存在させて共重合する(図7)。重合試験及び分析は、8個のパッドからなる炭素電極を有するチップで、400mM塩化ナトリウム及び100mM過塩素酸リチウムの溶液を用いて実施する。複数の重合波が観察される。図7に示す重合曲線は、コポリマーが電極上に被着していることを示唆している。
【0209】
II−5 ピロールで官能化されたジアニオン性ポルフィリン(20)−Znの電解重合
亜鉛二酸ポルフィリン(20)−Znで官能化されたピロールモノマーの水溶液が、約2mMの濃度で得られる。モノマーの電解重合は、7mmの白金電極を使用して、500mM NaCl及び水酸化ナトリウムを含有するモノマー水溶液中、900mV/ECSの一定の電位を加えることによって行う。重合曲線を図8に示す。
【0210】
白金電極の表面上に被着された最終電荷は6mC.cm−2である。次いで、この表面の分析を、0.5M NaClを含有するモノマーを含まない水溶液中で実施する(走査速度100mV/s)(図9)。図9に示すボルタモグラムによって、644mV/ECSと257mV/ECSにおける2つの波はポリピロールの酸化還元に対応することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】水性媒体中、0.5M NaClの存在下、異なる金属で錯体形成されたmeso−テトラメチル−ピリジニウミル−ポルフィリンのボルタモグラムである。走査速度100mV/s。
【図2】亜鉛トリカチオン性ポルフィリンで官能化されたポリピロールフィルムのボルタモグラムである。
【図3】亜鉛トリカチオン性ポルフィリンで官能化されたポリピロールフィルムの緩衝溶液中12時間後のボルタモグラムである。
【図4】コバルトトリカチオン性ポルフィリンで官能化されたポリピロールフィルムのボルタモグラムである。
【図5】コバルトトリカチオン性ポルフィリンで官能化されたポリピロールフィルムの緩衝溶液中12時間後のボルタモグラムである。
【図6】マンガントリカチオン性ポルフィリンで官能化されたポリピロールフィルムのボルタモグラムである。
【図7】0.7Vでのコバルトポルフィリンとの共重合を示すグラフである。
【図8】亜鉛二酸ポルフィリンで官能化されたピロールモノマーの900mV/ECSでの重合を示すグラフである。
【図9】亜鉛二酸ポルフィリンで官能化されたポリピロールフィルムのボルタモグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中で重合されるよう意図されている電解重合可能モノマーにおいて、
アセチレン、ピロール類、チオフェン類、インドール類、アニリン類、アジン類、p−フェニレンビニレン類、p−フェニレン類、ピレン類、フラン類、セレノフェン類、ピリダジン類、カルバゾール類、アクリラート類、メタクリラート類、及びそれらの誘導体の中から選択される電解重合可能単位と、
水溶液中でイオン化された又はイオン化可能な少なくとも2個の実体で置換されている金属ポルフィリンと
を含むモノマー。
【請求項2】
金属ポルフィリンが、水溶液中でイオン化された又はイオン化可能な3個の実体で置換されていることを特徴とする、請求項1に記載のモノマー。
【請求項3】
少なくとも10mMまでの濃度、好ましくは少なくとも30mMまでの濃度で蒸留水に可溶であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のモノマー。
【請求項4】
金属ポルフィリンが、金属ポルフィリンのメソ位に配置されている、水溶液中でイオン化された又はイオン化可能な少なくとも2個の実体で置換されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項5】
イオン化実体又はイオン化可能実体が、アンモニウム、ポリアミン、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、及びホスファートの官能基の中から選択される、pHが3〜8である水溶液中でイオン化された又はイオン化可能な官能基を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項6】
金属ポルフィリンを置換するイオン化実体又はイオン化可能実体の2つが、塩の形のN−メチルピリジニウム基又は−COOH官能基を含むことを特徴とする、請求項5に記載のモノマー。
【請求項7】
金属ポルフィリンを置換するイオン化実体又はイオン化可能実体の2つが、同一であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項8】
金属ポルフィリンが、水溶液中でイオン化された又はイオン化可能な少なくとも2個の異なる実体で置換されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項9】
金属ポルフィリン、特にそのメソ位の1つが、生体リガンド、好ましくはポリヌクレオチド、とりわけオリゴヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗原、抗体、ハプテン、オリゴ糖、及びビオチンの中から選択される生体リガンド、好ましくはポリヌクレオチドで置換されていることを特徴とする、請求項8に記載のモノマー。
【請求項10】
電解重合可能単位と金属ポルフィリンとの結合が、スペーサーアームを介して行われていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項11】
電解重合可能単位と金属ポルフィリンとの結合が、金属ポルフィリンのメソ位で行われていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項12】
電解重合可能単位がピロールであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項13】
ピロールと金属ポルフィリンとの結合が、確実にピロールの3位で行われていることを特徴とする、請求項12に記載のモノマー。
【請求項14】
金属ポルフィリンが、1つ又は複数の電子供与体基又は電子吸引体基でも置換されていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項15】
1つ又は複数の電子供与体基又は電子吸引体基が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、(C〜C)アルキル基、(C〜C)アルケニル基、(C〜C)アルキニル基、及び(C〜C)アルコキシ基の中から選択されることを特徴とする、請求項14に記載のモノマー。
【請求項16】
金属ポルフィリンの金属が、遷移金属、又はMg、Al、Sn、若しくはGeであることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項17】
金属が、Co、Ni、Mg、Fe、Zn、Mn、Pd、Cu、Pt、V、Mo、Al、Sn、及びGeの中から選択され、Co、Zn、及びMnが好ましいことを特徴とする、請求項16に記載のモノマー。
【請求項18】
いずれの生体リガンドも含まないことを特徴とする、請求項1〜8、又は10〜17のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項19】
式(I)のモノマー
【化1】


[式中、
基、R基、及びR基は互いにそれぞれ独立に、水素原子、水溶液中でイオン化された若しくはイオン化可能な基、又は生体リガンドであり、但し、R基、R基、及びR基のうち少なくとも2つが同じか異なるイオン化された又はイオン化可能な基であるということを条件とし、
、A、及びAは互いにそれぞれ独立に、スペーサーアーム、特に下記の鎖の中から選択されるスペーサーアームを表し:
−(CHn1−(式中、n1は0〜5の範囲にある整数である)、
−(CH−CH−O)n2−(式中、n2は1〜5の範囲にある整数である)、
【化2】


【化3】


(式中、n3は1〜5の範囲にある整数である)、
【化4】


基、R基、R基、R基、R基、R基、又はR基、R基、及びR基はそれぞれ互いに独立に、水素原子、電子供与体基、又は電子吸引体基であり、
Xは、スペーサーアーム、特に下記の鎖の中から選択されるスペーサーアームであり:
−(CHm1−(式中、m1は1〜6の範囲にある整数である)、
【化5】


(式中、m2及びm3はそれぞれ互いに独立に、1〜3の範囲にある整数を表し、R’は水素原子又は(C〜C)アルキル基を表す)、
−(CH−CH−O)m4−(式中、m4は1〜3の範囲にある整数を表す)、
1〜3種類のアミノ酸類を含むポリペプチド鎖、
−(CH=CH)m5−(式中、m5は1〜3の範囲にある整数である)、
Mは、遷移金属、又はMg、Al、Sn、若しくはGeであり、
Rは、水素原子、又はメチル基、エチル基、若しくはメトキシ基である]。
【請求項20】
基、R基、及びR基のうち少なくとも2つはそれぞれ独立に、アンモニウム、アミン、ポリアミン、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、及びホスファートの官能基の中から選択される、pHが3〜8である水溶液中でイオン化された若しくはイオン化可能な官能基を含む、又はそれを表すことを特徴とする、請求項19に記載の式(I)のモノマー。
【請求項21】
基、R基、及びR基のうちただ1つ、好ましくはR基が、ポリヌクレオチド、特にオリゴヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗原、抗体、ハプテン、及びビオチンの中から選択される生体リガンドを表すことを特徴とする、請求項19又は20に記載の式(I)のモノマー。
【請求項22】
基、R基、及びR基のうち少なくとも1つが、塩の形のN−メチルピリジニウム又は−COOHの形であることを特徴とする、請求項19〜21のいずれか一項に記載の式(I)のモノマー。
【請求項23】
−A−R=−A−Rであることを特徴とする、請求項19〜22のいずれか一項に記載の式(I)のモノマー。
【請求項24】
−A−R=−A−R=塩の形のN−メチルピリジニウム又は下記であることを特徴とする、請求項23に記載の式(I)のモノマー。
【化6】

【請求項25】
−A−Rが下記の基を表すことを特徴とする、請求項19、20、又は22〜24のいずれか一項に記載の式(I)のモノマー。
【化7】

【請求項26】
−A−R=−A−R=−A−Rであることを特徴とする、請求項19、20、又は22〜24のいずれか一項に記載の式(I)のモノマー。
【請求項27】
−A−R=−A−R=−A−R=塩の形のN−メチルピリジニウムであることを特徴とする、請求項26に記載の式(I)のモノマー。
【請求項28】
基、R基、及びR基のうち少なくとも2つはそれぞれ独立に、アミン官能基又はカルボン酸官能基を表すことを特徴とする、請求項19又は20に記載の式(I)のモノマー。
【請求項29】
ポリヌクレオチドの中から、特にオリゴヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗原、抗体、ハプテン、及びビオチンの中から選択される生体リガンドを金属ポルフィリンに存在するアミン官能基又はカルボン酸官能基上に結合させることによって、請求項28に記載のモノマーから得られるモノマー。
【請求項30】
ピロールと金属ポルフィリンとの結合が、確実にピロールの3位で行われていることを特徴とする、請求項19〜29のいずれか一項に記載の式(I)のモノマー。
【請求項31】
Rが水素原子を表すことを特徴とする、請求項19〜30のいずれか一項に記載の式(I)のモノマー。
【請求項32】
=R=R=R=R=R=R=R=Hであることを特徴とする、請求項19〜31のいずれか一項に記載のモノマー。
【請求項33】
基、R基、R基、R基、R基、R基、R基、及びR基のうちの少なくとも1つが、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、(C〜C)アルキル基、(C〜C)アルケニル基、(C〜C)アルキニル基、及び(C〜C)アルコキシ基の中から選択される電子供与体基又は電子吸引体基を表すことを特徴とする、請求項19〜32のいずれか一項に記載の式(I)のモノマー。
【請求項34】
金属ポルフィリンの金属が、Co、Ni、Mg、Fe、Zn、Mn、Pd、Cu、Pt、V、Mo、Al、Sn、及びGeの中から選択されることを特徴とする、請求項19〜33のいずれか一項に記載の式(I)のモノマー。
【請求項35】
Mが、Co、Zn、及びMnの中から選択されることを特徴とする、請求項34に記載の式(I)のモノマー。
【請求項36】
Xが下記の基であることを特徴とする、請求項19〜35のいずれか一項に記載の式(I)のモノマー。
【化8】

【請求項37】
いずれの生体リガンドも含まないことを特徴とする、請求項19、20、又は22〜28、又は30〜36のいずれか一項に記載の式(I)のモノマー。
【請求項38】
電解重合によって電気化学プローブを生成するための、請求項1〜37のいずれか一項に記載の少なくとも1つのモノマーの使用。
【請求項39】
生体リガンドを有する請求項1〜17、又は19〜36のいずれか一項に記載のモノマーを用いて、電解重合を実施することを特徴とする、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
請求項1〜17、又は19〜36のいずれか一項に記載の生体リガンドを有するモノマーの電解重合によって得ることができる導電性ホモポリマーの形の電気活性プローブ。
【請求項41】
使用するモノマーの少なくとも1つが請求項1〜37のいずれか一項に記載のものなどであることを特徴とする、モノマーの少なくとも1つが生体リガンドを有する少なくとも2つの異なるモノマーの共重合によって得ることができる導電性コポリマーの形の電気活性プローブ。
【請求項42】
共重合で、請求項1〜17、又は19〜36のいずれか一項に記載の生体リガンドを有するモノマー、及び請求項18又は37に記載の別のモノマーを使用することを特徴とする、請求項41に記載の電気活性プローブ。
【請求項43】
共重合で、金属の異なる請求項1〜37のいずれか一項に記載のモノマーを少なくとも2つ使用することを特徴とする、請求項40〜42のいずれか一項に記載の電気活性プローブ。
【請求項44】
少なくとも2つの異なる生体リガンドを含むことを特徴とする、請求項40〜43のいずれか一項に記載の電気活性プローブ。
【請求項45】
使用するモノマーがすべて、電解重合可能単位としてピロールを有することを特徴とする、請求項40〜44のいずれか一項に記載の電気活性プローブ。
【請求項46】
請求項1〜17、又は19〜36のいずれか一項に記載の生体リガンドを有するモノマーと、非置換ピロール又はピロール−3−アルカノールとの共重合を実施することを特徴とする、請求項45に記載の電気活性プローブ。
【請求項47】
請求項18又は37のいずれかに記載のモノマー、非置換ピロール又はピロール−3−アルカノールと、3位に生体リガンドを有するピロールとの共重合を実施することを特徴とする、請求項46に記載の電気活性プローブ。
【請求項48】
少なくとも1つのプローブリガンドを有する請求項40〜47のいずれか一項に記載の電気活性プローブと試料をプローブリガンド/標的リガンドの相互作用に適した条件下で接触させ、試料との接触前後でプローブによって発生される電位又は電流の差を明示し、場合によっては定量化する、生体試料中の少なくとも1つの標的リガンドを検出する方法。
【請求項49】
表面の全部又は一部分が請求項40〜47のいずれか一項に記載のプローブで被覆されている導電性キャリヤーを含む電極。
【請求項50】
請求項1〜37のいずれか一項に記載の少なくとも1つのモノマーを水相で電解重合することによって行われることを特徴とする重合方法。
【請求項51】
重合が、金属の異なる請求項1〜37のいずれか一項に記載のモノマーを少なくとも2つ使用する共重合であることを特徴とする、請求項50に記載の重合方法。
【請求項52】
請求項50又は51に記載の重合方法に従って得ることができるポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−515002(P2009−515002A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538386(P2008−538386)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際出願番号】PCT/FR2006/051131
【国際公開番号】WO2007/051947
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(504238301)ビオメリュー (74)
【出願人】(502017261)セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(シー.エヌ.アール.エス.) (15)
【出願人】(508134692)ユニベルシテ パリ シュド (1)
【Fターム(参考)】