説明

水田作業機

【課題】煩わしい操作を要することなく、幅広い防波作用を有する防波板によって泥流波の外側方拡散を抑えるとともに、その反射泥流波による障害を抑えることができる水田作業機を提供する。
【解決手段】水田作業機は、後輪(11)によって水田走行が可能に支持された機体(2)と、この機体(2)に搭載されて水田作業を行う作業装置(4)と、この作業装置(4)による作業位置(P)の走行前方側に配置されて圃場を均平整地するフロート(56)とを備えて構成され、上記フロート(56)の側方位置には、その前端位置の前後に亘って延びる防波板(53L,53R)を機体の左右に設け、この左右の防波板(53L,53R)は、それぞれを防波位置と収納位置との2つの位置に切替え可能に支持した上で左右を異なる位置に保持し、機体の旋回動作の都度、それぞれの位置を切替え制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田走行可能な機体に作業装置を搭載して水田作業を行う水田作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水田作業機は、特許文献1に示すように、水田走行可能な機体に作業装置を搭載し、この作業装置の作業位置の走行前方側に幅広の橇形状に形成した均平整地のためのフロートを配置するとともに、その外側位置に防波手段として左右の防波板を備えたものが知られている。
フロートは、その均平整地作用によって圃場面の凹凸を均平整地することにより、安定した圃場作業を可能とする。また、左右の防波板は、その防波作用により走行車輪やフロートによって側方に押し出された泥流波の外側方拡散を受け止めて隣接部の植付け苗株への波及障害を抑えることができる。
【特許文献1】特開2007―312675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、作業走行に付帯して発生する泥流波は、防波板に受けた場合に反射して新たな反射泥流波となり、特に、フロートによって側方に押し出された泥流波、機体を支持する走行車輪の回動動作によって発生する泥流波、土壌塊粉砕用のロータを備える場合にその回動動作によって発生する泥流波等を幅広く受ける防波板を設けると、この防波板によって行き場を失った泥流が押し返されることによる反射泥流波が同防波板から新たに拡散して隣接の作業済み領域の苗株に支障を及ぼすという問題があり、また、保護すべき隣接領域が圃場における往復の作業方向により一定しないことから、それに合わせて防波板を調節するためには機体旋回の都度、煩わしい操作が必要となり、作業者負荷の増大と作業能率の低下を招くという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、煩わしい操作を要することなく、幅広い防波作用を有する防波板によって泥流波の外側方拡散を抑えるとともに、その反射泥流波による障害を抑えることができる水田作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、後輪によって水田走行が可能に支持された機体と、この機体に搭載されて水田作業を行う作業装置と、この作業装置による作業位置の走行前方側に配置されて圃場を均平整地するフロートとを備えた水田作業機において、上記フロートの側方位置には、その前端位置の前後に亘って延びる防波板を機体の左右に設け、この左右の防波板は、それぞれを防波位置と収納位置との2つの位置に切替え可能に支持した上で左右を異なる位置に保持し、機体の旋回動作の都度、それぞれの位置を切替え制御することを特徴とする。
【0006】
左右の防波板は、一方が防波位置のときに他方が収納位置に互いに逆の位置関係に切替えられることから、一方の防波位置にある側では泥流波が止められてその反対側に反射波が拡散され、他方の収納位置にある側では泥流波がその外側方に拡散され、また、機体旋回の都度、左右の防波動作が切替えられることから、機体の往復走行によっても、その走行方向によることなく、圃場における防波作用の方向性が常に維持される。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、機体外側に張り出して次の走行位置をマークするアームによる線引きマーカを左右の機体側部に個別動作可能に設け、その線引き動作に連動してその側の防波板を収納位置に切替え制御することを特徴とする。
上記線引きマーカと連動して防波板の動作を切替えることにより、特段の切替え制御を要することなく、作業済み領域の側と対応した確実な防波動作が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の水田作業機は、防波位置と収納位置との2つの位置に切替え可能に左右の防波板を構成し、機体の旋回動作の都度、左右それぞれについて防波位置と収納位置を交互に切替え制御することにより、泥流波が止められる側と泥流波が拡散される側が、機体旋回の都度、切替えられることから、機体の往復走行によっても、その走行方向によることなく、圃場における防波作用の方向性が常に維持される。したがって、並行する植付条について作業済み領域に隣接して往復作業走行することによっても、左右の防波板の防波作用が常に一定の側に限定されるので、上記構成の水田作業機により、機体旋回に伴う煩わしい取扱いを要することなく、防波動作を切替えて作業済み領域の側の保護を確保することができる。
【0009】
請求項2の水田作業機は、請求項1の効果に加え、線引きマーカの動作に連動して防波板の動作を切替え制御することから、特段の切替え制御を要することなく、作業済み領域の側と対応した確実な防波動作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である乗用型田植機の左側面図と平面図である。この乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して作業装置としての移植装置4が昇降可能に装着され、また、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0011】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0012】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって移植装置4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0013】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に操縦席31が設置されている。操縦席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36になっている。
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0014】
移植装置4を昇降させる昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に移植装置4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として移植装置4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降用シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、移植装置4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0015】
移植装置4は8条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分つつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a…に供給された苗を圃場に植付ける植付装置52…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。
【0016】
移植装置4の下部には中央にセンターフロート55、左右両端の一対のサイドフロート56,56及びセンターフロート55と左右両端の一対のサイドフロート56,56の間のミドルフロート57がそれぞれ設けられている。フロート55,56,57は幅広の橇形状に構成し、これらを圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に植付装置52…により苗が植付けられる。各フロート55,56,57は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降用シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて移植装置4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0017】
施肥装置5は、肥料ホッパ5aに貯留されている粒状の肥料を繰出部5b…によって一定量つつ繰り出し、その肥料を施肥ホース5c…でフロート55,56,57の左右両側に取り付けた施肥ガイド47…まで導き、施肥ガイド47…の前側に設けた作溝体48…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。電動モータ(図示せず)で駆動するプロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース5c…に吹き込まれ、施肥ホース5c…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0018】
移植装置4には整地装置の一例であるロータ27が取り付けられている。また、苗載台51は移植装置4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体4aの支持ローラ4bをレールとして左右方向にスライドする構成である。変速レバー、畦クラッチレバー等の操作レバーが操縦席31の右隣に配置され、またフロントカバー32の頂部には作業モニタ装置が配置されている。
【0019】
(防波板)
上記サイドフロート56の外側方には、図3の作業装置の要部平面図に示すように、機体の左右に防波板53L,53Rを設ける。この防波板53L,53Rは、フロート56の直前位置に配置したロータ27および後輪11による泥流波の拡散方向を勘案した一定の位置関係に定める。
【0020】
防波板53L,53Rは、その詳細な構成を図4の拡大側面図に示すように、サイドフロート56の前端位置を越えて前後に長く延びる板状部材によって構成し、作業装置4の支持枠体4aに車幅方向の軸線を有する支持軸53aを設け、この支持軸53aについて回動可能に防波板53L,53Rをその後部で軸支するとともに、防波作用を生じる防波位置Aから防波作用を生じない収納位置Bまで回動して引き上げ可能にワイヤ61L,61Rを連結し、それぞれのワイヤ61L,61Rの操作により左右の防波板53L,53Rを個々に引き上げて互いに左右を逆位置に保持し、かつ、機体の旋回動作の都度、それぞれの位置を切替えるように動作制御する。
【0021】
このように防波板53L,53Rを動作制御することにより、左右の防波板53L,53Rは、それぞれ、防波位置において、フロート56の均平整地作用によってその側方に押し出された泥水土砂による泥流波のみならず、フロート56の前方で回動する後輪11およびロータ27によって側方に拡散される泥流波を幅広く受け止めることができる。
【0022】
また、左右の防波板53L,53Rは、互いに逆の位置関係で一方が防波位置Aのときに他方が収納位置Bに保持されることから、一方の防波位置にある側では泥流波が止められて反対側に反射波が拡散され、他方の収納位置にある側では泥流波がその外側方に拡散され、また、機体旋回の都度、左右の防波動作が切替えられることから、機体の往復走行によっても、その走行方向によることなく、圃場における防波作用の方向性が常に維持される。
【0023】
したがって、並行する植付条について作業済み領域に隣接して往復作業走行することによっても、左右の防波板の防波作用が常に一定の側に限定されるので、上記構成の水田作業機により、機体旋回に伴う煩わしい取扱いを要することなく、隣接部の保護を確保することができる。
【0024】
(駆動機構)
防波板の駆動機構は、その要部拡大側面を図5に示すように、左右の防波板53L,53Rのワイヤ61L,61Rを作業装置4の昇降用リンクと連結することによって作業装置4の昇降と連動動作させ、かつ、ソレノイド77R、77Lで個別制御するように構成する。
【0025】
具体的には、昇降用シリンダ46と連結する入力アーム63により、作業装置の上昇と連動してワイヤ引きプレート70を介して左右のワイヤ61L,61Rを共に引くことにより左右の防波板53L,53Rを収納位置Bとしてそれぞれをソレノイド77R、77Lで保持し、また、作業装置が下降位置に移行したときにそれぞれのソレノイド77R、77Lの制御により、左右のワイヤ61L,61Rを個別に戻すことによって左右の防波板53L,53Rを個別制御が可能に構成する。
【0026】
その詳細な構成は、左右の防波板53L,53Rは、スプリング(不図示)で防波位置A側に付勢されており、移植装置4の昇降動作に連動するワイヤ61L,61Rが引かれると防波板53L,53Rが回動されて収納位置Bに移行され、ワイヤ61L,61Rが戻されると防波位置Aで作動状態となる。
【0027】
一方、リンクベースフレーム42に固着された上リンク支持プレート62に入力アーム63が回動自在に設けられている。この入力アーム63の先端部にはローラ65が取り付けられており、昇降用シリンダ46のピストンロッド46aが突出作動すると、該ピストンロッド46aに固着されたスプリング保持プレート66の押圧ピン66aがローラ65を押すことにより、入力アーム63が回動させられるようになっている。
【0028】
また、上リンク支持プレート62には、入力アーム63と一体に回動する後リンク68と、該後リンクと平行な前リンク69とが回動自在に設けられ、これら平行リンク68,69の自由端部にワイヤ引きプレート70が連結されている。そして、このワイヤ引きプレート70に設けたピン70a,70bが、左ワイヤ用及び右ワイヤ用のワイヤ端取付プレート72L,72Rの長穴72a,72bにそれぞれ嵌合している。ワイヤ端取付プレート72L,72Rには、ワイヤ61L,61Rのインナ61aL,61aRの防波板と反対側の端部につながれたロッド73L,73Rが取り付けられている。一方、ワイヤ61L,61Rのアウタ61bL,61bRは、リンクベースフレーム42に固定された側面視コ字状のソレノイドボックス取付枠74に固定されている。
【0029】
前記ロッド73L,73Rはソレノイドボックス取付枠74に取り付けたソレノイドボックス76の筒状部76a,76bに摺動自在に嵌合している。ソレノイドボックス内には、規制具としてソレノイド77L,77Rで駆動される規制ピン78L,78Rが設けられ、この規制ピンが突出すると、ロッド73L,73Rに係合してワイヤの戻り規制をするようになっている。
【0030】
昇降用シリンダ46のピストンロッド46aが突出作動して入力アーム63が後方に回動すると、ワイヤ引きプレート70が前方へ移動し、これによりワイヤ61L,61Rのインナ61aL,61aRが引かれて、防波板53L,53Rが起立する。昇降用シリンダ46のピストンロッド46aが後退すると、スプリングの張力でワイヤ61L,61Rのインナ61aL,61aRが戻され、防波板53L,53Rが下降する。ワイヤ引きプレート70は略水平に移動するので、棒体73L,73Rに軸方向と交差する方向の無理な力が作用しない。
【0031】
一方、規制ピン78L,78Rが突出した状態では、ワイヤが戻り規制されるので、昇降用シリンダ46のピストンロッド46aが後退しても、防波板53L(53R)が引き状態のままに保たれる。このとき、ワイヤ引きプレート70のピン70a(70b)はワイヤ端取付プレート72L(72R)の長穴72a(72b)の後端部に位置する。既作業側の防波板が下降するように、走行車体2に設けたコントローラ(図示せず)でソレノイド77L,77Rが制御される。
【0032】
また、別の駆動構成例として、未作業領域の機体外側に張り出して次の走行位置をマークする線引きマーカの線引き動作に連動してその側の防波板53L,53Rを収納位置に切替え制御するように構成する。例えば、機体の左右それぞれの側で防波板53L,53Rと線引きマーカとワイヤを連結し、線引きマーカが下がったときにその側の防波板が収納位置Bに上がり、その線引きマーカが上がったときに防波板が防波位置Aに下がるようにすることにより、線引きマーカの線引き動作に連動して防波板の作動が切替えられることから、作業済み領域の側を確実に対応して保護することができる。
【0033】
さらに別の駆動構成例として、カムによる防波板駆動機構の構成説明図を図6に示すように、電動のカム軸81aに設けたカム81と支軸82a、82aによってそれぞれ軸支した2つの従動リンク82L、82Rとをそれぞれの作用点82p、82pでリンクさせ、これら従動リンク82L、82Rにワイヤ61L,61Rを連結することにより、カム81の形状設定によりその角度位置に応じて防波板53L,53Rの電動駆動が可能となる。
【0034】
この場合、そのカム軸81a上に同様の構成によって左右の線引きマーカの駆動機構を構成することにより、同カム軸81aの回動制御によって防波板53L,53Rと線引きマーカを共に駆動制御することができる。例えば、それぞれのカム設定により、線引きマーカを両出しした時は、両防波板53L,53Rを収納位置Bに引き上げ、また、両線引きマーカを収納位置とした時にも両防波板53L,53Rを収納位置Bに引き上げるように、多様な駆動態様を設定することができる。
【0035】
(フロントサスペンション)
次に、フロントサスペンションについて説明する。フロントサスペンションは、前輪の支持構造の要部正面を図7に示すように、左右の前輪10、10をフローティング支持するスライド支軸10a,10aにそれぞれの支持高さ位置を検出する上下位置センサ10L、10Rを設け、図8の制御ブロック構成図に示すように、昇降用油圧電磁バルブ46vのPWM制御によって昇降用シリンダ46を駆動し、左右の高さ位置の信号に応じて移植装置4の昇降速度を制御可能に制御部Cを構成する。
【0036】
具体的な制御は、左右の高さ位置の変動が同時でそれを繰り返す場合に、移植装置4の下降速度を速くするように駆動制御することにより、サブソイラーや代掻きの方向により、左右の高さが同時変動を繰り返す状況で発生する移植装置4のジャンプが抑えられるので、植付、整地性を向上することができる。
【0037】
(ロータ)
次に、ロータ27の高さ調節について説明する。
ロータ27は、その取付け構造の側面図を図9に示すように、苗載台フレーム4cに支持リンク27sを介して高さ調節可能に取付け、この支持リンク27sをロータ昇降モータ27mによって回動調節するとともに、ロータ27の前後位置に表土の高さを検出するセンサー27f、27rを設け、これら両センサ27f、27rの検出による表土の前後の高低差が基準より大きい場合に、ロータ27の支持位置を高く補正し、または、その高低差を表示するように構成する。
【0038】
(植付装置)
次に、移植装置の植付装置について説明する。
植付装置52は、苗載台51の下端に臨んで配置され、その側面図および回転軸線展開拡大断面図をそれぞれ図10、図11に示すように、回転駆動されるロータリケース(回転体)201とその2つの偏心支軸202,202にそれぞれ取付けられて苗を植付けする植込杆203とから構成される。2つの偏心支軸202,202は、ロータリケース201について、その回転軸201cを通る1つの直径線上の共通半径位置においてその回転軸線と平行する軸線上に軸支し、同ロータリケース201に内設された静止偏心サンギヤ204sと偏心歯合する不等速伝動ギヤ列による伝動系204と連結して所定の角度範囲内を揺動可能に構成する。
【0039】
植込杆203は、偏心支軸202に固定したケース部材211と、このケース部材211の外側に取付けられて苗載台51のマット苗Pからその一部を取分けて保持するためのフォーク状のフォーク部材212と、このフォーク部材212に沿って進退動作可能に取付けられてその保持苗を押出す方向に付勢されたスライド部材213およびその先端の押出部材213pとによって構成する。
【0040】
ケース部材211の内部には、スライド部材213と連結して進退制御する後述の制御アーム215を支軸215pによって揺動可能に軸支する。この制御アーム215を揺動させるカム216を偏心支軸202と同心に上記ロータリケース201の側面に一体に固定する。カム216の内周には偏心支軸202に臨む油溜216tを形成し、ロータリケース201から漏れるグリース等のオイルを受けることによって圃場へのオイル漏れを防止する。
【0041】
上記ケース部材211にはカム216の外形を超える開口を形成し、組付け状態では、カム216の主要部を同ケース部材211の内部に配置する一方、カム216をロータリケース201側に残したまま、植込杆203を偏心支軸202の軸線方向にロータリケース201側から分離可能に構成する。
【0042】
また、ケース部材211の内部には、図11のS1−S1線断面図を図12に示すように、植込杆203の駆動系として、スライド部材213の後端位置に押出し付勢用のスプリング214を設けるとともに、略L字状の制御アーム215を連結部材215cによってスライド部材213と連結し、他の一端をカム216と接して揺動可能に軸支することによりカムパターンに応じてスライド部材213の進退動作を制御する。
【0043】
上記連結部材215cには、ケース部材211の内部のグリースを掻き混ぜるための張出部215eを上下に張り出して形成する。また、制御アーム215をその揺動限界で受けるクッション材215rを設け、このクッション材215rの支持端部には制御アーム215を受けた際の衝撃音を緩和するための空洞215aを形成する。
【0044】
ケース部材211には、スライド部材213を摺動支持するブッシュ213bを設け、その摺動口に臨んでケース部材211の側部位置にオイル注入口211hを形成して開放可能なキャップで栓をする。このオイル注入口211hの配置により、植込杆203の後端部に注入口を配置した場合より、他方の植込杆203の先端部との接近間隔が長くなることからオイル注入口211hの周囲に受ける泥土が減少してその侵入が抑えられるので、メンテナンス時におけるブッシュ213bへの効率のよいオイル供給と合わせ、スライド部材213の進退動作を確保することができる。
【0045】
上記構成の植付装置52は、ロータリケース201の回転に伴い、偏心支軸202上の植込杆203が公転動作するとともに、ロータリケース201に内設の伝動系によって所定の角度範囲内を揺動することにより、植付装置52の先端位置が所定の軌跡Tを通って苗載台51の下端Aからマット苗の一部を掻き取り、次いで下方の培土Bに植付けを行い、続いてロータリケース201の反対端の植込杆203が半周遅れで同様に植付けを行う。
【0046】
この場合における植込杆203の植付動作は、ロータリケース201の回転に伴い、このロータリケース201と一体的なカム216の相対回転動作により、ケース部材211に軸支した制御アーム215が揺動され、フォーク部材212からその保持苗を押出す方向に付勢されたスライド部材213がカムパターンに従って進退動作される。
【0047】
また、ロータリケース201の回転軸201cの角度位置を伝動ケース52cに対して調節可能に、すなわち、支持メタル52mのボルト孔52f…を取付けピッチ円の周方向に長く形成し、同支持メタル52mの取付け姿勢を後方の回動位置に変更可能に構成する。
【0048】
このように、支持メタル52mの取付け姿勢を変更することによってロータリケース201の回動位置の基準を変更し、植込杆203の押出しのタイミングを早くすることができる。植込杆203の押出しのタイミングは、略1.5m/s以下の低速の場合に、最下点より前でフォーク部材212から苗を押し出すが、それより高速の場合は、堀穴の最下点より上で苗を押し出すので束状の苗株が離散状態となるので、高速植付けを行う場合に、支持メタル52mの取付け姿勢を変更して植込杆203の押出しのタイミングを早くすることにより苗株の分散化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】乗用型田植機の側面図
【図2】図1の乗用型田植機の平面図
【図3】作業装置の要部平面図
【図4】防波板の拡大側面図
【図5】防波板の駆動機構の要部拡大側面
【図6】カムによる防波板駆動機構の構成説明図
【図7】前輪の支持構造の要部正面
【図8】制御ブロック構成図
【図9】ロータ27は、その取付け構造の側面図
【図10】植付装置の側面図
【図11】図10の植付装置の回転軸線展開拡大断面図
【図12】図11におけるS1−S1線断面図
【符号の説明】
【0050】
1 乗用型田植機
2 走行車体
3 昇降リンク装置
4 移植装置(作業装置)
10 前輪
11 後輪
27 ロータ
46 昇降用シリンダ
53a 支持軸
53L,53R 防波板
55 センターフロート
56 サイドフロート
57 ミドルフロート
61L,61R ワイヤ
77L,77R ソレノイド
A 防波位置
B 収納位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪(11)によって水田走行が可能に支持された機体(2)と、この機体(2)に搭載されて水田作業を行う作業装置(4)と、この作業装置(4)による作業位置(P)の走行前方側に配置されて圃場を均平整地するフロート(56)とを備えた水田作業機において、
上記フロート(56)の側方位置には、その前端位置の前後に亘って延びる防波板(53L,53R)を機体の左右に設け、この左右の防波板(53L,53R)は、それぞれを防波位置と収納位置との2つの位置に切替え可能に支持した上で左右を異なる位置に保持し、機体の旋回動作の都度、それぞれの位置を切替え制御することを特徴とする水田作業機。
【請求項2】
機体外側に張り出して次の走行位置をマークするアームによる線引きマーカを左右の機体側部に個別動作可能に設け、その線引き動作に連動してその側の防波板(53L,53R)を収納位置に切替え制御することを特徴とする請求項1記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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