説明

水田作業車

【課題】水田作業車において、人為操作具及び前輪の操向操作による作業装置の非作業状態への操作により旋回開始位置が検出された場合、作業終了位置(旋回開始位置)と作業開始位置(旋回終了位置)とが、畦から略同じ位置になるように構成する。
【解決手段】人為操作具による作業装置5の非作業状態への操作に基づく機体の旋回終了位置E31と、前輪1の操向操作による作業装置5の非作業状態への操作に基づく機体の旋回終了位置E32との差が小さくなるように、旋回終了位置E32を機体の旋回行程L1,L2に沿って旋回開始位置E12側に移動させる(θ1,E31参照)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機や乗用型直播機等の水田作業車における水田での旋回の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業車の一例である乗用型田植機では、一回の作業行程が終了して機体が畦際に達すると、苗植植付装置(作業装置に相当)に動力を伝達する植付クラッチを遮断状態に操作し(非作業状態に相当)、苗植付装置を田面から上昇させて(非作業状態に相当)、旋回を行う(略Uターンするような旋回)。旋回が終了すると、苗植付装置を田面に下降させ(作業状態に相当)、植付クラッチを伝動状態に操作して(作業状態に相当)、次の作業行程に入る。
【0003】
例えば特許文献1では、機体が畦際に達して植付クラッチの遮断状態への操作及び苗植付装置の上昇が行われると、この時点の機体の位置が旋回開始位置(特許文献1の図9のE1)(特許文献1の段落番号0057の遮断位置E1)として検出される。
右及び左の後輪の回転数を検出する右及び左の回転数センサー(特許文献1の図2及び図6の50)が備えられており、旋回開始位置から所定の機体の旋回行程(機体の走行距離)が行われた位置が、旋回終了位置(特許文献1の図9のE5)(特許文献1の段落番号0063の伝動位置E5)として設定される。
【0004】
右及び左の回転数センサーにより、旋回開始位置から機体の旋回行程(機体の走行距離)が検出されており、機体の旋回行程(機体の走行距離)の検出に基づいて旋回終了位置に達したことが検出されると、苗植付装置が自動的に田面に下降し(特許文献1の図8のステップS14)(作業状態に相当)、植付クラッチが自動的に伝動状態に操作されて(特許文献1の図8のステップS20)(特許文献1の段落番号0076)(作業状態に相当)、次の作業行程に入る。
【0005】
これにより、旋回の終了時に運転者が昇降レバーによる苗植付装置の下降や植付クラッチの伝動状態への操作を行わなくてもよいのであり、前回の作業行程での苗の植付終了位置(旋回開始位置)と、次の作業行程での苗の植付開始位置(旋回終了位置)とを、畦から略同じ位置にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−230302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
機体に備えられた作業装置を非作業状態(作業装置の上昇や、作業装置に動力を伝達する作業クラッチの遮断状態)に操作するものとしては、運転者が人為的に操作する操作レバー等の人為操作具がある(特許文献1の図1及び図6の11,12参照)。
近年では、前述の人為操作具とは別に、機体が畦際に達した際に運転者が前輪の操向操作を行って旋回が開始されると、自動的に作業装置が非作業状態(作業装置の上昇や、作業装置に動力を伝達する作業クラッチの遮断状態)に操作されるように構成したものがある。
【0008】
この場合、人為操作具による作業装置の非作業状態への操作により旋回開始位置が検出され、旋回開始位置に基づいて旋回終了位置が設定された状態、並びに、前輪の操向操作による作業装置の非作業状態への操作により旋回開始位置が検出され、旋回開始位置に基づいて旋回終了位置が設定された状態において、以下の説明のように異なる状態になることがある。
【0009】
人為操作具による作業装置の非作業状態(作業装置の上昇や、作業装置に動力を伝達する作業クラッチの遮断状態)への操作を行う場合、例えば図6に示すように、機体が畦際に達すると、最初に人為操作具による作業装置の非作業状態への操作が行われることが多いので、畦Bに対して機体の前後方向が直交した状態で、人為操作具による作業装置の非作業状態への操作が行われることが多い(この後に前輪の操向操作による旋回が開始されることが多い)。
これにより、例えば図6に示すように、人為操作具による作業装置の非作業状態への操作により旋回開始位置E11が検出され、旋回開始位置E11から所定の機体の旋回行程L1,L2が行われた位置が旋回終了位置E31として設定されるのであり、旋回開始位置E11と旋回終了位置E31とが畦Bから略同じ位置となる。
【0010】
これに対して、前輪の操向操作による作業装置の非作業状態(作業装置の上昇や、作業装置に動力を伝達する作業クラッチの遮断状態)への操作を行う場合、例えば図7に示すように、機体が畦際に達して前輪の操向操作が行われると、前輪の操向操作により機体の向きが変わりながら(旋回が開始されながら)、作業装置の非作業状態への操作が行われることになる。
これにより、例えば図7に示すように、畦Bに対して機体の前後方向が旋回方向に傾斜した状態で作業装置の非作業状態への操作が行われて、旋回開始位置E12が検出される状態となるので、旋回開始位置E12から所定の機体の旋回行程L1,L2が行われた位置が旋回終了位置E32として設定されると、旋回開始位置E12と旋回終了位置E32とが畦Bから異なる位置となる(旋回開始位置E12に対して旋回終了位置E32が畦Bから離れた位置となる)。
【0011】
前述のように、人為操作具による作業装置の非作業状態への操作により旋回開始位置が検出された状態、前輪の操向操作による作業装置の非作業状態への操作により旋回開始位置が設定された状態において、旋回終了位置が異なるものなってしまうと、旋回終了位置の検出に基づいて作業装置が作業状態に操作された場合、作業装置の作業終了位置(旋回開始位置)と作業開始位置(旋回終了位置)とが、畦から同じ位置になったり、畦から異なる位置になったりする。
【0012】
本発明は、水田作業車において、人為操作具による作業装置の非作業状態への操作により旋回開始位置が検出されても、前輪の操向操作による作業装置の非作業状態への操作により旋回開始位置が検出されても、作業装置の作業終了位置(旋回開始位置)と作業開始位置(旋回終了位置)とが、畦から略同じ位置になるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、水田作業車において次のように構成することにある。
機体に備えられた作業装置を人為的に非作業状態に操作するもので人為的に操作される人為操作具と、前輪の操向操作に基づいて前記作業装置を非作業状態に操作する第1操作手段とを備え、
前記人為操作具又は第1操作手段による作業装置の非作業状態への操作に基づいて機体の旋回開始位置を検出し、前記機体の旋回開始位置から所定の機体の旋回行程が行われた位置を機体の旋回終了位置として設定する設定手段と、
前記機体の旋回行程の位置を検出する機体位置検出手段と、
前記機体位置検出手段による機体の旋回終了位置の検出に基づいて、前記作業装置を作業状態に操作する第2操作手段とを備えて、
前記人為操作具による作業装置の非作業状態への操作に基づく機体の旋回終了位置と、前記第1操作手段による作業装置の非作業状態への操作に基づく機体の旋回終了位置との差が小さくなるように、前記第1操作手段による作業装置の非作業状態への操作に基づく機体の旋回終了位置を、前記機体の旋回行程に沿って旋回開始位置側に移動させる補正手段を備える。
【0014】
(作用)
例えば、図6に示すように、人為操作具による作業装置の非作業状態への操作が行われて、旋回開始位置E11及び旋回終了位置E31が設定されたとする。この場合、畦Bに対して機体の前後方向が直交した状態で、人為操作具による作業装置の非作業状態への操作が行われることが多いので、旋回開始位置E11と旋回終了位置E31とが畦Bから略同じ位置となる。
【0015】
例えば、図7に示すように、第1操作手段(前輪の操向操作)による作業装置の非作業状態への操作が行われて、旋回開始位置E12及び旋回終了位置E32が設定されたとする。この場合、畦Bに対して機体の前後方向が旋回方向に傾斜した状態で作業装置の非作業状態への操作が行われて、旋回開始位置E12に対して機体の旋回終了位置E32が畦Bから離れた位置となったとする。
【0016】
本発明の第1特徴によると、例えば図7に示すように、第1操作手段(前輪の操向操作)による作業装置の非作業状態への操作に基づく旋回終了位置E32が、機体の旋回行程L1,L2に沿って旋回開始位置12側に移動(補正)されるのであり、第1操作手段(前輪の操向操作)による作業装置の非作業状態への操作に基づく旋回終了位置E32が、人為操作具による作業装置の非作業状態への操作に基づく旋回終了位置E31に接近する(両者の差が小さくなる)。
【0017】
これにより、旋回終了位置の検出に基づいて作業装置が作業状態に操作される場合、人為操作具による作業装置の非作業状態への操作に基づく旋回終了位置であっても、第1操作手段(前輪の操向操作)による作業装置の非作業状態への操作に基づく旋回終了位置であっても、作業装置の作業終了位置(旋回開始位置)と作業開始位置(旋回終了位置)とが畦から略同じ位置となる。
【0018】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、人為操作具による作業装置の非作業状態への操作に基づく旋回終了位置であっても、第1操作手段(前輪の操向操作)による作業装置の非作業状態への操作に基づく旋回終了位置であっても、作業装置の作業終了位置(旋回開始位置)と作業開始位置(旋回終了位置)とが畦から略同じ位置となるように構成することができ、この後の畦に沿っての作業(例えば乗用型田植機における回り植付行程)が行い易くなって、水田作業車の作業性を向上させることができた。
【0019】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の水田作業車において次のように構成することにある。
機体の走行距離を検出する走行距離検出手段と、前記前輪の直進位置からの操向角度を検出する操向角度検出手段とを備え、
前記機体の走行距離と前輪の直進位置からの操向角度とにより、機体の旋回半径と、機体の旋回中心に対して機体が移動した移動角度とを検出し、前記機体の旋回半径と移動角度とに基づいて三角関数により、前記旋回開始前の機体の進行方向における機体の位置を検出して、前記旋回開始前の機体の進行方向における機体の位置を前記機体の旋回行程の位置として検出するように、前記機体位置検出手段を構成する。
【0020】
(作用)
前項[I]に記載のように、機体の旋回行程の位置を検出する構成としては、旋回開始からの機体の走行距離を検出して、機体の旋回行程の位置とするように構成することがある。この構成は、水田作業車の畦際での旋回が同じような旋回(定型的な旋回)であるとの考え方に基づいており、旋回開始からの機体の走行距離により機体の旋回行程の位置が導き出されるとの考え方である。
しかしながら、運転者の操縦の違いにより畦際での旋回が想定よりも大きくなったり小さくなったりすると、前述の構成では「定型的な旋回」と言う前提条件が崩れるので、旋回開始からの機体の走行距離だけでは、機体の旋回行程の位置が精度良く検出することができず、旋回終了位置の検出が精度良く行えなくなる。
【0021】
本発明の第2特徴によると、機体の走行距離と前輪の直進位置からの操向角度とを使用しており、機体の走行距離に対して前輪の直進位置からの操向角度を加味することによって、機体がどの方向にどれたけ進行したのかを検出することができる。機体がどの方向にどれだけ進行したのかを検出することができれば、畦際での旋回が想定よりも大きくなったり小さくなったりしても、これに関係なく、旋回開始前(例えば図6のL01参照)の機体の進行方向(例えば図6の(+Y)(−Y)参照)における機体の位置(例えば図8(b)のY1参照)を検出することができる。
【0022】
例えば図8(a)(b)に示すように、機体の走行距離Gと前輪1の直進位置A1からの操向角度Aとによって、機体の旋回半径Rと、機体の旋回中心Cに対して機体が移動した移動角度θとを検出することができる(例えば、前輪1及び後輪2のホイルベースWや前輪1の直進位置A1からの操向角度A等に基づいて、機体の旋回中心C及び旋回半径Rを検出し、機体の旋回中心C及び旋回半径Rと機体の走行距離Gとに基づいて、機体の移動角度θを検出する)。機体の旋回半径と移動角度とを検出することにより、旋回開始前の機体の進行方向における機体の位置を、三角関数により精度よく検出することができる(例えば図8(b)において、R*SIN(θ)によりY1を検出する)。
【0023】
本発明の第2特徴によると、畦際での旋回が想定よりも大きくなったり小さくなったりしても、これに関係なく、旋回開始前の機体の進行方向における機体の位置を検出することができれば、旋回開始位置を検出(設定)することにより、旋回開始前の機体の進行方向における機体の位置に基づいて、旋回開始位置から旋回終了位置を精度良く検出することができる。
【0024】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、旋回開始前の機体の進行方向における機体の位置を検出することにより、旋回終了位置を精度良く検出することができ、旋回終了位置の検出に基づいて作業装置を適切に作業状態に操作することができるようになって、作業車の作業性能を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】右及び左の前輪の操向操作系、右及び左の前輪、右及び左の後輪への伝動系を示す平面図である。
【図3】制御装置に備えられた機体位置検出手段、旋回開始位置検出手段、旋回終了位置検出手段、第1及び第2操作手段、補正手段、自動上昇手段、自動昇降制御手段の制御系を示す図である。
【図4】操作レバーが上昇位置に操作(上昇位置に操作されて中立位置に操作)されることに基づいて、前半の旋回行程及び後半の旋回行程に入る状態での制御の流れを示す図である。
【図5】右及び左の前輪(操向部材)が右(左)の設定角度を越えて右(左)の操向限度側に操向操作されることに基づいて、前半の旋回行程及び後半の旋回行程に入る状態での制御の流れを示す図である。
【図6】操作レバーが上昇位置に操作(上昇位置に操作されて中立位置に操作)されることに基づいて、前半の旋回行程及び後半の旋回行程に入る状態を示す平面図である。
【図7】右及び左の前輪(操向部材)が右(左)の設定角度を越えて右(左)の操向限度側に操向操作されることに基づいて、前半の旋回行程及び後半の旋回行程に入る状態を示す平面図である。
【図8】(a)は車輪のホイルベース、車輪の直進位置からの操向角度、機体の旋回中心、機体の旋回半径を検出する状態を示す平面図である。(b)は機体の旋回半径及び移動角度により、旋回開始前の機体の進行方向での旋回中の機体の位置を検出する状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[1]
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2で支持された機体の後部にリンク機構3が昇降自在に支持されて、リンク機構3を昇降駆動する単動型の油圧シリンダ4が備えられており、リンク機構3の後部に苗植付装置5(作業装置に相当)が支持されて、水田作業車の一例である乗用型田植機が構成されている。水田は一般に下方の硬い耕盤G1の上に泥や水の層が形成されて、泥や水の層の最上面が田面G2となっており、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2は耕盤G1に接地して走行する。
【0027】
図1に示すように、苗植付装置5は、3個の植付伝動ケース6、植付伝動ケース6の後部の左右に回転駆動自在に支持された回転ケース7、回転ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、複数のフロート9、苗のせ台10等を備えて、6条植型式に構成されている。運転座席13の後側に、粉粒状の肥料を貯留するホッパー14及び2条単位の3個の繰り出し部15(作業装置に相当)が備えられて、運転座席13の下側にブロア16が備えられている。フロート9に作溝器17が備えられて、繰り出し部15と作溝器17とに亘ってホース18が接続されている。
【0028】
図1及び図3に示すように、右及び左のマーカー19が苗植付装置5の右及び左側部に備えられており、田面G2に接地して指標を形成する作用姿勢(図1参照)、及び田面G2から上方に離れた格納姿勢(図3参照)に操作自在に構成されている。右及び左のマーカー19は上下に揺動自在に苗植付装置5に支持されたアーム部19aと、アーム部19aの先端部に自由回転自在に支持された回転体19bとを備えて構成されており、右及び左のマーカー19を作用姿勢及び格納姿勢に操作する電動モータ21が備えられて、制御装置23により電動モータ21が操作される。
【0029】
[2]
次に、右及び左の前輪1への伝動系について説明する。
図2に示すように、エンジン31の動力が伝動ベルト32を介して静油圧式無段変速装置33及びミッションケース34に伝達され、ミッションケース34の副変速装置(図示せず)から、前輪デフ機構(図示せず)及び前車軸ケース35の伝動軸(図示せず)を介して、右及び左の前輪1に伝達される。静油圧式無段変速装置33は中立位置から前進側及び後進側に無段階に変速自在に構成されており、図1に示すように、操縦ハンドル20の左横側に備えられた変速レバー45により静油圧式無段変速装置33を操作する。
【0030】
図2に示すように、ミッションケース34の下部の縦軸芯P2周りに、平面視台形状の操向部材41が揺動自在に支持されて、操縦ハンドル20により操向部材41が揺動操作されるように構成されており、操向部材41と右及び左の前輪1とに亘ってタイロッド42が接続されている。これにより、操縦ハンドル20を操作することによって、右及び左の前輪1(操向部材41)を直進位置A1から、右及び左の操向限度A3に亘って操向操作することができる。
【0031】
図1及び図2に示すように、ミッションケース34の後部と機体フレーム66とに亘って補強用の右及び左のフレーム49が連結されている。左のフレーム49の機体内方側にポテンショメータ47(操向角度検出手段に相当)が固定されて、操向部材41とポテンショメータ47の検出アーム47aとに亘って連係ロッド48が接続されている。
【0032】
図2及び図3に示すように、ポテンショメータ47により操向部材41の位置が検出され、ポテンショメータ47の検出値が制御装置23に入力されており、ポテンショメータ47の検出値によって、右及び左の前輪1(操向部材41)の直進位置A1からの操向角度Aが検出される。
【0033】
[3]
次に、右及び左の後輪2への伝動系について説明する。
図2に示すように、ミッションケース34の副変速装置(図示せず)の動力が伝動軸36、後車軸ケース37の入力軸38、入力軸38に固定されたベベルギヤ38a、ベベルギヤ38aに咬合するベベルギヤ39a、ベベルギヤ39aが固定された伝動軸39、右及び左のサイドクラッチ40、右及び左の車軸65を介して右及び左の後輪2に伝達される。
【0034】
図2に示すように、右及び左のサイドクラッチ40は摩擦多板型式に構成されて、伝動状態に付勢されている。右及び左のサイドクラッチ40を遮断状態に操作する右及び左の操作軸43が、後車軸ケース37に下向きに支持されて、操向部材41と右及び左の操作軸43とに亘り右及び左の操作ロッド44が接続されている。右及び左の操作ロッド44において右及び左の操作軸43との接続部分に、融通としての長孔44aが備えられている。
【0035】
図2に示すように、右及び左の前輪1(操向部材41)が直進位置A1、右及び左の設定角度A2の範囲で操向操作されていると、右及び左の操作ロッド44の長孔44aの融通によって、右及び左のサイドクラッチ40は伝動状態に操作されている。これにより、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2(右及び左のサイドクラッチ40の伝動状態)に動力が伝達された状態で、機体は直進(前進又は後進)する。
【0036】
図2に示すように、右及び左の前輪1(操向部材41)が右の設定角度A2を越えて右の操向限度A3側に操向操作されると、右の操作ロッド44の長孔44aの範囲を越えて右の操作ロッド44が引き操作されて、右の操作軸43により右のサイドクラッチ40が遮断状態に操作される。これにより、右及び左の前輪1、左の後輪2(旋回外側)(左のサイドクラッチ40の伝動状態)に動力が伝達され、右の後輪2(旋回中心側)(右のサイドクラッチ40の遮断状態)が自由回転する状態で、機体は右に旋回する。
【0037】
図2に示すように、右及び左の前輪1(操向部材41)が左の設定角度A2を越えて左の操向限度A3側に操向操作されると、左の操作ロッド44の長孔44aの範囲を越えて左の操作ロッド44が引き操作されて、左の操作軸43により左のサイドクラッチ40が遮断状態に操作される。これにより、右及び左の前輪1、右の後輪2(旋回外側)(右のサイドクラッチ40の伝動状態)に動力が伝達され、左の後輪2(旋回中心側)(左のサイドクラッチ40の遮断状態)が自由回転する状態で、機体は左に旋回する。
【0038】
図2及び図3に示すように、右及び左の回転数センサー50(走行距離検出手段に相当)が後車軸ケース37に備えられて、右及び左の回転数センサー50により右及び左のサイドクラッチ40の伝動下手側の回転数を検出するように構成されており、右及び左の回転数センサー50の検出値が制御装置23に入力されている。これにより、右及び左のサイドクラッチ40の伝動状態及び遮断状態に関係なく、右及び左の回転数センサー50により右及び左の後輪2の回転数が検出される。
【0039】
[4]
次に、苗植付装置5及び繰り出し部15への伝動系について説明する。
図1及び図3に示すように、ミッションケース34の副変速装置(図示せず)の動力が植付クラッチ26及びPTO軸25を介して苗植付装置5に伝達される。ミッションケース34の副変速装置(図示せず)の動力が、施肥クラッチ27及び駆動ロッド30介して繰り出し部15に伝達されており、植付及び施肥クラッチ26,27を伝動及び遮断状態に操作する電動モータ28が備えられている。
【0040】
図1及び図3に示すように、植付クラッチ26が伝動状態に操作されると、苗のせ台10が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が図1の紙面反時計方向に回転駆動され、苗のせ台10の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面G2に植え付ける。植付クラッチ26が遮断状態に操作されると、苗のせ台10の往復横送り駆動及び回転ケース7の回転駆動が停止する。
【0041】
図1及び図3に示すように、施肥クラッチ27が伝動状態に操作されると、ホッパー14から肥料が所定量ずつ繰り出し部15によって繰り出され、ブロア16の送風により肥料がホース18を通って作溝器17に供給されるのであり、作溝器17を介して肥料が田面G2に供給される。施肥クラッチ27が遮断状態に操作されると、繰り出し部15が停止して、田面G2への肥料の供給が停止する。
【0042】
[5]
次に、苗植付装置5の自動昇降制御手段61について説明する。
図3に示すように、自動昇降制御手段61が制御装置23に備えられている。苗植付装置5の横軸芯P1周りに中央のフロート9の後部が上下に揺動自在に支持されて、苗植付装置5に対する中央のフロート9の高さを検出するポテンショメータ22が備えられており、ポテンショメータ22の検出値が制御装置23に入力されている。機体の進行に伴って中央のフロート9が田面G2に接地追従するのであり、ポテンショメータ22の検出値により苗植付装置5に対する中央のフロート9の高さを検出することによって、田面G2(中央のフロート9)から苗植付装置5までの高さを検出することができる。
【0043】
図3に示すように、油圧シリンダ4に作動油を給排操作する制御弁24が備えられており、制御装置23により制御弁24が操作される。制御弁24により油圧シリンダ4に作動油が供給されると、油圧シリンダ4が収縮作動して苗植付装置5が上昇し、制御弁24により油圧シリンダ4から作動油が排出されると、油圧シリンダ4が伸長作動して苗植付装置5が下降する。
【0044】
図3に示すように、苗植付装置5に対する中央のフロート9の高さ(田面G2(中央のフロート9)から苗植付装置5までの高さ)に基づいて、苗植付装置5が田面G2から設定高さに維持されるように(ポテンショメータ22の検出値(ポテンショメータ22と中央のフロート9との上下間隔)が設定値に維持されるように)、制御弁24が操作され、油圧シリンダ4が伸縮作動して、苗植付装置5が自動的に昇降する(以上、自動昇降制御手段61の作動状態)。
【0045】
[6]
次に、昇降レバー11について説明する。
図1及び図3に示すように、運転座席13の右横側に昇降レバー11が備えられ、昇降レバー11は自動位置、上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置に操作及び保持自在に構成されており、昇降レバー11の操作位置が制御装置23に入力されている。機体に対するリンク機構3の上下角度を検出するポテンショメータ29が備えられて、ポテンショメータ29の検出値が制御装置23に入力されており、機体に対するリンク機構3の上下角度を検出することによって、機体に対する苗植付装置5の高さを検出することができる。
【0046】
図3に示すように、昇降レバー11を上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置に操作した状態(昇降レバー11を自動位置に操作していない状態)において、以下の説明のように制御装置23により、制御弁24及び電動モータ21,28が操作されて、油圧シリンダ4、植付及び施肥クラッチ26,27、右及び左のマーカー19が操作される。この場合、後述する[7]に記載の操作レバー12の上昇位置U及び下降位置Dの機能は作動せず、操作レバー12の右及び左マーカー位置R,Lの機能だけが作動する。
【0047】
図3に示すように、昇降レバー11を上昇位置に操作すると、自動昇降制御手段61が停止し、植付及び施肥クラッチ26,27が遮断状態に操作され、右及び左のマーカー19が格納姿勢に操作されて、油圧シリンダ4が収縮作動して苗植付装置5が上昇する。昇降レバー11を上昇位置に操作した状態で、苗植付装置5が上限位置に達したことがポテンショメータ29により検出されると、油圧シリンダ4が自動的に停止する。
【0048】
図3に示すように、昇降レバー11を下降位置に操作すると、自動昇降制御手段61が停止し、植付及び施肥クラッチ26,27が遮断状態に操作され、右及び左のマーカー19が格納姿勢に操作された状態で、油圧シリンダ4が伸長作動して苗植付装置5が下降する。中央のフロート9が田面G2に接地すると自動昇降制御手段61が作動して、苗植付装置5が田面G2に接地して停止した状態となる(苗植付装置5が田面G2から設定高さに維持されるように(ポテンショメータ22の検出値(ポテンショメータ22と中央のフロート9との上下間隔)が設定値に維持されるように)、苗植付装置5が自動的に昇降する状態)。
【0049】
図3に示すように、昇降レバー11を中立位置に操作すると、自動昇降制御手段61が停止し、植付及び施肥クラッチ26,27が遮断状態に操作され、右及び左のマーカー19が格納姿勢に操作された状態で、油圧シリンダ4が停止する。
このように、昇降レバー11を上昇位置、中立位置及び下降位置に操作することによって、苗植付装置5を任意の高さに上昇及び下降させて停止させることができる。
【0050】
図3に示すように、昇降レバー11を植付位置に操作すると、右及び左のマーカー19が格納姿勢に操作された状態で、自動昇降制御手段61が作動し、植付及び施肥クラッチ26,27が伝動状態に操作される。これにより、苗のせ台10が左右に往復横送り駆動されるのに伴って回転ケース7が回転駆動され、苗のせ台10の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面G2に植え付けるのであり、ホッパー14から肥料が所定量ずつ繰り出し部15によって繰り出され、ブロア16の送風により肥料がホース18を通って作溝器17に供給され、作溝器17を介して田面G2に供給される。
【0051】
[7]
次に、操作レバー12(人為操作具に相当)について説明する。
図1及び図3に示すように、操縦ハンドル20の下側の右横側に操作レバー12が備えられ、操作レバー12が右の横外方に延出されている。操作レバー12は中立位置Nから上方の上昇位置U、下方の下降位置D、後方の右マーカー位置R及び前方の左マーカー位置Lの十字方向に操作自在に構成されて、中立位置Nに付勢されており、操作レバー12の操作位置が制御装置23に入力されている。
【0052】
昇降レバー11を自動位置に操作した状態において、以下の説明ように、操作レバー12の操作に基づいて、制御装置23により制御弁24及び電動モータ21,28が操作されて、油圧シリンダ4、植付及び施肥クラッチ26,27、右及び左のマーカー19が操作される。
【0053】
図3に示すように、操作レバー12を上昇位置Uに操作すると(上昇位置Uに操作して中立位置Nに操作すると)、植付及び施肥クラッチ26,27が遮断状態に操作されて、自動昇降制御手段61が停止し、油圧シリンダ4が収縮作動して苗植付装置5が上昇し、後述するように右及び左のマーカー19が格納姿勢に操作される。苗植付装置5が上限位置に達したことがポテンショメータ29により検出されると、油圧シリンダ4が自動的に停止する。
【0054】
図3に示すように、操作レバー12を下降位置Dに操作すると(下降位置Dに操作して中立位置Nに操作すると)、自動昇降制御手段61が停止し、植付及び施肥クラッチ26,27が遮断状態に操作され、右及び左のマーカー19が格納姿勢に操作された状態で、油圧シリンダ4が伸長作動して苗植付装置5が下降する。中央のフロート9が田面G2に接地すると、自動昇降制御手段61が作動して、苗植付装置5が田面G2に接地して停止した状態となる(苗植付装置5が田面G2から設定高さに維持されるように(ポテンショメータ22の検出値(ポテンショメータ22と中央のフロート9との上下間隔)が設定値に維持されるように)、苗植付装置5が自動的に昇降する状態)。
【0055】
前述のように、操作レバー12を下降位置Dに操作した後(下降位置Dに操作して中立位置Nに操作した後)、操作レバー12を再び下降位置Dに操作すると(再び下降位置Dに操作して中立位置Nに操作すると)、自動昇降制御手段61が作動した状態で、植付及び施肥クラッチ26,27が伝動状態に操作される。
【0056】
図3に示すように、ポテンショメータ29により検出される苗植付装置5の高さが、事前に設定された所定高さよりも低い状態において、以下のような操作が行われる。
右(左)のマーカー19が格納姿勢に操作された状態において、操作レバー12を右マーカー位置R(左マーカー位置L)に第1設定時間(比較的短い時間)以上に亘って操作すると、右(左)のマーカー19が作用姿勢に操作される。
右(左)のマーカー19が作用姿勢に操作された状態において、操作レバー12を右マーカー位置R(左マーカー位置L)に第2設定時間(第1設定時間よりも長い時間)以上に亘って操作すると、右(左)のマーカー19が格納姿勢に操作される。
【0057】
図3に示すように、苗植付装置5が上昇して、ポテンショメータ29により検出される苗植付装置5の高さが、事前に設定された所定高さよりも高くなると、作用姿勢の右及び左のマーカー19が格納姿勢に操作される。ポテンショメータ29により検出される苗植付装置5の高さが、事前に設定された所定高さよりも高い状態では、前述のように操作レバー12を右及び左マーカー位置R,Lに操作しても、これに関係なく右及び左のマーカー19が格納姿勢に維持される。
【0058】
[8]
次に、畦際での旋回時の制御に関する構造について説明する。
図3に示すように、制御装置23に、機体位置検出手段51、旋回開始位置検出手段52(設定手段に相当)、旋回終了位置検出手段53(設定手段に相当)、第1操作手段54、第2操作手段55、補正手段56、自動上昇手段57が備えられている。
【0059】
昇降レバー11が自動位置に操作された状態において、機体位置検出手段51、旋回開始位置検出手段52、旋回終了位置検出手段53、第1及び第2操作手段54,55、補正手段56、自動上昇手段57が、以下の[9]〜[13]に記載のように作動する。人為的に操作自在な設定スイッチ46が備えられており、昇降レバー11が自動位置に操作された状態において、自動上昇手段57を作動及び停止状態に設定することができる。
【0060】
図6に示すように、機体位置検出手段51は、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1(機体の旋回行程の位置に相当)を検出するものである(これについて言い換えると、旋回開始前の機体の進行方向における機体の座標を検出するものである)。以下の[9]〜[13]に記載のようにして機体位置検出手段51により、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1が検出される。
【0061】
6条植型式の苗植付装置5を備えた乗用型田植機では、畦際(畦B)において、図6に示すように、前半の旋回行程L1及び後半の旋回行程L2を行って、作業行程L01から次の作業行程L02に入る場合がある。前半の旋回行程L1及び後半の旋回行程L2について、以下の[9]〜[13]において説明する。
【0062】
操作レバー12が上昇位置Uに操作(上昇位置Uに操作されて中立位置Nに操作)されることに基づいて、前半の旋回行程L1及び後半の旋回行程L2に入る状態、並びに、
右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2を越えて右(左)の操向限度A3側に操向操作されることに基づいて、前半の旋回行程L1及び後半の旋回行程L2に入る状態、
の2つの状態があり、この2つの状態を以下の[9]〜[13]において説明する。
【0063】
[9]
次に、操作レバー12が上昇位置Uに操作(上昇位置Uに操作されて中立位置Nに操作)されることに基づいて、前半の旋回行程L1及び後半の旋回行程L2に入る状態において、前半の旋回行程L1について、図4及び図6に基づいて説明する。
【0064】
作業行程L01において、苗植付装置5が田面G2に接地して、自動昇降制御手段61の作動状態、植付及び施肥クラッチ26,27の伝動状態(作業装置5,15の作動状態に相当)、右及び左のサイドクラッチ40の伝動状態、右のマーカー19が作用姿勢に操作された状態、左のマーカー19が格納姿勢に操作された状態となっていたとする。
【0065】
この状態で機体が畦際に達すると、畦Bに対して機体の前後方向が直交した状態となっており、運転者は最初に操作レバー12を上昇位置Uに操作する(上昇位置Uに操作して中立位置Nに操作する)(ステップS1)。
これにより、植付及び施肥クラッチ26,27が遮断状態に操作されて(ステップS2)(人為操作具12により作業装置5,15が非作業状態に操作された状態に相当)、苗植付装置5及び繰り出し部15が停止し、自動昇降制御手段61が停止する(ステップS3)。油圧シリンダ4が収縮作動して苗植付装置5が上昇し(ステップS4)、右のマーカー19が格納姿勢に操作される(ステップS5)。苗植付装置5が上限位置に達したことがポテンショメータ29により検出されると、油圧シリンダ4が自動的に停止する。
【0066】
操作レバー12が上昇位置Uに操作されたことによる操作信号が制御装置23に入力されると、この時点において、旋回開始位置検出手段52により、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1が、「0(原点)」として検出(設定)され、「0(原点)」が旋回開始位置E11として検出(設定)される(ステップS101)。
【0067】
これと同時に、旋回終了位置検出手段53により、「0(原点)」が旋回終了位置E31として設定される(ステップS102)(機体の旋回開始位置E11から所定の機体の旋回行程L1,L2が行われた位置を機体の旋回終了位置E31として設定する状態に相当)。この場合、畦Bに対して機体の前後方向が直交した状態で、旋回開始位置E11が検出(設定)されるので、「0(原点)」が旋回終了位置E31として設定されると、旋回開始位置E11と旋回終了位置E31とが畦Bから略同じ位置となるのであり、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)(旋回開始前の機体の進行方向に相当)が畦Bに対して直交した状態となる。
【0068】
運転者は操作レバー12を上昇位置Uに操作してから直ちに、操縦ハンドル20を操作し、右及び左の前輪1(操向部材41)を旋回方向に操向操作して、前半の旋回行程L1に入る。右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2を越えて右(左)の操向限度A3側に操向操作されると(ステップS6)、前項[2]に記載のように、旋回外側のサイドクラッチ40が伝動状態に操作された状態で、旋回中心側のサイドクラッチ40が遮断状態に操作される(ステップS7)。
【0069】
ステップS101において旋回開始位置E11の検出(設定)が行われると、機体位置検出手段51により、下記の式1に基づいて作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1(旋回開始前の機体の進行方向における機体の位置に相当)の検出が開始される(ステップS103)。
式1:Y1=R*SIN(θ)
R:機体の旋回半径
θ:旋回開始位置E11からの機体の移動角度
【0070】
図8(a)に示すように、右及び左の前輪1(操向部材41)の直進位置A1からの操向角度Aが決まると、機体の旋回中心Cが右及び左の後輪2の車軸65(図2参照)の延長線に位置していると判断され、前輪1及び後輪2のホイルベースW(右及び左の前輪1の車軸と右及び左の後輪2の車軸65(図2参照)との間隔)と、右及び左の前輪1(操向部材41)の直進位置A1からの操向角度Aとに基づいて、機体の旋回中心Cが検出される。機体の旋回中心Cが検出されると、機体の左右中央と機体の旋回中心Cとの距離が機体の旋回半径Rとして検出される。
【0071】
図8(a)(b)に示すように、機体の旋回中心C及び旋回半径Rが検出された状態において、旋回中心側の回転数センサー50のパルス(旋回中心側の後輪2の回転数)により、機体の走行距離Gが検出され(機体の旋回半径Rに対する円弧部分に相当)、機体の旋回中心C及び旋回半径Rと機体の走行距離Gとに基づいて、機体の移動角度θが検出される。以上のように、機体の旋回半径R及び移動角度θにより、式1に基づいて作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1が検出される(ステップS103)。
これにより、機体の移動角度θが0度(旋回開始位置E11)〜90度(境界位置E2)の範囲では、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1は、旋回開始位置E11から(+Y)に離れていく状態となる。
【0072】
[10]
次に、操作レバー12が上昇位置Uに操作(上昇位置Uに操作されて中立位置Nに操作)されることに基づいて、前半の旋回行程L1及び後半の旋回行程L2に入る状態において、後半の旋回行程L2について、図4及び図7に基づいて説明する。
【0073】
機体の移動角度θが90度(境界位置E2)を越えると、機体が後半の旋回行程L2に入ったと判断される。前半の旋回行程L1における機体の向きに対して、後半の旋回行程L2の向きは逆向きになるので、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1が、旋回開始位置E11(旋回終了位置E31)に接近していく状態となる。
【0074】
後半の旋回行程L2の後半に入ると、運転者は操縦ハンドル20を操作して、右及び左の前輪1(操向部材41)を直進位置A1に操作する(ステップS8)。これにより旋回中心側のサイドクラッチ40が伝動状態に操作されて(ステップS9)、機体は直進状態に入る。機体が直進状態に入ると式1による演算は行われず、右及び左の回転数センサー50のパルス(右及び左の後輪2の回転数)の平均値(マイナスの値)が、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1として検出される。
【0075】
右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2を越えて直進位置A1側に操作されて(ステップS8)、旋回中心側のサイドクラッチ40が伝動状態に操作されると(ステップS9)、これと同時に、植付及び施肥クラッチ26,27が遮断状態に操作された状態で、苗植付装置5が自動的に下降する(ステップS10)。
【0076】
中央のフロート9が田面G2に接地すると、自動昇降制御手段61が作動して、苗植付装置5が田面G2に接地して停止した状態となる(苗植付装置5が田面G2から設定高さに維持されるように(ポテンショメータ22の検出値(ポテンショメータ22と中央のフロート9との上下間隔)が設定値に維持されるように)、苗植付装置5が自動的に昇降する状態)(ステップS11)。
【0077】
作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1が旋回終了位置E31に到達したことが、旋回終了位置検出手段53により検出されると(ステップS12)、第2操作手段55により植付及び施肥クラッチ26,27が伝動状態に操作される(ステップS13)(旋回終了位置検出手段53の検出に基づいて、第2操作手段55により作業装置5,15を作動状態に操作した状態に相当)。
これにより、苗植付装置5による苗の植え付け、及び繰り出し部15による田面G2への肥料の供給が開始されて、次の作業行程L02に入る。
【0078】
[11]
次に、右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2を越えて右(左)の操向限度A3側に操向操作されることに基づいて、前半の旋回行程L1及び後半の旋回行程L2に入る状態において、前半の旋回行程L1について、図4,5,7に基づいて説明する。
【0079】
作業行程L01において、苗植付装置5が田面G2に接地して、自動昇降制御手段61の作動状態、植付及び施肥クラッチ26,27の伝動状態(作業装置5,15の作動状態に相当)、右及び左のサイドクラッチ40の伝動状態、右のマーカー19が作用姿勢に操作された状態、左のマーカー19が格納姿勢に操作された状態となっていたとする。
【0080】
この状態で機体が畦際に達すると、畦Bに対して機体の前後方向が直交した状態となっている。設定スイッチ46を作動位置に操作した状態で(ステップS21)、運転者は操作レバー12を上昇位置Uに操作せずに操縦ハンドル20を操作し、右及び左の前輪1(操向部材41)を旋回方向に操向操作して、前半の旋回行程L1に入る。
【0081】
これにより、右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2を越えて右(左)の操向限度A3側に操向操作されると(ステップS22)、前項[2]に記載のように、旋回外側のサイドクラッチ40が伝動状態に操作された状態で、旋回中心側のサイドクラッチ40が遮断状態に操作される(ステップS23)。
【0082】
右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2に達したことがポテンショメータ47により検出されると(ポテンショメータ47の検出値が制御装置23に入力されると)、植付及び施肥クラッチ26,27が遮断状態に操作されて(ステップS24)(第1操作手段54により、前輪1の操向操作に基づいて作業装置5,15が非作業状態に操作された状態に相当)、苗植付装置5及び繰り出し部15が停止し、自動昇降制御手段61が停止する(ステップS25)。自動上昇手段57により、油圧シリンダ4が収縮作動して苗植付装置5が上昇し(ステップS26)、右のマーカー19が格納姿勢に操作される(ステップS27)。苗植付装置5が上限位置に達したことがポテンショメータ29により検出されると、油圧シリンダ4が自動的に停止する。
【0083】
この場合、設定スイッチ46が停止位置に操作されていると(ステップS21)(自動上昇手段57の停止状態)、右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2を越えて右(左)の操向限度A3側に操向操作されても、旋回中心側のサイドクラッチ40が遮断状態に操作されるだけで、ステップS24に移行しない。従って、設定スイッチ46が停止位置に操作されている状態では、前項[9][10]に記載のように、運転者は操作レバー12を上昇位置Uに操作する(上昇位置Uに操作して中立位置Nに操作する)。
【0084】
[12]
次に、右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2を越えて右(左)の操向限度A3側に操向操作されることに基づいて、前半の旋回行程L1及び後半の旋回行程L2に入る状態において、旋回開始位置E12及び旋回終了位置31の検出(設定)について、図5及び図7に基づいて説明する。
【0085】
前項[11]に記載のように、右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2に達したことがポテンショメータ47により検出されると(ポテンショメータ47の検出値が制御装置23に入力されると)、この時点において、旋回開始位置検出手段52により、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1が、「0(原点)」として検出(設定)され、「0(原点)」が旋回開始位置E12として検出(設定)される(ステップS201)。
【0086】
この場合、右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2に達した時点において、畦Bに対して機体の前後方向が旋回方向に傾斜した状態となるので、この時点において旋回開始位置E12が設定されると、畦Bに対して旋回開始位置E12が斜めに傾斜した状態となる。
【0087】
従って、前項[9]に記載のように、「0(原点)」(旋回開始位置E12)が、そのまま旋回終了位置E32として設定されると、旋回終了位置E32も畦Bに対して斜めに傾斜した状態となる(旋回開始位置E12と旋回終了位置E32とが畦Bから異なる位置となる)(旋回開始位置E12に対して旋回終了位置E32が畦Bから離れた位置となる)。同様に右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2に達した時点において、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)が設定されると、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)が、畦Bに対して斜めに傾斜した状態となる。
【0088】
この場合、右及び左の前輪1(操向部材41)が直進位置A1から右(左)の設定角度A2に操向操作される間において、機体が旋回方向にどれだけの角度だけ傾斜するのかと言う傾斜角度θ1が、機体の走行速度や運転者による操縦ハンドル20の操作速度等に対応して事前に求められて、制御装置23に記憶されている。これにより、旋回開始位置E12が検出(設定)されると、右及び左の前輪1(操向部材41)が直進位置A1から右(左)の設定角度A2に操向操作されるまでの間の機体の走行速度や、運転者による操縦ハンドル20の操作速度等に基づいて、傾斜角度θ1が求められる。
【0089】
旋回終了位置検出手段53により、「0(原点)」(旋回開始位置E12)を旋回終了位置E32として仮に設定され、補正手段56により、旋回終了位置E32から傾斜角度θ1だけ畦G側(機体の旋回行程L1,L2に沿って旋回開始位置E12側)の位置が、旋回終了位置E31として設定される(ステップS202)(人為操作具12による作業装置5,15の非作業状態への操作に基づく機体の旋回終了位置E31と、第1操作手段54による作業装置5,15の非作業状態への操作に基づく機体の旋回終了位置E32との差が小さくなるように、第1操作手段54による作業装置5,15の非作業状態への操作に基づく機体の旋回終了位置E32を、機体の旋回行程L1,L2における旋回開始位置E12側に移動させる状態に相当)。
【0090】
後半の旋回行程L2(機体の左右中心が通過する予定の軌跡)と旋回終了位置E31との交点P3が、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)における旋回終了位置E31に対応する位置Y2として設定される(ステップS202)。これにより畦Bに対して直交する方向において、旋回終了位置E31(Y2)が旋回終了位置E32よりも畦Bに接近した状態となるのであり、旋回終了位置E12と旋回終了位置E31(Y2)とが互いに近い位置(略同じ位置)となる。
【0091】
[13]
次に、右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2を越えて右(左)の操向限度A3側に操向操作されることに基づいて、前半の旋回行程L1及び後半の旋回行程L2に入る状態において、前半の旋回行程L1及び後半の旋回行程L2について、図4,5,7に基づいて説明する。
【0092】
前項[12]に記載のように、旋回開始位置E12及び旋回終了位置E31(Y2)が検出(設定)された状態において、前項[9]の記載と同様に、機体位置検出手段51により、下記の式1に基づいて作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1の検出が開始される(ステップS203)。
式1:Y1=R*SIN(θ)
R:機体の旋回半径
θ:旋回開始位置E12からの機体の移動角度
これにより、機体の移動角度θが0度(旋回開始位置E12)〜90度(境界位置E2)の範囲では、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1は、旋回開始位置E12から(+Y)に離れていく状態となる。
【0093】
機体の移動角度θが90度(境界位置E2)を越えると、機体が後半の旋回行程L2に入ったと判断される。前半の旋回行程L1における機体の向きに対して、後半の旋回行程L2の向きは逆向きになるので、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1が、旋回開始位置E12(旋回終了位置E31(Y2))に接近していく状態となる。
【0094】
後半の旋回行程L2の後半に入ると、運転者は操縦ハンドル20を操作して、右及び左の前輪1(操向部材41)を直進位置A1に操作する(ステップS28)。これにより、旋回中心側のサイドクラッチ40が伝動状態に操作されて(ステップS29)、機体は直進状態に入る。機体が直進状態に入ると式1による演算は行われず、右及び左の回転数センサー50のパルス(右及び左の後輪2の回転数)の平均値(マイナスの値)が、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1として検出される。
【0095】
右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2を越えて直進位置A1側に操作されて(ステップS28)、旋回中心側のサイドクラッチ40が伝動状態に操作されると(ステップS29)、これと同時に、植付及び施肥クラッチ26,27が遮断状態に操作された状態で、苗植付装置5が自動的に下降する(ステップS30)。
【0096】
中央のフロート9が田面G2に接地すると、自動昇降制御手段61が作動して、苗植付装置5が田面G2に接地して停止した状態となる(苗植付装置5が田面G2から設定高さに維持されるように(ポテンショメータ22の検出値(ポテンショメータ22と中央のフロート9との上下間隔)が設定値に維持されるように)、苗植付装置5が自動的に昇降する状態)(ステップS31)。
【0097】
作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1が旋回終了位置E31(Y2)に到達したことが、旋回終了位置検出手段53により検出されると(ステップS32)、第2操作手段55により植付及び施肥クラッチ26,27が伝動状態に操作される(ステップS33)(旋回終了位置検出手段53の検出に基づいて、第2操作手段55により作業装置5,15を作動状態に操作した状態に相当)。
これにより、苗植付装置5による苗の植え付け、及び繰り出し部15による田面G2への肥料の供給が開始されて、次の作業行程L02に入る。
【0098】
[発明を実施するための第1別形態]
前述の[発明を実施するための形態]の図4及び図5のステップS103,S203において、式1に基づいて、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1を検出するように、機体位置検出手段51を構成するのではなく、機体位置検出手段51、旋回開始位置検出手段52及び旋回終了位置検出手段53を、以下のように構成してもよい。
【0099】
操作レバー12が上昇位置Uに操作されたことによる操作信号が制御装置23に入力されると(ステップS1)、又は右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2を越えて操作されたことがポテンショメータ47により検出されると(ステップS22)、旋回中心側の回転数センサー50の検出値の積算を開始する(旋回位置検出手段51に相当)。
【0100】
これとは別に、旋回中心側の回転数センサー50の検出値の積算を開始した時点(旋回開始位置E11,E12に相当)を、原点とし(旋回開始位置検出手段52に相当)、原点に対して第1設定値(旋回終了位置E31に相当)、又は第2設定値(旋回終了位置E31(Y2)に相当)が設定される。
【0101】
この場合、操作レバー12が上昇位置Uに操作されたことにより原点が設定されると、第1設定値が設定され、右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2を越えて操作されたことにより原点が設定されると、第2設定値が設定される。図6及び図7に示す畦際での旋回において、機体の旋回半径及び機体の走行距離が事前に認識され、旋回中心側の回転数センサー50の検出値が機体の位置を表す値として認識されており、前述の第1及び第2設定値が事前に制御装置23に記憶されている。
【0102】
後半の旋回行程L2において、旋回中心側の回転数センサー50の検出値(積算値)が前述の第1又は第2設定値に達する前に、右及び左の前輪1(操向部材41)が右(左)の設定角度A2を越えて直進位置A1側に操作されるのであり、これにより旋回中心側のサイドクラッチ40が伝動状態に操作され、苗植付装置5が自動的に下降する。
次に旋回中心側の回転数センサー50の検出値(積算値)が前述の第1又は第2設定値に達すると、旋回終了位置E31,E31(Y2)に達したと判断されて(旋回終了位置検出手段53に相当)、第2操作手段55により植付及び施肥クラッチ26,27が伝動状態に操作される。
【0103】
[発明を実施するための第2別形態]
前述の[発明を実施するための形態]において、右及び左の前輪1(操向部材41)の直進位置A1からの操向角度Aが変化するごとに、機体の旋回中心C及び旋回半径R、機体の走行距離G、機体の移動角度θの検出、式1による作業行程L01,l02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1の検出を行うのではなく、これに代えて以下のように構成してもよい。
【0104】
図6及び図7に示す前半の旋回行程L1(後半の旋回行程L2)において、10度(所定の角度範囲に相当)の範囲を備えた9個の領域(0度〜10度の領域、10度〜20度の領域、20度〜30度の領域、30度〜40度の領域、40度〜50度の領域、50度〜60度の領域、60度〜70度の領域、70度〜80度の領域、80度〜90度の領域)に分けて、9個の領域の各々に一つの機体の旋回半径R(領域の中央の角度に対応する機体の旋回半径R)を設定する。
例えば0度〜10度の領域において、右及び左の前輪1(操向部材41)の直進位置A1からの操向角度Aが5度の場合の機体の旋回半径R(図8(a)(b)参照)を、0度〜10度の領域の一つの機体の旋回半径Rとして設定する。
【0105】
右及び左の前輪1(操向部材41)の直進位置A1からの操向角度Aが0度〜10度の領域に存在すると、右及び左の前輪1(操向部材41)の直進位置A1からの操向角度Aが変化しても、これに関係なく0度〜10度の領域の一つの機体の旋回半径Rを使用し、機体の走行距離G、機体の移動角度θの検出、式1による作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1の検出を行う。
【0106】
10度〜20度・・・において、前述の同様に10度〜20度・・・の領域の一つの機体の旋回半径Rを使用して、機体の走行距離G、機体の移動角度θの検出、式1による作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1の検出を行う。
【0107】
[発明を実施するための第3別形態]
前述の[発明を実施するための第2別形態]に代えて以下のように構成してもよい。
図8に示す前半の旋回行程L1(後半の旋回行程L2)において、10度(所定の角度範囲に相当)の範囲を備えた9個の領域(0度〜10度の領域、10度〜20度の領域、20度〜30度の領域、30度〜40度の領域、40度〜50度の領域、50度〜60度の領域、60度〜70度の領域、70度〜80度の領域、80度〜90度の領域)に分けて、9個の領域の各々に一つの機体の旋回半径R(領域の最大の角度に対応する機体の旋回半径R)を設定する。
例えば0度〜10度の領域において、右及び左の前輪1(操向部材41)の直進位置A1からの操向角度Aが10度の場合の機体の旋回半径R(図8(a)(b)参照)を、0度〜10度の領域の一つの機体の旋回半径Rとして設定する。
【0108】
右及び左の前輪1(操向部材41)の直進位置A1からの操向角度Aが、0度(直進位置A1)から0度〜10度の領域に入っても、作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1の検出を行わない。右及び左の前輪1(操向部材41)の直進位置A1からの操向角度Aが10度に達すると、0度〜10度の領域の一つの機体の旋回半径R及び10度により、式1に基づいて作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1の検出を行う。
【0109】
10度〜20度・・・において、前述の同様に10度〜20度・・・の領域の機体の旋回半径Rを使用して、20度、30度・・・において、10度〜20度・・・の領域の一つの機体の旋回半径・・・により、式1に基づいて作業行程L01,L02の機体の進行方向(+Y)(−Y)での機体の位置Y1の検出を行う。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、機体の後部にロータリ耕耘装置(作業装置に相当)を昇降駆動自在に連結可能に構成されたトラクタや、機体の前部に刈取部(作業装置に相当)を昇降駆動自在に支持したコンバイン等の作業車にも適用できる。GPSにより機体位置検出手段51を構成することも可能である。ホッパー14において粉粒状の肥料に代えて、液状の肥料や、粉粒状や液状の薬剤や種籾等を入れた作業車にも適用できる。作業クラッチ(植付及び施肥クラッチ26,27)を伝動及び遮断状態に操作することを伴わずに、作業装置(例えば溝切り器)を作業地から上昇した上昇状態(非作業状態)、及び作業地に接地した下降状態(作業状態)に昇降自在に支持した作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0111】
1 前輪
5,15 作業装置
12 人為操作具
47 操向角度検出手段
50 走行距離検出手段
51 機体位置検出手段
52,53 設定手段
54 第1操作手段
55 第2操作手段
56 補正手段
A 操向角度
A1 直進位置
C 機体の旋回中心
E11,E12 旋回開始位置
E31,E32 旋回終了位置
G 機体の走行距離
L1,L2 機体の旋回行程
R 機体の旋回半径
+Y,−Y 旋回開始前の機体の進行方向
Y1 旋回開始前の機体の進行方向における機体の位置
θ 移動角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に備えられた作業装置を人為的に非作業状態に操作するもので人為的に操作される人為操作具と、前輪の操向操作に基づいて前記作業装置を非作業状態に操作する第1操作手段とを備え、
前記人為操作具又は第1操作手段による作業装置の非作業状態への操作に基づいて機体の旋回開始位置を検出し、前記機体の旋回開始位置から所定の機体の旋回行程が行われた位置を機体の旋回終了位置として設定する設定手段と、
前記機体の旋回行程の位置を検出する機体位置検出手段と、
前記機体位置検出手段による機体の旋回終了位置の検出に基づいて、前記作業装置を作業状態に操作する第2操作手段とを備えて、
前記人為操作具による作業装置の非作業状態への操作に基づく機体の旋回終了位置と、前記第1操作手段による作業装置の非作業状態への操作に基づく機体の旋回終了位置との差が小さくなるように、前記第1操作手段による作業装置の非作業状態への操作に基づく機体の旋回終了位置を、前記機体の旋回行程に沿って旋回開始位置側に移動させる補正手段を備えてある水田作業車。
【請求項2】
機体の走行距離を検出する走行距離検出手段と、前記前輪の直進位置からの操向角度を検出する操向角度検出手段とを備え、
前記機体の走行距離と前輪の直進位置からの操向角度とにより、機体の旋回半径と、機体の旋回中心に対して機体が移動した移動角度とを検出し、前記機体の旋回半径と移動角度とに基づいて三角関数により、前記旋回開始前の機体の進行方向における機体の位置を検出して、前記旋回開始前の機体の進行方向における機体の位置を前記機体の旋回行程の位置として検出するように、前記機体位置検出手段を構成してある請求項1に記載の水田作業車。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−213590(P2010−213590A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61720(P2009−61720)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】