説明

水硬性凝結系用分散剤

本発明は、分散剤としての、特に水硬性凝結系用流動化剤としてのポリマーP、およびこのポリマーPを含む水硬性凝結系に関する。このポリマーPは、少なくとも1つの酸単位、少なくとも1つのエステル単位、少なくとも1つのテトラヒドロフルフリル基を含有する単位、および任意選択で少なくとも1つのアミド単位を含有する単位を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性凝結系(hydraulically setting systems)用混和材料の領域、特にコンクリート組成物用分散剤の領域に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレングリコール側鎖を有するα-β-不飽和カルボン酸のポリマーは、それらの顕著な減水性のためコンクリート技術において分散剤として、特に流動化剤(plasticizer)として比較的長い間使用されている。これらのポリマーは櫛型ポリマー構造を有する。エステルおよびカルボキシル基のほかにアミド基も有する、いくつかのこのような櫛型ポリマーが存在する。
【0003】
しかし、流動化に関する改良にも拘らず、世界中の建造物現場の種々の要求条件に適応させることは、依然として1つの課題である。これは、種々のタイプの気候、セメント、骨材、セメント代替フィラーなど、ならびに広い分野の使用、例えばレディーミクストコンクリート、エアプレーストコンクリート(air-placed concrete)、自己充填コンクリート(self-compacting concrete)または現場で混練りしたコンクリートなどのためであり、これらの場合添加剤は、全く異なる要求条件を時々刻々に満たさなければならない。
【0004】
したがって、分散剤として、特に水硬性凝結系用流動化剤として使用することができる新たな混和材料が常に求められている。さらに、流動化剤として使用することができる、知られている櫛型ポリマーについての問題は、これらのポリマーの櫛様の界面活性剤構造のために、配合の際、かなりの量の空気が、鉱物質構造材料中に導入される可能性がある点である。このような空気空隙は、コンクリート内における空洞の形成をもたらし、これらがコンクリートの機械的性質および耐久性における劣化を招く恐れがある。
【0005】
その上、知られているコンクリート分散剤では、コンクリートにおいてのみ満足され、せっこう組成物用には限られた範囲までしか適していない流動化結果が往々にして得られる。せっこうの場合には、それらの分散剤により、比較的低い流動化しか得られず、したがってそれらを高用量で使用しなければならない。言い換えるとそれらの分散剤は、せっこう組成物をほとんど凝結固化させないような強い遅延剤効果を有する。例えば、せっこう流動化剤としては、メラミン-及びナフタレン-スルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物が今日まで使用されている。しかし、これらの流動化剤は、毒性のあるホルムアルデヒドを放出するために、生態環境的に問題があり、したがって望ましくないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第97/35814A1号
【特許文献2】国際公開第95/09821A2号
【特許文献3】DE100 15 135A1
【特許文献4】欧州特許出願公開第1138697A1号
【特許文献5】欧州特許出願公開第1348729A1号
【特許文献6】欧州特許第1138697B1号
【特許文献7】欧州特許第1061089B1号
【特許文献8】欧州特許出願公開第1178092A1号
【特許文献9】国際公開第2005/090416A1号
【特許文献10】欧州特許出願公開第0604676A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、第1にコンクリート組成物においても、せっこう組成物においても十分な流動化効果を示し、かつ第2に水硬性凝結系中に少量の空気空隙を導入するポリマーを調製することができる必要性が存在する。
【0008】
したがって、提供した場合に、従来技術の不利点が克服され、水硬性凝結組成物、特にコンクリート及びせっこうの十分な流動化効果を達成するのに適している分散剤を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、請求項1において特許請求されるポリマーPによって、このことを達成できることが見出された。少なくとも1つの酸単位、少なくとも1つのエステル単位、少なくとも1つの、テトラヒドロフルフリル基を含有する単位、および場合によって少なくとも1つのアミド単位を含むポリマーPが、大量にそれを使用しなければならないということがなく、異なる複数の水硬性凝結組成物を分散または流動化するのに著しく適していることがここに驚くべきことに見出されている。このため、本発明によるポリマーの経済的かつ生態環境的利用が共に可能となる。
【0010】
さらに、本発明は、本発明によるポリマーPの、水硬性凝結組成物用流動化剤としての使用、ならびに水性ディスパージョン(分散物)用分散剤としての使用を含む。その上、本発明は、少なくとも1つの結合剤および少なくとも1つのポリマーPを含む結合剤含有混合物、ならびにこのような結合剤含有混合物の調製を含む。本発明のさらに有利な構成は、下位請求項から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、エステル基を有するポリマーPであって、
(a)少なくとも1つの、式(I)の構造単位A;
【0012】
【化1】

【0013】
(b)少なくとも1つの、式(II)の構造単位B;
【0014】
【化2】

【0015】
(c)少なくとも1つの、式(III)の構造単位C;
【0016】
【化3】

【0017】
場合によって、
(d)少なくとも1つの、式(IV)の構造単位D;
【0018】
【化4】

【0019】
および、場合によって、
(e)少なくとも1つのさらなる構造単位E
を含むポリマーPに関する。
【0020】
R1は、H、CH2COOMまたは炭素原子1〜5個を有するアルキル基、特にHもしくはCH3であり;R2は、H、炭素原子1〜5個を有するアルキル基、COOMまたはCH2COOM、特にHであり;R3は、H、CH3、COOMまたはCH2COOM、特にHであり;R4はCOOMであり;あるいはR3は、R4と一緒に-CO-O-CO-として環を形成できる。
【0021】
Mは、H、C1〜C5アルキルラジカル、アルカリ金属、アルカリ土類金属または他の2価もしくは3価の金属原子、アンモニウム、アンモニウムカチオン、有機アンモニウム基またはこれらの混合物である。Mは、特にカチオン、特にH+、Na+、Ca++/2、Mg++/2、NH4+または有機アンモニウムとすることができる。多価イオンの場合、なかんずく、そのカルボキシレート、またはポリマーPの他の分子とすることもできるさらなる対イオンが存在しなければならない点は、当業者に明らかである。アンモニウム化合物は、特にテトラアルキルアンモニウムまたはHR3N+であり、Rはアルキル基、特にC1-〜C6-アルキル基、好ましくはエチルもしくはブチルである。アンモニウムイオンは、特にカルボキシル基を市販の第三級アミンで中和することにより得られる。
【0022】
R1がCH3であり、R2、R3およびMがHであるポリマーPが特に好ましい。
【0023】
R5は、互いに独立に、
【0024】
【化5】

【0025】
(R15は、-[(R11O)x-(R12O)y-(R13O)z-]-R14であり、R11、R12およびR13は、それぞれの場合において互いに独立にC2〜C4アルキレン基である)であり、 (R11O)、(R12O)および(R13O)単位の順序は任意の可能な配列にある。R14は、H、C1〜C12アルキルもしくはシクロアルキル基、C7〜C20アルキルアリールもしくはアラルキル基、または置換されたもしくは非置換のアリール基であり、x、y、zは、互いに独立に、それぞれ値0〜250を有し、かつx+y+z=3〜250である。
【0026】
R6は、互いに独立に、H、CH3、COOM、CH2COOM、またはR5もしくはR7について定義される置換基である。R6は、Hであることが好ましい。
【0027】
R7は、互いに独立に、式(V):
【0028】
【化6】

【0029】
の基である。
【0030】
式中、R16は、互いに独立に、NH、NH-(R17)q、O、または-O-(R18)s-であり、R17およびR18は、それぞれの場合において互いに独立に、C1 - C12アルキレン基または任意の可能な配列における順序を有する1つ又は複数のC2 - C4 オキシアルキレン基であり、qは互いに独立に整数であり、R17がC1-C12アルキレン基である場合は1であり、R17が1つ又は複数のC2-C4オキシアルキレン基である場合はそれぞれの場合において1〜150であり、sは互いに独立に整数であり、R18がC1-C12アルキレン基である場合は1であり、R18が1つ又は複数のC2-C4オキシアルキレン基である場合はそれぞれの場合において1〜150である。
【0031】
R8は、互いに独立に、H、CH3、COOM、CH2COOM、またはR5もしくはR7について定義される置換基である。R8は、Hであることが好ましい。
【0032】
R9およびR10は、一緒になって、酸素、硫黄またはさらに窒素原子を場合によって含有する環を形成できる。
【0033】
あるいはR9およびR10は、互いに独立に、H、C1〜C20アルキル基、C5〜C9シクロアルキル基、C7〜C12アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、または式(VI)、(VII)または(VIII)
-R19-X(R20)r (VI)
【0034】
【化7】

【0035】
-[(R11’O)x’-(R12’O)y’-(R13’O)z’-]-R14’ (VIII)
(R19は、互いに独立に、アルキレン基であり、R20は、互いに独立に、C1-〜C4-アルキル基であり、Xは互いに独立に、S、OまたはNであり、但しX=SもしくはOの場合r=1であり、またはX=Nの場合r=2であり;R21は、ヘテロ原子を場合によって有するアルキレン基であり、窒素原子と一緒に5員〜8員環、特に6員環を形成し;R11’、R12’およびR13’は、それぞれの場合において互いに独立にC2〜C4アルキレン基であり、 (R11’O)、(R12’O)および(R13’O)単位の順序は任意の可能な配列にあり;R14’は、C1〜C12アルキルもしくはシクロアルキル基、C7〜C20アルキルアリールもしくはアラルキル基、または置換されたもしくは非置換のアリール基である)の化合物である。R9は、式(XI)においてR9’について定義される基とも、式(XI’)においてR9”について定義される基ともすることができる。同様に、R10は、式(XI)においてR10’について定義される基とも、式(XI’)においてR10”について定義される基ともすることができる。
【0036】
指数x’、y’、z’は、互いに独立に、それぞれ値0〜100を有し、かつx’+y’+z’=1〜100である。
【0037】
好ましい実施形態において、ポリマーPにおいて基R1はHまたはCH3であり、基R2、R3およびMならびに好ましくはR6およびR8は、Hである。
【0038】
したがって、式(I)の構造単位Aは、メタクリル酸単位もしくはアクリル酸単位またはこれらの類似体であることが好ましい。式(I)の構造単位Aがメタクリル酸単位である場合に、特に良好な結果が得られた。
【0039】
ポリマーP中のR15について、(R11O)、(R12O)および(R13O)の順序はランダム、交互またはブロック様であり、(R11O)≠(R12O)≠(R13O)であることが好ましい。R11は、互いに独立に、C2-アルキレン基であり、R12は、互いに独立に、C3-アルキレン基であり、R13は、互いに独立に、C4-アルキレン基であることが好ましい。
【0040】
好ましいポリマーPにおいて、式(II)の構造単位Bの少なくとも30モル%、特に好ましくは50〜100モル%、より一層好ましくは80〜100モル%、最も好ましくは100モル%が、R11がC2-アルキレン基であり、y=0およびz=0である構造によって表される。このことは、R15が、全ての(R11O)、(R12O)および(R13O)単位の合計モル量に対して、少なくとも30モル%の(R11O)単位、好ましくは50〜100モル%の(R11O)単位、より一層好ましくは80〜100モル%の(R11O)単位を含むことが好ましいことを意味する。R15は、全ての(R11O)、(R12O)および(R13O)単位の合計モル量に対して、100モル%の(R11O)単位を含むことが特に好ましい。ポリマーPの調製方法に応じて、R14は、H、C1〜C12アルキルもしくはシクロアルキル基、C7〜C20アルキルアリールもしくはアラルキル基、または置換されたもしくは非置換のアリール基とすることができる。ポリマーPが、ポリマー類似反応により調製される場合、R14は、R14”特にメチル基であり、水素原子ではないことが好ましい。
【0041】
構造単位Cは、1つまたは2つのテトラヒドロフルフリル化合物を含有する。R7は式(V)の基であり、式中、R16がOまたはNHである。特に適切には、化合物中においてR16はOR18であり、R18は-(CH2CH2O)2-である。R8は式(V)と同様の基であってよい。R8は好ましくはHである。
【0042】
基R11’、R12’およびR13’、または(R11’O)、(R12’O)および(R13’O)は、互いに独立に、それぞれR11、R12およびR13について、または(R11O)、(R12O)および(R13O)について定義される置換基である。
【0043】
好ましいポリマーPの場合に、式(IV)の構造単位Dは、R9がHであり、R10が式(VIII)の化合物であり、zが0であり、R11’がC2-アルキレン基であり、かつR12’がC3-アルキレン基である構造によって表される。このことは、R10が、全ての(R11’O)および(R12’O)単位の合計モル量に対して、少なくとも30モル%の(R11’O)単位、好ましくは50〜80モル%の(R11’O)単位、より一層好ましくは60〜80モル%の(R11’O)単位、および少なくとも5モル%の(R12’O)単位、好ましくは10〜50モル%の(R12’O)単位、より一層好ましくは20〜40モル%の(R12’O)単位を含むことが好ましいことを意味する。R10は、全ての(R11’O)、(R12’O)および(R13’O)単位の合計モル量に対して、少なくとも70モル%の(R11’O)単位、および多くとも30モル%の(R12’O)単位を含むことが特に好ましい。
【0044】
さらなる構造単位Eは、さらなるアミドまたはエステル単位とすることができる。例えば、構造単位Eは、モノ-もしくはジカルボン酸をアルキルアルコール、特にC6〜C20アルキルアルコールと反応させることにより調製されるエステル単位とすることができる。
【0045】
特に好ましいポリマーPは、
(a)少なくとも1つの、式(I’)の構造単位A;
【0046】
【化8】

【0047】
(b)少なくとも1つの、式(II’)の構造単位B;
【0048】
【化9】

【0049】
および
(c)少なくとも1つの、式(III’)の構造単位C
【0050】
【化10】

【0051】
(R1は、Hまたはアルキル基、好ましくはメチル基であり、
Mは、H+、Na+、Ca++/2、Mg++/2、NH4+または有機アンモニウム、好ましくはH+であり、
R11は、エチレン基であり、
R12は、プロピレン基であり、
R13は、ブチレン基であり、
R14は、C1〜C12アルキル基、好ましくはメチル基であり、
R16は、OまたはNH、好ましくはOであり、
xは1〜250、好ましくは10〜100であり、yは0〜250、好ましくは0〜50であり、zは0〜100、好ましくは0である。
【0052】
ポリマーPは、対応する構造単位A、B、Cならびに場合によってDおよびEの異なる構造単位の組合せを有することができる。例えば、複数の構造単位Aは、ポリマーPにおける混合物、例えばアクリル酸単位とのメタクリル酸単位の混合物として存在することができる。別法として、複数のエステル単位Bは、ポリマーPにおける混合物、例えば異なる置換基R15を有する複数のエステル単位Bとして存在することができる。例えば、ポリアルキレングリコールの、特にポリプロピレングリコールとのポリエチレングリコールの合同使用、またはポリアルキレングリコールの、特に異なる分子量を有するポリエチレングリコールの合同使用が好ましい。複数のアミド単位Dが、特に、少なくとも1つの、基R9およびR10としてのR9”およびR10”による単位Dとの、少なくとも1つの、基R9およびR10としてのR9’およびR10’による単位Dの組合せが、ポリマーP中に存在することも可能である。
【0053】
好ましい実施形態において、ポリマーPは、それぞれの場合に、ポリマーP中の構造単位A、B、C、DおよびEの合計モル量に対して、5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の、式(I)の構造単位Aと、1〜90モル%、好ましくは15〜70モル%の、式(II)の構造単位Bと、0.001〜10モル%、好ましくは0.01〜6モル%の、特に好ましくは0.1〜5モル%の式(III)の構造単位Cと、場合によって0〜30モル%、好ましくは0〜1モル%の、式(IV)の構造単位Dと、場合によって0〜30モル%、好ましくは0〜1モル%の構造単位Eとを含む。
【0054】
ポリマーPにおける個々の構造単位A、B、C、DおよびEの配列は、交互、統計、ブロック様またはランダムとすることができる。
【0055】
ポリマーPは、1000〜150000g/モル、好ましくは1000〜80000g/モル、特に好ましくは10000〜50000g/モルの範囲にある分子量Mwを有することが好ましく、構造単位10〜500個、好ましくは20〜200個、特に25〜60個から構成されることが好ましい。
【0056】
ポリマーPは、種々の方法で調製することができる。実質的に3つの方法が使用される。第1の方法では、いわゆるポリマー類似反応(polymer-analogous reaction)で、ポリカルボキシルポリマーおよびそれぞれのアルコールならびに場合によってアミンからポリマーが調製される。第2の方法では、第1段階でポリマー類似反応中にエステルおよびひょっとしてアミド基のほかに無水物基も形成され、第1段階で形成された無水物基がアミン化合物と反応して第2段階でアミドを生じる。第3の方法では、それぞれの不飽和カルボン酸-、エステル-およびアミド-官能性モノマーから、ラジカル重合によってポリマーが調製される。
【0057】
特に好ましいポリマーは、第1の方法により、ポリマー類似反応によって調製される。ポリマー類似反応は、市販の、α-,β-不飽和モノ-もしくはジカルボン酸のポリマーから、特にポリ(メタ)アクリル酸から、アルコールおよび場合によってアミンの量、タイプおよび比率を変動させることによって、単純かつ信頼できる方法で極めて様々な性状を有する極めて様々な櫛型ポリマーを得ることができる主な利点を有する。このようなポリマー類似反応は、例えば、国際公開第97/35814A1号、国際公開第95/09821A2号、DE100 15 135A1、欧州特許出願公開第1138697A1号、および欧州特許出願公開第1348729A1号中において記述されている。ポリマー類似反応の詳細は、例えば、欧州特許第1138697B1号の7頁20行〜8頁50行およびその実施例中に、または欧州特許第1061089B1号の4頁54行〜5頁38行およびその実施例中に開示されている。ポリマーPは、欧州特許出願公開第1348729A1号の3頁〜5頁およびその実施例において記述されるように、固体凝集状態で得ることもできる。
【0058】
したがって、ポリマーPであって、
(a)少なくとも1つのポリカルボン酸またはポリカルボン酸の類似体と、
(b)少なくとも1つの、式(IX)のモノヒドロキシ化合物F
HO-[(R11O)x-(R12O)y-(R13O)z]-R14” (IX)
および
(c)少なくとも1つの、式(X)のテトラヒドロフルフリル(THF)化合物G
【0059】
【化11】

【0060】
および場合によって
(d)少なくとも1つの、式(XI)のアミン化合物H
R9’-NH-R10’ (XI)
および場合によって
(e)少なくとも1つのさらなる化合物J
との反応によって得ることが可能であるポリマーPが使用されることが好ましい。
【0061】
個々の化合物は、この調製において、それぞれの場合において1モルのポリカルボン酸単位に対して、1〜90モル%、好ましくは15〜70モル%の、少なくとも1つの式(IX)の化合物Fと、0.001〜10モル%、好ましくは0.01〜6モル%の、特に好ましくは0.1〜5モル%の、少なくとも1つの式(X)のTHF化合物Gと、場合によって0〜30モル%、好ましくは0〜1モル%の、少なくとも1つの式(XI)のアミン化合物Hと、場合によって0〜30モル%、好ましくは0〜1モル%の少なくとも1つのさらなる化合物Jとが、少なくとも1つのポリカルボン酸またはポリカルボン酸の類似体の1モル当り使用されるような量で使用されることが好ましい。
【0062】
ポリカルボン酸またはポリカルボン酸の類似体は、少なくとも1つのモノマーa、および場合によって少なくとも1つのモノマーbの重合によって得ることができるホモポリマーまたはコポリマーを意味するものと理解される。モノマーaは、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、それらの類似体およびそれらの混合物からなる群から選択される。不飽和モノ-もしくはジカルボン酸は、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、メサコン酸またはクロトン酸、特にアクリル酸またはメタクリル酸を含むことが好ましい。モノ-もしくはジカルボン酸またはポリカルボン酸の類似体は、本発明の文脈において、酸塩、酸ハロゲン化物、酸無水物および酸エステル、特にアルキル酸エステルを意味するものと理解される。
【0063】
モノマーbは、α-β-不飽和モノ-もしくはジカルボン酸、α-β-不飽和モノ-もしくはジカルボン酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、特にメタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ならびにこれらの塩、エステルおよび混合物を含む、エチレン性不飽和モノマーからなる群から選択されることが好ましい。
【0064】
コポリマーとして、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマーならびにそれらの塩または部分塩が好ましい。
【0065】
ホモポリマーとして、ポリメタクリル酸またはポリアクリル酸、特にポリメタクリル酸またはその塩もしくは部分塩が好ましい。
【0066】
ここで、ポリカルボン酸およびポリカルボン酸の類似体は、遊離酸としてまたは部分塩として存在でき、ここで、また以下において、用語「塩」は、塩基による中和によって得られる古典的塩だけでなく、金属イオンと、配位子としてのカルボキシレートまたはカルボキシル基との間の錯体化学化合物も含む。ポリカルボン酸のまたはポリカルボン酸の類似体の調製において、使用される任意の開始剤、共開始剤および連鎖移動剤は、必要とされる場合、好ましくはポリマーP中に反応性ヒドロキシルもしくはアミン官能基が全く存在しないように選択される。
【0067】
「モノヒドロキシ化合物」は、ここで、また以下において、遊離ヒドロキシル基1個だけを有する物質を意味するものと理解される。
【0068】
「モノアミン化合物」は、ここで、また以下において、遊離アミノ基1個だけを有する物質、または気体としてもしくは水溶液としてのアンモニアを意味するものと理解される。
【0069】
「分子量」は、本発明の文脈において、重量平均分子量Mwを意味するものと理解される。
【0070】
「(メタ)アクリル酸」は、本資料全体にわたって、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味するものと理解される。
【0071】
ポリカルボン酸およびポリカルボン酸の類似体のホモポリマーまたはコポリマーは、通例の方法によるラジカル重合によって得られる。ラジカル重合は、溶媒中で、好ましくは水中で、または溶媒が存在せずに行うことができる。このラジカル重合は、少なくとも1つの連鎖移動剤、特に無機もしくは有機硫黄化合物、例えばメルカプタンなどが存在する状態で、またはリン化合物が存在する状態で行われることが好ましい。この重合は、形成されるホモポリマーまたはコポリマーが10〜500個、好ましくは20〜200個、より好ましくは25〜60個のモノマー構築ブロックで構成されるような条件下で有利に行われる。このような(メタ)アクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーは、市販されている。ポリカルボン酸およびポリカルボン酸の類似体のホモポリマーまたはコポリマーは、500〜20000g/モル、好ましくは1000〜15000g/モル、特に好ましくは1500〜8000g/モルの分子量Mwを有することが好ましい。
【0072】
モノヒドロキシ化合物Fは、一方の端部で、通例の反応条件下では反応性がない末端基で終結されることが好ましい。ここで、モノヒドロキシ化合物Fは、ポリアルキレングリコール骨格を有するポリマーであることが好ましい。このモノヒドロキシ化合物Fは、式(IX)
HO-[(R11O)x-(R12O)y-(R13O)z-]-R14” (IX)
(R11、R12およびR13は、それぞれの場合において互いに独立にC2〜C4アルキレン基であり、 (R11O)、(R12O)および(R13O)単位の順序は任意の可能な配列であり; R14”は、C1〜C12アルキルもしくはシクロアルキル基、C7〜C20アルキルアリールもしくはアラルキル基、または置換されたもしくは非置換のアリール基であり;x、y、zは、互いに独立に、それぞれの場合において、値0〜250を有し、かつx+y+z=3〜250である)を有する。
【0073】
置換基R14”としてメチル、エチル、イソプロピルまたはn-ブチル基を有する、特にメチル基を有する、またz=0を有する式(IX)のモノヒドロキシ化合物Fが好ましい。R11が互いに独立に、C2-アルキレン基であり、R12が互いに独立に、C3-アルキレン基であることが好ましい。Fは、一方の端部で末端キャップされた、エチレンオキシド/プロピレンオキシドのコポリマー、より好ましくはポリエチレングリコールであることが好ましい。
【0074】
複数の異なったF群の化合物の混合物が、同様に可能である。したがって、例えば、一方の端部で末端キャップされ、異なる分子量を有するポリエチレングリコールを混合することができ、あるいは、例えば、一方の端部で末端キャップされたポリエチレングリコールの、一方の端部で末端キャップされたエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマーとの、または一方の端部で末端キャップされたポリプロピレングリコールとの混合物を使用することができる。ポリアルキレングリコールは、一方の端部をメチル基で末端キャップすることが好ましい。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが、特にヒドロキシ化合物Fとして好ましい。
【0075】
本発明の文脈において、「通例の反応条件下では反応性がない末端基で終結される」とは、エステル化またはアミド化について反応性がある官能基の代わりにもはや反応可能ではない基が存在することを意味すると理解される。通例の反応条件とは、エステル化およびアミド化のため当業者に知られている反応条件である。「一方の端部で終結された(terminated at one end)」化合物とは、一方の端部だけが、もはや反応可能ではないことを意味する。
【0076】
少なくとも1つの式(IX)のヒドロキシ化合物Fの分子量は、約120〜20000g/モル、特に約250〜10000g/モルである。好ましい実施形態において、モノヒドロキシ化合物Fは、一方の端部が末端キャップされたポリアルキレングリコール、特に、300〜10000g/モル、特に500〜5000g/モル、好ましくは800〜3000g/モルの分子量Mwを有するポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールである。一方の端部で末端キャップされ、異なる分子量を有するポリアルキレングリコールの混合物も特に適しており、例えば分子量1000g/モルを有するポリアルキレングリコールの、分子量3000g/モルを有するポリアルキレングリコールとの混合物である。
【0077】
テトラヒドロフルフリル(THF)化合物Gは、式(X)を有する。
【0078】
【化12】

【0079】
ここで、R23は、互いに独立に、-NH2、-(R17)q-NH2、-OH、または-(R18)s-OH であり、R17およびR18は、それぞれの場合において互いに独立に、C1〜C12アルキレン基または任意の可能な配列における順序を有する1つまたは複数のC2-C4オキシアルキレン基である。qは、互いに独立に、整数であり、R17がC1-C12アルキレン基である場合は1であり、R17が1つまたは複数のC2-C4オキシアルキレン基である場合はそれぞれの場合において1〜150である。sは、互いに独立に、整数であり、R18がC1-C12アルキレン基である場合は1であり、R18が1つまたは複数のC2-C4オキシアルキレン基である場合はそれぞれの場合において1〜150である。好ましくはR23が-NH2または-OHであり、好ましくは-OHである。
【0080】
THF化合物Gの例は、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアミン、又はテトラヒドロフルフリル(ポリ)アルキレングリコールである。その様な化合物は、例えば、スイス国のFlukaから市販されている。各種のアルコキシル化THF化合物が、アルコキシル化を得意とする会社から得られてよい。
【0081】
THF-OH又はTHF-NH2をTHF化合物Gとして使用した場合に、良好な結果が得られる。THF-OHがとりわけ好ましい。
【0082】
アミン化合物Hが、第1の方法においてモノヒドロキシ化合物Fおよびテトラヒドロフルフリル化合物Gのほかに、場合によって使用され、また第2の方法において場合によって使用される。これは、エステル基の形成だけでなく、アミド基の形成も、もたらす。ポリマーPの調製が、第1の方法により、いわゆるポリマー類似反応によって行われる場合、アミン化合物Hは、モノヒドロキシ化合物Fとのポリカルボン酸の反応温度よりも高い沸点および引火点を有することが好ましい。さらに、アミン化合物Hはヒドロキシル基を含有しないことが好ましい。
【0083】
このようなアミン化合物Hの典型的な例は、式(XI)
R9’-NH-R10’ (XI)
によって表すことができる。
【0084】
第1に、R9’およびR10’は、一緒になって、酸素、硫黄またはさらに窒素原子を場合によって含有する環を形成できる。
【0085】
このようなアミン化合物Hの例は、特に9H-カルバゾール、インドリンまたはイミダゾールである。
【0086】
第2に、R9’およびR10’は、互いに独立に、H、C8〜C20アルキル基、C5〜C9シクロアルキル基、C7〜C12アラルキル基、または式(VI)、(VII)もしくは(VIII)の化合物とすることができる。
-R19-X(R20)r (VI)
【0087】
【化13】

【0088】
-[(R11’O)x’-(R12’O)y’-(R13’O)z’-]-R14’ (VIII)
【0089】
ここで、R19は、互いに独立に、アルキレン基、好ましくはC1-〜C4-アルキレン基であり、R20は、互いに独立に、C1-〜C4-アルキル基である。Xは、互いに独立に、S、OまたはNであり、但しX=SもしくはOの場合r=1であり、XがNである場合r=2である。R21は、ヘテロ原子を場合によって有するアルキレン基であり、窒素原子と一緒になって5員〜8員環、特に6員環を形成する。
【0090】
置換基R11’、R12’、R13’およびR14’、または指数x’、y’およびz’は、互いに独立に、上記において既に定義されたものと同一の意味を有する。
【0091】
このようなアミン化合物Hの例は、ジオクチルアミン、ジステアリルアミン、ジ-獣脂-脂肪族アミン、ステアリルアミンなどの脂肪族アミン、ココヤシ脂肪族アミン、オクタデシルアミン、獣脂脂肪族アミン、オレイルアミン; 3-ブトキシプロピルアミン、ビス(2-メトキシエチル)アミン; α-メトキシ-ω-アミノ-ポリオキシエチレン、α-メトキシ-ω-アミノポリオキシプロピレン、α-メトキシ-ω-アミノオキシエチレン-オキシプロピレンコポリマーである。
【0092】
アミン化合物Hは、第一級モノアミンであることが好ましい。α-メトキシ-ω-アミノオキシエチレン-オキシプロピレンコポリマー、例えばJeffamine(登録商標) M-2070など、またはα-メトキシ-ω-アミノポリオキシエチレンおよび、例えばHuntsman社により、MシリーズのJeffamine(登録商標)の名称のもとに販売されている他のモノアミン、ならびにこれらの混合物が、モノアミン化合物Hとして特に好ましい。最も好ましいものは、α-メトキシ-ω-アミノオキシエチレン-オキシプロピレンコポリマーである。このようなモノアミン化合物Hは、例えば、アルコールにより開始してエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの重合、続いて末端アルコール基のアミン基への変換から得ることができる。
【0093】
好ましいさらなる化合物Jは、ポリカルボン酸またはポリカルボン酸の類似体と反応することができる化合物である。化合物Jの例は、さらなるアミンまたはアルコール、例えばC6〜C20アルキルアルコールまたはさらなるモノ-もしくはジアミンである。複数の異なる化合物Jを使用することも可能である。
【0094】
ポリマーPをもたらす、ポリカルボン酸またはポリカルボン酸の類似体の、少なくとも1つの式(IX)のモノヒドロキシ化合物Fおよび少なくとも1つの式(X)のテトラヒドロフルフリル化合物Gおよび場合によって少なくとも1つの式(XI)のアミン化合物Hおよび場合によって少なくとも1つのさらなる化合物Jとの反応は、典型的には、撹拌しながらポリカルボン酸またはポリカルボン酸の類似体に、少なくとも1つのモノヒドロキシ化合物Fを添加し、反応温度まで加熱するような形で、ポリマー類似反応で行われる。この混合物は、上述の反応温度で撹拌され、少なくとも1つの式(X)のテトラヒドロフルフリル化合物Gが添加され、できれば真空中で、または反応物上もしくは反応物を通って気体流を通過させることによって反応が行われる。この反応のための温度は、例えば140〜200℃である。しかし、温度150〜175℃でも、反応は可能である。アミン化合物Hが使用される場合、その添加は、モノヒドロキシ化合物Fと同時に、またはこの反応段階中のもっと遅い時期に行うことができる。
【0095】
好ましい実施形態において、この反応は、エステル化触媒、特に酸が存在する状態で行われる。このような酸は、好ましくは硫酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、リン酸または亜リン酸である。硫酸が好ましい。反応混合物からの水分の除去は、大気圧下だけでなく真空中でも行うことができる。さらに、反応混合物上または反応混合物を通って気体流を通過させることができる。気体流として空気または窒素を使用することができる。
【0096】
この反応は、酸価の測定、例えば滴定によって監視することができ、カルボン酸対エステルもしくはアミド基の所望の比率が達成されるように、所望の酸価で停止させることができる。真空および冷却を止めることにより、反応が停止する。
【0097】
好ましい実施形態において、メトキシ基により一方の端部で終結させているポリエチレングリコールによって、ポリメタクリル酸がエステル化され、かつテトラヒドロフルフリル化合物、特にTHFアルコールまたはTHFアミンと反応する。
【0098】
第2の方法では、第1段階において、いわゆるポリマー類似反応によりエステル基および場合によってアミド基のほかに無水物基も形成され、第2段階において、第1段階で形成された無水物基は、アミン化合物により完全にもしくは部分的にアミドに変換される。このような方法は、例えば国際公開第2005/090416A1号中において記述されている。
【0099】
第1段階は、ポリマー類似反応について記述されたように行われることが好ましい。
【0100】
第2の方法の第1段階においてアミン化合物が既に使用されている場合、特に、アミン化合物Hについて記述されているアミン化合物が好ましい。
【0101】
この場合、アミン化合物Hは、第1段階の反応温度よりも高い沸点および引火点を有する。その上、アミン化合物Hは、ヒドロキシル基を含有することが許容されない。
【0102】
第1段階では、アミンを使用しないことが好ましい。
【0103】
第2の方法の第2段階において、第1段階において形成され、エステル基および場合によってアミド基のほかに無水物基を有するポリマーは、実質的に100℃未満、好ましくは60℃未満、好ましくは40℃未満の温度でアミン化合物H’と反応して、アミドを生じる。この反応は、10℃〜60℃、特に好ましくは15℃〜40℃、より一層好ましくは20℃〜30℃で行うことが好ましい。この反応は、緩やかな条件下で実現することができ、真空を要しない。そのため、低沸点を有するアミン化合物H’、またはアミノ基のほかにヒドロキシル基も含有するアミン化合物H’も使用することができる。
【0104】
ポリマーPの調製が、この第2の方法によって行われる場合、第2段階に適したアミン化合物H’の典型的な例は、式(XI’)
R9”-NH-R10” (XI’)
によって表すことができる。
【0105】
第1に、R9”およびR10”は、一緒になって、酸素、硫黄またはさらに窒素原子を場合によって含有する環を形成できる。このようなアミン化合物H’の例は、特に9H-カルバゾール、インドリン、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、1,3-チアゾリジン、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾール、イミダゾールである。モルホリンが特に適している。
【0106】
第2に、R9”およびR10”は、互いに独立に、H、C1〜C12アルキル基、C5〜C9シクロアルキル基、C7〜C12アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、特に-CH2CH2-OHもしくは-CH2CH(OH)CH3、または式(VI)、(VII)もしくは(VIII)の化合物とすることができる。
-R19-X(R20)r (VI)
【0107】
【化14】

【0108】
-[(R11’O)x’-(R12’O)y’-(R13’O)z’-]-R14’ (VIII)
【0109】
ここで、R19は、互いに独立に、アルキレン基、好ましくはC1-〜C4-アルキレン基であり、R20は、互いに独立に、C1-〜C4-アルキル基である。Xは、互いに独立に、S、OまたはNであり、但しX=SもしくはOの場合r=1であり、またはX=Nの場合r=2である。R21は、ヘテロ原子を場合によって有するアルキレン基であり、窒素原子と一緒になって5員〜8員環、特に6員環を形成する。
【0110】
置換基R11’、R12’、R13’およびR14’、または指数x’、y’およびz’は、互いに独立に、上記において既に定義されているものと同一の意味を有する。
【0111】
好ましいヒドロキシアルキル基は、基-CH2CH2-OHまたは-CH2CH(OH)CH3である。
【0112】
適切なアミン化合物H’は、例えば、アンモニア、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミンおよびシクロオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン; 2-フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、キシリルアミン; N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、3,3’-イミノビス(N,N-ジ-メチルプロピルアミン)、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、2-メトキシエチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-イソプロピルエタノールアミン、N-エチル-エタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、2-(2-アミノ-エトキシ)エタノール; 1-(2-アミノエチル)ピペラジン、2-モルホリノエチルアミン、3-モルホリノプロピルアミンである。
【0113】
アミン化合物H’は、モルホリン、2-モルホリン-4-イルエチルアミン、2-モルホリン-4-イルプロピルアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2-フェニル-エチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、および、例えばHuntsman社により、MシリーズのJeffamine(登録商標)の名称のもとに販売されている他のアミン、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されることが特に好ましい。
【0114】
第3の調製方法において、ポリマーPはラジカル重合により調製される。ラジカル重合によるルートは、最も一般的な方法であるが、特定の化合物の場合に、対応するモノマーの商業的入手性により複雑であり、複雑な工程管理を要する。
【0115】
したがって、本発明はさらに、少なくとも1つの遊離基開始剤の存在下における、
(a)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノ-もしくはジカルボン酸Mまたは不飽和モノ-もしくはジカルボン酸の類似体の;
(b)少なくとも1つの、式(XIII)のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体K;
【0116】
【化15】

【0117】
および
(c)少なくとも1つの、式(XIV)の第2のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体L;
【0118】
【化16】

【0119】
および場合によって
(d)少なくとも1つの、式(XV)の第3のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体N;
【0120】
【化17】

【0121】
および場合によって
(e)少なくとも1つのさらなるエチレン性不飽和化合物Q
との重合反応によって得ることが可能であるポリマーPに関する。
【0122】
ラジカル重合による調製において、個々のモノマーは、それぞれの場合においてモノマーM、K、L、NおよびQの合計モル量に対して、5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の、少なくとも1つのモノ-もしくはジカルボン酸M、1〜90モル%、好ましくは15〜70モル%の、少なくとも1つの式(XIII)のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体K、0.001〜10モル%、好ましくは0.01〜6モル%、特に好ましくは0.1〜5モル%の、少なくとも1つの式(XIV)の第2のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体L、場合によって0〜30モル%、好ましくは0〜1モル%の、少なくとも1つの式(XV)の第3のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体N、および場合によって0〜30モル%、好ましくは0〜1モル%の少なくとも1つのさらなるエチレン性不飽和化合物Qの量におけるものであることが好ましい。
【0123】
置換基R1、R2、R3、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、互いに独立に、それぞれ式(II)(III)または(IV)について既に記述されているものと同一の意味を有する。
【0124】
エチレン性不飽和モノ-もしくはジカルボン酸Mまたはこの不飽和モノ-もしくはジカルボン酸の類似体は、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、メサコン酸またはクロトン酸、特にアクリル酸またはメタクリル酸であることが好ましい。メタクリル酸が特に好ましい。本発明の文脈において、モノ-もしくはジカルボン酸の類似体は、酸塩、酸ハロゲン化物、酸無水物または酸エステル、特にアルキル酸エステルを意味するものと理解される。
【0125】
少なくとも1つの、式(XIII)のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体Kは、カルボン酸エステル、特に好ましくはアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルであることが好ましい。このようなエステルの例は、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートである。互いに組み合わせて異なる置換基R5を有する複数の式(XIII)のモノマーを使用することができる。例えば、異なる分子量を有するポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールの合同使用が好ましい。
【0126】
式(XIV)の第二のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体Kは、少なくとも1つのテトラヒドロフルフリル化合物を含有するカルボン酸誘導体である。テトラヒドロフルフリル化合物は、好ましくは、テトラヒドロフルフリルエステルまたはテトラヒドロフルフリルアミドである。アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミド、特にエステルが特に適切である。テトラヒドロフルフリルメタクリレートが特に適切である。
【0127】
式(XV)の第3のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体Nは、カルボキサミドである。式(VIII’)のアミン化合物H’によるエチレン性不飽和モノ-もしくはジカルボン酸のアミド、特に式(VIII)のモノアミン化合物Hのアミドは、適切なカルボキサミドとして使用することができる。(メタ)アクリル酸のアミドが特に好ましく、ポリオキシアルキレンモノアミドが好ましい。特に好ましいアミドモノマーは、アルキルポリアルキレングリコール(メタ)アクリルアミド、特に好ましくはメチルポリエチレングリコール(メタ)アクリルアミド、メチルポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリルアミドまたはメチルポリプロピレングリコール(メタ)アクリルアミドである。式(VIII’)のアミンの不飽和カルボキサミドの例は、モノ-もしくはジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、モノ-もしくはジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、モノ-もしくはジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、またはN-アルキル-N-ヒドロキシエチル-(メタ)アクリルアミドもしくはN-アルキル-N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドであることがが好ましい。
【0128】
1つまたは複数のこれらの不飽和カルボキサミドを使用することが可能である。
【0129】
ポリマーPは、種々の領域で、特にコンクリートおよびセメント技術またはせっこう技術において使用される。ポリマーPは、分散剤として、特に、水硬性凝結組成物用流動化剤として特に良好な性質を有する;すなわち、得られた混合物は、本分散剤を含まない組成物と比較して、固化が実質的に遅延されることなく、著しくより大きなフロー挙動を有する。フロー挙動は、通例スランプにより測定される。他方、同一のフロー挙動で、必要とされる水が著しく少なく、そのため硬化した水硬性凝結組成物の機械的性質が大いに向上する混合物を達成することが可能である。
【0130】
特に、ポリマーPは、水硬性凝結組成物用、特にコンクリート、モルタルまたはせっこう用流動化剤としての使用に適している。ポリマーPは、水性ディスパージョン用分散剤としても適している。
【0131】
原則として、コンクリートの領域において当業者に知られている全ての水硬性凝結物質は、水硬性凝結系もしくは組成物として使用することができる。これらは特に、水硬性結合剤、例えばセメントなど、例えばポルトランドセメントもしくはアルミナセメントなど、および/またはこれらの、フライアッシュ、シリカフューム、スラグ、高炉サンドおよび石灰石フィラーとの混合物である。本発明の文脈におけるさらなる水硬性凝結物質は、硬せっこうもしくは半水せっこうの形態におけるせっこう、または生石灰である。好ましい水硬性凝結組成物はセメントである。さらに、骨材、例えば砂、砂利、石、石英粉、白亜など、ならびに添加剤として、通例の成分、例えば、他のコンクリート流動化剤、例えばリグニンスルホン酸塩、スルホン化ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、またはポリカルボン酸エーテル、硬化促進剤、防錆剤、凝結遅延剤、収縮低減剤、消泡剤または空気連行剤などが可能である。
【0132】
本発明による使用のため、ポリマーPは、液体および固体の両方で、単独でもまたは混和材料の、特に分散剤もしくは流動化剤の成分としても使用することができる。したがって、本発明はさらに、少なくとも1つの本発明によるポリマーPを含む、液体または固体の形態における混和材料に関する。
【0133】
この混和材料は、個別のポリマーP、または複数の異なったポリマーPの混合物を含有できる。しかし、ポリマーPを、他の分散剤または流動化剤と一緒に使用することも可能である。この混和剤は、さらなる成分を含有することもできる。さらなる成分の例は、溶媒または添加剤、例えば、他の流動化剤、例えばリグニンスルホン酸塩、スルホン化ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物またはポリカルボン酸エーテル(PCE)、硬化促進剤、凝結遅延剤、収縮減少剤、消泡剤または泡形成剤などである。
【0134】
調製方法または反応手順に応じて、本流動化剤または分散剤は、ポリマーPのほかに、遊離の出発材料成分、特に遊離のモノヒドロキシ化合物、例えばポリアルキレングリコール、特に遊離のポリエチレングリコールなどを含有できる。
【0135】
ポリマーPが液体の形態で使用される場合、反応のため溶媒を使用することが好ましい。好ましい溶媒は、例えばヘキサン、トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサンまたはジオキサン、およびアルコール、特にエタノールもしくはイソプロパノールならびに水であり、水が最も好ましい溶媒である。
【0136】
ポリマーPは、固体凝集状態で存在することもできる。本発明の文脈において、固体凝集状態におけるポリマーは、室温において固体凝集状態で存在し、例えば、粉末、フレーク、ペレット、顆粒またはシートであり、この形態で問題なく輸送および貯蔵することができるポリマーを意味すると理解される。ポリマーPは、調製中に固体凝集状態に直接変換することができ、または最初液体形態で調製し、次いで、例えば粉末形態に、保護コロイドまたは他の乾燥剤の助けにより、例えば噴霧乾燥によって変換される。
【0137】
第2の方法により、第2段階でのみアミンが添加される場合、このアミンは、例えば最初、溶媒好ましくは水中に導入することができ、第1反応段階からの生成物を、ポリマー溶融物または固体の形態として例えば粉末として、またはフレークもしくは顆粒の形態で、撹拌しながら添加することができる。第2段階で溶媒を使用する際、所望される場合、例えば真空にすることによって、かつ/または加熱によってこの溶媒を再び除去することが可能であり、あるいはさらに希釈を行うことができる。また、アミンが、固体凝集状態において、または担体材料中もしくは同材料上に存在することも可能である。
【0138】
さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つの水硬性凝結結合剤と、少なくとも1つの本発明によるポリマーPとを含む結合剤含有混合物に関する。例えば、セメント、特にポルトランドセメントもしくはアルミナセメント、および/またはこれらの、フライアッシュ、シリカフューム、スラグ、高炉サンドおよび石灰石フィラーとの混合物、または生石灰、潜在水硬性粉末、不活性な微視的粉末、もしくはせっこうが、結合剤として適している。用語「せっこう」には、任意の知られている形態のせっこう、特に硫酸カルシウムα-半水和物、硫酸カルシウムβ-半水和物および硫酸カルシウム無水和物が含まれる。コンクリート組成物またはせっこう組成物が、結合剤含有混合物として適していることが好ましい。
【0139】
その上、この混合物は、さらに骨材、例えば砂、砂利、石、石英粉、白亜など、ならびに添加剤として、通例の成分、例えば、他の流動化剤、例えばリグニンスルホン酸塩、スルホン化ナフタレン-ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、またはポリカルボン酸エーテル(PCE)、硬化促進剤、凝結遅延剤、収縮減少剤、消泡剤または泡形成剤などを含有できる。
【0140】
所望の効果を達成するため、ポリマーPは、結合剤の重量に対して0.01〜10重量%の量で使用されることが好ましい。所望の効果を達成するため、複数のポリマーPを混合物として使用することも可能である。
【0141】
さらなる態様において、本発明は、結合剤含有混合物の調製方法であって、少なくとも1つのポリマーPが、固体もしくは液体の形態において別々に、または前混合された混和材料として結合剤に添加される方法に関する。
【0142】
固体の形態におけるポリマーPの添加が特に適している。したがって固体凝集状態におけるポリマーPは、比較的長期にわたって貯蔵することが可能であり、通例袋で包装されまたはサイロに貯蔵され、かつ使用されるセメント組成物、いわゆる乾式混合物(dry mix)の成分とすることができる。このような乾式混合物は、比較的長い貯蔵期間後も使用することができ、良好な流動性を有する。
【0143】
ポリマーPは、通例のコンクリート組成物またはせっこう組成物に、水の添加と一緒に、または水の添加直前もしくは直後に添加することもできる。水溶液もしくはディスパージョンの形態における、特に混練水として、もしくは混練水の一部としてのポリマーPの添加が、ここでは特に適していることが見出されている。水溶液もしくは水性ディスパージョンの調製は、ポリマーPを調製する間の水の添加によって、またはその後の水によるポリマーPの混練りによって行われる。典型的には、ポリマーPの割合は、水溶液もしくはディスパージョンの重量に対して10〜90重量%、特に20〜50重量%である。ポリマーPのタイプに応じて、ディスパージョンまたは溶液が形成される。溶液が好ましい。
【0144】
本発明によるポリマーPは、比較的長い間にわたって貯蔵安定性がある水性組成物の成分とすることができ、あるいは水硬性凝結組成物の成分とすることができる。水硬性凝結組成物の成分として、ポリマーPは、水の添加と一緒に、または水の添加直前もしくは直後に、通例の水硬性凝結組成物に添加できる。水溶液もしくはディスパージョンの形態における、特に混練水として、もしくは混練水の一部としてのポリマーPの添加が、ここでは特に適していることが見出されている。
【0145】
ポリマーPは、水硬性凝結組成物、特にセメント質組成物用流動化剤として特に良好な性状を有する;すなわち、セメントおよびコンクリート技術に通例である水/セメント(W/C)比において、得られた混合物は、本流動化剤を含まない組成物と比較して、実質的により大きいフロー挙動を有する。フロー挙動は、通例スランプにより測定される。他方、同一のフロー挙動で、必要とされる水が著しく少なく、そのため硬化した水硬性凝結組成物の機械的性質が大いに向上する混合物を達成することが可能である。
【0146】
やはり驚くべきことは、本発明によるポリマーPが、コンクリート組成物においても、せっこう組成物においても良好な流動化性状を有する点である。
【0147】
(実施例)
1. ポリマー類似反応によって調製される、本発明によるポリマーP-1調製方法
240gの、ポリメタクリル酸(PMAA、平均分子量Mw約4500g/モルを有する)の40パーセント濃度水溶液(酸単位約1モルに相当する)および2.5gの50パーセント濃度硫酸を、機械的撹拌機(IKA(登録商標)撹拌機)、温度計、ガス導入管および蒸留ブリッジを有する丸底フラスコ中に導入した。混合物を50℃まで加熱し、360gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG、平均分子量Mw約1000g/モルを有する)を添加した。反応混合物を、N2流れの下で175℃まで加熱した。この混合物中に存在する水分および反応水を、N2流れの下で連続的に蒸留除去した。この温度に達すると、4.0gの50パーセント濃度水酸化ナトリウム水溶液および4.0gのテトラヒドロフルフリルアルコール(THF-OH、Fluka, Switzerlandから入手可能)を反応混合物に添加し、80ミリバールの真空を適用した。2.5時間後、完全に反応により変換に達している。別法としてポリマー溶融物を直径約100mmおよび高さ7mmのアルミニウム皿中に注いで固化させ、または、50パーセント濃度ポリマー溶液を得るため、<100℃まで冷却した後、475gの水を添加した。
【0148】
Table 1(表1)中に提示した出発材料および量を使用して、ポリマーP-1と同じ方法でポリマーP-2〜P-12を調製した。ポリカルボン酸として、40パーセント濃度水溶液としてのポリメタクリル酸(PMAA、平均分子量Mw約4500g/モルを有する)または50パーセント濃度水溶液としてのポリアクリル酸(PAA、平均分子量Mw約6000g/モルを有する)を使用し、式(IX)によるモノヒドロキシ化合物Fとして、平均分子量Mw約1000g/モルを有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG-1000)を使用し、式(X)によるテトラヒドロフルフリル化合物Gとして、テトラヒドロフルフリルアルコール(THF-OH)、テトラヒドロフルフリルアミン(THF-NH2)、または約200 g/mol、1000 g/mol、もしくは2000 g/molの平均分子量Mwを有するテトラヒドロフルフリルポリエチレングリコール(THFグリコール200、THFグリコール1000、THFグリコール2000)を使用した。THF化合物は、例えば、Fluka, Switzerlandから入手可能である。式(XI)によるアミン化合物Hとして、Huntsman社から入手可能なJeffamine(登録商標) M-2070(Jeffamine(登録商標))を使用した。
【0149】
【表1】

【0150】
2. ラジカル重合によって調製される、本発明によるポリマーP-13調製方法
脱イオン水500g中に溶解した8.8gの次亜リン酸ナトリウムを、最初に、機械的撹拌機、温度計および還流コンデンサーを有する2000ml丸底フラスコ中に導入し、85〜90℃まで加熱した。この温度に達するとすぐに、535gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mw 1000g/モル、Cognis GmbH、ドイツ、からBisomer S10Wとして入手可能)とのメタクリル酸のエステルの50パーセント濃度水溶液、63gのメタクリル酸(Fluka社、スイス、から入手可能)、4gのテトラヒドロフルフリルメタクリレート(共にFluka, Switzerlandから入手可能)及び200gの水からなるモノマー混合物と、水100g中の2.4gのペルオキソ二硫酸ナトリウムの溶液とを同時に、2時間の経過のうちに、異なる計量ポンプによって計量供給した。反応は85〜90℃で、過酸化物試験が陰性となるまで継続させた。
【0151】
3. モルタル試験
本発明によるポリマーの有効性を、モルタルで試験した。
【0152】
【表2】

【0153】
砂、フィラーおよびセメントを、ホバートミキサー内で1分間乾式混合した。セメントに対して0.8重量%の、本発明によるポリマーの30%濃度水溶液を溶解した混練水を、30秒のうちに添加し、さらに2.5分間混練ぜを継続した。30重量%の本発明によるポリマーを含有する30%濃度水溶液は、約1重量%の消泡剤も含有する。合計の湿式混練ぜ時間は、3分であった。水/セメント値(w/c値)は0.44であった。
【0154】
モルタルのスランプを、EN 1015-3により測定した。
【0155】
比較例C-1は、欧州特許出願公開第0604676A1号の実施例3において記述される通例のポリカルボン酸エーテル(PCE)流動化剤である。
【0156】
【表3】

【0157】
Table 2(表3)における結果は、本発明によるポリマーが、通例的ポリマーC-1と比較して卓越した流動化性状を有することを示す。これは、特に30〜90分後のスランプの値によって示される。すなわち、スランプは90分間にわたって比較的一定である。特に良好な結果は、ポリマー類似反応により調製し、THF化合物としてTHF-OHを使用するポリマー、例えばポリマーP-1、P-6およびP-11で得られている。優れた結果は、THFメタクリレートを用いた重合により調製したポリマー、例えば、ポリマー P-13で達成された。
【0158】
4. 硫酸カルシウムα-半水和物におけるフロー挙動
せっこうスラリーについては、120gの水にTable 3(表4)により定義した量でポリマーを添加し、次いで300gの硫酸カルシウムα-半水和物に注入し、1000rpmで1分間撹拌を行った。直径50mmおよび高さ51mmおよび容量約100mlを有するミニコーンを使用して、2、5および10分後におけるスランプを測定した。凝結の終結(S終結)は、DIN 1168によるビカー(Vicat)針装置を使用するEN 13279-2に従って決定した。凝結の終結(S終結)は、せっこうケーキへの侵入錐体(immersion cone)の貫通深度が<1mmである際に、凝結の終わり(S終結)に達した。
【0159】
比較例C-2は、メラミンを基材として調製された市販のせっこう流動化剤(BASF社からのMelment(登録商標)F15G)である。
【0160】
【表4】

【0161】
Table 3(表4)は、硫酸カルシウムα-半水和物を含む純粋せっこうスラリーにおいて、本発明により、ポリマーP-1、P-3、P-4、P-5、P-12、またはP-13を含有するせっこう組成物のスランプ、したがってワーカビリティーが遅延無く非常に良好であることを示す。従来のメラミン系せっこう流動化剤(C-2)は、2倍の用量で、本発明によるポリマーによって達成されるスランプを有するに過ぎない。加えて、凝結の終わりが、本発明に係るポリマーと比較して遅れている。
【0162】
5. 硫酸カルシウムβ-半水和物におけるフロー挙動
せっこうスラリーについて、最初に136gの水にTable 4(表5)により指示された量で流動化剤を導入し、次いで200gの硫酸カルシウムβ-半水和物に、15秒のうちに注入し、このせっこうスラリーを45秒間熟成した。次いで、手動で完全な撹拌を1分間行った。直径50mmおよび高さ51mmを有するミニコーンに充填して、2分15秒後にスランプ(SLU)を測定した。凝結の始発(S始発)は、DIN1168によるビカー針装置を使用するEN13279-2に従って決定した。せっこうケーキへの侵入錐体(immersion cone)の貫通深度が<1mmである際に、凝結の終わり(S終結)に達した。
【0163】
【表5】

【0164】
Table 4(表5)は、硫酸カルシウムβ-半水和物を含む純粋せっこうスラリーにおいて、本発明により、本発明に係るポリマーを含有するせっこう組成物のスランプ、したがってワーカビリティーが非常に良好であることを遅延無く示す。従来の流動化剤の場合には、特に、凝結の始発および終結が、本発明によるポリマーを使用する場合と比較して遅延する(C-1及びC-2)。加えて、従来のメラミン系せっこう流動化剤(C-2)は、3倍の用量を用いてのみ本発明に係るポリマーで得られるスランプが得られる。
【0165】
もちろん、本発明は、示され、記述されたこれらの実施例に限定されるものではない。本発明の上述の特徴は、それぞれの言及された組合せにおいてだけでなく、他の修正、組合せおよび変更においても、またはそれら自体で、本発明の範囲から逸脱することなく、もちろん利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル基を有するポリマーPであって、
(a)少なくとも1つの、式(I)の構造単位A;
【化1】

(b)少なくとも1つの、式(II)の構造単位B;
【化2】

(c)少なくとも1つの、式(III)の構造単位C;
【化3】

場合によって、
(d)少なくとも1つの、式(IV)の構造単位D;
【化4】

および、場合によって、
(e)少なくとも1つのさらなる構造単位E
(R1は、互いに独立に、H、CH2COOMまたは炭素原子1〜5個を有するアルキル基であり、
R2は、互いに独立に、H、炭素原子1〜5個を有するアルキル基、COOMまたはCH2COOMであり;
R3は、互いに独立に、H、CH3、COOMまたはCH2COOMであり;
R4は、互いに独立に、COOMであり;
あるいはR3はR4と一緒になって、-CO-O-CO-として環を形成し;
Mは、H、C1〜C5アルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属または他の2価もしくは3価の金属原子、アンモニウム、有機アンモニウム基またはこれらの混合物であり;
R5は、互いに独立に、
【化5】

(R15は、-[(R11O)x-(R12O)y-(R13O)z]-R14であり;
R11、R12およびR13は、それぞれの場合において互いに独立にC2〜C4アルキレン基であり、(R11O)、(R12O)および(R13O)単位の順序は任意の可能な配列であり;
R14は、H、C1〜C12アルキルもしくはシクロアルキル基、C7〜C20アルキルアリールもしくはアラルキル基、または置換されたもしくは非置換のアリール基であり;
x、y、zは、互いに独立に、それぞれ値0〜250を有し、かつx+y+zは3〜250である)であり;
R6は、互いに独立に、H、CH3、COOM、CH2COOM、またはR5もしくはR7について定義される置換基であり;
R7は、互いに独立に、式(V):
【化6】

(式中、R16は、互いに独立に、NH、-NH-(R17)q-、O、または-O-(R18)s-であり、
R17およびR18は、それぞれの場合において互いに独立に、C1 - C12アルキレン基または任意の可能な配列における順序を有する1つ又は複数のC2 - C4 オキシアルキレン基であり、
qは互いに独立に整数であり、R17がC1-C12アルキレン基である場合は1であり、R17が1つ又は複数のC2-C4オキシアルキレン基である場合はそれぞれの場合において1〜150であり、
sは互いに独立に整数であり、R18がC1-C12アルキレン基である場合は1であり、R18が1つ又は複数のC2-C4オキシアルキレン基である場合はそれぞれの場合において1〜150である)の基であり;
R8は、互いに独立に、H、CH3、COOM、CH2COOM、またはR5もしくはR7について定義される置換基であり;
R9およびR10は、一緒になって、酸素、硫黄またはさらに窒素原子を場合によって含有する環を形成し;
あるいはR9およびR10は、互いに独立に、H、C1〜C20アルキル基、C5〜C9シクロアルキル基、C7〜C12アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、または式(VI)、(VII)もしくは(VIII)
-R19-X(R20)r (VI)
【化7】

-[(R11’O)x’-(R12’O)y’-(R13’O)z’]-R14’ (VIII)
(R19は、互いに独立に、アルキレン基であり、R20は、互いに独立に、C1-〜C4-アルキル基であり、
Xは互いに独立に、S、OまたはNであり、但しX=SもしくはOの場合r=1であり、またはX=Nの場合r=2であり;
R21は、ヘテロ原子を場合によって有するアルキレン基であり;
R11’、R12’およびR13’は、それぞれの場合において互いに独立にC2〜C4アルキレン基であり、 (R11’O)、(R12’O)および(R13’O)単位の順序は任意の可能な配列であり;
R14’は、C1〜C12アルキルもしくはシクロアルキル基、C7〜C20アルキルアリールもしくはアラルキル基、または置換されたもしくは非置換のアリール基であり、
x’、y’、z’は、互いに独立に、値0〜100を有し、かつx’+y’+z’=1〜100である)の化合物である)を含むポリマーP。
【請求項2】
ポリカルボン酸のエステル化および場合によってアミド化のポリマー類似反応によって得ることが可能である、または同反応によって調製される、請求項1に記載のポリマーP。
【請求項3】
(a)少なくとも1つのポリカルボン酸またはポリカルボン酸の類似体と、
(b)少なくとも1つの、式(IX)のモノヒドロキシ化合物F
HO-[(R11O)x-(R12O)y-(R13O)z]-R14” (IX)
(R11、R12およびR13は、それぞれの場合において互いに独立にC2〜C4アルキレン基であり、 (R11O)、(R12O)および(R13O)単位の順序は任意の可能な配列であり;
R14”は、C1〜C12アルキルもしくはシクロアルキル基、C7〜C20アルキルアリールもしくはアラルキル基、または置換されたもしくは非置換のアリール基であり;
x、y、zは、互いに独立に、それぞれ値0〜250を有し、かつx+y+zは3〜250である)および
(c)少なくとも1つの、式(X)のテトラヒドロフルフリル化合物G
【化8】

(R23は、互いに独立に、-NH2、-(R17)q-NH2、-OH、または-(R18)s-OH であり、
R17およびR18は、それぞれの場合において互いに独立に、C1〜C12アルキレン基または任意の可能な配列における順序を有する1つまたは複数のC2-C4オキシアルキレン基であり、
qは、互いに独立に、整数であり、R17がC1-C12アルキレン基である場合は1であり、R17が1つまたは複数のC2-C4オキシアルキレン基である場合はそれぞれの場合において1〜150であり、
sは、互いに独立に、整数であり、R18がC1-C12アルキレン基である場合は1であり、R18が1つまたは複数のC2-C4オキシアルキレン基である場合はそれぞれの場合において1〜150である)および
場合によって
(d)少なくとも1つの、式(XI)のアミン化合物H
R9’-NH-R10’ (XI)
および/または少なくとも1つの、式(XI’)のアミン化合物H’
R9”-NH-R10” (XI’)
(R9’およびR10’は、一緒になって、酸素、硫黄もしくはさらに窒素原子を場合によって含有する環を形成し;
あるいはR9’およびR10’は、互いに独立に、H、C8〜C20アルキル基、C5〜C9シクロアルキル基、C7〜C12アラルキル基、または式(VI)、(VII)もしくは(VIII)の化合物であり、
R9”およびR10”は、一緒になって、酸素、硫黄もしくはさらに窒素原子を場合によって含有する環を形成し;
あるいはR9”およびR10”は、互いに独立に、H、C1〜C12アルキル基、C5〜C9シクロアルキル基、C7〜C12アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、または式(VI)、(VII)もしくは(VIII)の化合物である:
-R19-X(R20)r (VI)
【化9】

-[(R11’O)x’-(R12’O)y’-(R13’O)z’]-R14’ (VIII)
(R19は、互いに独立に、アルキレン基であり、R20は、互いに独立に、C1-〜C4-アルキル基であり、
Xは、互いに独立に、S、OまたはNであり、但しX=SもしくはOの場合r=1であり、またはX=Nの場合r=2であり;
R21は、ヘテロ原子を場合によって有するアルキレン基であり;
R11’、R12’およびR13’は、それぞれの場合において互いに独立にC2〜C4アルキレン基であり、 (R11’O)、(R12’O)および(R13’O)単位の順序は任意の可能な配列であり;
R14’は、C1〜C12アルキルもしくはシクロアルキル基、C7〜C20アルキルアリールもしくはアラルキル基、または置換されたもしくは非置換のアリール基であり;
x’、y’、z’は、互いに独立に、それぞれ値0〜100を有し、かつx’+y’+z’は1〜100である))および
場合によって
(e)少なくとも1つのさらなる化合物J
との反応によって得ることが可能である、請求項2に記載のポリマーP。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリカルボン酸またはポリカルボン酸の類似体が、200℃までの温度で少なくとも1つの式(IX)のモノヒドロキシ化合物F、および少なくとも1つの式(X)のテトラヒドロフルフリル化合物G、および場合によって少なくとも1つの式(XI)のアミン化合物H、および場合によって少なくとも1つのさらなる化合物Jと反応し、それにより無水物基が生成すること、ならびに、第2段階において、第1段階で生成した無水物基が、実質的に100℃未満の温度で式(XI’)のアミン化合物H’と完全にもしくは部分的に反応してアミドをもたらすことを特徴とする、請求項3に記載のポリマーP。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸の類似体が、酸塩、酸ハロゲン化物、酸無水物および酸エステルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3または4に記載のポリマーP。
【請求項6】
前記式(IX)の少なくとも1つのヒドロキシ化合物Fの分子量が、約120から20000g/mol、特に約250から10000g/molであることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載のポリマーP。
【請求項7】
ラジカル重合反応によって得ることが可能である、または同反応によって調製される、請求項1に記載のポリマーP。
【請求項8】
少なくとも1つの遊離基開始剤の存在下における、
(a)少なくとも1つのエチレン性不飽和モノ-もしくはジカルボン酸Mまたは不飽和モノ-もしくはジカルボン酸の類似体の;
(b)少なくとも1つの、式(XIII)のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体K;
【化10】

および
(c)少なくとも1つの、式(XIV)の第2のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体L;
【化11】

および場合によって
(d)少なくとも1つの、式(XV)の第3のエチレン性不飽和カルボン酸誘導体N;
【化12】

および場合によって
(e)少なくとも1つのさらなるエチレン性不飽和化合物Q
(R1は、互いに独立に、H、CH2COOMまたは炭素原子1〜5個を有するアルキル基であり、
R2は、互いに独立に、H、炭素原子1〜5個を有するアルキル基、COOMまたはCH2COOMであり;
R3は、互いに独立に、H、CH3、COOMまたはCH2COOMであり;
Mは、H、C1〜C5アルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属または他の2価もしくは3価の金属原子、アンモニウム、有機アンモニウム基またはこれらの混合物であり;
R5は、互いに独立に、
【化13】

(R15は、-[(R11O)x-(R12O)y-(R13O)z]-R14であり;
R11、R12およびR13は、それぞれの場合において互いに独立にC2〜C4アルキレン基であり、 (R11O)、(R12O)および(R13O)単位の順序は任意の可能な配列であり;
R14は、H、C1〜C12アルキルもしくはシクロアルキル基、C7〜C20アルキルアリールもしくはアラルキル基、または置換されたもしくは非置換のアリール基であり;
x、y、zは、互いに独立に、それぞれ値0〜250を有し、かつx+y+zは3〜250である)であり;
R6は、互いに独立に、H、CH3、COOM、CH2COOM、またはR5もしくはR7について定義される置換基であり;
R7は、互いに独立に、式(V):
【化14】

(式中、R16は、互いに独立に、NH、-NH-(R17)q-、O、または-O-(R18)s-であり、
R17およびR18は、それぞれの場合において互いに独立に、C1 - C12アルキレン基または任意の可能な配列における順序を有する1つ又は複数のC2 - C4 オキシアルキレン基であり、
qは互いに独立に整数であり、R17がC1-C12アルキレン基である場合は1であり、R17が1つ又は複数のC2-C4オキシアルキレン基である場合はそれぞれの場合において1〜150であり、
sは互いに独立に整数であり、R18がC1-C12アルキレン基である場合は1であり、R18が1つ又は複数のC2-C4オキシアルキレン基である場合はそれぞれの場合において1〜150である)の基であり;
R8は、互いに独立に、H、CH3、COOM、CH2COOM、またはR5もしくはR7について定義される置換基であり;
R9およびR10は、一緒になって、酸素、硫黄またはさらに窒素原子を場合によって含有する環を形成し;
あるいはR9およびR10は、互いに独立に、H、C1〜C12アルキル基、C5〜C9シクロアルキル基、C7〜C12アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、または式(VI)、(VII)もしくは(VIII)
-R19-X(R20)r (VI)
【化15】

-[(R11’O)x’-(R12’O)y’-(R13’O)z’]-R14’ (VIII)
(R19は、互いに独立に、アルキレン基であり、R20は、互いに独立に、C1-〜C4-アルキル基であり、
Xは互いに独立に、S、OまたはNであり、但しX=SもしくはOの場合r=1であり、またはX=Nの場合r=2であり;
R21は、ヘテロ原子を場合によって有するアルキレン基であり;
R11’、R12’およびR13’は、それぞれの場合において互いに独立にC2〜C4アルキレン基であり、 (R11’O)、(R12’O)および(R13’O)単位の順序は任意の可能な配列であり;
R14’は、C1〜C12アルキルもしくはシクロアルキル基、C7〜C20アルキルアリールまたはアラルキル基、または置換されたもしくは非置換のアリール基であり、
x’、y’、z’は、互いに独立に、値0〜100を有し、かつx’+y’+z’=1〜100である)の化合物である)の重合反応によって得ることが可能である、請求項7に記載のポリマーP。
【請求項9】
R1が、HまたはCH3であり、R2、R3およびMがHであることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のポリマーP。
【請求項10】
R6およびR8が、Hであることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載のポリマーP。
【請求項11】
R16がO又はNHであることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載のポリマーP。
【請求項12】
R16がOR18であり、R18が-(CH2CH2O)2-であることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載のポリマーP。
【請求項13】
R11が互いに独立にC2-アルキレン基であり、R12が互いに独立にC3-アルキレン基であり、R13が互いに独立にC4-アルキレン基であり、(R11O)、(R12O)および(R13O)の順序がランダム、交互またはブロック様であることを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載のポリマーP。
【請求項14】
R15が、全ての(R11O)、(R12O)および(R13O)単位の合計モル量に対して、少なくとも30モル%の(R11O)単位、好ましくは50〜100モル%の(R11O)単位、より一層好ましくは80〜100モル%の(R11O)単位を含むことを特徴とする、請求項13に記載のポリマーP。
【請求項15】
それぞれの場合において、ポリマーP中の構造単位A、B、C、DおよびEの合計モル量に対して、5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の、式(I)の構造単位Aと、1〜90モル%、好ましくは15〜70モル%の、式(II)の構造単位Bと、0.001〜10モル%、好ましくは0.01〜6モル%の、式(III)の構造単位Cと、場合によって0〜30モル%、好ましくは0〜1モル%の、式(IV)の構造単位Dと、場合によって0〜30モル%、好ましくは0〜1モル%の構造単位Eとを含む、請求項1から15のいずれかに記載のポリマーP。
【請求項16】
水硬性凝結組成物用、特にコンクリート、モルタルまたはせっこう用流動化剤としての、請求項1から15のいずれかに記載のポリマーPの使用。
【請求項17】
水性ディスパージョン用分散剤としての、請求項1から15のいずれかに記載のポリマーPの使用。
【請求項18】
少なくとも1つの、請求項1から15のいずれかに記載のポリマーPを含む、液体または固体の形態における混和材料。
【請求項19】
少なくとも1つの水硬性凝結結合剤と、前記結合剤の重量に対して、0.01〜10重量%の量における少なくとも1つの、請求項1から15のいずれかに記載のポリマーPとを、含む結合剤含有混合物。
【請求項20】
前記結合剤が、セメント、潜在水硬性粉末、1つまたは複数の不活性微視的粉末、せっこう、またはこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項19に記載の混合物。
【請求項21】
前記混合物が、コンクリート、モルタルまたはせっこうであることを特徴とする、請求項19または20に記載の混合物。
【請求項22】
請求項1から15のいずれかに記載の前記ポリマーPが、固体もしくは液体の形態において、別々に、または前混合した混和材料として添加されることを特徴とする、請求項19から21のいずれか一項に記載の結合剤含有混合物の製造方法。

【公表番号】特表2011−500954(P2011−500954A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531514(P2010−531514)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064624
【国際公開番号】WO2009/056553
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】