説明

水系生分解性ポリエステル樹脂の製造方法

本発明は、水溶性生分解性ポリエステル樹脂の製造方法に関し、より詳しくは、無毒性触媒を用いて水溶性生分解性ポリエステル樹脂を製造する方法に関する。本発明の方法では、従来の毒性触媒の使用を回避しながらも反応速度を高めることができるように、クエン酸−チタン−亜鉛からなる三成分系触媒を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系生分解性ポリエステル樹脂(biodegradable water based polyester resin)を調製(preparing)する方法にかかり、より詳しくは、無毒性触媒(non-toxic catalyst)を用いて水溶性生分解性ポリエステル樹脂(biodegradable water soluble polyester resin)を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば繊維、成形品、フィルムなどの多様な用途で使用されている代表的なポリエステル樹脂(polyester resin)は、テレフタル酸(terephthalic acid)とエチレングリコール(ethylene glycol)、またはテレフタル酸と1,4−ブタンジオール(1,4-butane diol)の縮重合反応(polycondensation reaction)によって生産される高分子量芳香族ポリエステル樹脂(high molecular weight aromatic polyester resin)である。ここで、高分子量ポリエステルとは数平均分子量(number average molecular weight)10,000以上のポリマーをいう。ところが、前記芳香族ポリエステル樹脂は、廃棄の後に自然環境の中で分解されず長期間残留して深刻な環境汚染問題を引き起こした。
【0003】
生分解性を持っているものと知られている(Journal of Macromol. SCI-Chem., A-23(3), 1986, 393-409参照)脂肪族ポリエステル(aliphatic polyesters)が様々な分野で活用されている。ところが、既存の脂肪族ポリエステルは、通常、数平均分子量が最大15,000程度と低いため、十分な物理的性質を備えておらず使用範囲の拡大に問題があった。韓国公開特許公報(Korean Patent Application Publication)第1995−0000758号、韓国公開特許公報第1995−0114171号、韓国公開特許公報第1995−0025072号、WO95/03347A1などでは、脂肪族ポリエステルの分子量を高めるための方法を開示しているが、脂肪族ポリエステルの生産性、物性および成形性などに関する問題点は依然として解決されずに残っている。
【0004】
これにより、韓国特許(Korean Patent)第366484号では、脂肪族の代わりに芳香族を使用して生分解性ポリエステルを生成する方法を開示している。上述の特許の方法では、第1段階で芳香族ジカルボン酸(aromatic dicarboxylic acid)と、脂肪族コハク酸(aliphatic succinic acid)を含む脂肪族ジカルボン酸(aliphatic dicarboxylic acid)と、1,4−ブタンジオールまたはエチレングリコール(ethylene glycol)を導入してエステル化反応またはエステル交換反応(esterification or trans-esterification reaction)を行うことにより、芳香族成分の繰り返し単位(repeating units)が4個以下である分子量300〜30,000の芳香族/脂肪族低分子量高分子体(aromatic/aliphatic low molecular weight high-molecular body)を生成し、第2段階では前記第1段階で生成された芳香族/脂肪族低分子量高分子体の存在下で、コハク酸(succinic acid)を含む脂肪族ジカルボン酸と1,4−ブタンジオールまたはエチレングリコールをさらに導入して高分子樹脂(polymer resin)を得て、第3段階反応で生成された高分子樹脂をさらに重縮合反応させることにより、数平均分子量30,000〜70,000、重量平均分子量(weight average molecular weight)100,000〜600,000、融点55〜120℃、および融解指数(melting index)(190℃、2,160g)0.1〜30g/10分の成形性および引裂強度(tear strength)に優れたコポリエステル樹脂組成物(copolyester resin composition)を生成する。
【0005】
ところが、上述の特許に開示された方法で生成された製品(article)は、生分解性樹脂であって、環境に優しいものの、水溶性(water solubility)がないため、コーティングなどに使用する場合には有機溶媒を使用しなければならないという問題があった。
【0006】
韓国特許公開10−2003−0028444号では、30,000程度の高い数平均分子量および水溶性を有する生分解性ポリエステル樹脂組成物を開示している。ところが、このような方式で生成された水溶性生分解性ポリエステル樹脂(water soluble biodegradable polyester resin)は、その合成過程中に、毒性のある触媒、例えばアンチモン(antimony)やスズ(tin)などを使用しているという問題がある。ドイツのハイデルベルク大学(Heidelberg University)の研究員が研究して報告したように(Journal of Environmental Monitoring, 2006, 8, 288-293)、我々が日常生活で使う水入りのペットボトル(bottle produced with PET)からさえアンチモンが発見された。世界保健機関(WHO)の飲料水基準では安全であると思われているが、毒性のあるアンチモンが人体に蓄積されているのである。特に、韓国では、2004年にマスコミによって報道された記事によれば、忠南燕岐郡(Yeonki-kun, Chungchungnamdo)のある一つの村に住んでいる住民60名のうち、8名が過去5年間に癌によって死亡し、4名が闘病中である。これはこの村に1978年に建てられたアンチモン生産工場の汚染がその原因として推定された。その当時、韓国の緑色連合(Green Korea United)によれば、この村にある田の地表水はアンチモン含量が90μg/Lであり、アンチモン工場隣近農家の地下水はアンチモン含量が15.9μg/Lであった。外国におけるアンチモンの水質基準は、米国では6μg/L、日本では2μg/L、欧州では3μg/L、フランスでは10μg/L、WHOでは5μg/L以下である。
【0007】
このため、無毒性触媒を使用しながらも高分子量を有する水溶性生分解性樹脂に対する根強い要求がある(there is persistent need)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、無毒性生分解性ポリエステル樹脂を調製する方法を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、無毒性生分解性ポリエステル樹脂を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、無毒性水溶性生分解性ポリエステル樹脂を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、コーティング用無毒性水溶性生分解性ポリエステル樹脂を調製する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、ジカルボン酸混合物(dicarboxylic acid mixtures)、スルホン酸アルカリ金属塩基(sulfonic acid alkali metal bases)、および脂肪族ジオール(aliphatic diols)をエステル化反応(esterificating)またはエステル交換反応(trans-esterificating)させるステップと、反応生成物を縮重合反応させるステップとを含み、クエン酸−チタン−亜鉛(citric acid-Ti-Zn)からなる三成分系触媒(tricomponent catalyst)を使用する無毒性水溶性生分解性ポリエステル樹脂を調製する方法を提供する。
【0013】
本発明において、前記ジカルボン酸混合物は、例えばアジピン酸(adipic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、セバシン酸(sebasinic acid)、無水コハク酸(anhydride succinic acid)、コハク酸(succinic acid)、コハク酸ジメチル(dimethylsuccinate)、グルタル酸ジメチル(dimetylglutarate)、アジピン酸ジメチル(dimethyladipate)、テレフタル酸(terephthalic acid)、フタル酸(phthalic acid)、イソフタル酸(isophthalic acid)、テレフタル酸ジメチル(dimethylterephthalate)、イソフタル酸ジメチル(dimethylisophthalate)などを使用することができ、好ましくは得られる生成物(resulting product)が適切な生分解性を示すことができるように脂肪族化合物と芳香族化合物(an aliphatic and an aromatic compound)とを混合して使用する。
【0014】
本発明において、前記スルホン酸アルカリ金属塩は、生分解性樹脂に水溶性を与えるために使用し、好ましくはジメチル−4−スルホイソフタレートナトリウム塩(dimethyl-4-sulfoisophthalate sodium salt)、ジメチル−5−スルホイソフタレートナトリウム塩(dimethyl-5-sulfoisophthalate sodium salt)、ジメチル−5−スルホテレフタレートナトリウム塩(dimethyl-5-sulfoterephthalate sodium salt)、ジエチル−5−スルホテレフタレートナトリウム塩(diethyl-5-sulfoterephthalate sodium salt)などを少なくとも一つ選択して使用することができる。
【0015】
本発明において、前記脂肪族ジオールは、得られる生成物をコーティング剤(coating agent)として使用する場合、コートしようとする既存の樹脂に対する接着力(adhesive force)、またはコーティング工程および乾燥工程を完了した後のスリップ性(slipping property)などを考慮して、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、1,3−プロパンジオール(1,3-propane diol)、1,2−ブタンジオール(1,2-butane diol)、1,3−ブタンジオール(1,3-butane diol)、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(neopentyl glycol)、1,6−ヘキサンジオール(1,6-hexane diol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、およびポリエチレングリコール(polyethylene glycol)などから少なくとも一つ選択して使用することが好ましい。
【0016】
本発明において、前記エステル化反応またはエステル交換反応は、従来の公知の通常のエステル化またはエステル交換方法によって行われ、アンチモン(antimony)やスズ(tin)などの触媒を排除することができる限りは特別な制限がない。
【0017】
本発明の一態様(embodiment)において、前記エステル化反応またはエステル交換反応は、脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸の混合物(aliphatic and aromatic dicarboxylic acid mixtures)は混合物全体の45〜55重量%(% by weight)、脂肪族ジオールは30〜42重量%を添加し、水溶性を与えるためのスルホン酸アルカリ金属塩基は3〜20重量%を添加して行う。
【0018】
本発明の一態様において、前記エステル化反応またはエステル交換反応の適正な反応温度は200℃前後が好ましい。特に反応温度が180℃以下であれば、反応速度が遅くなり、反応温度が220℃以上であれば、重合反応物の熱分解が起り得る。本発明の一態様において、固体原料が速く溶解し且つ液体原料と速く反応するように、反応の初期には適正の反応温度まで速く上昇させることがよい。反応温度を遅く上昇させると、固体原料が溶解するまで多くの時間がかかり、固体原料は完全に溶けるまで反応に関与することができない。その結果、得られる樹脂は、イソタクチック(isotactic)の分子構造を有することができず、生分解性を含む種々の物理特性が低下する。
【0019】
本発明の好適な一態様において、前記エステル化反応またはエステル交換反応は、それぞれのモノマーがイソタクチック的に結合して優れた生分解性樹脂を持つことができるように、芳香族ジカルボン酸(aromatic dicarboxylic acid)の1次反応(first reaction)および脂肪族ジカルボン酸の2次反応(second reaction)によって行われることがよい。この際、エステル化反応の好ましい反応温度は160〜200℃であり、エステル交換反応の好ましい反応温度は180〜200℃である。
【0020】
本発明において、前記縮重合反応はエステル化反応またはエステル交換反応の反応生成物、およびクエン酸−チタン−亜鉛の三成分系触媒を用いて行われる。前記触媒は縮重合反応で同時にまたは順次導入できる。発明の一態様において、前記三成分系触媒は、エステル化反応またはエステル交換反応で一部の成分が導入された後、縮重合反応で残りの成分が導入されてもよい。発明の好適な一態様において、前記チタン(Ti)およびクエン酸(citric acid)はエステル化反応またはエステル交換反応で導入され、亜鉛(Zn)は縮重合反応で導入されることがよい。
【0021】
前記三成分系触媒のいずれか一つの成分が導入されない場合には、縮重合反応の反応速度が遅くなり、得られる生成物の分子量が30,000ならない。
【0022】
本発明において、前記クエン酸は、食品添加物に多く使用されている人体に無害(harmless)な物質であって、3つのカルボキシル基(carboxylic groups)と1つのヒドロキシル基(hydroxyl group)からなっており、前記クエン酸を三成分系触媒に使用すると、モノマーが4方向に分子結合を行うので反応速度が速くなり、高分子量の樹脂を得ることができる。本発明の一態様において、前記クエン酸の使用量が過多な場合、架橋(crosslinking)を伴うゲル化現象(gelling phenomenon)が発生するおそれがある。よって、前記クエン酸は0.05〜0.3重量%で使用することが好ましい。
【0023】
本発明において、前記三成分系触媒を成すチタンおよび亜鉛は、様々な形態で提供でき、好ましくはチタンと亜鉛が含有された金属化合物の形態で使用でき、さらに好ましくはチタンと亜鉛が含有された有機金属化合物(organometallic compound)の形態で使用でき、最も好ましくはチタン酸テトラブチル(tetrabutyl titanate)または酢酸亜鉛(zinc acetate)の形態で使用できる。本発明の一態様において、前記チタンと亜鉛系触媒(the Ti and the Zn based catalyst)の使用量はそれぞれ0.03〜0.5重量%が好ましいが、その使用量が0.03重量%未満であれば、反応速度が遅くなり、その使用量が0.5重量%以上であれば、反応速度は速くなるが、重合生成物の色合い(color)が悪くなるという問題がある。
【0024】
本発明において、前記エステル化反応またはエステル交換反応が完了した後には、縮重合触媒以外にも安定剤(stabilizers)、着色剤(coloring agents)などの各種添加剤(additives)を添加して反応温度230〜250℃で減圧の下に縮重合反応を行う。
【0025】
前記縮重合段階の着色剤または安定剤としては、ポリエステル樹脂(polyester resin)の製造に用いられる通常の着色剤または安定剤を使用することができ、好ましくはリン酸トリメチル(trimethylphosphate)、トリメチルホスフィン(trimethylphosphine)、リン酸トリフェニル(triphenylphosphate)、およびリン酸塩(phosphate)の中から選ばれた少なくとも一つの混合安定剤を使用することができ、その添加量は全体組成物重量に対してそれぞれ0.1〜0.4重量%程度が好ましい。
【0026】
本発明の一態様において、前記縮重合反応の温度が230℃以下であれば、縮重合反応が遅くなり、前記縮重合反応の温度が250℃以上であれば、重合物(polymerization product)の熱分解(thermolysis)により高分子量の重合物を得ることが難しい。なお、縮重合反応中に減圧を行って高真空状態を作り出しても良い。しかしながら、圧力が2torr以上であれば、反応中に生成される副生成物(side product)、オリゴマー(oligomer)または過剰のグリコール(excess glycol)などを除去することが難しいため、高分子量の重合物を得ることが難しい。圧力は0.5torrにするのが好ましい。
【0027】
前述の方法とおりに重合反応を行って得られたポリエステル樹脂は、生分解性を有し、分子鎖(molecular chain)内にイオン化基(ionization group)を含んでいるため水溶性を示す。また、人体に有害な添加剤としてのアンチモンやスズなどを排除することにより、コーティング剤として使用しても有害な物質が出ない無害な水溶性生分解性樹脂を製造した。
【0028】
一側面において、本発明は、前記方法で製造されるアンチモンとスズがない無害な水溶性生分解性ポリエステル樹脂を提供する。本発明にかかるポリエステル樹脂は、数平均分子量が約30,000〜60,000、好ましくは30,000〜50,000、最も好ましくは約30,000である。前記分子量が60,000を超える場合には、反応時間が長くなり、反応時間を短縮するためにカップリング剤(coupling agent)を使用する場合にはその毒性のため好ましくない。
【0029】
一側面において、本発明は、前記アンチモンとスズがない無害な水溶性生分解性ポリエステル樹脂を用いたコーティング剤を提供する。前記コーティング剤は、本発明にかかる水溶性ポリエステル樹脂(water soluble polyester resin)を単純に水に溶解させて製造することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、無害な水溶性ポリエステル樹脂を提供することができる。また、本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、同時に無害な樹脂を製造するので、生産性に優れるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施例によって説明する。下記実施例は本発明を例示するもので、限定するものではない。
【0032】
実施例
実施例1
500mLの2口フラスコ(two-neck flask)を窒素(nitrogen)で置換し、テレフタル酸ジメチル21重量%、イソフタル酸ジメチル18重量%、ジメチル−5−スルホイソフタレート(dimethyl-5-sulfoisophthalate)4重量%、エチレングリコール6重量%、ジエチレングリコール38重量%、および触媒としてのチタン酸テトラブチル0.1重量部(part by weight)を入れ、窒素雰囲気の下でゆっくり昇温して内温を200℃以下に維持しながらエステル交換反応を行った。副産物(byproduct)としてのメタノール(methanol)が完全に流出した後、アジピン酸13重量%を添加した。その後、触媒としてのチタン酸テトラブチル0.1重量部(parts by weight)、クエン酸0.1重量部、安定剤としてのリン酸トリフェニル0.1重量部、および着色剤としての酢酸コバルト(cobalt acetate)0.1重量部を添加し、理論上(theoretically)、内部温度(inner temperature)を200℃以下に維持しながらエステル化反応を行って水を流出させた。エステル化反応が終了すると、さらに触媒としての酢酸亜鉛0.1重量部、チタン酸テトラブチル0.1重量部、および安定剤としてのリン酸トリフェニル0.1重量部を前記反応器(reactor)に添加した。前記反応混合物を240℃に昇温すると同時に、反応器内をゆっくり真空にして(vacuum was created in the reactor slowly)0.5Torrの高真空にした。前記反応状態で200分間縮重合反応を行った。得られた生成物の数平均分子量をチェックした。測定されたデータを表1に示す。
【0033】
比較例1
この例では、亜鉛とクエン酸を添加しない以外は、実施例1と同様に行った。反応は、進行せずに終了した。測定されたデータを表1に示す。
【0034】
比較例2
この例では、クエン酸を添加しない以外は、実施例1と同様に行った。300分間の反応の後、分子量を測定した。測定されたデータを表1に示す。
【0035】
比較例3
この例では、亜鉛を添加しない以外は、実施例1と同様に行った。260分間の反応の後、分子量を測定した。測定されたデータを表1に示す。
【0036】
比較例4
この例では、アンチモンとスズをクエン酸と亜鉛の代わりに使用する以外は、実施例1と同様に行った。180分間の反応の後、分子量を測定した。測定されたデータを表1に示す。
【表1】

【0037】
上述したように、本発明にかかる触媒システムは、有害な触媒であるアンチモンまたはスズ系列の触媒を使用しないながらも、同一水準の反応時間と分子量を示した。これに反し、単純に2種の触媒を使用しなければ、比較例1のように反応が全く起こらなかった。また、いずれか一つの成分がない場合にも、反応時間が長くなり且つ分子量の増加が現れなかった。
【0038】
コーティング剤の性能試験(performance test)
実施例1で生成されたポリエステル(polyester)の水溶性(water solubility)、塗布性(applying property)およびスリップ性を測定した。まず、水溶性を評価する試験として、水100gを80℃に維持し、合成された樹脂10gを入れて攪拌することにより、樹脂が完全に水に溶解される時間を測定した。樹脂が完全に水に溶解されて水溶液になったら、生分解性樹脂に対する塗布性[コーティング性(coating property)]を測定するために、この水溶液をポリ乳酸(PLA)シート[polylactic acid(PLA)sheet]の表面上にバーコータ(bar coater)(10μm)を用いてコーティングした。この際、水溶液が水滴を形成するかを観察した。乾燥過程を経た後、コーティングされた面が対面するように重ねておき、10kgの荷重で24時間放置した。その後、シートのコーティング面が互いに接着されるかを評価してスリップ性を測定した。そして、防曇層(anti-fogging layer)の接着力の評価は、防曇液でコーティングされたシート表面に対して90°方向にスコッチテープ(scotch tape)を貼り付け、200mm/minの速度で剥離させて防曇層の剥離状態(release conditions)を観察した。本発明の樹脂水溶液を使い捨て用食品包装容器(disposable food packaging container)にコーティングして防曇性(anti-fogging property)を観察した。防曇性は、コーティング液を製造した直後に、および製造後15日間保管した後に、PLAシートの表面にコートを施して80℃の水を容器に入れ、その上に防曇コートされたPLAシートをのせて高温防曇性を観察した。低温防曇性は、30℃の水を用いて冷蔵保管しながら防曇性を観察した。表2および表3に試験結果を示す。
【0039】
実施例2
表2に記載された含量で実施例1と同様の方式で製造した。試験結果は表2と表3に示す。
【0040】
実施例3
表2に記載された含量で実施例1と同様の方式で製造した。試験結果は表2と表3に示す。
【0041】
実施例4
表2に記載された含量で実施例1と同様の方式で製造した。試験結果は表2と表3に示す。
【0042】
実施例5
表2に記載された含量で実施例1と同様の方式で製造した。試験結果は表2と表3に示す。
【0043】
実施例6
表2に記載された含量で実施例1と同様の方式で製造した。試験結果は表2と表3に示す。
【0044】
比較例1
ジメチルスルホン酸(dimethyl sulfonic acid)を使用しない以外は、表1に記載された含量で実施例1と同様の方式で製造した。試験結果は表2と表3に示す。
【0045】
比較例2
ジエチレングリコールの代わりにブタンジオールを使用した以外は、表1に記載された含量で実施例1と同様の方式で製造した。試験結果は表2と表3に示す。
【表2】

【0046】
DMT:テレフタル酸ジメチル
DMI:イソフタル酸ジメチル
AA:アジピン酸
DMS:ジメチル−5−スルホテレフタレート
EG:エチレングリコール
DEG:ジエチレングリコール
BD:1,4−ブタンジオール
〈塗布性〉
◎:水溶液が水滴を形成せず、均一に広がる状態が非常に良好(excellent)
○:水溶液が水滴を形成せず、均一に広がる状態が良好(good)
△: 水溶液が水滴を形成せず、均一に広がる状態が普通(fair)
×:水溶液が水滴を形成しており、均一に広がらない
〈スリップ性〉
◎:重ねておいた両面が非常に剥離し易い
○:重ねておいた両面が接着されず、かつ容易に剥離する
△:重ねておいた両面の間に若干の接着力がある
×:重ねておいた両面が互いに接着されている
表2の結果は、実施例および比較例による塗布性、スリップ性および溶解力(dissolving power)に関するものである。塗布性は樹脂が完全に水に溶解された状態で生分解性樹脂に対するコーティング性を測定したもの、スリップ性は塗布されたシートのコーティング面が互いに接着されるかを測定したもの、溶解力は水に溶解される時間がどれ位かかるかを測定したものである。
【0047】
表3は表1の実施例にかかる防曇層の接着力に対して製造直後と製造後15日間の保管後の状態を観察した結果、および防曇性に対して製造直後と一ヶ月間の保管後の状態を観察した結果を示す。
【表3】

【0048】
〈接着力〉
良好:防曇層が剥離しなかった
不良:防曇層が剥離した
〈防曇性〉
良好:防曇層が均一に濡れて水滴がつかなかった
普通:防曇層に部分的に水滴がついた
不良:防曇層全体に水滴がついて曇った
表4は、合成された樹脂に対する毒性検査(Toxic test)を韓国化学試験研究院(Korea Chemical Test Institute)が行った結果を示す。
【表4】

【0049】
表4は韓国化学試験研究院(KTRI)[Korea Testing and Research Institute for Chemical Industry(KTRI)]で測定した結果であり、韓国化学試験研究院の毒性検査は誘導結合プラズマ(ICP)分析により行った。前述したように、一般にポリエステル合成過程で使用されているアンチモンまたはスズ系化合物だけでなく、その他の重金属も検出されなかった。この検査結果が示すように、現在使用されている食品容器(food containers)の従来の各種コーティング剤は、本発明の無毒性水溶性生分解性樹脂で代替することができる。その一例として、透明な食品容器の防曇コーティング剤として本発明の無毒性水溶性生分解性樹脂を使用する場合、従来の界面活性剤系統の防曇剤をこの無毒性水溶性生分解性樹脂で代替することができ、かつ防曇持続性の点で顕著な機能を示す。ここで、AP含量(AP content)はクロロホルム(chloroform)に溶解する度合い(degree of dissolution)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸混合物、スルホン酸アルカリ金属塩基、および脂肪族ジオールをエステル化反応またはエステル交換反応させるステップと、得られる反応生成物を縮重合反応させるステップとを含む無毒性水溶性生分解性ポリエステル樹脂の製造方法において、
クエン酸−チタン−亜鉛からなる三成分系触媒を使用することを特徴とする、無毒性水溶性生分解性ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記チタンと前記クエン酸は前記エステル化反応または前記エステル交換反応で導入され、前記亜鉛は前記縮重合反応で導入されることを特徴とする、請求項1に記載の無毒性水溶性生分解性ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記触媒の各成分はそれぞれ0.03〜0.5重量%の範囲で使用されることを特徴とする、請求項1に記載の無毒性水溶性生分解性ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記チタンと前記亜鉛は有機金属化合物として導入されることを特徴とする、請求項1に記載の無毒性水溶性生分解性ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記エステル化反応および前記エステル交換反応は160〜200℃の温度で行われ、前記縮重合反応は230〜250℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の無毒性水溶性生分解性ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項6】
分子量が約30,000〜60,000であるアンチモンフリー水溶性生分解性ポリエステル樹脂。
【請求項7】
請求項6に記載のアンチモンフリー水溶性生分解性ポリエステル樹脂が溶解されたコーティング剤。

【公表番号】特表2010−513656(P2010−513656A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542659(P2009−542659)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006760
【国際公開番号】WO2008/075924
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509172996)ジェーヨンサラン カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】