説明

水素ベースのプラズマを用いた処理による材料の清浄化

本発明は、水素ベースのプラズマ処理による、材料、特にホウ素からの酸素の除去のための清浄化方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、材料からの酸素の除去のための清浄化方法に関する。
【0002】
材料の酸素汚染は、科学及び産業において幅広い原料の問題を提示する。酸素汚染物の除去又は減少は、しばしば、問題又は課題を提示し、これは困難に、かつ多くの労力のもとでのみ乗り越えることができる。これらの問題はしばしば、酸素不純物の本質的特徴により増幅され、これは吸収及び/又は原料と天然に豊富なO2との反応により引き起こされる。空気中の酸素の存在のために、酸素汚染物は実質的に全てに蔓延している。これに加えて、酸素汚染物の除去はしばしば、高度に安定性の酸化物の形成により複雑化している。
【0003】
更に、一般的な精浄化方法、例えば、相応する酸化物の還元を基礎とする清浄化方法は、しばしば、使用される還元剤による材料の汚染及び/又は決定的な微細構造の変化を引き起こす。
【0004】
他方では、原料の汚染はしばしば、意図する目的のためのこの材料の使用を妨げる。
【0005】
従って、本発明の課題は、酸素の除去のための清浄化方法、特に、熱処理又は還元剤を材料中に放置する処理を回避することを可能にする手段を提供することであった。
【0006】
本発明によれば、この課題は、酸素不純物を含有する材料を水素ベースのプラズマを用いて処理する、材料からの酸素の除去のための精浄化方法により解決された。
【0007】
水素ベースのプラズマを用いた処理からなる本発明の手段は一般的に、酸素を含有する不純物を除去するために、全ての材料に対して適用されることができる。有利には、温度安定性材料が使用され、特に、温度≦600℃、より有利には≦750℃、特に有利には≦950℃で明らかに蒸発せず、かつその他のいかなる崩壊プロセスを受けない材料が使用される。有利にはこの使用される材料は、元素、特に金属、又は非金属元素である。しかしながら、1種より多くの元素からなる化合物もまた、本発明により清浄化されることができる。
【0008】
特に有利には、本発明の清浄化方法は、酸素をホウ素から、特に無定形ホウ素から除去するために使用される。無定形ホウ素の酸素汚染物はとりわけ除去が困難であり、かつ深刻な問題を提示する。無定形ホウ素の生産のための工業的経路は通常は、適した還元剤によるB23の還元を含む。この種の処理でもって、この種の処理において、酸素4質量%までを含有する無定形ホウ素材料が通常は得られる。これは、この材料の適用を妨げ、例えば、化学的処理のための適用を妨げ、というのも適用の多くの分野において、この使用される無定形ホウ素が酸素不含であるか、又は少なくとも最低限可能な酸素含有量を示すことが必要であるからである。
【0009】
無定形ホウ素はしばしばこの目的のために使用され、というのもこれは、結晶性ホウ素と比較して、著しくより高い化学反応性を化学反応において示すからである。しかしながら、任意の種類の熱処理による無定形ホウ素の清浄化は、酸化ホウ素の蒸発を生じ、この結果この試みは、ホウ素の結晶化を生じ、従ってこの無定形ホウ素の不所望の結晶性の形態への変態を生じる。
【0010】
酸化ホウ素B23とは異なり、金属は大抵は、その酸化物から、水素ガスを用いて、任意の加熱炉中でも浄化されることができる。微細かつ反応性の粉末のためにはしかしながら、これは通常は最も多い酸化物汚染物を含有するが、これらの慣用の浄化方法は、この微細粉末の焼結を導く。他方では、マイクロ波プラズマ炉中では、極めて微細な金属粉末ですらも、数分間のうちに、粒度の変更なく、完全にこれらの酸化物から浄化されることができる。温度制御は、十分に短く脈動させたプラズマの使用により制御される。マイクロ波炉の出力は常に、金属の酸化物特性及び粒度に適合される。
【0011】
本発明によれば、酸素を材料から除去することが可能であり、その際材料は、材料の少なくとも90質量%より多く、より有利には95質量%より多くが、その当初の構造を有利には完全な形態で維持する。本発明によれば、無定形ホウ素は、酸素から解放されることができ、この得られる生成物は、酸素不含のホウ素又は減少した酸素含有量を有するホウ素であり、その一方でホウ素は無定形のままである。
【0012】
基本的に、酸素不純物を含有する全ての材料が、本発明の方法を用いて清浄化されることができる。通常は、材料の全質量に対して、酸素≧1質量%、有利には≧4質量%、特に≧10質量%を有する材料が、出発材料として使用される。酸素不純物は、酸素として、分散された形で、又は、結合された形でも、特に、酸化物の形で存在することができる。
【0013】
本発明の方法においては、酸素の量を、材料の全質量に対して、とりわけ酸素≦0.5質量%の含有量に、より有利には≦0.1質量%の含有量に、より一層有利には≦0.05質量%、更により一層有利には≦0.01質量%に顕著に減少させることができる。達成される、酸素の実際の含有量は、それぞれの処理条件に依存し、かつ、所望の最終値に依存して、当業者により適合されることができる。
【0014】
実施例中に示したように、例えば、本発明の方法を用いて、酸素を無定形ホウ素から<0.1質量%のレベルにまで除去することができ、これは現在までの方法を用いては可能でなかった。
【0015】
本発明によれば、出発材料の処理は、水素ベースのプラズマにより実施される。この種のプラズマは有利には、水素≧5質量%(mass %)、より有利には≧20質量%、更に有利には≧50質量%、とりわけ有利には≧90質量%、更により一層有利には≧99質量%、最も有利には≧99.5質量%を含有し、しかしながら、完全に水素からなることもできる。プラズマの作成のためには、水素及び、場合により1種以上の不活性ガスを含有する、所望の圧力を有する、ガス雰囲気が提供される。この圧力は有利には、0.1〜100bar、特に1〜20barである。特に有利には、純粋な水素ベースのプラズマ又は水素と、アルゴン及び窒素から選択される少なくとも1種の不活性ガスとの混合物ベースのプラズマが有利である。前記プラズマ中の酸素含有量は有利には≦10ppm、より有利には≦5ppm、一層有利には≦1ppm、最も有利には≦0.6ppmである。好ましくは、前記プラズマ中の酸素含有量は、0.1〜0.5ppmに調節されている。更に、プラズマ中の水含有量は、有利には≦10ppm、より有利には≦5ppm、特に≦1ppm、とりわけ有利には≦0.1ppmである。
【0016】
水素ベースのプラズマを用いた処理は、酸素の除去の所望の程度に応じて、変動可能な期間の間行われることができ、通常は0.5〜10時間、特に2〜5時間、しばしば3〜3.5時間の期間が好ましい。
【0017】
プラズマ処理は有利には、700℃〜1500℃、特に800〜1100℃の温度で実施される。
【0018】
有利には、本発明により使用される水素プラズマは、マイクロ波誘導プラズマである。マイクロ波放射源として、100〜2000W、有利には500〜1000Wを、1〜10Ghz、特に2〜3Ghzで有するエネルギー源が例えば使用されることができる。プラズマ中で、特に、マイクロ波誘導プラズマ中で産出されるHラジカル及びH+イオンは、極めて活性が高いので、この結果原則的に任意の種類の材料が、本発明の方法の実施により清浄化されることができる。特に、Hラジカル及びH+イオンは、酸素を無定形ホウ素から除去するために十分に活性があり、この清浄化方法は、無定形構造を維持することにより、これまでに、技術水準の方法を用いては可能ではなかった。
【0019】
特に有利な一実施態様においては、酸素は酸素ゲッターの存在下で除去される。酸素ゲッターの使用は、清浄化効率を大きく促進する。任意の酸素ゲッター材料が使用されることができるが、特に良好な結果は、チタンを用いて得られている。
【0020】
系列に関連していることが望まれているわけではないが(While not be wished to be bound to a series)、本発明による酸素の成功した除去は、非平衡処置の使用により促進されると信じられる。
【0021】
本発明による方法は、酸素不純物から、他のいかなる剤による材料の汚染無しに、清浄化を実施することを可能にする。特に、材料中で残存するかもしれない還元剤は必要とされない。更に、微細構造の変化は生じず、これは、原料の構造は、処理された材料の微細構造と同じであることを意味する。これは、例えば無定形ホウ素を維持することを可能にし、かつ、この無定形な微細構造を、結晶性の微細構造に変態させること無しに、酸素不純物を除去することのみを可能にする。
【0022】
本発明は更に、次の実施例により詳説される。
【0023】
実施例1
無定形ホウ素約0.2g(金属に関して99.999%、酸素4.05±0.21質量%、ICP分析により)を、清浄しかつ焼きなまししたアルミナるつぼ中に装入し、次いで石英アンプル中に更なるるつぼと一緒に配置させ、これは酸素ゲッター(例えば、チタン)を含有する。説明された全ての操作を、制御された雰囲気(<0.1ppm H2O、0.1〜0.6ppm O2)を有するアルゴン充填したグローブボックス中で実施した。このアンプルを排気し、所望のガスにより充填して一定の圧力にし、次いで封止した。充填ガスの組成を、清浄化のために最適な組成を見出すべく変動させた。純粋なアルゴン及び窒素プラズマ処理は、酸素含有量を変化させなかった。Ar/H2ベースのプラズマ(H2 5体積%)により、酸素含有量の減少が導かれた。最良の結果は、純粋な水素を充填ガスとして使用する際に達成された。
【0024】
酸素ゲッター無しでの実験もまた実施した。清浄化は、酸素ゲッターの使用により著しく促進されることが示された。
【0025】
Samsung M1719N電子レンジ(800W、2.45GHz)を、マイクロ波照射源として使用した。
【0026】
処理後に、アンプルを開放し、次いで化学分析のための試料をグローブボックス中で調整した。
【0027】
最良の結果(処理後に、酸素0.09±0.05質量%)は、H2プラズマ、ゲッターとしてTi、そして約3〜3.5時間の反応時間を使用した際に達成された。
【0028】
粉末X線回折試験は、出発材料及びプラズマ処理生成物の両方が鋭い回折ピークを示さず、かつ、より低い回折角で幅広い強度の隆起のみを示すことを明らかにした。これは、材料の無定形状態を裏付ける。走査型電子顕微鏡観察は、プラズマ処理した生成物中で、この出発粒子が、より大きな凝集物へと焼結されることを明らかにした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素不純物を含有する材料を水素ベースのプラズマを用いて処理することを特徴とする、材料からの酸素の除去のための清浄化方法。
【請求項2】
酸素ゲッターの存在下で、酸素を除去することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
チタンを酸素ゲッターとして使用する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
精浄化されるべき材料が、温度安定性材料であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
材料が、非金属性元素又は金属から選択されることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
酸素が、ホウ素、特に無定形ホウ素から除去されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
清浄化されるべき材料が、酸素不純物を、この材料の全質量に対して、酸素≧1質量%、有利には≧4質量%、特に≧10質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
酸素不純物が、酸化物として存在することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
材料が、この材料の全質量に対して、酸素≦0.5質量%、有利には≦0.1質量%、特に≦0.05質量%の酸素含有量に清浄化されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
水素ベースのプラズマが、H2≧5体積%、有利には≧90体積%、特に≧99体積%を含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
2と、場合により、不活性ガス、例えばアルゴン又は窒素とからなる水素ベースのプラズマを使用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
水素ベースのプラズマ中の酸素含有量が、O2≦10ppmであることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
水素ベースのプラズマの水含有量が、≦10ppmであることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
水素ベースのプラズマを用いた処理を、0.5〜10時間実施することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
マイクロ波誘導プラズマを使用することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2008−545521(P2008−545521A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511631(P2008−511631)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004692
【国際公開番号】WO2006/122794
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(390040420)マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ (54)
【氏名又は名称原語表記】Max−Planck−Gesellschaft zur Foerderung der Wissenschaften e.V.
【住所又は居所原語表記】Berlin, Germany
【Fターム(参考)】