説明

水素濃度計測システム及び水素濃度計測器の校正方法

【課題】本発明は、校正ガスを蓄えるタンク設備を小型化することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ガスが流れる計測対象装置と、該ガス中の水素濃度を計測する水素濃度計測器と、前記計測対象装置と前記水素濃度計測器とを接続する計測系統とを備えた水素濃度計測システムであって、前記水素濃度計測器の上流側から校正ガスを供給する校正ガス系統を備え、前記水素濃度計測器に供給された校正ガスは、前記水素濃度計測器の下流側から回収され、前記校正ガス系統へ戻されることを特徴とする。
【効果】本発明によれば、校正ガスを蓄えるタンク設備を小型化することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素濃度計測システム及び水素濃度計測器の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、原子力発電所のガス成分監視装置において、水素検出器の校正方法を開示する。水素検出器を校正する際に使用する校正ガス(水素標準ガス)は、水素検出器の校正試験に使用した後、水素吸蔵タンクに供給して校正ガスの水素濃度を低減させて、原子炉格納容器に戻している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−21784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素検出器の校正試験は、校正ガスによる水素検出器の指示値を安定させるため、一定時間、水素検出器に校正ガスを流し続ける必要がある。そのため、多量の校正ガスが消費され、校正ガスを蓄えるタンクの容量が大きくなる。従って、設備が大型化するという課題があった。
【0005】
本発明は、校正ガスを蓄えるタンク設備を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水素濃度計測器の上流側から校正ガスを供給する校正ガス系統を備え、水素濃度計測器に供給された校正ガスは、水素濃度計測器の下流側から回収され、校正ガス系統へ戻されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、校正ガスを蓄えるタンク設備を小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】原子力発電所の気体廃棄物処理設備における水素濃度計測システムを示す図である。
【図2】ゼロガス校正を行う場合の弁開閉状況を示す図である。
【図3】スパンガス校正を行う場合の弁開閉状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、原子力発電所の気体廃棄物処理設備における水素濃度計測システムを示す。原子力発電所は、原子炉1が水を蒸気に変え、蒸気でタービン2を回し、発電機4により発電する。タービン2を駆動した蒸気は、復水器3で水に戻り、再び原子炉1へ供給される。
【0010】
気体廃棄物処理設備5は、復水器3を流れるガスに含まれる水素と酸素などを連続的に抽出し、ガス中に含まれる酸素と水素を触媒反応により水蒸気とし、水素濃度を可燃限界未満にする。さらに、ガスを冷却しガス中の大部分の水蒸気を凝縮させ、湿分を凝縮除去する。また、ガスを一定期間活性炭に吸着させ、環境に影響を与えない程度まで放射能を減衰させた後、処理後のガスを大気に放出する。
【0011】
水素濃度計測システム100は、計測対象である気体廃棄物処理設備5,水素濃度計測装置6、及び校正ガス装置7を備える。水素濃度計測装置6は、この気体廃棄物処理設備5内の水素濃度を確認する装置である。校正ガス装置7は、水素濃度計測装置6が有する水素濃度計測器14を校正するための装置である。
【0012】
本実施例において、水素濃度計測装置6は、水素濃度計測器14,気体廃棄物処理設備5と水素濃度計測器14とを接続する計測系統25,水素濃度計測器14によってガス中の水素濃度を計測した後に、当該ガスを復水器3に戻す配管24,計測系統25を流れるガスの流量を調整する弁8,配管24を流れるガスの流量を調整する弁9を備える。また、水素濃度計測器14の上流側には、第1の校正ガスであるゼロガスを水素濃度計測器14に供給する第1の校正ガス系統26,第2の校正ガスであるスパンガスを水素濃度計測器14に供給する第2の校正ガス系統27が接続されている。第1の校正ガス系統26,第2の校正ガス系統27は、それぞれ校正ガスの供給量を調整する弁10,11を備える。そして、水素濃度計測器14の下流側には、水素濃度計測器14に供給された第1の校正ガスを回収するために、第1の校正ガス系統26が接続されている。同様に、水素濃度計測器14に供給された第2の校正ガスを回収するために、第2の校正ガス系統27も接続されている。
【0013】
第1の校正ガス系統26は、その上流側から、弁10,水素濃度計測器19a,タンク22,逆止弁23,ポンプ17,タンク15を備える。第2の校正ガス系統27は、その上流側から、弁11,水素濃度計測器19,タンク20,逆止弁21,ポンプ18,タンク16を備える。また、水素濃度計測装置6と校正ガス装置7を制御する制御盤30が設けられている。
【0014】
図1は、計測対象装置内のガス水素濃度を計測する場合の弁開閉状況を示す。「開」状態の弁は白抜き、「閉」状態の弁は黒色の塗りつぶしで示す。弁8,9は「開」、弁10,11,12,13は「閉」の状態で行う。計測系統25内のガス圧力は、配管24内のガス圧力より低いため、計測系統25内のガスは、弁8,水素濃度計測器14,弁9,配管24を流れる。そして、ガス中の水素濃度は、水素濃度計測器14で計測される。
【0015】
また、水素濃度計測器14の健全性を確認するため、定期的に校正ガスによる校正を行う。校正ガスは、校正ガス装置7より供給する。この校正は、ゼロガス・スパンガスを用いて行う。ゼロガスは、水素濃度計測器14の最小目盛値を校正するために用いる校正ガスであり、窒素ガスなどが用いられる。スパンガスは、水素濃度計測器14の最大目盛値付近の目盛値を校正するために用いる校正ガスであり、最大目盛値に近い水素濃度ガスが用いられる。更に、中間点ガスを用いることも可能である。中間点ガスは、水素濃度計測器14の最小目盛値と最大目盛値の間の目盛値を校正するために用いられる校正ガスをいう。図1では、中間点ガスを省略している。
【0016】
水素濃度計測器14の校正方法は、ゼロガスを一定時間流し、水素濃度計測器14の指示値が安定した後、ゼロ調整を行う。次に、スパンガスを一定時間流し、水素濃度計測器14の指示値が安定した後、スパン調整を行う。必要に応じてゼロ調整,スパン調整を繰り返して行い、ゼロ,スパン、それぞれの指示が、指定の再現性内で一致したことを確認する。
【0017】
以下の手順により、ゼロガス校正,スパンガス校正を行う。
【0018】
ゼロガス校正を行う場合、水素濃度計測器19aが検出するゼロガスの水素濃度を示す計測信号31に基づき、制御盤30が制御信号32を弁に送信する。図2は、ゼロガス校正を行う場合の弁開閉状況を示す図である。このとき、弁10,12を「開」、弁8,9,11,13を「閉」とする。また、ポンプ17,18は「停止」状態となる。タンク22内のガス圧力よりタンク15内のガス圧力が低いため、タンク22内のゼロガスは、弁10,水素濃度計測器14,弁12を流れ、タンク15に蓄えられる。ゼロガスを一定時間流し、水素濃度計測器14の指示がゼロ近傍で安定することを確認してから、水素濃度計測器14のゼロ調整を行う。水素濃度計測器19aでゼロガスの水素濃度を確認しながらゼロガス校正を行う。
【0019】
次にスパンガスにより、スパン調整を実施する。図3は、スパンガス校正を行う場合の弁開閉状況を示す図である。スパンガス校正は、水素濃度計測器19が検出するスパンガスの水素濃度を示す計測信号31に基づき、制御盤30が制御信号32を送信し、弁11,13を「開」、弁8,9,10,12を「閉」とする。ポンプ17,18は「停止」とする。タンク20内のガス圧力よりタンク16内のガス圧力が低いため、タンク20内のスパンガスは、弁11,水素濃度計測器14,弁13を流れ、タンク16に入り蓄えられる。スパンガスを一定時間流し、水素濃度計測器14の指示が安定することを確認してから、水素濃度計測器14のスパン調整を行う。スパンガスを水素濃度計測器19で確認しながらスパンガス校正を行う。
【0020】
次に、ゼロガスをタンク15からタンク22に戻す。この戻し工程は、図1の計測状態で行う。計測状態では、制御盤30からの制御信号32により、弁8,9を「開」、弁10,11,12,13を「閉」とする。計測状態時、タンク15に蓄えられたゼロガスは、ポンプ17によって吸引され、逆止弁23を介してタンク22に戻される。ポンプ17の起動は、制御盤30からの制御信号32により行う。また、ゼロガスの戻し工程は、計測状態の任意の時間に実施する。
【0021】
また、スパンガスもタンク16からタンク20に戻す。計測状態時に、タンク16に蓄えられたスパンガスは、ポンプ18によって吸引され、逆止弁21を介してタンク20に戻される。ポンプ18の起動も、制御盤30からの制御信号32により行われる。スパンガスは、計測状態の任意の時間にタンク20へ戻される。このように、ゼロガスの戻し工程とスパンガスの戻し工程は、制御盤30からの制御信号32により、ポンプ17またはポンプ18を一定時間起動することにより実施する。同時に実施してもよい。
【0022】
以上のように、ゼロガス,スパンガスをそれぞれタンク22,20に戻すことにより、再度ゼロガス校正,スパンガス校正を行うことができる。
【0023】
このように、本実施例は、水素濃度計測器14の上流側から校正ガスを供給する校正ガス系統を備え、水素濃度計測器14に供給された校正ガスは、水素濃度計測器14の下流側から回収され、校正ガス系統へ戻される。そのため、校正ガスが気体廃棄物処理設備5に排出されてしまうことを防ぎ、校正ガスを蓄えるタンク設備を小型化することが可能となる。
【0024】
また、本実施例は、水素濃度計測器の上流側から第1の校正ガス及び第2の校正ガスを供給する2つの校正ガス系統と、水素濃度計測器に供給された第1の校正ガス及び第2の校正ガスは、水素濃度計測器の下流側からそれぞれ回収され、2つの校正ガス系統へ戻される。そのため、2種類以上の校正ガス(例えば、スパンガスとゼロガス)を使用する場合も、2系統の校正ガスを切り替えて使用できるため、異なる種類の校正ガスが混ざってしまうことを抑制できる。
【0025】
このように、ゼロガス校正,スパンガス校正,ゼロガスの戻し工程,スパンガスの戻し工程を行うことにより、水素濃度計測器14の上流側から供給された校正ガスは、水素濃度計測器14の下流側から回収され、再び校正ガス系統へ戻される。従って、校正ガスを循環して使用することができる。本実施例では、校正で使用したガスを再度、ゼロガス,スパンガスに戻し使用する。したがって、校正ガスの消費を抑えることができ、校正ガスを貯めるタンクの容量を小さくすることが可能である。また、校正ガスを循環して使用することで、不要なゼロガス,スパンガスを廃棄物処理設備に流す必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
原子力発電所の水素濃度計測器を用いる設備に適用可能と考える。
【符号の説明】
【0027】
1 原子炉
2 タービン
3 復水器
4 発電機
5 気体廃棄物処理設備
6 水素濃度計測装置
7 校正ガス装置
8,9,10,11,12,13 弁
14,19,19a 水素濃度計測器
15,16,20,22 タンク
17,18 ポンプ
21,23 逆止弁
24 配管
25 計測系統
26 第1の校正ガス系統
27 第2の校正ガス系統
30 制御盤
31 計測信号
32 制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが流れる計測対象装置と、
該ガス中の水素濃度を計測する水素濃度計測器と、
前記計測対象装置と前記水素濃度計測器とを接続する計測系統とを備えた水素濃度計測システムであって、
前記水素濃度計測器の上流側から校正ガスを供給する校正ガス系統を備え、
前記水素濃度計測器に供給された校正ガスは、前記水素濃度計測器の下流側から回収され、前記校正ガス系統へ戻されることを特徴とする水素濃度計測システム。
【請求項2】
ガスが流れる計測対象装置と、
該ガス中の水素濃度を計測する水素濃度計測器と、
前記計測対象装置と前記水素濃度計測器とを接続する計測系統とを備えた水素濃度計測システムであって、
前記水素濃度計測器の上流側から第1の校正ガス及び第2の校正ガスを供給する2つの校正ガス系統と、
前記水素濃度計測器に供給された前記第1の校正ガス及び前記第2の校正ガスは、前記水素濃度計測器の下流側からそれぞれ回収され、2つの前記校正ガス系統へ戻されることを特徴とする水素濃度計測システム。
【請求項3】
ガスが流れる計測対象装置と、
該ガス中の水素濃度を計測する水素濃度計測器と、
前記計測対象装置と前記水素濃度計測器とを接続する計測系統とを備えた水素濃度計測器の校正方法であって、
前記水素濃度計測器の上流側から校正ガスを供給し、
前記水素濃度計測器に供給された校正ガスを前記水素濃度計測器の下流側から回収し、前記校正ガス系統へ戻されることを特徴とする水素濃度計測器の校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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