説明

水素生成装置及び燃料電池システム

【課題】 従来の水素生成装置に比べ、原料ガスを改質して得られる水素含有ガスにより加熱されて好適な温度で水添脱硫を行うことが容易な水素生成装置及びそれを用いた燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 原料ガス及び水蒸気を用いて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器3と、改質器3より送出される水素含有ガスと原料ガス及び水蒸気の混合ガスとが熱交換するための熱交換器5と、原料ガス中に含まれる硫黄化合物を水添脱硫により除去する水添脱硫器6と、を備え、水添脱硫器6は、熱交換器5の外部に配設されかつ熱交換器5を通過中又は通過後の水素含有ガスにより加熱されるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水添脱硫器を備えた水素生成装置及びそれを用いた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素生成装置は、原料を改質して水素含有ガスを生成する。原料が都市ガスである場合、付臭成分として硫黄化合物を含んでいることが多い。また、原料が天然ガスである場合、その産地によっては当該天然ガスに硫黄成分が多く含まれていることもある。これらの硫黄化合物に含まれる硫黄は、極めて低濃度であっても、水蒸気改質反応に繁用されるNi系やRu系の改質触媒の活性低下を進行させることが知られている。このため、水素生成装置は、一般に原料から硫黄成分を除去する脱硫器を備えている。このような脱硫器として、例えば、水添脱硫器が知られている。水添脱硫器(hydrodesulfurizer)は、原料中の硫黄成分を硫化水素に変換し、この硫化水素を吸着剤に吸着させて除去する。
【0003】
このような、水添脱硫器を備えた水素生成装置として、例えば、改質反応筒内に水添脱硫部を備えた水素生成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この水素生成装置では、改質反応筒の内部に、当該改質反応筒の下端から上端に向かって、改質部、脱硫部、シフト変成部、及び選択酸化部がこの順に収容されている。水素含有リサイクルガスが添加された原燃料と改質水とが、当該改質反応筒の上端から改質部に至るそれぞれの流路を介して改質部に供給され、かつ改質筒の下端の下方に配設されたバーナで生成された燃焼ガスにより当該改質筒の下端及び外周が加熱される。これにより、改質部において原燃料と改質水とにより改質ガスが生成され、この改質ガスが改質筒内をその下端から上端に向かって通流し、当該上端から外部に流出する。脱硫部は、上述の水素含有リサイクルガスが添加された原燃料の流路の途中に設けられていて、主としてこの改質ガスにより水添脱硫に必要な熱を供給され、原燃料が脱硫部で水添脱硫されて、改質部に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−096706号公報(特に、図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の水素生成装置においては、以下のような課題があった。すなわち、原燃料(原料)を改質するのに好適な温度は650℃程度である。一方、水添脱硫を行うのに好適な温度は改質に好適な温度に比べてかなり低い(例えば、250℃〜350℃程度)。ところが、上記水素生成装置では、改質ガスが通流する改質筒中に、改質部、脱硫部、原燃料の流路、及び改質水の流路が渾然としてかつ脱硫部と改質部とが近接して配置されている。このため、特に脱硫部の改質部に近い部分(下流端部)は改質部から流出した直後の改質ガスであって実質的に改質水(又は、水蒸気)又は水素含有リサイクルガスが添加された原燃料と熱交換されていない高温(650℃に近い温度)の改質ガスによって直接加熱され、好適な温度で水添脱硫を行うことが困難であるという課題があった。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、従来の水素生成装置に比べ、原料ガスを改質して得られる水素含有ガスにより加熱されて好適な温度で水添脱硫を行うことが容易な水素生成装置及びそれを用いた燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある形態(aspect)に係る水素生成装置は、原料ガス及び水蒸気を用いて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器より送出される水素含有ガスと前記原料ガス及び水蒸気の混合ガスとが熱交換するための熱交換器と、前記原料ガス中に含まれる硫黄化合物を水添脱硫により除去する水添脱硫器と、を備え、前記水添脱硫器は、前記熱交換器の外部に配設されかつ前記熱交換器を通過中又は通過後の前記水素含有ガスにより加熱されるよう構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記のように構成され、従来の水素生成装置に比べ、原料ガスを改質して得られる水素含有ガスにより加熱されて好適な温度で水添脱硫を行うことが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る水素生成装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2(a),(b)は図1の水素生成装置の水添脱硫器の具体的構成例を模式的に示す斜視図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態2に係る水素生成装置の構成を示す模式図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態3に係る水素生成装置の構成を示す模式図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態4に係る水素生成装置の構成を示す模式図である。
【図6】図6(a)〜(c)は図5の水素生成装置の水添脱硫器における触媒の配置例を模式的に示す断面図である。
【図7】図7(a),(b)は本発明の実施の形態5に係る水素生成装置における水添脱硫器の構成を模式的に示す断面図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態6に係る水素生成装置の構成を示す模式図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態7に係る水素生成装置の構成を示す模式図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態8に係る水素生成装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態に係る水素生成装置は、原料ガス及び水蒸気を用いて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、改質器より送出される水素含有ガスと原料ガス及び水蒸気の混合ガスとが熱交換するための熱交換器と、原料ガス中に含まれる硫黄化合物を水添脱硫により除去する水添脱硫器と、を備え、水添脱硫器は、熱交換器の外部に配設されかつ熱交換器を通過中又は通過後の水素含有ガスにより加熱されるよう構成されている。ここで、「加熱される」には、「直接に加熱される」場合と「間接的に加熱される」場合との双方を含む。
【0012】
この構成によれば、改質器より送出される水素含有ガスが、水添脱硫器に到達する前に原料ガス及び水蒸気の混合ガスと熱交換する熱交換器を通過する。しかも、水添脱硫器は、水素含有ガスが原料ガス及び水蒸気の混合ガスと熱交換する熱交換器の外部に配設されていて、熱交換器を通過中又は通過後の水素含有ガスにより加熱されるように構成されている。従って、従来の水素生成装置に比べ、水添脱硫器は、改質器から流出した直後の水素含有ガスであって実質的に原料ガス及び水蒸気の混合ガスと熱交換されていない高温(650℃に近い温度)の水素含有ガスによって直接加熱されることが抑制され、水添脱硫器において、熱交換器で原料ガス及び水蒸気の混合ガスとの熱交換により降温した水素含有ガスにより加熱されて原料ガスの水添脱硫が行われる。従って、本実施の形態の水素生成装置は、従来の水素生成装置に比べ、好適な温度で水添脱硫を行うことが容易になる。
【0013】
水添脱硫器は、熱交換器の外周を覆うように配設されていてもよい。
【0014】
熱交換器は、前記水添脱硫器の外周を覆うように配設されていてもよい。
【0015】
水添脱硫器は、水素含有ガスの流れにおいて熱交換器の下流に配設されており、水添脱硫器は、内部を流れる原料ガスが熱交換器を通過した水素含有ガスと熱交換可能に構成されていてもよい。
【0016】
水添脱硫器を流れる原料ガスの流れの向きと原料ガスと熱交換する水素含有ガスの流れの向きとが並行になるよう構成されていてもよい。
【0017】
改質器から送出された水素含有ガス中の一酸化炭素をシフト反応により低減する変成器をさらに備え、原料ガスの流れにおける水添脱硫器の下流端は、変成器と隣接するよう構成されていてもよい。
【0018】
水添脱硫器は、原料ガス中に含まれる硫黄化合物を硫化水素に変換する第1触媒層と、硫化水素を吸着する第2触媒層とを備え、かつ、水素含有ガスの流れに対して第1触媒層及び第2触媒層の順に配設されていてもよい。
【0019】
硫化水素への変換機能及び硫化水素を吸着する機能のうち、第1触媒層は、硫化水素への変換機能を有する触媒であり、第2触媒層は、硫化水素を吸着する機能を有する触媒であってもよい。
【0020】
第2触媒層は、高温吸着触媒層と低温吸着触媒層とを備え、水素含有ガスにより高温吸着触媒層及び低温吸着触媒層の順で加熱されるよう配設されていてもよい。
【0021】
高温吸着触媒層は第1触媒層と隣接して設けられ、低温吸着触媒層は、高温吸着触媒層と空間を挟んで配設されていてもよい。
【0022】
第1触媒層及び第2触媒層は、硫黄化合物を硫化水素に変換する機能と硫化水素を吸着する機能を有する触媒層であり、水素含有ガスから伝達された熱により、第1触媒層は、硫化水素に変換する反応が硫化水素を吸着する反応よりも優位になる温度になるとともに第2触媒層は、硫化水素を吸着する反応が硫黄化合物を硫化水素に変換する反応よりも優位になる温度になるよう構成されていてもよい。
【0023】
水添脱硫器と水素含有ガスが流れる流路との間に伝熱緩和部が設けられていてもよい。
【0024】
伝熱緩和部が、断熱材及び空気溜まり部のいずれかで構成されていてもよい。
【0025】
改質器から送出された水素含有ガス中の一酸化炭素をシフト反応により低減するCu−Zn系触媒を有する変成器を備え、第2触媒層は、Cu−Zn系触媒で構成されており、水添脱硫器は、第2触媒層が、変成器の近傍に位置するよう構成されていてもよい。
【0026】
改質器で生成された水素含有ガスの一部が水添脱硫器に供給される原料ガスに混合されるよう構成されており、かつ、原料ガスと前記水素含有ガスの混合ガスが流れる経路に設けられた、原料ガス供給器と、原料ガス供給器と水添脱硫器との間に設けられた開閉弁とを備えてもよい。
【0027】
また、本実施の形態に係る燃料電池システムは、上記のいずれかの水素生成装置と、水素生成装置より供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備える。
【0028】
以下、具体的に実施の形態を説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0029】
(実施の形態1)
実施の形態1は、水添脱硫器が熱交換器を通過後の水素含有ガスにより加熱されるよう構成されている形態を例示するものである。
【0030】
図1は実施の形態1に係る水素生成装置の構成を示す模式図である。図1では、便宜上、図における上方向及び下方向をそれぞれ水素生成装置の上方向及び下方向として説明する。但し、実際の水素生成装置1に方向性はなく、これに限定されるものではない。
【0031】
[構成]
図1に示すように、本実施の形態1の水素生成装置1は、主な要素として、水素生成器2、燃焼器4、熱交換器5、水添脱硫器6、蒸発器7、及び燃焼用空気供給器8を備えている。
【0032】
<水素生成器>
水素生成器2は、例えば、上端及び下端が閉鎖された円筒状の反応容器を備えている。この反応容器の内部空間は複数の同心円筒状の隔壁によって複数の円柱状もしくは円筒状の空間2a〜2eに区画されている。この反応容器の中心部の円柱状の第1空間2aは、上端が閉鎖され、かつ下端が開放されるように形成されている。この第1空間2aに下方から嵌挿されるようにして、例えばバーナからなる燃焼器4が配設されている。燃焼器4には燃焼用ガス供給経路16から燃焼用ガスが供給され、かつ燃焼用空気供給器8から燃焼用空気が供給される。燃焼用空気供給器8は、例えば、シロッコファンで構成される。燃焼用ガスとして、例えば、原料ガス、オフガス(実施の形態8参照)等が用いられる。燃焼器4は、燃焼用ガスを、燃焼用空気を用いて燃焼させて燃焼排ガスを生成する。この燃焼排ガスは、第1空間2aの下端から流出する。
【0033】
第1空間2aの外側の円筒状の第2空間2bは、上端が開放され、かつ下端が閉鎖されるように形成されている。第2空間2bには改質触媒が充填されていて、この第2空間2bと改質触媒とが改質器3を構成している。改質器3の運転時(水素含有ガス生成時)の温度は任意であるが、例えば、650℃程度である。第2空間2bの下端には原料ガス/水蒸気混合ガス経路14の下流端が接続され、第2空間2bの上端はその上方に形成された水素含有ガス流路30に連通している。
【0034】
第2空間2bの外側の円筒状の第3空間2cは、上端が閉鎖され、かつ下端が第1空間2aに連通するように形成されていて、燃焼排ガス流路を構成している。そして、第3空間2cの上端には燃焼排ガス経路18の上流端が接続されている。これにより、改質器3の改質触媒が第1空間2a及び第3空間2cを流れる燃焼排ガスにより所要の温度(650℃程度)に加熱され、原料ガス/水蒸気混合ガス経路14から供給された原料ガス及び水蒸気の混合ガスが、改質器3において、改質触媒を用いた水蒸気改質反応により改質されて水素含有ガスが生成される。
【0035】
第3空間2cの外側の円筒状の第4空間2dは、上端及び下端が閉鎖されるように形成されている。第4空間2dの下端及び上端にはそれぞれ水供給経路12の上流側部分及び下流側部分が接続されていて、第4空間2dは、水供給経路12における水(改質水)の予熱部を構成している。これにより、水供給経路12を流れる水が第4空間2dにおいて、第3空間2cを流れる燃焼排ガスによって予熱される。なお、第4空間2dを設けずに、水供給経路12を流れる水が直接蒸発器7に供給される形態を採用しても構わない。
【0036】
<水素含有ガス流路、水添脱硫器、及び熱交換器>
一方、水素生成器2の第2空間2bと第3空間2cとを区画する円筒状の隔壁2eは、反応容器(水素生成器2)からさらに上方に延伸しており、その上端が閉鎖されている。この隔壁2eの延伸部は、適宜な隔壁21,22により区画されて、下から順に、水素含有ガス流路30、熱交換器5、及び水添脱硫器6が形成されている。
【0037】
水素含有ガス流路30には、水素含有ガス経路10の上流端が接続されていて、水素含有ガスが改質器3から水素含有ガス流路30を通って水素含有ガス経路10に流出する。
【0038】
熱交換器5は、水添脱硫器6を通過した原料ガス及び水蒸気の混合ガスと水素含有ガス流路30から流出した水素含有ガスとが熱交換するよう構成されている。熱交換器5は周知のものを用いることができるので、その具体的な説明を省略する。参照符号5a及び5bは、それぞれ、熱交換器5における水素含有ガスの流路及び原料ガス及び水蒸気の混合ガスの流路を示す。水素含有ガスの流路5aは水素含有ガス経路10の一部を構成し、原料ガス及び水蒸気の混合ガスの流路5bは原料ガス/水蒸気混合ガス経路14の一部を構成している。
【0039】
この熱交換器5における原料ガス及び水蒸気の混合ガスと水素含有ガスとの熱交換により、原料ガス及び水蒸気の混合ガスは昇温し、かつ、水素含有ガスは降温する。
【0040】
水添脱硫器6は、水素が添加された原料ガス中の硫黄成分を当該原料ガス中の水素を用いて硫化水素に変換し、この硫化水素を吸着して除去する機能を有するものであればよく、特に限定されない。水添脱硫を行う温度は、特に限定されないが、例えば、250℃〜350℃程度(後述する実施の形態4では200℃〜400℃程度)とされる。原料ガス中の硫黄成分を硫化水素に変換する水添脱硫触媒として、例えば、Co−Mo系触媒、Ni−Mo系触媒等を用いることができ、硫化水素を吸着する吸着剤(以下、硫化水素吸着剤という)として、例えば、酸化亜鉛系吸着剤等を用いることができる。
【0041】
水添脱硫器6は、水素含有ガスの流れにおいて熱交換器5の下流に配設されており、かつ水素含有ガスの流路31に接触するように形成されている。水素含有ガスの流路31を流れる水素含有ガスから水添脱硫器6への熱の伝達の態様は任意である。例えば、水添脱硫器6の原料ガスの流路32を流れる原料ガスが水素含有ガスの流路31を流れる水素含有ガスと熱交換可能に構成されていてもよい。そのような場合には、効率的に水素含有ガスから水添脱硫器6に熱を伝達することができる。また、水添脱硫器6では、原料ガスの流れの向きとこの原料ガスと熱交換する水素含有ガスの流れの向きとが並行(全体として同じ向き)になるよう構成されていることが好ましい。
【0042】
図2(a),(b)は図1の水素生成装置1の水添脱硫器6の具体的構成例を模式的に示す斜視図である。これらの構成例では、原料ガスの流れの向きと水素含有ガスの流れの向きとが並行になるように、それぞれの流路が形成されている。
【0043】
水添脱硫器6は、例えば、図2(a)に示すように、外筒51と内筒52とを備える2重円筒形状に形成されている。外筒51と内筒52との間の空間が水素含有ガスの流路31を構成し、内筒52の内部空間が、原料ガスの流路32を構成している。ここでは、例えば、内筒52の両端面53が閉鎖されていて、この内筒52の下端部に原料ガス経路11の上流側部分が接続され、内筒52の上端部に原料ガス経路11の下流側部分が接続されている。内筒52の内部には、原料ガスの流路(図示せず)が形成され、この流路に水添脱硫触媒(図示せず)と硫化水素吸着剤(図示せず)とが配置されている。
【0044】
水添脱硫器6は、図2(b)に示すように、外筒51と内筒52との間の空間が原料ガスの流路32を構成し、内筒52の内部空間が、水素含有ガスの流路31を構成するよう構成されてもよい。この場合、外筒51と内筒52との間の空間の両端面54が閉鎖され、この空間の下端部に原料ガス経路11の上流側部分が接続され、この空間の上端部に原料ガス経路11の下流側部分が接続される。この空間の内部には、原料ガスの流路(図示せず)が形成され、この流路に水添脱硫触媒(図示せず)と硫化水素吸着剤(図示せず)とが配置される。
【0045】
ここで、上述の外筒51と内筒52とで規定(define)される領域のうち、水素含有ガスの流路31を除く部分が水添脱硫器6を構成しており、水素含有ガスの流路31は水素含有ガス経路10の一部を構成している。
【0046】
これらの水添脱硫器6の構成例によれば、内筒52を介した熱交換により原料ガス、水添脱硫触媒、及び硫化水素吸着剤が水素含有ガスにより加熱される。これらの水添脱硫器6の構成例は、例示であり、水添脱硫器6は、原料ガス、水添脱硫触媒、硫化水素吸着剤が水素含有ガスによって加熱されるように構成されていればよく、その構造は任意である。また、図1には、水添脱硫器6が熱交換器5と接触して配設された構成が例示されているが、水添脱硫器6は熱交換器5と分離して配設されてもよい。
【0047】
以上の構成により、水添脱硫器6において、熱交換器5で降温した水素含有ガスから伝達される熱を用いて、原料ガス中の硫黄成分が除去され、この硫黄成分が除去された原料ガスが上述のように熱交換器5に供給される。
【0048】
<蒸発器>
蒸発器7は、水素生成器2とは、別個の独立した機器として設けられている。蒸発器7は、燃焼排ガス経路18を流れる燃焼排ガスから伝達される熱を用いて、水供給経路12を流れる水(改質水)を蒸発させるよう構成されている。蒸発器7として、熱交換器等の周知のものを用いることができるので、その具体的構成の説明は省略する。
【0049】
<原料ガス経路、水供給経路、原料ガス/水蒸気混合ガス経路>
原料ガス経路11は、原料ガス源(天然ガスのインフラストラクチャー等:図示せず)から水添脱硫器6を経由して合流点13で水供給経路12と合流するように設けられている。原料ガス経路11にはリサイクルガス経路15が合流している。このリサイクルガス経路15は水素含有ガス経路10から分岐していて、改質器3で生成された水素含有ガスの一部がリサイクルガスとしてリサイクルガス経路15を経由して原料ガス経路11に戻される。このようにして、水素含有ガスであるリサイクルガスが添加された原料ガスが水添脱硫器6で水添脱硫され、合流点13において、水供給経路12を流れて来た水蒸気と合流する。原料ガスは、水蒸気改質反応により水素含有ガスを生成できるものであればよい。原料ガスとして、例えば、メタンを主成分とする都市ガス(天然ガス)やLPガスを用いることができる。原料ガスには、原料由来の硫黄成分のほかに、漏洩検知の目的でサルファイド類、メルカプタン類等の硫黄化合物が付臭剤として添加されていることが多い。なお、原料ガスに添加する水素の供給源は、水素含有ガス経路10(改質器3)には限定されず、例えば、水素生成器2とは別個に設けられた水素ボンベ、水素吸蔵合金等であってもよい。
【0050】
水供給経路12は、適宜な水源(図示せず)から、上述のように水素生成器2の第4空間2dと蒸発器7とを経由して合流点13において原料ガス経路11に合流するように設けられている。これにより、水供給経路12を流れる水は、水素生成器2の第4空間2dで予熱されて蒸発器7で水蒸気になり、合流点13で原料ガスと混合されて原料ガス及び水蒸気の混合ガスとなる。
【0051】
原料ガス/水蒸気混合ガス経路14は、上述の合流点13から熱交換器5を経由して水素生成器2の改質器3に至るように設けられている。
【0052】
[動作]
次に、以上のように構成された水素生成装置1の動作を説明する。
【0053】
原料ガス源からの原料ガスが、原料ガス経路11を流れる間に水素(リサイクルガス)が添加され、水添脱硫器6において水添脱硫される。一方、水源からの水が、水供給経路12を流れる間に水素生成器2の第4空間2dで予熱され、かつ蒸発器7で水蒸気になり、合流点13において、水添脱硫された原料ガスと混合されて原料ガス及び水蒸気の混合ガスとなる。この原料ガス及び水蒸気の混合ガスが熱交換器5で水素含有ガスと熱交換して昇温し、水素生成器2の改質器3に供給される。この原料ガス及び水蒸気の混合ガスが改質器3で水蒸気改質されて水素含有ガスが生成される。この水素含有ガスが、熱交換器5で上述の原料ガス及び水蒸気の混合ガスと熱交換して降温し、この降温した水素含有ガスの保有する熱が水添脱硫器6で、水添脱硫に用いられる。これにより、さらに降温した水素含有ガスが水素含有ガス経路10を下流へと流れて水素利用機器(図示せず)に供給される。
【0054】
[作用効果]
以上に説明した本実施の形態1の水素生成装置1によれば、改質器3で生成された水素含有ガスは、水添脱硫器6に到達する前に原料ガス及び水蒸気の混合ガスと熱交換する熱交換器5を通過する。しかも、水添脱硫器6は、水素含有ガスが原料ガス及び水蒸気の混合ガスと熱交換する熱交換器の外部に設けられている。従って、従来の水素生成装置に比べ、水添脱硫器6は、改質器3から流出した直後の水素含有ガスであって実質的に原料ガス及び水蒸気の混合ガスと熱交換されていない高温(600℃に近い温度)の水素含有ガスによって直接加熱されることが抑制され、水添脱硫器6において、熱交換器5で原料ガス及び水蒸気の混合ガスとの熱交換により降温した水素含有ガスから伝達される熱を用いて、原料ガスの水添脱硫が行われる。従って、本実施の形態の水素生成装置は、従来の水素生成装置に比べ好適な温度で水添脱硫を行うことが容易になる。
【0055】
なお、上記では、水添脱硫器6が、熱交換器5を通過後の水素含有ガスにより直接に加熱される構成を例示したが、水添脱硫器6が、熱交換器5を通過後の水素含有ガスにより間接的に加熱されるよう構成してもよい。このような構成として、例えば、水添脱硫器6が、熱交換器5を通過後の水素含有ガスにより加熱される機器により加熱されるような構成が該当する。
【0056】
(実施の形態2)
実施の形態2は、水添脱硫器が、熱交換器を通過中の水素含有ガスにより加熱されるよう構成され、かつ熱交換器の外周を覆うように配設された形態を例示するものである。
【0057】
図3は実施の形態2に係る水素生成装置の構成を示す模式図である。図3に示すように、本実施の形態2の水素生成装置1では、円柱状の熱交換器5の外周を覆うように円筒容器状の水添脱硫器6が形成されている。水添脱硫器6の内部には原料ガスの流路33が適宜形成され、当該流路33に水添脱硫触媒(図示せず)と硫化水素吸着剤(図示せず)とが配置されている。これ以外の点は実施の形態1の水素生成装置1と同様である。
【0058】
この構成によれば、熱交換器5が、当該熱交換器5を通過中の水素含有ガスにより加熱され、この熱交換器5により水添脱硫器6が加熱される。つまり、水添脱硫器6が、熱交換器5を通過中の水素含有ガスにより(間接的に)加熱される。そして、その熱を用いて、原料ガスの水添脱硫が行われる。従って、本実施の形態の水素生成装置は、従来の水素生成装置に比べ、好適な温度で水添脱硫を行うことが容易になる。
【0059】
(実施の形態3)
実施の形態3は、水添脱硫器が、熱交換器を通過中の水素含有ガスにより加熱されるよう構成され、かつ熱交換器が水添脱硫器の外周を覆うように配設された形態を例示するものである。
【0060】
図4は実施の形態3に係る水素生成装置の構成を示す模式図である。図4に示すように、本実施の形態3の水素生成装置1では、円柱容器状の水添脱硫器6の外周を覆うように円筒状の熱交換器5が形成されている。水添脱硫器6の内部には原料ガスの流路34が適宜形成され、当該原料ガスの流路34に水添脱硫触媒(図示せず)と硫化水素吸着剤(図示せず)とが適宜配置されている。これ以外の点は実施の形態1の水素生成装置1と同様である。
【0061】
この構成によれば、熱交換器5が、当該熱交換器5を通過中の水素含有ガスにより加熱され、この熱交換器5により水添脱硫器6が加熱される。つまり、水添脱硫器6が、熱交換器5を通過中の水素含有ガスにより(間接的に)加熱される。そして、その熱を用いて、原料ガスの水添脱硫が行われる。従って、本実施の形態の水素生成装置は、従来の水素生成装置に比べ、好適な温度で水添脱硫を行うことが容易になる。
【0062】
(実施の形態4)
実施の形態4は、水添脱硫器6における水添脱硫触媒の好ましい配置を例示するものである。
【0063】
図5は実施の形態4に係る水素生成装置の構成を示す模式図である。
【0064】
図5に示すように、本実施の形態4の水素生成装置1は、改質器3から送出された水素含有ガス中の一酸化炭素をシフト反応により低減する変成器36をさらに備えている。変成器36は、ここでは、例えば、水素生成装置1の反応容器(水素生成器2)から延伸する隔壁2eを隔壁23で区画することにより形成されている。そして、原料ガスの流れにおける水添脱硫器6の下流端は、変成器36と隣接するよう構成されている。原料ガスの流れにおける水添脱硫器6の下流端が変成器36と隣接するよう配置されることで、水添脱硫器6の原料ガスの流路32は、その下流側程、温度の低い水素含有ガスによって加熱されることとなる。変成器36は周知の構成を採用することができるので、その詳しい説明を省略する。変成器36の内部には水素含有ガスの適宜な流路が形成され、当該流路に変成触媒が配置されている。これ以外の点は実施の形態1の水素生成装置1と同様である。
【0065】
図6(a)〜(c)は図5の水素生成装置の水添脱硫器における触媒の配置例を模式的に示す断面図である。図6(a)〜(c)には、水添脱硫器6における原料ガスの流路32の原料ガスの流れ方向における断面が模式的に示されている。また、図6(a)〜(c)において、白色の矢印は水素含有ガスの流れを示し、黒色の矢印は原料ガスの流れを示す。
【0066】
図5及び図6(a)に示すように、本実施の形態4においては、水添脱硫器6の第1触媒層41は、水添脱硫器6内における原料ガスの流れ方向において、第2触媒層42よりも上流側に位置するように配置されている。ここで、第1触媒層41は、第2触媒層42よりも下方に位置するように配置されている。
【0067】
そして、水添脱硫器6は、水素含有ガスの流路31を通流する水素含有ガスにより第1触媒層41及び第2触媒層42の順に加熱されるように構成されている。すなわち、第1触媒層41は、第2触媒層42よりも水素含有ガスの流路31の上流側に位置するように配置されている。このため、第1触媒層41は、第2触媒層42よりも高温になり、本実施の形態4においては、第1触媒層41は、250〜400℃、好ましくは、300〜400℃になるように構成され、第2触媒層42は、250〜400℃、好ましくは、300〜350℃になるように構成されている。
【0068】
第1触媒層41に含まれる触媒は、原料ガス中に含まれる硫黄化合物を硫化水素に変換する機能を有すれば、どの様な種類の触媒を用いてもよい。第1触媒層41に含まれる触媒としては、例えば、Co−Mo系触媒やNi−Mo系触媒等が挙げられる。また、第1触媒層41に含まれる触媒は、単一の種類の触媒を用いてもよく、複数の種類の触媒を用いてもよい。
【0069】
また、第2触媒層42に含まれる触媒は、ここでは硫化水素吸着剤を構成していて、硫化水素を吸着する機能を有すれば、どの様な種類の触媒を用いてもよい。第2触媒層42に含まれる触媒としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、Ni系触媒、Fe系触媒、Cu−Zn系触媒やNi−Zn系触媒等が挙げられる。また、第2触媒層42に含まれる触媒は、単一の種類の触媒を用いてもよく、複数の種類の触媒を用いてもよい。
【0070】
さらに、第1触媒層41に含まれる触媒と第2触媒層42とに含まれる触媒は、同じ触媒種を用いてもよい。ここで、触媒種とは、単一の種類の触媒だけでなく、複数の種類の触媒群で構成される態様をも含む概念である。なお、硫黄化合物を硫化水素に変換する機能と硫化水素を吸着する機能の両方の機能を有する触媒としては、例えば、Cu−Zn−Mo系触媒やCu−Zn−Fe系触媒が挙げられる。
【0071】
以上に説明したように、本実施の形態4によれば、変成器36により水素含有ガスのCO濃度が低減される。
【0072】
[変形例1]
図6(b)に示すように、実施の形態2の変形例1は、図6(a)の構成と基本的に同じであるが、第2触媒層42が、高温吸着触媒層42Aと低温吸着触媒層42Bを有している点が異なる。具体的には、水添脱硫器6内における原料ガスの流れ方向(黒色の矢印)において、高温吸着触媒層42Aは、低温吸着触媒層42Bよりも上流側に位置するように配置されている。本変形例1においては、高温吸着触媒層42Aは、低温吸着触媒層42Bよりも下方に位置するように配置されている。
【0073】
そして、水素含有ガスの流路31を通流する水素含有ガスにより高温吸着触媒層42A及び低温吸着触媒層42Bの順に加熱されるように構成されている。すなわち、高温吸着触媒層42Aは、低温吸着触媒層42Bよりも水素含有ガスの流路31の上流側に位置するように配置されている。これにより、高温吸着触媒層42Aは、低温吸着触媒層42Bに比べて、高温に保つことができる。なお、高温吸着触媒層42Aに含まれる触媒としては、酸化亜鉛(ZnO)触媒、Ni系触媒やFe系触媒を用いることができる。また、低温吸着触媒層42Bに含まれる触媒としては、Cu−Zn系触媒などを用いることができる。
【0074】
また、本変形例1においては、高温吸着触媒層42Aと第1触媒層41とは接触して配設されている。このため、第1触媒層41が保持する熱が、高温吸着触媒層42Aに直接伝わるため、高温吸着触媒層42Aの温度をより第1触媒層41の温度に近い温度にすることができる。
【0075】
一方、高温吸着触媒層42Aと低温吸着触媒層42Bとは、空間43を挟んで配設されている。ここで、空間43を挟んでとは、高温吸着触媒層42Aと低温吸着触媒層42Bとの間に、熱伝導媒体等の物体が配置されていない状態、すなわち、高温吸着触媒層42Aと低温吸着触媒層42Bとの間は、空隙であることをいう。このため、高温吸着触媒層42Aから低温吸着触媒層42Bへの熱の伝達は、空間を介して行われるため、低温吸着触媒層42Bの温度が、高温吸着触媒層42Aの温度に対してより低温化される。
【0076】
このようにして、本変形例1においては、高温吸着触媒層42Aの温度は、250〜400℃、好ましくは、300〜350℃になるように構成され、低温吸着触媒層42Bは、200〜350℃、好ましくは、250〜320℃になるように構成される。
【0077】
このように構成された本変形例1においては、より好適に水添脱硫を行うことができる。
【0078】
[変形例2]
図6(c)に示すように、実施の形態2の変形例2は、図6(b)の変形例1と基本的に同じであるが、高温吸着触媒層42Aと低温吸着触媒層42Bとが接触して配設されている点が異なる。
【0079】
このような構成としても、好適に水添脱硫を行うことができる。
【0080】
[変形例3]
本変形例3は、図6(a)の構成と基本的に同じであるが、変成器36が変成触媒として、Cu−Zn系触媒を有しており、水添脱硫器6の第2触媒層42が、Cu−Zn系触媒で構成されており、かつこの第2触媒層42が、変成器36の近傍に位置するよう構成されている。
【0081】
このような構成とすると、変成器36の変成触媒としてのCu−Zn系触媒と、水添脱硫器6の第2触媒層42としてのCu−Zn系触媒とを、互いに近い温度に維持することができるので、両者の機能を好適に発揮させることができる。
【0082】
(実施の形態5)
実施の形態5は、水素生成装置が伝熱緩和部をさらに備える形態を例示するものである。
【0083】
図7(a),(b)は実施の形態5に係る水素生成装置における水添脱硫器の構成を模式的に示す断面図である。
【0084】
図7(a),(b)に示すように、本実施の形態5の水素生成装置1は、水添脱硫器6と水素含有ガスの流れる流路31との間に設けられた伝熱緩和部55,56をさらに備えている。これ以外の点は実施の形態1の水素生成装置1と同様である。
【0085】
図7(a)の構成例では、伝熱緩和部55が水添脱硫器6側に設けられているが、水素含有ガスの流路31側に設けられてもよい。また、図7(b)の構成例では、伝熱緩和部56が水素含有ガスの流路31側に設けられているが、水添脱硫器6側に設けられてもよい。伝熱緩和部55,56は、例えば、断熱材又は空気溜り部で構成される。空気溜り部は、気体が滞留するように隔壁で囲われた空間を意味する。気体は、空気に限られず、空気溜り部が水素含有ガスの流路31に連通する場合は水素含有ガスであり、空気溜り部が水添脱硫器6に連通する場合は原料ガスであり、空気溜り部が外部(大気)に連通する場合は空気である。
【0086】
伝熱緩和部55,56は水素含有ガスの流路31に面する隔壁の任意の部分に設けることができるが、ここでは、例えば、当該隔壁の全周に渡って帯状に設けられている。これにより、水素含有ガスから水添脱硫器6に伝達される熱量を適宜設計することができ、水添脱硫器6が過度に加熱されるのを防止することができる。伝熱緩和部55,56は、水素含有ガスの流れにおける上流側に設けることが好ましい。上流側である程、水素含有ガスの温度が高いからである。
【0087】
(実施の形態6)
実施の形態6は、水素生成装置が伝熱緩和部をさらに備える他の形態を例示するものである。
【0088】
図8は実施の形態6に係る水素生成装置における水添脱硫器の構成を模式的に示す断面図である。
【0089】
図8に示すように、本実施の形態6の水素生成装置1は、水添脱硫器6と水素含有ガスが流れる流路5aとの間に設けられた伝熱緩和部57をさらに備えている。これ以外の点は実施の形態1の水素生成装置1と同様である。伝熱緩和部57の構成は、実施の形態5における伝熱緩和部55,56と同じであるので、その説明を省略する。
【0090】
これにより、水素含有ガスから水添脱硫器6に伝達される熱量を適宜設計することができ、水添脱硫器6が過度に加熱されるのを防止することができる。伝熱緩和部57は、水素含有ガスの流れにおける上流側に設けることが好ましい。上流側である程、水素含有ガスの温度が高いからである。
【0091】
(実施の形態7)
実施の形態7は、水素生成装置が原料ガス供給器と開閉弁とを備える形態を例示するものである。
【0092】
図9は実施の形態7に係る水素生成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【0093】
図9に示すように、本実施の形態7の水素生成装置1では、水素源としてのリサイクルガスが添加(混合)された原料ガスが流れる原料ガス経路11に原料ガス供給器61と開閉弁62とが設けられている。開閉弁62は原料ガス供給器61と水添脱硫器6との間に設けられている。これ以外の点は、実施の形態1の水素生成装置1と同様である。
【0094】
原料ガス供給器61は、例えば、流量調整弁単体で構成されていてもよく、また、ブースターポンプと流量調整弁との組合せで構成されていてもよい。原料ガス供給器61及び開閉弁62は、図示されない制御器により制御される。
【0095】
水素生成装置1の水素生成時(運転時)には、開閉弁62が開放され、原料ガス供給器61は、原料ガス源からの原料にリサイクルガスが添加されたガスを、流量調整しながら原料ガス経路11の下流に供給する。これにより、改質器3で水素含有ガスが生成される。そして、水素生成装置1の停止時には、原料ガス供給器61が停止され、その後、開閉弁62が閉止される。
【0096】
ところで、水素生成装置1の停止時には、水添脱硫器6の内部に硫化水素が残存している可能性がある。一方、水素生成装置1が停止した後、蒸発器7において、その余熱により水蒸気の生成が継続する。開閉弁62が設けられていない場合、この水蒸気が、水供給経路12、合流点13、及び原料ガス経路11を通って原料ガス供給器61に逆流する可能性がある。そうすると、水添脱硫器6に残存していた硫化水素を含んだガスが原料ガス供給器61に流入し、硫化水素が腐食性のガスであることから、原料ガス供給器61が硫化水素により損傷する可能性がある。しかしながら、本実施の形態7では開閉弁62が設けられていて、水素生成装置1の停止時に閉止されるので、水添脱硫器6に残存していた硫化水素の原料ガス供給器61への流入を防止することができ、原料ガス供給器61の硫化水素による損傷を防止することができる。
【0097】
ここで、原料ガス経路11に原料ガス供給器61を設ける場合には、必ず、原料ガス経路11への水素供給経路(ここではリサイクルガス経路15)の合流点より下流に設ける必要がある(そうしないと、原料ガスが水素供給経路に逆流する)。そうすると、開閉弁62は、このように設けられた原料ガス供給器61と水添脱硫器6との間に設けることが、上述の原料ガス供給器61の損傷防止の観点から好ましいことになる。
【0098】
(実施の形態8)
実施の形態8は、実施の形態1〜7のいずれかの水素生成装置を備える燃料電池システムを例示するものである。
【0099】
図10は実施の形態8に係る燃料電池システムの構成を示す模式図である。
【0100】
図10に示すように、本実施の形態8の燃料電池システムは、水素生成装置1と、この水素生成装置1より供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池71とを備える。
【0101】
図10には、実施の形態8の水素生成装置1が例示されているが、水素生成装置1は、実施の形態1〜8のいずれかの水素生成装置1であればよい。燃料電池71は、水素含有ガスと酸化剤ガスとを用いて発電するものであればよく、周知の種々の燃料電池を用いることができる。燃料電池71の構成は周知であるので、その説明を省略する。
【0102】
本実施の形態8の燃料電池システムでは、燃料電池71のアノードから排出されるオフガス(未消費の水素含有ガス)が燃焼用ガスとして、燃焼用ガス供給経路16を介して燃焼器4に供給される。
【0103】
本実施の形態8の燃料電池システムによれば、実施の形態1〜7の水素生成装置1と同様の効果が得られる。
【0104】
(その他の実施の形態)
実施の形態1〜8(実施の形態2の変形例1及び2を含む)を、互いに相手を排除しない限り、適宜、組み合わせてもよい。
【0105】
また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の水素生成装置は、従来の水素生成装置に比べ、水添脱硫を好適に行うことが容易な水素生成装置等として有用である。
【0107】
本発明の燃料電池システムは、従来の燃料電池システムに比べ、水添脱硫を好適に行うことが容易な水素生成装置を備える燃料電池システム等として有用である。
【符号の説明】
【0108】
1 水素生成装置
2 水素生成器
2a〜2d 第1空間〜第4空間
2e 隔壁
3 改質器
4 燃焼器
5 熱交換器
5a 水素含有ガスの流路
5b 原料ガス及び水蒸気の混合ガスの流路
6 水添脱硫器
7 蒸発器
8 燃焼用空気供給器
10 水素含有ガス経路
11 原料ガス経路
12 水供給経路
13 合流点
14 原料ガス/水蒸気混合ガス経路
15 リサイクルガス経路
16 燃焼用ガス供給経路
18 燃焼排ガス経路
21,22,23 隔壁
30 水素含有ガス流路
31 水素含有ガスの流路
32,33,34 原料ガスの流路
36 変成器
41 第1触媒層
42 第2触媒層
42A 高温吸着触媒層
42B 低温吸着触媒層
43 空間
51 外筒
52 内筒
53 端面
54 端面
55,56,57 伝熱緩和部
61 原料ガス供給器
62 開閉弁
71 燃料電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガス及び水蒸気を用いて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器より送出される水素含有ガスと前記原料ガス及び水蒸気の混合ガスとが熱交換するための熱交換器と、前記原料ガス中に含まれる硫黄化合物を水添脱硫により除去する水添脱硫器と、を備え、
前記水添脱硫器は、前記熱交換器の外部に配設されかつ前記熱交換器を通過中又は通過後の前記水素含有ガスにより加熱されるよう構成されている、水素生成装置。
【請求項2】
前記水添脱硫器は、前記熱交換器の外周を覆うように配設されている、請求項1記載の水素生成装置。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記水添脱硫器の外周を覆うように配設されている、請求項1記載の水素生成装置。
【請求項4】
前記水添脱硫器は、前記水素含有ガスの流れにおいて前記熱交換器の下流に配設されており、前記水添脱硫器は、内部を流れる前記原料ガスが前記熱交換器を通過した前記水素含有ガスと熱交換可能に構成されている、請求項1記載の水素生成装置。
【請求項5】
前記水添脱硫器を流れる前記原料ガスの流れの向きと該原料ガスと熱交換する水素含有ガスの流れの向きとが並行になるよう構成されている、請求項2記載の水素生成装置。
【請求項6】
前記改質器から送出された水素含有ガス中の一酸化炭素をシフト反応により低減する変成器をさらに備え、前記原料ガスの流れにおける前記水添脱硫器の下流端は、前記変成器と隣接するよう構成されている、請求項3記載の水素生成装置。
【請求項7】
前記水添脱硫器は、原料ガス中に含まれる硫黄化合物を硫化水素に変換する第1触媒層と、前記硫化水素を吸着する第2触媒層とを備え、かつ、前記水素含有ガスの流れに対して前記第1触媒層及び前記第2触媒層の順に配設されている、請求項2記載の水素生成装置。
【請求項8】
硫化水素への変換機能及び硫化水素を吸着する機能のうち、前記第1触媒層は、硫化水素への変換機能を有する触媒であり、前記第2触媒層は、硫化水素を吸着する機能を有する触媒である、請求項7記載の水素生成装置。
【請求項9】
前記第2触媒層は、高温吸着触媒層と低温吸着触媒層とを備え、前記水素含有ガスにより前記高温吸着触媒層及び低温吸着触媒層の順で加熱されるよう配設されている、請求項8記載の水素生成装置。
【請求項10】
前記高温吸着触媒層は前記第1触媒層と隣接して設けられ、前記低温吸着触媒層は、前記高温吸着触媒層と空間を挟んで配設されている、請求項9記載の水素生成装置。
【請求項11】
前記第1触媒層及び第2触媒層は、硫黄化合物を硫化水素に変換する機能と硫化水素を吸着する機能を有する触媒層であり、前記水素含有ガスから伝達された熱により、前記第1触媒層は、硫化水素に変換する反応が硫化水素を吸着する反応よりも優位になる温度になるとともに前記第2触媒層は、硫化水素を吸着する反応が硫黄化合物を硫化水素に変換する反応よりも優位になる温度になるよう構成されている、請求項7記載の水素生成装置。
【請求項12】
前記水添脱硫器と前記水素含有ガスが流れる流路との間に伝熱緩和部が設けられている、請求項1記載の水素生成装置。
【請求項13】
前記伝熱緩和部が、断熱材及び空気溜まり部のいずれかで構成されている、請求項12記載の水素生成装置。
【請求項14】
前記改質器から送出された水素含有ガス中の一酸化炭素をシフト反応により低減するCu−Zn系触媒を有する変成器を備え、前記第2触媒層は、Cu−Zn系触媒で構成されており、前記水添脱硫器は、前記第2触媒層が、前記変成器の近傍に位置するよう構成されている、請求項7記載の水素生成装置。
【請求項15】
前記改質器で生成された水素含有ガスの一部が前記水添脱硫器に供給される前記原料ガスに混合されるよう構成されており、
かつ、前記原料ガスと前記水素含有ガスの混合ガスが流れる経路に設けられた、原料ガス供給器と、前記原料ガス供給器と前記水添脱硫器との間に設けられた開閉弁とを備える、請求項1記載の水素生成装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の水素生成装置と、前記水素生成装置より供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備える燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−41238(P2012−41238A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185420(P2010−185420)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】