説明

水素発生装置の運転方法および燃料電池システムの運転方法

【課題】運転継続時間が長くなることで低下する選択酸化触媒の活性を、運転を停止させずに回復させ、一酸化炭素が低い生成ガスを安定して供給する水素発生装置の運転方法を実現すること。
【解決手段】運転継続時間が所定値となれば、原料ガス供給装置4からの原料ガスの供給と水供給装置5からの改質水の供給は継続した状態で、選択酸化空気供給装置6からの空気の供給を一時的に停止し、その後、空気の供給を再開する。これによって、選択酸化空気を停止することで選択酸化触媒は高濃度の水素を含んだ変成ガスのみが流れる状態となり選択酸化触媒を還元状態とすることができ、選択酸化触媒に吸着している酸素が除去される。選択酸化触媒に吸着されている酸素が取り除かれると、選択酸化触媒の触媒活性は回復するため、再度選択酸化空気を供給することで生成ガス中の一酸化炭素を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ガスやLPG等の炭化水素系燃料を原料ガスとして、高濃度の水素を含んだ生成ガスをつくる水素発生装置、及び水素発生装置を用いてつくった生成ガス中の水素により発電する燃料電池を備えた燃料電池システムにおける各々の運転方法に関するものである。また、燃料電池システム以外の水素利用技術(例えば、タービン用燃焼器やエンジン等)にも流用可能な技術である。
【背景技術】
【0002】
都市ガスやLPGなどの炭化水素系燃料を原料ガスとして水素をつくる方法の一つとして水蒸気改質反応がある。水蒸気改質反応は、原料ガスと水蒸気とを600℃〜700℃の高温の改質触媒上で反応させ、水素をはじめ、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素や水蒸気などが混合した改質ガスとして生成する反応である。
【0003】
この水蒸気改質反応で生成した改質ガス中の水素を燃料電池で使用するときには、燃料電池に対して被毒作用のある一酸化炭素を改質ガス中から除去する必要がある。そのため、変成触媒を用いたシフト反応の後の変成後ガスに酸素と混合し、選択酸化触媒を用いて選択酸化反応させることにより一酸化炭素を10ppm以下の低濃度にまで低減している。
【0004】
水素発生装置は、これらの反応が適正に行われるように各触媒の温度やガスの流れが最適となるように構成し、制御することで水素の生成と一酸化炭素の低減を実現する装置である。その中で、家庭用燃料電池で使用する水素発生装置としては、特に小型で高効率、低コストで高耐久なものが求められている。
【0005】
ここで高耐久性としては、数万時間の運転時間と数千回の起動停止を行う10年間の使用期間中、高濃度の水素の生成と一酸化炭素の低減を実現し続けることが必要となっている。
【0006】
しかし、水素発生装置で使用する触媒は、使用時間が長くなったり起動停止の回数が増えると、高温状態によるシンタリングや被毒物質の付着などによって触媒活性が低下していく傾向にある。特に選択酸化触媒では、選択酸化触媒に送られる変成部からの変成後ガスや選択酸化空気に含まれる被毒物質により触媒が被毒し、触媒活性が低下していく可能性がある。それに対して従来の水素発生装置では高耐久性を確保するために、積算運転時間に応じて選択酸化触媒に供給する選択酸化空気量を一時的に増加させることで選択酸化触媒の活性を回復させ、継続的な一酸化炭素の低減を実現している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−8479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1記載の従来の水素発生装置の運転方法では、選択酸化触媒に供給する空気量を増やして選択酸化触媒温度を高温化することで触媒に付着した被毒物質を高温での酸化反応により処理しているが、一般的な選択酸化触媒を高温化するとメタン化反応が起こる傾向がある。メタン化反応は発熱反応であるため、メタン化反応が起
こり始めると発生した熱により高温化した触媒がさらに高温化され、メタン化反応がさらに促進されて温度暴走する可能性が生じる。一方、通常の運転で供給されている選択酸化空気量で除去できていない被毒物質を除去するためには、通常運転時の空気量よりかなり多くの空気を供給して、選択酸化触媒の温度を通常より高くする必要がある。したがって選択酸化触媒を高温化させて触媒活性を回復させようとすると、メタン化反応による暴走領域に近づくことになる。
【0009】
選択酸化触媒は一旦暴走すると、選択酸化触媒の温度を低下させない限り暴走を抑えることはできない。つまり、水素発生装置としての運転を停止しなければ、通常の運転を行う温度状態にもどすことはできない。したがって、特許文献1の方法では、選択酸化触媒の暴走を引き起こして継続的な安定運転ができなくなる可能性があるという課題を有していた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、選択酸化触媒の活性低下が起こっている状態において、選択酸化触媒の暴走を引き起こすことなく触媒の活性を回復させ、生成ガス中の一酸化炭素の低減を実現する水素発生装置の運転方法と、その水素発生装置を搭載した燃料電池システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の水素発生装置の運転方法は、運転を開始してからの運転継続時間が所定時間となった時に原料ガス供給装置からの原料ガスと水供給装置からの水の供給を継続した状態で選択酸化空気供給装置からの空気を一時的に停止するものである。
【0012】
これによって、選択酸化空気を停止することで選択酸化触媒は高濃度の水素を含んだ変成ガスのみが流れる状態となり選択酸化触媒を還元状態とすることができ、選択酸化触媒に吸着している酸素が除去される。選択酸化触媒に吸着されている酸素が取り除かれると、選択酸化触媒の触媒活性は回復するため、再度選択酸化空気を供給することで生成ガス中の一酸化炭素を低減することができる。
【0013】
また、本発明の燃料電池発電システムの運転方法は、選択酸化空気供給装置からの空気を一時的に停止する前に、水素発生装置からの生成ガスが供給されている燃料電池スタックへの生成ガスの供給を停止し、選択酸化空気供給装置からの空気の供給を再開した後、燃料電池スタックに生成ガスの供給を再開するものである。
【0014】
これによって、生成ガスを燃料電池スタックへ供給して発電している状態から、選択酸化空気を停止するときに増加する一酸化炭素を含んだ生成ガスを燃料電池スタックへの供給を止めることで、一酸化炭素による燃料電池スタックへのダメージを与えることを防止している。そして、選択酸化空気の供給を再開することで生成ガス中の一酸化炭素が低減すれば、再度生成ガスを燃料電池スタックに供給することで燃料電池発電システムでの発電を行うことができる。
【0015】
また、本発明の燃料電池発電システムの運転方法は、燃料電池スタックから送出されるオフガスを燃焼させるオフガス燃焼バーナを有し、燃料電池スタックへの生成ガスの供給を停止する前にオフガス燃焼バーナに供給する燃焼用空気量を多くし、燃料電池スタックへの生成ガスの供給を停止した時には水素発生装置からの生成ガスを燃焼させるものである。
【0016】
これにより、生成ガスやオフガスを燃焼させることで、可燃性ガスをそのまま排出することなく燃焼させることで燃焼熱として有効に利用することを可能とするものである。ま
た、燃料電池スタックへの生成ガスを停止した時に水素発生装置からの生成ガスをオフガス燃焼バーナで燃焼させる時も燃焼排ガスを良好な状態に保つことができるものである。
【0017】
また、本発明の燃料電池発電システムの運転方法は、オフガス燃焼バーナを水素発生装置を加熱するバーナとするものである。
【0018】
これにより、燃料電池スタックからのオフガスや水素発生装置からの生成ガスを水素発生装置の熱源としてより有効に使用することで効率の高い水素発生装置を実現するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水素発生装置の運転方法は、選択酸化触媒の触媒活性が低下してきた時に、運転を継続した状態で選択酸化触媒の触媒活性を回復させ、水素発生装置からの生成ガス中の一酸化炭素を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1における水素発生装置の概略図
【図2】運転開始後の水素発生装置の生成ガス中の一酸化炭素の特性図
【図3】選択酸化空気を一時的に停止した時の生成ガス中の一酸化炭素の特性図
【図4】本発明の実施の形態2における水素発生装置の概略図
【図5】本発明の実施の形態2における動作の時間タイミングを示すタイミング図
【図6】本発明の実施の形態3における水素発生装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の発明は、改質触媒を有し原料ガス供給装置からの原料ガスと水供給装置からの水を気化させた水蒸気から水蒸気改質反応により水素を含む改質ガスを生成する改質部と、変成触媒を有し前記改質ガス中の一酸化炭素を変成反応により低減した変成ガスを生成する変成部と、選択酸化触媒を有し変成ガスと選択酸化空気供給装置からの選択酸化空気を混合した混合ガス中の一酸化炭素を選択酸化反応により低減する選択酸化部を備えた水素発生装置において、運転を開始してからの運転継続時間が所定時間となった時に原料ガス供給装置からの原料ガスと水供給装置からの水の供給を継続した状態で選択酸化空気供給装置からの空気を一時的に停止することにより、選択酸化触媒の活性を回復することができ、再度選択酸化空気を供給したときに生成ガス中の一酸化炭素を低減することができる。
【0022】
第2の発明は、水素発生装置の初期からの総運転時間が一定時間を越えた場合、運転を開始してからの運転継続時間が所定時間となった時に、原料ガス供給装置からの原料ガスと水供給装置からの水の供給を継続した状態で選択酸化空気供給装置からの空気を一時的に停止することで、総運転時間が増して生成ガス中の一酸化炭素が所定値より高くなると想定される時に選択酸化空気を停止することで、選択酸化触媒の活性回復動作により生成ガス中の一酸化炭素の安定低下を実現することができる。
【0023】
第3の発明は、運転を開始してからの運転継続時間が、水素発生装置の初期からの総運転時間に応じて設定した所定時間となった時に、原料ガス供給装置からの原料ガスと水供給装置からの水の供給を継続した状態で選択酸化空気供給装置からの空気を一時的に停止することで、総運転時間に応じた運転継続時間の設定により、選択酸化空気の停止を行わないでより長い時間運転を継続することが可能となり、選択酸化触媒の活性回復動作を少なくした状態で生成ガス中の一酸化炭素の安定低下を実現することができる。
【0024】
第4の発明は、選択酸化空気供給装置からの空気を一時的に停止する前に、水素発生装
置からの生成ガスが供給されている燃料電池スタックへの生成ガスの供給を停止し、選択酸化空気供給装置からの空気の供給を再開した後、燃料電池スタックに生成ガスの供給を再開することにより、選択酸化空気を停止しているときの一酸化炭素により燃料電池スタックにダメージを与えないようにすることができる。
【0025】
第5の発明は、空気供給装置からの燃焼用空気と、燃料電池スタックから送出されるオフガスとを燃焼させるオフガス燃焼バーナを有し、燃料電池スタックへの生成ガスの供給を停止した時、水素発生装置からの生成ガスがオフガス燃焼バーナに供給されることにより、燃料電池スタックからのオフガスや水素発生装置からの生成ガスをオフガス燃焼バーナで燃焼させて、熱を有効利用することができる。
【0026】
第6の発明は、燃料電池スタックへの生成ガスの供給を停止する前に、オフガス燃焼バーナに供給されるオフガス燃焼用空気供給装置からの空気量を多くすることにより、水素発生装置からの生成ガスがバーナに供給された時にバーナでの燃焼排ガス特性を良好な状態に保つことができる。
【0027】
第7の発明は、オフガス燃焼バーナが水素発生装置を加熱するバーナであることにより、燃料電池スタックからのオフガスや水素発生装置からの生成ガスを有効に使用することで効率の高い水素発生装置を実現することができる。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における水素発生装置の概略図を示すものである。
【0030】
図1において、改質部1は、燃料ガス供給装置8と燃焼用空気供給装置9が繋がるバーナ7と改質触媒(図示せず)を有しており、原料ガス供給装置4からの原料ガスと水供給装置5からの改質水の供給により改質触媒で反応した改質ガスは、改質部1から変成触媒(図示せず)を有する変成部2に供給される。変成部2に流入した改質ガスは変成触媒での反応後、変成後ガスとして送出され、選択酸化空気供給装置6からの空気と混合した後に、選択酸化触媒(図示せず)を有する選択酸化部3に供給される。選択酸化部3に流入した変成後ガスと空気との混合ガスは、選択酸化触媒で反応した後、生成ガスとして水素発生装置から送出する。
【0031】
ここで、原料ガス供給装置4や水供給装置5、選択酸化空気供給装置6、燃料ガス供給装置8、燃焼用空気供給装置9は、各々の供給物(原料ガス、水、空気、燃料ガス)の流量が調整可能に構成されており、供給物の吐出流量が変更可能な供給ポンプであっても良く、また供給物の供給源と下流側の流路に設けられた供給物の流量調整用バルブとを組み合わせた流体調整機構であっても良い。
【0032】
また、改質触媒としては、Pt、Ru、Rhなどの貴金属やNiなどの卑金属、変成触媒としては、Ptなどの貴金属やFe−CrやCu−Znなど、選択酸化触媒としては、Pt、Ru、Rhなどを含むものが用いられる。
【0033】
なお、原料ガスや燃料ガスとしては、都市ガスやLPGなどの炭化水素系燃料を使用することができる。
【0034】
次に、上記構成において水素発生装置の動作を説明する。
【0035】
バーナ7では、燃料ガス供給装置8から供給された燃料ガスと燃焼用空気供給装置9から供給された空気により火炎が形成され、改質部1内に位置する改質触媒を加熱する。改質触媒は600℃から700℃に高温化され、原料ガス供給装置4からの原料ガスの供給と、水供給装置5からの改質水の供給により、改質触媒で水蒸気改質反応が起こり、一酸化炭素を10%〜15%含む水素リッチな改質ガスを生成する。改質部1からの改質ガスは、変成部2に供給される。変成部2では高温の改質ガスの流入により変成触媒は200℃から400℃に昇温されており、変成反応により一酸化炭素を0.5%以下に低減する。変成部2からの変成後ガスは、選択酸化空気供給装置6からの空気と混合した後、選択酸化部3に供給される。選択酸化部3では、選択酸化触媒が変成後ガスの流入により150℃前後に昇温されており、変成後ガス中の一酸化炭素を選択酸化反応により10ppm以下に低減している。そして、一酸化炭素が10ppm以下の水素リッチな生成ガスとして水素発生装置から送出している。
【0036】
ここで、図2は、初期の水素発生装置と長期間使用した耐久後の水素発生装置を運転した時の生成ガス中の一酸化炭素濃度の変化を示した図である。初期の水素発生装置は、運転継続時間に対して一酸化炭素濃度は変化しないが、長期間使用した耐久後の水素発生装置では、運転開始後、運転継続時間が長くなるにつれ一酸化炭素濃度が徐々に高くなっていくことがわかる。これは、長期間使用する間に変成後ガスや選択酸化空気中に含まれる選択酸化触媒の被毒物質(例えば、硫黄化合物)が選択酸化触媒に付着して触媒活性が低くなり、その状態で運転の継続により連続的に供給される選択酸化空気中の酸素の一部が選択酸化触媒に吸着して触媒の活性点を覆うことで、触媒活性を有する活性点が少なくなってしまうことが要因のひとつと考えられる。
【0037】
それに対し、図3は、長期間使用した水素発生装置を運転した時に、途中で選択酸化空気を一時的に停止した時の生成ガス中の一酸化炭素濃度の変化を示したものである。選択酸化空気を止めると一酸化炭素濃度はいったん上昇するが、選択酸化空気を再度供給すると、選択酸化空気を停止する前よりも一酸化炭素濃度はかなり低下することがわかる。これは、連続的に供給された選択酸化空気により吸着した酸素が、選択酸化空気の供給を止めることにより、酸素を含まない変成後ガスにより還元されることで酸素が離れ、選択酸化触媒の活性点が元に戻り、触媒活性が回復すると考えられる。
【0038】
そこで、本発明は、運転開始から一定時間以上運転した時には、原料ガス供給装置4からの原料ガスと水供給装置5からの改質水の供給は継続した状態で、選択酸化空気供給装置6からの選択酸化空気の供給を一旦停止し、一定時間後、選択酸化空気の供給を再開する。例えば、運転開始後、運転継続時間が12時間となれば、選択酸化空気供給装置6から30秒間選択酸化空気の供給を停止し、その後再開する。そうすれば、一旦12時間継続運転時に基準値(例えば、10ppm)まで上昇した生成ガス中の一酸化炭素を12時間前の状態まで低下させることができる。12時間後には再び基準値まで上昇するが、再度同様な動作により低下させることで、水素発生装置の運転を停止させることなく、生成ガス中の一酸化炭素を基準値以下に維持することができる。ただし、選択酸化空気を停止させている30秒の短時間は、選択酸化部3の選択酸化反応をさせることができないため、生成ガス中の一酸化炭素は基準値を上回ることになる。
【0039】
ここで、原料ガス供給装置4からの原料ガスと水供給装置5からの改質水の供給は継続した状態としているのは、改質部1や変成部2の温度状態を保ち、また選択酸化部に変成後ガスによる温度が高いガスを流すことで選択酸化空気の停止により選択酸化部3の選択酸化反応での熱が一時的になくなっても、ほとんど熱バランスを崩すことなく、選択酸化空気の再供給時に直ぐに触媒性能を発揮できるようにするためである。
【0040】
また、上記動作では、初期から触媒活性の回復動作を行うことで、より余裕を持って一
酸化炭素の低下を実施しているが、水素発生装置の総運転時間に応じて、運転開始から一定時間が経過した後は、選択酸化空気の供給を一時的に停止するとしてもよい。例えば、総運転時間が3万時間を経過した後は、運転開始から運転継続時間が12時間となると、選択酸化空気の供給を30秒間停止させる。そうすれば、初期から3万時間までは、選択酸化空気の供給停止による生成ガス一酸化炭素が短時間でも基準値を越えることなく運転することができる。ここで、3万時間を設定する目安としては、12時間運転継続により生成ガス一酸化炭素が基準値に近づく時間として設定すればよい。
【0041】
さらに、上記動作のように選択酸化空気を停止する条件を、運転開始からの運転継続時間を一定の12時間とするのではなく、総運転時間に応じて運転開始からの運転継続時間を設定してもよい。例えば、総運転時間が2万時間までは、選択酸化空気を停止する必要はなく、2万時間から3万時間は運転開始から120時間継続すれば選択酸化空気を一旦停止させる動作を行い、3万時間から4万時間では60時間、4万時間以上では12時間と設定して行うことができる。また、このような総運転時間に対してステップ的に設定するのではなく、総運転時間に対する関数として設定し、選択酸化空気を停止させる運転継続時間が決めるようにしても良い。そうすれば、生成ガス一酸化炭素が基準値を越えそうになった時だけ、選択酸化空気の供給を停止させることが可能となり、選択酸化空気を停止させる回数を大幅に低減できる。
【0042】
なお、上記の総運転時間に対する運転継続時間の設定値は一例であり、水素発生装置により異なるものである。
【0043】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における水素発生装置の概略図を示すものである。
【0044】
図4において、第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる箇所に関して説明する。選択酸化部3から送出する生成ガスは、発電する燃料電池スタック10に供給され、燃料電池スタック10からは発電で使用しなかった水素やメタンなどの可燃ガス成分が含まれるオフガスが送出される。燃料電池スタック10からのオフガスは、オフガス燃焼用バーナ11に送られ、オフガス燃焼用空気供給装置12からの空気と混合して燃焼する。また、選択酸化部3から燃料電池スタック10への流路の途中には切り替えバルブ13が設置されており、選択酸化部3からの生成ガスが燃料電池スタックを通らずに、直接、オフガス燃焼バーナ11へ供給することができる。
【0045】
次に、上記構成において水素発生装置の動作を説明する。
【0046】
運転開始により選択酸化部3から一酸化炭素濃度が基準値以下の生成ガスが送出されているときは、切り替えバルブ13により生成ガスは燃料電池スタック10に送られ発電する。発電で使用されなかった水素やメタンはオフガスとしてオフガス燃焼バーナ11に送られ、オフガス燃焼用空気供給装置12より供給された空気と混合されオフガス燃焼バーナ11で燃焼する。ここで、運転開始からの運転継続時間が12時間経過すると、原料ガス供給装置4からの原料ガスと水供給装置5からの改質水の供給は継続した状態で、選択酸化空気供給装置6からの空気を停止させるが、この動作を行う前に切り替えバルブ13により生成ガスは燃料電池スタック10ではなくオフガス燃焼バーナ11に直接供給するようにする。そうすることで、選択酸化空気が一時的に停止した時に生じる生成ガス中の一酸化炭素濃度が基準値を上回っても燃料電池スタック10へは供給されず、燃料電池スタック10が高濃度の一酸化炭素により劣化しないようにしている。また、燃料電池スタック10からのオフガスや燃料電池スタック10を通らなかった生成ガスをオフガス燃焼バーナ11に供給して燃焼させることで、水素やメタンなどの可燃性ガスをそのまま放出することで生じる不安全な状態を防止し、また燃焼させることで熱として有効利用するこ
とが可能となる。例えば、給湯や暖房などに利用することができる。
【0047】
ここで、燃料電池スタック10を通過しないで供給される生成ガスは、燃料電池スタック10から送り出されるオフガスに比べ、発電で使用される水素の分だけ可燃ガス量が多い。従って、生成ガスはオフガスより完全燃焼させるために必要な空気量が多くなる。そこで、切り替えバルブ13によりオフガス燃焼バーナ11へ生成ガスを供給する前に、オフガス燃焼用空気供給装置12から供給する空気量を増加させることで、燃料電池スタック10を通過しない生成ガスが供給されても完全燃焼させることが可能となり、不完全燃焼となれば生成される一酸化炭素の排出を抑えることができる。空気量を増加させる目安としては、生成ガスが供給された時にオフガス燃焼バーナ11の適正な空気量の中で少ない値とすればよい。例えば、オフガス燃焼バーナ11の適正な空気量が、可燃性ガスの理論空気量に対しての空気量比(空気比)で1.2〜3.0であるとすると、生成ガス燃焼時の空気比を1.3と設定すればよい。生成ガス燃焼時に空気比が小さくなる空気量としているため、生成ガスより可燃性ガス量が少ないオフガスを燃焼させるときの空気比が高くなるのを極力抑えている。したがって、オフガス燃焼時では、例えば2.5とすることができ、空気量が多い側での一酸化炭素排出量の増加を抑制することができる。
【0048】
図5は、これら一連の動作の時間タイミングを示した図である。オフガス燃焼用空気供給装置12からの燃焼用空気の増加の後、切り替えバルブ13により生成ガスを燃料電池スタック10でなくオフガス燃焼バーナ11に供給するように切り替え、その後、選択酸化空気供給装置6により選択酸化空気を一時的に停止する。そして、選択酸化空気の供給を開始した後、切り替えバルブ13により生成ガスを燃料電池スタック10に供給し、その後、オフガス燃焼用空気供給装置12からの燃焼用空気を通常の量に戻す。それぞれの動作の間隔は、それぞれの動作の安定や供給量が安定する時間あれば良く、例えば30秒と設定することができる。
【0049】
なお、選択酸化空気を停止する条件としては、第1の実施の形態に記載したように、初期から一律に運転継続時間に対して設定することも、総運転時間が所定値を越えた場合に運転継続時間に対して設定することも、総運転時間に対応した運転継続時間を設定することもできる。
【0050】
(実施の形態3)
図6は、本発明の第3の実施の形態における水素発生装置の概略図を示すものである。
【0051】
図6において、第3の実施の形態が第2の実施の形態と異なる箇所に関して説明する。燃料電池スタック10からのオフガスや、燃料電池スタック10を通過しない生成ガスが供給されるオフガス燃焼バーナが、改質部1を加熱するバーナ7となっている。
【0052】
本構成とすることで、燃料電池スタック10からのオフガスや燃料電池スタック10を通過しない生成ガスをバーナ7で燃焼させて改質部1を加熱することができ、熱の有効利用により効率の高い水素発生装置を実現することができる。そして、その効率の高い水素発生装置において、運転継続時間が所定時間となった時に切り替えバルブ13により燃料電池スタック10を通過しない流路に切り替え、選択酸化空気の供給を一時的に停止することで基準値近くまで高くなった生成ガス中の一酸化炭素を低下させ、その後燃料電池スタック10に切り替えバルブ13により生成ガスを供給すれば、運転を停止することなく燃料電池スタック10へ供給する生成ガス中の一酸化炭素を基準値以下に維持することができる。
【0053】
また、第2の実施の形態と同様に、燃料電池スタック10を通過しない生成ガスがバーナ7に供給される前に、燃焼用空気供給装置9により空気量を増加させておけば、切り替
えバルブ13により生成ガスがバーナ7に供給されても燃焼用空気の不足による不完全燃焼で一酸化炭素を排出することもなく、良好な排ガス特性を維持することができる。
【0054】
第3の実施の形態でも、選択酸化空気を停止する条件としては、第1の実施の形態に記載したように、初期から一律に運転継続時間に対して設定することも、総運転時間が所定値を越えた場合に運転継続時間に対して設定することも、総運転時間に対応した運転継続時間を設定することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明にかかる水素発生装置は、運転を止めることなく選択酸化触媒の活性を回復させて生成ガス中の一酸化炭素濃度を基準値以下に維持することが可能となるので、長期間の使用や継続した運転を行う水素発生装置、例えば、数万時間の運転を行う家庭用の燃料電池システム等の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 改質部
2 変成部
3 選択酸化部
4 原料ガス供給装置
5 水供給装置
6 選択酸化空気供給装置
7 バーナ
8 燃料ガス供給装置
9 燃焼用空気供給装置
10 燃料電池スタック
11 オフガス燃焼バーナ
12 オフガス燃焼用空気供給装置
13 切り替えバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質触媒を有し原料ガス供給装置からの原料ガスと水供給装置からの水を気化させた水蒸気から水蒸気改質反応により水素を含む改質ガスを生成する改質部と、選択酸化触媒を有し流入するガスと選択酸化空気供給装置からの選択酸化空気を混合した混合ガス中の一酸化炭素を選択酸化反応により低減する選択酸化部を備えた水素発生装置において、運転を開始してからの運転継続時間が所定時間となった時に前記原料ガス供給装置からの原料ガスと前記水供給装置からの水の供給を継続した状態で前記選択酸化空気供給装置からの空気を一時的に停止することを特徴とする水素発生装置の運転方法。
【請求項2】
前記水素発生装置の初期からの総運転時間が一定時間を越えた場合、前記運転を開始してからの運転継続時間が所定時間となった時に、前記原料ガス供給装置からの原料ガスと前記水供給装置からの水の供給を継続した状態で前記選択酸化空気供給装置からの空気を一時的に停止することを特徴とする請求項1記載の水素発生装置の運転方法。
【請求項3】
前記運転を開始してからの運転継続時間が、前記水素発生装置の初期からの総運転時間に応じて設定した所定時間となった時に、前記原料ガス供給装置からの原料ガスと前記水供給装置からの水の供給を継続した状態で前記選択酸化空気供給装置からの空気を一時的に停止することを特徴とする請求項1記載の水素発生装置の運転方法。
【請求項4】
前記選択酸化空気供給装置からの空気を一時的に停止する前に、前記水素発生装置からの生成ガスが供給されている燃料電池スタックへの前記生成ガスの供給を停止し、前記選択酸化空気供給装置からの空気の供給を再開した後、前記燃料電池スタックに前記生成ガスの供給を再開することを特徴とする請求項1記載の水素発生装置を搭載した燃料電池システムの運転方法。
【請求項5】
オフガス燃焼用空気供給装置からの燃焼用空気と前記燃料電池スタックから送出されるオフガスとを混合させて燃焼させるオフガス燃焼バーナを有し、前記燃料電池スタックへの前記生成ガスの供給を停止した時、前記水素発生装置からの前記生成ガスが前記オフガス燃焼バーナに供給されることを特徴とする請求項4記載の燃料電池システムの運転方法。
【請求項6】
前記燃料電池スタックへの前記生成ガスの供給を停止する前に、前記オフガス燃焼バーナに供給される前記空気供給装置からの燃焼用空気量を多くすることを特徴とする請求項5記載の燃料電池システムの運転方法。
【請求項7】
前記オフガス燃焼バーナが、前記水素発生装置を加熱するバーナであることを特徴とする請求項5または6記載の燃料電池システムの運転方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−98839(P2011−98839A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252612(P2009−252612)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】