説明

水耕栽培装置、及び該水耕栽培装置を備えた水耕栽培設備

【課題】構造が簡単で安価な装置で栽培ハウス内の温度調整をすることができる。
【解決手段】栽培棚3の下方に養液槽2を設け、栽培棚3と養液20との間には空隙部8が形成されるようにする。また、送風ファン90等を設けておいて、該空隙部8中を養液20の液面に沿って流れた空気が連通路10を通って循環するようにする。さらに、養液20は養液温度調整手段6によって適温(例えば、10℃程度)に温度調整されている。したがって、栽培ハウス7内の空気が適温に温度調整されることとなる。本発明によれば、市販のエアコンや空調機のような大掛かりな設備を不要とし、安価で好適な温度調整を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の水耕栽培を行う水耕栽培装置、及び該水耕栽培装置を備えた水耕栽培設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風雨等の影響を排除して植物の生育環境を整えるために植物栽培用のハウス(以下、“栽培ハウス”とする)が使用されている。
【0003】
このような栽培ハウスは、夏期はハウス内温度が異常に上昇してしまい、栽培している植物に各種の障害(例えば、葉焼け等)が発生するので好ましく無い。また、冬期に温度が下がり過ぎる場合にも種々の障害が発生するので好ましく無い。そこで、換気や細霧やエアコンなどを使っての冷房、或いはボイラーや電熱ヒーターを使っての暖房が行われていた(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−210435号公報
【特許文献2】特開2001−248981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年は、害虫や菌の侵入を防いで無農薬栽培を可能とする完全密閉型の栽培ハウスが注目を浴びているが、そのような完全密閉型の栽培ハウスの冷房装置や暖房装置として安価で好適なものが望まれている。例えば、上述の換気(つまり、ハウス内温度の低下のために行う換気)はハウス内への害虫や菌の侵入を誘発してしまうおそれがあるし、ハウス内のCO濃度を適正に維持できなくなって植物の増収が見込めないおそれがある。また、細霧によるハウス内温度の低下を利用するとハウス内の湿度が異常に上昇してしまい植物環境上は好ましく無い。さらに、市販の空調機やエアコンの冷風をハウス内に送り込んでCO量や湿度に影響を与えずにハウスの内部空間を冷房することも考えられるが、その場合には、エアコンやダクト、若しくは空調機(ファンコイルユニット)のような大掛かりな設備を必要とし、コストが掛かってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述の問題を解決する水耕栽培装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、図1及び図2に例示するものであって、栽培する植物(4)を載置できるように棚状に形成されると共に、養液(20)を溜めることができる養液槽(2,12)の上方に配置される栽培棚(3)と、
前記養液槽(2,12)中の養液(20)を加熱又は冷却して該養液(20)の温度を適温に調整することができる養液温度調整手段(6,16)と、
送風ファン(90)と、該送風ファン(90)に連通された通気路(91)とにより構成されると共に、上端開口(9a)が前記栽培棚(3)の上方の空間(A1)に開口され、下端開口(9b)が前記栽培棚(3)の下方の空間(A2)に開口されてなる空気循環手段(9)と、
前記栽培棚(3)の上方の空間(A1)と該栽培棚(3)の下方の空間(A2)とを連通する連通路(10)と、
を備え、
前記栽培棚(3)には、上下に貫通する第1貫通孔(30)が少なくとも1つ形成されていて、該栽培棚(3)に載置された植物(4)の根(40)が該第1貫通孔(30)を通って下方に伸び得るように構成された水耕栽培装置(1,11)に関する。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記栽培棚(3)の下方に配置されると共に、養液(20)を溜めることのできる養液槽(2,12)を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記養液槽(2,12)には、前記栽培棚(3)の下面(3a)に接しない高さにまで養液(20)が溜められ、該栽培棚(3)の下面(3a)と該養液(20)の液面との間に空隙部(8)が形成されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、図3及び図4に例示するものであって、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、下端部が前記養液槽(2,12)に溜められた養液(20)に浸かると共に上端部が該養液(20)の液面から突出するように配置され、前記養液(20)の上方の空間(A2)と該養液(20)との間の熱交換を促進する熱交換手段(13,23)、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記熱交換手段(23)の上端部(23a)が、前記栽培棚(3)に形成された第2貫通孔(31)を通って該栽培棚(3)の上方に突出されてなることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発明において、図6乃至図9に例示するように、1本又は複数本のパイプ(P,P,P,P11,P12,P21,P22,P311,P312,P32,P41,P421,P422)と、該パイプ(P,…)に所定の温度の流体を供給する流体供給部(264,364,464,564,664,764)と、からなる温度調整手段(26,36,46,56,66,76)を備え、
前記パイプの少なくとも一部である第1パイプ部(261,361,461,561,661a,661b,761)を、前記養液槽(2)に溜められた養液(20)に浸かるように配置し、
前記パイプの少なくとも一部である第2パイプ部(262,362,462,562,662,762a,762b)を、前記養液(20)の上方の空間(A1,A2)であって前記第1パイプ部(261,…)に対向する位置に配置し、
これらのパイプ部には熱交換用のフィン(263,363,463,563,663,763)を掛け渡したことを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明において、前記パイプ部(261,…)及び前記フィン(263,…)は熱伝導性が良い材料にて形成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水耕栽培装置(1,11)と、
少なくとも前記栽培棚(3)と前記養液槽(2,12)とが内部に設置される栽培ハウス(7)と、を備えた水耕栽培設備(B1,B2)に関する。
【0015】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
請求項1乃至3及び8に係る発明によれば、前記栽培棚に載置された植物の根は、前記第1貫通孔を通って下方に伸びて養液に浸かるので、植物を栽培することができる。また、この養液が前記養液温度調整手段によって適温に(例えば、10℃程度に)調整されており、上述の空気循環手段と連通路とによって栽培ハウス内の空気(つまり、栽培棚の下方の空気と上方の空気)が循環されるようになっているので、栽培棚の下方の空間にて前記養液との間の熱交換によって適温にされた空気が前記栽培棚の上方の空間に送られることとなる。これにより、植物の根及び葉の両方の環境温度が適温となり、植物を良好に生育させることができる。さらに、換気を行わずにハウス内の温度を下げることができるので、害虫や菌の侵入を防ぐことができ、ハウス内のCO濃度も適正に維持して植物の増収を見込むことができる。またさらに、細霧による冷房を行わないのでハウス内の湿度が異常に上昇してしまうことも無い。また、市販の空調機やエアコンのように設備が大掛かりになることも無く、コストを抑えることができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、前記養液と前記空間との間の熱交換を効率良く行うことができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、養液の温度が上述の空気循環と前記熱交換手段の両方によって栽培棚の上方空間に伝わるので、該上方空間の空気の温度を効率よく適温にすることができる。
【0019】
請求項6及び7に係る発明によれば、前記第1パイプ部及び前記フィン(具体的には、該フィンのうち、前記第1パイプ部に近接する部分)によって前記養液を所望の温度まで冷却又は加温することができ、前記第2パイプ部及び前記フィン(具体的には、該フィンのうち、前記第2パイプ部に近接する部分)によって前記養液の上方の空気を所望の温度まで冷却又は加温することができ、前記フィンによって、前記養液と前記空気との間の熱交換を行うことによってそれらの温度差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係る水耕栽培装置及び水耕栽培設備の構造の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る水耕栽培装置及び水耕栽培設備の構造の他の例を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る水耕栽培装置及び水耕栽培設備の構造の他の例を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る水耕栽培装置及び水耕栽培設備の構造の他の例を示す断面図である。
【図5】図5は、熱交換手段の上端部の構造の一例を示す拡大斜視図である。
【図6】図6は、温度調整手段の構成の一例を示す断面図である。
【図7】図7は、図6の温度調整手段の外観の一例を示す斜視図である。
【図8】図8(a) 〜(c) は、温度調整手段の構成の他の例を示す断面図である。
【図9】図9(a) (b) は、温度調整手段の構成の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1乃至図5に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
本発明に係る水耕栽培装置は、図1に符号1で例示するものであって、養液20を溜めることができる養液槽2の上方に配置される栽培棚3を備えている。この栽培棚3は、栽培する植物4を載置できるように棚状に形成されており、具体的には、
・ 植物を載置するための板状の部材(例えば、発泡スチロール等の樹脂板や、樹脂以外の材料で構成された板状部材)
・ 植物を植えるための土やロックウール等を保持するための容器(プランターのようなもの)
で形成されている。つまり、本明細書における棚状とは、物(つまり、植物や土やロックウール等)を載置できるように(それらの物が落下しないように)何らかの部材(板状の部材、或いは容器)を平らにかけ渡した状態をいう。なお、この栽培棚3には、上下に貫通する第1貫通孔30が少なくとも1つ形成されていて、該栽培棚3に載置された植物の根40が該第1貫通孔30を通って下方に伸び得るように構成されている。この第1貫通孔30は、栽培棚3に載置する植物4の個数と同数か、それ以上形成しておくと良い。上述のように栽培棚3に板状の部材(発泡スチロールの樹脂板等)を用いる場合には、栽培する植物4は落下せずに植物4の根40は通り抜けることができる程度の径の孔を形成しておけば良く、上述したように土を保持する容器を栽培棚として用いる場合には、土は落下しにくく植物4の根40は容易に通り抜けることができるような形状の孔を形成しておけば良い。また、図1に示す栽培棚3は、養液槽2内に配置した支持柱5により支持されているが、もちろんこれに限られるものではなく、他の手段(例えば、フロート)によって支持するようにすると良い。
【0023】
さらに、本発明に係る水耕栽培装置1は、前記養液槽2中の養液20を加熱又は冷却して該養液20の温度を適温に(例えば、10℃程度に)調整することができる養液温度調整手段6を備えている。この養液温度調整手段6としては、
・ 一般的なスクリュー型冷凍機や、ターボ型冷凍機や、空冷あるいは水冷のヒートポンプチラーなどの冷却機器
・ 電熱器等の加熱機器
・ 冷却及び加熱の両方が可能な電気機器
・ 低温の地下水或いは高温の地下水(温泉)を使って養液の温度調整を行う何らかの手段
などを挙げることができる。なお、図1では、養液温度調整手段6を養液槽2の外部(つまり、栽培ハウス7の外部)に配置しておいて、養液20を養液槽2の外部で冷却したり加温したりするように構成されているが、図2に示すように養液温度調整手段16を養液槽12の内部に配置して該内部で養液20の冷却や加温を行うようにしても良い。図1の場合には、蓄熱槽(水等の液体や、コンクリート等の固体に蓄熱するようにしたもの)を養液温度調整手段6に設けておいて夜間電力を利用して該蓄熱槽の冷却又は加熱を行うようにしても良く、図2の場合には、養液槽12を大型にしておいて該養液槽12自体を蓄熱槽として利用しても良い。
【0024】
なお、上述の水耕栽培装置1,11は既設の養液槽を利用して構成しても良いが(つまり、上述の栽培棚3を既設の養液槽2,12の上方に設置しても良いが)、養液槽が既設されていない場合には、新たな養液槽(養液を溜めることができる養液槽)を栽培棚3の下方に配置して水耕栽培装置を構築しても良い。なお、既設の養液槽であっても新設の養液槽であっても、前記栽培棚3の下面に接しない高さにまで養液20を溜めておいて、該栽培棚3の下面3aと該養液20の液面との間に空隙部8を形成すると良い。その場合、空隙部8の高さ寸法Hは、植物4の根が養液20に十分に浸かる程度の寸法にすると良い。
【0025】
またさらに、本発明に係る水耕栽培装置1,11は、
・ 送風ファン90と、
・ 該送風ファン90に連通された通気路91と、
により構成された空気循環手段9を備えており、該空気循環手段9の上端開口9aは前記栽培棚3の上方の空間A1に開口され、該空気循環手段9の下端開口9bは前記栽培棚3の下方の空間A2に開口されている。この場合、送風ファン90を駆動して、栽培棚3の上方の空間A1から下方の空間A2に空気を送るようにしても、逆に、栽培棚3の下方の空間A2から上方の空間A1に空気を送るようにしてもどちらでも良い。なお、図1及び図2に示す例では、送風用ファン90は、栽培ハウス7の内部の栽培棚3の上方に配置され、通気路91は、送風用ファン90の下端から前記栽培棚3を貫通するように配置されているが、もちろんこれに限られるものではなく、他の様々な構造を本発明の範囲から除外するものでは無い。例えば、送風用ファンは、栽培ハウス7の内部であって栽培棚3の下方(例えば、上記空隙部8など)に配置しても良く、栽培棚3の下方空間A2と上方空間A1の両方に亘るように配置しても良く、或いは栽培ハウス7の外部に配置しても良い。また、通気路は、送風ファン90の上側だけに配置しても上側及び下側の両方に配置しても良く、前記栽培棚3を貫通させずに栽培ハウス7の壁部を貫通させるようにして配置しても良い。さらに、図1及び図2に示す例では、空気循環手段9の下端開口9bは栽培棚3の下面3aとほぼ同じ高さに配置されているが、栽培棚3の下面3aよりも低い位置に配置しても良い。例えば、空気循環手段の下端開口を養液中に開口させて送風ファン90により送り出された空気が泡状となって吹き出されるようにしても良い。
【0026】
また一方、本発明に係る水耕栽培装置1,11は、前記栽培棚3の上方の空間A1と下方の空間A2とを連通する連通路10を備えていて、上述した空気循環手段9と該連通路10とによって栽培ハウス内の空気を循環できるようになっている。なお、図1及び図2に示す連通路10は前記栽培棚3に形成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、栽培ハウス7の壁部と栽培棚3の端面との隙間に形成したり、専用のダクトを配置して連通路を形成したりしても良い。
【0027】
本発明によれば、前記栽培棚3に載置された植物4の根40は、前記第1貫通孔30を通って下方に伸びて養液20に浸かるので、植物4を栽培することができる。また、この養液20が前記養液温度調整手段6,16によって適温に(例えば、10℃程度に)調整されており、上述の空気循環手段9と連通路10とによって栽培ハウス内の空気(つまり、栽培棚3の下方の空気と上方の空気)が循環されるようになっているので、栽培棚3の下方の空間A2にて前記養液20との間の熱交換によって適温にされた空気が前記栽培棚3の上方の空間A1に送られることとなる。これにより、植物4の根40及び葉の両方の環境温度が適温となり、植物4を良好に生育させることができる。さらに、換気を行わずにハウス内の温度を下げることができるので、害虫や菌の侵入を防ぐことができ、ハウス内のCO濃度も維持して植物の増収を見込むことができる。またさらに、細霧による冷房を行わないのでハウス内の湿度が異常に上昇してしまうことも無い。また、市販の空調機やエアコンのように設備が大掛かりになることも無く、コストを抑えることができる。
【0028】
ところで、図3に示すように、前記養液槽2,12に溜められた養液20に下端部が浸かると共に、上端部が該養液20の液面から突出(露出)するように熱交換手段(例えば、フィン式熱交換器)13を配置しておき、該養液20の上方の空間A2と該養液20との間の熱交換を促進するようにすると良い。これにより、前記養液20と前記空間A2との間の熱交換を効率良く行うことができる。また、図4に詳示するように、前記熱交換手段23の上端部23aは、前記栽培棚3に形成された第2貫通孔(前記第1貫通孔以外の貫通孔であって、空気の循環路を兼ねる連通路、或いは空気の循環路を兼ねない貫通孔の意)31を通って前記栽培棚3の上方に突出するようにしても良い。そのようにした場合には、養液20の温度が上述の空気循環と前記熱交換手段23の両方によって栽培棚3の上方空間A1に伝わるので、該上方空間A1の空気の温度を効率よく適温にすることができる。その場合、図5に符号24で示すように、熱交換手段23の上端部23aに適宜風向版を設けておいて、風向きを変更できるようにすると良い。
【0029】
一方、本発明に係る水耕栽培設備B1,B2,…は、
・ 上述した水耕栽培装置1,11と、
・ 少なくとも前記栽培棚3と前記養液槽2,12とが内部に設置される栽培ハウス7と、
により構成される。この場合、栽培ハウス7の屋根や壁部を透明か半透明にして植物4を太陽光で栽培するようにしても、この栽培ハウス7の屋根や壁部を不透明にしておいて、植物4を人工光で栽培するようにしても、どちらでも良い。
【0030】
ところで、図6及び図7に例示するように、
・ パイプP,Pと、
・ 該パイプP,Pに所定の温度の流体を供給する流体供給部264と、
からなる温度調整手段26を設けると良い。その場合、前記パイプP,Pの少なくとも一部(本明細書において、適宜“第1パイプ部”とする)261は、前記養液槽2に溜められた養液20に浸かるように配置し、前記パイプP,Pの少なくとも一部(前記第1パイプ部以外の部分であって、本明細書において、適宜“第2パイプ部”とする)262は、前記養液20の上方の空間(前記栽培棚3と養液20との間の空間A2、又は前記栽培棚3の上方の空間A1を意味する。以下同じ)であって前記第1パイプ部261に対向する位置に配置すると良い。そして、これらのパイプ部261,262には熱交換用のフィン263を掛け渡しておくと良い。さらに、これらのパイプ部261,262及び前記フィン263は熱伝導性が良い材料にて形成すると良い。そのようにした場合には、
・ 前記第1パイプ部261及び前記フィン263(具体的には、該フィン263のうち、前記第1パイプ部261に近接する部分)によって前記養液20を所望の温度まで冷却又は加温することができ、
・ 前記第2パイプ部262及び前記フィン263(具体的には、該フィン263のうち、前記第2パイプ部262に近接する部分)によって前記養液20の上方の空気を所望の温度まで冷却又は加温することができ、
・ 前記フィン263によって、前記養液20と前記空気との間の熱交換を行うことによってそれらの温度差を低減することができる。
【0031】
なお、図6及び図7に示す温度調整手段26のパイプは2本であるが、もちろんこれに限られるものではなく、図8(a) に示す温度調整手段36のように、パイプの数を1本として、そのパイプPに、
・ 第1パイプ部(つまり、前記養液槽2に溜められた養液20に浸かるように配置される部分)361と、
・ 第2パイプ部(つまり、該養液20の上方の空間A1又はA2であって前記第1パイプ部261に対向する位置に配置される部分)362と、
を形成しても良い。
【0032】
また、図6に示す温度調整手段26においては、1本のパイプPのほとんどが養液20に浸かるように配置されて第1パイプ部261を形成しているが、もちろんこれに限られるものではなく、図8(b) に示す温度調整手段46のように、パイプP11の一部が養液20に浸かるように配置されて第1パイプ部461を形成するようにしても良い。同様に、図6に示す温度調整手段26においては、1本のパイプPのほとんどが前記空間A2内に配置されて第2パイプ部262を形成しているが、もちろんこれに限られるものではなく、図8(c)
に示す温度調整手段56のように、パイプP22の一部のみが前記空間A2に配置されて第2パイプ部562を形成するようにしても良い。さらに、図6乃至図8においては、第1パイプ部は1本のパイプに1箇所だけ形成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、図9(a)
に符号661a,661bで示すように2本のパイプP311,P312に2箇所形成するようにしても良い。また同様に、図6乃至図8においては、第2パイプ部は1本のパイプに1箇所だけ形成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、図9(b)
に符号762a,762bで示すように2本のパイプP421,P422に2箇所形成するようにしても良い。さらに、パイプの数を4本以上としても良い。つまり、本発明における温度調整手段は、1本又は複数本のパイプを備え、該パイプに上述のような第1パイプ部及び第2パイプ部を適宜形成しておくと良い。
【符号の説明】
【0033】
1 水耕栽培装置
2 養液槽
3 栽培棚
3a 前記栽培棚の下面
4 植物
6 養液温度調整手段
7 栽培ハウス
8 空隙部
9 空気循環手段
9a 空気循環手段の上端開口
9b 空気循環手段の下端開口
10 連通路
11 水耕栽培装置
12 養液槽
13 熱交換手段
16 養液温度調整手段
20 養液
23 熱交換手段
23a 熱交換手段の上端部
30 第1貫通孔
31 第2貫通孔
40 植物の根
90 送風ファン
91 通気路
26,36,… 温度調整手段
261,361,… 第1パイプ部
262,362,… 第2パイプ部
263,363,… 熱交換用のフィン
264,364,… 流体供給部
A1 栽培棚の上方の空間
A2 栽培棚の下方の空間
B1,B2 水耕栽培設備
,P,… パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培する植物を載置できるように棚状に形成されると共に、養液を溜めることができる養液槽の上方に配置される栽培棚と、
前記養液槽中の養液を加熱又は冷却して該養液の温度を適温に調整することができる養液温度調整手段と、
送風ファンと、該送風ファンに連通された通気路とにより構成されると共に、上端開口が前記栽培棚の上方の空間に開口され、下端開口が前記栽培棚の下方の空間に開口されてなる空気循環手段と、
前記栽培棚の上方の空間と該栽培棚の下方の空間とを連通する連通路と、
を備え、
前記栽培棚には、上下に貫通する第1貫通孔が少なくとも1つ形成されていて、該栽培棚に載置された植物の根が該第1貫通孔を通って下方に伸び得るように構成された、
ことを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
前記栽培棚の下方に配置されると共に、養液を溜めることのできる養液槽、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培装置。
【請求項3】
前記養液槽には、前記栽培棚の下面に接しない高さにまで養液が溜められ、該栽培棚の下面と該養液の液面との間に空隙部が形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水耕栽培装置。
【請求項4】
下端部が前記養液槽に溜められた養液に浸かると共に上端部が該養液の液面から突出するように配置され、前記養液の上方の空間と該養液との間の熱交換を促進する熱交換手段、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水耕栽培装置。
【請求項5】
前記熱交換手段の上端部は、前記栽培棚に形成された第2貫通孔を通って該栽培棚の上方に突出されてなる、
ことを特徴とする請求項4に記載の水耕栽培装置。
【請求項6】
1本又は複数本のパイプと、該パイプに所定の温度の流体を供給する流体供給部と、からなる温度調整手段を備え、
前記パイプの少なくとも一部である第1パイプ部を、前記養液槽に溜められた養液に浸かるように配置し、
前記パイプの少なくとも一部である第2パイプ部を、前記養液の上方の空間であって前記第1パイプ部に対向する位置に配置し、
これらのパイプ部には熱交換用のフィンを掛け渡した、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水耕栽培装置。
【請求項7】
前記パイプ部及び前記フィンは熱伝導性が良い材料にて形成された、
ことを特徴とする請求項6に記載の水耕栽培装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水耕栽培装置と、
少なくとも前記栽培棚と前記養液槽とが内部に設置される栽培ハウスと、
を備えた水耕栽培設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−217729(P2011−217729A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223916(P2010−223916)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】