説明

水蒸気水素添加ガス化により得られた水蒸気を豊富に含む発生炉ガスを直接供給する水蒸気メタン改質装置の操作

水蒸気とメタンを水蒸気メタン改質装置(SMR)に供給するための、改善され経済的に代替しうる方法であって、水蒸気水素添加ガス化反応装置(SHR)とSMRの間に位置するとともにプロセス圧力とプロセス圧力下における水の沸点を超える温度で作動するガス浄化ユニットによりSHRからの生成物流から不純物を除去することにより、SHRからの生成ガスをSMR用の原料として用いる工程の組合せにより実現される方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年7月18日に提出した米国特許出願第11/489,308号の一部継続出願であり、これに基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本発明の技術分野は、炭素質原料からの輸送燃料の合成に関する。
【背景技術】
【0003】
環境、健康、安全上の問題、及び将来的に避けることのできない石油系燃料の供給不足といった多くの問題をうけて、新たな化学的エレルギー源とこれを従来とは別の輸送燃料に変換する方法の特定が求められている。内燃機関によって動く輸送手段の数は世界中で増加し続けており、特にこれは発展途上国の中間層に位置する国々において顕著である。米国外での輸送手段は主にディーゼル燃料を用いており、その数は米国内よりも高い増加率を示している。この状況は、ハイブリッド及び/又はディーゼルエンジン技術を用いたより燃費の良い輸送手段が導入につれて、燃料消費と総排出量をともに低下させるように変化する可能性がある。石油系燃料の産出源が枯渇してきていることから、これらに代わる非石油系燃料、特に、クリーン燃焼性の合成ディーゼル燃料が開発されない限り、石油への依存は深刻な問題となるであろう。更に、従来のエンジンにおける石油系燃料の通常の燃焼は、排出ガスをコントールする厳格な方策がとられない限り、深刻な環境汚染を招く可能性がある。クリーン燃焼性の合成ディーゼル燃料は、ディーゼルエンジンからのガス排出量の低下に寄与することができる。
【0004】
クリーン燃焼性輸送燃料の製造には、既存の石油系燃料を再改質するか、新たな出力発生方法を発見するか、又は未だ使用されていない原料からの燃料を合成することが必要となる。再生可能な有機原料や炭素質原料廃棄物に由来する、数多くの供給源が利用可能である。炭素質廃棄物を利用した合成燃料の製造は、投入された原料が既にほとんど無価値とみなされ、廃棄物として捨てられ、これの廃棄はしばしば汚染を伴うことなどに鑑みると、経済的に有望な方法である。あるいは、石炭を原料として用いて、グレードの低い粗悪な固形燃料を、付加価値のあるクリーンな液体燃料、例えば、高品質で環境に優しい合成ディーゼル燃料又はその他の炭化水素燃料へとグレードアップさせることも可能である。
【0005】
液体輸送燃料は、同じ圧力と温度において気体燃料よりも高いエネルギー密度を有する点で、気体燃料よりも本質的に優れている。液体燃料は大気圧又は減圧下で保存できるのに対し、気体燃料で液体燃料並みのエネルギー密度を得るためには輸送手段のタンクに高圧で保存しなければならず、漏出や突発的な破裂といった安全上の懸念が生じる。また、液体燃料の分配に単純なポンプとパイプラインとが用いられ、気体燃料よりも格段に容易である。既存の輸送産業部門の液体燃料供給設備によって、あらゆるクリーン燃焼合成液体輸送燃料の製造を既存のマーケットに確実に容易に組み込むことができる。
【0006】
クリーン燃焼液体輸送燃料の入手は、国家的な優先課題である。炭素質供給源からのクリーンかつ効果的な合成ガス(水素と一酸化炭素の混合物、合成ガスとも呼ばれる)の製造は、Fischer-Tropsch型プロセスを適用してクリーンかつ有用な合成ガソリンやディーゼル燃料を製造することができ、輸送産業と社会福祉の双方に利益をもたらすであろう。本明細書においてFischer-Tropsch型プロセス又は反応装置とは、Fischer-Tropschプロセス又は反応器をそれぞれ含むものとして定義され、合成ガスを使用して液体燃料を製造するあらゆるプロセス又は反応装置のことである。同様に、Fischer-Tropsch型液体燃料とは、このようなプロセス又は反応装置で製造された燃料である。Fischer-Tropsch型プロセスでは現時点での最高水準のエンジン排ガス後処理方法を適用してNOxを低下させ、ディーゼルエンジン排気ガス中に存在する有害微粒子を除去し、そして、通常燃焼産物である汚染物質を低下させることができる。これらの後処理には現在触媒が用いられているが、これらの触媒は石油由来ディーゼル燃料の原料中に通常存在する硫黄によって急速に無力化され、触媒効果が低下する。通常、合成ガスから製造されるFischer-Tropsch型液体燃料は硫黄を含まず、無臭であり、そして合成ディーゼル燃料の場合には超高セタン価を有する。
【0007】
バイオマス原料は、再生可能燃料の製造に用いられる炭素質廃棄原料として最も一般的に生産される。廃棄されたプラスチック、ゴム、し尿、作物残渣、林産物、樹木及び草類の切りくず、廃水(下水)処理物から得られる汚泥などもまた、転換プロセスの原料の候補である。バイオマス原料を転換して、電気、熱、有用な化学物質又は燃料を作り出すことが可能である。カリフォルニア州は、複数のバイオマス利用技術の使用と開発において全米のトップの位置にある。カリフォルニアでは毎年、4500万トンを超える一般固形廃棄物が廃棄され、廃棄物処理施設で処理されている。この廃棄物の約半分の量が最終的に埋め立てられる。例えば、カリフォルニア地区のリバーサイド郡だけで、1日に約4000トンの廃棄木材が廃棄されていると推定されている。また別の推定によれば、100,000トンを超すバイオマスがリバーサイド郡の回収区域にある埋立地に毎日捨てられている。この一般廃棄物は、約30%が紙又は厚紙の廃棄物、40%が有機(材木及び食品)廃棄物、そして30%が木材、紙、プラスチック及び金属廃棄物の組合せとなっている。この廃棄原料の炭素質成分は、クリーン燃焼燃料に変換できれば他のエネルギー供給源への需要を低減することができるであろう化学的エネルギーを有している。利用可能な供給源は、これらの廃棄物からなる炭素質原料のみではない。多くの既存の炭素質廃棄原料、例えば紙等は、分類、再使用及びリサイクルが可能であるが、他の原料については廃棄物が直接転換施設に供給されれば、廃棄物製造業者は廃棄料金を支払わずに済むようになるであろう。現在1トン当たり30〜35ドルの廃棄料金は、通常は処分費用を補うために廃棄物処理局から請求される。従って、廃棄物から合成燃料に加工する施設へ廃棄物を輸送することにより廃棄費用を低減できるだけでなく、廃棄費用の低減によって更に多くの廃棄物が入手することが可能にもなる。
【0008】
薪ストーブで薪を燃やすことは、バイオマスを用いて熱エネルギーを作り出すことの単純な例である。残念ながら、バイオマス廃棄物を開放空間で燃焼させてエネルギーや熱を得ることは、熱量をクリーンかつ効率的に利用する方法ではない。今日では、炭素質廃棄物を利用方法が数多く発見されている。例えば、その一例が合成液体輸送燃料の製造であり、また別の一例が電気へ変換するためのエネルギーガスの製造である。
【0009】
再生可能なバイオマス供給源に由来する燃料を用いることにより、クリーンで効率性の高い輸送用エネルギーを提供すると同時に、二酸化炭素等の温室ガスの全体的蓄積量を実際に軽減することが可能となる。バイオマス供給源から合成液体燃料を共同生産することの主たる利点の一つは、地球温暖化の原因である温室ガスの効果を低減させるとともに、保存可能な輸送燃料を提供できる点にある。将来的には、これらの共同生産プロセスにより、持続可能な再生燃料経済へのクリーン燃焼燃料の提供が可能となるであろう。
【0010】
石炭やその他の炭素質原料をクリーン燃焼輸送燃料に転換する方法は数多く存在するが、これらの方法は、市場で石油系燃料と競争するには費用が高すぎる傾向にあるか、又は、メタノールやエタノールといった揮発性の燃料を製造するものであり、これらの水蒸気圧は南カリフォルニア盆地(air−basin)のような汚染度の高い地域で使用するには高すぎるため、大気汚染防止法からの法的免除措置無しに使用することができない。後者のプロセスの例としてハイノールメタノール法が挙げられ、この方法は、水素添加ガス化(hydro−gasification)と水蒸気改質反応装置を用いて固形炭素質原料と天然ガスを共原料としてメタノールを合成するものであり、実験室スケールで85%を超える炭素変換率が実証されている。
【0011】
更に近年、我々の研究チームは、炭素質原料粒子の水性スラリーと内部供給源からの水素を、リッチな発生炉ガスを生み出す条件下で、水素添加ガス化反応装置内へ供給することで合成ガスを製造する方法を開発した。これは、水蒸気と共に、合成ガスを生じる条件下で、水蒸気熱分解改質装置へと供給される。この方法の詳細は、Norbeck et al.(米国特許出願第10/503,435号(米国特許公開公報第2005/0256212号)、表題「Production Of Synthetic Transportation Fuels From Carbonaceous Material Using Self- Sustained Hydro-Gasification.」)に記載されている。この方法の更なるバージョンでは、水蒸気水素添加ガス化反応容器(SHR)を用いて炭素質原料が水素と水蒸気の両方の存在下で同時に加熱され、水蒸気熱分解と水素添加ガス化とが同一工程において行われる。この方法の詳細は、Norbeck et al.(米国特許出願第10/911,348号(米国特許公開公報第2005/0032920号)、表題「Steam Pyrolysis As A Process to Enhance The Hydro-Gasification of Carbonaceous Material.」)に記載されている。米国特許出願第10/503,435号及び同第10/911,348号の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
ガス化による合成ガスの製造と合成ガスからの液体燃料の製造とはまったく異なるプロセスである。本発明は特に、液体燃料やその他の化学物質を製造するための合成ガスの製造に広く用いられる反応装置である水蒸気メタン改質装置(SMR)を用いた合成ガスの製造に関する。SMR内で起こる反応は、以下のように示すことができる。
CH4 + H2O → CO + 3H2 (1)
又は
CH4 + 2H2O → CO2 + 4H2 (2)
水蒸気とメタンを原料として用いるにより、SMR内で一酸化炭素と水素が生じる。水蒸気発生器でプロセス水を加熱することにより、必要な水蒸気が得られる。メタンは通常、圧縮された天然ガスの状態で、又は化学的プロセス若しくは精製プロセスから生じる低分子量オフガス流(light molecular weight off-gas stream)として供給される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、より改善された、経済的に代替手段となりうる、水蒸気とメタンとをSMRに供給する方法を提供する。これは、SHRとSMRの間に位置してプロセス圧力で作動するガス浄化ユニットによりSHRからの生成物流から不純物を除去することにより、SHRからの生成ガスをSMR用の原料として用いる、新たな方法の組合せにより実現される。
【0014】
本発明のある態様では、SHRからの生成ガスが、SMR用の原料として用いられる。上述したように、この水蒸気及びメタンに富む生成ガスは、炭素質原料と水の混合物であるスラリーを水素添加ガス化することにより作り出される。この生成ガスはメタンに富むガスと水蒸気(水蒸気は原料に含まれる水を過熱した結果として存在する)の混合物であり、理想的なSMRへの原料供給流(feed stream)としての役割を果たす。
【0015】
他の方法では、灰やチャーの微粒子、硫化水素(H2S)及び他の無機成分等の不純物をSHRの生成物流から取り除くことを必要とする。これらの不純物は、SMRで用いる触媒の無力化を防ぐために取り除かれなければならない。従来、この目的のために粒子フィルター、溶媒洗浄(アミン類、Selexol(商標)、Rectisol(商標))及びClaus法による水素化脱硫を組み合わせて用いられてきた。Claus法では、高温(1000〜1400℃)の反応炉中の空気によりH2Sが部分的に酸化される。硫黄が生成するが、H2Sの一部は未反応のまま残り、一定量のSO2が作られるが、更に硫黄を生成するために残存するH2Sが触媒の下で、低温(約200〜350℃)でSO2と反応する必要がある。しかしながら、SMR供給流は高温に維持される必要があるので、ガス流を再加熱することにより大量のエネルギーを消費することになることから、これらの従来の浄化技術は、エネルギー的観点からみてコストが高すぎる。更にまた、SHR生成流からの水蒸気を保持することにより得られる利点が失われる。従って、本発明の別の態様では、プロセス圧力で作動し、SHRとSMRの間に位置するガス浄化ユニットが提供される。
【0016】
更に詳細には、水素と水蒸気の両方の存在下で、発生炉ガスとも呼ばれるメタンと一酸化炭素を豊富に含むガス生成物流を作り出すのに十分な温度と圧力において、炭素質原料を同時に加熱することを含む、炭素質原料を合成ガスに転換する方法が提供される。不純物は、実質的にプロセス圧力下で、プロセス圧力下での水の沸点を超える温度で、前記発生炉ガス流から取り除かれ、得られた発生炉ガスの水蒸気メタン改質が、水素と一酸化炭素を含む合成ガスが生じる条件下において行われる。ある具体的な方法では、一般廃棄物、バイオマス、木質原料、石炭又は天然若しくは合成ポリマーを合成ガスに転換するために、炭素質原料は、水素と水蒸気の両方の存在下で、メタンと一酸化炭素を豊富に含む発生炉ガス流が生成されうる約700℃〜約900℃の温度と約132psi〜560psiの圧力において、同時に加熱される。不純物は、プロセス圧力にて、プロセス圧力下での水の沸点を超える温度(実質的にプロセス温度となるであろう)で、前記発生炉ガス流から取り除かれ、次いで、得られた発生炉ガスの水蒸気メタン改質が、水素と一酸化炭素をH2:COが約3〜1の範囲のモル比で含む合成ガスが生じる条件下で行われる。コバルト系触媒を用いるFischer-Tropsch反応装置で必要とされるH2:COモル比は、2:1である。従って、過剰量の水素が存在することになるので、これを分離してSHRに供給して自立可能型(self-sustainable process)の、即ち、外部からの水素の供給を必要としない方法を作り出すことが可能である。水蒸気メタン改質により作り出される合成ガスは、液体燃料が生成される条件下で、Fischer-Tropsch反応装置に供給できる。Fischer-Tropsch反応装置からの発生熱は、水素添加ガス化反応及び/又は水蒸気メタン改質反応に移転できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る方法のフローダイアグラムである。
【図2】本発明に係る方法のマスバランスフローダイアグラムである。
【図3】本発明により生成された成分及び本発明によらずに生成された成分を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の詳細な説明
本発明は、本発明のある態様において、SMRの原料が水蒸気と、SHR内での炭素質原料と水の混合物の水素添加ガス化により生成されたメタンに富む生成ガスと、の混合物である、方法の組み合わせを提供する。水蒸気は、原料中の水分を過熱した結果として存在しており、SMRへの理想的な原料供給流としての役割を果たす。
【0019】
他の方法では、灰やチャーの微粒子、硫化水素(H2S)及び他の無機成分等の不純物をSHRの生成物流から取り除く方法を必要とする。これらの不純物は、SMR原料供給流を高いプロセス温度に維持しつつ、SMRで用いる触媒の無力化を防ぐために、取り除かれなければならない。従って、本発明の別の態様では、プロセス圧力及びプロセス圧力下における水の沸点を超える温度で作動し、SHRとSMRの間に位置する、ガス浄化ユニットが提供される。
【0020】
図1には、本発明に係る方法のフローダイアグラムが示されている。内部生成された水素原料10は、炭素質原料14及び水16と共にSHR12に供給され、SHR12内で400 psiにて750℃に加熱される。得られた発生炉ガスは、約400psiで約350℃の、例えば、キャンドルフィルターアセンブリー等のガス浄化フィルター18に送られる。硫黄と灰が除去した後に、ここから流出物がSMR20に送られ、ここで合成ガスが生成されてFischer-Tropsch反応装置22に供給され、この反応装置から純水24と、ディーゼル燃料及び/又はワックス26と、が得られる。水素の一部分がSMR20から28において分離し、再びSHR12に供給される。Fischer-Tropsch反応装置22からの熱30は、SMRでの加熱を補うために用いられる。
【0021】
水の沸点(bubbling temperature)を超える温度で上記のユニットを操作することによって、SHRからのガス状生成物流中に水が水蒸気として存在することが可能となり、それによってこの方法における流出物の顕熱の大部分が保持される。図2は、マスバランスプロセスフローダイアグラムである。本方法の各段階における生成物流の質量パーセンテージが図中に示されている。これらの数値は、ASPEN PLUS(商標)平衡プロセスモデリングを用いて計算した。ASPEN PLUS(商標)は市販のコンピューターモデリングプログラムであり、ASPEN PLUS(商標)により化学成分と操作条件を特定することによりプロセスモデルを作成することができる。このプログラムは、全ての詳細な情報をもとにモデルをシミュレートし、系の結果を解析するために必要な全ての計算を実行し、それによってその挙動を予測する。計算が完了すると、ASPEN PLUS(商標)は、流れ毎、ユニット毎に結果を列挙する。図2に示すように、水素と41%の石炭スラリーとからなるSHR原料から、水素と一酸化炭素のモル比が3.4:1の合成ガスがSMRで生成される。SHRに必要な水素は、外部手段を通じて、又はSMRで生成する水素の一部を内部で再供給することで供給できる。ある特定の例では、Norbeck et al.(米国特許出願第10/911,348)の方法により得られる41%の石炭、52%の水及び7%の水素からなるスラリーが用いられる。
【0022】
プロセス圧力下での水の沸点を超える温度で動作可能であれば、どのようなフィルターを用いてもよい。市販のこのようなフィルターの一つにキャンドルフィルターがあり、このフィルターについては当該技術分野で良く知られている。例えば、米国特許第5,474,586を参照(この文献の開示は参照により本明細書中に組み込まれる)。本発明で使用できる入手可能なガス浄化ユニットとしては、一連のキャンドル型フィルターがフィルター容器内に設置された、キャンドルフィルターとして知られるものがある。キャンドルフィルターは、ステンレススチール製の金属フリットで構成されており、これによってガス流から微粒子状の物質(灰、無機塩及び未反応のチャー)が取り除かれる。スラリーが容器の底にある注入口から供給され、濾液が上部の流出口から取り出される。粒子状物質は、別の流出口から固形物として取り出される。SHR生成ガス中に存在する硫黄不純物は、主に硫化水素の形態であり、生成ガスをガス浄化ユニット内の金属酸化物吸着剤を充填した層を通過させることで除去され、粒子状物質が固形物流出口から取り出される。
【0023】
活性吸着剤としては、これらに限定されないが、Sud-Chemie社(ルイスビル、ケンタッキー州)から市販されている酸化亜鉛等のZn系酸化物が挙げられる。多孔性金属フィルター部分は、Bekaert(マリエッタ、ジョージア州)等から適当な形状とサイズで入手可能であり、例えば、孔径が1のステンレススチール製の焼結繊維マトリックスから成るBekpor(登録商標)Porous Media等が挙げられる。これらの吸着剤とフィルター部分により、圧力低下による影響やガス-固体物質移動の制限が最小限度に留められる。SHR生成ガスの脱硫は、28atmの圧力、300℃〜500℃の範囲の温度、及び毎時2000以下の空間速度においてなされている。吸着剤を硫化させることにより、上記ガス中の硫化水素含有量がSMR触媒の不活性化を回避できる程度の低濃度に低下する。ガス浄化ユニット中の使用後の吸着剤は、新たな吸着剤と交換してもよく、平行多層吸着床(parallel multiple sorbent beds)中で希釈空気によりその場で再生してもよい。
【0024】
SHR生成物流を直接供給したSMR操作が成功したことを実証する実験データを図3に示す。SMRの排出口で測定したガスの濃度が、SMRの温度プロファイルと共にプロットされている。SMRの温度が低いとき、SMRの排出口で観察された主生成物はメタンである(SHRが操作された唯一の反応装置であるため)。SMRの温度が上昇するにつれてメタン濃度が低下し、これに対応して水素と一酸化炭素濃度の上昇が観察される。SMRで生成された合成ガスの最終組成は、H2:COのモル比が3:1である。より一般的には、本発明のプロセスによれば、H2:COのモル比が2:1〜6:1の範囲にある組成の合成ガスを製造できる。
【0025】
得られる流出物は、水素、一酸化炭素及び水蒸気を豊富に含む合成ガスである。SMRで生成された水素の約3分の1が、SHRへリサイクルされる。従って、外部からの水素供給源を必要とせずに定常運転を維持できる。よって、SHR法及びSMR法は、化学的に自立可能型であると考えられる。残存する合成ガスは、その後、燃料の製造とプロセス加熱に利用することができる。
【0026】
本発明のある態様では、硫黄ゼロ、超高セタン価であるディーゼル様燃料及び有用なパラフィンワックス生成物を生成可能な方法において、合成ガスがFischer-Tropsch反応装置に供給される。硫黄が存在しないため、排出ディーゼル燃料の汚染物質と粒子の低下が実現される。例えば精製水等の有用な副生成物が生成されることもあり、これらをリサイクルしてプロセスに供給するスラリーを生成することも可能である。Fischer-Tropsch反応はまた、水素、CO、CO2及び低分子の炭化水素ガスを含有するテールガスも生成する。このテールガスから水素を取り出して、SHR又はFischer-Tropsch反応装置のいずれかにリサイクルすることができる。CO及びCO2等の他の少量のガス類は、燃焼して消失するであろう。
【0027】
本発明とその優位性について、詳細に記載したが、添付する請求項に定義される本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、本明細書の開示に種々の変化、置換及び変更を施すことが可能なことが理解されるべきである。また、本出願の範囲については、本明細書に記載される方法及び装置の特定の態様に制限されることが意図されるものではない。当業者であれば、本発明の開示から直ちに理解するように、本明細書に記載する態様と実質的に同様の機能を発揮するか又は実質的に同様の結果を実現する、既存の又は後に開発される方法及び装置を、本発明に従って利用することもできる。従って、添付する請求項は、その範囲に、これらの方法や、これらの装置の使用を含むことを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と水蒸気との両方の存在下で、メタンと一酸化炭素とを豊富に含むガス生成物流を生成するのに十分な温度と圧力で、炭素質原料を同時に加熱すること;
発生炉ガス流から不純物を取り除くこと;及び
得られた発生炉ガスの水蒸気メタン改質を、水素と一酸化炭素とを含む合成ガスが生じる条件下で行うこと;
を含む、炭素質原料を合成ガスに変換する方法。
【請求項2】
前記不純物が、プロセス圧力下での水の沸点を超える温度で、前記発生炉ガス流から取り除かれる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記温度が、約700℃〜約900℃である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
不純物が、前記発生炉ガス流から実質的に前記圧力で除去される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記圧力が、約132psi〜560psiである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
2:COのモル比が2:1〜6:1の範囲の組成を有する合成ガスが生成される条件下で水蒸気メタン改質が行われる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
2:COのモル比が3:1の組成を有する合成ガスが生成される条件下で前記水蒸気メタン改質が行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記炭素質原料が、一般廃棄物、バイオマス、木質原料、石炭又は天然若しくは合成ポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記水蒸気メタン改質により生じる合成ガスが、液体燃料が生成される条件下でFischer-Tropsch型反応装置に供給される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
水素と水蒸気の両方の存在下で、約700℃〜約900℃の温度および約132psi〜560psiの圧力において、炭素質原料を同時に加熱して、メタンと一酸化炭素を豊富に含むガス生成物流を作り出すこと;
実質的に前記圧力にて、プロセス圧力下での水の沸点を超える温度で、前記発生炉ガス流から不純物を取り除くこと;
得られた発生炉ガスの水蒸気メタン改質を、H2:COのモル比が2:1〜6:1の範囲で水素と一酸化炭素とを含む合成ガスを生成する条件下で行うこと;及び
前記水蒸気メタン改質により生成された合成ガスを、液体燃料が生成される条件下でFischer-Tropsch型反応装置に供給すること;
を含む、一般廃棄物、バイオマス、木質原料、石炭又は天然若しくは合成ポリマーを合成ガスに変換する方法。
【請求項11】
前記Fischer-Tropsch型反応からの発生熱を、前記水素添加ガス化反応及び/又は水蒸気メタン改質反応に移転することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
水素と水蒸気の両方の存在下で、メタンと一酸化炭素を豊富に含むガス生成物流を生成するのに十分な温度と圧力において、炭素質原料を同時に加熱するための水素添加ガス化反応容器を含む、炭素質原料を合成ガスに転換するための装置。
【請求項13】
液体燃料を生成するために、水蒸気メタン改質装置により生成される合成ガスを受容するFischer-Tropsch型反応装置を含む、請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記Fischer-Tropsch型反応からの発生熱を、前記水素添加ガス化反応装置及び/又は水蒸気メタン改質装置に移転するための手段を含む、請求項13記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−543932(P2009−543932A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520794(P2009−520794)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/016143
【国際公開番号】WO2008/010993
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】