説明

水質分析計の除湿装置

【課題】 測定室内に試料液を導入して測定を行う水質分析計の測定室内に存在する空気の除湿を低コストで効率的に行う。
【解決手段】 内部に空気が導入される空気容器26と内部に試料液が導入される試料液容器24とを有し、空気容器内の空気と試料液容器内の試料液との熱交換を行って空気容器内の空気を冷却する熱交換手段22と、空気容器内に測定室12内の空気を導入する空気導入手段28と、空気容器内の空気を加圧する加圧手段34と、試料液容器内の試料液との熱交換を行った後の空気容器内の空気を測定室内に返送する空気返送手段と、試料液容器内に試料液を導入する試料導入手段40と、空気容器内の空気との熱交換を行った後の試料液容器内の試料液を測定室内に導入する試料液移送手段とを備えた除湿装置20を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定室内に試料液を導入し、測定室内で試料液の測定を行う水質分析計の測定室内に存在する空気の除湿装置に関する。本発明の除湿装置は、例えば濁度計などの種々の水質分析計の除湿装置として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
測定室内に試料液を導入し、測定室内で試料液の測定を行う水質分析計では、測定室内に導入した試料液の温度が測定室内の空気の温度より低い場合に、測定室内の空気中に含まれる湿分により、測定室内で結露が生じ、測定に不都合が生じることがある。
【0003】
従来、上述した測定室内における結露の発生を防止する手段として、例えば、除湿材を用いた除湿装置あるいは電子クーラーなどの冷却装置を用いた除湿装置を水質分析計に設置することにより、測定室内の空気の湿度を低い値に維持する手段が採られている(例えば、特許文献1参照)。後者の冷却装置を用いた除湿装置は、除湿対象の空気を除湿装置に導く機能と、冷却装置を用いて上記空気から湿分を分離する機能とを有するものである。
【0004】
【特許文献1】特開平11−142236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、除湿材を用いた除湿装置は、次のような欠点を有するものであった。すなわち、除湿材は置かれている空間の湿分を自身に閉じ込める機能を持つが、湿分の捕捉量には物理的に限界があり、したがって測定室内を低湿度に維持するためには、適当な時期に除湿材を交換する必要がある。そのため、除湿材を用いた除湿装置では、消耗品である除湿材の定常的な消費が必須となる上、日常点検および定期的な交換作業の実施が必要となり、運転コストが高くなる。また、除湿材の機能劣化の確認には、一般に、除湿材に付加された発色材の色の変化によって除湿材の状態を調べる方法が採られている。そのため、除湿材を用いた除湿装置では、除湿材中の発色材を目視することができる構造の採用が必要となり、装置構造が複雑になる。
【0006】
一方、冷却装置を用いた除湿装置は、次のような欠点を有するものであった。すなわち、一般にペルチェ素子を用いた電子クーラーなどの冷却装置は高価である。また、結露の発生は測定室内に導入した試料液の温度が測定室内の空気の温度より低いことが原因となるが、冷却装置を用いた除湿装置にはその結露発生の最大条件を想定した能力が要求され、この点でも装置コストが高くなる。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、水質分析計の測定室内に存在する空気の除湿を低コストで効率的に行うことができる除湿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するため、以下の構成を採用した。
[1]測定室内に試料液を導入し、測定室内で試料液の測定を行う水質分析計の測定室内の空気の除湿装置であって、
内部に空気が導入される空気容器と内部に試料液が導入される試料液容器とを有し、空気容器内の空気と試料液容器内の試料液との熱交換を行って空気容器内の空気を冷却する熱交換手段と、
前記空気容器内に前記測定室内の空気を導入する空気導入手段と、
試料液容器内の試料液との熱交換を行った後の空気容器内の空気を前記測定室内に返送する空気返送手段と、
前記試料液容器内に試料液を導入する試料液導入手段と
を具備することを特徴とする水質分析計の除湿装置。
[2]前記空気容器内の空気を加圧する加圧手段を具備することを特徴とする[1]に記載の水質分析計の除湿装置。
【0009】
本発明に係る水質分析計の除湿装置は、熱交換手段により空気容器内の空気と試料液容器内の試料液との熱交換を行って空気容器内の空気を冷却することにより、水質分析計の測定室内に存在する空気の除湿を低コストで効率的に行うことができる。
【0010】
すなわち、除湿の手段として、湿分を含む空気の温度を下げることが有効であるが、本発明では、熱交換手段の空気容器内に測定室内の空気を導入し、試料液容器内に試料液を導入するとともに、上記空気容器内の空気と試料液容器内の試料液との熱交換を行って空気容器内の空気を冷却することにより、空気容器内の空気の除湿を行うことができ、この除湿を行った空気容器内の空気を測定室内に返送することにより、測定室内の空気を低湿度に維持することができる。この場合、本発明では、測定室内の空気の冷却を試料液を用いて行うので、測定室内の空気の除湿を低コストで行うことができる。
【0011】
また、本発明では、空気容器内の空気を加圧した状態で上記熱交換を行うことにより、空気容器内の空気の除湿が促進され、測定室内の空気の除湿を効率的に行うことができる。すなわち、一般にある混合比の水蒸気を含む湿潤空気を圧縮すると、上記混合比は変化せず、空気分圧も水蒸気分圧も同比率で上昇するが、水蒸気分圧に関しては、温度をパラメータとした飽和水蒸気圧があるため水蒸気分圧がこの飽和値よりも大きくなることはない。したがって、空気容器内の空気に、水蒸気分圧の値が飽和水蒸気圧よりも大きくなるような圧力を加えると、水蒸気分圧は飽和水蒸気圧の値で止まり、空気分圧が加圧前の混合比を超えて上昇することになり、また、過剰分の水蒸気は凝縮する。このときに液化した水分を除去することにより、空気中の水蒸気量は減少し、また、圧力を元に戻す(1気圧に戻す)と、加圧前の混合比よりも空気分圧が多くなった混合比が維持されるので、加圧前と比べて相対湿度が減少した空気を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る水質分析計の除湿装置によれば、測定室内に試料液を導入して測定を行う水質分析計の測定室内に存在する空気の除湿を低コストで効率的に行うことができ、その結果、測定室内での結露の発生を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
(第1実施形態)
図1は本発明に係る水質分析計の除湿装置の第1実施形態を示す概略フロー図である。図1において、10は水質分析計、12は水質分析計10の密閉された測定室、14は測定室12内に設置された測定セル、16は測定セル14に試料液を導入する試料液入口、18は測定終了後の試料液を測定セル14から排出する試料液出口を示す。また、図中20は水質分析計10に設置された除湿装置、22は除湿装置20の熱交換手段を示す。熱交換手段22は、内部に試料液が導入される管状の試料液容器24と、試料液容器24の内部に配置され、内部に空気が導入される管状の空気容器26とを有し、空気容器26内の空気に対して試料液容器24内の試料液の温度が低い場合に、試料液容器24内の試料液と空気容器26内の空気との熱交換を行って空気容器26内の空気を冷却するものである。
【0014】
本例において、水質分析計10の測定室12と空気容器26の下部との間には空気導入管28が配設されているとともに、空気導入管28にはエアポンプ30が介装されており、エアポンプ30の動作によって測定室12内の空気が空気容器26内に導入されるようになっている。また、空気容器26の上部と水質分析計10の測定室12との間には空気返送管32が配設されているとともに、この空気返送管32には流量絞り弁34が介装されており、エアポンプ30の動作によって空気容器26内の空気が測定室12内に返送されるとともに、流量絞り弁34を絞ることにより空気容器26内の空気が加圧されるようになっている。さらに、空気容器26の下部には水抜き管36が連結され、この水抜き管36にはドレンバルブ38が介装されている。なお、上記ドレンバルブ38は通常は閉じられている。
【0015】
上述のように、本例では、空気導入管28とエアポンプ30とによって空気容器26内に測定室12内の空気を導入する空気導入手段が構成され、エアポンプ30と流量絞り弁34とによって空気容器26内の空気を加圧する加圧手段が構成され、エアポンプ30と空気返送管32とによって試料液容器24内の試料液との熱交換を行った後の空気容器26内の空気を測定室12内に返送する空気返送手段が構成されている。
【0016】
また、試料液容器24の下部には、試料液容器24内に試料液を導入する試料液導入管40(試料液導入手段)が連結されているとともに、試料液容器24の上部と試料液入口16との間には、空気容器26内の空気との熱交換を行った後の試料液容器24内の試料液を測定室12内に導入する試料液移送管42が配設されている。
【0017】
次に、本例の動作について説明する。
(1)測定対象の試料液は、試料液導入管40から試料液容器24内に導入された後、さらに試料液移送管42により測定室12内の測定セル14に導入されて所定の測定が行われた後、試料液出口18から排出される。
(2)一方、測定室12内の空気は、エアポンプ30の動作によって空気導入管28を経由して空気容器26内に導入される。このとき、流量絞り弁34を絞ることにより、エアポンプ30と流量絞り弁34との間の経路では、空気はエアポンプ30の吐出圧力による加圧状態にある。結露発生の要因となる試料液の温度が測定室12内の空気の温度より低い場合に、空気容器26内の空気は、試料液容器24内の試料液との熱交換によって加圧下で冷却され、湿度が低下する。すなわち、空気容器26内の空気は加圧状態にあるため、単位体積当たりに存在し得る水分量に対して存在する水分が過剰となり、試料水による冷却と相俟って、過剰水分は空気容器26内で凝結する。
(3)湿度が低下した空気容器26内の空気は、エアポンプ30の動作によって空気返送管32を経由して測定室12内に返送される。この場合、流量絞り弁34を経た空気は、大気圧に減圧されるため、相対湿度の低い乾燥空気となって測定室12内に供給される。
(4)空気容器26内に溜まった水分は、適宜ドレンバルブ38を開いて水抜き管36から排出する。
【0018】
以上のサイクルにより、測定室12内の空気に含まれる湿分が減少し、測定室12内における結露の発生が防止される。この場合、空気容器26内の空気を加圧した状態で上記熱交換を行うので、空気容器26内の空気の除湿が促進され、各部の温度差、応答遅れ等により生じる結露に対しても安全率を高めることができる。
(第2実施形態)
図2は本発明に係る水質分析計の除湿装置の第2実施形態を示す概略フロー図である。本例は、光学式フローセルを用いた濁度計に本発明に係る除湿装置を設置した例である。図2において、50は濁度計、52は濁度計50の密閉された検出部(測定室)、54は濁度計50の制御・変換部を示す。
【0019】
検出部52内には、光源ランプ56、フローセル58、積分球60、透過光受光部62および散乱光受光素部64が配設されている。上記フローセル58は、内部に試料液が導入されるセル本体66の両側にそれぞれ透明なセル窓68を配置し、一方のセル窓68に光源ランプ56からの光を入射させ、セル本体66内の試料液を透過した光を他方のセル窓68から射出させるものである。本例の濁度計50は、上記射出光(積分球60を経由した透過光および散乱光)を透過光受光部62および散乱光受光部64で受光し、入射光、透過光および散乱光の強度から試料液の濁度を算出するものである。
【0020】
また、図中70は濁度計50に設置された除湿装置、72は除湿装置70の熱交換手段を示す。熱交換手段72は、内部に試料液が導入されるウォータージャケット(試料液容器)74と、ウォータージャケット74の内部に配置され、内部に空気が導入されるエア冷却タンク(空気容器)76とを有し、ウォータージャケット74内の試料液とエア冷却タンク76内の空気との熱交換を行ってエア冷却タンク76内の空気を冷却するものである。
【0021】
本例において、濁度計50の検出部52とエア冷却タンク76の下部との間には空気導入管78が配設されているとともに、空気導入管78にはエアポンプ80が介装されており、エアポンプ80の動作によって検出部52内の空気がエア冷却タンク76内に導入されるようになっている。また、エア冷却タンク76の上部と濁度計50の検出部52との間には空気返送管82が配設されているとともに、この空気返送管82には流量絞り弁84が介装されており、エアポンプ80の動作によってエア冷却タンク76内の空気が検出部52内に返送されるとともに、流量絞り弁84を絞ることによりエア冷却タンク76内の空気が加圧されるようになっている。さらに、エア冷却タンク76の下部には水抜き管86が連結され、この水抜き管86にはドレンバルブ88が介装されている。なお、上記ドレンバルブ88は通常は閉じられている。
【0022】
上述のように、本例では、空気導入管78とエアポンプ80とによって空気導入手段が構成され、エアポンプ80と流量絞り弁84とによって加圧手段が構成され、エアポンプ80と空気返送管82とによって空気返送手段が構成されている。
【0023】
また、ウォータージャケット74の下部には、ウォータージャケット74内に試料液を導入する試料液導入管90(試料液導入手段)が連結され、この試料液導入管90には制御・変換部54の制御により動作する電磁弁92が介装されているとともに、ウォータージャケット74の上部とフローセル58の入口との間には、エア冷却タンク76内の空気との熱交換を行った後のウォータージャケット74内の試料液をフローセル58内に導入する試料液移送管92が配設されている。なお、試料液導入管90には純水導入管94が連結され、この純水導入管94には制御・変換部54の制御により動作する電磁弁96が介装されている。上記純水導入管94は、濁度計50のゼロ点校正時に検出部52に純水を供給するためのものである。
【0024】
次に、本例の動作について説明する。
(a)測定対象の試料液は、試料液導入管90からウォータージャケット74内に導入された後、さらに試料液移送管92により検出部52内のフローセル58に導入されて濁度の測定が行われた後、試料液排出ライン98を通って排出される。
(b)一方、検出部52内の空気は、エアポンプ80の動作によって空気導入管78を経由してエア冷却タンク76内に導入される。このとき、流量絞り弁84を絞ることにより、エアポンプ80と流量絞り弁84との間の経路では、空気はエアポンプ80の吐出圧力による加圧状態にある。試料液が結露を発生させる温度域の場合に、エア冷却タンク76内の空気は、ウォータージャケット74内の試料液との熱交換によって加圧下で冷却され、湿度が低下する。
(c)湿度が低下したエア冷却タンク76内の空気は、エアポンプ80の動作によって空気返送管82を経由して検出部52内に返送される。この場合、流量絞り弁84を経た空気は、大気圧に減圧されるため、相対湿度の低い乾燥空気となって検出部52内に供給される。
(d)エア冷却タンク76内に溜まった水分は、適宜ドレンバルブ88を開いて水抜き管86から排出する。
【0025】
なお、上記いずれの実施形態においても、試料液は、熱交換手段内の試料液容器に導入された後に、検出部(測定室)内に導入されて測定されるような構成、すなわち、空気との熱交換を行った後の試料液を測定するような構成としたが、検出部(測定室)内で測定した後の試料液を熱交換手段内の試料液容器に導入して空気との熱交換を行う構成としてもよいし、測定ラインとは別途に試料液を熱交換手段内の試料液容器に導入するラインを設けてもよい。
【実施例】
【0026】
前述した第2実施形態の濁度計を用い、前記(a)〜(c)の手順で検出部52に返送される空気の除湿を行った結果を図3に示す。なお、一定の雰囲気環境を維持させるために、検出部52はカバーを取り外した状態で恒温恒湿装置内に配置した。図3において、Kは濁度計の出力、Lは恒温恒湿装置(検出部52)内の空気の湿度、Mは恒温恒湿装置(検出部52)内の空気の温度、Nはウォータージャケット74内に導入された試料液の温度、Pは図2において符号Aで示す箇所における空気の湿度、Qは箇所Aにおける空気の温度を示し、時間Tまでの間の各部の温度、湿度等は下記の通りであった。
・恒温恒湿装置内の空気の湿度(L):約78%RH
・恒温恒湿装置内の空気の温度(M):約21℃
・ウォータージャケット74内に導入された試料液の温度(N):約21℃
・箇所Aにおける空気の湿度(P):約52%RH
・箇所Aにおける空気の温度(Q):約21℃
・エア冷却タンク76内における空気の圧力:0.1MPa
ここで、JIS Z 8806に記載の水の飽和蒸気圧(飽和水蒸気圧)表によれば、21℃における飽和水蒸気圧は2488.2Paである。したがって、相対湿度78%の空気においては、2488.2×0.78≒1940.8(Pa)の水蒸気分圧であることがわかる。この空気を0.1MPaとなるように圧縮した場合、空気圧と水蒸気圧の混合比は変わらないため、水蒸気分圧は計算上、1940.8×2=3881.6(Pa)となる。しかし、21℃における飽和水蒸気圧は前述の通り2488.2Paであるため、3881.6−2488.2=1393.4(Pa)に相当する水分子は凝縮して水抜き管86に溜まることになり、水蒸気分圧は2488.2Paとなる。そして、この圧縮空気が流量絞り弁を通過して大気圧に戻るときには、2488.2÷2≒1244.1(Pa)の水蒸気分圧となり、相対湿度は1244.1÷2488.2=0.5、すなわち約50%となる。本実施例においては、理論値に近い約52%RHであった。また、このときの濁度計の出力Kは、試料液の濁度に応じた出力となっていた。
【0027】
次に、試料液の温度が下がった場合の状態を見るために、時間Tにおいて、試料液の冷却を開始して、約5℃まで低下するように冷却を続けた。また、同時に恒温恒湿装置内の相対湿度が90%になるように加湿を開始した。加湿の開始とともに検出部52の光学系に結露が発生したため、濁度計の出力Kは急変しはじめた。一方、箇所Aにおける空気の湿度Pは、試料液の温度低下に伴って徐々に低下し、約1時間後には相対湿度が23%にまで低下した。これを計算で確認すると以下のようになる。
【0028】
恒温恒湿装置内の空気の温度Mは約20℃であり、JIS Z 8806の飽和水蒸気圧表によれば、20℃の飽和水蒸気圧は2339.2Paである。恒温恒湿装置内の空気の相対湿度Lは約90%であるので、水蒸気分圧は、2339.2×0.9≒2105.3(Pa)である。エア冷却タンク76内では、この空気が0.1MPaとなるように圧縮されているので、水蒸気分圧は計算上、2105.3×2=4210.6(Pa)となるが、エア冷却タンク76内の空気はウォータージャケット74内の試料液で約7℃に冷却されており、7℃における飽和水蒸気圧は1002.0Paであるため、4210.6−1002.0=3208.6(Pa)に相当する水分子が凝縮して水抜き管86に溜まり、水蒸気分圧は1002.0Paとなる。そして、この圧縮空気が流量絞り弁を通過して大気圧に戻るときには、1002.0÷2=501.0(Pa)の水蒸気分圧となり、またこのときの箇所Aにおける空気の温度Qは約19℃であるため、相対湿度は501.0÷2198.2(19℃における飽和水蒸気圧)≒0.23すなわち約23%となる。なお、箇所Aにおける空気の温度Qは、エア冷却タンク76から箇所Aに至る経路において周囲環境の温度に近い値まで上昇したものである。
【0029】
なお、本実施例においては、相対湿度は温度によって変化するので、周囲温度を一定に保つことにより、除湿の状態をわかりやすく観察するために検出部52のカバーを取り外した状態で恒温恒湿装置内に配置し、また、除湿後の空気を直接光学系に向けて吹き付けていないため、濁度計の出力Kは約1時間15分後には完全に振り切れたが、通常の実施形態においては、検出部52は密閉されているため、検出部52全体に除湿後の乾燥した空気が拡散して全体の除湿が行われるので結露は発生せず、濁度の測定は正しく行われる。また、本実施例では、水蒸気分圧が501.0Paの空気を得ることができたが、これは、0℃における飽和水蒸気圧である611.21Paよりも充分に小さい値である。
【0030】
上述のように、試料水で冷却され、さらに加圧されることによって、効果的に除湿がなされた空気が返送された検出器内は、試料液の温度が急激に変化したとしても結露は発生せず、また、検出器内の光学系に向けて除湿した空気を吹き付けるような構造をとれば、保守等で湿度の高い空気が混入しても、光学系に結露は発生せず、安定した測定を継続することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る水質分析計の除湿装置の第1実施形態を示す概略フロー図である。
【図2】本発明に係る水質分析計の除湿装置の第2実施形態を示す概略フロー図である。
【図3】実施例における除湿の様子を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
10 水質分析計
12 測定室
20 除湿装置
22 熱交換手段
24 試料液容器
26 空気容器
28 空気導入管
30 エアポンプ
32 空気返送管
34 流量絞り弁
40 試料液導入管
42 試料液移送管
50 濁度計
52 検出部
70 除湿装置
72 熱交換手段
74 ウォータージャケット
76 エア冷却タンク
78 空気導入管
80 エアポンプ
82 空気返送管
84 流量絞り弁
90 試料液導入管
92 試料液移送管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定室内に試料液を導入し、測定室内で試料液の測定を行う水質分析計の測定室内の空気の除湿装置であって、
内部に空気が導入される空気容器と内部に試料液が導入される試料液容器とを有し、空気容器内の空気と試料液容器内の試料液との熱交換を行って空気容器内の空気を冷却する熱交換手段と、
前記空気容器内に前記測定室内の空気を導入する空気導入手段と、
試料液容器内の試料液との熱交換を行った後の空気容器内の空気を前記測定室内に返送する空気返送手段と、
前記試料液容器内に試料液を導入する試料液導入手段と
を具備することを特徴とする水質分析計の除湿装置。
【請求項2】
前記空気容器内の空気を加圧する加圧手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の水質分析計の除湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−337106(P2006−337106A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160153(P2005−160153)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】