説明

水質浄化用接触材

【課題】任意量の水質浄化用繊維を効率的に集積することができる水質浄化用接触材を提供する。
【解決手段】水質浄化用接触材11は、並列に配置された複数の接触材用糸13からなる毛羽部14と、複数の接触材用糸13を連結用糸15で連結することで形成される連結部16とを有する帯状接触材12を、連結部16を介して複数集積することで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質浄化用繊維から構成される水質浄化用接触材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水質浄化に用いられる接触材として、炭素繊維などの水質浄化用繊維から構成されるものがあった(例えば、特許文献1)。
接触材は水質汚濁の原因となる有機物等を分解する微生物を効率的に担持する目的で浄化対象となる水域内に配置されるため、繊維を接触材として用いる場合には、繊維を所定量に集積した状態で取り扱える方が好ましい。そのため、特許文献1においては、炭素繊維束の端部を軟質材で被覆し、この軟質材を介して炭素繊維束を水中に吊り下げるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−262579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように繊維束を直接軟質材で固定する場合には、加工作業に手間がかかるために量産に適さないという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、任意量の水質浄化用繊維を効率的に集積することができる水質浄化用接触材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、並列に配置された複数の接触材用糸から形成される毛羽部と、前記複数の接触材用糸を連結用糸で連結することで形成される連結部とを有する帯状接触材を、前記連結部を介して複数集積したことを要旨とする。
【0006】
上記構成によれば、帯状接触材は、並列に配置された複数の接触材用糸を連結用糸で連結することで得られるので、連結する接触材用糸の本数を任意に設定することができる。また、帯状接触材は連結部を介して効率的に集積することができるので、接触材用糸を水質浄化用繊維から構成することで、任意量の水質浄化用繊維を効率的に集積することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記連結部は、前記接触材用糸及び前記連結用糸を編んでなる編部又は前記接触材用糸及び前記連結用糸を織ってなる織部からなることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、連結部は接触材用糸及び連結用糸を編んでなる編部又は接触材用糸及び連結用糸を織ってなる織部からなるので、編み加工又は織り加工によって効率的に連結部を形成することができる。また、編み加工又は織り加工によれば、並列させる接触材用糸の本数や毛羽部及び連結部のサイズを任意に調整することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記連結用糸は、少なくとも一部に熱融着性繊維を含み、複数の前記帯状接触材が前記各連結部の熱融着により積層されたことを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、連結用糸は少なくとも一部に熱融着性繊維を含むため、連結部に加熱処理を施すことにより、連結用糸の熱融着により帯状接触材を効率的に積層することができる。そして、帯状接触材を複数積層することで、任意量の接触材用糸を立体的に集積することができる。これにより、線形状の接触材用糸から立体的な水質浄化用接触材を効率的に構成し、容積当たりの表面積を広く確保することができるので、水質浄化を効果的に行うことができる。また、立体的な積層構造を有することで、水底への載置など、水域への設置形態の自由度を確保することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の発明において、前記連結用糸は、前記接触材用糸よりも糸径が大きいことを要旨とする。
上記構成によれば、連結用糸は接触材用糸よりも糸径が大きいので、連結部は、該連結部から延びる毛羽部よりも厚くなる。したがって、連結部が抜け止めとなることにより、帯状接触材を効率的に固定することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の発明において、前記接触材用糸は、脂溶性のサイジング剤によってまとめられた複数本の炭素繊維から構成され、前記毛羽部には、前記連結用糸による連結後に前記サイジング剤を除去するための脱脂処理が施されていることを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、接触材用糸は水質浄化を担う微生物との親和性が高い炭素繊維から構成されるので、効率よく水質浄化を行うことができる。また、炭素繊維は脂溶性のサイジング剤によって接触材用糸としてまとめられているので、連結用糸による連結を効率的に行うことができる。そして、毛羽部には連結用糸による連結後に脱脂処理が施されるので、供用時には毛羽部を構成する炭素繊維を水中に拡散させ、効率よく水質浄化を行うことができる。また、水域に設置する前にサイジング剤を除去するので、浄化対象となる水域をサイジング剤で汚染することがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、任意量の水質浄化用繊維を効率的に集積することができる水質浄化用接触材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態における水質浄化用接触材の分解斜視図。
【図2】第1実施形態における帯状接触材を説明するための平面図。
【図3】(a)は熱融着のために重ねられた帯状接触材の模式図、(b)は熱融着により積層された帯状接触材によって構成される水質浄化用接触材の模式図。
【図4】第2実施形態における帯状接触材の平面図。
【図5】第2実施形態における帯状接触材を形成するための織物の平面図。
【図6】第3実施形態における帯状接触材を説明するための平面図。
【図7】第3実施形態における水質浄化用接触材を説明するための模式図。
【図8】第4実施形態における水質浄化用接触材の断面図。
【図9】第4実施形態における水質浄化用接触材を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、水質浄化用接触材11(11A)は、複数(本実施形態では3つ)の帯状接触材12(12A)が集積されることで構成される。
【0017】
帯状接触材12Aは、並列に配置された複数の接触材用糸13からなる毛羽部14(14A)と、複数の接触材用糸13を連結用糸15で連結することで形成される連結部16(16A)とを有する。そして、水質浄化用接触材11Aは、帯状接触材12Aが長手方向となる延伸方向Xに延びる連結部16Aを介して集積されることにより、幅方向Yに延びる毛羽部14Aが厚さ方向Zに積層される態様となっている。
【0018】
接触材用糸13は、脂溶性のサイジング剤(収束剤)によってまとめられた水質浄化用繊維としての複数本(例えば1,000〜12,000本)の炭素繊維13a(図3参照)から構成されている。なお、接触材用糸13を構成する炭素繊維13aの本数は任意に設定することができる。
【0019】
また、連結用糸15は加熱によって融解するとともに放熱に伴って凝固する熱融着性繊維と、加熱によって融解しにくい耐熱性繊維とを合糸したものを使用している。連結用糸15は熱融着性繊維のみから構成することも可能であるが、熱融着性繊維と耐熱性繊維との合糸とすることで、熱融着後も連結用糸15の形状を保持することができる。本実施形態では、連結用糸15に含まれる熱融着繊維の割合は約50%となっている。
【0020】
なお、熱融着性繊維としては、ポリアミド系合成繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等を採用することができる。また、耐熱性繊維は任意の材料を採用することができるが、親和性を確保するために熱融着性繊維と同系統の材料であることが望ましいため、本実施形態では熱融着性繊維、耐熱性繊維ともポリアミド系の合成繊維を採用している。
【0021】
次に、帯状接触材12Aの製造方法について説明する。
始めに、図2に示すように、全体として一定幅の帯状をなすように接触材用糸13を一定ピッチ(例えば1.5mmピッチ)で蛇行させることにより、接触材用糸13を延伸方向X(図2では左右方向)に沿って並列に配置する。そして、並列に配置された接触材用糸13の幅方向Yにおける中央部を複数(本実施形態では3本)の連結用糸15によって編むことで連結部16Aを形成する。この段階では、接触材用糸13の幅方向の両端部はループ状になっている。
【0022】
続いて、このループ状になった接触材用糸13の幅方向の両端部を、図2に一点鎖線Aで示す位置にて切断する。このように、ループ状の端部をカットして毛羽部14Aを直線状に構成することにより、供用時に炭素繊維13aが折れて脱落することを抑制するようにしている。これにより、連結部16から幅方向Yに沿う2方向に延びる接触材用糸13が延伸方向Xに沿って均一な密度で配置された毛羽部14Aが形成される。
【0023】
連結部16Aは接触材用糸13及び連結用糸15を編んでなる編部からなるため、延伸方向Xに沿って配置する接触材用糸13の本数及び連結用糸15の編み目数を増減することにより、水質浄化用接触材11の延伸方向Xにおける長さを容易に調整することができる。また、接触材用糸13の幅方向Yにおける蛇行幅を増減することで、毛羽部14Cの長さも5mm〜2mなど、任意に調整することができる。
【0024】
また、接触材用糸13の積層数を増減することで、水質浄化用接触材11の厚さを任意に調整することができる。さらに、接触材用糸13は連結用糸15により1本ずつ連結されているので、接触材用糸13の糸径や延伸方向Xのピッチを調整することにより、毛羽部14Aの密度についても任意に設定することができる。
【0025】
次に、帯状接触材12の脱脂処理について説明する。
接触材用糸13は、効率的に編み加工を施すために、複数本の炭素繊維13aが脂溶性のサイジング剤によってまとめられている。ただし、水質浄化用接触材11として供用される際には、毛羽部14が水中で適度に拡散することで、微生物の付着と汚濁物質の分解を促進することができる。そのため、連結用糸15によって接触材用糸13が連結された後には、少なくとも毛羽部14にサイジング剤を除去するための脱脂処理が施される。
【0026】
脱脂処理は、洗浄剤で毛羽部14を洗浄することで行うこともできるし、熱炉内に帯状接触材12を通過させて行うこともできる。そして、毛羽部14のみに脱脂処理を施した場合には、連結部16においてはサイジング剤によって炭素繊維13aの収束が保持されるため、炭素繊維13aの脱落を抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態においては連結用糸15による連結後に脱脂処理を施すため、水中で溶解する特殊なサイジング剤で収束された炭素繊維でなくても、水質浄化用繊維として用いることができる。すなわち、水中での利用を目的として水溶性のサイジング剤で収束された炭素繊維に限らず、一般に広く流通している、水溶性でないサイジング剤で収束された汎用性の炭素繊維を利用することが可能である。そして、水域に設置する前にサイジング剤を除去するので、浄化対象となる水域を水溶したサイジング剤で汚染することがない。
【0028】
次に、帯状接触材12の集積方法について説明する。
接触材を用いた水質浄化は、接触材に付着する微生物による汚濁物質の分解作用によるため、微生物の付着量を増やすために、容積当たりの表面積を広く確保することが好ましい。その点、線形状の接触材用糸13を立体的形状に集積することで、効率的に表面積を確保することができる。
【0029】
本実施形態において、連結用糸15は熱融着性繊維からなるため、帯状接触材12は連結部16を熱融着することで、立体的な積層構造を構成することができる。具体的には、まず、図3(a)に示すように、帯状接触材12を厚さ方向に複数(本実施形態では3つ)重ね合わせる。
【0030】
そして、重ねられた連結部16を厚さ方向Zに沿って押圧しつつ加熱することで、図3(b)に示すように3つの帯状接触材12が各連結部16の熱融着により積層される。また、接触材用糸13は複数本の炭素繊維13aからなるが、連結用糸15を熱融着することで、炭素繊維13aの脱落を抑制ことができる。なお、熱融着による積層は、脱脂処理の後に行うこともできるし、脱脂処理の前に行うこともできる。
【0031】
このような積層構造を有する水質浄化用接触材11は、杭やアンカーボルトで直接水域の底部や側面部に固定することもできるし、編みカゴ等に収容して水底に載置することもできる。
【0032】
以上説明した第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)帯状接触材12は、並列に配置された複数の接触材用糸13を連結用糸15で連結することで得られるので、連結する接触材用糸13の本数を任意に設定することができる。また、帯状接触材12は連結部16を介して効率的に集積することができるので、接触材用糸13を炭素繊維13aから構成することで、任意量の炭素繊維13aを効率的に集積することができる。
【0033】
(2)連結部16Aは接触材用糸13及び連結用糸15を編んでなる編部からなるので、編み加工によって効率的に連結部16Aを形成することができる。また、編み加工によれば、並列させる接触材用糸13の本数や毛羽部14A及び連結部16Aのサイズを任意に調整することができる。
【0034】
(3)連結用糸15は少なくとも一部に熱融着性繊維を含むため、連結部16に加熱処理を施すことにより、連結用糸15の熱融着により帯状接触材12を効率的に積層することができる。そして、帯状接触材12を複数積層することで、任意量の接触材用糸13を立体的に集積することができる。これにより、線形状の接触材用糸13から立体的な水質浄化用接触材11を効率的に構成し、容積当たりの表面積を広く確保することができるので、水質浄化を効果的に行うことができる。また、立体的な積層構造を有することで、水底への載置など、水域への設置形態の自由度を確保することができる。
【0035】
(4)連結用糸15を構成する熱融着性繊維の熱融着によって、接触材用糸13を構成する炭素繊維13aの脱落を抑制することができる。
(5)連結用糸15を構成する熱融着性繊維の熱融着によって、連結部16の定型性を増すことができる。したがって、水中において毛羽部14を構成する炭素繊維13aを偏りなく拡散させることができる。
【0036】
(6)接触材用糸13は水質浄化を担う微生物との親和性が高い炭素繊維13aから構成されるので、効率よく水質浄化を行うことができる。また、炭素繊維13aは脂溶性のサイジング剤によって接触材用糸13としてまとめられているので、連結用糸15による連結を効率的に行うことができる。
【0037】
(7)毛羽部14には連結用糸15による連結後に脱脂処理が施されるので、供用時には毛羽部14を構成する炭素繊維13aを水中に拡散させ、効率よく水質浄化を行うことができる。また、水域に設置する前にサイジング剤を除去するので、浄化対象となる水域をサイジング剤で汚染することがない。
【0038】
(8)単に水質浄化用繊維の一端側を固定して水中に吊り下げる場合には、付着する微生物層の重みや水の流れを考慮して強固な支持部材で水質浄化用繊維を保持する必要がある。そのため、設置場所が支持部材を固定可能な地点に限定される上、水面上に支持部材が現れて景観上好ましくない。その点、帯状接触材12から構成される水質浄化用接触材11は水底等に設置しても接触材用糸13を適度に拡散させることができるので、設置場所に対する制約が少ない。また、水質浄化用接触材11を水面下に配置することができるため、水辺の景観への影響を抑制することができる。
【0039】
(9)水質浄化用繊維の一端側を固定して水中に吊り下げた場合には、水質浄化用繊維の分布が偏ってしまう虞があるが、水質浄化用接触材11は延伸方向Xに延びる連結部16を介して固定されているので、接触材用糸13を水中に適度に分布させることができる。
【0040】
(10)水質浄化用繊維の一端側を固定して水中に吊り下げる場合には、表面積を確保するために長さを増すと、大きく揺らぎすぎて付着した微生物層が脱落してしまう虞がある。これに対して、水質浄化用接触材11は使用する水域の流れに応じて幅方向Yにおける毛羽部14の長さを増減することで接触材用糸13の揺らぎの度合いを調整しつつ、延伸方向Xにおける長さを増すことで表面積を確保することができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図4及び図5に基づいて説明する。
図4に示すように、本実施形態の水質浄化用接触材11(11B)を構成する帯状接触材12(12B)は、第1実施形態と同様に、並列に配置された複数の接触材用糸13からなる毛羽部14(14B)と、複数の接触材用糸13を連結用糸15で連結することで形成される連結部16(16B)とを有する。
【0042】
ただし、本実施形態においては、連結部16Bが接触材用糸13及び連結用糸15を織ってなる織部からなる点が第1実施形態と異なる。
次に、帯状接触材12Bの製造方法について説明する。
【0043】
始めに、図5に示すように、タテ糸としての接触材用糸13とヨコ糸としての連結用糸15とを帯状に織って織物17を形成する。そして、織物17の幅方向Yにおける中央部の連結用糸15を数本(ここでは3本)残し、これ以外の連結用糸15を抜き取る糸抜き加工を行う。
【0044】
これにより、図4に示すように、延伸方向Xに沿って均一な密度で配置され、残された連結用糸15によって構成される連結部16Bから幅方向Yに沿って2方向に延びる毛羽部14Bが形成される。そして、第1実施形態と同様に脱脂処理が施した上で、図3に示すように熱融着により積層することで、連結部16Bを介して複数の水質浄化用接触材11Bを集積し、水質浄化用接触材11Bを構成することができる。
【0045】
以上説明した第2実施形態によれば、上記(1),(3)〜(10)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(11)連結部16Bは接触材用糸13及び連結用糸15を織ってなる織部からなるので、織り加工によって効率的に連結部16Bを形成することができる。また、織り加工によれば、並列させる接触材用糸13の本数や毛羽部14B及び連結部16Bのサイズを任意に調整することができる。
【0046】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態を図6及び図7に基づいて説明する。
図6に示すように、本実施形態の水質浄化用接触材11(11C)を構成する帯状接触材12(12C)は、第1実施形態と同様に、並列に配置された複数の接触材用糸13からなる毛羽部14(14C)と、編部からなる連結部16(16C)とを有する。
【0047】
ただし、本実施形態においては、毛羽部14Cが連結部16Cから1方向に延びる態様となっている点と、連結用糸15に熱融着性繊維が含まれていない点が第1実施形態と異なる。なお、この場合の連結用糸15としては任意の素材を用いることができるが、例えば接触材用糸13と同じ炭素繊維を採用することができる。
【0048】
次に、帯状接触材12Cの製造方法について説明する。
まず、図6に示すように、全体として一定幅の帯状をなすように接触材用糸13を一定ピッチで蛇行させることにより、接触材用糸13を延伸方向Xに沿って並列に配置する。そして、並列に配置された接触材用糸13の幅方向Yにおける両端部をそれぞれ複数(本実施形態では2本)の連結用糸15によって編むことで連結部16Cを形成する。
【0049】
続いて、接触材用糸13の幅方向Yにおける中央部を切断することで、連結部16Cから幅方向Yに沿って1方向に延びる毛羽部14Cを有する帯状接触材12Cが2つ製造される。なお、帯状接触材12Cは、隣接する毛羽部14Cの端部がループ状に繋がっているので、接触材用糸13の脱落が抑制される。
【0050】
そして、帯状接触材12Cについては、第1実施形態と同様に脱脂処理が施された上で、図7に示すように、保持板18に対して連結部16Cを介して集積することで、水質浄化用接触材11Cを構成することができる。
【0051】
保持板18は、一面側に複数の埋め込み穴19が形成されている。
帯状接触材12Cは、個別に渦巻き状に巻くことで毛羽部14Cを積層状態とし、有底円筒形状の編みカゴ20にセットしてワイヤー等で固定した上、各埋め込み穴19に埋め込まれる。これにより、各帯状接触材12Cは連結部16Cを介して保持板18に固定されるとともに、毛羽部14Cを構成する接触材用糸13を保持板18の一面側に株状に集積することができる。
【0052】
このように構成された水質浄化用接触材11Cは、保持板18を介して水域の底面や側面に載置又は固定することができる。そして、各埋め込み穴19の間隔を毛羽部14Cの長さに応じて調整することにより、接触材用糸13を構成する炭素繊維13aを適切に拡散させることができる。なお、各帯状接触材12Cは編みカゴ20を介さず、埋め込み穴19に直接固定するようにしてもよい。
【0053】
以上説明した第3実施形態によれば、上記(1),(2),(6)〜(10)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(12)連結部16は連結用糸15から構成されるために柔軟性に富み、帯状接触材12を渦巻き状など、任意の形状に集積することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態を図8及び図9に基づいて説明する。
【0054】
図8に示すように、本実施形態の水質浄化用接触材11(11D)を構成する帯状接触材12(12D)は、第3実施形態と同様に、編部からなる連結部16(16D)と、連結部16Dから1方向に延びる毛羽部14(14D)とを有する。
【0055】
ただし、本実施形態においては、接触材用糸13よりも糸径が大きい1本の連結用糸15で並列に配置された接触材用糸13を編むことで連結部16Dを形成している点が第3実施形態と異なる。なお、連結用糸15は熱融着性繊維が一部に混在された炭素繊維束から構成されている。
【0056】
また、帯状接触材12Dには、第1実施形態と同様に脱脂処理が施された上で、連結部16Dに対して、加熱処理が施される。このとき、連結用糸15に含まれる熱融着性繊維の熱融着により、接触材用糸13を構成する炭素繊維13aの脱落が抑制される一方、連結用糸15を構成する炭素繊維により、連結部16Dの厚みを保持することができる。
【0057】
そして、帯状接触材12Dについては、連結部16Dを保持可能な保持部22を複数有する固定具23に対して集積することで水質浄化用接触材11Dを構成することができる。
【0058】
固定具23には、延伸方向Xが長手方向となる保持部22が周方向に沿って複数(本実施形態では4つ)設けられている。各保持部22は断面視略C字形状をなしているため、延伸方向Xに沿って帯状接触材12Dをスライド移動させつつ、各保持部22に連結部16Dを挿通する。なお、熱融着性繊維の熱融着により連結部16Dの定型性を増すことができるため、保持部22への挿通をより容易に行うことができる。
【0059】
この場合には、接触材用糸13よりも糸径が大きい連結用糸15からなる連結部16Dが抜け止めとなることにより、帯状接触材12Dを効率的に集積することができる。これにより、保持部22の周囲に複数の毛羽部14Dが立体的に配置された水質浄化用接触材11Dを構成することができる。
【0060】
なお、連結部16Dの熱融着により帯状接触材12Dを複数積層したものを保持部22に装着するようにしてもよい。この場合には、連結部16Dは毛羽部14Dよりも厚みがあるため、隣接する毛羽部14Dの間に隙間が生じる。これにより、毛羽部14Dを構成する炭素繊維13aを拡散させるスペースを確保することができる。
【0061】
水質浄化用接触材11Dは、図9に示すように枠体24に取り付けることで、例えば水路や水槽における水質浄化に好適に用いることができる。なお、固定具23は捻りが加えられた螺旋状にしてもよいし、弾性変形可能な素材から構成して、一端側のみを固定するようにしてもよい。また、保持部22の数も任意に設定することができる。
【0062】
以上説明した第4実施形態によれば、上記(1)〜(10)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(13)連結用糸15は接触材用糸13よりも糸径が大きいので、連結部16Dは、連結部16Dから延びる毛羽部14Dよりも厚くなる。したがって、連結部16Dが抜け止めとなることにより、帯状接触材12Dを効率的に固定することができる。
【0063】
(14)接触材用糸13を1本の連結用糸15で連結しているので、簡易な構成で連結部16Dを形成することができるとともに、連結部16Dの幅方向Yにおける長さを短くすることができる。これにより、水質浄化を担う毛羽部14Dの配置スペースをより大きく確保することができる。
【0064】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・連結用糸15をサイジング剤によってまとめられた炭素繊維束から構成してもよいし、一部に熱融着性繊維を含む炭素繊維束としてもよい。
【0065】
・連結部16から1方向に延びる毛羽部14を有する複数の帯状接触材12を各連結部16の熱融着により積層することで、水質浄化用接触材11を構成してもよい。
・水溶性のサイジング剤によってまとめられた炭素繊維束から構成される接触材用糸を用いてもよい。この場合には、脱脂処理を行う必要はない。
【0066】
・接触材用糸13は炭素繊維束から構成されるものに限らず、例えばポリアミド系合成繊維、塩化ビニデリン繊維又はポリエチレン繊維等、任意の繊維から構成することができる。
【0067】
・第1実施形態において、接触材用糸13のループ状となった幅方向の両端部をカットせずに使用してもよい。
・水質浄化用接触材11は、フロートやアンカーで一端又は両端を固定することで水域に設定するようにしてもよい。
【0068】
・帯状接触材12は、熱融着に限らず、縫製や薬剤を用いた接着により連結部16を接合することで積層するようにしてもよい。
・接触材用糸13と連結用糸15の糸径を等しくしてもよいし、接触材用糸13の糸径を連結用糸15よりも大きくしてもよい。
【0069】
・第2実施形態において、織物17の幅方向Yにおける中央部の連結用糸15を数本残し、これ以外の連結用糸15を抜き取る糸抜き加工を行うのではなく、幅方向Yに沿って間欠的に複数本の連結用糸15からなる織部が形成されるように織り加工を施してもよい。この場合には、連結用糸15を抜き取る糸抜き加工を省略することができるとともに、糸抜き加工に伴う廃却糸の発生を防止することができる。
【0070】
上記各実施形態及び変形例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記帯状接触材は、長手方向となる延伸方向に延びる前記連結部が、前記延伸方向と交差する幅方向に延びる前記毛羽部よりも、前記延伸方向及び前記幅方向と交差する厚さ方向における厚みが厚くなるように構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の水質浄化用接触材。
【0071】
この構成によれば、連結部が抜け止めとなることにより、連結部を介して帯状接触材を効率的に固定することができる。また、連結部は毛羽部よりも厚みがあるため、帯状接触材を厚さ方向に積層した場合に、厚さ方向に隣接する毛羽部の間に隙間が生じる。これにより、毛羽部を構成する水質浄化用繊維を拡散させるスペースを確保することができる。
【符号の説明】
【0072】
11,11A,11B,11C,11D…水質浄化用接触材、12,12A,12B,12C,12D…帯状接触材、13…接触材用糸、13a…炭素繊維、14,14A,14B,14C,14D…毛羽部、15…連結用糸、16,16A,16B,16C,16D…連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置された複数の接触材用糸から形成される毛羽部と、前記複数の接触材用糸を連結用糸で連結することで形成される連結部とを有する帯状接触材を、前記連結部を介して複数集積したことを特徴とする水質浄化用接触材。
【請求項2】
前記連結部は、前記接触材用糸及び前記連結用糸を編んでなる編部又は前記接触材用糸及び前記連結用糸を織ってなる織部からなることを特徴とする請求項1に記載の水質浄化用接触材。
【請求項3】
前記連結用糸は、少なくとも一部に熱融着性繊維を含み、
複数の前記帯状接触材が前記各連結部の熱融着により積層されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水質浄化用接触材。
【請求項4】
前記連結用糸は、前記接触材用糸よりも糸径が大きいことを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の水質浄化用接触材。
【請求項5】
前記接触材用糸は、脂溶性のサイジング剤によってまとめられた複数本の炭素繊維から構成され、
前記毛羽部には、前記連結用糸による連結後に前記サイジング剤を除去するための脱脂処理が施されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の水質浄化用接触材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−264340(P2010−264340A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115869(P2009−115869)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(596024426)槌屋ティスコ株式会社 (47)
【Fターム(参考)】