説明

水質浄化装置

【課題】拡散器から噴射する気泡が散逸することを防ぎ、前記気泡を最大限利用しうる水質浄化装置を提供する。
【解決手段】閉鎖水域や水質汚濁の認められる開放水域に設置され、前記閉鎖水域又は開放水域の汚濁水を水質浄化して浄化水とする水質浄化装置1であって、下部に汚濁水を取り込む流入口21を、上部に浄化水を吐き出す流出口22を設けた筒体形状の閉鎖容体2と、流入口21と流出口22とを結ぶ上下方向に閉鎖容体2の内部を区画する浄化隔壁3と、浄化隔壁3より下方に配置され、前記浄化隔壁3に向けて気泡を噴射する拡散器4とから構成される水質浄化装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の流出入が比較的少ない閉鎖水域である湖沼、ダム、貯水池や、水の流出入はあるが水質汚濁の認められる開放水域である河川、海、水路、上下水道等の汚濁水を水質浄化して浄化水とする水質浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水の流出入が比較的少ない閉鎖水域である貯水池は、水質汚濁しやすい。この貯水池の水質汚濁は、下水(工場排水、家庭排水)や浮遊物質が混入する一方、水の流出入が少ないことから水中の酸素が欠乏し、水棲生物の死骸が適切に分解されないことに起因して生ずる。水質汚濁がひどくなれば、微生物や水棲生物の死骸が腐敗してスカムが生じ、更に水質が悪化する。そこで、こうした水の流出入が比較的少ない閉鎖水域の貯水池に水質浄化装置を設置し、水質浄化が図られる。
【0003】
特許文献1は、貝殻(カキ殻)を充填した樹脂筒(円樹脂筒状のネット)を間隔を空けて並べて層とし、各層の樹脂筒の向きを直交させながら重ねて外枠を組み付け、最下層下方に設けた拡散器から各層を貫通して対流パイプを立設し、外部から連結パイプを通して拡散器と対流パイプとに空気を供給する水質浄化装置を提案する。特許文献1の水質浄化装置は、樹脂筒に充填した貝殻に好気性菌を繁殖させ、この好気性菌により水棲生物の死骸を分解して水質浄化を図る。拡散器は、貝殻に付着する微生物又は水棲生物の死骸、分解物や汚泥を気泡により払い落とすほか、貝殻に酸素を供給して前記好気性菌の繁殖を促進させ、また貝殻からのミネラルを拡散させ、そして曝気作用も発揮し、質の高い水質浄化を実現する(特許文献1[0007][0008])。
【0004】
【特許文献1】特許第3393962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する水質浄化装置は、各層を構成する樹脂筒に充填した貝殻による浄化作用と、最下層下に配置された拡散器による曝気作用との相乗作用により、質の高い水質浄化を実現する、とされる。確かに、貝殻による浄化作用や拡散器による曝気作用は、それぞれ発揮されると考えられるが、両者の相乗作用は十分でない。すなわち、拡散器から噴射された気泡は、できるだけ抵抗のない経路を辿って上昇しようとするため、貝殻が充填された樹脂筒を避け、樹脂筒の間や水質浄化装置外を通って上昇する割合が少なくない。これでは、貝殻による浄化作用と拡散器による曝気作用との相乗作用が完全に発揮されることがなくなる。
【0006】
また、気泡が樹脂筒を避けるということは、貝殻に付着する微生物又は水棲生物の死骸、分解物や汚泥を気泡により払い落とすことができないことを意味し、やがて貝殻による浄化作用が発揮できなくなる虞をもたらす。このほか、特許文献1が開示する水質浄化装置は、気泡を集約してエアポンプの働きによる浄化を終えた浄化水を水面に向けて押し上げる働きを有するが、実際には前記気泡がエアポンプに集約せず、十分に浄化水を押し上げることができない。そこで、特許文献1が開示する水質浄化装置を基本としながら、気泡が散逸することによる問題を解決すべく、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
検討の結果、閉鎖水域や水質汚濁の認められる開放水域に設置され、前記閉鎖水域又は開放水域の汚濁水を水質浄化して浄化水とする水質浄化装置であって、下部に汚濁水を取り込む流入口を、上部に浄化水を吐き出す流出口を設けた筒体形状の閉鎖容体と、流入口と流出口とを結ぶ上下方向に閉鎖容体の内部を区画する浄化隔壁と、浄化隔壁より下方に配置され、前記浄化隔壁に向けて気泡を噴射する拡散器とから構成される水質浄化装置を開発した。本発明の水質浄化装置は、閉鎖水域や水質汚濁の認められる開放水域の水底に沈設する設置態様を基本とするが、水中又は水面に倣って浮かぶ設置態様でもよいし、流入口及び流出口を水中とパイプで結ぶことにより陸上に設置しても構わない。
【0008】
本発明の水質浄化装置は、気泡を閉鎖容体の内部を移動して浄化隔壁にすべての気泡を接触させる点を特徴とする。拡散器から噴射された気泡は、曝気作用を発揮しながら上昇し、浄化隔壁に達する。この気泡の移動は、浄化隔壁に向けて汚濁水を押し上げる。このとき、気泡及び汚濁水は必ず浄化隔壁を通過するので、浄化隔壁の浄化作用が発揮される。浄化隔壁に付着する汚濁物質は、気泡の接触により払い落とされ、浄化隔壁の浄化作用の低下が防止される。そして、浄化隔壁の通過により水質浄化された汚濁水は浄化水として閉鎖容体の流出口から排出される。これから、拡散器から気泡を噴射している限り、流入口から流出口に向けての汚濁水又は浄化水の流れは維持される。
【0009】
閉鎖容体は、下部に汚濁水を取り込む流入口を、上部に浄化水を吐き出す流出口を設けた筒体形状であればよいが、円滑な気泡の上昇を確保する観点から、断面形状が一定の筒体形状であることが好ましいが、断面形状が一様に小さくなる錐体形状であってもよい。ここで、本発明の水質浄化装置は沈設すると、閉鎖容体の底面は水底に埋没するので、流入口は閉鎖容体の下部における側面に設けるとよい。また、上昇する気泡及び浄化水を抵抗なくそのまま上昇させ続ける観点から、流出口は閉鎖容体の上面を開放した開口として構成するとよい。これから、鋼材を組み付けた平面視方形のフレームの側面に側版(鋼板等)を取り付けた閉鎖容体の場合、例えばフレームの最下部が覗くように側版を取り付けて前記フレームが覗く部分を流入口とし、側版を取り付けないフレームの上面を開放した開口である流出口とする。
【0010】
浄化隔壁は、浄化作用を有する通水性の仕切壁であり、通過させる汚濁水に接触して水質浄化を図り、前記汚濁水を浄化水にする。拡散器は、汚濁水及び浄化水の流れを形成する気泡の噴射源であり、気泡の噴射により前記汚濁水及び浄化水に対して曝気作用を働かせる。汚濁水を水質浄化して浄化隔壁に付着する汚濁物質は、拡散器から噴射される気泡により払い落とされ、閉鎖容体の内部に堆積する。ここで、浄化隔壁が貝殻を有する場合、貝殻に付着した好気性菌が汚濁物質を分解し、閉鎖容体の内部に堆積する汚濁物質の量を減らすことができる。更に、拡散器から噴射される気泡は、前記好気性菌の繁殖を促進させ、また貝殻からのミネラルを拡散させる。
【0011】
本発明の水質浄化装置は、浄化隔壁が1段であってもよいが、好ましくは浄化隔壁を複数段として、流入口と流出口とを結ぶ上下方向に閉鎖容体の内部を複数に区画し、拡散器は、最下段の浄化隔壁より下方に配置され、前記浄化隔壁に向けて気泡を噴射させるとよい。浄化隔壁を多段に有する水質浄化装置は、浄化隔壁の段数だけ浄化作用が繰りかえされて発揮されるので、水質浄化の能力を高めることができる。浄化隔壁は、気泡や汚濁水及び浄化水が上昇する際の抵抗となる。これから、浄化隔壁の上下方向の厚みはあまり厚くない方が好ましく、単位面積当たり10cm〜20cm厚が目安となる。また、浄化隔壁の段数は、前記上下方向の厚みの場合、2段〜5段が目安となる。
【0012】
浄化隔壁は、浄化作用を発揮しながら通水性を備える壁部材により構成することも考えられるが、現実的な浄化隔壁は、閉鎖容体の内部に架け渡した通水面に、多孔体を敷き詰めて構成される。ここで、通水面は、エキスパンドメタルやパンチングメタルで構成される多孔面のほか、鋼材を組み付けた格子面を含む。また、多孔体は、貝殻、砂礫、珊瑚砂、凹凸のあるコンクリートブロック又は多孔質セラミックスの一種又は数種の組み合せにする。この場合、取り扱いの利便性を確保するため、多孔体は、貝殻、砂礫、珊瑚砂、凹凸のあるコンクリートブロック又は多孔質セラミックスの一種又は数種の組み合せであり、前記多孔体を充填した通水体を通水面に載置することにより前記通水面に敷き詰めるとよい。多孔体は、通水体の単位で通水面に敷き詰めたり、取り除くことができる。ここで、通水体とは、一定量の多孔体をまとめて取り扱えるようにする容器又は袋を意味し、内部に充填された多孔体に水が接触できるように、前記容器はエキスパンドメタルやパンチングメタル等の剛性を備えた通水面により構成され、袋は金属製網又は合成樹脂製網等から構成される。
【0013】
流入口から流出口に向けての汚濁水又は浄化水の流れは、拡散器から噴射される気泡により形成される。しかし、拡散器による気泡の噴射だけでは、形成される汚濁水又は浄化水の流れは弱い。そこで、閉鎖容体は、上方に向けて開口する流出口に錐形状又は錐台形状の蓋を被せ、前記蓋の頂点から上方に延びるガイドパイプを突設することにより、錐形状又は錐台形状の蓋から前記ガイドパイプに向けて気泡を集約し、上昇させて、エアポンプを形成するとよい。これにより、浄化水は、前記エアポンプにより強制的に上昇されられ、浄化隔壁を挟んだ上方の閉鎖容体の内部の圧力が、浄化隔壁を挟んだ下方の閉鎖容体の内部の圧力より相対的に低くなる。このようにして、浄化隔壁を挟んだ圧力差が生ずる結果、汚濁水又は浄化水の流れが形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水質浄化装置は、特許文献1に見られたように、拡散器から噴射される気泡が散逸せず、閉鎖容体の内部に閉じこめられて上昇し、前記閉鎖容体の内部を上下方向に区画する浄化隔壁に気泡の全部が接触することになり、浄化隔壁による浄化作用と気泡による曝気作用との相乗作用が遺憾なく発揮される効果がある。これは、本発明の水質浄化装置の浄化能力が従来に比べて向上していることを意味する。
【0015】
また、本発明の水質浄化装置は、多孔体を充填した通水体を通水面に敷き詰めて浄化隔壁を構成する場合、多孔体を通水体単位で取り扱えることにより、新たな効果も得られる。具体的には、多孔体を充填した通水体を通水面に敷き詰めて浄化隔壁を構成する本発明の水質浄化装置は、製造の手間、労力及びコストが大幅に低減される。また、通水体単位で多孔体を交換できることから、水質浄化装置を設置後、浄化期間の経過に応じて浄化隔壁を構成する多孔体の種類を変化させることができる。このように、本発明の水質浄化装置は、製造及び運用の各面において利便性が高められる効果を得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明を適用した水質浄化装置1の設置状態を表す斜視図、図2は本例の水質浄化装置1における各部の組付関係を表す分解斜視図、図3は本例の水質浄化装置1の使用状態を表す断面図であり、図4は異なる多孔体6,7で構成される別例の浄化隔壁3を表す部分断面図である。本例の水質浄化装置1は、閉鎖水域や水質汚濁の認められる開放水域にの水底に沈設する比較的小型であるが、ガイドパイプ81を突出した蓋8を流出口22に被せた構成で、通水面31上に通水体51に充填した多孔体5を前記通水体51の単位で敷き詰めて構成される浄化隔壁3,3を上下2段のみとしている。
【0017】
本例の水質浄化装置1は、図1及び図2に見られるように、アングル材を直方体形状に組み付けてフレーム23を構成し、前記フレーム23内に鉄格子を溶接により固定して上下2段の通水面31を形成している。通水面31は、上方に鋼棒を周回させた補助桟32を有し、フレーム23、通水面31及び補助桟32に囲まれる収納空間に、多孔体5を敷き詰めて浄化隔壁3を構成する。本例の多孔体5は、数cm大に砕かれた貝殻(例えばカキ殻)で、樹脂ネット袋からなる通水体51に充填され、前記通水体51の単位で通水面31に敷き詰める。通水体51は、通水面31に固定されないが、通水体51に充填された多孔体5は重量物であり、後述するように、フレーム23の側面に側版24が取り付けられるので、通水面31及び補助桟32に囲まれる収納空間から逸脱する虞はない。
【0018】
閉鎖容体2は、上記フレーム23の側面に鋼板からなる側版24を取り付けて構成される。フレーム23に対する側版24の取付は、従来公知の各種手段を用いることができる。例えばフレーム23に対してボルトやネジを締め付ける場合は側版24を取り外し可能であるため、多孔体5の交換に便利である。また、側版24の取付強度を確保するため、フレーム23に対して側版24を溶接してもよい。この場合、多孔体5の交換のため、いずれかの側版24に前記多孔体5交換用のアクセス扉を設けるとよい。側版24は、拡散器4から噴射された気泡Aを拡散させることなく、2段の浄化隔壁3,3に前記気泡Aを必ず接触させる働きと、浄化隔壁3を外部から隠して保護する働きとを併せ有する。
【0019】
側版24は、フレーム23の上端に上縁を揃え、前記フレーム23の下端から一定高さに下縁を揃えて取り付けられる。本例は、下段の通水面31が隠れる高さに側版24の下縁を揃えている。これにより、四方の側版24に囲まれたフレーム23の上端面が流出口22となり、また側版24の下縁より下方が四方に開いた流入口21となる。流入口21は、閉鎖容体2の内部に汚濁水B(図3参照)を取り込む入口であると共に、本例では浄化隔壁3の直下に配置する拡散器4の挿入口を兼ねている。また、流出口22は、被せられた蓋8で隠されており、流出口22が出て行く浄化水C(図3参照)を蓋8の内面に沿って集約し、ガイドパイプ81を通じて排出するようにしている。
【0020】
本例の拡散器4は、閉鎖容体2に収まる長さの筒体で、多数の噴気孔41を設け、接続された供給パイプ42を通じて地上設備(図示略)から送られてくる圧縮空気を前記噴気孔41から噴射する構成で、上述したように、閉鎖容体2の側版24の下方に開口する流入口21から差し込み、浄化隔壁3の直下に配置する。本例の水質浄化装置1は、フレーム23のアングル材を下方に突出させて閉鎖容体2の脚部としており、そのまま沈設すると前記脚部が水底に沈降し、流入口21が塞がれてしまうことから、前記脚部の沈降を防止する鋼板製の沈降防止板25をアングル材の下端に溶接している。拡散器4は、前記沈降防止板25に、従来公知の各種固定手段により固定している。沈降防止板25はアングル材に固着する必要はなく、水底に置いた沈降防止板25に水質浄化装置1を載せるようにしてもよい。
【0021】
本例は、流入口21から流出口22に向けての汚濁水B又は浄化水Cの流れを、明確かつ安定して形成するため、閉鎖容体2の流出口22に対して四角錐台形状の蓋8を被せ、前記蓋8の頂点から上方に延びる断面円形のガイドパイプ81を突設している。これにより、蓋8から前記ガイドパイプ81に向けて気泡Aが集約され、ガイドパイプ81内をまとまった気泡Aを上昇させてエアポンプが形成され、浄化水Cを強制的に上昇させることができる(図3参照)。蓋8の外形状は自由であるが、本例の閉鎖容体2が直方体形状のフレーム23に従った平面視正方形であるため、蓋8の外形状を四角錐台形状としている。同様に、ガイドパイプ81の外形状も自由であるが、入手しやすいことと、上昇させる気泡Aの形状を平面視円形で安定して形成することとを理由として、本例は断面円形のガイドパイプ81を用いている。
【0022】
ガイドパイプ81による浄化水Cの強制的な上昇は、蓋8に囲まれた空間、すなわち上段の浄化隔壁3を挟んだ上方の閉鎖容体2の内部の圧力を、前記浄化隔壁3を挟んだ下方の閉鎖容体2の内部の圧力より相対的に低くして圧力差を作り出す。これにより、浄化隔壁3を挟んだ汚濁水B又は浄化水Cの流れが形成される。こうした上下方向の圧力差は、閉鎖容体2の内部で上下方向にわたって連鎖するため、閉鎖容体2全体として上方に向けた汚濁水B又は浄化水Cの流れが形成される。そして、この汚濁水B又は浄化水Cの流れは、少なからず気泡Aを各浄化隔壁3の多孔体5に押し当てる働きを有し、多孔体5に付着した汚濁物質をよりよく払い落とせるようにする。
【0023】
本例の水質浄化装置1は、図3に見られるように、水底に沈降防止板25を接面して沈設され、拡散器4から気泡Aを噴出させることにより、浄化作用を発揮する。すなわち、拡散器4は、噴射された気泡Aにより汚濁水Bに曝気作用を働かせながら閉鎖容体2の内部で前記汚濁水Bを上昇させていく。図3中、下段の浄化隔壁3に至る前の汚濁水Bを太実線矢印で示す。本例は、ガイドパイプ81によるエアポンプの働きにより、前記汚濁水Bの流れはより強く現れ、前記流れを補う形で流入口21から閉鎖容体2の内部へ取り込まれる。そして、下段の浄化隔壁3に達した汚濁水Bは、汚濁物質を多孔体5に付着させて浄化される。このとき、多孔体5に付着した汚濁物質は、多孔体5に繁殖した好気性菌に分解されるほか、上昇してきた気泡Aが衝突して払い落とされる。また、気泡Aは、好気性菌の繁殖を促進する。更に、本例の多孔体5は貝殻なので、ミネラル等の栄養分を浄化水Cに流出、拡散させる利点もある。
【0024】
ここで、気泡Aは、エアポンプの形成に寄与して汚濁水B及び浄化水Cの流れを形成するために有用で、前記流れが浄化隔壁3に汚濁水Bを導いて浄化作用を発揮させると共に、前記浄化作用による浄化隔壁3(正確には多孔体5)に付着した汚濁物質を払い落とし、浄化隔壁3による浄化作用を永続させる働きを有する重要な役割を有している。本発明は、こうした気泡Aを閉鎖容体2の内部に閉じこめて移動させ、浄化隔壁3にすべての気泡Aを接触させる点を特徴とする。加えて、浄化隔壁3を構成する多孔体5を貝殻又は貝殻を含む構成にすると、好気性菌による汚濁物質の分解やミネラル等の流出、拡散も期待できるが、これらも気泡Aの働きによりよりよく発揮される。このように、本発明は気泡Aを無駄なく利用する点に特徴を有している。
【0025】
本例の水質浄化装置1は、浄化隔壁3が2段あるため、上述のように、一定の浄化作用を受けた汚濁水Bは、再び上段の浄化隔壁3によって同様の浄化作用を受け、浄化水Cとなる。図3中、上段及び下段の浄化隔壁3,3間の汚濁水Bを太破線矢印で、また上段の浄化隔壁3から上方の浄化水Cを細実線矢印でそれぞれ示す。各浄化隔壁3による浄化作用の程度は、汚濁水Bの汚濁の程度のほか、浄化隔壁3の構成、拡散器4から噴射される気泡Aの量、そして主としてエアポンプの働きによる汚濁水B及び浄化水Cの流れの速度及び量等により左右されるが、浄化作用を高めるには浄化隔壁3の段数を複数にすることが望ましい。この場合、浄化隔壁3は気泡Aや汚濁水B及び浄化水Cが上昇する際の抵抗となるため、例えば単位面積当たり10cm〜20cm厚の浄化隔壁3を前記厚さと同じ間隔で上下段に積み重ねるとき、目安として2段〜5段にすることが適当である。
【0026】
本例は、通水面31に通水体51に充填した多孔体5を敷き詰める構成であったが、予め定められた収納空間に敷き詰めることを鑑みた場合、図4に見られるように、前記収納空間の寸法を等分割りして形成されたブロック状の多孔体6,7を組み合せて敷き詰めるようにしてもよい。別例の多孔体6は多孔質セラミックス、多孔体7は砕いた貝殻をセメントで一体にしたものである。両者は、別例のように組み合せて用いることができるが、それぞれ単独で用いてもよい。ブロック状の多孔体6,7は、収納空間の寸法を等分割りして形成されているので、無駄なく通水面31に敷き詰めることができる。このほか、図示を省略するが、上記通水体51に充填した多孔体5とブロック状の多孔体6,7を組み合せて通水面31に敷き詰めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用した水質浄化装置の設置状態を表す斜視図である。
【図2】本例の水質浄化装置における各部の組付関係を表す分解斜視図である。
【図3】本例の水質浄化装置の使用状態を表す断面図である。
【図4】異なる多孔体で構成される別例の浄化隔壁を表す部分断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 水質浄化装置
2 閉鎖容体
21 流入口
22 流出口
23 フレーム
24 側版
3 浄化隔壁
31 通水面
4 拡散器
41 噴気孔
5 多孔体
51 通水体
8 蓋
81 ガイドパイプ
A 気泡
B 汚濁水
C 浄化水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖水域や水質汚濁の認められる開放水域に設置され、前記閉鎖水域又は開放水域の汚濁水を水質浄化して浄化水とする水質浄化装置であって、下部に汚濁水を取り込む流入口を、上部に浄化水を吐き出す流出口を設けた筒体形状の閉鎖容体と、流入口と流出口とを結ぶ上下方向に閉鎖容体の内部を区画する浄化隔壁と、浄化隔壁より下方に配置され、前記浄化隔壁に向けて気泡を噴射する拡散器とから構成される水質浄化装置。
【請求項2】
浄化隔壁は、複数段あり、流入口と流出口とを結ぶ上下方向に閉鎖容体の内部を複数に区画し、拡散器は、最下段の浄化隔壁より下方に配置され、前記浄化隔壁に向けて気泡を噴射する請求項1記載の水質浄化装置。
【請求項3】
浄化隔壁は、閉鎖容体の内部に架け渡した通水面に、多孔体を敷き詰めて構成した請求項1又は2いずれか記載の水質浄化装置。
【請求項4】
多孔体は、貝殻、砂礫、珊瑚砂、凹凸のあるコンクリートブロック又は多孔質セラミックスの一種又は数種の組み合せである請求項3記載の水質浄化装置。
【請求項5】
多孔体は、貝殻、砂礫、珊瑚砂、凹凸のあるコンクリートブロック又は多孔質セラミックスの一種又は数種の組み合せであり、前記多孔体を充填した通水体を通水面に載置することにより前記通水面に敷き詰めた請求項3記載の水質浄化装置。
【請求項6】
閉鎖容体は、上方に向けて開口する流出口に錐形状又は錐台形状の蓋を被せ、前記蓋の頂点から上方に延びるガイドパイプを突設した請求項1〜3いずれか記載の水質浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−95803(P2009−95803A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271760(P2007−271760)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(592060307)海洋建設株式会社 (6)
【Fターム(参考)】