説明

水路の漏水箇所の特定方法

【課題】 水路の漏水箇所をピンポイントで特定できるようにすることである。
【解決手段】 水路20の漏水検査の対象区域20aの少なくとも下流端21を角落し31で区画して漏水検査の対象区域20aを設定する第1工程と、漏水検査の対象区域20aに水を溜める第2工程と、前記水を溜めた漏水検査の対象区域内20aに、おが屑と水とを攪拌混合したおが屑混合水を入れる第3工程と、前記第3工程の後、前記おが屑が沈降した後に、前記漏水検査の対象区域20a内の排水をする第4工程と、を備えることを特徴とする水路20の漏水箇所26の特定方法。ここで、前記第3工程において、前記おが屑混合水の吐出部40を水路の方向28に移動可能とする。また、前記おが屑混合水の吐出部40は、漏水検査の対象区域20a内の水面29に浮く浮体であり、吐出部40から前記おが屑混合水が水平方向に吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電所の導水路等の水路の漏水箇所の特定方法に関し、特に漏水箇所をピンポイントで特定することができる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水力発電所等の導水路等の水路からの漏水が発生した場合、例えば延長数kmもある広範囲な水路内から漏水の原因となっている箇所をピンポイントで特定することは困難であった。このため、水路の広範囲にわたって補修をする必要があった(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−231095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の従来例では、水路の広い範囲にわたって漏水の補修をするので、補修のための工事期間が長くなり、また、水路の全体でなく漏水の可能性がある箇所を補修する場合には漏水箇所の補修もれが発生しやすく、防水効果の面で充分ではないという問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、水路の漏水箇所をピンポイントで特定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、水路の漏水検査の対象区域の少なくとも下流端を仕切り板で区画して前記漏水検査の対象区域を設定する第1工程と、前記漏水検査の対象区域に水を溜める第2工程と、前記水を溜めた漏水検査の対象区域内に、おが屑と水とを攪拌混合したおが屑混合水を入れる第3工程と、前記第3工程の後、前記おが屑が沈降した後に、前記漏水検査の対象区域内の排水をする第4工程と、を備えることを特徴とする水路の漏水箇所の特定方法である。
これにより、水路の漏水検査の対象区域の少なくとも下流端を仕切り板(例えば角落し)で仕切って、この区域に水を溜めて、この区域をプール状にすることができる。そして、このプール状の区域におが屑混合水を入れると、おが屑混合水に含まれるおが屑が前記プール状区域の水中に沈降する。その際、前記プール状区域の側壁および底部に漏水箇所があると、沈降したおが屑が前記漏水箇所に引き寄せられて前記漏水箇所に吸着される。その後、前記検査対象区域の排水をすると、前記漏水箇所に吸着されたおが屑がこぶ状に残るので、前記漏水箇所を容易に発見することができる。
【0005】
さらに、請求項2記載の発明は、請求項1に記載した水路の漏水箇所の特定方法であって、前記第3工程において、前記おが屑混合水の吐出部を水路の方向に移動可能とすることを特徴とする水路の漏水箇所の特定方法である。ここにおいて、「水路の方向」は、水路の流れの上流から下流に向かう方向および下流から上流に向かう方向を示す。
これにより、前記おが屑混合水の吐出部を水路の流れの方向に移動させて、おが屑混合水を水路の方向の各位置において前記吐出部から吐出することができる。
【0006】
さらに、請求項3記載の発明は、請求項2に記載した水路の漏水箇所の特定方法であって、前記おが屑混合水の吐出部は、前記漏水検査の対象区域内の水面に浮く浮体であり、前記吐出部から前記おが屑混合水が水平方向に吐出されることを特徴とする水路の漏水箇所の特定方法である。
これにより、前記おが屑混合水の吐出部を水面に浮かせた状態でおが屑混合水を水平方向に吐出することができる。
【0007】
さらに、請求項4記載の発明は、請求項2または3に記載した水路の漏水箇所の特定方法であって、前記吐出部に一対のノズルが形成され、この一対のノズルの前記おが屑混合水の吐出方向は互いに反対方向であることを特徴とする水路の漏水箇所の特定方法である。
これにより、前記一対のノズルから水路の両側の側壁に向かっておが屑混合水を吐出し、おが屑が両側の側壁付近で徐々に沈降していくようにすることができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、水路の漏水箇所にこぶ状に残ったおが屑を見つけることにより、前記漏水箇所をピンポイントで発見することができる。
さらに、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果とともに、おが屑混合水を検査対象区域内の水路の方向の各位置において満遍なく水中に撒くことができる。
さらに、請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果とともに、水面付近でおが屑混合水を水平方向に吐出することができるので、水路内の広い範囲におが屑混合水を撒くことができる。
さらに、請求項4記載の発明によれば、請求項2または3に記載の発明の効果とともに、水路の両側の側壁および水路の底部の漏水箇所を特定することが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明における実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る漏水箇所の特定方法を実施する水路を示し、図2はこの水路の漏水箇所の特定方法を示し、図3はこの漏水箇所の特定方法に使用するおが屑吐出部を示し、(a)は正面を示し、(b)は背面を示す。さらに、図4は前記おが屑が漏水箇所に堆積した状態を示し、図5は漏水箇所の補修方法を示す。
【0010】
図1に示すように、山麓10の地中11にトンネル状の水路20が配設されている。この水路20は例えば図示しない水力発電所の導水路であり、例えば幅約1m、高さ約1.5mであり、その流れの方向の勾配は1/1000程度である。なお、水路20の漏水箇所26から漏水27が地中11に流れ地表12に湧き出している。
【0011】
図2に示すように、水路20の漏水箇所の特定方法は、水路20の漏水検査の対象区域20aの少なくとも下流端21を仕切り板の一例の角落し31で区画して前記漏水検査の対象区域20aを設定する第1工程と、前記漏水検査の対象区域20aに水を溜める第2工程と、前記水を溜めた漏水検査の対象区域20a内に、おが屑と水とを攪拌機等で攪拌混合したおが屑混合水を入れる第3工程と、前記第3工程の後、前記おが屑が沈降した後に、前記漏水検査の対象区域20a内の排水をする第4工程とを備えている。
ここで、具体的には、角落し31はマンホール30内の水路20の両側の側壁23a、23bに形成された図示しないガイド溝にセットされて洗堰になっている。なお、角落し31により溜められた水の水面29は、発電所を運転中の水路20の最高水位に若干の余裕を加えた高さである。また、漏水検査の対象区域20a内の排水は、漏水検査の対象区域20aの上流の水路20の図示しないゲートを閉めて、前記角落し31を除去することにより行われる。
【0012】
前記第3工程において、前記おが屑混合水の吐出部40を水路の方向28に移動可能とする。具体的には、前記漏水検査の対象区域20aの上流端22の天端25に滑車32を取付け、この滑車32にロープ33を掛ける。そして、ロープ33の一端を吐出部40の先端に固定し、ロープ33の他端を下流端21に位置するマンホール30から地表12に引き出す。このようにすると、ロープ33の他端を牽引すると、吐出部40を下流端21から上流端22まで移動させることができる。なお、前記漏水検査の対象区域20aの長さLは任意に設定可能であり、例えば30mである。
ここで、具体的には、ロープ33の牽引は、人力による場合と図示しないウインチ等の機械で牽引する場合とがある。
【0013】
前記おが屑混合水の吐出部40は、前記漏水検査の対象区域20a内の水面29に浮く浮体であり、吐出部40から前記おが屑混合水が水平方向に吐出される。この吐出部40に一対のノズル42、43が形成され、この一対のノズル42、43の前記おが屑混合水の吐出方向は互いに反対方向である。
具体的には、吐出部40はパイプ状の基部41および基部41の先端に接続された第1ノズル42および第2ノズル43を備えている。なお、基部41、第1ノズル42および第2ノズル43は、例えば塩化ビニールパイプによりT字状に形成されている。そして、基部41の後端にはホース34が接続されている。ホース34は地表12上に配置されたタンク50に接続されている。タンク50内のポンプ51はタンク50内の前記おが屑混合水をホース34を経て吐出部40の各ノズル42、43から吐出させることができる。なお、ホース34は、例えば長さの目盛付きのサクションホースである。この長さの目盛はホース34の牽引距離を表示することができる。また、サクションホースは螺旋状の鉄芯が入っているので作業中に折れないため、前記おが屑混合水を確実に送ることができる。
また、基部41の上側に合板44が取付けられ、合板44の下側に一対の発泡スチロール板45、46および一対のタイヤチューブ47、48が取付けられている。一対の発泡スチロール板45、46および一対のタイヤチューブ47、48は吐出部40を水面29に浮かせる浮力を有している。なお、図3(a)において、水面29は吐出部40を水に浮かせたときの水面を示している。
【0014】
上記構成の水路20の漏水箇所の特定方法は、以下の作用をする。
水路20の漏水検査の対象区域20aの少なくとも下流端21を角落し31等の仕切り板で仕切って、この区域20aに水を溜めて、この区域20aをプール状にすることができる。そして、このプール状の区域20aにおが屑混合水を入れると、おが屑混合水に含まれるおが屑52がプール状区域20aの水中に沈降する。その際、プール状区域20aの側壁23a、23bおよび底部24に漏水箇所26a、26b、26c(漏水箇所26の例である。)があると、沈降したおが屑52(水中に吹雪のような煙幕状に拡散している。)が漏水箇所26a、26b、26cに引き寄せられて漏水箇所26a、26b、26cに吸着される。その後、検査対象区域20aの排水をすると、漏水箇所26a、26b、26cに吸着されたおが屑52がこぶ状に残るので、漏水箇所26a、26b、26cを容易に発見することができる。
【0015】
ここで、前記おが屑混合水の吐出部40を水路20の方向に移動させることにより、おが屑混合水を水路20の方向の各位置(例えば3mごとに)において吐出部40から満遍なく水中に吐出することができる。
さらに、前記おが屑混合水の吐出部40を水面29に浮かせた状態でおが屑混合水を水平方向に吐出することにより、おが屑混合水を水路20内の広い範囲に撒くことができる。
さらに、前記一対のノズル42、43から水路20の両側の側壁23a、23bに向かっておが屑混合水を吐出することにより、一層確実に漏水箇所を特定することができる。
【0016】
図4は図2の側壁23aの漏水箇所26aにおが屑52がこぶ状に堆積した状態を拡大して示している。また、漏水箇所26aにこぶ状に堆積したおが屑52は漏水箇所26aを止水することができるので、図1のように漏水27が地表12に湧き出している場合には、この湧き出している漏水27が減少または止まるときに、漏水箇所26aにおが屑52がこぶ状に堆積したと判断することができる。
そして、図5に示すように、漏水箇所26aをモルタル53(防水モルタル、樹脂モルタル等)によりピンポイントで補修することができる。その他の漏水箇所26b,26c等も同様である。
このように、漏水箇所26a、26b、26c等をピンポイントで特定し補修することが可能なため、広範囲にわたる水路20の補修の必要はなくなり、水路20の部分補修ですむため、工期の短縮、工事費の削減を図ることができる。
さらに、おが屑は自然材料であるので自然環境を破壊しないし、極めて安価である。
【0017】
なお、上記実施の形態において、吐出部40を滑車32に掛けたロープ33で牽引しているが、これに限定されず、例えば水路20の天端25に沿って索条を張り、この索条に沿って吐出部40を移動させるようにしてもよい。
また、水路の上面が開放され天端がない場合には、水路の両岸から支持体を設けること等により、水路の上面の中央付近に水路の方向にワイヤ等を架設し、このワイヤ等に沿っておが屑の吐出部40を移動させることもできる。
また、上記実施の形態では、吐出部40を安価に製作するため、発泡スチロール板やタイヤチューブといった所謂廃材を用いて浮体となるように構成しているが、これに限定されず、本発明の目的の範囲内において、浮体を構成する材料の材質・形状等について適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る漏水箇所の特定方法を実施する水路を示す断面図である。
【図2】この水路の漏水箇所の特定方法を示す説明図である。
【図3】この漏水箇所の特定方法に使用するおが屑の吐出部を示し、(a)は正面図であり、(b)は背面図である。
【図4】前記おが屑が漏水箇所に堆積した状態を示す部分断面図である。
【図5】前記漏水箇所の補修方法を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0019】
10 山麓
11 地中
20 水路
20a 漏水検査の対象区域
21 下流端
26 漏水箇所
28 水路の方向
29 水面
31 角落し(仕切り板)
40 吐出部
42 第1ノズル
43 第2ノズル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路の漏水検査の対象区域の少なくとも下流端を仕切り板で区画して前記漏水検査の対象区域を設定する第1工程と、
前記漏水検査の対象区域に水を溜める第2工程と、
前記水を溜めた漏水検査の対象区域内に、おが屑と水とを攪拌混合したおが屑混合水を入れる第3工程と、
前記第3工程の後、前記おが屑が沈降した後に、前記漏水検査の対象区域内の排水をする第4工程と、
を備えることを特徴とする水路の漏水箇所の特定方法。
【請求項2】
請求項1に記載した水路の漏水箇所の特定方法であって、
前記第3工程において、前記おが屑混合水の吐出部を水路の方向に移動可能とすることを特徴とする水路の漏水箇所の特定方法。
【請求項3】
請求項2に記載した水路の漏水箇所の特定方法であって、
前記おが屑混合水の吐出部は、前記漏水検査の対象区域内の水面に浮く浮体であり、前記吐出部から前記おが屑混合水が水平方向に吐出されることを特徴とする水路の漏水箇所の特定方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載した水路の漏水箇所の特定方法であって、
前記吐出部に一対のノズルが形成され、この一対のノズルの前記おが屑混合水の吐出方向は互いに反対方向であることを特徴とする水路の漏水箇所の特定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−64745(P2007−64745A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249553(P2005−249553)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】