説明

水運用計画立案装置及びそのシステム

【課題】上水道の導送水管網において、運用計画を立案するに際して、再度立案のときの判定条件として計画値と実績値の差が指定値を越える場合の条件に他の判定条件を加えることにより、対応する実績値により近い計画値を算出する。
【解決手段】水運用計画立案装置133は、実需要量に基づいて予測需要量を算出する需要予測部と、予測需要量に従い、各管路の流量と施設の水量を最適化する計算を行って計画値を計算する計画立案部と、計画値と対応する実績値との差が所定の許容差内か否か、および予測需要量と対応する実需要量との差が所定の許容差内か否かを判定し、いずれかの差が許容差以上であるとき、再立案のために需要予測部と計画立案部を実行するよう制御する再立案判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水道の導送水管網において運用計画を作成する水運用計画立案装置とそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
上水道導送水管網に対して、管路流量を平滑化することによって施設負荷を軽減し、配水池水位を所定の範囲内とすることによって安全安定を確保できる水運用とするため、事前に立てた計画値を運用指針として実際の運用を行う。実際の運用の指針とする事前に立てた計画値を実際の運用に合うように修正する手法が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1は、運用対象で計測される実績値と最適水運用計画手段により演算された計画値とを比較し、実績値と計画値との間に指定値を越える差が生じた場合、再度計画立案する。
【0003】
【特許文献1】特開2002−278603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上水道導送水管網に対して、管路の接続関係や需要量などの各施設の要求を満足する計画立案の自動化が進むにつれ、管路の流量が平滑化され施設への負荷が少なく配水池の水位が所定範囲内となり、安心・安全運用を保証する常に実際的な計画値を立案する水運用計画立案装置がますます必要となっている。
【0005】
特許文献1の従来技術は、実績値と計画値の差が指定値を越えたときのみ、再立案するとしており、予測需要量と実際の需要量との差や、前回立案時の施設条件とその後の施設条件の差を考慮していない。そのため、予測需要量と実際の需要量の差や前回立案時の施設条件と最新の施設条件の差に大きな差が生じても、実績値と計画値の差が大きくなるまで再立案の判定ができない。このため再立案時刻が遅れ、施設負荷の大きい計画値に更新しなければならいことがある。また、上水道導送水管網が広域の場合の再立案判定の考慮もない。また、再立案するときの期間の作成方法がなく、オペレータの手を煩わせるか、不適切な再立案期間となり施設負荷の少ない効率的な水運用ができる計画値を得られない可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、他の判定条件も考慮に入れることによって、対応する実績値により近い計画値を算出する水運用計画立案技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、取水場、浄水場、および配水池と(取水場、浄水場、および配水池を「施設」と呼ぶ)と、各施設を連結する1つないし複数の管路とを有する上水道の導送水管網において、計画値を立案する水運用計画立案装置に適用される。ここで上水道の導送水管網とは、上水道の水が流れる物理的ネットワークを意味するものであって、必ずしも上記全ての施設を有する場合に限られるものではなく、例えば取水場、浄水場、あるいは配水池がない場合でもよい。また計画値とは、具体的には、各管路に流れる水の流量、各施設での水位ないし水量を指す。
【0008】
本発明の水運用計画立案装置は、実需要量に基づいて予測需要量を算出する需要予測部と、予測需要量に従い、各管路の流量と施設の水量を最適化する計算を行って計画値を計算する計画立案部と、計画値と対応する実績値との差が所定の許容差内か否か、および予測需要量と対応する実需要量との差が所定の許容差内か否かを判定し、いずれかの差が許容差以上であるとき、再立案のために需要予測部と計画立案部を実行するよう制御する再立案判定部とを備えることを特徴とする。
【0009】
ここで需要量とは、上水道の導送水管網上において水の増減が起こるものであればいかなるものでもよい。具体的には、ある施設での水の消費量のみならず水の生産量なども需要量とみなしてよい。
【0010】
また本発明の再立案判定部は、立案時の施設条件と最新の施設条件とが異なるか否かを判定条件の1つとし、両施設条件が異なると判定するとき、再立案のために需要予測部と計画立案部を実行するよう制御することを特徴とする。
【0011】
また本発明の水運用計画立案装置は、さらに再計画立案期間を設定する再立案期間作成部を有し、再立案判定部が再立案すると判定したとき、再立案期間作成部を実行するよう制御することを特徴とする。
【0012】
また本発明の再立案判定部は、管路、配水池の対象が複数の他の対象に繋がったり、施設、分岐部の対象から複数の対象に分岐する広域水系の場合には、各対象の差に重み付けした和が許容差内か否かを判定することを特徴とする。
【0013】
また本発明の水運用計画立案システムは、水運用計画立案装置と送受信装置とがネットワークを介して通信可能なシステムであり、水運用計画立案装置は、さらに送受信装置から実績値および実需要量の原データを受信し、送受信装置へ計画値を送信する通信処理部を有し、送受信装置は、原データを取得するデータ取得部と、水運用計画立案装置へ原データを送信し、水運用計画立案装置から計画値を受信する通信処理部とを有するシステムを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明によれば、他の判定条件も考慮に入れることによって、実績値により近い計画値を求めることができ、管路の流量が平滑化され、施設への負荷が少なく、配水池の水位を所定範囲内とする計画値が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0016】
最初に本発明の実施形態が適用された上水道システムの概略構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施形態の上水道システムの概略構成を示す図である。図示するように、上水道システム131は、取水源から原水を取得して貯水する取水場141a〜bと、取水場141a〜bから原水を取得して浄化する浄水場140a〜bと、浄水場140a〜bから浄化された水を取得し、その取得した水を貯水し、需要家に配水する配水池142a〜bと、上水道システム全体の管理を行う水運用計画センタ134と、を有する。また、上水道システム131は、取水場141a〜b、浄水場140a〜b、および配水池142a〜b各々に設置されている送受信装置135a〜fと、水運用計画センタ134に設置されている水運用計画立案装置133とを含む水運用計画立案システムを有する。なお、以下の説明において、取水場141a〜b、浄水場140a〜b、および配水池142a〜bを総称して「施設」と呼ぶこともある。
【0017】
ここで、上水道システム131が有する取水場141a〜b、浄水場140a〜b、および配水池142a〜bについて簡単に説明する。取水場141aと浄水場140aとは、管路143aにより接続されていて、取水場141aに貯水されている原水は、管路143aを介して浄水場140aに供給される。取水場141bと浄水場140bとは、管路143fにより接続されていて、取水場141bで貯水されている原水は、管路143fを介して浄水場140bに供給される。
【0018】
また、浄水場140aは、管路143b、分岐部146、および管路143cを介して配水池142aと接続されている。また、浄水場140aは、管路143b、分岐部146、および管路143dにより配水池142bと接続されている。そして、浄水場140aで浄化された水は、配水池142aおよび配水池142bの両者に供給される。具体的には、配水池142aには、浄水場140aからの水が「管路143b、分岐部146、および管路143c」を介して供給される。配水池142bには、浄水場A140aからの水が「管路143b、分岐部146、および管路143d」を介して供給される。さらに、配水池142bは、浄水場140bから管路143eで接続されている。
【0019】
また、通常各施設には、貯水している水の水位を測定する水位計145が設けられている。また、管路143a〜fには、それぞれの管路を流れる水の流量を測定するための流量計144が設けられている。
【0020】
続いて、水運用計画立案システムの概略を説明する。具体的には、水運用計画立案システムは、水運用計画センタ134に設置されている水運用計画立案装置133と、取水場141aに設置されている送受信装置135aと、取水場141bに設置されている送受信装置135fと、浄水場140aに設置されている送受信装置135bと、浄水場140bに設置されている送受信装置135eと、配水池142aに設置されている送受信装置135cと、配水池142bに設置されている送受信装置135d、を有する。送受信装置135a〜fは、各々、ネットワーク132a〜132fを介して水運用計画立案装置133に接続されている。そして、送受信装置135a〜fの各々と、水運用計画立案装置133とは、相互に通信を行うことができる。
【0021】
なお、本実施形態では、ネットワーク132の具体的な構成について特に限定しない。ネットワーク132は、送受信装置135a〜fの各々と、水運用計画立案装置133とが相互に通信を行えるものであればよく、有線であっても無線であっても構わない。例えば、ネットワーク132に、電話回線やインターネットを利用するようにしてもよい。また、ネットワーク132に、送受信装置135a〜fの各々と、水運用計画立案装置133とを通信するための専用線を用いるようにしてもよい。また、本実施形態では、水運用計画立案装置133に6台の送受信装置135a〜fがネットワーク132により接続されている場合を例にしているが、送受信装置135の数は、例示に過ぎない。送受信装置135の数は、上水道システム131が有する施設の数により異なる(各施設に送受信装置135が設けられる)。
【0022】
送受信装置135は、自身が設置されている施設にある水位計145および当該施設に接続されている管路143の流量計144が計測した管路流量データと自身が設置されている施設の実際の需要量データを水運用計画立案装置133に送信する。また、送受信装置135は、水運用計画立案装置133から「計画値」を取得し、取得した「計画値」に従い管路143に流す流量を制御する。計画値の具体的なデータ構成については後述する。
【0023】
具体的には、送受信装置135は、自身が設置されている施設に設けられている水位計145と、例えば、信号線により接続されていて、定期的(例えば1時間ごと)に水位計145により計測された「水位を示すデータ」を取得する。また、送受信装置135は、自身が設置されている施設に接続されている管路143に設けられた流量計144と、例えば、信号線により接続されていて、定期的に流量計144により計測された「流量を示すデータ」を取得する。また、送受信装置135は、自身が設置されている施設の「実際の需要量」も取得する。そして、送受信装置135は、ネットワーク132を介して、取得した「水位を示すデータ」、「流量を示すデータ」、「実際の需要量」を水運用計画立案装置133に送信する。また、送受信装置135は、ネットワーク132を介して、水運用計画立案装置133が送信する「計画値」を受信する。そして、送受信装置135は、受信した「計画値」に従い管路143に流す水量を制御する。
【0024】
なお、上記では、送受信装置135と水位計145(又は流量計144)とが信号線により接続されている場合について説明したが、特にこれに限定するものではない。送受信装置135と水位計145(又は流量計144)と間で、データを送受信できればよい。例えば、送受信装置135と水位計145(又は流量計144)の間を無線で通信してもよい。
【0025】
水運用計画立案装置133は、各施設と管路の「計画値」を作成し、その作成した「計画値」を送受信装置135に送信する。具体的には、水運用計画立案装置133は、ネットワーク132を介して、各施設の「水位を示すデータ」と「流量を示すデータ」を送受信装置135から取得する。また、オペレータからデータの設定を受け付けて、オペレータから受付けたデータと、取得した「水位を示すデータ」、「流量を示すデータ」および「最新の施設条件」を利用して、「計画値」を作成する。
【0026】
続いて、本実施形態の水運用計画立案装置133および送受信装置135の具体的な構成について説明する。なお、以下の説明において、取水場141a〜b、浄水場140a〜b、配水池142a〜c、および分岐部146を総称して「ノード」と呼ぶこともある。
【0027】
先ず、水運用計画立案装置133の構成について説明する。図2は、実施形態の水運用計画立案装置133の構成を示す図である。図示するように、水運用計画立案装置133は、上水道計画の立案処理を行う情報処理装置150と、オペレータからの各種データの入力や各種指示を受付けるための入力装置190と、情報処理装置150からのデータをオペレータに提示するための出力装置191とを有する。
【0028】
情報処理装置150は、通信処理部192、グラフィカルユーザインターフェース部130、前回立案時の施設条件記憶部163、予測需要量記憶部162、計画値記憶部161、計画立案部124、再計画立案判定部128、再立案期間作成部129、実績値記憶部164、実際の需要量(実需要量)記憶部165、および最新の施設条件記憶部166を有する。なお実績値とは流量計から得た管路の流量を示すデータと水位計から得た配水池の水位を示すデータを指す。
【0029】
前回立案時の施設条件記憶部163は、前回立案時の施設条件を示す施設条件情報を記憶する。具体的には、前回立案時の施設条件記憶部163は、図8に示すように、対象とする水系の施設と管路の接続関係を示す水系情報と、各管路に関するデータを示す管路情報(管路の上下限値)と、配水池の貯水量に関するデータを示す配水池情報(施設上下限値と運用上下限値)、を記憶する。
【0030】
グラフィカルユーザインターフェース部130は、出力装置191に各種の表示画面を表示する。具体的には、オペレータからの各種操作を受付ける画面、立案した計画値を表示する画面、計画値と実績値の差、予測需要量と実際の需要量の差、前回立案時の施設条件と最新の施設条件との差、を示す画面を表示する。また、グラフィカルユーザインターフェース部130は、入力装置190を介して、オペレータが入力する各種のデータ(変更のあった最新の施設条件や需要予測用入力値など)および指示を受け付ける。
【0031】
また、グラフィカルユーザインターフェース部130は、後述する計画立案部124が出力する計画値と送受信装置135が送信する実績値、実際の需要量、および最新の施設条件を取り込む。グラフィカルユーザインターフェース部130は、受信した計画値と実績値、予測需要量と実際の需要量の差、および前回立案時の施設条件と最新の施設条件の差を示すデータを出力装置191に出力する。すなわち、計画値と実績値との差、予測需要量と実際の需要量の差、および前回立案時の施設条件と最新の施設条件の差を表示する。
【0032】
通信処理部192は、ネットワーク132を介して、送受信装置135と通信を行う。通信処理部192は、送受信装置135が送信する実績値(各施設の水位を示すデータ、各管路143の流量を示すデータ)と各ノードでの実際の需要量を受信し、受信した実績値を実績値記憶部164に記憶し、受信した実際の需要量を実際の需要量記憶部165に記憶する。このほか最新の施設条件も受信するようにしても良い。また、通信処理部192は、ネットワーク132を介して、後述する計画立案部124が立案した計画値を送受信装置135に送信する。
【0033】
計画立案部124は、前回立案時の施設条件と予測需要量と実績値を基に後述する演算処理を施し、「計画値」を計画値記憶部161に記憶し、グラフィカルユーザインターフェース部130に送る。
【0034】
続いて、水運用計画立案装置133のハードウェア構成について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態の水運用計画立案装置133が有する情報処理装置150のハードウェア構成を示す図である。
【0035】
図示するように、情報処理装置150は、各種の処理を実行する中央処理装置(CPU)183と、実行されるプログラムを格納しワークエリアとして機能する主記憶装置(メモリ)184と、送受信装置135との間で行う通信を制御する通信インターフェース185と、入力装置190としてキーボード180a、マウス180b、および出力装置191として表示装置181、印刷装置182と、各種データおよびCPU183が実行するプログラムを格納するための補助記憶装置188と、システムバス187とを有する。CPU183、主記憶装置184、通信インターフェース185、および補助記憶装置188は、それぞれ、システムバス186を介して接続されている。
【0036】
補助記憶装置188には、上述した情報処理装置150が有する各部(通信処理部192、グラフィカルユーザインターフェース部130、計画立案部124、再立案判定部128、再立案期間作成部129、需要予測部120)の機能を実現するためのプログラムが記憶されている。また補助記憶装置188の所定の領域には、上述した前回立案時の施設条件記憶部163、計画値記憶部161、予測需要量記憶部162、実績値記憶部164、実際の需要量記憶部165、および最新の施設条件記憶部166に記憶されるデータが記憶されている。
【0037】
そして、上述した情報処理装置150が有する各部(通信処理部120、グラフィカルユーザインターフェース部130、計画立案部170、需要予測部192、再立案期間作成部129)の機能は、CPU183が補助記憶装置188に記憶された該当するプログラムを主記憶装置184にロードして実行することにより実現される。
【0038】
続いて、各施設に設置されている送受信装置135について説明する。図4は、実施形態の送受信装置135の構成を示す図である。図示するように、送受信装置135は、データ取得部231、通信処理部232、および計画値記憶部213を有する。また、送受信装置135が各部の制御を行う場合には、制御部を備えていてもよい。
【0039】
計画値記憶部213は、水運用計画立案装置133から送信された「計画値」を記憶する。
【0040】
データ取得部231は、送受信装置135が設置されている施設に設けられている水位計145から「水位を示すデータ」を取得し、施設に接続されている管路143に設けられている流量計144から、管路を流れる「流量を示すデータ」を取得し、各ノードの実際の需要量を取得する。なお、浄水場140aのように、複数の管路143b〜cが接続されている施設の場合には、それぞれの管路143に設けられた流量計144から「流量を示すデータ」を取得する。
【0041】
通信処理部232は、ネットワーク132を介して、「水位を示すデータ」「流量を示すデータ」、「実際の需要量」の原データを水運用計画立案装置133に送信する。また、通信処理部232は、ネットワーク132を介して、水運用計画立案装置133から送信された「計画値」を受信し、その受信した「計画値」を計画値記憶部211に格納する。
【0042】
続いて、送受信装置135のハードウェア構成について説明する。図5は、本発明の実施形態の送受信装置135のハードウェア構成を示す図である。図示するように、送受信装置135は、中央処理装置(CPU)218と、主記憶装置220と、水運用計画立案装置133との間で行う通信を制御する通信インターフェース214と、水位計145、及び流量計144と信号線216により接続されていて、水位計145および流量計144との間で行うデータの送受信を制御する計測制御インターフェース215と、補助記憶装置217と、システムバス219とを有する。CPU218、主記憶装置220、通信インターフェース214、計測制御インターフェース215、および補助記憶装置217は、それぞれ、システムバス219に接続されている。
【0043】
補助記憶装置217には、送受信装置135が有する各部(データ取得部231、通信処理部232)の機能を実現するためのプログラムが記憶されている。また補助記憶装置217の所定の領域には、計画記憶部213に記憶されるデータが格納される。
【0044】
そして、上述した送受信装置135が有する各部(データ取得部231、通信処理部232)の機能は、CPU218が補助記憶装置217に記憶された該当するプログラムを主記憶装置220にロードして実行することにより実現される。
【0045】
続いて、本実施形態の水運用計画立案装置133が有する施設条件記憶部163に記憶されるデータについて説明する。先ず、施設条件記憶部163あるいは最新の施設条件記憶部166に記憶されるデータ(施設条件情報)のデータ構成について、図8を用いて説明する。
【0046】
図8は、本実施形態の水運用計画立案装置133の施設条件記憶部163あるいは最新の施設条件記憶部166に記憶される施設条件情報のデータ例を示す図である。なおデータは、説明用の記述で表現されている。また施設条件記憶部163あるいは最新の施設条件記憶部166には、施設ごとに図示する施設条件情報が記憶されるが、図示する例では、説明を簡略化するために1つの施設についての施設条件情報だけを示す。他の施設についても同様である。
【0047】
図示する例では、施設条件に、「水系情報」、「管路情報」、および「配水池情報」が登録されている場合を示している。「水系情報」に対応付けられて登録されている「接続関係」は、水系上にある管路と施設の接続関係の情報を示す。「管路情報」に対応付けられて登録されている「管路上下限」は、施設に接続されている管路143に関する情報を示す。「配水池情報」とは、当該施設に接続されている配水池142に貯水できる水量に関する情報をいう。
【0048】
予測需要量記憶部162あるいは実際の需要量記憶部165に記憶されるデータの構成について、図9を用いて説明する。「予測需要量」あるいは「実際の需要量」に対応付けられて登録されている「各ノードの需要量」とは、需要が発生する各ノードの各時刻で始まる所定時間の間に使われる水の量(例えば、浄水場140で消費される水量)を示す情報をいう。
【0049】
計画値記憶部161あるいは実績値記憶部164に記憶されるデータの構成について、図10を用いて説明する。「実績値」とは、施設および管路143で計測器(流量計144、水位計145)により計測された管路の各時刻についての流量データと配水池の水位データを指し、「計画値」とは施設及び管路143に対して運用指針となる管路の各時刻についての流量データと配水池の水位データを指す。「計画値」の「時刻」は、予定時刻である。この例では、時刻0が計画の開始予定時刻である。また流量の「内容」は、各時刻で始まる所定時間の間に管路を流れる水の量を示す。なお配水池の水位の代わりに水量でもよい。
【0050】
なお、「管路情報」および「配水池情報」に対応付けられた情報は、水運用計画立案装置133の初期設定の際、送受信装置135を介して、前回立案時の施設条件記憶部161に登録しておくものとする。また、「予測需要量」に対応付けられている「各ノードの需要量」は、例えば、オペレータが水運用計画立案装置133に運用計画の立案処理を行わせる際、予測需要量記憶部162に登録する。
【0051】
実績値記憶部164は、水運用計画立案装置133が各送受信装置135から取得された「実績値」を格納する。例えば、オペレータが水運用計画立案装置133に計画値を作成させる指示を与えた場合、水運用計画立案装置133は、ネットワーク132を介して、各送受信装置135から実績値(「水位を示すデータ」および「流量を示すデータ」)を取得する。水運用計画立案装置133は、取得した実績値(「水位を示すデータ」および「流量を示すデータ」)を実績値記憶部164に登録する。
【0052】
図6は、本実施形態の水運用計画立案装置133が行う処理の手順を示す図である。先ず、水運用計画立案装置133が有する情報処理装置150は、需要予測と計画立案に利用する需要予測用入力値と前回立案時の施設条件を取得する(S101)。具体的には、情報処理装置150のグラフィカルユーザインターフェース部130は、出力装置191に「需要予測用入力値」の入力を受け付けるための入力画面を表示し、オペレータが入力装置190により入力する「需要予測用入力値」を取得し、前回立案時の施設条件記憶部163から「前回立案時の施設条件」を取得する。「需要予測用入力値」は、例えば予測日の天候、最高気温などのデータである。グラフィカルユーザインターフェース部130は、取得した「需要予測用入力値」を需要予測部120に送る。
【0053】
需要予測部120は、「需要予測用入力値」と「前回立案時の施設条件」を読み込み、各ノードに対する決められた立案期間について予測需要量を算出し(S102)、算出した「予測需要量」を予測需要量記憶部162に記憶する。予測需要量の算出アルゴリズムについての説明を省略するが、最近に得られた実際の需要量を重視するような需要予測方式が望ましい。このようにして後述する予測需要量と実際の需要量との差を小さくするように、予測需要量を動的に修正していく方式が望ましい。
【0054】
計画立案部124は、「前回立案時の施設条件」と「予測需要量」を読み込み、各ノードに対する決められた立案期間について「計画値」を算出し(S103)、算出した「計画値」を計画値記憶部161に記憶する。また計画立案部124は、「計画値」を通信処理部192を介して、各ノードの送受信装置135に送信する。
【0055】
具体的には、計画立案部124は、前回立案時の施設条件記憶部163から「前回立案時の施設条件情報」(水系情報、管路情報、配水池情報)を読み込み、例えば、下記(式1)を評価式とした最適化計算を行うことにより、各管路、配水池と各時刻についての「計画値(例えば、管路Aの時刻0では480t、時刻1では600t)」を作成する。そして、計画立案部124は、作成した「計画値」をグラフィカルユーザインターフェース部130に送信し(S104)、出力装置191に出力する。
【0056】
Σ(j=1からNまで)cを最小とする最適化・・・(式1)
(式1)において、「c」は、各管路に対するコスト係数(管路の流れにくさを示す係数)を示す。また、「x(t)」が時刻tにおける流量であり、「j」が管路番号、「N」が管路総数を表し、各管路jでの「x」と「c」の積の総和の最小化を目指す。なお、コスト係数「c」が大きい管路143ほど、管路を流れる水の流量「x」を減らそうとする。コスト係数「c」は、オペレータにより管路情報と共に前回立案時の施設条件記憶部163に登録するようにしてもよいし、或いは、予め定めたコスト係数「c」を計画立案部124に保持させるようにしてもよい。
【0057】
なお時刻は、立案期間に含まれるすべての時刻が対象となる。また各配水池の水位は、貯水量に変換すると管路と同じ扱いができる。またこのこの最適化計算は、需要が発生する各ノードの流入口の流量からそのノードの「予測需要量」を差し引いたものがそのノードの流出口の流量に等しいという水量保存の条件と、各管路の流量は「管路上下限流量値」の範囲内であり、施設の配水池の水位は「運用上下限水位値」の範囲内であるという条件を満足しなければならない。
【0058】
当該立案(前回立案)期間について、実績値、実際の需要量又は最新の施設条件の値が少なくとも1つ蓄積された時点で、再立案判定部128は、計画値と実績値の差の判定、予測需要量と実際の需要量の差の判定、および前回立案時の施設条件と最新の施設条件の差の判定を行い(S105)、再立案するか否かを決定する(S106)。これらいずれかの差が許容差以上であるとき、再立案判定部128は、再立案と判定する。再立案の場合には、S107へ行く。再立案でなければS108へ行く。
【0059】
計画値と実績値の差の判定では、再立案判定部128は、実績値記憶部164から実績値、計画値記憶部161から計画値を読み込み、各管路、配水池と各時刻について、例えば下記(式2)を評価式とした判定を行うことにより再立案すべきか否かを判定する。
【0060】
|x−y|<h・・・(式2)
(式2)において「x(t)」は計画値、「y(t)」は実績値、「h」は、計画値についての許容差を表す指定値とする。ここで「実績値」は、当該立案期間の開始時刻の実績値から最新の実績値に至るまでの各々の実績値である。すでに(式2)を適用した実績値を除外し、新しく取得した実績値のみをこの判定の対象としてもよい。
【0061】
なお、上記のようなある時刻の計画値と実績値の差を判定する代わりに、当該立案期間の計画値と実績値の差を蓄積し、累積値の差で指定値を超えたか否かを判定するようにしてもよい。
【0062】
対象とする管路、配水池が複数の管路や配水池に繋がる広域水系の場合には、(式3)のように比較する対象ごとに重みを設定し総和として差を比較する。なお、重みが全ての対象で同一でよい場合は、評価式から重みを除去してもよい。
【0063】
Σ(i=1からnまで)ω|x−y|<h・・・(式3)
(式3)において「x(t)」は計画値、「y(t)」は実績値、「h」は許容差を表す指定値、「i」は対象とする管路や配水池、「ω」は対象とする配水池や管路の重み、「n」は広域水系を構成する管路や配水池の総数とする。なお、対象とする水系が複数の施設を持つ広域の場合には、対象ごとに(式2)の判定を行い、どこかの箇所で指定した指定値を超えたか否かを判定するようにしてもよい。その場合は、「h」は全ての対象で同一とせず、対象ごとに異なる値をとるとしてもよい。なお、上記のようなある時刻の計画値と実績値の差を判定する代わりに、前回立案時からの計画値と実績値の差を蓄積し、累積値の差で指定値を超えたかを判定するようにしてもよい。
【0064】
予測需要量と実際の需要量の差の判定では、再立案判定部128は、予測需要量記憶部162から予測需要量、実際の需要量記憶部から実際の需要量を読み込み、各ノード、各時刻について、例えば下記(式4)を評価式とした判定を行うことにより再立案すべきか否かを判定する。
【0065】
|s−t|<h・・・(式4)
(式4)において「s(t)」は予測需要量、「t(t)」は実際の需要量、「h」は予測需要量についての許容差を表す指定値とする。ここで「実際の需要量」は、当該立案期間の開始時刻の実需要量から最新の実需要量に至るまでの各々の実需要量である。すでに(式4)を適用した実需要量を除外し、新しく取得した実需要量のみをこの判定の対象としてもよい。なお、上記のようなある時刻の予測需要量と実需要量の差を判定する代わりに、前回立案時からの予測需要量と実際の需要量の差を蓄積し、累積値の差で指定値を超えたか否かを判定するようにしてもよい。
【0066】
対象とするノードが複数のノードに分岐する広域の場合には、(式5)のように比較する対象ごとに重みを設定し総和として差を比較する。なお、重みが全ての対象で同一でよい場合は、評価式から重みを除去してもよい。
【0067】
Σ(i=1からnまで)ω|s−t|<h・・・(式5)
(式5)において「s(t)」は予測需要量、「t(t)」は実際の需要量、「h」は許容差を表す指定値、「i」は対象とするノード、「ω」は対象とするノードの重み、「n」は広域ノード系を構成するノードの総数とする。なお、対象が広域ノード系の場合には、対象ごとに(式4)の判定を行い、どこかの箇所で指定した指定値を超えたか否かを判定するようにしてもよい。その場合は、「h」は全ての対象で同一とせず、対象ごとに異なる値をとるとしてもよい。なお、上記のようなある時刻の計画値と実績値の差を判定する代わりに、前回立案時からの予測需要量と実際の需要量の差を蓄積し、累積値の差で指定値を超えたか否かを判定するようにしてもよい。
【0068】
前回立案時の施設条件と最新の施設条件の差の判定では、再立案判定部128は、前回立案時の施設条件記憶部163から前回立案時の施設条件、最新の施設条件記憶部166から最新の施設条件を読み込み、例えば下記の場合分けを行うことにより再立案すべきか否かを判定する。
【0069】
・水系情報に変更があり、計画値に従う運用が不可能になるときは、再立案とする。
【0070】
・管路情報に変更があり、計画値に従う運用では施設上下限流量値に違反が生じるときは、再立案とする。
【0071】
・配水池情報のうち施設上下限水位値に変更があり、計画値に従う運用では施設上下限水位値に違反が生じるときは、再立案とする。
【0072】
・その他の変更では、再立案しないとする。
【0073】
なお前回立案時の施設条件と最新の施設条件の差の判定は、常時実行するのではなく、施設条件が入力され両施設条件に差が生じたときのみ実行するのでもよい。
【0074】
対象とする水系が広域水系の場合には、複数の管路、配水池に対して同様の場合分けを行うことにより再立案すべきか否かを判定する。
【0075】
再立案期間作成部129は、過去立案による計画の開始時刻および将来立案による計画の開始予定時刻を基に、例えば下記(式6)を評価式として再計画立案期間を作成する(S107)。水運用計画の立案期間に特に制限はないが、通常の立案期間として、例えば立案期間1日24時間を単位とするなどである。
【0076】
if(t−T)<(T−T)/2,
T=T−t,
if(t−T)≧(T−T)/2,
T=T−t・・・(式6)
(式6)において「T」は再計画立案期間、「t」は再立案による計画の開始予定時刻(例えば時刻20)、「T」は前回立案による計画の開始時刻(例えば時刻0)、「T」は次回の通常立案による計画の開始予定時刻(例えば時刻24)、「T」は次々回の通常立案による計画の開始予定時刻(例えば時刻48)とする。ここで前回立案の計画値は、TからT前まで(例えば時刻0から時刻23まで)について設定されていたとする。
【0077】
次に再立案判定部128は、通常の立案期間に関して次回の計画立案を行う時点か否か判定する(S108)。次回の計画立案を行う時点とは、例えばT前(例えば時刻23)などである。次回の計画立案を行う時点でなければ、S105に戻り、次の実績値、実際の需要量又は最新の施設条件の蓄積を待つ。次回の計画立案を行う時点であれば、通常の立案期間について計画立案を行うためにS101に戻る。
【0078】
また、通信処理部192は、計画立案部124から各施設の計画値を取得する。通信処理部192は、各施設の計画値をその施設を制御する送受信装置135a〜fに送信する。
【0079】
最後にグラフィカルユーザインターフェース部130が行う処理について説明する。グラフィカルインターフェース部130は、前回立案時の施設条件記憶部163から前回立案時の施設条件を取得し、計画立案部124から計画値(各管路と配水池の計画値)を取得する。そして、グラフィカルインターフェース部130は、取得した計画値を用いて、オペレータに提示するためのデータを生成する。グラフィカルインターフェース部130は、生成したデータを用いて、例えば、図7に示す表示画面を表示装置181に表示する。
【0080】
図7は、本実施形態の水運用計画立案装置が表示装置181に表示する表示画面を例示する図である。図示するように、利用者端末画面209には、施設条件を入力するための施設条件入力ボタン200と、「需要予測用入力値」の入力を受付けるための需要予測用入力ボタン201と、「需要予測」の指示を受け付けるための需要予測ボタン202と、「計画立案」の指示を受け付けるための計画立案ボタン203と、対象の水系図を表示する領域204と、管路又は施設について計画値を表示する領域208と、計画値と実績値の差を提示するための領域205と、予測需要量と実際の需要量の差を提示するための領域206と、前回立案時の施設条件と最新の施設条件の差を提示するための領域207とが設けられている。
【0081】
領域208の横軸は時刻を示し、縦軸は管路又は施設の流量又は水位値を示す。流量又は水位値の段差は、調整により流量又は水位値を増加させる例を示す。入力装置190を介して領域204中の特定の管路又は配水池が選択されると、グラフィカルインターフェース部130は、領域208に選択されたものの計画値を表示する。
【0082】
このように、オペレータは、利用者端末画面190により、管路ごとの流量あるいは配水池の水位の計画値を確認できる。
【0083】
また、グラフィカルユーザインターフェース部130は、利用者端末画面209上にカーソル30を表示して、入力装置190からの指示により、カーソル30により、各ボタン201〜203の選択を受け付けるように構成されている。そして、グラフィカルユーザインターフェース部130は、カーソル30により各ボタン200〜203の選択を受け付けた場合、情報処理装置150は、指定された処理を行う。施設条件入力ボタン200が押下された場合には、グラフィカルインターフェース部130は、図8に示す施設条件を表示し、オペレータによる施設条件の変更を可能とする。
【0084】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。上述の実施形態では、水運用計画立案装置133が1日24時間分の各管路の時間ごとの流量を求めているが、特にこれに限定するものではない。例えば、水運用計画立案装置124は、数日分の各施設の時間ごとの流量を求めるようにしてもよい。
【0085】
各施設(取水場、浄水場、配水池)が「計画値」を実施する手段として、施設に設けられた送受信装置135に、施設および管路143に設けられたポンプ等の動作を制御する制御機器を接続して、制御機器により管路143に流す水の流量を調整するようにしてもよい。しかし特にこれに限定するものではない。送受信装置135に制御機器の機能を設けておいて、送受信装置135自身が管路143に流す水の流量を調整するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施形態の上水道システムの概略構成を示す図である。
【図2】実施形態の水運用計画立案装置の構成を示す図である。
【図3】実施形態の水運用計画立案装置のハードウェア構成を示す図である。
【図4】実施形態の送受信装置の構成を示す図である。
【図5】実施形態の送受信装置のハードウェア構成を示す図である。
【図6】実施形態の水運用計画立案装置が行う処理の手順を示す図である。
【図7】実施形態の水運用計画立案装置の表示装置に表示する表示画面例を例示する図である。
【図8】実施形態の「前回立案時の施設条件」又は「最新の施設条件」のデータ例を説明的に示す図である。
【図9】「予測需要量」又は「実際の需要量」のデータ例を示す図である。
【図10】「計画値」又は「実績値」のデータ例を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
120・・・需要予測部、124・・・計画立案部、128・・・再立案判定部、129・・・再立案期間作成部、133・・・水運用計画立案装置、135・・・送受信装置、140・・・浄水場、141・・・取水場、142・・・配水池、143・・・管路、144・・・流量計、145・・・水位計、150・・・情報処理装置、161・・・計画値記憶部、162・・・予測需要量記憶部、163・・・前回立案時の施設条件記憶部、164・・・実績値記憶部、165・・・実際の需要量記憶部、166・・・最新の施設条件記憶部、192・・・通信処理部、213・・・計画値記憶部、231・・・データ取得部、232・・・通信処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上水道の導送水管網について水運用計画を立案する装置において、
各管路の各時刻で始まる所定時間の流量と各配水池の各時刻で始まる所定時間の水量との実績値を記憶する実績値記憶部と、
前記流量と前記水量との計画値を記憶する計画値記憶部と、
各施設や分岐部について各時刻で始まる所定時間の実際の需要量を記憶する実需要量記憶部と、
前記実需要量に対応する予測需要量を記憶する予測需要量記憶部と、
前記実需要量にアルゴリズムを適用して前記予測需要量を算出する需要予測部と、
前記予測需要量に従い、前記流量と前記水量を最適化する計算を行って前記計画値を計算する計画立案部と、
前記計画値と対応する実績値との差が所定の許容差内か否か、および前記予測需要量と対応する実需要量との差が所定の許容差内か否かを判定し、いずれかの差が許容差以上であるとき、再立案のために前記需要予測部と前記計画立案部を実行するよう制御する再立案判定部とを備えたことを特徴とする水運用計画立案装置。
【請求項2】
前記再立案判定部が前記予測需要量と対応する前記実需要量との差が前記許容差以上であると判定したとき、前記需要予測部は、将来の前記予測需要量を修正することを特徴とする請求項1に記載の水運用計画立案装置。
【請求項3】
前記水運用計画立案装置は、さらに
前記施設、前記配水池および前記管路の接続関係を示す情報、前記管路の流量の上下限値および前記配水池の水量の上下限値を含む前回立案時の施設条件を記憶する施設条件記憶部と、
最新の前記施設条件を記憶する施設条件記憶部とを有し、
前記再立案判定部は、前記立案時の施設条件と最新の施設条件とが異なるか否かを判定条件の1つとし、両施設条件が異なると判定するとき、再立案のために前記需要予測部と前記計画立案部を実行するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の水運用計画立案装置。
【請求項4】
前記水運用計画立案装置は、さらに
再計画立案期間を設定する再立案期間作成部を有し、
前記再立案判定部が再立案すると判定したとき、前記再立案期間作成部を実行するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の水運用計画立案装置。
【請求項5】
前記再立案判定部は、前記管路、配水池の対象が複数の他の対象に繋がったり、前記施設、分岐部の対象から複数の対象に分岐する広域水系の場合には、各対象の前記差に重み付けした和が前記許容差内か否かを判定することを特徴とする請求項1記載の水運用計画立案装置。
【請求項6】
水運用計画立案装置と送受信装置とがネットワークを介して通信する水運用計画立案システムにおいて、
上水道の導送水管網について水運用計画を立案する前記水運用計画立案装置は、
各管路の各時刻で始まる所定時間の流量と各配水池の各時刻で始まる所定時間の水量との実績値を記憶する実績値記憶部と、
前記流量と前記水量との計画値を記憶する計画値記憶部と、
各施設や分岐部について各時刻で始まる所定時間の実際の需要量を記憶する実需要量記憶部と、
前記実需要量に対応する予測需要量を記憶する予測需要量記憶部と、
前記実需要量にアルゴリズムを適用して前記予測需要量を算出する需要予測部と、
前記予測需要量に従い、前記流量と前記水量を最適化する計算を行って前記計画値を計算する計画立案部と、
前記計画値と対応する実績値との差が所定の許容差内か否か、および前記予測需要量と対応する実需要量との差が所定の許容差内か否かを判定し、いずれかの差が許容差以上であるとき、再立案のために前記需要予測部と前記計画立案部を実行するよう制御する再立案判定部と、
前記送受信装置から前記実績値および前記実需要量の原データを受信し、前記送受信装置へ前記計画値を送信する通信処理部とを有し、
前記送受信装置は、
前記原データを取得するデータ取得部と、
前記計画値を記憶する計画値記憶部と、
前記水運用計画立案装置へ前記原データを送信し、前記水運用計画立案装置から前記計画値を受信する通信処理部とを有することを特徴とする水運用計画立案システム。
【請求項7】
前記再立案判定部が前記予測需要量と対応する前記実需要量との差が前記許容差以上であると判定したとき、前記需要予測部は、将来の前記予測需要量を修正することを特徴とする請求項6に記載の水運用計画立案システム。
【請求項8】
前記水運用計画立案装置は、さらに
前記施設、前記配水池および前記管路の接続関係を示す情報、前記管路の流量の上下限値および前記配水池の水量の上下限値を含む前回立案時の施設条件を記憶する施設条件記憶部と、
最新の前記施設条件を記憶する施設条件記憶部とを有し、
前記再立案判定部は、前記立案時の施設条件と最新の施設条件とが異なるか否かを判定条件の1つとし、両施設条件が異なると判定するとき、再立案のために前記需要予測部と前記計画立案部を実行するよう制御することを特徴とする請求項6に記載の水運用計画立案システム。
【請求項9】
前記水運用計画立案装置は、さらに
再計画立案期間を設定する再立案期間作成部を有し、
前記再立案判定部が再立案すると判定したとき、前記再立案期間作成部を実行するよう制御することを特徴とする請求項6に記載の水運用計画立案システム。
【請求項10】
前記再立案判定部は、前記管路、配水池の対象が複数の他の対象に繋がったり、前記施設、分岐部の対象から複数の対象に分岐する広域水系の場合には、各対象の前記差に重み付けした和が前記許容差内か否かを判定することを特徴とする請求項6記載の水運用計画立案システム。
【請求項11】
上水道の導送水管網について水運用計画を立案する情報処理装置による方法において、前記情報処理装置は、CPU、メモリおよび補助記憶装置を有し、
前記補助記憶装置は、各管路の各時刻で始まる所定時間の流量と各配水池の各時刻で始まる所定時間の水量との実績値を記憶する手段と、前記流量と前記水量との計画値を記憶する手段と、各施設や分岐部について各時刻で始まる所定時間の実際の需要量を記憶する手段と、前記需要量に対応する予測需要量を記憶する手段とを有し、
前記メモリに格納されるプログラムを前記CPUで実行することにより実現される方法は、
前記実実需要量にアルゴリズムを適用して前記予測需要量を算出する需要予測ステップと、
前記予測需要量に従い、前記流量と前記水量を最適化する計算を行って前記計画値を計算する計画立案ステップと、
前記計画値と対応する実績値との差が所定の許容差内か否か、および前記予測需要量と対応する実需要量との差が所定の許容差内か否かを判定し、いずれかの差が許容差以上であるとき、再立案のために前記需要予測部と前記計画立案部を実行するよう制御する再立案判定ステップとを有することを特徴とする水運用計画立案方法。
【請求項12】
前記再立案判定ステップが前記予測需要量と対応する前記実需要量との差が前記許容差以上であると判定したとき、前記需要予測ステップは、将来の前記予測需要量を修正することを特徴とする請求項11に記載の水運用計画立案方法。
【請求項13】
前記補助記憶装置は、さらに前記施設、前記配水池および前記管路の接続関係を示す情報、前記管路の流量の上下限値および前記配水池の水量の上下限値を含む前回立案時の施設条件を記憶する手段と、最新の前記施設条件を記憶する手段とを有し、
前記再立案判定ステップは、前記立案時の施設条件と最新の施設条件とが異なるか否かを判定条件の1つとし、両施設条件が異なると判定するとき、再立案のために前記需要予測ステップと前記計画立案ステップを実行するよう制御することを特徴とする請求項11に記載の水運用計画立案方法。
【請求項14】
前記方法は、さらに
再計画立案期間を設定する再立案期間作成ステップを有し、
前記再立案判定ステップが再立案すると判定したとき、前記再立案期間作成ステップを実行するよう制御することを特徴とする請求項11に記載の水運用計画立案方法。
【請求項15】
前記再立案判定ステップは、前記管路、配水池の対象が複数の他の対象に繋がったり、前記施設、分岐部の対象から複数の対象に分岐する広域水系の場合には、各対象の前記差に重み付けした和が前記許容差内か否かを判定することを特徴とする請求項11記載の水運用計画立案方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−102514(P2007−102514A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291925(P2005−291925)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】