説明

氷スラリー充填方法及び装置

【課題】保冷車又は保冷庫等の冷却、冷凍等のために、タンク又は冷却パネルに氷スラリーを充填する際に、簡潔な制御で高IPF充填と充填動作の自動化を可能とする。
【解決手段】タンク30又は冷却パネル52の内部を大気開放弁36を介して大気に開放した状態で、目標とする氷充填率より低い含氷率の氷スラリーdを製氷機20から該タンク又は冷却パネルに充填し、該タンク又は冷却パネルから氷スラリーd中のブラインbのみを製氷機20に回収して、該タンク又は冷却パネル中の氷スラリーdの氷充填率を徐々に増加させ、該タンク若しくは冷却パネルの低部近傍の液圧値又は該タンク若しくは冷却パネルの底部近傍からブラインのみを回収するブライン回収管22に介設されたブライン回収ポンプ23の吸入圧力が設定値まで低下したときに、該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーdが目標氷充填率に到達したと判定して氷スラリーの充填動作を終了するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷車又は保冷庫、又はその他の空間の保冷、冷蔵又は冷凍等に適用され、ダイナミックアイスと呼ばれる氷スラリーをタンク又は内部空間を有する冷却パネルに、高氷充填率で充填でき、かつ充填動作を自動化可能にした方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却装置が必要な空間、例えば居室、非居室、冷蔵庫、冷凍庫、保冷庫、冷凍冷蔵車、保冷車等は、近年の地球環境問題により高効率の冷凍システムが求められている。また、冷凍システムに要する電気代等の費用、夏季昼間の電気需要増加の対策として、授受熱量が大きく冷却能力が大きい潜熱蓄冷材を用いた夜間蓄熱利用の冷凍システムを導入している。冷凍冷蔵車は、荷室内を冷却するためにエンジン駆動の冷凍機を使用するため燃料が必要となるが、CO排出量削減及び輸送コスト削減の観点から燃料消費量を削減することが求められ、潜熱蓄冷材を搭載した保冷車の開発も進められている。
【0003】
潜熱蓄冷材にはダイナミックアイスと呼ばれる氷スラリーが使用され、これを用いた冷凍システムは、すでに開発が進められているが、氷スラリーをタンク又は内部空間を有する冷却パネルに、短時間に高IPF(氷充填率)で充填することは容易ではない。
本出願人が先に提案した特許文献1(特許第3469129号公報)では、潜熱蓄冷材である氷スラリーを貯蔵タンクに貯蔵する場合に、貯蔵タンク内の氷塊化を防止し、攪拌機の動力を小さく保持しつつ高いIPFで氷スラリーを取り出すと共に、それを熱負荷に冷熱を与える熱交換器に安定供給する手段が開示されている。
【0004】
また、本出願人が先に提案した特許文献2(特開2006−242462号公報)及び特許文献3(特開2006−242487号公報)には、氷スラリーの貯蔵タンクから保冷車又は保冷庫に設置するタンク又は内部空間を有する冷却パネルに氷スラリーを供給する手段が開示され、さらには、貯蔵タンクを不要とし、製氷機から搬送される氷スラリーを、直接保冷車に設置するタンク又は内部空間を有する冷却パネルに供給する手段が開示されている。また、複数の保冷車又は保冷庫に同時に氷スラリーを供給する手段が開示されている。特に、特許文献3では、氷スラリーを内部空間を有する冷却パネルに高IPFで充填する手段が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3469129号公報
【特許文献2】特開2006−242462号公報
【特許文献3】特開2006−242487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された氷蓄熱・氷スラリー搬送システムでは、高いIPFの状態で貯蔵タンク内での氷スラリーの氷塊化を防ぎ氷スラリーの流動性を保つために複雑なタンク構造及び配管設備とする必要があり、設備費が高価となると共に、複雑な制御を必要とするという問題がある。
【0007】
また、特許文献2及び特許文献3の氷スラリーの保冷車等への供給システムでは、運転の自動化ができない。氷スラリー等の潜熱蓄冷材をタンク又は内部空間を有する冷却パネルに充填する場合、通常該タンク又は冷却パネルの表面は透明壁ではなく、保冷のため断熱材で覆っていることもあるので、潜熱蓄冷材の充填状態を外部から目視することができず、氷スラリーの充填状況をオンラインで検知するのは容易ではない。そのため、現状、該タンク又は冷却パネルに接続された氷スラリー供給管とブライン回収管とに高価な質量流量計を介設し、氷スラリー供給管及びブライン回収管を流れる氷量を演算して、該タンク又は冷却パネル内に充填された氷スラリーのIPFを求める必要がある。
【0008】
この場合、高価な質量流量計を設けるために、設備費が高価になると共に、複数のタンク又は冷却パネルに同時に氷スラリーを供給する場合には、該タンク又は冷却パネルの数に見合う数の質量流量計を設ける必要があり、設備費が膨大になる。従って、安価な自動化システムが求められている。
また特許文献3に開示された充填手段では、氷スラリーを冷却パネルへ高IPFで充填するために、複雑な制御を必要とし、高価な制御機構を必要とする。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、保冷車又は保冷庫、又はその他の空間の保冷、冷蔵又は冷凍等のために、タンク又は内部空間を有する冷却パネルに氷スラリーからなる潜熱蓄冷材を充填する際に、簡略化された装備で、かつ簡潔な制御で高IPF充填を可能とし、かつ低コストで充填動作の自動化を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、第1の本発明の氷スラリー充填方法は、
製氷機で製造された氷水からなる氷スラリーを熱負荷に冷熱を与えるタンク又は内部空間を有する冷却パネルに充填する氷スラリーの充填方法において、
該タンク又は冷却パネルの内部を大気開放弁を介して大気に開放した状態で、目標とする氷充填率より低い含氷率の氷スラリーを製氷機から該タンク又は冷却パネルに充填すると共に、該タンク又は冷却パネルから氷スラリー中のブラインのみを製氷機に回収することによって、該タンク又は冷却パネル中の氷スラリーの氷充填率を徐々に増加させ、
該タンク若しくは冷却パネルの低部近傍の液圧値又は該タンク若しくは冷却パネルの底部近傍からブラインのみを回収するブライン回収管に介設されたブライン回収ポンプの吸入圧力値又は該ブライン回収管を流れるブラインの温度値が設定値まで低下したときに、該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーが目標氷充填率に到達したと判定して氷スラリーの充填動作を終了するようにしたものである。
【0011】
そして、前記第1の本発明方法を実施するための第1の本発明の氷スラリー充填装置は、
製氷機で製造された氷水からなる氷スラリーを熱負荷に冷熱を与えるタンク又は内部空間を有する冷却パネルに充填する氷スラリーの充填装置において、
製氷機で製造された氷スラリーを該タンク又は冷却パネルに供給する氷スラリー供給管、該タンク又は冷却パネルの底部近傍に設けられたブライン回収ヘッダ、及び該ブライン回収ヘッダで回収されたブラインを製氷機に回収するブライン回収管と、
該タンク又は冷却パネルの上部に設けられた大気開放弁、及び該タンク又は冷却パネルの底部近傍に設けられた液圧計又は該ブライン回収管に介設された回収ポンプの吸入圧力を検知する圧力センサ又は該ブライン回収管に介設された温度センサを備え、
該タンク又は冷却パネルの内部を大気開放弁を介して大気に開放した状態で、該タンク又は冷却パネルへの氷スラリーの供給とブラインの回収を行なって該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーの氷充填率を漸増させ、温度センサ又は圧力センサの検出値が設定値まで低下したときに、該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーが目標氷充填率に到達したと判定して氷スラリーの充填動作を終了するように構成したものである。
【0012】
前記第1の本発明方法及び装置は、製氷機で製造された氷水からなる氷スラリーを熱負荷に冷熱を与えるタンク又は内部空間を有する冷却パネルに直接充填する場合に適用される高IPFの充填方法及び装置である。この場合、製氷機で製造された目標とする氷充填率より低い含氷率の氷スラリーを該タンク又は冷却パネルに充填しながら、該タンク又は冷却パネルから氷スラリー中のブラインのみを製氷機に回収することによって、該タンク又は冷却パネル中の氷スラリーの氷充填率を徐々に増加させる。これによって、高IPFを可能とする。
【0013】
本発明者等は、該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーのIPFが増加してくると、大気開放弁から空気が流入し、高IPFに達した場合、該空気が該タンク又は冷却パネルの底部に達し、瞬間的に液分がなくなり、大気圧以下になる時があることを見出した。この状態を液圧計で検出することにより、目標IPFとなった時を判定することができる。
【0014】
また、本発明者等は、大気開放弁から流入した空気がブライン回収ヘッダ及びブライン回収管を経由することにより、ブライン回収ポンプの吸入圧力が低下する傾向にあることを見出した。そのため、ブライン回収ポンプの吸入圧力が予め設定された設定値まで低下したときに、該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーが目標IPFに到達したと判定することができる。
ブライン回収ポンプの吸入圧力の設定値は、ブライン回収管の構造によって異なるため、理論的な予測は難しいが、試運転等によって確認することによって、正確な設定値を決定することができる。
【0015】
該タンク又は冷却パネル内のIPFが増加するに従い、ブライン回収系統の含水率が低下する。含水率の低下によってブライン濃度が増加し、ブライン濃度の増加によってブライン凍結温度が低下する傾向にある。この性質を利用し、ブライン回収管を流れる回収ブラインの温度が予め設定された設定値まで低下したときをもって目標IPFに達したと判定することができる。これらの検出値に基づいて、目標IPFへの到達時を正確に判定することができる。回収ブラインの温度の設定値は、目標IPFから製氷量及び製氷時間を算出し、試運転等によりその製氷時間に対する回収ブラインの温度を確認することにより、正確な設定値を決定することができる。
【0016】
第1の本発明方法において、好ましくは、前記液圧値又は吸入圧力値と共に、ブライン回収管に回収されたブラインの温度が夫々設定範囲に低下したときに、該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーが目標氷充填率に到達したと判定して氷スラリーの充填動作を終了するようにするとよい。
【0017】
また、第2の本発明の氷スラリー充填方法は、
製氷機で製造された氷水からなる氷スラリーを一旦貯蔵タンクに貯蔵し、該貯蔵タンクに接続された循環管に循環させて含氷率を高めた氷スラリーを熱負荷に冷熱を与えるタンク又は内部空間を有する冷却パネルに充填する氷スラリーの充填方法において、
該タンク又は冷却パネルの内部を大気開放弁を介して大気に開放した状態で、前記循環管から目標とする氷充填率より低い含氷率の氷スラリーを該タンク又は冷却パネルに充填すると共に、該タンク又は冷却パネルから氷スラリー中のブラインのみを循環管に回収することによって、該タンク又はパネル中の氷スラリーの氷充填率を徐々に増加させ、
該タンク若しくは冷却パネルの低部近傍の液圧値又は該タンク若しくは冷却パネルの底部近傍からブラインのみを回収するブライン回収管に介設されたブライン回収ポンプの吸入圧力値が設定値まで低下したときに、該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーが目標氷充填率に到達したと判定して氷スラリーの充填動作を終了するようにしたものである。
【0018】
そして、前記第2の本発明方法を実施するための第2の本発明の氷スラリー充填装置は、
製氷機で製造された氷水からなる氷スラリーを一旦貯蔵タンクに貯蔵し、該貯蔵タンクに接続された循環管に循環させて含氷率を高めた氷スラリーを熱負荷に冷熱を与えるタンク又は内部空間を有する冷却パネルに充填する氷スラリーの充填装置において、
該循環管の氷スラリーを該タンク又は冷却パネルに供給する氷スラリー供給管、該タンク又は冷却パネル内の底面近傍に設けられたブライン回収ヘッダ、及び該ブライン回収ヘッダで回収されたブラインを循環管に回収するブライン回収管と、
該タンク又は冷却パネルの上部に設けられた大気開放弁、該タンク又は冷却パネルの底部近傍に設けられた液圧計又は該ブライン回収管に介設されたブライン回収ポンプの吸入圧力を検知する圧力センサと、を備え、
該タンク又は冷却パネルの内部を大気開放弁を介して大気に開放した状態で、該タンク又は冷却パネルへの氷スラリーの供給とブラインの回収を行なって該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーの氷充填率を漸増させ、液圧計又は圧力センサの検出値が設定値まで低下したときに、該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーが目標氷充填率に到達したと判定して氷スラリーの充填動作を終了するように構成したものである。
【0019】
第2の本発明方法及び装置は、製氷機で製造した氷スラリーを一旦貯蔵タンクに貯蔵し、貯蔵タンクに接続された循環管に循環させて含氷率を高めた氷スラリーを熱負荷に冷熱を与えるタンク又は内部空間を有する冷却パネルに充填する場合に適用されるものである。
この場合、最初から高含氷率の氷スラリーを該タンク又は冷却パネルに充填できるので、第1の本発明と比べて、充填時間を短縮することができる。
【0020】
第2の本発明方法及び装置では、循環管に複数の氷スラリー供給管及び複数のブライン回収管を設けて、該循環管から複数のタンク又は冷却パネルへの氷スラリーの供給とブラインの回収を同時に行なうことができる。この場合、各タンク又は冷却パネルに設けられた液面レベルセンサにより各タンク又は冷却パネルの液面レベルを設定範囲に保持しながら氷スラリーの充填動作を行なうようにするとよい。これによって、該タンク又は冷却パネルから氷スラリーがオーバーフローすることもなく、高IPF充填が可能になる。
【0021】
第1及び第2の本発明装置において、熱負荷に冷熱を与えた後の回収ブラインを該タンク又は冷却パネル内に貯留された氷スラリーの液面に散布するように構成するとよい。これによって、氷スラリー液面の氷を解氷し、解氷による熱交換で回収ブラインを再び低温とすることができ、該低温ブラインを熱負荷との熱交換に供給することができる。
【0022】
また、第1及び第2の本発明装置において、氷スラリー供給口を前記タンク又は冷却パネルの一側壁に設け、液圧計を該側壁に対向した側壁の近傍に設けるようにするとよい。本発明者等は、多くの実験を重ね、該タンク又は冷却パネルの底部近傍で氷スラリー供給口と離れた該対向側壁の近傍に設けた液圧計の液圧値が氷スラリーのIPFに緊密に対応することを見出した。そのため、液圧計を該場所に設けることによって、目標IPFを正確に判定することができることを見出した。
【0023】
また、第1及び第2の本発明装置において、ブライン回収ヘッダの周囲を氷粒を分離可能なメッシュ度を有するスクリーンで該ブライン回収ヘッダの外周面と間隔を開けて同心状に覆い、ブライン回収ヘッダ近傍のタンク又は冷却パネルの壁面に氷スラリー供給口をブライン回収ヘッダに向けて開口し、氷スラリー供給口から流入した氷スラリーの流れによって該スクリーンに堆積した氷粒を飛散させるように構成するとよい。これによって、氷粒の堆積による該スクリーンの目詰まりを防止することができる。
【0024】
前記構成に加えて、ブライン回収ヘッダに氷スラリー中のブラインを流入させる細孔をブライン回収ヘッダ周面のうち少なくとも互いに対向する2つの領域に穿設するとよい。このように、2つの領域に細孔を配置することにより、ブライン回収ヘッダに流入する回収ブラインが一方の細孔に偏流するのを防止し、ブライン回収ヘッダでの氷粒による閉塞を防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
第1の本発明方法及び装置によれば、簡略化された装備で、かつ簡潔な制御で氷スラリーの高IPF充填を可能にすると共に、簡易な手段で目標IPFとなる時点を外部から正確に検知できるため、高価な質量流量計を設ける必要がなく、低コストで充填動作を自動化することができる。
【0026】
また、第2の本発明方法及び装置によれば、前記作用効果に加えて、複数のタンク又は冷却パネルに同時に氷スラリーを供給可能であると共に、最初から高含氷率の氷スラリーを供給できるため、充填時間を短縮することができる。
第1及び第2の本発明は、保冷車又は冷凍冷蔵車等の車両の保冷、冷蔵、冷凍に適用できるだけでなく、居室、非居室等の冷房、保冷庫の保冷、冷蔵、冷凍等にも広く適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0028】
(実施形態1)
第1の本発明の一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る氷スラリー充填装置の全体構成図、図2は氷スラリーを充填するタンクの正面図、図3は同じく左側面図、図4は同じく右側面図である。
【0029】
図1〜4において、冷凍機ユニット10及び製氷機20が設置され、冷凍機ユニット10と製氷機20間には循環管11が架設されている。循環管11に冷媒が循環し、製氷機20で冷媒の冷熱によりブラインを製氷している。製氷機20では含氷率が約5重量%程度の氷スラリーを製造している。製氷機20で製造された氷スラリーは、一旦タンク30に送られ、タンク30に貯留される。氷スラリーは後述するタンク30のブライン回収ヘッダ32で氷粒と低温ブラインとが分離され、低温ブラインは熱負荷側熱交換器40に送られ、熱負荷側熱交換器40で熱負荷と熱交換して熱負荷に冷熱を与える。
【0030】
タンク30の一側面には氷スラリー供給口31が設けられ、氷スラリー供給口31と製氷機20とは氷スラリー供給管21によって接続されている。製氷機20で製造された氷スラリーは氷スラリー供給管21を介してタンク30に送られる。タンク30内の底部には、底面近傍に沿って水平方向にブライン回収ヘッダ32が配置されている。ブライン回収ヘッダ32は中空の円筒形状をなし、左右側の周壁に一列に多数の細孔321が穿設されている。
【0031】
ブライン回収ヘッダ32の外周側には、氷スラリー中の氷粒を分離可能なメッシュ度(例えば40メッシュ)を有する2巻き張りの金網322がブライン回収ヘッダ32の外周との間に間隔を置いて同心状に配置されている。ブライン回収ヘッダ32の左右端部は、タンク30の側壁に接続され、該接続部のタンク側壁にブライン送り口323とブライン回収口324とが穿設されている。ブライン送り口323はブライン送り管41に接続し、ブライン回収口324は、製氷機20にブラインを回収するブライン回収管22に接続されている。
【0032】
ブライン送り管41には循環ポンプ43が介設され、ブライン送り管41を通して氷粒を分離した低温ブラインが熱負荷側熱交換器40に送られる。熱負荷側熱交換器40で熱交換した後のブラインは戻り管42を介してタンク30に戻される。戻り管42はタンク30の上部隔壁に設けられたブライン戻り口33に接続されている。
【0033】
タンク30内の上部には、中空円筒形状をなす散水ヘッダ34が水平方向に配置されている。散水ヘッダ34には多数のスプレーノズル35が間隔を置いて配設されている。スプレーノズル35のノズル口は貯留される氷スラリーの液面lに向けられている。これによって、熱負荷側熱交換器40で熱交換した後のブラインは、ブライン戻り口33を経由して散水ヘッダ34に入り、その後、スプレーノズル35から氷スラリーの液面に散布される。
【0034】
ブライン回収管22には、ブライン回収ポンプ23、ブライン回収ポンプ23の吸入圧力を検出する吸入圧力計24、ブライン回収温度計25、及び開閉弁26が介設されている。また、タンク30の天井面には、タンク30内を外気に開放可能な大気開放弁36が設けられ、タンク30の底部には、タンク内温度計37が設けられている。また、氷スラリー供給管21、ブライン送り管41及びブライン戻り管42には、夫々開閉弁27、44及び45が介装されている。
【0035】
図2〜4に示すように、タンク30の底部において、氷スラリー供給口31は、ブライン回収ヘッダ32と同一高さに配置され、ブライン送り口323の近傍に並設されている。そして、氷スラリー供給口31はブライン回収口324とは、互いにタンク30の相対する側面壁に離れて配置されている。
【0036】
かかる構成を有する本実施形態において、タンク30への充填方法は、充填開始時は運転ボタンを押すか、あるいはタンク30内の温度上昇により自動運転が開始される。製氷機20に製造された氷スラリーは、5重量%程度の含氷率を有するが、この氷スラリーがタンク30の氷スラリー供給口31からタンク30内に流入する付近の氷スラリーの挙動を図5に基づいて説明する。図5はタンク30内での氷スラリーの挙動を示す平面視説明図である。図5において、氷スラリーdは、タンク30内で周囲の氷スラリーと氷粒iが圧密されて、含氷率の高い氷スラリーdを形成する。
【0037】
一方で、ブライン回収ヘッダ32の周囲に配置された金網322で氷スラリーdからブラインbのみが分離される。金網322の内側に流入したブラインbは、含氷率が低くほとんど氷粒iを含まない。ブラインbはさらにブライン回収ヘッダ32の両側面に設けられた細孔321からブライン回収ヘッダ32内に流入する。そして、ブライン回収口324を介してブライン回収管22に回収される。
【0038】
このようにして、製氷機20からタンク30に氷スラリーdが供給されると共に、ブライン回収ヘッダ32からブラインbのみが製氷機20に回収されるので、タンク30内の氷スラリーdのIPFは徐々に増加する。これによって、タンク30内に貯留する氷スラリーdのIPFを高めることができるので、氷粒iの潜熱を利用して冷却能力を高めることができる。
【0039】
例えば、タンク30に含氷率0%のブラインが100kgあり、ここからタンク30内のIPFを40重量%(タンク30内氷量40kg)にする運転を行なう場合の充填時間を以下に説明する。例えば含氷率5重量%程度の氷スラリーを100kg/分で供給する場合、氷は5kg/分でタンク30に供給される。そして、含氷率0%のブラインを100kg/分で回収する運転では、タンク30内の氷量は5kg/分で増加するため、8分で40kgとなり、8分でタンク30内のIPF40重量%を達成する。
【0040】
ただし、実際に必要な時間は、氷スラリー供給管21、タンク30、ブライン回収管22及び製氷機20内のブラインを氷スラリーとする温度まで冷却する時間も加算されるため、8分以上の充填時間を必要とする。
【0041】
本実施形態では、氷スラリー供給口31を横向きに配置している。このように、氷スラリー供給口31を1個とし、氷スラリー供給口31を通過する氷スラリーdの流速を1〜2m/秒とし、かつ氷スラリーdをタンク30内に横向きに噴き出させることによって、氷スラリーの停滞や貯氷の偏りを防止できて、高IPFを可能とする。
【0042】
また、ブライン回収ヘッダ32内のブラインの流速を1m/秒程度とし、細孔321を通過するブラインの流速を0.3〜0.4m/秒とし、細孔321をブライン回収ヘッダ32の両側面の2領域に形成し、ブライン回収ヘッダ32の周囲に2巻き張りの金網322を配置することにより、氷の停滞や貯氷の偏りが発生せず、高IPFを容易に達成することができる。
【0043】
また、本実施形態では、図5に示すように、金網322の面に沿って氷スラリーdが流入するように氷スラリー供給口31を配置したので、流入した氷スラリーdが金網322上の氷粒iを飛散させ、金網322に閉塞を防止する効果をもつ。
【0044】
本実施形態では、大気開放弁36を開放した状態でタンク30への氷スラリーの供給とブラインbの製氷機20への回収を行なう。タンク30に貯留した氷スラリーdが高IPFに達した時、大気開放弁36からタンク30内に空気が流入し、該空気がブライン回収ヘッダ32及びブライン回収口324を経て、ブライン回収管22に到達する。そして、ブライン回収ポンプ23の吸入圧力を低下させる。
【0045】
また、高IPFになるにつれて、ブライン回収管22を流れるブラインbの含水率が低下し、濃度が増加し、ブライン凍結温度が低下する。本実施形態では、ブライン回収ポンプ23の吸入圧力計24によりブライン回収ポンプ23の吸入圧力を検出し、かつブライン回収温度計25によりブライン回収管22を流れるブラインbの温度を検出し、これらの検出値が予め設定された設定値に達した時をもって、高IPF到達時点を判定することができる。
【0046】
なお、ブライン回収温度計25の設定値は、目標とするIPFから製氷量及び製氷時間を算出し、試運転等でその製氷時間に対する回収ブラインの温度値を確認し決定した方が確実である。また、ブライン回収ポンプ23の吸入圧力の設定値は、ブライン回収管22の構造及び施行状況によるため、理論的な予測が難しいが、施行後の試運転等によって確認し決定した方が確実である。
【0047】
図6は、タンク30内への氷スラリー充填時における、ブライン回収温度計25の検出値(曲線ト)、吸入圧力計24の検出値(曲線チ)、及びタンク30内氷スラリーdのIPF(曲線ニ)等の経時変化を示す。なお、タンク30内のブライン量は約100kg、氷スラリー供給流量及びブライン回収流量が30kg/分、充填完了時のIPFが約40重量%である。タンク30内への氷スラリー充填完了時は、ブライン回収温度(曲線ト)及びブライン回収ポンプ23の吸入圧力(曲線チ)が低下する傾向が見られる。
【0048】
従って、目標とするIPFに対応するこれらの値の設定値を予め設定しておき、これらの値が該設定値に到達した時をもって充填完了時と判定することができる。そのため、充填運転の自動化が可能となる。タンク30は通常透明壁ではなく、保冷のため断熱材で覆っていることもある。そのため、タンク30内を目視することができず、氷スラリーの充填状況をオンラインで検知するのは容易ではなく、運転の自動化も困難であった。本実施形態によって、運転の自動停止が可能となる。さらに、本実施形態によれば、質量流量計等の効果な検知器を必要とせず、低コストで自動化することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、熱負荷側熱交換器40で熱交換された後の昇温されたブラインbは、タンク30に戻って散水ヘッダ34及びスプレーノズル35により氷スラリーdの液面lに均一に散布される。これによって、液面の氷スラリーを解氷し、解氷による熱交換で再び低温のブラインとなるため、低温となったブラインを熱負荷との熱交換用ブラインとして使用することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、氷スラリーdの液中にブライン回収ヘッダ32以外のものを設けていない。タンク30内にリブ等があると、氷スラリーの充填時にそれらに氷粒が引っ掛かり、液面まで氷粒が浮上しないため、高IPFに達しない。さらに、氷粒の引っ掛かりは時間経過と共に氷塊化するため、熱負荷側熱交換器40で昇温されたブラインをタンク30内の氷スラリー液面に散布しても該氷塊を解氷することができない。そのため、氷塊が残っているにも拘らず、熱負荷側熱交換器40へのブライン送り温度は上昇し、熱負荷を冷却できない。従って、氷スラリーdの液中にブライン回収ヘッダ32以外のものを設けないようにすることが望ましい。
【0051】
熱負荷側熱交換器40は、居室等の空気を熱交換する熱交換器(エアクーラ)であってもよく、あるいは液体を冷却する熱交換器(例えば、プレート熱交換器、シェルアンドチューブ熱交換器等)であってもよい。また、タンク30は、保冷車に搭載された氷スラリー貯留タンクであってもよい。
【0052】
(実施形態2)
次に前記第1実施形態の変形例を図7に基づいて説明する。図7は、陸上に設けられた製氷機20で製造した氷スラリーdを保冷車の荷室に設置された冷却パネルに充填する場合を示す模式図である。なお、図7において、前記第1実施形態と同一の符号を付した部材又は機器は第1実施形態と同一の部材又は機器であることを意味する。
【0053】
図7において、保冷車50の荷室51内の天井面には、内部に潜熱蓄冷材を供給可能な空間を有する冷却パネル52が装着されている。製氷機20に接続された氷スラリー供給管21は、接続部53で冷却パネル52に接続された氷スラリー送り管54に接続されると共に、ブライン回収ポンプ23が介設されたブライン回収管22は、接続部53で冷却パネル52に接続された氷スラリー戻り管55に接続される。
【0054】
接続部53では、カプラ53aによって接続及び切り離し可能となっており、かつ保冷車50側及び地上側の配管に自動開閉弁53bが装着されて、管21,22及び54,55を接続時に自動開放し、切り離し時に自動閉鎖するように構成されている。
本実施形態は、第1実施形態のタンク30に代えて、保冷車50に装着された冷却パネル52に氷スラリーdを充填するようにしたものである。このように、本発明は、保冷車50の荷室51に装着された冷却パネル52に氷スラリーdを充填する場合にも適用可能である。
【0055】
(実施形態3)
次に第2の本発明の一実施形態を図8〜図10に基づいて説明する。図8は本実施形態に係る氷スラリー充填装置の全体構成図である。図8において、前記第1実施形態の部材又は機器と同一の符号を付した部材又は機器は同一の構成を有するものであるので、それらの説明を省略する。
図8において、製氷機20で製造された氷スラリーは送り管20aから貯蔵タンク60に送られる。そして、貯蔵タンク60内のブラインがブライン循環ポンプ20cを介装された戻り管20bを通して製氷機20に戻される。
【0056】
このようにして、貯蔵タンク60内では徐々に氷粒が蓄積され、含氷率が高い氷スラリーが形成されていく。貯蔵タンク60には氷スラリー循環管61が接続され、循環ポンプ62により氷スラリー循環管61内を氷スラリーが常時循環されている。氷スラリー循環管61には、含氷率センサ63と三方弁64が介設されている。三方弁64と貯蔵タンク60との間では、三方弁64と高さが異なる氷取出口60a及びブライン取出口60bとが接続されている。
【0057】
氷取出口60a又はブライン取出口60bからはその高さの違いから含氷率が異なる氷スラリーを取り出すことができる。従って、両取出口からの氷スラリーの流量を調整することにより、氷スラリー循環管61を循環する氷スラリーの含氷率を調整することができる。そして、含氷率センサ63で氷スラリー循環管61内の含氷率を検出し、その検出値をフィードバックさせて、三方弁64にて循環管61を流れる氷スラリーの含氷率が15〜25重量%となるように制御されている。
【0058】
氷スラリー循環管61には、夫々氷スラリーを充填するタンク30の数に見合う数の接続口を有する氷スラリー供給ヘッダ65及びブライン回収ヘッダ66が設けられている。氷スラリー供給ヘッダ65のひとつの接続口65aにタンク30のひとつに氷スラリーを供給する氷スラリー供給管21が接続され、氷スラリー供給管21には氷スラリー供給ポンプ67及び充填三方弁68が介装されている。三方弁68で氷スラリー供給管21から分岐したバイパス管69がブライン回収管22に接続されている。
【0059】
また、夫々のタンク30には、高液面レベルHを検出する液面高検知センサ71と、低液面レベルLを検出する液面低検知センサ72とが設置されている。また、アース73が設けられると共に、タンク底面にはタンク内液面差圧計74が設けられ、タンク底部での氷スラリーの液圧を検出可能となっている。
【0060】
かかる構成の本実施形態において、タンク30へ氷スラリー循環管61から氷スラリーを充填する場合には、氷スラリー供給ヘッダ65から供給ポンプ67により氷スラリー供給管21に氷スラリーdが供給される。そして、氷スラリーdは、氷スラリー供給管21から氷スラリー供給口31を介してタンク30内に供給される。一方、ブライン回収ポンプ23でブライン回収ヘッダ32及びブライン回収口324を介して氷粒がほとんど混入していないブラインbが氷スラリー循環管61のブライン回収ヘッダ66に回収される。
【0061】
これにより、時間経過と共にタンク30内のIPFが増加し、高IPFの充填が可能となる。例えば、タンク30内に含氷率0%のブラインが100kgあり、タンク30内のIPFを40重量%(タンク30内氷量40kg)としたい場合、含氷率20重量%程度の氷スラリーを100kg/分でタンク30に供給し、即ち氷量が20kg/分でタンク30内に供給され、含氷率0%のブラインが100kg/分でタンク30から回収される運転では、タンク30内の氷量は20kg/分の割合で増加し、2分で40kgとなり、IPF40重量%を達成する。
【0062】
従って、前記第1実施形態の場合よりも充填時間を短縮することができる。なお、実際に必要な充填時間は、氷スラリー供給管21、タンク30及びブライン回収管22のブラインを氷スラリーが形成される温度まで冷却する時間を加算する必要がある。しかし、前記第1実施形態のように、製氷機20に貯留されたブラインを考慮する必要はなくなるので、その分充填時間を短縮することができる。
【0063】
タンク30への充填方法は、充填開始時は運転ボタンを押すか、あるいはタンク30内の温度上昇により自動運転が開始される。運転開始と同時に充填三方弁68がx方向に開き、以下の制御で氷スラリーが充填される。充填中は大気開放弁36を開放しておく。
【0064】
液面高検知センサ71に氷スラリーdの液面レベルがある場合、即ち高液面レベルHの場合、ブライン回収ポンプ23のみ運転する。そして、ブラインの回収により液面低検知センサ72に液面レベルが達した場合、即ち低液面レベルLとなった時点でブライン回収ポンプ23を停止し、代わりに氷スラリー供給ポンプ67を稼動させる。氷スラリーの供給により液面高検知センサ71に液面レベルが達した時点、即ち高液面レベルHとなった時点で、氷スラリー供給ポンプ67を停止し、代わりにブライン回収ポンプ23を稼動させる。
なお、氷スラリー供給ポンプ67を停止する代わりに、充填三方弁68を操作して氷スラリーをy方向に、即ちバイパス管69に流すようにしてもよい。
【0065】
高液面レベルHより低い液面の場合は、氷スラリー供給ポンプ67のみ稼動させる。そして、氷スラリーの供給により高液面レベルHに達した時点で氷スラリー供給ポンプ67を停止し、代わりにブライン回収ポンプ23を稼動させる。ブラインの回収により低液面レベルLに達した時点でブライン回収ポンプ23を停止させ、代わりに氷スラリー供給ポンプ67を稼動させる。
【0066】
このようにして、氷スラリーの充填中は、液面高検知センサ71及び液面低検知センサ72の液面検知により、氷スラリー供給ポンプ67及びブライン回収ポンプ23の運転と停止を繰り返す。これによって、タンク30から氷スラリーdがオーバーフローすることなく、タンク30内の氷スラリー量を増加させ、IPFを増加させることができる。
【0067】
なお、氷スラリーの充填時に、熱負荷側熱交換器40へのブライン循環運転を同時に実施した場合には、充填時の液面レベル制御に必要な液面高検知センサ71及び液面低検知センサ72に、散水ヘッダ34及びスプレーノズル35から散布されたブラインが常時接触する。このため、液面レベルが高液面レベルHにあると誤検知され、この誤検知によりブライン回収ポンプ23のみの運転となり、タンク30内の液量が低下することになる。
この誤動作を防止するために、液面高検知センサ71及び液面低検知センサ72の液面検知部以外の部分に絶縁カバー等を被覆しておくとよい。
【0068】
充填完了時は、タンク内液面差圧計74及びブライン回収ポンプ23の吸入圧力計24の検出値が予め設定された設定値まで低下した時に、目標となるIPFに達したと判定して、氷スラリー供給ポンプ67及びブライン回収ポンプ23を自動停止させ、充填三方弁68をy方向に開く。前記第1実施形態では、ブライン回収温度計25の検出値を元に自動停止させたが、本実施形態では有効ではない。なぜなら、すでに貯蔵タンク60でブラインの濃度増加によるブライン凍結温度の低下が発生しているからである。
【0069】
以下、本実施形態の充填完了時の自動停止方法を説明する。タンク30内が高IPFに達した場合、ブライン回収ポンプ23の稼動により大気開放弁36からタンク30内に空気が流入し、ブライン回収口324付近が大気圧以下になる。即ち、瞬間的に液がなくなった状態をタンク内液面差圧計74で検知することで、充填完了時を判定することができる。タンク内液面差圧計74の検出値が予め設定された設定値まで低下した時を目標とするIPFに達した時と判定して自動停止させる。
【0070】
また、前記第1実施形態と同様に、ブライン回収ポンプ23の吸入圧力が予め設定された設定値まで低下した時をもってタンク30内の氷スラリーが目標とするIPFに達したと判定する。
【0071】
図9は、タンク30への氷スラリー充填時における、氷スラリー供給流量、ブライン回収流量、タンク内液面差圧、ブライン回収ポンプ23の吸入圧力、タンク30内の氷スラリーIPF等の経時変化を示す線図である。タンク30内のブライン量は約100kg、氷スラリー供給流量は20kg/分、ブライン回収流量が30kg/分、充填完了の目標IPFが約50重量%の場合の実験データである。
【0072】
図9から、タンク30内の氷スラリー充填完了時は、タンク内液面差圧(曲線リ)及びブライン回収ポンプ23の吸入圧力(曲線チ)が低下していることがわかる。従って、これらの値について予め設定値を決めておき、これらの検出値が該設定値まで低下した時をもって目標IPFに達したと判定することができる。これによって、充填装置の自動停止が可能となる。
【0073】
氷スラリー供給ポンプ67及びブライン回収ポンプ23はタンク30内の氷スラリーdの液面レベルlの調整のため、交互に稼動又は停止を繰り返している。そのため、回収流量曲線ホは、30kg/分と0kg/分の繰り返しを示している。しかし、氷スラリーの供給は、氷スラリー供給ポンプ67が停止している時でも、大型の貯蔵タンク60の液位がタンク30より高いので、その落差により氷スラリーの供給が継続されている。従って、氷スラリー供給ポンプ67が停止した時でも20kg/分の氷スラリーが供給されている。
【0074】
図10は、タンク30内への氷スラリー充填時における、液面差圧3箇所の経時変化を示す線図である。図から、タンク内液面差圧計74の設置箇所は、タンク30内のブライン回収口324付近の底面又は側面が良いことがわかる。氷スラリー供給口31付近の底面又は側面は、液面差圧の変化がほとんどなく、タンク30の中央底面は、ブライン回収口324よりも早く液面低下が発生する傾向にあり、これをもって充填完了時を判定することはできない。
【0075】
本実施形態によれば、貯蔵タンク60内で高IPFの氷スラリーを形成した後、タンク30に高IPFの氷スラリーを充填できるので、充填時間を短縮することができる。また、貯蔵タンク60に氷スラリー循環管61を接続したことにより、複数のタンク30に同時に氷スラリーを供給することができる。
【0076】
また、タンク内液面差圧計74の検出値及びブライン回収ポンプ23の吸入圧力検出値を予め設定した設定値と比較することで充填完了時点を判定することができるので、充填装置の自動停止が可能となる。なお、タンク内液面差圧計74はブライン回収口324付近のタンク底面に配置しているので、タンク内液面差圧計74の検出値で氷スラリーの充填完了時点を正確に判定することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、複数のタンク30に氷スラリーを充填しているが、図7に示すような、複数の保冷車の荷室に装着された冷却パネルに同時に氷スラリーを充填することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、保冷車又は保冷庫、又はその他の空間の保冷、冷蔵又は冷凍等のために、タンク又は内部空間を有する冷却パネルに氷スラリーからなる潜熱蓄冷材を充填する際に、簡略化された装備で、かつ簡潔な制御で高IPF充填を可能とし、かつ低コストで充填動作の自動化を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】第1の本発明の一実施形態に係る氷スラリー充填装置の全体構成図である。
【図2】前記実施形態に係るタンク30の正面図である。
【図3】前記実施形態に係るタンク30の左側面図である。
【図4】前記実施形態に係るタンク30の右側面図である。
【図5】前記実施形態でタンク30内での氷スラリーの挙動を示す平面視説明図である。
【図6】前記実施形態で氷スラリー充填時の各検出値を示す線図である。
【図7】前記実施形態の変形例に係る氷スラリー充填装置の全体構成図である。
【図8】第2の本発明の一実施形態に係る氷スラリー充填装置の全体構成図である。
【図9】図8の実施形態で氷スラリー充填時の各検出値を示す線図である。
【図10】図8の実施形態でタンク内液面差圧の実験データを示す線図である。
【符号の説明】
【0080】
20 製氷機
21 氷スラリー供給管
22 ブライン回収管
23 ブライン回収ポンプ
24 吸入圧力計
25 ブライン回収温度計
30 タンク
31 氷スラリー供給口
32 ブライン回収ヘッダ
34 散水ヘッダ
35 スプレーノズル
36 大気開放弁
40 熱負荷側熱交換器
52 冷却パネル
60 貯蔵タンク
61 循環管
74 タンク内液面差圧計
321 細孔
322 金網(スクリーン)
b ブライン
d、d、d 氷スラリー
l 氷スラリー液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製氷機で製造された氷水からなる氷スラリーを熱負荷に冷熱を与えるタンク又は内部空間を有する冷却パネルに充填する氷スラリーの充填方法において、
該タンク又は冷却パネルの内部を大気開放弁を介して大気に開放した状態で、目標とする氷充填率より低い含氷率の氷スラリーを製氷機から該タンク又は冷却パネルに充填すると共に、該タンク又は冷却パネルから氷スラリー中のブラインのみを製氷機に回収することによって、該タンク又は冷却パネル中の氷スラリーの氷充填率を徐々に増加させ、
該タンク若しくは冷却パネルの低部近傍の液圧値又は該タンク若しくは冷却パネルの底部近傍からブラインのみを回収するブライン回収管に介設されたブライン回収ポンプの吸入圧力値又は該ブライン回収管を流れるブラインの温度値が設定値まで低下したときに、該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーが目標氷充填率に到達したと判定して氷スラリーの充填動作を終了するようにしたことを特徴とする氷スラリー充填方法。
【請求項2】
前記液圧値又は吸入圧力値と共に、前記ブライン回収管に回収されたブラインの温度が夫々設定範囲に低下したときに、前記タンク又は冷却パネル内の氷スラリーが目標氷充填率に到達したと判定して氷スラリーの充填動作を終了するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の氷スラリー充填方法。
【請求項3】
製氷機で製造された氷水からなる氷スラリーを一旦貯蔵タンクに貯蔵し、該貯蔵タンクに接続された循環管に循環させて含氷率を高めた氷スラリーを熱負荷に冷熱を与えるタンク又は内部空間を有する冷却パネルに充填する氷スラリーの充填方法において、
該タンク又は冷却パネルの内部を大気開放弁を介して大気に開放した状態で、前記循環管から目標とする氷充填率より低い含氷率の氷スラリーを該タンク又は冷却パネルに充填すると共に、該タンク又は冷却パネルから氷スラリー中のブラインのみを循環管に回収することによって、該タンク又はパネル中の氷スラリーの氷充填率を徐々に増加させ、
該タンク若しくは冷却パネルの低部近傍の液圧値又は該タンク若しくは冷却パネルの底部近傍からブラインのみを回収するブライン回収管に介設されたブライン回収ポンプの吸入圧力値が設定値まで低下したときに、該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーが目標氷充填率に到達したと判定して氷スラリーの充填動作を終了するようにしたことを特徴とする氷スラリー充填方法。
【請求項4】
前記循環管に複数の氷スラリー供給管及び複数のブライン回収管を設けて、該循環管から複数のタンク又は冷却パネルへの氷スラリーの供給とブラインの回収を同時に行ない、
各タンク又は冷却パネルに設けられた液面レベルセンサにより各タンク又は冷却パネルの液面レベルを設定範囲に保持しながら氷スラリーの充填動作を行なうようにしたことを特徴とする請求項3に記載の氷スラリー充填方法。
【請求項5】
製氷機で製造された氷水からなる氷スラリーを熱負荷に冷熱を与えるタンク又は内部空間を有する冷却パネルに充填する氷スラリーの充填装置において、
製氷機で製造された氷スラリーを該タンク又は冷却パネルに供給する氷スラリー供給管、該タンク又は冷却パネルの底部近傍に設けられたブライン回収ヘッダ、及び該ブライン回収ヘッダで回収されたブラインを製氷機に回収するブライン回収管と、
該タンク又は冷却パネルの上部に設けられた大気開放弁、及び該タンク若しくは冷却パネルの底部近傍に設けられた液圧計又は該ブライン回収管に介設された回収ポンプの吸入圧力を検知する圧力センサ又は該ブライン回収管に介設された温度センサを備え、
該タンク又は冷却パネルの内部を大気開放弁を介して大気に開放した状態で、該タンク又は冷却パネルへの氷スラリーの供給とブラインの回収を行なって該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーの氷充填率を漸増させ、温度センサ又は圧力センサの検出値が設定値まで低下したときに、該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーが目標氷充填率に到達したと判定して氷スラリーの充填動作を終了するように構成したことを特徴とする氷スラリー充填装置。
【請求項6】
製氷機で製造された氷水からなる氷スラリーを一旦貯蔵タンクに貯蔵し、該貯蔵タンクに接続された循環管に循環させて含氷率を高めた氷スラリーを熱負荷に冷熱を与えるタンク又は内部空間を有する冷却パネルに充填する氷スラリーの充填装置において、
該循環管の氷スラリーを該タンク又は冷却パネルに供給する氷スラリー供給管、該タンク又は冷却パネル内の底面近傍に設けられたブライン回収ヘッダ、及び該ブライン回収ヘッダで回収されたブラインを循環管に回収するブライン回収管と、
該タンク又は冷却パネルの上部に設けられた大気開放弁、該タンク若しくは冷却パネルの底部近傍に設けられた液圧計又は該ブライン回収管に介設されたブライン回収ポンプの吸入圧力を検知する圧力センサを備え、
該タンク又は冷却パネルの内部を大気開放弁を介して大気に開放した状態で、該タンク又は冷却パネルへの氷スラリーの供給とブラインの回収を行なって該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーの氷充填率を漸増させ、液圧計又は圧力センサの検出値が設定値まで低下したときに、該タンク又は冷却パネル内の氷スラリーが目標氷充填率に到達したと判定して氷スラリーの充填動作を終了するように構成したことを特徴とする氷スラリー充填装置。
【請求項7】
熱負荷に冷熱を与えた後の回収ブラインを該タンク又は冷却パネル内に貯留された氷スラリーの液面に散布するように構成したことを特徴とする請求項5又は6に記載の氷スラリー充填装置。
【請求項8】
氷スラリー供給口を前記タンク又は冷却パネルの一側壁に設け、液圧計を該側壁に対向した側壁の近傍に設けたことを特徴とする請求項5又は6に記載の氷スラリー充填装置。
【請求項9】
前記ブライン回収ヘッダの周囲を氷粒を分離可能なメッシュ度を有するスクリーンで該ブライン回収ヘッダの外周面と間隔を開けて同心状に覆い、
ブライン回収ヘッダ近傍のタンク又は冷却パネルの壁面に氷スラリー供給口をブライン回収ヘッダに向けて開口し、氷スラリー供給口から流入した氷スラリーの流れによって該スクリーンに堆積した氷粒を飛散させるように構成したことを特徴とする請求項5又は6に記載の氷スラリー充填装置。
【請求項10】
前記ブライン回収ヘッダに氷スラリー中のブラインを流入させる細孔をブライン回収ヘッダ周面のうち少なくとも互いに対向する2つの領域に穿設したことを特徴とする請求項9に記載の氷スラリー充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図7】
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