説明

氷飲料ディスペンサ

【課題】低トルクでアジテータを動作してアイスビン内における氷塊の生成を防ぐことのできる氷飲料ディスペンサを提供する。
【解決手段】氷飲料ディスペンサ1の内部の上部アイスビン12に、アジテータ14とオーガ15とが設けられている。オーガ15は、上部アイスビン12内において略水平に設けられ、アジテータ14の回転軸21がオーガ15に対向して設けられている。アジテータ14は、回転可能に設けられた回転軸21と、回転軸21に固定された3つのステイ22a,22b,22cと、ステイ22a〜22cのそれぞれの端部に設けられたブレード23a,23b,23cとから構成されている。回転軸21の長さ方向に関して隣り合うステイ22a及び22bと、ステイ22b及び22cとはそれぞれ、回転軸21を中心として互いに120°の角度をなしている。また、ブレード23a〜23cはそれぞれ、回転軸21よりも短い長さを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、氷及び飲料を注出可能な氷飲料ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
氷及び飲料を注出可能な従来の氷飲料ディスペンサが、例えば特許文献1等に記載されている。従来の氷飲料ディスペンサには様々な構成のものがあるが、その一例の構成を図7に示す。この氷飲料ディスペンサ50は内部に、氷を蓄えるアイスビン51を備えている。アイスビン51には、氷を攪拌するためのアジテータ52と、アイスビン51から氷を放出するためのオーガ53とが設けられている。オーガ53は、アイスビン51内において略水平に設けられ、アジテータ52の回転軸54がオーガ53に対向して設けられている。
【0003】
アジテータ52は、回転軸54と、ステイ55を介して回転軸54に平行に設けられた2つのブレード56と、ステイ55を補強するためのサポート57と、回転軸54から垂直に延びるように設けられたバー58とを備えている。アイスビン51の底部は、アジテータ52が回転する際にブレード56が描く円弧と同心円状の円弧形状を有している。
【0004】
アジテータ52が回転すると、ブレード56は、回転軸54を中心とした円を描きながら回転する。この際、ブレード56は、アイスビン51の底部に沿って氷を掻き上げてオーガ53に氷を運ぶ。オーガ53に供給された氷は、オーガ53によって氷飲料ディスペンサ50から放出される。また、アジテータ52の回転によって、アイスビン51内に蓄えられた氷が攪拌されるので、氷間に形成された氷橋や氷塊を崩すこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−315493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アジテータ52は、回転する際、2つのブレード56,56間で氷を塊状に抱え込むため、アジテータ52を動かすための図示しないギヤモータのトルクが大きくなるといった問題点があった。
【0007】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、低トルクでアジテータを動作してアイスビン内における氷塊の生成を防ぐことのできる氷飲料ディスペンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る氷飲料ディスペンサは、氷を蓄えるアイスビンと、アイスビン内に回転可能に設けられたアジテータと、アイスビン内の氷をアイスビンの外部へ放出するオーガとを備え、オーガは、アイスビン内に水平に回転可能に設けられ、アジテータは、オーガに対向するように回転可能に設けられた回転軸と、回転軸の回転と共に回転軸の周りを回転可能な複数のブレードとを備え、複数のブレードはそれぞれ、回転軸よりも短い長さを有し、回転軸の長さ方向に関して隣り合う位置に設けられる2つのブレードは、回転軸を中心とした回転軸のまわりの位置に関して異なる位置に配置されている。
回転軸は、複数のブレードがアイスビン内の氷をオーガに向かって搬送する方向に回転する正回転と、正回転とは反対方向に回転する逆回転とが可能であり、ブレードは、略直角三角形の形状の断面を有し、回転軸が正回転をするときには、断面における略直角三角形の略直角部分を構成する2つの辺のうちの一方の辺を含むブレードの搬送面が前記氷を搬送し、回転軸が逆回転をするときには、断面における略直角三角形の2つの鋭角部分のうちの一方を含むブレードの屈曲部が、アイスビン内の氷の山を崩すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ブレードの長さが回転軸の長さよりも短いことにより、各ブレードは、その長さに相当する比較的少量の氷を交互にオーガに供給するので、アジテータの動作の負荷が軽減されて、低トルクでアジテータを動作することができる。また、各ブレードがオーガへ氷を搬送する際に、アイスビン内の氷を掻き崩すように移動するので、アイスビン内における氷塊の生成を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態に係る氷飲料ディスペンサの斜視図である。
【図2】この実施の形態に係る氷飲料ディスペンサの断面図である。
【図3】この実施の形態に係る氷飲料ディスペンサの上部を取り外した状態の斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】この実施の形態に係る氷飲料ディスペンサに設けられたアジテータの斜視図である。
【図6】この実施の形態に係る氷飲料ディスペンサに設けられたアジテータのブレードの断面図である。
【図7】従来の氷飲料ディスペンサの上部を取り外した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、氷飲料ディスペンサ1の正面部には、氷が放出される放出口2と、ジュースやコーヒー等の飲料が注出される複数の飲料バルブ3とが設けられている。放出口2には、後述する動作で放出口2から氷を放出するための氷放出スイッチ5が設けられている。放出口2及び飲料バルブ3の下方には、例えば、コップ等から溢れる氷や飲料を受けるためのドリップトレイ4が設けられている。
【0012】
図2及び3に示されるように、氷飲料ディスペンサ1の内部において、氷を蓄えるアイスビン10が仕切板11によって、上部アイスビン12及び下部アイスビン13に上下に仕切られている。上部アイスビン12には、氷を攪拌するためのアジテータ14と、上部アイスビン12から氷を放出するためのオーガ15とが設けられている。オーガ15は、上部アイスビン12内において略水平に設けられ、オーガ15の長さ方向に沿って螺旋状に設けられた搬送刃15aを有している。アジテータ14の回転軸21は、オーガ15に対向して設けられている。上部アイスビン12と下部アイスビン13とは、仕切板11に形成された複数の穴16を介して連通している。下部アイスビン13の底部には、コールドプレート17が設けられている。下部アイスビン13内に蓄えられた氷は、コールドプレート17を介して、飲料バルブ3(図1参照)から注出される飲料を冷却するようになっている。
【0013】
アイスビン10への氷の供給は、氷飲料ディスペンサ1の上に図示しない製氷機を設置することによって行ってもよいし、別途製氷された氷を直接アイスビン10に供給するようにしてもよい。いずれの場合にも、氷は上部アイスビン12に供給された後、供給された氷の一部が穴16を介して下部アイスビン13に供給される。
【0014】
図4に示されるように、上部アイスビン12の側壁であってオーガ15の上方の位置に、貯氷量センサ40が設けられている。貯氷量センサ40は、オーガ15の一端側に設けられた赤外線発信部41と、オーガ15の他端側に設けられ、赤外線発信部41から発信された赤外線を受光する赤外線受光部42とから構成されている。赤外線発信部41と赤外線受光部42との間、すなわちオーガ15の上方まで氷が貯氷されている場合には、赤外線発信部41から発信された赤外線が氷によって遮断されるため、赤外線受光部42が赤外線を受光しなくなる。これにより、貯氷量センサ40は、オーガ15の上方まで氷が貯氷されていることを検知する。
【0015】
図5に示されるように、アジテータ14は、回転可能に設けられる回転軸21と、回転軸21に固定された3つのステイ22a,22b,22cと、ステイ22a,22b,22cのそれぞれの端部に設けられたブレード23a,23b,23cとから構成されている。回転軸21の長さ方向に関して隣り合うステイ22a及び22bと、ステイ22b及び22cとはそれぞれ、回転軸21を中心として互いに120°の角度をなしている。これにより、ブレード23a〜23cはそれぞれ、回転軸21を中心とした回転軸21のまわりの位置に関して異なる位置に配置されるようになっている。また、ブレード23a〜23cはそれぞれ、回転軸21よりも短い長さを有している。
【0016】
図6に示されるように、ブレード23aは直角三角形の形状の断面を有している。この断面において、直角三角形の直角部分25を構成する2つの辺26,27のうちの一方の辺26を含むブレード23aの面を搬送面28とする。また、直角三角形の2つの鋭角部分29,30のうちの搬送面28には含まれない方の鋭角部分30を含むブレード23aの部分を屈曲部31とする。尚、図示しないが、ブレード23b及び23c(図5参照)についても同様の形状となっている。
【0017】
図2または5に示されるように、回転軸21は、図示された正回転及び逆回転のいずれの方向にも回転可能となっている。ここで、正回転とは、ブレード23a〜23cの搬送面28がオーガ15に向かって氷を搬送する方向であり、その逆方向の回転を逆回転とする。
【0018】
次に、この発明の実施の形態に係る氷飲料ディスペンサの動作を図1〜6に基づいて説明する。
氷を放出するために、氷放出スイッチ5が押されると、回転軸21が正回転すると共にオーガ15が駆動される。回転軸21が正回転すると、ブレード23a〜23cそれぞれの搬送面28が仕切板11に沿って氷を押し、各ブレード23a〜23cが交互にその長さに相当する量の氷をオーガ15に供給する。オーガ15に送られた氷は、オーガ15の搬送刃15aによって放出口2へと送られて放出口2から放出される。尚、図3に示される範囲D、すなわち、オーガ15の放出口2付近における1〜2回転分に相当する範囲に氷が供給されていれば、コップ1杯分の氷の放出が可能なので、ブレード23a〜23cの長さは、少なくとも範囲Dの長さに相当する長さを有することが好ましい。氷放出スイッチ5が押されなくなると、オーガ15が停止し、放出口2からの氷の放出が停止するが、次の氷の放出時のためにオーガ15へ氷を供給しておくため、氷の放出後もしばらくの間、回転軸21を正回転させる。
【0019】
この実施の形態において、ブレード23a〜23cはそれぞれ、回転軸21よりも短い長さを有すると共に回転軸21を中心とした回転軸21のまわりの位置に関して異なる位置に配置されているので、オーガ15には、ブレード23a〜23cが交互に、ブレード23a〜23cの長さに対応する量の氷を供給する。これに対し、図7に示される従来のアジテータ52では、オーガ53とほぼ同じ長さを有する2つのブレード56が、その長さに相当する量の氷をオーガ53に供給する。すなわち、前者では、3つのブレードが少量ずつ氷をこまめにオーガに供給するのに対し、後者では、オーガへの供給回数は少ないものの1回に供給される氷の量が多く、オーガ全体にいっぺんに氷を供給する相違がある。また、前者ではブレードの数が3つなのに対し、後者ではブレードの数が2つなので、後者に比べて前者では、回転軸の回転数を小さく設定できる。このような相違により、前者では、後者に比べて、アジテータ14の動作の負荷が軽減されて、低トルクでアジテータ14を動作することができるようになる。また、各ブレード23a〜23cがオーガ15へ氷を搬送する際に、上部アイスビン12内の氷を掻き崩すように移動するので、上部アイスビン12内における氷塊の生成が防止される。
【0020】
ただし、上部アイスビン12内の氷量が多く、アジテータ14を動作しなくてもオーガ15の上方に氷が存在する場合には、アジテータ14を動作させる必要がないし、必要以上にアジテータ14を動作させると、上部アイスビン12内の氷を砕いてしまうおそれもある。逆に、上部アイスビン12内の氷量が少ない場合には、積極的にアジテータ14を動作させて、オーガ15に氷を供給し続ける必要がある。そこで、貯氷量センサ40によって、オーガ15の上方に氷が存在しないことを検知した場合には、アジテータ14を動作し続け、逆にオーガ15の上方に氷が存在することを検知した場合には、例えば、氷放出停止後すぐにアジテータ14を停止するように、アジテータ14の動作時間を短くして、このような課題を解決することができる。
【0021】
また、夜間や休日など、氷の放出が長時間行われない場合には、アジテータ14が長時間動作されず、上部アイスビン12内の氷が長時間にわたって静置されることとなる。このような場合には、氷同士が融けてくっつき、氷塊を生成してしまうおそれがある。そこで、定期的に、例えば6時間毎のように、アジテータ14を動作させて、上部アイスビン12内の氷を攪拌させる。この場合、回転軸21を逆回転させることにより、ブレード23a〜23cのそれぞれの屈曲部31が、上部アイスビン12内に貯氷されている氷の山を崩すようになるので、上部アイスビン12内で氷塊が生成するのを防止できる。尚、この場合のアジテータ14の動作時間は任意に設定することができる。
【0022】
このように、ブレード23a〜23cのそれぞれの長さが回転軸21の長さよりも短いことにより、各ブレード23a〜23cは、その長さに相当する比較的少量の氷を交互にオーガ15に供給するので、アジテータ14の動作の負荷が軽減されて、低トルクでアジテータ14を動作することができる。また、各ブレード23a〜23cがオーガ15へ氷を搬送する際に、上部アイスビン12内の氷を掻き崩すように移動するので、上部アイスビン12内における氷塊の生成を防ぐことができる。
【0023】
この実施の形態では、アジテータ14に設けられたブレードは、ブレード23a〜23cの3つであったが、3つに限定するものではない。回転軸21の長さ方向に関して隣り合う位置に設けられる2つのブレードが、回転軸21を中心とした回転軸21のまわりの位置に関して異なる位置に配置されていれば、任意の数のブレードを設けてもよい。尚、ブレードの数を増やせば、回転軸21の回転数を小さい値に設定することも可能なので、ブレードによる氷の攪拌が穏やかになり、氷の粒を崩しにくくすることもできる。
【0024】
この実施の形態において、ブレード23a〜23cの断面形状は直角三角形であったが、厳密な直角三角形ではなく、おおよそ直角である略直角部分を備えた略直角三角形であってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 氷飲料ディスペンサ、10 アイスビン、14 アジテータ、15 オーガ、21 回転軸、23a,23b,23c ブレード、25 直角部分(略直角部分)、26,27 (直角部分を構成する)辺、28 搬送面、29,30 鋭角部分、31 屈曲部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷を蓄えるアイスビンと、
該アイスビン内に回転可能に設けられたアジテータと、
前記アイスビン内の前記氷を前記アイスビンの外部へ放出するオーガと
を備え、
該オーガは、前記アイスビン内に水平に回転可能に設けられ、
前記アジテータは、
前記オーガに対向するように回転可能に設けられた回転軸と、
該回転軸の回転と共に該回転軸の周りを回転可能な複数のブレードと
を備え、
該複数のブレードはそれぞれ、前記回転軸よりも短い長さを有し、前記回転軸の長さ方向に関して隣り合う位置に設けられる2つのブレードは、前記回転軸を中心とした該回転軸のまわりの位置に関して異なる位置に配置されている氷飲料ディスペンサ。
【請求項2】
前記回転軸は、
前記複数のブレードが前記アイスビン内の氷を前記オーガに向かって搬送する方向に回転する正回転と、
該正回転とは反対方向に回転する逆回転と
が可能であり、
前記ブレードは、略直角三角形の形状の断面を有し、
前記回転軸が正回転をするときには、前記断面における前記略直角三角形の略直角部分を構成する2つの辺のうちの一方の辺を含む前記ブレードの搬送面が前記氷を搬送し、
前記回転軸が逆回転をするときには、前記断面における前記略直角三角形の2つの鋭角部分のうちの一方を含む前記ブレードの屈曲部が、前記アイスビン内の前記氷の山を崩す、請求項1に記載の氷飲料ディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−143161(P2012−143161A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1791(P2011−1791)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】