説明

汚れ防止方法

【課題】製紙工程で発生する汚れ防止方法を提供することで、操業性の優れる製紙工程を実現する。
【解決手段】パルプ固形分当たり少なくとも0.5重量%の疎水性物質が溶剤抽出される古紙パルプ原料を使用する抄造において、ベントナイトと凝結剤を用いることを特徴とする汚れ防止方法であって、好ましくは、凝結剤がカチオン性重合物であり、さらに好ましくは、凝結剤がジアリルアミン系重合体であることを特徴とする汚れ防止方法である。また、別の好ましい態様としては、ベントナイトのpH9におけるアニオン化度が0.2〜1meq/g・固形分であり、凝結剤及びベントナイトをパルプスラリーの固形分に対して各々10〜2000ppm、100〜10000ppm添加することであり、脱離率が少なくとも85%である汚れ防止方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚れ防止方法に関する。さらに詳しくは、抄紙系において汚れが生じるのを防止する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水資源の節約のためなどのため、白水のクローズド化がなされるようになってきている。また、再資源化のため、古紙の使用率が増加する傾向にある。このため、夾雑物が抄紙系に入り込み汚れが発生しやすくなってきている。
【0003】
紙の製造方法として、
式(1):CH=C(R)CONH
(式中、Rは水素またはメチル基を表わす)で示されるアクリルアミド化合物および
式(2):[CH =C(R)CHN− R
(式中、Rは水素またはメチル基、Rは水素または炭素数1〜6のアルキル基を表わす)
で示されるジアリルアミン化合物の無機または有機酸塩
を共重合したポリマーを使用することが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、これらのポリマーを汚れ防止剤として使用する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)が、まだ満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開昭61−252398号公報
【特許文献2】特開2005−089918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなことから、従来の方法よりも優れる汚れ防止方法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、紙を製造する際に生じる汚れを防止できる方法について鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の前記課題を解決するための手段は、
(1)パルプ固形分当たり少なくとも0.5重量%の疎水性物質が溶剤抽出される古紙パルプ原料を使用する抄造において、ベントナイトと凝結剤を用いることを特徴とする汚れ防止方法、
(2)凝結剤がカチオン性重合物である前記(1)の汚れ防止方法、
(3)凝結剤がジアリルアミン系重合体である前記(1)又は(2)の汚れ防止方法、
(4)ベントナイトのpH9におけるアニオン化度が0.2〜1meq/g・固形分である前記(1)〜(3)の汚れ防止方法、
(5)凝結剤及びベントナイトをパルプスラリーの固形分に対して各々10〜2000ppm、100〜10000ppm添加する前記(1)〜(4)の汚れ防止方法、
(6)脱離率が少なくとも85%である前記(1)〜(5)の汚れ防止方法、
である。
【発明の効果】
【0007】
特定の汚れが発生しやすい抄紙系においてベントナイトと凝結剤を用いることで製紙工程の汚れを防止する方法が実現される。
【0008】
本発明において、パルプ固形分当たり少なくとも0.5重量%の疎水性物質が溶剤抽出される古紙パルプ原料を使用する抄造とは、パルプスラリーからトルエン/エタノール=1/1の溶剤でソックスレー抽出すると疎水性物質がパルプ固形分当たり少なくとも0.5重量%、好ましくは、0.5〜5重量%、より好ましくは、0.5〜3重量%抽出される古紙パルプ原料を使用する抄造をいう。なお、ソックスレー抽出の溶剤以外の条件はJIS8010に準ずる。
【0009】
<ベントナイト>
本発明に用いるベントナイトとしては、モンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物であればよく、例えば、モンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト等が挙げられる。ベントナイトは対イオンとなる金属イオンの種類により、ナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、活性化ベントナイトがあるが、いずれも使用することができる。さらにベントナイトの形態として、粉体品、スラリー品があるが、いずれも使用できる。これらの中でもベントナイトのpH9におけるアニオン化度が0.2〜1meq/g・固形分であることが汚れ防止の上で好ましい。なお、アニオン化度は、ミューテック社製のPCD装置を用いて、1/1000N ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド溶液にて滴定することにより求めた値をいう。
【0010】
<凝結剤>
本発明に用いる凝結剤としては有機系凝結剤と無機系凝結剤が挙げられる。前記有機系凝結剤としては少なくとも1種以上のカチオン性モノマーを含んで重合することにより得られるカチオン性重合物、アミン−エピハロヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン変性物、ポリビニルアミン等のカチオン性化合物、ノニオン性分散剤、アニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0011】
前記カチオン性重合物は、カチオン性モノマーの少なくとも1種を重合させたものである。前記カチオン性モノマーとしては、下記一般式化1〜化3で示される化合物、ジアリルアミン類等が挙げられ、これらは単独でも用いられるが2種以上併用することもできる。
【0012】
【化1】

【0013】
(但し、一般式化1中、Aは酸素又はNH、nは2〜4の整数、RはH又はメチル基、R、R、R、R、Rは同一又は異なる炭素数1〜3の低級アルキル基、X、Yは同一又は異なるアニオン性基を示す。)
【0014】
前記一般式化1の具体的なカチオン性モノマーとしては、2−ヒドロキシ−N,N,N,N′,N′−ペンタメチル−N′−(3−(メタ)アクリロイルアミノプロピル)−1,3−プロパンジアンモニウムジクロライド、2−ヒドロキシ−N−ベンジル−N,N−ジエチル−N′,N′−ジメチル−N′−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−1,3−プロパンジアンモニウムジブロマイドなどが挙げられる。
【0015】
【化2】

【0016】
(但し、一般式化2中、Aは酸素又はNH、nは2〜4の整数、RはH又はメチル基、R、Rは同一又は異なる炭素数1〜3の低級アルキル基を示す。)
【0017】
上記一般式化2の具体的なカチオン性モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0018】
【化3】

【0019】
(但し、一般式化3中、Aは酸素又はNH、nは2〜4の整数、R10はH又はメチル基、R11、R12は同一又は異なる炭素数1〜3の低級アルキル基、R13は低級アルキル基又はベンジル基、Zはアニオン性基を示す。)
【0020】
上記一般式化3の具体的なカチオン性モノマーとしては、上記一般式化2で示されるカチオン性モノマーを適当な4級化剤、例えばアルキルハライド、ジアルキルカーボネート、アルキルトシレート、アルキルメシレート、ジアルキル硫酸、ベンジルハライドなどにより4級化することにより得られ、例えばN−エチル−N,N−ジメチル−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アンモニウムブロマイド、N−ベンジル−N,N−ジメチル−(3−(メタ)アクリロイルアミノプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0021】
ジアリルアミン類としては、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0022】
前記カチオン性重合物はカチオン性モノマーを10モル%以上使用して重合されているものであればよく、これらカチオン性モノマーと共重合し得るその他のモノマーとしてアクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル等のノニオン性モノマー、アクリル酸、メタクリル酸などのα、β−不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのα、β−不飽和ジカルボン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などの不飽和スルホン酸及びそれらの塩類、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等のアニオン性モノマーが使用でき、従来公知の連鎖移動剤、架橋剤を使用してもよい。
【0023】
前記カチオン性重合物の重合方法としては特に制限はなく従来公知の方法を採用できる。
【0024】
さらには、前記のように一般式化2のカチオン性単量体を前記4級化剤により4級化してから重合反応を行うのみならず、上記一般式化2に属するカチオン性単量体等を重合反応させる途中又は重合反応後に上記4級化剤を用いて4級化することもできる。この場合全部を4級化しても良いが、一部を4級化しても良い。
【0025】
前記アミン−エピハロヒドリン樹脂としては、アミン類とエピハロヒドリンを反応させることにより得られる。アミン類として用いることのできるアミンは、分子中に少なくとも1個のエピハロヒドリンと反応可能なアミノ基を有するアミン類であれば特に制限はないが、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン、及びアルカノールアミンからなる群から選択された1種以上のアミンが好ましい。
【0026】
アミンとしては例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、アリルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、及びプロピレンジアミン、N,Nジメチルアミノプロピルアミン、1,3−ジアミノシクロヘキシル、1,4−ジアミノシクロヘキシル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0027】
エピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等を使用でき、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。エピハロヒドリンとしてはエピクロロヒドリンが好ましい。
【0028】
前記アミン−エピハロヒドリン樹脂の重合方法としては特に制限はなく従来公知の方法を採用できる。
【0029】
前記無機系凝結剤としてポリ塩化アルミニウム、ポリアルミニウムシリケートサルフェート、ポリ水酸化アルミニウム等のポリアルミニウム化合物、ポリ硫酸鉄、炭酸ジルコニウム、タルク(微粉末)が挙げられる。
【0030】
これらの凝結剤の中でもジアリルアミン類を重合成分の少なくとも1種として有しているジアリルアミン系重合体が好ましく、更に好ましくは、ジアリルアミン−アクリルアミド系重合体が好ましい。ジアリルアミン−アクリルアミド系重合体としては、
式(1):CH=C(R)CONH
(式中、Rは水素またはメチル基を表わす)で示されるアクリルアミド化合物および
式(2):[CH =C(R)CHN−R
(式中、Rは水素またはメチル基、Rは水素または炭素数1〜6のアルキル基を表わす)
で示されるジアリルアミン化合物及びその無機または有機酸塩
を少なくとも共重合したものである。
【0031】
前記式(1):CH=C(R)CONH(式中、Rは水素またはメチル基を表わす)で示されるアクリルアミド化合物は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドである。
【0032】
前記式(2):[CH =C(R)CHN− R(式中、Rは水素またはメチル基、Rは水素または炭素数1〜6のアルキル基を表わす)で示されるジアリルアミン化合物及びその無機または有機酸塩としては、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、ジアリルブチルアミン、ジメタアリルアミン及びこれらの塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸、またはギ酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸の塩を例示することができる。これらのうち、ジアリルアミンの塩が最も好ましく用いられる。
【0033】
本発明において、ジアリルアミン−アクリルアミド系重合体を構成するモノマーとして前記アクリルアミド化合物及び前記ジアリルアミン化合物及びその無機または有機酸塩以外に必要に応じて用いることができる成分としては、前記アクリルアミド化合物及び前記ジアリルアミン化合物及びその無機または有機酸塩と共重合しうるビニルモノマーであればよく、非イオン性、カチオン性、アニオン性、架橋性の各モノマーのいずれでも用いることができる。
【0034】
非イオン性モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メチルビニルエーテルなどが例示される。これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0035】
前記カチオン性ビニルモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類を始めとする3級アミノ基、2級アミノ基、1級アミノ基含有ビニルモノマー、前記アミノ基含有ビニルモノマーの塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸などの無機酸ないしは有機酸の塩類、前記3級アミノ基含有ビニルモノマーとメチルクロライド、メチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド等のアラルキルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エピクロロヒドリン、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリアルキルアンモニウムクロライド等の4級化剤との反応によって得られる4級アンモニウム塩を含有するビニルモノマー、例えば2−ヒドロキシN,N,N,N’,N’−ペンタメチル−N’ −[3−{(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ}プロピル]−1,3−プロパンジアミニウムジクロライド等、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ビニルピリジン、ビニルピロリドンなどが例示でき、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらのカチオン性ビニルモノマーのうち、4級のアンモニウム塩を含有するビニルモノマーが好ましい。
【0036】
前記アニオン性ビニルモノマーとしては、カルボキシル基含有ビニルモノマー、スルホン酸基含有ビニルモノマー及びホスホン酸基含有ビニルモノマー等が挙げられる。これらのうちカルボキシル基含有ビニルモノマー、スルホン酸基含有ビニルモノマーが好ましく、特に2種以上のカルボキシル基含有ビニルモノマーの併用、1種以上のカルボキシル基含有ビニルモノマーと1種以上のスルホン酸基含有ビニルモノマーの併用が好ましい。前記カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸、不飽和テトラカルボン酸等及びそれらの塩類等を挙げることができ、前記スルホン酸基含有ビニルモノマーとして不飽和スルホン酸等及びそれらの塩類等を挙げることができ、前記ホスホン酸基含有ビニルモノマーとして不飽和ホスホン酸等及びそれらの塩類等を挙げることができる。
【0037】
前記不飽和モノカルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸等を挙げることができ、上記不飽和モノカルボン酸の塩類として、例えば不飽和カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類及びアンモニウム塩等を挙げることができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0038】
前記不飽和ジカルボン酸として具体的には、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等を挙げることができ、前記不飽和ジカルボン酸の塩類として具体的には、例えば不飽和ジカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類、及びアンモニウム塩等を挙げることができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0039】
前記不飽和トリカルボン酸として具体的には、例えばアコニット酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、4−ペンテン−1,2,4−トリカルボン酸等を挙げることができ、前記不飽和トリカルボン酸の塩類として具体的には、例えば不飽和トリカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類及びアンモニウム塩等を例示することができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0040】
前記不飽和テトラカルボン酸として具体的には、例えば1−ペンテン−1,1,4,4−テトラカルボン酸、4−ペンテン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、3−ヘキセン−1,1,6,6―テトラカルボン酸等を挙げることができ、前記不飽和テトラカルボン酸の塩類として具体的には、例えば不飽和テトラカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類及びアンモニウム塩等を挙げることができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0041】
前記不飽和スルホン酸として具体的には、例えばビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等を挙げることができ、前記不飽和スルホン酸の塩類として具体的には、例えば不飽和スルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類及びアンモニウム塩等を挙げることができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0042】
前記不飽和ホスホン酸として具体的には、例えばビニルホスホン酸及びα−フェニルビニルホスホン酸等を挙げることができ、前記不飽和ホスホン酸の塩類として具体的には、例えば前記不飽和ホスホン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類及びアンモニウム塩等を挙げることができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0043】
上記の中でも不飽和カルボン酸及び不飽和スルホン酸の中から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましく、具体的には、これらアニオン性ビニルモノマーのうち、イタコン酸、アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそれらの塩類よりなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、特にイタコン酸とアクリル酸の併用、イタコン酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の併用、イタコン酸とアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の併用が好ましい。
【0044】
架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ビスアクリルアミド酢酸等のビス(メタ)アクリルアミド類、アジピン酸ジビニル、ジアリルマレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウム、及びグリシジル(メタ)アクリレート等の2官能性ビニルモノマー、トリアクリルホルマール、トリアリルアミン、トリアリルイソシアヌレート、及びトリアリルトリメリテート等の3官能性ビニルモノマー、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリレート、テトラアリルアミン塩、及びテトラアリルオキシエタン等の4官能性ビニルモノマー、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、及びトリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオンエート等の水溶性アジリジニル化合物、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の水溶性の多官能エポキシ化合物、並びに3−(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリフェノキシシラン、及び2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリアセトキシシラン等のシリコン系化合物等が例示でき、これらを単独で使用することができ、また、その二種以上を組み合わせて使用することもできる。好ましくは、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアクリルホルマールが挙げられる。
【0045】
本発明において、好ましい凝結剤の製造に用いる式(1):CH=C(R)CONH(式中、Rは水素またはメチル基を表わす)で示されるアクリルアミド化合物および式(2):[CH =C(R)CHN− R(式中、Rは水素またはメチル基、Rは水素または炭素数1〜6のアルキル基を表わす)で示されるジアリルアミン化合物及びその無機または有機酸塩の好ましい使用する割合は、モノマー全量を基準として、前記アクリルアミド化合物が40〜99モル%、さらに好ましくは50〜97モル%であり、前記ジアリルアミン化合物及びその無機または有機酸塩が1〜60モル%、さらに好ましくは3〜50モル%である。またその他使用できるモノマーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、好ましくはモノマー全量を基準として40モル%以下の範囲で用いることができるが、その水溶性とイオン性によっても、使用量はある程度制限を受ける。非イオン性モノマーの場合は、生成するポリマーの水溶性を損なわない範囲で用いることが好ましい。カチオン性モノマーの場合は、モノマー全量を基準として40モル%以下、より好ましくは30モル%以下がよい。またアニオン性モノマーの場合は、前記ジアリルアミン化合物より少ない範囲で用いられる。
なお、前記アクリルアミド化合物が40モル%未満の場合や、前記ジアリルアミン化合物が1モル%未満の場合には、本発明の効果が十分に発揮されない場合があり、またその他使用できるモノマーが40モル%を越える場合も同様である。
【0046】
本発明で用いることが好ましい前記凝結剤は、公知の方法によって製造することができ、重合形式は特に限定されないが、水溶媒中または、水と水溶性溶媒との混合溶媒中で、重合開始剤の存在下に重合反応させるのが好ましい。また必要に応じて、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、(メタ)アリルスルホン酸ナトリウム、次亜燐酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、アルキルメルカプタン、例えばブチルメルカプタンなど、公知慣用の分子量調整剤を用いることも可能である。
【0047】
重合開始剤としては、通常用いられるものが使用できる。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムのような過硫酸塩、2,2′−ジアミジノ−2,2′−アゾプロパンジ塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化水素のような過酸化物などが挙げられる。また公知のレドックス系開始剤、例えば過硫酸カリウムと亜硫酸水素ナトリウムまたは3級アミンとの組合せなどを用いることもできる。
【0048】
重合反応は、通常10〜100℃、好ましくは40〜80℃で、1〜20時間行なわれる。この重合反応は、酸素存在下でも可能であるが、一般には窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気中で行なうのが好ましい。
【0049】
前記アクリルアミド化合物および前記ジアリルアミン化合物、また、所望により用いるその他使用できるモノマーは、これらの全成分を一括して仕込んだ後、重合を開始してもよいし、またある成分の一部または全部を他の成分の重合開始後に連続してあるいは分割して添加し、重合を行なってもよい。
【0050】
本発明の好ましい凝結剤は前記のようにして得ることができる。
【0051】
本発明の有機系凝結剤にあっては、好ましくは、15重量%濃度の水溶液の25℃におけるブルックフィールド粘度が2000〜10000mPa・s程度である。また、凝結剤の添加量は、汚れの程度、紙の種類などにより異なるが、通常は得られる乾燥紙の重量を基準として、固型分換算で10〜2000ppmの範囲であり、50〜500ppmが好ましく、さらに好ましくは100〜300ppmである。また、ベントナイトの添加量は、通常は得られる乾燥紙の重量を基準として、固型分換算で100〜10000ppmの範囲であり、50〜5000ppmが好ましく、さらに好ましくは50〜3000ppmである。さらに、凝結剤とベントナイトとの比は、1:0.05〜1000の割合であることが好ましい。
【0052】
製紙にあたり、上記の凝結剤及びベントナイト以外に、填料、染料、酸性抄紙用ロジン系サイズ剤、中性抄紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニルコハク酸無水物系サイズ剤、特殊変性ロジン系サイズ剤等の弱酸性および中性ないしアルカリ性抄紙用サイズ剤、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、サイズ定着剤、消泡剤などの他の製紙用添加剤も、各々の紙種に要求される物性を発現させるために使用できる。
【0053】
前記填料としては、重質または軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、酸化チタン、サチンホワイト、ホワイトカーボンなどが例示され、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。なかでも重質または軽質炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0054】
本発明の製紙方法においては、上記のベントナイトと凝結剤とを少なくとも水性パルプスラリーに配合して抄紙する。この際にパルプスラリーの固形分濃度が0.5重量%以上であり、好ましくは0.5〜5重量%であり、さらに好ましくは1〜4重量%である。必要に応じて、サイズ剤、紙力増強剤、填料等をさらに配合して抄紙する。抄紙に際してパルプスラリーのpHは、6〜9の範囲が好ましく、さらにはpH7〜9の範囲がより好ましい。抄紙方法自体は特に制限されるものでなく、通常の方法が適用できる。例えば、パルプ繊維の水分散液に、填料、サイズ剤、紙力増強剤とともにベントナイトと凝結剤を添加し、抄紙することができる。各種添加剤の添加順序や添加場所についても、特別な制限はないが、サイズ剤や紙力増強剤よりも前にベントナイトと凝結剤を添加することが好ましい。ベントナイトと凝結剤は同時又は別々に添加することができるが、ベントナイト次いで凝結剤を添加することが好ましい。
【0055】
本発明の脱離率は、以下のようにして求めたものをいう。
すなわち、パルプスラリーに必要に応じて各種添加剤を加え、攪拌後、6カットスクリーンを用いてパルプスラリーをフラットスクリーン処理する。フラットスクリーン処理終了後、スクリーン板を垂直に立て、内径が1.5mmのノズルを持つ500ccのプラスチック製洗ビンに清水500ccを入れ流量が850cc±50cc/分の強さで500ccの水がなくなるまでフラットスクリーン板に付着した粘着物を洗い流す。スクリーン板から脱離する残渣(脱離残渣量)とスクリーン板に残る残渣(付着残渣量)を別々に採取し、得られた残渣を熱風乾燥機で乾燥後、重量を測定する。測定によって得られた各残渣の値を式(1)により粘着物の脱離率を算出する。脱離率が高いほど、粘着物の粘着性が低下したことを示す。
【0056】
脱離率(%)=脱離残渣量/(脱離残渣量+付着残渣量)×100・・・式(1)
【0057】
パルプ原料として、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプのいずれも使用することができる。また、前記パルプ原料としては、前記パルプ原料と、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等との混合物も使用することができる。この中でも古紙パルプを使用することが好ましい。
【0058】
本発明でいう紙は、紙及び板紙を指称するものであり、紙としては、特に制限されないが、各種の紙が挙げられる。紙の種類としては、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等の記録用紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー、石膏ボード原紙等の板紙が挙げられる。これらの中でも、特に汚れの問題が顕著である板紙であることが好ましい。
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中の%は、特に断りのないかぎり重量%を表わす。
【0060】
実施例1
パルプに含まれる疎水性物質が0.73%である固形分濃度2.4%の段ボール古紙パルプ400ccに対して、モデルピッチを0.8%、pH9におけるアニオン化度が0.5meq/g・固形分のベントナイトを2000ppm、表1に記載の凝結剤A(ジアリルアミン−アクリルアミド系共重合物)を200ppm添加し、500rpmで1分間攪拌させ、NO.5Aのろ紙を用いて吸引濾過を行った。得られた濾液の濁度を測定して結果を表2に示す。濁度の数値が低いほど、ピッチ成分がパルプに定着したことを示す。なお、濁度は、パルプ濾液を濁度計(製品名:2100P、ハック(株)社製)を用いて測定した。
【0061】
前記のモデルピッチは、宅配便ラベルの台紙をテトラハイドロフランに浸析し、ラベル成分を溶出させ、固形分0.8%のテトラハイドロフラン分散液として調製したものである。なお、溶出成分は、ラベルの糊成分であるポリアクリル酸エステルであった。
【0062】
実施例2〜5
実施例1において凝結剤Aの代わりに表1に記載の凝結剤B〜Eを使用すること以外同一条件で実験を行い、得られた濾液の濁度を測定して結果を表2に示す。
【0063】
比較例1
実施例1においてベントナイトおよび凝結剤Aを使用しないこと以外同一条件で実験を行い、得られた濾液の濁度を測定して結果を表2に示す。
【0064】
比較例2
実施例1においてベントナイトを使用しないこと以外同一条件で実験を行い、得られた濾液の濁度を測定して結果を表2に示す。
【0065】
実施例6
段ボール古紙3.5g、宅配便ラベルの粘着シール部分0.5g、水道水160ccを混合し、家庭用ミキサーで1分間攪拌し、パルプ化した。このパルプに含まれる疎水性物質は1.22%であった。このパルプスラリーにpH9におけるアニオン化度が0.7meq/g・固形分のベントナイトを1000ppm、表1に記載の凝結剤Aを300ppm添加し、5分間攪拌した。攪拌後、6カットスクリーンを用いてパルプスラリーをフラットスクリーン処理した。フラットスクリーン処理終了後、スクリーン板を垂直に立て、内径が1.5mmのノズルを持つ500ccのプラスチック製洗ビンに清水500ccを入れ流量が850cc±50cc/分の強さで500ccの水がなくなるまでフラットスクリーン板に付着した粘着物を洗い流す。スクリーン板から脱離する残渣(脱離残渣量)とスクリーン板に残る残渣(付着残渣量)を別々に採取した。得られた残渣を熱風乾燥機で乾燥後、重量を測定した。さらに式(1)により粘着物の脱離率を算出して結果を表3に示す。脱離率が高いほど、粘着物の粘着性が低下したことを示す。
【0066】
脱離率(%)=脱離残渣量/(脱離残渣量+付着残渣量)×100・・・(1)
【0067】
実施例7〜10
実施例6において凝結剤Aの替わりに表1に記載の凝結剤B〜Eを使用すること以外同一条件で実験を行い、得られた脱離率を表3に示す。
【0068】
比較例3
実施例6においてベントナイトおよび凝結剤Aを使用しないこと以外同一条件で実験を行い、得られた脱離率を表3に示す。
【0069】
比較例4
実施例6においてベントナイトを使用しないこと以外同一条件で実験を行い、得られた脱離率を表3に示す。
【0070】
【表1】

【表2】

【0071】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ固形分当たり少なくとも0.5重量%の疎水性物質が溶剤抽出される古紙パルプ原料を使用する抄造において、ベントナイトと凝結剤を用いることを特徴とする汚れ防止方法。
【請求項2】
凝結剤がカチオン性重合物であることを特徴とする請求項1記載の汚れ防止方法。
【請求項3】
凝結剤がジアリルアミン系重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の汚れ防止方法。
【請求項4】
ベントナイトのpH9におけるアニオン化度が0.2〜1meq/g・固形分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の汚れ防止方法。
【請求項5】
凝結剤及びベントナイトをパルプスラリーの固形分に対して各々10〜2000ppm、100〜10000ppm添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の汚れ防止方法。
【請求項6】
脱離率が少なくとも85%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の汚れ防止方法。

【公開番号】特開2008−69496(P2008−69496A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251370(P2006−251370)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】