説明

汚染土壌洗浄装置及び洗浄浄化方法。

【課題】 有害物質に汚染された土壌中の有害重金属類、油類等の汚染物質の洗浄除去と洗浄に利用した後の水を浄化無害化して再利用すること。
【解決手段】 土壌洗浄装置に使用する水の温度を20℃〜50℃に加温保持する土壌洗浄装置であって、土壌の粒度を分級しながらバブルジェット水流によって洗浄する多段式の分級洗浄装置8と、エアー攪拌装置13を利用し、汚染物質凝固剤を添加して土壌洗浄装置から排水される洗浄水を浄化し、その洗浄水を汚染土壌用洗浄水として再利用することにより連続的に処理を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染された土壌の所定区域に簡易的に設置できる、コンパクトで、且つ高性能な洗浄装置であって、汚染物質を効率よく経済的に確実に浄化し、所定区域からの汚染物質の排出を抑制することによって汚染された土壌を資源として再利用する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油や重金属に汚染された土壌を汚染区域内で安全にかつ確実で、素早く大量に安価な方法で無害化する対策が検討されて来た。
そして汚染された土壌を掘削し、汚染区域外に搬出除去し、別に新たな土壌を搬入して入れ替える方法があるが、この方法は、そのサイト内の汚染は確実に取り除く事が出来るが、搬出した土壌の受け入れ先の対策の問題や運搬中に起きる可能性のあるリスクの問題、また入れ替え土壌による環境変化によって起きる別な種の土壌汚染問題が発生する可能性があり、安全面に問題がある。
【0003】
また、汚染サイト内での対策方法では、汚染物質を物理的または化学的に固定し、長期的に安定化させる方法があり、汚染区域外に搬出除去する方法に比べ、対策費用が安価で汚染区域外におけるリスクが無いと言う利点があるが、汚染物質を完全に除去した訳ではないため、土地所有者や周辺住民からなかなか受け入れられないのが現状である。
【0004】
その他、土壌汚染問題の対策方法に、土壌を薬品や水で洗浄し、汚染物質を抽出除去し、洗浄した土壌をサイト内に埋め戻す方法(例えば、特許文献1参照)があるが、この方法は、汚染物質の除去率を高める為、大掛かりな洗浄設備が必要となり、対策設備に費用が掛かる。また狭い汚染サイトの場合には対応出来ない場合があった。
【0005】
前述の如き洗浄設備では、十分な効果が得られないばかりか洗浄後の再利用は困難であり、洗浄処理済みの産業廃棄物として処理を余儀なくされてきた。加えて、洗浄液や浄化剤として使用される薬品は一般的に高価であるため、大量に処理しなければならない重金属含有土壌の処理に使用すると費用が莫大なものとなり、経済的にも問題があった。また前述の特許文献1における洗浄技術のような従来の技術では、洗浄に使用された洗浄水を「再利用」することができない点では、浄化作業に対する水質環境浄化、産業廃棄物の発生抑制に対しては、あまり効果は期待できないのが現状である。
【0006】
このような中で、近年、国の政策により、河川、湖沼の窒素、リンの過多による富栄養化に伴う生態系の破壊やアオコの大量発生による問題や、工場排水中の様々な有害物質での水質汚濁による水質環境浄化に伴う産業廃棄物の発生抑制についても考える必要がある。また、廃棄物の最終処分場の枯渇問題も軽視できない。したがって、汚染浄化技術による環境改善と同時に、産業廃棄物の発生抑制を無視して汚染浄化技術のみを追求することは許されない状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献1】
【0007】
特開2004−57953号公報(特許請求の範囲の請求項6、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題は、高性能小スペースな土壌洗浄設備を用いて、有害物質に汚染された土壌中の有害重金属類、油類等の汚染物質の洗浄除去を行い、洗浄後の土壌を環境基準以下に改善し、且つ使用後の洗浄水を再生し、再利用することにより、低コストで、低環境負荷型の土壌洗浄システムを提供すると共に、産業廃棄物の発生抑制効果を向上し得る有害排出物処理剤を用いた汚染土壌の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、土壌洗浄装置に使用する水の温度を汚染物質と環境条件に応じて、20℃〜50℃に加温保持することを特徴とする土壌洗浄装置であって、土壌の粒度を分級しながら洗浄する多段式の分級洗浄装置を有し、細砂、細粒状となった汚染土壌にバブルジェット水流を与え、汚染物質を土壌粒子から洗浄水に移行させて気泡と共に浮上させて洗浄水と土壌粒子とを分離させるものであり、前記発明の洗浄水の再処理方法として、汚染土壌洗浄装置から排出される汚染物質を含む洗浄排水の汚染物質を吸着させると同時に排水中に含まれる汚染物質を凝集分離する汚染物質凝固剤を使用する処理装置にて土壌洗浄装置から排水される洗浄水を浄化し、その洗浄水を汚染土壌用洗浄水として再利用することにより、連続的に処理を行うことが出来るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によってできる洗浄水は、水質、例えば化学薬品等を使用してpHを調整するような環境を害する行為を行うものではなく、水を加温し、温度を20℃〜50℃にし、さらに分子を細分化させ水本来の性質を改善することにより、大幅に安価に確実に汚染物質を土壌粒子から剥離することが可能であるという格別優れた効果を奏するものである。
【0011】
また、本発明の土壌洗浄装置は、小スペースで確実に大量の汚染土壌を連続処理することがきるので、前記本発明の効果に加えて、安価に汚染土壌の処理が可能であるため処理費用の削減に多大に寄与することができるという優れた効果を奏するものである。
【0012】
さらに、本発明の吸着凝固剤を使用する連続処理方法においては、場外排水処理は不要となり、有害廃棄物の場外排出も削減できる。したがって、本発明の一連の土壌洗浄処理方法によって処理排水による河川や湖沼等の二次公害を抑制し、安価で確実な処理対策ができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】 本発明の汚染土壌の処理方法のフロー説明図である。
【図2】 本発明の汚染土壌分級洗浄装置の説明図である。
【図3】 本発明の汚染土壌処理用のバブルジェット洗浄装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の汚染土壌洗浄装置及び洗浄浄化方法について説明するが本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。また、以下の説明において同一の機能を有する部材や部位、構成については、同一の符号を付けて説明を省略する場合がある。
図1は、本発明の汚染土壌の処理方法のフロー説明図である。
【0015】
汚染地域(A)における汚染土1は、ショベルカー2などの機械力により掘削されてコンクリガラ・木片・プラスティック・鉄片などを分離して、ダンプカー等の運搬装置3により土壌処理場(B)に搬送される。5は土壌処理場に設置された敷鉄板4の上にて一時的に積み置きされた未処理の汚染土壌(以下単に「汚染土壌」という)である。
そして、この汚染土壌5は、図のようにショベルカーなどの機械力によりコンベア用ホッパ6に投入されコンベア7によって多段式トロンメル分級洗浄装置8に投入される。
【0016】
トロンメル分級洗浄装置8では、コンプレッサ20,発電機21、貯水タンク22、加圧器23等から構成される高圧水装置から25℃〜50℃に加温保持される高圧水Hによって、汚染土壌を2段階に洗浄しながら分級し、それぞれの洗浄段階で分級された第1分級粒土5a、第2分級粒土5bは、埋め戻し用の土壌Raとして再利用される。
【0017】
トロンメル分級洗浄装置8の底部水槽9に沈殿した汚染洗浄水Waは、残留粒土と共にサンドポンプ10により一時的に廃液タンク11に貯められ、更にサンドポンプ12により、エアー攪拌装置、例えば、周知の変形シックナーエアー攪拌装置13に投入される。変形シックナーエアー攪拌装置13に投入された汚染洗浄水Waは、重金属吸収凝集剤投入ユニットSにより、重金属吸収凝集剤を投入混合されて後述するエアーバブルジェットによる洗浄を行う。
【0018】
この装置によって洗浄された土壌の細粒土壌は、変形シックナーエアー攪拌装置13内を気泡に乗って浮上し、装置の上部に設けられたサンドポンプ14から吸引されてハイドロミキサーユニット15に送り込まれ、汚染物質を極限まで除去され、細粒化された土壌は、最終的にデカンタ脱水器16で脱水され、再利用土壌Rbとして処理される。そして、変形シックナーエアー攪拌装置13の底に沈殿した固形分17は、前記トロンメル分級洗浄装置8から排出される埋め戻し用土壌Raと共に再利用される。一方、デカンタ脱水器16から排出された無害化された浄水19はポンプ18により、変形シックナーエアー攪拌装置13や多段式トロンメル分級洗浄装置8の洗浄水として再利用することができる。
【0019】
以下、本発明の各処理装置につき更に詳細に説明する。
図2は、本発明に使用される汚染土壌分級洗浄装置8の説明図で、この実施例では2段式トロンメル分級洗浄装置が使用されているが、多段式の段数については環境に応じて選択すべき事項である。8aは第1段目のトロンメル用メッシュドラム8bへの処理用汚染土壌の投入用ホッパで、前記メッシュドラム8bは40mmメッシュドラムを構成し、そのメッシュドラム8bの中には、図1に示すような高圧送水装置から給水される高圧水Hを散水する散水パイプ8pが設けられている。8cはメッシュドラム8bによって洗浄され分級された残留汚染土壌を含む汚染洗浄水を受けるシュートである。
8eは第2段目のトロンメル用メッシュドラム8f用のホッパで、8gはそのシュート、8pは散水パイプである。8dはそれぞれ第1段目及び第2段目のトロンメルから分級された粒度を外部へ搬送するベルトコンベアである。9は第2段目のトロンメルに設けられた底部水槽で、サンドポンプ10によって、底部水槽9に沈殿した汚染土壌を含む洗浄水Waを残留粒土と共に廃液タンク11(図1参照)に送ることができる
【0020】
以下、本発明の上記多段式トロンメル分級洗浄装置8の作用について説明する。
図1のコンベア7から第1段目のトロンメル分級洗浄装置のホッパ8aに投入された汚染土壌は、回転するメッシュドラム8bの中で散水パイプ8pから噴出する25℃〜50℃に保持された高圧の温水を噴射散水することにより汚染土壌の表面から汚染物質が剥離洗浄される。メッシュを通過して落下した汚染土壌を含む汚染洗浄水はシュート8cと図示しない送風手段からの空気の噴流Qにより第2段目のホッパ8eへと送られる。40mmメッシュドラムで分級された洗浄済みの粒状土壌はベルトコンベア8dによって第1分級粒土5aとして分離堆積され、埋め戻し用の健常土として再利用される(図1参照)。
【0021】
第2のホッパ8eから第2段目のトロンメル分級洗浄装置に移動した土壌は、さらに細かい5mmメッシュのメッシュドラム8fの中で第1段目と同様な高圧温水噴射洗浄により、汚染物質が剥離洗浄され、第2分級粒土5bと汚染洗浄水Waとに分離されて5mmメッシュドラムで分級された洗浄済みの土壌の粒子はベルトコンベア8dによって第2分級粒土5b(図1参照)として分離堆積され、埋め戻し用の健常土として再利用される。
洗浄水は、5mmメッシュを通過した微細な残留土と僅かな残留有害物質を含んでおり、第2段目のトロンメル分級装置の底部水槽9に貯水された後、サンドポンプ10により変形シックナーエアー攪拌装置13用のタンク11に送られる(図1参照)。
【0022】
前記工程では、洗浄用の高圧洗浄水の温度を加温して土壌の汚染物質の種類や周囲の気温などの環境条件に応じて25℃〜50℃までの範囲に保持することにより、洗浄水の表面張力を低下させ、水の分子を細分化させ確実に汚染物質を土壌粒子から剥離することが可能となるのである。
【0023】
図3は本発明の変形シックナーエアー攪拌装置13で、(a)はその本体部の説明用断面図で、底部のパイプシャフトスペース13aの上部に底板13bを有する容器を構成し、その底板13bから2種類のエアーバブルジェット13c、及び13dが設けられており、下側のバブルジェット13dは、特にマイクロバブルジェットが使用される。13eはバブルによって浮上し、オーバーフローした洗浄水の貯水槽である。13fは貯水槽13eのオーバーフロー用ガイド、13gは沈殿物排出口である。図3の(b)は洗浄水導入パイプ25のZ部側面拡大図で、先端部には洗浄水噴出口を有する散水パイプ25aが設けられている。
【0024】
この変形シックナーエアー攪拌装置13に投入された洗浄水Wa(図1参照)は、洗浄水導入パイプ25により攪拌装置13内に噴出され、前述した重金属吸収凝集剤投入ユニットSにより、重金属吸収凝集剤を投入混合されてエアーバブルジェット13c、13dとの共同作用により、処理中の汚染土壌は、さらに高度な汚染物質の洗浄分離が行われ、一部の汚染物質は固形分17としてタンクの底部に沈殿して沈殿物排出口13gから排出され、前記トロンメル分級洗浄装置18から排出される埋め戻し用土壌Raと共に再利用される(図1参照)。
他の一部はエアーバブルジェットの泡の気泡ポンプ作用により上方に浮上して上部の貯水槽13eのオーバーフローガイドより貯水層13eに溜る。この洗浄水は微細な粒度と僅かな汚染物質含有洗浄水であるが、更にサンドポンプ14によってハイドロミキサー15に送り込まれ(図1参照)、デカンタ脱水器16によって脱水され、産業廃棄物Rbとして処理される。
また、デカンタ脱水機16から排出された無害化された浄水19は、変形シックナーエアー攪拌装置13や多段式トロンメル分級洗浄装置の洗浄水として再利用することができることは前述のフロー説明図で説明した通りである。
【0025】
本発明の変形シックナーエアー攪拌装置13に使用する重金属吸収凝集剤は、本発明の出願人が別途出願する重金属吸収凝集剤を使用した場合、例えば、A汚染地域から採取した鉛3800mg/kgの溶出値を有する汚染土壌元土の処理に対しては、洗浄後の溶出値は50mg/kg、B汚染地域から採取した鉛1800mg/kgの溶出値を有する汚染土壌元土の処理に対しては、洗浄後の溶出値は49mg/kgと言う実績を有する。
【0026】
これは、土壌洗浄に使用する水を加温し、汚染物質と環境条件に応じて温度を20℃〜50℃に保持して使用することにより、洗浄水の表面張力を低下させ、高圧温水噴射によって水分子を細分化させるより確実に汚染物質を土壌粒子から剥離することが可能となるのである。そしてシックナーエアー攪拌装置による処理により、泡が物質と衝突したときに破裂する力と、土壌粒子同士の衝突力と摩擦を利用して付着した汚染物質を土壌粒子から洗浄水に移行させ、気泡と共に浮上させる土壌洗浄設備を用いて細砂、細粒分から確実に汚染物質を分離除去することができるのである。
【0027】
このように、本発明は一連の処理設備からの処理排水を完全な閉回路的に使用することにより外部への排出水を全く無くすることができるのである。つまり、最終的に洗浄設備から排出される汚染物質含有洗浄水から汚染物質を汚染物質吸着凝集剤により連続式に吸着と同時に凝集分離処理を行うので、洗浄水は浄化され、無害化されて再利用可能となり、外部への排出水は全く無くすることができる。そして、本発明の処理設備から排出される吸着凝集沈殿物も全て環境基準以下に安定処理できるため搬出リスクや二次公害を抑制し、確実に安価な処理対策ができる優れた効果を有するのである。
【符号の説明】
【0028】
8・・・・・・トロンメル分級洗浄装置
8b・・・・・メッシュドラム
8c、8g・・シュート
8f・・・・・メッシュドラム
8p・・・・・散水パイプ
8d・・・・・ベルトコンベア
9・・・・・・底部水槽
11・・・・・廃液タンク
13・・・・・エアー攪拌装置
13e・・・・貯水槽
15・・・・・ハイドロミキサー
16・・・・・デカンタ脱水器
17・・・・・固形分
19・・・・・浄水
25・・・・・洗浄水導入パイプ
25a・・・・散水パイプ
H ・・・・・高圧水
Wa・・・・・洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌洗浄に使用する水を加温し、汚染物質と環境条件に応じて温度を20℃〜50℃に保持して使用することを特徴とする土壌洗浄装置。
【請求項2】
多段式トロンメル分級洗浄装置を使用することを特徴とする請求項1記載の土壌洗浄装置。
【請求項3】
分級により細砂、細粒状となった汚染土壌にバブルジェット水流を与えることにより、汚染物質を土壌粒子から洗浄水に移行させ、前記汚染物質を気泡と共に浮上させて洗浄水と土壌粒子を分離させるエアー攪拌装置を有することを特徴とする請求項1又は2記載の土壌洗浄装置。
【請求項4】
土壌洗浄装置から排出される汚染物質を含有する洗浄水に汚染物質の吸着と凝集分離を同時に行うことのできる処理剤を添加することを特徴とする汚染物質処理方法。
【請求項5】
土壌洗浄装置から排出される洗浄水を浄化し、汚染土壌洗浄水として再利用すると共に、汚染土壌を洗浄した洗浄水の汚染物質を吸着凝集沈殿させ、乾燥させて養生することにより再利用することを特徴とする汚染土壌の再処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−110548(P2011−110548A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283385(P2009−283385)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(506262494)アース株式会社 (10)
【出願人】(509343714)株式会社カルフ・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】