説明

汚染除去に優れた噴霧装置

【課題】噴霧ノズルにより供給される液体の小滴が病原微生物を含まないようにする噴霧装置を提供すること。
【解決手段】この装置は、噴霧マニホールド14、噴霧マニホールドに供給するための水源10、噴霧マニホールドに高圧状態の水を供給するように構成されたポンプ12、水源からの水を受け1μmより大きな粒子を保持する、少なくとも1つの粒子フィルター50,52、粒子フィルターからの液体を受け、0.2μmより大きい微生物を保持する限外濾過フィルター18、石英スリーブの中に配置されたUVCランプを1以上含み、限外濾過フィルターからの水を受け0.2μmより小さい微生物を滅ぼすように構成されたUVC室20、からなり、さらに、UVC室の下流に配置され規則的に殺菌性または殺ウィルス性の生成物を供給する定量ポンプ53を含み、前記ポンプと噴霧マニホールドとの間の配管に生物膜の形成を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば噴霧装置を必要とする産業設備など、主に細菌学的観点から完全な衛生状態が要求される場所を対象とする水の噴霧装置に関し、詳細には、汚染除去に優れた噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を霧状にして吹き付けること(噴霧)は、とりわけ水を用いて噴霧することは、特に夏の最も暑い日々に、暑気あたりを防ぐために公共の場で用いられることが増えている冷却技術である。この技術は、噴霧ノズルと45〜110バールの高圧のポンプを用いて、その大きさが3〜20μの水の微小滴を噴射することからなる。
【0003】
この技術は、柔軟で効果的な利用者に受け入れやすい、相対的に経済的なプロセスである。残念ながら、従来のシステムには、スプレーされる水が病原微生物を含まないということを確実にするための予防措置を備えていない。けれども、この噴霧技術は、その内在する特性のために、微生物の増殖を助長することがある。
【0004】
これは、とりわけ、レジオネラ菌による汚染の危険性についてあてはまる。現在、公表されているレジオネラ菌感染の患者は、常にその数が増加しており、これら患者の大多数、特に週末の感染者は、例えば、慢性疾患を患う高齢者であるが、特に最近では、最年少者(若者)であることを表わす。この汚染は、主に、レジオネラ菌の1つの種類である、レジオネラ・ニューモフィラが原因である。
【0005】
この汚染のプロセスはまた、他の細菌やSARSや鳥インフルエンザなどの疾病の原因となるウィルスにも関係する。これら疾病は、例えば小滴を形成する噴霧のような空気感染過程により伝染する危険性がある。これら小滴を呼吸経路により吸入すると、極めて重大で、しばしば致命的な、肺疾患を起こす危険性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、本発明の目的は、噴霧ノズルにより供給される液体の小滴が病原微生物を含まないようにする噴霧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の噴霧装置は、多数の噴霧ノズルを含む噴霧マニホールド、該噴霧マニホールドに送るための液体を供給する液体源、該液体源からの液体を前記噴霧マニホールドへ、通常45〜110バールの高圧で前記液体を供給するように構成したポンプを有する。この噴霧装置は、また、液体源からの液体を受け、略1μmより大きな粒子を保持する1つの粒子フィルター、該粒子フィルターからの液体を受け、0.2μmより大きい微生物を保持する限外濾過フィルター、そして石英スリーブの中に設置された1以上のUVCランプを含むUVC列を備え、前記限外濾過フィルターからの液体を受け、0.2μmより小さい微生物を滅ぼすように構成した室(chamber)を有する。この噴霧装置は、さらにUVC列室の下流に設置された定量ポンプを有し、この定量ポンプは、殺菌性または殺ウィルス性の生成物をポンプと噴霧マニホールドとの間のパイプに規則的に供給する。
【0008】
本発明の目的、対象、特徴は、図を参照して記載された説明により、さらに明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に表わされた本発明の噴霧装置は、どのような液体でも使用することができるが、以下に示す好ましい実施形態では水を使用する。
【0010】
図1に表わされた噴霧装置の実施形態は、主に、例えば、製紙工場、廃棄物回収センター、さらにまた、養鶏設備や温室などの継続的な噴霧を必要とする産業設備において使用される。これはまた、病院環境や老人ホームで使用することもできる。
【0011】
このタイプのどの噴霧装置と同じように、噴霧装置は、通常水供給網である水源10、45〜110バールの高圧で水を供給するのに適したポンプ12、そして噴霧ノズル(図示せず)を含む噴霧マニホールド14を有する。本発明がかかわることではないが、噴霧は空気中に水の微小滴を導入することからなり、その微小滴はかなり素早く蒸発すると思われる。これは周囲空気の物理的特性に変化をもたらす。この変化は、相対湿度の増加と水の蒸発による断熱冷却(すなわち、外部との熱交換をしない)によって発現され、空気の温度を下げることにつながる。
【0012】
噴霧ノズルは、内部にステンレス製フィン付きシリンダーが備えられた加圧室からなる。このシリンダーに対して発射された水は、潤滑材としての役割を果たしシリンダーを回転させ、10μより小さい微小滴に分裂され、高圧により外部へ運ばれる。空間全体の空気の相対湿度の度合いを均一にする傾向があるため、空気の流れが形成される。それで、その空間の自然な通風が得られる。より速い通風を得ようとする場合には、ファンを設置することもできる。
【0013】
水源10につながる水取り入れ管11は、連続する3つのフィルターへ水をもたらす。3つのフィルターは、2つの粒子フィルター50,52と限外濾過フィルター18であり、これらに続き、0.2μより小さいすべての微生物および主に限外濾過フィルターにより保持されるには小さすぎるウィルスを滅ぼすためにUVC(紫外線C波)紫外線放射列20が配置される。
【0014】
第1の粒子フィルター50は、4.5μmより大きい全ての粒子を止める陽性荷電フィルターである。第2の粒子フィルター52は、0.5μmより大きい全ての粒子とコロイド物質を止める。UVC列は、水が濁っていない条件においてのみ正確に機能することができるので、懸濁物質(MES)はもちろん水も、その濁度を低減することが必要である。それ故に、上流に粒子フィルターを設置する必要がある。
【0015】
限外濾過フィルター18は、微生物のうち大きな部分、すなわち、0.2μmより大きい微生物を保持する。これを除くことにより、例えばUVC列により除去されるウィルスのような極小サイズの微生物のためのスクリーンを作り出し、特に、水の中に存在する細菌を保持する。
【0016】
注目すべきは、粒子フィルター50は、下流の2つのフィルターを保護するものであり、あまり高価でなく、高い頻度で、例えば1月に1回、交換されることである。第2の粒子フィルター52は、6か月毎に交換するだけでよく、そして限外濾過フィルター18は、より高価であり、1年に1回だけ交換すればよい。
【0017】
UVC列20は、殺菌力のある253.7〜258nmの波長を放射する、1つ以上の低圧水銀ランプからなる。これらランプは、石英スリーブの中に設置される。水は、処理室20内の石英スリーブの周りを流れる。これらスリーブは、絶縁材および断熱材として、ランプと液体との間を隔てるために用いられ、最適な温度で動作することを可能にする。
【0018】
UVメータ32は、その寿命の初期のランプから放射される強度に対するパーセンテージとして、処理室の最も不利な地点で受ける強度を継続的に指示する。それは、例えば、ランプの経年劣化、ランプを覆う石英スリーブの付着物および水の品質の低下などの性能に影響を与えるすべてのパラメーターを考慮した有効性の指標を構成する。UVメータは、警報器(図示せず)の機動力となることができ、ランプから放射される強度が水の完全な汚染除去を確実にするのに不十分なときに、警報が発せられる。
【0019】
自動清浄装置34が、UVC列室20に接続されてもよい。この自動清浄装置は、石英スリーブの表面に形成され放射物を覆い隠す可能性がある付着物を除去するようにこすり落とす動作をする。この装置は、その結果、室を空にしランプを取り外さなければならなくなるのを抑制する。しかし、このような事態は、次の2つの操作モードにより必要になる。すなわち、UVメータ32により計測されるUVC放射の強度が低下したときか、UVCランプの稼働の持続期間に依存する定期的な交換予定に従うときである。
【0020】
産業上の利用において、噴霧マニホールドは、400mの全長を有することができる。装置全体を安全にするために、噴霧マニホールドに続く配管の中にレジオネラ菌のような微生物からなる生物膜の形成を、この生物膜の形成と戦う生成物の規則的な注入を可能にする定量ポンプ53を用いた規則的な処理によって、防止することができるようにすることが必須である。このような生成物は、細菌を滅ぼす殺菌性化合物、または好ましくは細菌のみならずウィルスを滅ぼす殺ウィルス性化合物である。このようにして、装置内を流れる水の品質はUVC列室から流出て得られる水の品質と等しくすることができる。
【0021】
定量ポンプ53から供給される生成物は、噴霧ノズルに素早く押し込まれるようになるので、定量ポンプ53から送り出される5μmより大きい粒子を止めるために反粒子フィルター54を加えるのがよい。
【0022】
噴霧装置は、汚染の非常に小さい危険性を取り除くため、定期的に空にされる。これを行なうために、低い部分に位置する2つのドレイン口を設ける。すなわち、噴霧マニホールドのドレイン口42とポンプのためのドレイン口44を設けるとよい。
【0023】
注目すべきは、例えば水源10につながる配管11やポンプ12と噴霧マニホールド14とを連結する配管28のような、噴霧装置の構成要素に接続する全ての配管は、好ましくは、殺菌性の金属である銅製または銅合金製であるとよい。
【0024】
本発明の噴霧装置は、例えば幹線道路の休憩施設、駅、空港ロビーなどの公共の場でも、または、例えば、パティオ、レストランのテラス、店などの私的な場所でも用いることができる。また、例えば、温室、魚の露店、野菜の露店などの売買指定区域や、または湿式空気冷却塔(TAR)でも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の噴霧装置の実施形態の好適な一例を示すブロック線図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の噴霧ノズルを含む噴霧マニホールド(14)、該噴霧マニホールドに送るための液体を供給する液体源(10)、該液体源からの液体を前記噴霧マニホールドへ、通常45〜110バールの高圧で前記液体を供給するように構成したポンプ(12)からなる噴霧装置であって、該噴霧装置は、また、前記液体源からの液体を受け略1μmより大きい粒子を保持する少なくとも1つの粒子フィルター(50,52)、前記粒子フィルターからの液体を受け0.2μmより大きい微生物を保持する限外濾過フィルター(18)、石英スリーブの中に設置された1以上のUVCランプからなるUVC列を備え、前記限外濾過フィルターからの液体を受け、0.2μmより小さい微生物を滅ぼすように構成した室(20)からなり、
前記噴霧装置は、さらに前記UVC列室の下流に設置された定量ポンプ(53)を有し、該定量ポンプが、殺菌性または殺ウィルス性の生成物を前記ポンプと噴霧マニホールドとの間の配管に規則的に供給し、生物膜の形成を防止するようにしたことを特徴とする噴霧装置。
【請求項2】
前記UVC列室(20)がUVメータ(32)を備え、該UVメータは、前記ランプの寿命の初期に放射された強度に対するパーセンテージとして、前記室の最も不利な地点において受けた線量を継続的に指示する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記UVC列室(20)が自動清浄装置(34)を備え、該自動清浄装置は、前記ランプを取り囲む石英スリーブの表面に形成されることがある付着物を除去するように、こすり落とす動作をする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、1μmより大きい粒子を保持する第1の粒子フィルター(50)を有し、次いで、0.5μmより大きい粒子またはコロイド物質を保持する第2の粒子フィルター(52)を有する請求項1,2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記装置が、さらに、前記定量ポンプの下流に配置された粒子フィルター(54)を有し、該粒子フィルターが5μmより大きい粒子を保持する請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、さらに、低い部分に位置するドレイン口、とりわけ前記噴霧マニホールド(14)にドレイン口(42)および前記ポンプ(12)にドレイン口(44)を備えた請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記噴霧装置の構成要素を接続する全ての配管(11,28)が銅製である請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記液体源(10)が、水源である請求項1〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の装置の使用であって、噴霧装置を必要とする産業設備または養鶏設備、特に製紙工場での噴霧装置の使用。

【公表番号】特表2008−532738(P2008−532738A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557541(P2007−557541)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000467
【国際公開番号】WO2006/092506
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(507283827)
【氏名又は名称原語表記】NICOLAI,Lionel
【出願人】(507283838)
【氏名又は名称原語表記】NICOLAI,Alain
【出願人】(507283849)
【氏名又は名称原語表記】CASTRO,Robert
【出願人】(507283850)
【氏名又は名称原語表記】LASSUS,Marc
【Fターム(参考)】