説明

汚水浄化設備

【課題】 汚泥の分解能力が高く、汚泥の減量・悪臭の減少に寄与できる汚水浄化設備を提供する。
【解決手段】 汚水浄化設備は、流入水内の一部の成分を沈殿させる最初沈殿池2と、最初沈殿池から供給される処理水を曝気する曝気槽4と、曝気槽から供給される処理水を沈殿させる最終沈殿池6と、最終沈殿池に沈殿した汚泥の一部を返送汚泥として曝気槽へ供給する経路20と、嫌気槽12と好気槽11とを直列に接続してなる汚泥活性槽13を備える。嫌気槽に最初沈殿池の処理水と最終沈殿池の汚泥の一部が供給され、好気槽から排出される活性汚泥混合物の一部が曝気槽に供給され、汚泥活性槽の汚泥令は曝気槽のそれより高く、汚泥活性槽における活性微生物の平均滞留時間は、曝気槽のそれより長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性汚泥法を用いた汚水浄化設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚水浄化に関し、活性汚泥法は広く使用されている。以下、図2を参照しながら、標準的な活性汚泥法による汚水浄化設備について、説明する。
【0003】
図2に示すように、未処理の流入水Aは、経路1を経由し、第一の池(最初沈殿池あるいは調整池、以下単に「最初沈殿池」という。)2に流入する。流入水Aに含まれる高密度の成分は最初沈殿池2の底部へ沈殿し、その上澄み水が処理水Bとして経路3を経由し、曝気槽4へ供給される。
【0004】
曝気槽4による処理を受けた処理水Cは、経路5を経由して、第二の池(最終沈殿池)6へ供給される。最終沈殿池6においても、処理水Cに含まれる高密度の成分は最終沈殿池6の底部へ沈殿し、その上澄み水が処理水Dとして経路7を経由し、放流系(図示せず)へ排出される。
【0005】
最終沈殿池6における沈殿物である汚泥の一部は、経路8、9を経由し余剰汚泥Fとして外部へ排出されるが、それ以外は、経路8、10を経由し返送汚泥Eとして曝気槽4へ供給される。
【0006】
返送汚泥Eは、カビ・細菌・原生動物等の微生物を多く含んでおり、曝気槽4内へ大量の空気を供給しながら、処理水Bと返送汚泥Eとを混合する。これにより、曝気槽4内において、微生物が処理水B中の栄養物を摂取(分解)して増殖し、その結果、汚水中の有機物等が除去され、汚水は浄化される。
【0007】
汚水の品質は、季節、温度変化、一日の時間、濃度等で変化する。曝気槽4内の温度等も一定ではない。これらの条件が変化する中、浄化に寄与する微生物の種類や分布も、汚水すなわち微生物のエサや酸素の存在の有無、温度等により、変化する。以上の点のいずれもが、汚水浄化作用の不安定要因となる。
【0008】
特に標準活性汚泥法では、処理時間が10時間前後であり、処理に作用する微生物の乳酸菌の発酵には時間が不足し、腐敗による悪臭が発生しやすく、汚泥が未分解物質の凝固物のままになりやすい。その結果、悪臭による環境汚染や地区住民とのトラブルを引き起こす。このような汚泥は、産業廃棄物として処理されるが、その処理負担は重い。
【特許文献1】特開2003−33783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、汚泥の分解能力が高く、汚泥の減量・悪臭の減少に寄与できる汚水浄化設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の汚水浄化設備は、流入水が供給され、流入水内の一部の成分を沈殿させる第一の池と、第一の池から供給される処理水を曝気する曝気槽と、曝気槽から供給される処理水を沈殿させる第二の池と、第二の池に沈殿した汚泥の少なくとも一部を返送汚泥として曝気槽へ供給する経路と、嫌気槽と好気槽とを直列に接続してなる汚泥活性槽を備え、嫌気槽には、第一の池の処理水と第二の池に沈殿した汚泥の少なくとも一部とが供給され、好気槽から排出される活性汚泥混合物の少なくとも一部が、曝気槽に供給され、汚泥活性槽の汚泥令は曝気槽の汚泥令よりも高く、汚泥活性槽における活性微生物の平均滞留時間は、曝気槽における活性微生物の平均滞留時間よりも長い。
【0011】
この構成において、汚泥活性槽と曝気槽とが、処理の関係上、並列に設置されているため、曝気槽と汚泥活性槽とにおいて、それぞれ処理時間等の条件を異ならしめることができる。即ち、汚泥活性槽では、汚泥令を高くして汚泥の分解を促進させることができ、微生物の平均滞留時間を多くして微生物がエサとなる物質を取り込み増殖する時間を長くとることができる。その結果、対象汚水の浄化に有効な種類の微生物が、増殖する。なお、上述したように、この種類は、条件により様々に変化するものであり、予め予想することは困難であるが、上述のように構成することにより、微生物の種類及び分布を、適応的に制御することができる。
【0012】
汚泥活性槽で蓄積された微生物は、曝気槽に供給され、曝気槽にて活動し、曝気槽内で更に増殖し、効率のよい分解が促進され、悪臭や汚泥が減少する。
【0013】
請求項2記載の汚水浄化設備では、嫌気槽に微生物を供給する微生物槽をさらに備える。
【0014】
ここで、返送汚泥に含有される微生物の種類は、汚水の内容により偏る傾向にある。そこで、この構成により、微生物槽から微生物を供給し、種類の偏りを是正しつつ、微生物群を作り、汚泥活性槽で未処理汚水と混合する。これにより、対象汚水に対して有効に働く微生物群が増殖し、さらに、増殖した微生物群が曝気槽内で汚水を分解し、無機物や有機物の分解が促進され、悪臭や汚泥の減少に寄与できる。
【0015】
請求項3記載の汚水浄化設備では、好気槽から嫌気槽へ活性汚泥混合物を循環させる経路をさらに備える。
【0016】
この構成により、活性汚泥混合物を、汚泥活性槽内において循環させることができ、汚泥活性槽における活性微生物の平均滞留時間を、曝気槽における活性微生物の平均滞留時間よりも、容易に長くできる。
【0017】
請求項4記載の汚水浄化設備では、嫌気槽の容積は、好気槽の容積よりも大である。
【0018】
活動環境が異なる微生物の環境に合わせ、増殖速度が嫌気性菌と好気性菌で異なるが、このように、嫌気槽の容積を好気槽より大きくしたため、微生物の分布バランスが良好となり、悪臭や汚泥が減少する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、汚泥の分解能力が高く、汚泥の減量・悪臭の減少に寄与できる汚水浄化設備を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態における汚水浄化設備のブロック図である。
【0021】
図1に示すように、未処理の流入水Aは、経路1を経由し、最初沈殿池2に流入する。流入水Aに含まれる高密度の成分は最初沈殿池2の底部へ沈殿し、その上澄み水が処理水Bとして経路3を経由し、曝気槽4へ供給される。
【0022】
曝気槽4による処理を受けた処理水Cは、経路5を経由して、第二の池(最終沈殿池)6へ供給される。最終沈殿池6においても、処理水Cに含まれる高密度の成分は最終沈殿池6の底部へ沈殿し、その上澄み水が処理水Dとして経路7を経由し、放流系(図示せず)へ排出される。
【0023】
最終沈殿池6における沈殿物である汚泥の一部は、経路8、9を経由し余剰汚泥Fとして外部へ排出されるが、それ以外は、経路8、10を経由し返送汚泥Eとして曝気槽4へ供給される。
【0024】
返送汚泥Eは、カビ・細菌・原生動物等の微生物を多く含んでおり、曝気槽4内へ大量の空気を供給しながら、処理水Bと返送汚泥Eとを混合する。これにより、曝気槽4内において、微生物が処理水B中の栄養物を摂取(分解)して増殖し、その結果、汚水中の有機物等が除去され、汚水は浄化される。
【0025】
以上の点は、従来技術に関する図1と変わりない。即ち、本形態の汚水浄化設備は、標準的な活性汚泥法による処理を行うことができる。
【0026】
なお、曝気槽4を、標準活性汚泥法ではなく、嫌気・好気汚泥活性法により、嫌気槽と好気槽で処理する構成とすることもできる。
【0027】
さらに、本形態の汚水浄化設備は、次の構成を備えたので、標準的な活性汚泥法による処理をこえた処理を行える。しかも、標準的な活性汚泥法による処理をこえた処理は、汚水浄化の目的や条件に合わせて、省略することもできる。
【0028】
活性汚泥の安定化を図るため、曝気槽4に対して、処理の関係上並列に汚泥活性槽11を設ける。汚泥活性槽11は、嫌気槽12と好気槽13とを直列に配置してなり、嫌気槽12の容積は、好気槽13の容積より大きい。さらに、本形態では、好気槽13から嫌気槽12に戻る経路19を設け、活性汚泥混合物Jを循環させている。
【0029】
微生物槽17を設置し、経路18を介し、嫌気槽12に微生物を供給する。なお、微生物槽17を設けるかわりに、手動で微生物を嫌気槽12に供給しても良い。
【0030】
最初沈殿地2の処理水Iを経路16を介し嫌気槽14に供給する。最終沈殿地6で発生した返送汚泥Eの一部を返送汚泥Hに分割し、経路15を介して嫌気槽14に供給する。活性汚泥混合物Jの一部を活性汚泥混合物Lに分割し、曝気槽4に供給する。
【0031】
嫌気槽12では、処理水Iと返送汚泥H中の種菌と活性汚泥混合物J中の種菌とが混合される。嫌気槽12は、嫌気雰囲気を有するので、嫌気槽12内では、嫌気性微生物が汚水中の栄養物をエサとして増殖する。
【0032】
嫌気槽12により処理された活性汚泥混合物は、次に、好気槽13に送られ処理される。好気槽13内では曝気が行われ、好気槽13は好気的雰囲気を有する。そのため、好気槽13内では、好気性微生物が汚水中の栄養物をエサとして繁殖する。
【0033】
汚泥活性槽11では、例えば3〜8時間というように、曝気槽4より汚泥の滞留時間が長い。したがって、嫌気性・好気性微生物の種類が安定し、微生物の菌濃度は高く(例えばMLSS濃度4000〜6000)なる。
【0034】
好気槽13より発生する汚泥の発生状況により、汚泥活性混合物Jの一部は、経路21を経由し最終沈殿地6に供給される。この供給は、手動によっても良い。この供給を行うと、最終沈殿池6におけるフロック形成と吸着とが促進され、沈殿状態が良好となり、処理水Dの品質が向上する。
【0035】
汚泥活性槽11から排出される活性汚泥混合物Jの一部は、曝気槽4へ供給される。その結果、曝気槽4に、返送汚泥Eよりも、微生物の種類、濃度が濃い汚泥が供給されるようになり、曝気槽4内の汚水の分解が促進される。
【0036】
なお、曝気槽4内で、微生物が汚水中の栄養物を摂取して、水中の無機・有機物は分解されことにより汚水は浄化されるが、微生物の濃度が濃いため汚水物質の分解が早まり、悪臭や汚泥が減少する。
【0037】
この方法では、曝気槽4と汚泥活性槽11の全体で微生物の安定化を進め汚水の分解を促進しているから、悪臭や汚泥量を低減できる。
【0038】
汚水の持つ性質は、人間や家畜や食品工場など発生原因箇所で大きく異なる。これらを一定の方法で汚水浄化処理することは非常に困難である。そこで、本形態のように、処理法を変更できると、事態に対応しやすい。
【0039】
汚水中で微生物を繁殖させることは、汚水を浄化していることに他ならない。本形態によれば、汚水内の微生物濃度を高め、又外部からの微生物の供給も含めて種類を確保できるから、生活排水、食品工場排水等の微生物が分解可能な汚水の処理に利用できる。
【0040】
この発明によれば、汚泥活性槽11を用いているから、活性汚泥の微生物濃度が高まり、効率の良い汚水処理を行える。また、汚泥活性槽11は、複雑な構造を必要としないから、既設の処理設備に追加的に汚泥活性槽11を設け、処理効率を向上させることができる。そうすれば、少ないコストで、既設の設備の処理能力を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明における汚水浄化設備は、例えば、養豚場、家庭排水、小規模食品工場の排水等を処理する、大型下水処理場等よりも小規模な処理プラントとして、好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態における汚水浄化設備のブロック図
【図2】従来の汚水浄化設備のブロック図
【符号の説明】
【0043】
1、3、5、7〜10、14〜16、18〜21 経路
2 最初沈殿地
4 曝気槽
6 最終沈殿池
11 汚泥活性槽
12 嫌気槽
13 好気槽
17 微生物槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入水が供給され、前記流入水内の一部の成分を沈殿させる第一の池と、
前記第一の池から供給される処理水を曝気する曝気槽と、
前記曝気槽から供給される処理水を沈殿させる第二の池と、
前記第二の池に沈殿した汚泥の少なくとも一部を返送汚泥として前記曝気槽へ供給する経路と、
嫌気槽と好気槽とを直列に接続してなる汚泥活性槽を備え、
前記嫌気槽には、前記第一の池の処理水と前記第二の池に沈殿した汚泥の少なくとも一部とが供給され、
前記好気槽から排出される活性汚泥混合物の少なくとも一部が、前記曝気槽に供給され、
前記汚泥活性槽の汚泥令は前記曝気槽の汚泥令よりも高く、前記汚泥活性槽における活性微生物の平均滞留時間は、前記曝気槽における活性微生物の平均滞留時間よりも長いことを特徴とする汚水浄化設備。
【請求項2】
前記嫌気槽に微生物を供給する微生物槽をさらに備える請求項1記載の汚水浄化設備。
【請求項3】
前記好気槽から前記嫌気槽へ活性汚泥混合物を循環させる経路をさらに備える請求項1から2記載の汚水浄化設備。
【請求項4】
前記嫌気槽の容積は、前記好気槽の容積よりも大である請求項1から3記載の汚水浄化設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−51421(P2006−51421A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233534(P2004−233534)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(593010132)株式会社テノックス九州 (5)
【Fターム(参考)】