説明

汚泥の浚渫処理方法および浚渫処理システム

【課題】ポンプにより浚渫した汚泥水を、多大な動力を必要とすることなく短時間で汚泥と水分に固液分離し、効率的な汚泥処理および排水処理を可能とし、また、環境にも優しい汚泥の浚渫処理方法と浚渫処理システムを提供する。
【解決手段】水底の汚泥2を浚渫ポンプ10により浚渫し、浚渫した汚泥水6を配管11により固液分離槽12に搬送して固液分離し、分離した汚泥2を脱水装置40により脱水して処理する。配管の途中に粉体凝集剤投入装置20と整流攪拌装置30を設け、配管11内に無機系の粉体凝集剤21を投入して配管11内を流れる汚泥水6に粉体凝集剤21を添加し、整流攪拌装置30の旋回整流通路34内で汚泥水6および粉体凝集剤21を一緒に強制的に連続攪拌し、汚泥水6中の汚泥2を固液分離槽12手前の配管11内ですばやく凝集させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋、港湾、河川等の水底に堆積された汚泥を浚渫し、浚渫した汚泥水を短時間で汚泥と水分に固液分離し、処理することを可能とする汚泥の浚渫処理方法とその浚渫処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海洋や河川等の浚渫工事においては、従来よりクレーンで吊り下げたグラブバケットで底の汚泥を掘削し、土運船に積み込むグラブ式浚渫船が一般とされてきたが、海水や河川の汚濁が激しいことから、最近ではポンプで底の汚泥を吸入し土運船等に送泥するポンプ浚渫方式が主流になりつつある。特開2007−308904号に前者の例が、特開2007−70988号に後者の例が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−308904号公報
【特許文献2】特開2007−70988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のいずれの方式も、大量の汚泥を土運船に積み込んだ後は、土運船の浚渫槽内に規定量の凝集剤を投入し、陸上からバックホウ等で汚泥を攪拌し、攪拌した浚渫土をバックボウ等で陸上のヤードに移動させ、乾燥後ダンプ車で搬出するようにしており、浚渫および浚渫土の処理作業に大きな時間を要していた。
【0005】
また、後者の方式でポンプで陸上の処理施設に直接搬送して処理する方式もあるが、処理設備が大型化し、多大な動力を必要とし、また、アルミニウム塩系やカチオン系合成高分子などの化学薬剤系の液体凝集剤を用いることから、固液分離後の水分を海中や河川に放流した場合、環境を損なうおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、ポンプにより浚渫した汚泥水を、短時間で汚泥と水分に固液分離し、効率的な汚泥処理および排水処理を可能とする汚泥の浚渫処理方法を提供すること、また、環境にやさしい汚泥の浚渫処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
さらには、多大な動力を必要とすることなく、簡易な設備により上記処理を実現可能とする汚泥の浚渫処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る汚泥の浚渫処理方法は、水底の汚泥をポンプにより浚渫し、浚渫した汚泥水をポンプから続く配管により固液分離槽に搬送して固液分離し、分離した汚泥を脱水槽で脱水処理する、汚泥の浚渫処理方法において、
ポンプから続く配管内に無機系の粉体凝集剤を投入して配管内を流れる汚泥水に粉体凝集剤を添加し、固液分離槽に続く配管の途中に汚泥水および粉体凝集剤を中心軸回りに螺旋状に旋回移動させる整流攪拌装置を設け、同整流攪拌装置内で汚泥水および粉体凝集剤を一緒に強制的に連続攪拌することを主要な特徴とする。
【0009】
ここで粉体凝集剤は、汚泥水中の汚泥を凝集させ、汚泥水中の汚泥と水分の固液分離を早める役目を果たす。粉体凝集剤には、汚泥の凝集作用のある無機系粉体はすべて含まれ、無機系粉体の凝集固化剤も含まれる。粉体凝集剤を用いると、攪拌により粉体どうしがぶつかり合って大きな摩擦帯電を生じて、大きな電荷が得られ、大きな凝集作用が得られる。無機系を用いることにより、有機系と異なり固液分離および脱水処理後の排水により海中や河川の環境に悪い影響を与えない。
【0010】
本発明に係る汚泥の浚渫処理方法によると、ポンプから続く配管内に無機系の粉体凝集剤を投入し、配管を流れる汚泥水および粉体凝集剤を整流攪拌装置内で螺旋状に旋回移動させながら一緒に強制的に連続攪拌することにより、粉体どうしがぶつかり合って粉体に大きな摩擦帯電が生じて大きな電荷(正)が得られる。これにより、汚泥水中の(負イオンに帯電している)汚泥を配管内で素早く凝集させ、より大きなフロックを形成させる。形成されたフロックは、汚泥水および粉体凝集剤の流れが一緒に整流攪拌装置内を中心軸回りに螺旋状に旋回移動する整流となるから、再度破壊されることがない。したがって、凝集作用によってよりフロックが大きくなった汚泥水が固液分離槽に送られる。これにより、固液分離槽内で短時間のうちに汚泥と水分に固液分離され、脱水処理が効率よく行なわれる。
【0011】
また、整流攪拌装置内の整流攪拌作用は、整流攪拌装置のケーシング内に螺旋状の配管の途中に汚泥水および粉体凝集剤を配管の中心軸回りに1回以上螺旋状に旋回移動させる旋回移動通路を設けることによって、配管内の水流と水圧だけで行えるから、浚渫ポンプによる圧送抵抗を小さく抑えることができ、したがって、新しくポンプを付加したり、多大な動力を必要とすることがない。
【0012】
無機系の粉体凝集剤は、従来のアルミニウム塩系やカチオン系合成高分子などの液体凝集剤に比べると、固液分離および脱水処理後の排水の(化学物質による)汚染がなく、海、河川、港湾の水質を良好に保持し、環境にやさしい。
【0013】
本発明に係る汚泥の浚渫処理方法は、整流攪拌装置のケーシング内に、中心軸回りに螺旋状に延びる複数の螺旋羽根を配置して、ケーシングの入口と出口の間に複数の旋回移動通路を設け、配管内を流れる汚泥水および粉体凝集剤を、各旋回移動通路内を旋回移動させることを第2の特徴とする。
【0014】
本発明に係る汚泥の浚渫処理方法は、配管内を流れる汚泥水および粉体凝集剤を、各旋回移動通路内を1.5〜3.0m/秒の流速で旋回移動させることを第3の特徴とする。
【0015】
本発明に係る汚泥の浚渫処理方法は、整流攪拌装置が、配管の中心軸回りに汚泥水および粉体凝集剤を螺旋状に旋回移動させることを第4の特徴とする。
【0016】
本発明に係る汚泥の浚渫処理方法は、配管内を流れる汚泥水1リットルあたり、0.1〜2.0gの無機系の粉体凝集剤を投入することを第5の特徴とする。
【0017】
本発明に係る汚泥の浚渫処理方法は、無機系の粉体凝集剤として、セラミック系またはガラス系の無機物粉体を用いることを第6の特徴とする。
【0018】
本発明に係る汚泥の浚渫処理方法によると、無機系の粉体凝集剤として、凝集力の高いセラミック系またはガラス系の無機物粉体を用いることにより、汚泥をより素早く凝集させて、汚泥水をより短時間のうちに固液分離することができる。
【0019】
本発明に係る汚泥の浚渫処理方法は、無機系の粉体凝集剤として、無機系の粉体の凝集固化剤を用いることを第7の特徴とする。
【0020】
本発明に係る汚泥の浚渫処理方法によると、無機系の粉体の凝集固化剤を用いることにより、固液分離後の汚泥の固化作用が強く、脱水処理を速やかに行え、また、脱水後の固化状態の汚泥を処理処分場へ容易に搬送できる。
【0021】
本発明に係る汚泥の浚渫処理方法は、浚渫した汚泥水を一旦土運搬船に積み込み、土運搬船に積み込んだ汚泥水をポンプにより吸上げて、ポンプから続く配管により陸上の固液分離槽に搬送することを第8の特徴とする。
【0022】
本発明に係る汚泥の浚渫処理方法によると、岸壁から遠方にある海底の汚泥で配管による汚泥水の搬送が難しい浚渫場所や、湖底の汚泥で浚渫ポンプによる浚渫が比較的難しいダム湖などにおいては、同方法による浚渫処理が好適であり、海底や湖底の汚泥をいったん土運搬船に積み込み、土運搬船を岸壁近くに移動させ、土運搬船からポンプおよび配管で陸上に搬送するようにすることにより、より効率的に浚渫処理を行える。
【0023】
本発明に係る汚泥の浚渫処理システムは、水底の汚泥を浚渫する浚渫ポンプと、浚渫ポンプから続いて浚渫された汚泥水を搬送する配管と、配管から続いて搬送された汚泥水を固液分離する固液分離槽と、固液分離槽から続いて分離後の汚泥を脱水処理する脱水槽とを備える汚泥の浚渫処理システムにおいて、固液分離に続く前記配管の途中に、配管内を搬送される汚泥水に無機系の粉体凝集剤を投入して添加する粉体凝集剤投入装置と、投入された粉体凝集剤および汚泥水を中心軸回りに螺旋状に旋回移動させ、それら粉体凝集剤および汚泥水を強制的に連続攪拌する整流攪拌装置を備えることを主要な特徴とする。
【0024】
本発明に係る汚泥の浚渫処理システムは、整流攪拌装置が、配管の途中に直列に接続されるケーシングと、ケーシング内に配置され、配管の中心軸回りに螺旋状に旋回する複数の旋回整流通路を形成する複数枚の螺旋羽根とを備える構成であり、配管内の汚泥水および粉体凝集剤が一方の配管から整流攪拌装置の各旋回整流通路の入口に流入し、旋回整流通路を螺旋状に整流しながら旋回移動して出口から他方の配管に流出する構成であることを第2の特徴とする。
【0025】
本発明に係る汚泥の浚渫処理システムは、ケーシングの入口から出口に至る各螺旋羽根に、旋回整流通路を螺旋状に整流しながら旋回移動する汚染水の一部が通過して多数の泡を生じさせる泡発生用の孔を複数設けたことを第3の特徴とする。
【0026】
本発明に係る汚泥の浚渫処理システムは、粉体凝集剤投入装置が、整流攪拌装置の上流側で配管の途中に直列に接続されるケーシングと、ケーシング内に配置されるノズル部と、ノズル部の近傍に配置される粉体凝集剤吐出部と、粉体凝集剤用の配管を通して粉体凝集剤吐出部に無機系の粉体凝集剤を供給する粉体凝集剤貯留タンクを備えることを第4の特徴とする。
【0027】
本発明に係る汚泥の浚渫処理システムは、浚渫した汚泥水を積み込む土運搬船をさらに備え、土運搬船に積み込んだ汚泥水をポンプにより吸上げて、ポンプから続く配管により陸上の固液分離槽に搬送することを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明に係る汚泥の浚渫処理方法によると、海底等から浚渫ポンプにより浚渫した汚泥水に対し配管途中で無機系の粉体凝集剤を投入して添加し、配管の途中に設けた整流攪拌装置でそれら汚泥水および無機系の粉体凝集剤を螺旋状に旋回移動して強制的に連続攪拌させることにより、多大な動力を必要とすることなく、固液分離槽の手前の配管内で汚泥を素早く凝集処理することができる。これによって、固液分離槽に搬送される汚泥水を短時間のうちに固液分離し、効率よく汚泥処理および排水処理できるという優れた効果を奏する。
【0029】
また、本発明に係る汚泥の浚渫処理方法によると、無機系の粉体凝集剤を用いることにより、固液分離および脱水処理後の排水の汚染がなく、海や河川等の水質を良好に保持し、環境に優しい汚泥の浚渫処理を実現できる。
【0030】
さらに、本発明に係る汚泥の浚渫処理システムによると、多大な動力を必要とせず、簡素で堅牢な設備を採用でき、汚泥の効率的な浚渫処理を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかる第1の汚泥の浚渫処理システムの全体構成図、
【図2】同システムに用いる粉体凝集剤投入装置の例を示す構成図、
【図3】同システムに用いる整流攪拌装置の例を示す正面図、
【図4】図3に示す整流攪拌装置の構成図、
【図5】本発明にかかる第2の浚渫処理システムの全体構成図、
【図6】本発明にかかる第3の浚渫処理システムの全体構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1ないし図4は本発明の第1の実施形態を示すもので、図1において、符号Sは本発明に係る汚泥の浚渫処理システムを示している。
【0033】
浚渫処理システムSは、海底に堆積された汚泥を浚渫し、処理するシステムで、図1に示すように、浚渫ポンプ10と、配管11と、固液分離槽12を備え、固液分離槽12の上流側で配管11の途中に粉体凝集剤投入装置20と整流攪拌装置30が順次配置され、固液分離槽12の下流側に脱水装置40が配置されている。
【0034】
浚渫ポンプ10は、海底1に堆積された汚泥2を周囲の海水3を汚濁させることなく陸上にポンプアップするもので、海面4に浮かぶ海上フロート13から吊り下げられる配管11の先端に浚渫ポンプ10が取り付けられている。浚渫ポンプ10から続く配管11の後端は海上フロート13から海中を迂回して岸壁5の陸上側に延び、さらに陸上に設置された粉体凝集剤投入装置20および整流攪拌装置30を介して固液分離槽12に延びている。
【0035】
粉体凝集剤投入装置20は、配管11内に無機系の粉体凝集剤21を連続的に投入して配管11中を圧送される汚泥水6に無機系の粉体凝集剤21を添加するもので、図2に粉体凝集剤投入装置20の構造例を示す。同図に示すように、粉体凝集剤投入装置20は、配管11の途中に直列に接続される筒状のケーシンク22を備え、ケーシング22の入口22Aに、先端に行くに従い先細りとなるノズル部23が配置されている。ノズル部23の入口23Aに進入した汚泥水6はノズル効果により加速され、出口23Bからジェット流となってケーシング22内を通過し、下流の配管11に送出されるようになっている。
【0036】
ノズル部23の近くには無機系の粉体凝集剤21の吐出部24が汚泥水6の送出方向と同じ向きに設けられ、粉体凝集剤タンク25から送出ポンプ26により配管27を送出される粉体凝集剤21が吐出部24からケーシング22内に投入されるようになっている。投入された粉体凝集剤21はノズル部23から噴出される汚泥水6の負圧作用により吸引され、汚泥水6と混合しながら配管11の下流へと送られるようになっている。
【0037】
粉体凝集剤21は、汚泥水6中の汚泥2を凝縮させて、汚泥水6中の汚泥2と水分3’の固液分離の時間を短縮化する役目を果たす。汚泥2の凝集作用のある無機系の粉体はすべて含まれる。粉体凝集剤21として、例えば天然由来のセラミック系またはガラス系の無機物粉体、セラミック系またはガラス系のバルーン粒子、石炭灰、石灰、粉状炭、天然シラス、珪藻土、砂などが用いられる。
【0038】
整流攪拌装置30は、配管11中を混合状態で圧送される汚泥水6および粉体凝集剤21を、配管11の中心軸回りに螺旋状に旋回移動させ、同装置30内で強制的に連続攪拌させるもので、旋回移動時の整流作用により圧送時の抵抗を小さくしながら、強制的に連続攪拌することにより粉体どうしがぶつかり合うことで、汚泥水6中の汚泥2の凝集を促進させるようになっている、図3および図4に整流攪拌装置30の構造例を示す。
【0039】
同図に示すように、整流攪拌装置30は、配管11の途中に直列に接続される筒状のケーシンク31を備え、ケーシング31内に入口から出口に至る多数枚(図示例では8枚)の螺旋羽根32が設けられている。各螺旋羽根32は、いずれも図4に示すように配管2の中心軸と同一の中心軸33回りに螺旋状に旋回する形状とされ、したがって、ケーシング31内には、入口に流入した汚泥水6および粉体凝集剤21を配管11の中心軸回りに螺旋状に旋回移動させて出口から流出させる複数(図示例では8室)の旋回整流通路34が形成されている。
【0040】
なお、螺旋羽根32の旋回ピッチは、ケーシング31の全長に対し1回以上(図示例では1.5回)とすればよく、このときの螺旋羽根32の半径RとピッチPの関係は、十分な整流作用と攪拌作用を確保するため、R/P=1/4〜1/10が望ましい。螺旋羽根32の旋回ピッチは、より好ましくはケーシング31の全長に対し2回〜5回とする。
【0041】
各螺旋羽根32には、泡発生用の複数の孔32aがケーシング31の入口側から出口側に至る途中に設けられている。汚泥水6が旋回整流通路34を螺旋状に旋回移動する間、汚泥水9の一部が各孔32aを通過して多数の泡を生じさせ、汚泥水6および粉体凝集剤21の攪拌作用をより一層促進させるようになっている。
【0042】
ケーシング31の各旋回整流通路34の入口に流入した汚泥水6および粉体凝集剤21は、螺旋羽根32による整流作用を受けながら旋回整流通路34の出口に向かい、その間、強制的に連続攪拌され、粉体凝集剤21の凝縮作用により、汚泥水6中の汚泥2を粒状に凝集させ、さらに粒どうしが結合してフロックを形成するようになっている。すなわち、汚泥水6中の汚泥2が配管11内ですばやく凝集される。図4中、符号7は汚泥2の凝集体を示している。
【0043】
固液分離槽12には、フロック状の汚泥凝集体7と水3’を含む汚泥水6が配管11の吐出部14より内部に放出され、固液分離槽12内の下部に汚泥凝集体7が沈殿し、これにより下部の汚泥凝集体7と上部の水3’にただちに固液分離されるようになっている。また、固液分離槽12内で汚泥凝集体7は粉体凝集剤21の凝集作用により粒状の小さな凝集体どうしが結合し、より大きなフロックを形成する。なお、上部に分離された水3’は排水基準の確認後、ただちに排水されるようになっている。
【0044】
脱水装置40は、固液分離槽12で固液分離された汚泥凝集体7を汚泥ポンプ15により取り出し、脱水槽41内で脱水処理するもので、粉体凝集剤21の凝集作用により微細な汚泥の脱水を可能とする。分離された水分は加圧手段等により脱水槽41外へ排出され、排水処理の基準の確認後、直ちに排水されるようになっている。また、脱水された汚泥凝集体7は、汚泥貯蔵タンク42に一時保管され、ダンプ車等で処理場に搬送され、処理場で処理処分されるようになっている。
【0045】
上記構成の浚渫処理システムSを用いた汚泥の浚渫処理方法について、以下に手順を追って説明する。
【0046】
まず、海面4上の海上フロート13から浚渫ポンプ10を海底1に堆積された汚泥2まで到達させ、浚渫ポンプ10を駆動して、汚泥2をポンプアップする。ポンプアップされた汚泥2には多量の水分が含まれている(汚泥水100重量部中、水分80〜95重量部)。かかる汚泥水6が配管11を通して固液分離槽12に向けて搬送される。
【0047】
次に、汚泥水6の搬送に合わせて、粉体凝集剤投入装置20により配管11内に粉体凝集剤21を投入する。より具体的には、粉体凝集剤投入装置20の手前に汚泥水6の検出センサーを設けておき、検出センサーからの信号に基づき、送出ポンプ26を駆動し、粉体凝集剤タンク25内の粉体凝集剤21を吐出部24からケーシング22内に投入する。投入量は汚泥水1リットル当たり0.1〜2.0gとする。投入量は適宜変更可能である。投入された粉体凝集剤21はノズル部23から噴出される汚泥水6の負圧作用により吸引され、汚泥水6に混合されながら配管11の下流へと搬送される。
【0048】
配管11の下流に搬送された汚泥水6および粉体凝集剤21は、次の整流凝集装置30内で配管11の中心軸回りに螺旋状に旋回移動しながら強制的に連続攪拌され、その間に生じる粉体凝集剤21の強い凝集作用により、汚泥水6中の汚泥2を素早く凝集させる。すなわち、ケーシング31の各旋回整流通路34の入口から1.5〜3.0m/秒の速度、より具体的には約2.5m/秒で流入した汚泥水6および粉体凝集剤21は、螺旋羽根32により整流作用を受けながら旋回整流通路34の出口に向かうとともに、その間、強制的に連続攪拌される。また、汚泥水6が旋回移動する間、螺旋羽根32の各孔32aから汚泥水6内に多数の泡を生じさせる。この急激な強制攪拌により、粉体凝集剤21の粉体どうしがぶつかり合って粉体に摩擦帯電が生じて正電荷が大きく増加し、これによって強い凝集作用が生じ、汚泥水6中の汚泥2を強力に吸着する。そして、互いに凝集してフロック状となった汚泥凝集体7が出口に向かい、下流の配管11に流出する。整流攪拌装置30内で整流されることで、フロック状に形成された汚泥凝集体7が再破壊されることなく、装置の出口に至るまで汚泥凝集体7が凝集を繰り返して大型化する。
【0049】
整流凝集装置30から下流の配管11に吐出された汚泥水6(フロック状の汚泥凝集体7と水3’が含まれる)は、固液分離槽12内に放出され、フロック状の汚泥凝集体7はただちに沈殿し、水3’と素早く固液分離される。固液分離槽12で上部に分離された水3’は、排水基準の確認後、ただちに排水される。無機系の粉体凝集剤21を用いるため、排水中に化学物質を含まず、海中の環境を損なうことがない。
【0050】
固液分離槽12で沈殿分離された汚泥凝集体7は、汚泥ポンプ15の駆動により配管16を介して脱水装置40に搬送される。脱水装置40の脱水槽41内でも粉体凝集剤21の凝集作用により、微細な汚泥も凝集される。そして、分離された水分は脱水槽41外へ排出され、排水基準の確認後、ただちに排水される。また、脱水処理された汚泥凝集体7は、汚泥貯蔵タンク42に一時的に保管され、ダンプ車等で処理場に搬送される。
【0051】
本実施形態の浚渫処理システムSを用いることにより、海底1から浚渫ポンプ10により浚渫した汚泥水6中の汚泥を、多大な動力を必要とすることなく、固液分離槽12の手前の配管11内で素早く凝集処理し、凝集処理された汚泥水6を固液分離槽12に搬送することができる。これにより、固液分離槽12内で短時間のうちに汚泥と水に固液分離し、効率よく汚泥処理および排水処理することができる。また、多大な動力を必要とせず、簡素で堅牢な設備を実現できる。
【0052】
なお、本実施形態の浚渫処理システムSにおいては、粉体凝集剤21として、無機系のペーパースラッジ焼却灰や石炭灰(フライアッシュ)などの粉体凝集固化剤を用いてよい。凝集固化剤を用いると、固液分離後の汚泥の固化作用が強く、脱水処理を速やかに行える。また、脱水後の汚泥凝集体7は固化が進んでおり、処分場へ容易に搬送できる。粉体凝集固化剤は上に述べた粉体凝集剤21と組み合わせて用いてもよい。
【0053】
図5は本発明の第2の実施形態を示すもので、図5中、符号S’は本発明に係る汚泥の浚渫処理システムを示している。なお、図5中、図1に示す構成要素と同一要素には同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図5に示す浚渫処理システムS’には、配管11の一部で凝集剤投入装置20の上流側に、汚泥以外の異物を除去する異物除去槽50が配置されている。異物除去槽50は、異物除去スクリーン51を備え、海底から浚渫ポンプ10により浚渫した汚泥水6に含まれる異物(石ころ、金属類、木片、ビニルなど)を異物除去スクリーン51で除去し、異物が除去された汚泥水6を異物除去槽50内に吐出されるようになってる。異物除去槽50内に吐出された汚泥水6は、吸上ポンプ52により配管53を介して凝集剤投入装置20の上流側の配管11に送られるようになっている。
【0055】
図5に示す浚渫処理システムS’によれば、配管11の上流側に異物除去槽50を設けたから、異物が除去された汚泥水6を固液分離することができるようになり、汚泥水6の固液分離処理を効率よく行うことができる。
【0056】
図6は本発明の第3の実施形態を示すもので、図6中、符号S’’は本発明に係る汚泥の浚渫処理システムを示している。なお、図6中、図1および図5に示す構成要素と同一要素には同一符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図6に示す浚渫処理システムS’’には、海底1から浚渫した汚泥水6を積み込む土運搬船60を備えている。土運搬船60は、図示しない浚渫用のバケットやグラブ、ポンプ等により海底1の汚泥2を浚渫し、浚渫した汚泥水6をいったん貯留室61内に貯留し、その後、岸壁5近くまで移動するようになっている。岸壁5近くには、図示しない支柱により配管11が所定の高さに保持され、配管11の先端にポンプ10’が土運搬船60の汚泥水6まで垂下されている。したがって、土運搬船60の貯留室61内に貯留された汚泥水6は、ポンプ10’により吸上げられ、ポンプ10’から続く配管11を通り、異物除去槽50内に吐出された後、吸上ポンプ52により配管53を介して凝集剤投入装置20の上流側の配管11に送られるようになっている。その後、配管11に送られた汚泥水6は、粉体凝集剤投入装置20および整流攪拌装置30を通り、固液分離槽12で固液分離され、脱水装置40で脱水処理され、処分されるようになっている。
【0058】
図6に示す浚渫処理システムS’’によれば、岸壁5から遠方にある海底の汚泥で配管による汚泥水の搬送が難しい浚渫場所(例えば岸壁から数百メートル先の海底)では、図1に示す浚渫ポンプ10で浚渫し、長い配管11を使って陸上に汚泥水6を搬送するのが難しい場合がある。図6に示す浚渫処理システムS’’は当該場所で浚渫作業をする場合に好適である。同システムS’’によれば、岸壁5から遠方にある浚渫場所の海上でバケットやグラブを用いていったん汚泥水6を土運搬船60に積み込み、岸壁5近くに移動させた土運搬船60からポンプ10’で汚泥水6を吸上げることにより、配管11を通して効率的に汚泥水を搬送し、処理できる。なお、図1の浚渫ポンプ10による浚渫が比較的難しいダム湖の湖底の浚渫作業においても、図6に示す浚渫処理システムS’’が好適である。
【0059】
かくして、本発明の浚渫処理方法および浚渫処理システムを用いることにより、海底から浚渫した汚泥水を短時間のうちに固液分離し、汚泥処理と排水処理を効率よく行うことができる。また、無機系の粉体凝集剤を用いるので、排水により海中の環境を損なうことがない。
【0060】
さらに、本発明の浚渫処理システムは、大型の攪拌装置や排水処理装置が要らず、多大な動力を不要とし、簡素かつ堅牢な設備を実現できる。さらに、浚渫処理に要する費用や、設備の設置、運営、保守点検に要する費用も大幅に削減することが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る汚泥の浚渫処理方法および浚渫処理システムは、海洋、港湾、河川、湖沼、ダム湖等の水底に堆積された汚泥を浚渫処理する方法およびシステムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 海底
2 汚泥
3 海水
4 海面
5 岸壁
6 汚泥水
7 汚泥凝集体
10 浚渫ポンプ
11,16,27,53 配管
12 固液分離槽
13 海上フロート
14 吐出部
15 汚泥ポンプ
20 粉体凝集剤投入装置
21 無機系の粉体凝集剤
22,31 ケーシング
23 ノズル部
24 吐出部
25 粉体凝集剤タンク
30 整流攪拌装置
32 螺旋羽根
32a 孔
33 中心軸
34 旋回整流通路
40 脱水装置
41 脱水槽
42 汚泥貯蔵タンク
50 異物除去槽
51 異物除去スクリーン
52 吸上ポンプ
60 土運搬船
61 貯留室
S,S’,S’’ 汚泥の浚渫処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底の汚泥をポンプにより浚渫し、浚渫した汚泥水をポンプから続く配管により固液分離槽に搬送して固液分離し、分離した汚泥を脱水槽で脱水処理する、汚泥の浚渫処理方法であって、
ポンプから続く配管内に無機系の粉体凝集剤を投入して配管内を流れる汚泥水に粉体凝集剤を添加し、固液分離槽に続く配管の途中に汚泥水および粉体凝集剤を中心軸回りに螺旋状に旋回移動させる整流攪拌装置を設け、同整流攪拌装置内で汚泥水および粉体凝集剤を一緒に強制的に連続攪拌することを特徴とする汚泥の浚渫処理方法。
【請求項2】
整流攪拌装置のケーシング内に、中心軸回りに螺旋状に延びる複数の螺旋羽根を配置して、ケーシングの入口と出口の間に複数の旋回移動通路を設け、配管内を流れる汚泥水および粉体凝集剤を、各旋回移動通路内を旋回移動させることを特徴とする請求項1記載の汚泥の浚渫処理方法。
【請求項3】
配管内を流れる汚泥水および粉体凝集剤を、各旋回移動通路内を1.5〜3.0m/秒の流速で旋回移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の汚泥の浚渫処理方法。
【請求項4】
整流攪拌装置が、配管の中心軸回りに汚泥水および粉体凝集剤を螺旋状に旋回移動させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の汚泥の浚渫処理方法。
【請求項5】
配管内を流れる汚泥水1リットルあたり、0.1〜2.0gの無機系の粉体凝集剤を投入することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の汚泥の浚渫処理方法。
【請求項6】
無機系の粉体凝集剤として、セラミック系またはガラス系の無機物粉体を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の汚泥の浚渫処理方法。
【請求項7】
無機系の粉体凝集剤として、無機系の粉体の凝集固化剤を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の汚泥の浚渫処理方法。
【請求項8】
浚渫した汚泥水を一旦土運搬船に積み込み、土運搬船に積み込んだ汚泥水をポンプにより吸上げて、ポンプから続く配管により陸上の固液分離槽に搬送することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の汚泥の浚渫処理方法。
【請求項9】
水底の汚泥を浚渫する浚渫ポンプと、浚渫ポンプから続き浚渫された汚泥水を搬送する配管と、配管から続き搬送された汚泥水を固液分離する固液分離槽と、固液分離槽から続き分離後の汚泥を脱水処理する脱水槽とを備える汚泥の浚渫処理システムにおいて、
前記配管の途中に、配管内を搬送される汚泥水に無機系の粉体凝集剤を投入して添加する粉体凝集剤投入装置と、投入された粉体凝集剤および汚泥水を中心軸回りに螺旋状に旋回移動させ、それら粉体凝集剤および汚泥水を強制的に連続攪拌する整流攪拌装置を備えることを特徴とする汚泥の浚渫処理システム。
【請求項10】
整流攪拌装置が、配管の途中に直列に接続されるケーシングと、ケーシング内に配置され、配管の中心軸回りに螺旋状に旋回する複数の旋回整流通路を形成する複数枚の螺旋羽根とを備える構成であり、配管内の汚泥水および粉体凝集剤が一方の配管から整流攪拌装置の各旋回整流通路の入口に流入し、旋回整流通路を螺旋状に整流しながら旋回移動して出口から他方の配管に流出する構成であることを特徴とする請求項9記載の汚泥の浚渫処理システム。
【請求項11】
ケーシングの入口から出口に至る各螺旋羽根に、旋回整流通路を螺旋状に整流しながら旋回移動する汚染水の一部が通過して多数の泡を生じさせる泡発生用の孔が複数設けられていることを特徴とする請求項10記載の汚泥の浚渫処理システム。
【請求項12】
粉体凝集剤投入装置が、整流攪拌装置の上流側で配管の途中に直列に接続されるケーシングと、ケーシング内に配置されるノズル部と、ノズル部の近傍に配置される粉体凝集剤吐出部と、粉体凝集剤用の配管を通して粉体凝集剤吐出部に無機系の粉体凝集剤を供給する粉体凝集剤貯留タンクを備えることを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載の汚泥の浚渫処理システム。
【請求項13】
浚渫した汚泥水を積み込む土運搬船をさらに備え、土運搬船に積み込んだ汚泥水をポンプにより吸上げて、ポンプから続く配管により陸上の固液分離槽に搬送することを特徴とする請求項9ないし請求項12のいずれか一項に記載の汚泥の浚渫処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−17989(P2013−17989A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223955(P2011−223955)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(511148086)株式会社矢野興業 (1)
【Fターム(参考)】