説明

汚泥処理方法

【課題】 本発明は、汚泥に凝集剤を添加してフロックを形成させてメッシュ袋体により水切りを行う汚泥処理方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 本発明は、産業廃棄物としての汚泥に対して凝集剤を添加・攪拌してフロックを形成する工程と、前記水分の含んだフロックをメッシュ袋体4内に流し込み、該メッシュ袋体4を吊り下げることにより水分のみを前記メッシュ袋体外へ滴落させて個液分離を行う工程を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚泥処理方法に関する。詳しくは凝集剤によって固液分離された汚泥をメッシュ袋体にて水分調整した後に廃棄もしくは、リサイクルする汚泥処理方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
中小規模の浄水場における汚泥処理では、汚泥を吸引車で吸引して最終処分場若しくは、リサイクル工場へ搬入する。あるいは図3に示すように、移動式脱水車102に搭載される凝集剤槽103および遠心脱水機104によって固液分離してフロック状とし脱水を行った脱水ケーキを運搬車両にて最終処分場、もしくはリサイクル工場まで搬出する処理工程がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、汚泥を既存の天日乾燥床へ移送して、天日によって汚泥に含まれる水分を蒸発させて固化した汚泥をバケット車などの重機によって回収した後に、運搬車両によって最終処分場へ搬送廃棄する処理工程がある。
【0004】
【特許文献1】特開平10−337598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記汚泥をそのまま最終処分場もしくは、リサイクル工場へ搬出する処理方法では、水分が多く含まれた状態での搬出となるために処理量が多く、かつ汚泥処理の完全委託となるために非常に大きなコストとなる問題がある。
【0006】
また、移動式脱水車によって汚泥を処理する方法では、浄水場などの敷地内にて移動式脱水車における処理作業に必要な汚泥受入槽や移送ポンプなどの諸設備の設置が必要となり、汚泥受入槽より凝集剤槽へ移送された汚泥に凝集剤を添加して固液分離を行い、凝集剤によって形成されるフロックを遠心脱水機によって汚泥に含まれる水分を分離して形成される脱水ケーキを廃棄もしくはリサイクルするものであり、1日の処理量が20〜30m3に限られているために、1回の委託処理量が150m3である場合には、5〜7.5日必要となり、前記諸設備の設置や片付けとの日数とを合わせて約7日から10日間かかることになる。
【0007】
したがって、この処理期間中は遠心脱水機やポンプの稼働による騒音の発生問題があり、また1回の汚泥処理が限られているために、汚泥の量が多い場合には処理期間が長くなりコスト高となる問題がある。
【0008】
また、汚泥を天日乾燥床へ移送して天日干しする場合には、広い床面積と汚泥中の水分を蒸発するのに長い時間が必要となり、処理効率が非常に低い問題がある。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、固液分離された汚泥に凝集剤を添加してフロックを形成させてメッシュ袋体により水切りを行う汚泥処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る汚泥処理方法は、産業廃棄物としての汚泥に対して凝集剤を添加し、攪拌してフロックを形成する工程と、前記フロックを形成した汚泥をメッシュ袋体内に流し込み、該メッシュ袋体を吊り下げることにより水分のみを前記メッシュ袋体外へ滴落させて個液分離を行う工程を備える。
【0011】
ここで、汚泥に凝集剤を添加してフロックを形成させ、これをメッシュ袋体に収納して吊り下げることにより、水分のみが、自重によって垂下して滲み出てメッシュ袋体より滴落することで個液分離を行うことが可能となる。
【0012】
また、汚泥を個液分離した後に、天日乾燥をすることによって乾燥スラッジ化とし、このメッシュ袋体を輸送用の容器として使用することにより、積み替えの作業工程を省略することができる。
【0013】
また、前記メッシュ袋体内より乾燥スラッジを廃棄もしくは、リサイクルした後に、再度使用することによりコストを軽減することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の汚泥処理方法によれば、汚泥に凝集剤を添加してフロックを形成し、これをメッシュ袋体に収納して吊るすことにより水切りを行うことで脱水装置によらない効率の良い水切りが可能となる。
【0015】
また、メッシュ袋体に収納した状態で天日干しを行い、乾燥させた後メッシュ袋体に収納した状態で最終処分場もしくは、リサイクル工場に搬出することにより従来のように詰め替えなどの作業工程が省略でき、作業効率が非常に高くなる。
【0016】
更に、メッシュ袋体は再使用することができるとともに、汚泥処理工程において機械装置を使用しないために騒音が殆ど発生することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1に、本発明を適用した汚泥処理方法の一例を示すフローチャート図を示す。
【0018】
ここで、例えば河川などから取水された水は浄水場1で浄化され、塩素滅菌された後に各家庭に配水される。この浄水場では濁水に凝集剤を添加して濁質成分を凝集させて沈降させることにより固液分離を行う。
【0019】
そこで被処理水中に混濁する濁質成分は表面が負に帯電しており、電気的な反発力によって分散している。これらの濁質成分に対して正の荷電であるポリ塩化アルミニウム(PAC)を主成分とする凝集剤を添加することにより、濁質成分が凝集剤によって集塊されて沈殿することにより上澄水と沈殿した汚泥とに固液分離される。
【0020】
次に、この固液分離された汚泥を仮設タンク、あるいは排泥池2に貯留される。そして排泥池2に貯留された汚泥をポンプによって反応槽3に移送する。
【0021】
この反応槽3に投入された汚泥に対して酸化カルシウム(CaO)を主成分とした凝集剤を添加し、攪拌することによってフロックを形成させる。
【0022】
そしてフロック状とした汚泥を、メッシュ袋体4内に収納して水切りを行うものである。このメッシュ袋体は、ポリプロピレンなどのように弾力性を有し、かつ排水性の優れた素材をメッシュ化したものであり、フロックよりも小さい孔径のメッシュ状とされるためにフロック化された汚泥はメッシュ袋体内より漏れ出ることがない。
【0023】
そこで図2に示すように、浄水場内に仮設した吊り下げ枠体5に複数のメッシュ袋体4を吊り下げ、これらのメッシュ袋体内にフロック化した汚泥を流し込むものであり、これにより水分のみが自重によって垂下してフロックより滲み出てメッシュ袋体4より落下し、汚泥の個液分離(スラッジと河川放流可能な水との分離)が可能となる。
【0024】
このようにしてろ過完了後も、複数のメッシュ袋体4を屋外に吊り下げた状態で7日から10日天日乾燥を行うことによって個液分離されたスラッジの含水率がさらに減ったことにより、当初の汚泥より重量を約80%減量することができる。
【0025】
また、天日乾燥を行っている期間は、メッシュ袋体内に外部から飛散してきた異物(ごみ、枯葉、空缶等)の混入がないので、乾燥スラッジのリサイクルにおいては、不純物が少ないためリサイクル率が高くなる(浄水汚泥でリサイクル率100%)。
【0026】
そして最終処分として乾燥されたスラッジをリサイクル工場まで搬出する場合には、メッシュ袋体内に乾燥スラッジを収納した状態でクレーンなどによって車両に積み込むことにより輸送用の容器として使用することができ、しかも細かいメッシュ状であるために収納される乾燥スラッジが外部に飛散することがない。
【0027】
したがって、メッシュ袋体を乾燥スラッジの輸送用の容器としてそのまま使用するため、積み替えの手間が少なく、かつ搬送先で乾燥スラッジを排出した後の空になったメッシュ袋体は、現場に持ち帰り、再使用(通常3回程度)する。
【0028】
なお、本実施例では浄水場において発生する汚泥処理について詳述したが、汚泥として例えば建設工事現場汚泥、食品団地等の活性汚泥など各種の汚泥に対して適用することができるものである。
【0029】
本発明の汚泥処理方法では、各種の条件によって発生した汚泥に対して凝集剤を添加することにより汚泥をフロック化し、これをメッシュ袋体に流し込んで吊り下げることにより、汚泥から河川等に放流可能な水のみをろ過することが可能となる。
【0030】
そして数日間の天日乾燥により乾燥スラッジとし、メッシュ袋体ごと搬出することにより詰め替え作業を省略することが可能となる。また、汚泥の処理量に応じてメッシュ袋体の数量が決まるために、汚泥の処理量が少ない場合や多い場合でも十分に対応することが可能となり、安定した処理能力を確保することが可能となる。
【0031】
更に、移動式脱水車による処理と比べて、汚泥の処理工程で脱水装置などを使用することがないために、機械的な騒音を発生することがなく、かつ汚泥の処理量に応じてメッシュ袋体の数量が決まるために無駄がなく、効率の良い汚泥処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用した汚泥処理方法の一例を示すフローチャート図を示す。
【図2】本発明を適用した汚泥処理方法におけるメッシュ袋体の吊り下げ状態を示す説明図である。
【図3】従来の移動式脱水車による汚泥処理工程を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0033】
1 浄水場
2 排泥池
3 反応槽
4 メッシュ袋体
5 吊り下げ枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業廃棄物としての汚泥に対して凝集剤を添加し、攪拌してフロックを形成する工程と、
前記フロックを形成した汚泥をメッシュ袋体内に流し込み、該メッシュ袋体を吊り下げることにより水分のみを前記メッシュ袋体外へ滴落させて個液分離を行う工程を備える
ことを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項2】
前記個液分離をした後に、天日乾燥を行い乾燥スラッジ化とする
ことを特徴とする請求項1記載の汚泥処理方法。
【請求項3】
前記メッシュ袋体を乾燥スラッジの輸送用の容器として使用する
ことを特徴とする請求項2記載の汚泥処理方法。
【請求項4】
前記メッシュ袋体を乾燥スラッジの輸送用の容器として使用した後に、再度個液分離を行うことに使用する
ことを特徴とする請求項3記載の汚泥処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−44621(P2007−44621A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231449(P2005−231449)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(505302616)有限会社ファーストソリューション (2)
【Fターム(参考)】