説明

汚泥処理装置

【課題】 余剰汚泥の減量化とMLSSの管理との両立を図ることができ、しかも余剰汚泥の減量化を高効率で行うことができる汚泥処理装置を提供する。
【解決手段】 一軸偏心ネジ型ポンプ53によって昇圧した汚泥を可溶化処理槽54内部にノズルにより噴射し、この噴射に伴うキャビテーションによって、汚泥を構成する微生物細胞を破壊して可溶化させる。その後、この汚泥を分配槽55内で分配し、一部を合流槽52に戻す。合流槽52には濃縮機7が接続されており、この両者間で汚泥を循環させながら合流槽52内の汚泥を濃縮していく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性汚水の処理において発生する余剰汚泥を減量化するための汚泥処理装置に係る。特に、本発明は、余剰汚泥の減量化を高効率で行うための対策に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、下水、産業排水、屎尿、ごみ埋め立て汚水などの有機性汚水を活性汚泥法で生物学的に処理することが行われているが、この処理法では、大量の有機性汚泥(以下、余剰汚泥と呼ぶ)が発生しており、その量は日本全体で年間1000万トンを上回っている。このため、この種の活性汚泥法では余剰汚泥の処理及び処分が大きな課題となっている。
【0003】
この余剰汚泥は、多量の脱水助剤(ポリマーなど)を添加して汚泥脱水機で脱水し、その脱水ケーキを埋め立て処分するか、または焼却処分している。ところが、脱水助剤の使用コスト、焼却設備費用、焼却用重油コスト等といった費用を要し、また、脱水ケーキの埋め立て場所の不足、焼却灰の処分場所の不足などといった多くの問題を抱えている。
【0004】
このような問題を解決するための余剰汚泥処理方法として、下記の特許文献1に開示されているキャビテーション処理法が提案されている。この特許文献1に開示されている処理方法は、好気性生物処理槽において発生した汚泥を沈殿槽に導入し、この沈殿槽において処理水から分離された汚泥の一部を可溶化することより、余剰汚泥の削減を図っている。
【0005】
具体的には、沈殿槽から好気性生物処理槽に延びる配管の途中にターボ形ポンプを設置して配管内部にキャビテーション(液体の局所的で且つ急激な圧力低下)を発生させ、これによって余剰汚泥を可溶化するようにしている。つまり、沈殿槽と好気性生物処理槽とを結ぶターボ形ポンプ配管系において、発生する圧力定在波の節の位置にポンプを位置させる。この構成により、先ず、ターボ形ポンプを駆動することで、羽根車の回転に伴って圧力波が発生する。発生した圧力波は、ポンプの吸い込み側に接続する吸込管路及び吐出側に接続する吐出管路を伝播し、それぞれ沈殿槽、好気性生物処理槽で反射する。ポンプから双方の槽へ向かう圧力の進行波と、各槽で反射した反射波とが干渉して配管内に圧力の定在波が発生する。ポンプが所定回転数のとき、管路内の液柱が共振し、圧力脈動の腹の部分では大きな圧力脈動が発生する。この圧力の腹の部分では圧力が蒸気圧以下に到達し、これによって余剰汚泥を構成する微生物細胞が破壊され、可溶化が起こるようになっている。
【特許文献1】特開平11−156398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1に開示されている処理方法において微生物細胞の破壊を十分に行うためには、ターボ形ポンプ配管系の配管長は、かなりの長さ(80m程度)が必要であった。このため、処理装置全体の小型化を図った場合には十分なキャビテーション効果を得ることができなかった。また、上記管路内で液柱が共振するようにポンプ回転数を調整することが困難であり、このポンプ回転数が適正値から僅かでもずれてしまうとキャビテーション効果が得られず汚泥の可溶化が行われなくなってしまうため、信頼性が十分に得られているものではなかった。
【0007】
一方、水処理設備における水質の安定化を図るためには、生物反応槽(生物処理槽)内のMLSS(Mixed liquor suspended solid)を適切に管理することが重要である。例えばオキシデーションディッチ法では、このMLSSを2000〜4000mg/l程度に管理することが好ましいとされている。これまで、MLSSの管理は、余剰汚泥の引き抜き量を調整することにより行っていた。つまり、MLSSが目標値よりも高くなると、余剰汚泥の引き抜き量を多くすることで、MLSSを目標値に近付けるようにしていた。
【0008】
しかし、このように余剰汚泥の引き抜き量のみによってMLSSを調整していたのでは、余剰汚泥の減量化を図ることが困難であり、上述した余剰汚泥の大量発生を助長してしまうことにも繋がる。
【0009】
このように、余剰汚泥の増大を招くことなしにMLSSを適正値に管理するといった技術は未だ提供されていない。
【0010】
そこで、本発明の発明者は、余剰汚泥の減量化とMLSSの管理との両立を図ることができる汚泥処理装置について研究し、可溶化処理槽内でキャビテーションを生じさせることによって汚泥を効果的に可溶化させ、この可溶化汚泥を生物反応槽に戻すといった技術について検討を行った。そして、更に、この手法を用いた場合における余剰汚泥の減量化を高効率で実現することについての研究を行った。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、余剰汚泥の減量化とMLSSの管理との両立を図ることができ、しかも余剰汚泥の減量化を高効率で行うことができる汚泥処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決手段は、可溶化処理槽内でのキャビテーション効果によって汚泥を可溶化させ、この汚泥を分配槽に一旦回収した後、この分配槽内で分配し、一部を生物反応槽に戻し、他を可溶化処理槽内で再度可溶化させるようにしている。また、上記可溶化処理槽内で可溶化させるための汚泥を予め濃縮しておき、可溶化汚泥濃度を高くすることで高効率化を図っている。これにより、沈殿槽から汚泥処理装置へ導入する汚泥量分だけ水処理設備から排出される余剰汚泥量を減量でき、且つ可溶化した汚泥を生物反応槽へ戻すことで生物反応槽内のMLSSを容易に調整することが可能になる。
【0013】
−解決手段−
具体的に、本発明は、可溶化処理槽と、活性汚泥法によって汚水を処理する生物反応槽から排出された汚泥を上記可溶化処理槽に向けて圧送し、可溶化処理槽内に噴射することによりキャビテーションによる汚泥の可溶化を行わせる一軸偏心ネジ型ポンプと、上記可溶化処理槽から導出された汚泥を回収し、その汚泥の一部を生物反応槽に、他の汚泥を上記一軸偏心ネジ型ポンプの上流側にそれぞれ戻すように汚泥を分配する汚泥分配機能を有する分配槽と、上記一軸偏心ネジ型ポンプの上流側に設置され、可溶化処理槽に向けて導出される汚泥を濃縮する濃縮機とを備えさせている。
【0014】
この特定事項により、生物反応槽内で活性汚泥法によって汚水を処理した後の汚泥は、一軸偏心ネジ型ポンプに導入される前段階で濃縮機によって濃縮される。この濃縮動作によって例えば2倍に濃縮され、その後、この汚泥は、一軸偏心ネジ型ポンプによって所定圧力まで昇圧され、可溶化処理槽内に噴射されることによりキャビテーションが発生し、汚泥を構成する微生物細胞が破壊され可溶化が起こる。本解決手段では汚泥圧送のためのポンプとして一軸偏心ネジ型ポンプを使用しているため、上記濃縮機によって汚泥が高濃縮に濃縮されていても容易に圧送することが可能である。その後、この汚泥は、分配槽に一旦回収された後、この分配槽内で分配され、一部(例えば全回収量の2割程度)は生物反応槽に戻され、他(例えば全回収量の8割程度)は一軸偏心ネジ型ポンプの上流側に戻されて再度の可溶化処理がなされる。このように一部の汚泥を一軸偏心ネジ型ポンプの上流側に戻すことで複数回の可溶化処理が行われることになり、汚泥の大部分を可溶化することができる。つまり、沈殿槽から引き抜かれた汚泥の量が大量であっても、その汚泥の一部または大部分を汚泥処理装置に導入して可溶化処理することにより、水処理設備から排出される余剰汚泥量を大幅に減量化することができる。また、この可溶化処理される汚泥は予め濃縮機によって濃縮されているため、高効率で汚泥の可溶化処理を行うことができる。また、生物反応槽内のMLSSが高い場合であっても上述した可溶化処理により水処理設備から大量の余剰汚泥が排出されることはない。
【0015】
この汚泥処理装置のより具体的な構成としては以下のものが掲げられる。先ず、上記一軸偏心ネジ型ポンプの上流側に合流槽を配設している。そして、生物反応槽から排出された汚泥及び分配槽によって分配された一部の汚泥が合流槽で合流された後、一軸偏心ネジ型ポンプに導入される構成としている。また、濃縮機を、合流槽内の汚泥を抽出して濃縮した後、この濃縮汚泥を合流槽に戻す構成としている。
【0016】
この特定事項により、合流槽内の汚泥を濃縮していきながら、汚泥に対する複数回の可溶化処理と、沈殿槽から汚泥処理装置への汚泥の導入とを同時に実行することができる。つまり、汚泥処理装置へ汚泥を連続導入しながらも、余剰汚泥の減量化とMLSSの管理の容易化とを図ることが可能になる。
【0017】
上記濃縮機の具体構成としては以下のものが掲げられる。つまり、濃縮機は、合流槽の外部に設置され且つ内部に膜エレメントを収容した構成となっていると共に、合流槽との間で汚泥を循環させる循環回路を構成しており、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥中の水分を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより合流槽内の汚泥を濃縮していく構成となっている。
【0018】
また、他の濃縮機の具体的な配置構成として、一軸偏心ネジ型ポンプの上流側に合流槽を配設し、生物反応槽から排出された汚泥及び分配槽によって分配された一部の汚泥が合流槽で合流された後、一軸偏心ネジ型ポンプに導入される構成とする。一方、合流槽の上流側に、生物反応槽から導出された汚泥を貯留する汚泥貯留槽を設ける。そして、濃縮機を、汚泥貯留槽の外部に設置し且つ内部に膜エレメントを収容した構成とすると共に、汚泥貯留槽との間で汚泥を循環させる循環回路を構成させ、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥中の水分を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより汚泥貯留槽内の汚泥を濃縮していく構成としている。
【0019】
これら特定事項により、汚泥は上記循環回路を循環することになる。そして、濃縮機本体では、汚泥の水分が膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過され、これによって、この処理汚泥の一部が固液分離されて汚泥は濃縮されていく。つまり、上記循環回路での循環動作が繰り返されながら汚泥が濃縮されていく。
【0020】
上記膜エレメントの一次側では、循環回路での循環流速に略等しい流速の汚泥が流れているため、この循環回路の循環流速を比較的高く設定しておけば、膜エレメントの一次側の面に付着しようとする汚泥(固形物)は、循環流によって押し流され、膜エレメントに付着することなしに一軸偏心ネジ型ポンプに向けて供給されることになる。このため、膜エレメントの一次側の面での単位時間当たりにおける汚泥(固形物)の付着量は、一般的な浸漬型分離膜ユニットの場合に比べて大幅に低減される。浸漬型分離膜ユニットは、膜エレメントの一次側では汚泥が殆ど滞留した状態であるため、処理水が抽出された後の汚泥は押し流されることなしに膜エレメントの一次側の面に付着してしまい、汚泥の濾過を開始した後、短時間のうちに膜エレメントに大量の汚泥が付着してしまって、濾過能力が急激に低下してしまっていた。本解決手段の濃縮機によれば、循環流の中から処理水を抽出して汚泥を濃縮するようにしているので、短時間のうちに膜エレメントに汚泥が付着してしまうといった状況は生じ難く、高い濾過能力を長時間に亘って維持することが可能である。
【0021】
また、汚泥の濃縮効率をより高めるための構成として、濃縮機を複数設けておき、これら濃縮機を互いに直列接続して濃縮ユニットを構成することが掲げられる。また、膜エレメントの一次側空間に洗浄水を定期的に流通させることにより、膜エレメントの一次側面に付着している固形物を剥離除去する洗浄動作を実行する構成としておけば、この一次側面に大量の固形物が付着する状況が回避でき、高い能力での濾過動作を安定して行うことが可能になり、汚泥処理装置の高性能化を維持できる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明では、予め濃縮しておいた汚泥を、可溶化処理槽内でのキャビテーション効果によって可溶化し、この汚泥を分配槽内で分配して、一部を生物反応槽に戻し、他を可溶化処理槽内で再度可溶化させるようにしている。このため、水処理設備の沈殿槽から引き抜かれた汚泥の量が大量であっても、その汚泥の一部または大部分を汚泥処理装置に導入して可溶化処理することにより、水処理設備から排出される余剰汚泥量を大幅に減量化することができる。また、濃縮機によって汚泥を予め濃縮しているため、余剰汚泥の減量化を高効率で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本形態では、浮遊生物法により汚水処理を行う汚水処理システム(水処理設備)に本発明を適用した場合について説明する。本発明はこれに限らず、回分式活性汚泥法や連続流入間欠曝気法などの汚水処理を行う汚水処理システムにも適用可能である。
【0024】
(第1実施形態)
−汚水処理システムの全体構成−
図1は、本実施形態に係る汚水処理システムの概略構成を示す図である。この図に示すように、本汚水処理システムは、生物反応槽1、沈殿槽2、汚泥計量槽3、汚泥濃縮槽4及び本形態の特徴とする装置である汚泥処理装置5を備えている。
【0025】
生物反応槽1は、導入された原水(汚水)を、活性汚泥による生物反応処理によって浄化し、この処理水を汚泥と共に沈殿槽2に流出するようになっている。また、この生物反応槽1の内部または外部には活性汚泥濃度を測定してMLSSを求めるための濃度センサ11が設けられている。この濃度センサ11は、生物反応槽1内に設置した図示しないストレーナから吸い込んだサンプリング液より汚泥濃度を測定するものであって、その測定信号を後述するコントローラ9に送信するようになっている。
【0026】
沈殿槽2は、その内部において汚泥が沈殿し、これによって処理水と汚泥とを分離するものである。この分離によって上澄み水となった処理水は、図示しない消毒槽へ供給され、この消毒槽内で塩素消毒器などによって消毒されて排出されるようになっている。一方、沈殿槽2内に沈殿した汚泥は、汚泥引き抜きポンプ21によって沈殿槽2から引き抜かれて上記汚泥計量槽3に一旦導入されるようになっている。
【0027】
この汚泥計量槽3には、汚泥を汚泥濃縮槽4に導入するための汚泥引き抜き管31、汚泥を汚泥処理装置5に供給するための汚泥供給管32、汚泥を生物反応槽1へ返送するための汚泥返送管33が接続されている。
【0028】
上記汚泥濃縮槽4は、汚泥計量槽3から汚泥引き抜き管31を経て導入された汚泥から更に上澄み水を分離するものであって、この分離の後、沈殿した濃縮汚泥は、図示しないポンプによって汚泥貯留槽へ送り出されるようになっている。尚、上記汚泥引き抜き管31には、汚泥濃縮槽4への汚泥引き抜き動作を実行する際に開放される開閉弁31aが設けられている。
【0029】
−汚泥処理装置5の構成−
次に、本形態の特徴である汚泥処理装置5の構成について説明する。図2は、この汚泥処理装置5及び汚泥計量槽3の概略構成を示す回路図である。この図2に示すように、汚泥処理装置5は、汚泥計量槽3から汚泥供給管32を経て供給された汚泥を可溶化した後に、この可溶化汚泥を汚泥返送管33を経て生物反応槽1へ導入するものである。そして、この汚泥処理装置5は、供給ポンプ51、合流槽52、高圧ポンプ53、可溶化処理槽54、分配槽55を備えている。
【0030】
上記供給ポンプ51は上記汚泥供給管32によって汚泥計量槽3に接続されている。また、供給ポンプ51と合流槽52、合流槽52と高圧ポンプ53、高圧ポンプ53と可溶化処理槽54、可溶化処理槽54と分配槽55は、それぞれ配管61〜64によって汚泥の流通が可能に直列に接続されている。更に、分配槽55と合流槽52とは汚泥戻し管65によって接続されている。以下、各機器について説明する。
【0031】
上記供給ポンプ51と合流槽52とを接続している第1吐出管61の途中にはストレーナ56が配設されており、このストレーナ56によって汚泥中の比較的大きなゴミなどの難可溶物を除去できるようになっている。また、このストレーナ56の底部にはドレン管56aが接続されており、このドレン管56aにはドレンバルブ56bが配設されている。そして、第1吐出管61には、その配管内圧を計測する圧力計56cが備えられており、この圧力計56cによって計測された圧力が所定値以上に達した場合には、ストレーナ56に目詰まりが生じてきたと判断し、ドレンバルブ56bを開放してストレーナ56内に滞留する難可溶物をドレン管56aより排出するようになっている。
【0032】
上記合流槽52は、上記供給ポンプ51から第1吐出管61により導入される汚泥と、上記分配槽55から汚泥戻し管65により導入される汚泥とを合流させるためのバッファタンクとしての機能を有している。以下、この合流槽52の構成について説明する。この合流槽52は、箱形の容器で成り、内部を上流側室52aと下流側室52bとに仕切る整流板52cを備えている。この整流板52cの上端縁は、合流槽52の天板との間に所定間隔を有し、同様に、整流板52cの下端縁は合流槽52の底板との間に所定間隔を有している。このため、上流側室52aと下流側室52bとは合流槽52の上層部分及び下層部分で互いに連通している。
【0033】
この合流槽52における上記第1吐出管61が接続する面(図中の左側の面)に対向する面(図中の右の面)には、合流槽52内の汚泥を高圧ポンプ53の吸い込み側に供給する吸い込み管62が接続されている。この吸い込み管62には、合流槽52から高圧ポンプ53への汚泥供給を停止する際に閉鎖されるモータバルブ62aが備えられている。
【0034】
上記整流板52cは、合流槽52における上記第1吐出管61の接続位置に対向するように配置されている。このため、第1吐出管61から合流槽52に流入した汚泥は、整流板52cによって流れ方向が変更されることになり、合流槽52への流入直後に吸い込み管62から流出されてしまうことがないようになっている。
【0035】
また、この合流槽52の下流側室52bには、攪拌機52d及び水位計52eが配設されている。攪拌機52dは、モータ駆動するプロペラを備えており、このプロペラの回転によって下流側室52b内の汚泥を攪拌するようになっている。つまり、上記供給ポンプ51から第1吐出管61により導入される汚泥と上記分配槽55から汚泥戻し管65により導入される汚泥とを攪拌混合させるようになっている。一方、水位計52eは、合流槽52内の水圧を検知し、それを水位に換算する所謂圧力式水位計により構成されている。これにより、汚泥中に含まれる異物等による影響を受けることがなく、電極式水位計などに比べて信頼性の高い水位計測が可能になっている。この水位計52eの水位検知信号は上記コントローラ9に送信されており、合流槽52内の水圧が所定水位を下回った場合には、コントローラ9の制御により上記供給ポンプ51を駆動して合流槽52内への汚泥導入動作を行うようになっている。
【0036】
更に、この合流槽52の底部にはドレン管52fが接続されており、このドレン管52fにはドレンバルブ52gが配設されている。メンテナンス時などにおいて合流槽52内の汚泥を排出する必要がある際には、上記供給ポンプ51及び高圧ポンプ53を停止した状態でドレンバルブ52gを開放してドレン管52fより汚泥を排出することになる。また、合流槽52の側面上部とドレン管52fとの間はオーバフロー管52hにより接続されている。これにより、合流槽52内の汚泥の水位が異常上昇した場合には、汚泥の一部をオーバフロー管52h及びドレン管52fにより排出して合流槽52内の汚泥の水位を維持するようになっている。
【0037】
そして、この合流槽52の特徴の一つとしては、この合流槽52に貯留されている汚泥を濃縮するための濃縮機7が接続されている点にある。この濃縮機7は、汚泥流入管71によって合流槽52の上流側室52aに接続していると共に、濃縮汚泥流出管72によって合流槽52の下流側室52bに接続している。また、上記汚泥流入管71にはポンプ73が配設されており、このポンプ73の駆動により、合流槽52と濃縮機7との間で汚泥が循環しながら汚泥濃縮動作が行われるようになっている。
【0038】
次に、上記濃縮機7の内部構成について説明する。図5は濃縮機7の内部構造を示す断面図であり、図6は濃縮機7の内部における膜エレメント75,75,…の収容状態の一部を示す断面図である。
【0039】
この濃縮機7は、横置き設置された略円筒状の本体ケーシング74を備え、この本体ケーシング74の内部に多数本の膜エレメント75,75,…が収容された構成となっている。より具体的には、図5に示すように、本体ケーシング74は、その長手方向の中央部が一定の内径寸法を有するエレメント収容部76として構成されており、このエレメント収容部76に多数本(例えば615本)の膜エレメント75,75,…が束ねられた状態で収容されている。
【0040】
各膜エレメント75,75,…は、透過膜材料が円筒形に成形された小径(外径寸法が例えば5.2mm)の所謂ストロー形状の部材であって、その内部に汚泥が流入した場合、その汚泥から水のみを外部に濾過できるように微多孔性膜等により構成されている。尚、この膜エレメント75を構成する透過膜材料としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等が掲げられる。透過膜材料はこれら材料に限るものではない。
【0041】
これにより、本体ケーシング74の長手方向の一方側部分には汚泥流入空間77が形成されていると共に、本体ケーシング74の長手方向の他方側部分には汚泥流出空間78が形成されている。また、膜エレメント75,75,…の長手方向の両端部分(汚泥流入空間77及び汚泥流出空間78に近接する領域)では、これら膜エレメント75,75,…の外周面とエレメント収容部76の内周面との間の空間に樹脂が充填されており、これによって、各膜エレメント75,75,…の内部空間が汚泥流入空間77及び汚泥流出空間78に連通状態となり、各膜エレメント75,75,…の外部空間は汚泥流入空間77及び汚泥流出空間78に非連通状態となっている。また、エレメント収容部76には、上記各膜エレメント75,75,…の外部空間に連通する2本の配水管79,79が接続されており、これら配水管79,79の下流端は生物反応槽1に接続されている。つまり、この濃縮機7から抜き取られた処理水が原水として生物反応槽1に戻されるようになっている。
【0042】
このような構成により、上記ポンプ73の駆動に伴って汚泥流入管71から濃縮機7へ汚泥が導入されると、濃縮機7の内部では、汚泥流入空間77から各膜エレメント75,75,…の内部空間を経て汚泥流出空間78に向かう流れが生じる。このため、各膜エレメント75,75,…の内部空間を流れている汚泥の一部については濾過が行われ、処理汚泥の一部が固液分離されて処理水が配水管79,79から濃縮機7の外部に(生物反応槽1に向けて)排出される。このようにして、合流槽52と濃縮機7との間で汚泥の循環動作が繰り返されながら汚泥が濃縮されていく。具体的に、上記循環回路における汚泥循環量と濃縮機7処理水抽出量との比は「80:1」程度となるように設定されている。本発明はこの比に限るものではない。
【0043】
そして、固液分離されて膜エレメント75の内部空間(一次側空間)に残った汚泥は、この内部空間に生じている汚泥流に沿って膜エレメント75の内部空間から汚泥流出空間78、濃縮汚泥流出管72を経て合流槽52に戻されるようになっている。
【0044】
このように、膜エレメント75の内部空間(一次側)では、循環回路での循環流速に略等しい流速の処理汚泥が流れているため、この循環回路の循環流速を比較的高く設定しておけば、膜エレメント75の内側面に付着しようとする汚泥(固形物)は、循環流によって押し流され、膜エレメント75に付着することなしに合流槽52に戻されることになる。このため、膜エレメント75の内側面での単位時間当たりにおける汚泥(固形物)の付着量は、従来の浸漬型分離膜ユニットの場合に比べて大幅に低減される。これにより、高い濾過能力を長時間に亘って維持することが可能になる。以上が、濃縮機7の構成及び濃縮動作である。
【0045】
上記高圧ポンプ53は、一軸偏心ネジ型ポンプが採用されている。このように一軸偏心ネジ型ポンプ53を採用した場合、この種のポンプは汚泥固形物をも搬送可能であるため、全ての汚泥を可溶化処理槽54に向けて圧送することが可能となる。また、異物の噛み込みによる故障が少なくメンテナンスの頻度を削減でき、ユーザの負担を軽減できる。尚、この一軸偏心ネジ型ポンプ53の吐出側には圧力センサ53aが設けられている。
【0046】
可溶化処理槽54は、図3(可溶化処理槽54の内部を側方から見た断面図)に示すように、上記一軸偏心ネジ型ポンプ53の吐出側に接続された第2吐出管63に接続されたノズル54aを備えている。このノズル54aは、上流端が第2吐出管63の下流端に接続されていると共に、ノズル54aの噴射口54bは可溶化処理槽54の内部に臨んでいる。このため、一軸偏心ネジ型ポンプ53によって昇圧された汚泥が第2吐出管63を経てノズル54aの噴射口54bから可溶化処理槽54の内部に噴射され、この際に発生するキャビテーションによって、汚泥を構成する微生物細胞が破壊され可溶化が起こる構成となっている。つまり、このノズル54aの噴射口54bからの汚泥の噴射によって、超音波、摩擦熱、衝撃波等が発生し、これによって微生物細胞が微細化されて可溶化されるようになっている。尚、上記第2吐出管63は、一軸偏心ネジ型ポンプ53の汚泥吐出圧に耐え得る耐圧性ホース部分63aを備えており、この部分は可撓性を有している。
【0047】
また、上記汚泥回収管64における可溶化処理槽54の出口側部分は、図2及び図3に示すようにL型に屈曲された屈曲部64aを備えている。つまり、この屈曲部64aは、可溶化処理槽54の出口から上記ノズル54aの汚泥噴射方向と平行に延びた後(図3における上方に僅かに延びた後)、略直角に屈曲し(図3における右方向に屈曲し)、その後、更に略直角に屈曲(図3における上方に屈曲)して分配槽55に向かって延びる形状となっている。この屈曲部64aを設けたことにより、可溶化処理槽54内の圧力が汚泥回収管64に容易に抜けてしまうことを阻止し、可溶化処理槽54内の圧力が維持されて良好なキャビテーション効果が得られるようになっている。
【0048】
次に、分配槽55について説明する。汚泥回収管64によって上記可溶化処理槽54の出口側に接続した分配槽55は、この汚泥回収管64から回収した汚泥の一部を汚泥返送管33に排出する汚泥排出管66への排出量と、他の汚泥を汚泥戻し管65によって合流槽52に戻す戻し量とを分配する汚泥分配機能を有している。以下、この分配機能を発揮する構成について説明する。
【0049】
この分配槽55は、箱形の容器で成り、内部を上流側室55aと下流側室55bとに仕切る仕切堰55cを備えている。この仕切堰55cの上端縁は、V型に切り欠かれて成る切り欠き部55dを備えている。また、この仕切堰55cは高さ位置が変更可能な可動堰として構成されており、上流側室55aの水位が上記切り欠き部55dを越えたオーバフロー分だけ下流側室55bに流れ込むようになっている。具体的には、図4(分配槽55の断面図)に示すように、仕切堰55cは、分配槽55の内面に固定され且つ上部に比較的大型のV型切り欠きを備えた固定堰55eと、この固定堰55eに対して着脱自在であって、上部に比較的小型のV型切り欠きを備えた可動堰55fとからなっており、固定堰55eに可動堰55fを装着しない状態では堰の高さが低くなり(図中の寸法T1)、固定堰55eに可動堰55fを装着することにより堰の高さが高くなるようにしている(図中の寸法T2)。固定堰55eに対する可動堰55fの着脱構造としては、固定堰55eの一方の面の両側部に上下方向に延びる断面L型のレールを設けておき、可動堰55fをこのレールの内部に嵌め込む構成などが適用できる。これにより、上流側室55aから下流側室55bへのオーバフロー量が調整可能となっている。尚、上記可動堰55fとして、V型切り欠きの大きさが異なる複数種類を用意しておき、堰の高さを3段階以上に変更可能とする構成としてもよい。
【0050】
そして、上記汚泥回収管64が上流側室55aの側部に接続し、汚泥戻し管65が上流側室55aの底部に接続し、上記汚泥排出管66が下流側室55bの側部に接続している。このため、汚泥回収管64から上流側室55aに導入した汚泥のうち、上記切り欠き部55dを越えたオーバフロー分は下流側室55bを経て汚泥排出管66に排出される一方、それ以外の汚泥は汚泥戻し管65によって合流槽52に戻されるようになっている。本形態では、汚泥回収管64から上流側室55aに導入した汚泥のうち、2割が汚泥排出管66に排出され、残りの8割が汚泥戻し管65によって合流槽52に戻されるように、仕切堰55cの高さ位置が設定されている。また、この分配槽55の下流側室55bには図示しないフロートスイッチが配設されており、このフロートスイッチによって下流側室55bの水位を監視している。そして、この水位が異常上昇した場合には、汚泥排出管66の閉塞などといった不具合が発生したと判断して一軸偏心ネジ型ポンプ53を停止させるようになっている。また、分配槽55の上流側室55aにフロートスイッチを配設して、この上流側室55aの水位を監視するようにしてもよい。
【0051】
尚、この汚泥処理装置5への汚泥流入量を調整する上記汚泥計量槽3の構成について説明すると、この汚泥計量槽3は、箱形の容器で成り、内部を上流側室34と下流側室35とに仕切る仕切堰36を備えている。この仕切堰36の上端縁は、V型に切り欠かれて成る切り欠き部37を備えている。また、この仕切堰36は高さ位置が固定された固定堰として構成されており、上流側室34の水位が上記切り欠き部37を越えたオーバフロー分だけ下流側室35に流れ込むようになっている。そして、上記沈殿槽2から引き抜かれた汚泥は上流側室34に導入し、そのうち上記切り欠き部37を越えたオーバフロー分は下流側室35に流れ込むことになる。この下流側室35には汚泥流入量を計測するための図示しない計測器が備えられており、これによって汚水処理システムからの余剰汚泥排出量が計測できるようになっている。また、上流側室34の汚泥は、一部が汚泥返送管33によって生物反応槽1に戻され、他は汚泥処理装置5に供給されることになる。この生物反応槽1への汚泥戻し量と汚泥処理装置5への汚泥供給量との調整は、汚泥供給管32に備えた供給ポンプ51の駆動のON/OFFを切り換えることにより行う。また、配管にバルブを備えさせ、このバルブ開度の調整により行ってもよい。
【0052】
−汚泥処理装置5の運転動作−
次に、上述の如く構成された汚泥処理装置5の運転動作について説明する。生物反応槽1内で活性汚泥法によって汚水を処理した後の汚泥は、沈殿槽2及び汚泥計量槽3を経た後、供給ポンプ51の駆動に伴い、その一部が汚泥計量槽3から汚泥供給管32を経て汚泥処理装置5に供給される。この汚泥処理装置5に供給された汚泥は、供給ポンプ51により圧送されて一旦合流槽52に貯留される。このとき、上記分配槽55から汚泥戻し管65により導入される汚泥と攪拌混合されることになる。また、この合流槽52内に貯留されている汚泥は濃縮機7に順次送られて上述した濃縮動作によって濃縮された後に再び合流槽52に戻される。これにより、合流槽52内の汚泥濃度は次第に上昇していく。尚、この濃縮機7による汚泥濃縮動作は、上記供給ポンプ51や一軸偏心ネジ型ポンプ53の駆動と同期して行われるようにしてもよいし、これらポンプ51,53の駆動に関わりなく、合流槽52の汚泥濃度を所定値以上に維持するように行ってもよい。
【0053】
その後、この汚泥は、一軸偏心ネジ型ポンプ53の駆動に伴って合流槽52から取り出され、この一軸偏心ネジ型ポンプ53によって所定圧力まで昇圧された後、第2吐出管63を経て可溶化処理槽54内にノズル噴射されることによりキャビテーションが発生し、汚泥を構成する微生物細胞が破壊され可溶化が起こる。
【0054】
その後、この汚泥は、汚泥回収管64を経て分配槽55に一旦回収された後、この分配槽55内で上述した分配動作(仕切堰55cによる分配)が行われ、一部(例えば全回収量の2割程度)は下流側室55bから汚泥排出管66によって生物反応槽1に戻され、他(例えば全回収量の8割程度)は上流側室55aから汚泥戻し管65によって合流槽52に戻され、その後、再度の可溶化処理がなされる。このように一部の汚泥を合流槽52に戻し、一軸偏心ネジ型ポンプ53及び可溶化処理槽54による可溶化処理を再度行うことになる。このようにして、汚泥の一部を、合流槽52、一軸偏心ネジ型ポンプ53、可溶化処理槽54、分配槽55で成る循環回路中で複数回循環させて可溶化処理を行うことになり、汚泥の大部分を可溶化することができる。このため、沈殿槽2から引き抜かれた汚泥の量が大量であっても、その汚泥の一部または大部分を汚泥処理装置5に導入して可溶化処理することができ、これによって、汚水処理システムから排出される余剰汚泥量を大幅に減量化することができる。具体的には、本汚泥処理装置5を備えない従来の汚水処理システムにおける余剰汚泥排出量に対して20〜25%程度の余剰汚泥排出量となる。一方、生物反応槽1内のMLSSが高い場合であっても上述した可溶化処理により水処理設備から大量の余剰汚泥が排出されることはない。また、本形態に係る汚泥処理装置5では、配管途中でバルブ開度を調整するといった動作を伴うことなしに汚泥の分配が可能である。このため、バルブ付近で異物が引っ掛かって配管経路が閉塞してしまうといったことを防止でき、信頼性の向上を図ることもできる。
【0055】
−汚泥処理装置5の稼働時間設定動作−
本実施形態に係る汚泥処理装置5は、必要最小限の時間だけ稼働するようになっている。以下、その稼働時間設定のための構成について説明する。
【0056】
上記コントローラ9には、余剰汚泥排出量算出手段91、余剰汚泥量比較手段92、稼働時間設定手段93が備えられている。余剰汚泥排出量算出手段91は、汚水処理システムにおける前日の余剰汚泥排出量を算出する。
【0057】
具体的には、上記汚泥引き抜き管31に備えられた開閉弁31aの開放時間及び汚泥引き抜きポンプ21の駆動時間の積算によって余剰汚泥排出量を算出するようになっている。また、上記汚泥計量槽3の下流側室35に備えられた計測器によって余剰汚泥排出量を測定するようにしてもよい。
【0058】
余剰汚泥量比較手段92は、余剰汚泥排出量算出手段91からの出力を受け、前日の余剰汚泥排出量と予め設定された目標余剰汚泥量とを比較する。
【0059】
稼働時間設定手段93は、上記余剰汚泥量比較手段92からの出力を受け、前日の余剰汚泥排出量が目標余剰汚泥量よりも多い場合には、汚泥処理装置5の稼働時間を前日の稼働時間よりも長く設定する。具体的に、前日の余剰汚泥排出量が目標余剰汚泥量の2倍であった場合には、汚泥処理装置5の稼働時間を前日の稼働時間の2倍(例えば前日の稼働時間が6h/dayであった場合には12h/day)に設定するなどといった稼働時間設定動作を行う。
【0060】
これにより、汚水処理システムからの余剰汚泥の排出量を目標排出量以下とするために必要最小限の時間だけ汚泥処理装置5を稼働させることができ、消費電力の削減を図ることができる。また、前日の余剰汚泥排出量が目標余剰汚泥量よりも少ない場合には、汚泥処理装置5の稼働時間を前日の稼働時間よりも短く設定してもよいし、余剰汚泥排出量が目標余剰汚泥量に達するまで汚泥処理装置5を稼働させないようにしてもよい。
【0061】
(変形例)
次に、上述した第1実施形態の変形例について説明する。
【0062】
先ず、第1の変形例は、図7(合流槽52及びその周辺の概略図)に示すように、上記濃縮機7の複数個(図7に示すものでは2個)を互いに直列接続して濃縮ユニットとし、上流側の濃縮機7Aを汚泥流入管71によって合流槽52の上流側室52aに接続していると共に、下流側の濃縮機7Bを濃縮汚泥流出管72によって合流槽52の下流側室52bに接続している。また、上記汚泥流入管71にはポンプ73が配設されており、このポンプ73の駆動により、合流槽52と複数の濃縮機7A,7Bとの間で汚泥が循環しながら汚泥濃縮動作が行われるようになっている。
【0063】
この構成によれば、上述した実施形態のものに比べて更に汚泥を高濃度に濃縮することができ、高効率で汚泥の可溶化処理を行うことができる。また、直列接続される濃縮機の個数としては2個に限るものではなく、3個以上の濃縮機を直列接続するようにしてもよい。
【0064】
次に、第2の変形例について説明する。この第2の変形例は、図8(合流槽52及びその周辺の概略図)に示すように、濃縮機7に接続する濃縮汚泥流出管72の途中に三方弁7Cを備えさせ、この三方弁7Cに洗浄用配管7Dを介して洗浄水槽7Eを接続している。また、この洗浄水槽7Eは、濃縮機7の排水管79から排出される透過水を貯留する透過水貯留槽7Fに透過水管7Gを介して接続されている。また、この透過水管7Gには、透過水貯留槽7F内の透過水を洗浄水槽7Eに送り込むためのポンプ7Hが設けられている。
【0065】
この構成により、通常の汚泥濃縮動作にあっては、図8に実線の矢印で示すように、合流槽52内の汚泥は濃縮機7に順次送られ、濃縮動作によって濃縮された後に再び合流槽52に戻されることになる。この動作に伴って、濃縮機7の排水管79から排出される透過水は透過水貯留槽7Fに貯留されていく(図8の一点鎖線参照)。
【0066】
そして、本例では、濃縮機7を洗浄するための洗浄動作が定期的に(例えば10時間毎に一回)行われるようになっている。この濃縮機7の洗浄動作時には、三方弁7Cが切り換えられると共にポンプ7Hが駆動し、図8に破線の矢印で示すように、透過水貯留槽7F内の透過水が、透過水管7G、洗浄水槽7E、洗浄用配管7D、三方弁7C、濃縮汚泥流出管72の一部を経て膜エレメント75,75,…の一次側空間を流れ、この一次側空間の内壁に付着している固形物を剥離除去する。これにより、この一次側面に大量の固形物が付着する状況が回避でき、高い能力での濾過動作を安定して行うことが可能になり、汚泥処理装置の高性能化を図ることができる。
【0067】
尚、この第2変形例においても、上述した第1変形例のように濃縮機7の複数個を互いに直列接続した構成を採用してもよい。
【0068】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本形態は、濃縮機7の配設位置が上記第1実施形態のものと異なっている。その他の構成及び動作は第1実施形態と同様であるので、ここでは濃縮機7の配設位置についてのみ説明する。
【0069】
図7は、本実施形態に係る汚泥処理装置5及び汚泥計量槽3の概略構成を示す回路図(上記図2に相当する図)である。この図に示すように、本実施形態に係る汚泥処理装置5では、供給ポンプ51の下流側であって合流槽52の上流側に汚泥貯留槽8が備えられており、この汚泥貯留槽8に濃縮機7が接続されている。つまり、濃縮機7は、汚泥流入管71及び濃縮汚泥流出管72によって汚泥貯留槽8との間で汚泥循環回路を構成し、これら濃縮機7と汚泥貯留槽8との間で汚泥が循環しながら汚泥濃縮動作が行われるようになっている。
【0070】
本形態においても、濃縮機7によって汚泥を予め濃縮しておくことができるため、余剰汚泥の減量化を高効率で行うことができる。また、本形態においても上述した第1変形例や第2変形例の構成を採用することが可能である。
【0071】
−その他の実施形態−
以上説明した各実施形態では、汚泥計量槽3と生物反応槽1とを接続する汚泥返送管33に対して並列に汚泥処理装置5を配置していた。本発明はこれに限らず、汚泥返送管33の途中に汚泥処理装置5を配置するようにしてもよい。この場合、汚泥濃縮槽4に排出される汚泥以外の全ての汚泥に対して可溶化処理が行われることになる。
【0072】
また、分配槽55内での汚泥分配割合としては上述したものに限らず、目標余剰汚泥量やMLSSの目標値に応じて任意に設定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施形態に係る汚水処理システムの概略構成を示す回路図である。
【図2】第1実施形態に係る汚泥処理装置及び汚泥計量槽の概略構成を示す回路図である。
【図3】可溶化処理槽の内部を側方から見た断面図である。
【図4】分配槽の内部を示す断面図である。
【図5】濃縮機の内部構造を示す断面図である。
【図6】濃縮機の内部における膜エレメントの収容状態の一部を示す断面図である。
【図7】第1の変形例における合流槽及びその周辺の概略図である。
【図8】第2の変形例における合流槽及びその周辺の概略図である。
【図9】第2実施形態に係る汚泥処理装置及び汚泥計量槽の概略構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0074】
1 生物反応槽
52 合流槽
53 高圧ポンプ(一軸偏心ネジ型ポンプ)
54 可溶化処理槽
55 分配槽
7 濃縮機
74 本体ケーシング
75 膜エレメント
8 汚泥貯留槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶化処理槽と、
活性汚泥法によって汚水を処理する生物反応槽から排出された汚泥を上記可溶化処理槽に向けて圧送し、可溶化処理槽内に噴射することによりキャビテーションによる汚泥の可溶化を行わせる一軸偏心ネジ型ポンプと、
上記可溶化処理槽から導出された汚泥を回収し、その汚泥の一部を生物反応槽に、他の汚泥を上記一軸偏心ネジ型ポンプの上流側にそれぞれ戻すように汚泥を分配する汚泥分配機能を有する分配槽と、
上記一軸偏心ネジ型ポンプの上流側に設置され、可溶化処理槽に向けて導出される汚泥を濃縮する濃縮機とを備えていることを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の汚泥処理装置において、
一軸偏心ネジ型ポンプの上流側には合流槽が配設されており、
生物反応槽から排出された汚泥及び分配槽によって分配された一部の汚泥が合流槽で合流された後、一軸偏心ネジ型ポンプに導入される構成となっている一方、
濃縮機は、合流槽内の汚泥を抽出して濃縮した後、この濃縮汚泥を合流槽に戻す構成となっていることを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項3】
上記請求項2記載の汚泥処理装置において、
濃縮機は、合流槽の外部に設置され且つ内部に膜エレメントを収容した構成となっていると共に、合流槽との間で汚泥を循環させる循環回路を構成しており、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥中の水分を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより合流槽内の汚泥を濃縮していく構成となっていることを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項4】
上記請求項1記載の汚泥処理装置において、
一軸偏心ネジ型ポンプの上流側には合流槽が配設されており、
生物反応槽から排出された汚泥及び分配槽によって分配された一部の汚泥が合流槽で合流された後、一軸偏心ネジ型ポンプに導入される構成となっている一方、
合流槽の上流側には、生物反応槽から導出された汚泥を貯留する汚泥貯留槽が設けられており、
濃縮機は、汚泥貯留槽の外部に設置され且つ内部に膜エレメントを収容した構成となっていると共に、汚泥貯留槽との間で汚泥を循環させる循環回路を構成しており、この循環回路に汚泥を循環させながら、この汚泥中の水分を膜エレメントの一次側から二次側に向けて濾過することにより汚泥貯留槽内の汚泥を濃縮していく構成となっていることを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項5】
上記請求項1〜4のうち何れか一つに記載の汚泥処理装置において、
濃縮機は複数設けられ、これら濃縮機が互いに直列接続されて濃縮ユニットを構成していることを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項6】
上記請求項3または4記載の汚泥処理装置において、
膜エレメントの一次側空間に洗浄水を定期的に流通させることにより、膜エレメントの一次側面に付着している固形物を剥離除去する洗浄動作を実行する構成となっていることを特徴とする汚泥処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−110442(P2006−110442A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299583(P2004−299583)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】