説明

汚泥成形用ノズルおよびバンド式汚泥乾燥装置

【課題】汚泥(特に下水汚泥)を円滑に成形することができる汚泥成形用ノズルおよびその汚泥成形用ノズルを備えたバンド式汚泥乾燥装置を提供する。
【解決手段】汚泥成形用ノズル14は、矩形の断面を有する汚泥成形用筒型ノズル20において、その矩形の断面を矩形の長辺方向に複数に仕切るピン21が配置されているとともに、それらのピンを連結板22を介して汚泥成形用筒型ノズル20に対して抜き差しするアクチュエータ(油圧シリンダ等)23が設けられた構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥(特に下水汚泥)を成形するために用いる汚泥成形用ノズルおよびその汚泥成形用ノズルを備えたバンド式汚泥乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚泥の有効利用等を図る場合、先ずは汚泥を乾燥させる処理が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そこで、そのような汚泥の乾燥処理のために、海産物等の乾燥に利用されている多段バンド式乾燥装置を用いることが考えられる。多段バンド式乾燥装置は、特許文献2や特許文献3等に記載されているが、海産物等の被乾燥物を搬送する網目状のコンベアベルト(バンド)を上下方向に複数段備えており、それらのバンドで搬送されている被乾燥物に対して熱風や温風を送風することで、被乾燥物を乾燥するようになっている。
【0004】
そして、そのような多段バンド式乾燥装置に汚泥を供給する方法としては、特許文献4に記載されているように、円柱状の多孔ノズルから汚泥を押し出し切断して供給する方法や、特許文献5に記載されているように、ローラーによる圧密で汚泥を紐状に成形して供給する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−050458号公報
【特許文献2】特開平02−069135号公報
【特許文献3】実開平06−031479号公報
【特許文献4】特開2007−306879号公報
【特許文献5】特開2008−020172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、下水汚泥(脱水ケーキ)は、毛髪などの異物を含んでいるととともに、付着性が高い。
【0007】
したがって、特許文献4のように、円柱状の多孔ノズルから下水汚泥を押し出した場合、下水汚泥中の毛髪がノズル孔を跨いでしまって目詰まりを起こし、連続して安定した供給ができない。
【0008】
また、特許文献5のように、ローラーによって汚泥を圧密した場合、高付着性である下水汚泥がローラーに付着して自重ではローラーから離脱しなくなる。この対策として、ローラーの溝に合わせたスクレーパを取り付けることが考えられるが、スクレーパ上で塊状になってしまう。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、汚泥(特に下水汚泥)を円滑に成形することができる汚泥成形用ノズルおよびその汚泥成形用ノズルを備えたバンド式汚泥乾燥装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0011】
[1]矩形の断面を有する汚泥成形用筒型ノズルにおいて、前記矩形の断面を矩形の長辺方向に複数に仕切るピンが配置されているとともに、前記ピンを前記ノズルに抜き差しするピン抜き差し手段が設けられていることを特徴とする汚泥成形用ノズル。
【0012】
[2]前記ピンは、複数のピンが連結されたユニットに区分されており、前記ピン抜き差し手段は、各ユニット毎にピンの抜き差しが可能なものであることを特徴とする前記[1]に記載の汚泥成形用ノズル。
【0013】
[3]前記[1]または[2]に記載の汚泥成形用ノズルを備えていることを特徴とするバンド式汚泥乾燥装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、汚泥(特に下水汚泥)を円滑に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態におけるバンド式汚泥乾燥装置を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態における汚泥成形ノズルの基本的な構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態における汚泥成形ノズルの基本的な構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態における汚泥成形ノズルの具体的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態における多段バンド式汚泥乾燥装置を示す図である。図1に示すように、この実施形態における多段バンド式汚泥乾燥装置10は、乾燥装置本体11の内部に複数段のバンド(ここでは、1段目バンド12と2段目バンド13)を備えているとともに、脱水汚泥1が貯留されている汚泥貯留槽7から汚泥ポンプ(汚泥輸送ポンプ)8によって供給されてきた脱水汚泥1を所定の形状に成形して成形汚泥2とする成形ノズル(汚泥成形用ノズル)14と、乾燥後の汚泥を排出する乾燥汚泥排出装置15を備えている。温風は、温風発生熱交換器19で未利用排熱などと熱交換して所定の温度とし、乾燥装置本体11に送風されて、1段目バンド12および2段目バンド13で搬送されている汚泥(成形汚泥)2を乾燥するようになっている。その際、汚泥2からの臭気をできるだけ抑制しながら乾燥するためには、170〜240℃の温風によって汚泥2の表面に殻を形成させるようにする。なお、温風は、大半は循環ファン18によって温風発生熱交換器19と乾燥装置本体11内を循環され、一部は空気導入ファン17によって大気から導入され、一部は図示しない排気処理装置によって排気される。
【0018】
そして、この実施形態においては、汚泥1を多段バンド式乾燥装置10で乾燥するに際して、汚泥1を汚泥成形用ノズル14によって棒状に成形してから1段目バンド12に載せるようにしている。
【0019】
図2、図3は、この実施形態における汚泥成形用ノズル14の基本的な構成を示す図である。ここで、図2は立面図であり、図3は図2におけるA−A矢視図である。
【0020】
なお、図2では、汚泥成形ノズル14を1段目バンド12に対して垂直に向けて、成形された汚泥(成形汚泥)2が1段目バンド12に載っていく状態を示しているが、汚泥成形ノズル14の1段目バンド12に対する角度は垂直である必要はなく、水平でもかまわない。
【0021】
図2、図3に示すように、この実施形態における汚泥成形用ノズル14は、矩形の断面を有する汚泥成形用筒型ノズル20において、その矩形の断面を矩形の長辺方向に複数に仕切るピン21が配置されているとともに、それらのピンを連結板22を介して汚泥成形用筒型ノズル20に対して抜き差しするアクチュエータ(油圧シリンダ等)23が設けられた構成となっている。
【0022】
ここで、図3(a)は汚泥成形用筒型ノズル20にピン21を差し込んだ状態を示しており、図3(b)は汚泥成形用筒型ノズル20からピン21を抜き出した状態を示している。
【0023】
これによって、通常は、図3(a)に示すように、汚泥成形用筒型ノズル20の対向壁(付近)までピン21を差し込んだ状態にしておくことにより、汚泥成形用筒型ノズル20の中を板状になって流れる汚泥1がピン21によって棒状に切断・成形される。
【0024】
そして、汚泥1中の毛髪などの異物がピン21を跨ぐように絡まった場合は、アクチュエータ23を作動させて、図3(b)に示すように、ピン21を汚泥成形用筒型ノズル20から抜き出す。これにより、ピン21に絡まった毛髪などの異物はピン21からはずれ、汚泥成形用筒型ノズル20の内部から汚泥とともに押し出される。
【0025】
その後、アクチュエータ23を作動させて、ピン21を汚泥成形用筒型ノズル20に差し込んで、図3(a)に示した状態に復帰させる。
【0026】
なお、ピン21が汚泥成形用筒型ノズル20から抜き出されている間は、汚泥1が棒状に成形されないが、これはピン21に絡まっていた毛髪などの異物がピン21の太さ分だけ押し流されるまでの僅かな時間であるので、成形後の汚泥2の乾燥特性に与える影響は小さい。
【0027】
また、ピン21の抜き差しのタイミングはタイマーで設定すればよく、例えば、1時間程度ピン21を差し込んで汚泥1を棒状に成形し、5秒程度ピン21を抜いて毛髪などの異物を除去する運転を繰り返すようにすれば、安定した汚泥棒状成形と連続運転が可能である。
【0028】
そして、上記のような汚泥成形用ノズル14の具体的な構成を図4に示す。図4(a)は汚泥成形用筒型ノズル20にピン21が差し込まれた状態を示しており、図4(b)は汚泥成形用筒型ノズル20からピン21を抜き出した状態を示している。
【0029】
図4(a)、(b)に示すように、この汚泥成形用ノズル14では、それぞれのアクチュエータ23に連結した連結板22に複数本(ここでは4本)のピン21が取り付けられており、1個のアクチュエータ23と1個の連結板22と複数本(ここでは4本)のピン21からなるユニットに区分されている。これにより、図4(b)に示すように、各ユニット毎にピン21の抜き差しが可能になっている。
【0030】
ここで、この汚泥成形ノズル14の好ましい寸法・形状を以下に示す。
【0031】
・汚泥成形用筒型ノズル20
全長(長手方向の長さ)L:30〜100mm
幅(長辺方向の長さ)W :1段目バンド12の幅程度(最大1m程度)
厚さ(短辺方向の隙間)T:5〜15mm
・ピン21
太さ :φ1〜5mm
本数 :10〜100本
間隔P:5〜15mm
・連結板22
ピン21の取り付け本数:2〜20本
【0032】
このようにして、この実施形態においては、汚泥(特に下水汚泥)を円滑に成形することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 脱水汚泥
2 成形汚泥
7 汚泥貯留槽
8 汚泥ポンプ(汚泥輸送ポンプ)
10 多段バンド式汚泥乾燥装置
11 乾燥装置本体
12 1段目バンド
13 2段目バンド
14 汚泥成形ノズル(汚泥成形用ノズル)
15 乾燥汚泥排出装置
17 空気導入ファン
18 循環ファン
19 温風発生熱交換器
20 汚泥成形用筒型ノズル
21 ピン
22 連結板
23 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の断面を有する汚泥成形用筒型ノズルにおいて、前記矩形の断面を矩形の長辺方向に複数に仕切るピンが配置されているとともに、前記ピンを前記ノズルに抜き差しするピン抜き差し手段が設けられていることを特徴とする汚泥成形用ノズル。
【請求項2】
前記ピンは、複数のピンが連結されたユニットに区分されており、前記ピン抜き差し手段は、各ユニット毎にピンの抜き差しが可能なものであることを特徴とする請求項1に記載の汚泥成形用ノズル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の汚泥成形用ノズルを備えていることを特徴とするバンド式汚泥乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−24678(P2012−24678A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164422(P2010−164422)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】