説明

汚泥脱水処理方法及び装置

【解決課題】難脱水性の汚泥から、低含水率で臭気発生の少ない脱水ケーキを安定して形成することができる汚泥脱水処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】混合汚泥形成槽10において難脱水性の汚泥に笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を混合させて混合汚泥を形成し、得られた混合汚泥に凝集フロック形成槽20において高分子凝集剤を添加して凝集フロックを形成させ、得られた凝集フロックをスクリュープレス脱水機30で機械脱水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理施設、し尿処理施設その他排水処理施設から発生する汚泥の脱水処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、排水処理、し尿処理、下水処理などの活性汚泥処理工程から発生する汚泥は、場合によっては濃縮後、高分子凝集剤の添加により凝集させ、機械脱水処理により脱水される。近年、各種製造工場における生産品目の多様化や居住民の生活様式の多様化により、工場排水や家庭排水などの下水の性状が変化したことに起因して、活性汚泥処理工程から発生する汚泥は凝集し難くなっており、脱水処理後の汚泥の含水率が低下し難くなっている。
【0003】
特に、下水処理にオキシデーションディッチ処理法を採用した場合に発生する汚泥は、混合生汚泥、標準活性汚泥、消化汚泥などに比較して、脱水性が非常に悪い。これは、オキシデーションディッチ処理法が、機械撹拌と散気とを同時に行う処理法であることから、他の処理法に比較して、曝気時間が長期化するので被処理水の硝化・脱窒が進行して、凝集の核となる汚泥中の繊維分が分解消費されてしまうためであると考えられる。
同様にし尿処理施設から発生する汚泥も、生物処理前段に設けられているスクリーンにより殆どの夾雑物が除去され、発生する汚泥には繊維分が少なくなるため、汚泥脱水処理により汚泥の含水率を低下させることが難しい。
【0004】
一方、廃棄物の再利用の観点から汚泥のコンポスト化が推進されている。コンポスト化処理に供する場合、含水率が高すぎるとべたついて供給装置からの定量供給が困難となるので対象汚泥の含水率は極力低下させておく必要がある。また、コンポスト化においては、脱水処理用薬剤等は微生物で分解されるものでなければならない。
【0005】
これまで、汚泥の含水率を低下させる手段として汚泥に繊維状物またはおが屑や籾殻等の植物素材を混合した後、高分子凝集剤を添加し脱水する方法が提案されている(特開昭56-198200号公報及び特開昭60-25595号公報)。しかしながら、汚泥に繊維状物を混合する方法では、繊維状物の汚泥への定量添加や繊維状物の親水性が不十分な場合には汚泥中での開繊が困難で、汚泥へ均一に混合することができず、そのため安定した処理ができない場合がある。また、繊維状物の中には微生物で分解され難いものもあり、コンポスト化には不向きな場合もある。一方、おが屑や籾殻等の植物素材を混合する方法は、汚泥固形物に対する添加量が一般に10〜100%程度であり、脱水可能な凝集フロックを生成させるのに高分子凝集剤添加量が増大する傾向があり、汚泥処理コストの上昇が避けられない。また、植物の種類によっては撥水性を有するため汚泥へ馴染ませることが難しい場合もある。
【0006】
また、特に下水処理施設から発生する汚泥に関しては硫化水素やメチルメルカプタン等の悪臭物質が発生し易く、脱水処理施設付近や脱水ケーキの貯留や搬送時の作業環境が問題になっている。そのため脱水処理時に鉄化合物や亜鉛化合物等の金属化合物あるいは次亜塩素酸塩等の消臭剤が汚泥に添加されることが行われているが、これらの消臭剤は脱水汚泥をコンポストやセメント原料として使用する際に障害となる場合があり、用途に制限がある。
【0007】
また、難脱水性汚泥を機械的に脱水させる方法として、特に近年、スクリュープレス脱水機が中規模下水処理場において採用されつつある。しかしながら、難脱水性汚泥を対象としているために、高分子凝集剤による調質が不十分であると強固な凝集フロックが形成されず、脱水ケーキ含水率が低下せず、固形物回収率も低下するので、安定した運転が難しい。その対策として無機凝集剤で調質した後、高分子凝集剤で凝集させる方法も採用されているが、この場合には、高分子凝集剤の添加量が多くなり、処理費用が増加し、汚泥の性状変動に対応した調質条件を調整しなければならず、かえって運転が煩雑になる場合もある。
【0008】
【特許文献1】特開昭56-198200号公報
【特許文献2】特開昭60-25595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の問題を解決することができる汚泥脱水処理方法を提供することを目的とする。特に、難脱水性の汚泥から、低含水率で臭気発生の少ない脱水ケーキを安定して形成することができる汚泥脱水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するべく鋭意研究の結果、本発明者らは、笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を利用することによって、難脱水性の汚泥から、低含水率で臭気発生の少ない脱水ケーキを安定して形成することができることを知見して、本発明をなすに至った。
【0011】
具体的には、本発明によれば、汚泥に笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を混合させて混合汚泥を形成する工程と、得られた混合汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集フロックを形成させる工程と、得られた凝集フロックを機械脱水する工程と、を含む汚泥脱水処理方法が提供される。
【0012】
本発明の脱水処理対象となる汚泥は、一般の排水処理、し尿処理、下水処理における活性汚泥処理工程から発生する汚泥であれは種類を問わないが、特にオキシデーションディッチ法から発生する余剰汚泥やし尿処理施設から発生する汚泥は、凝集性が不良で、脱水汚泥の含水率が低下し難いことから、本発明の効果が最も発揮できる。
【0013】
本発明において用いる笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物としては、ミヤコザサ、チマキザサ、チュウゴクザサ、カムロザサ、クマザサ、オカメザサ等の葉の他、オロシマチク、ホテイチク、モウソウチク、シホウチク、クロチク、トウチク、ナリヒラダケ、ヤダケ、マダケ等の葉の粉砕物を挙げることができる。これらのうち最も好ましいのはクマザサの葉の粉砕物である。これらに含まれる繊維分は強固であるので、これらを取り込んだ凝集フロックの強度が高分子凝集剤のみを使用する場合に比較して大きくなり、脱水機内で圧搾される際に抵抗が大きくなることで、脱水しやすくなるのみならず、汚泥の臭気抑制効果もある。このような効果は他の植物系粉砕物では得ることができない。
【0014】
粉砕物は、葉をそのまま粉砕したものでも、あるいは乾燥させてから粉砕したものでもよい。粉砕方法としては、公知の粉砕方法を用いることができる。
また、ササエキス製造時に発生する残渣等も使用可能である。このような残渣等を利用する場合には、特に最近の健康食品ブームに乗って、クマザサ抽出エキスの製造が盛んであるが、抽出物残渣が多量に発生することによる廃棄物処理問題を解決することもできる。
【0015】
本発明において、汚泥に添加する笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物の形状は、1〜30mm、好ましくは2〜10mm程度の長さ寸法としておくことが汚泥への添加、混合また脱水時の作業性から好ましい。
【0016】
また、笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物は、乾燥物、含水物いずれも使用可能であるが抽出物残渣の場合のような含水物は汚泥への供給を安定させるために含水率を一定としておくことが好ましい。好ましい含水率の範囲は、60%以下である。含水率があまり高すぎると、べたついて供給装置からの定量供給が困難になる。
【0017】
本発明の方法において汚泥に対する笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物の混合割合は、各汚泥の濃度により変動し得るが、汚泥中のSS分に対して、一般的には0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%とすることが好ましい。0.1重量%未満では含水率低減効果が無く、20重量%を超えるとそれ以上の含水率低減効果は無くなり、またケーキ発生量も増加するので経済的に好ましくない。
【0018】
また本発明において、笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物には、汚泥処理に一般的に使用されている消泡剤や消臭剤を予め含浸させておいてもよい。また、他の天然繊維の粉砕物等も混合して使用しても良い。
【0019】
本発明においては、笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を混合させた汚泥混合物に、高分子凝集剤を添加する。高分子凝集剤の添加により、凝集の核となる笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物の周囲に汚泥が凝集して、凝集フロックを形成する。また、繊維分が脱水機内で圧搾される際の抵抗となり、脱水しやすくなる。
【0020】
本発明において用いられる高分子凝集剤としては、アニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤及びカチオン系高分子凝集剤を好ましく挙げることができ、特にカチオン系高分子凝集剤及び両性高分子凝集剤が好ましい。
【0021】
カチオン系高分子凝集剤としては、カチオン性モノマーを必須成分として有し、カチオン性モノマーの共重合体又はカチオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体からなるカチオン系高分子凝集剤、及び分子内にアミジン単位を有するカチオン系高分子凝集剤を好ましく用いることができる。カチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートもしくはこれらの中和塩、4級塩及びこれらの組み合わせなどを好ましく挙げることができる。ノニオン性モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタアクリロニトリル、酢酸ビニル等及びこれらの組み合わせを好ましく挙げることができる。本発明において用いることができるカチオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体からなるカチオン系高分子凝集剤としては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート及び/又はジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル4級化物/アクリルアミド共重合体、を好ましく挙げることができる。また、本発明において用いることができる分子内にアミジン単位を有するカチオン系高分子凝集剤としては、例えば、N−ビニルホルムアミド/アクリロニトリル共重合体のアミジン化物を好ましく挙げることができる。
【0022】
両性高分子凝集剤としては、カチオン性モノマー単位、アニオン性モノマー単位及びノニオン性モノマー単位の共重合体を好ましく用いることができる。本発明において用いることができる両性高分子凝集剤としては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート及び/又はジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル4級化物/アクリルアミド/アクリル酸共重合体を好ましく挙げることができる。
【0023】
アニオン系高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド部分加水分解物、アニオン性モノマーの共重合体、アニオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体を好ましく挙げることができる。アニオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−メタクリロイルオキシブタンスルホ酸、及びこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属などの金属塩又はアンモニウム塩を好ましく挙げることができる。アニオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体としては、アクリルアミド・アクリル酸共重合体、アクリルアミド・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体を好ましく挙げることができる。
【0024】
ノニオン系高分子凝集剤としては、ノニオン性モノマーの重合体又は共重合体を好ましく用いることができ、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、メタアクリロニトリル、酢酸ビニル等及びこれらの組み合わせを用いることができ、より好ましくはポリアクリルアミドを用いることができる。
【0025】
本発明の高分子凝集剤の添加工程においては、上述のカチオン系高分子凝集剤を添加した後に、さらに上述のアニオン系高分子凝集剤を添加する二剤法を用いることもできる。
さらに、本発明においては、高分子凝集剤を添加する前に、混合した汚泥に無機凝集剤及び/又は有機高分子凝結剤を添加することもできる。無機凝集剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ硫酸第2鉄(ポリ鉄)、塩化第2鉄及びこれらの混合物を好ましく用いることができる。有機高分子凝結剤としては、縮合系ポリアミン、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダリン、ポリビニルピリジン、ジアリルアミン塩・二酸化硫黄共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・二酸化硫黄共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・アクリルアミド共重合体、ポリジメチルアジアリルアンモニウム塩・ジアリルアミン塩酸塩誘導体共重合体、アクリルアミン塩共重合体などを好ましく用いることができる。縮合系ポリアミンとしては、例えば、アルキレンジクロライドとアルキレンポリアミンとの縮合物、アニリンとホルマリンの縮合物、アルキレンジアミンとエピクロルヒドリンとの縮合物、アンモニアとエピクロルヒドリンとの縮合物などを好ましく挙げることができる。エピクロルヒドリンと縮合するアルキレンジアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、ジブチルアミンなどを好ましく挙げることができる。
【0026】
本発明の方法において、汚泥に笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を添加するには、汚泥貯留槽がある場合には汚泥貯留槽に添加し、汚泥貯留槽がない場合には濃縮層から汚泥含有被処理物を引き抜いて脱水機に至るまでの配管中のいずれかのポイントにて添加することができる。
【0027】
本発明の方法において、笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物と混合された汚泥に高分子凝集剤を添加して形成した凝集フロックを機械的に脱水するには、通常の加圧脱水機、真空脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、スクリュープレス脱水機を利用することができる。
【0028】
また、本発明によれば、汚泥に笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を混合させて混合汚泥を形成する混合汚泥形成槽と、得られた混合汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集フロックを形成させる凝集フロック形成槽と、得られた凝集フロックを機械脱水する脱水機と、を含む汚泥脱水処理装置が提供される。
【0029】
図1は、本発明の汚泥脱水処理方法を実施するための汚泥脱水処理装置の一実施形態の概略説明図である。図1に示す装置は、混合汚泥形成槽10と、凝集フロック形成槽20と、脱水機30と、を含む。混合汚泥形成槽10には、機械的撹拌装置11が装備されており、汚泥と笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物とを十分に混合する。混合汚泥形成槽10と凝集フロック形成槽20とは、混合汚泥形成槽10にて形成された汚泥と笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物との混合物を供給するライン13で接続されている。凝集フロック形成槽20には、高分子凝集剤溶解槽25にて調製された高分子凝集剤を供給するライン27も接続されている。凝集フロック形成槽20と脱水機30とは、凝集フロックを脱水機に供給するライン28で接続されている。脱水機30には、脱水ケーキ取り出し口31と分離液排出ライン32とが設けられている。
【0030】
混合汚泥形成槽10では、下水処理場などから得られる汚泥と、笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物とが供給されて、機械的撹拌装置11により混合され笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物との混合物を形成する。この混合物は、ライン13を介して凝集フロック形成槽20に送られる。凝集フロック形成槽20には、高分子凝集剤溶解槽25にて調製された高分子凝集剤がライン27を介して供給される。混合物及び高分子凝集剤は凝集フロック形成槽20にて一緒に混合されて、凝集フロックを形成する。凝集フロックは、ライン28を介して脱水機30に送られ、機械的脱水処理されて、脱水ケーキと分離液とに分けられる。
【0031】
図1に示す装置では、前記笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を混合した後、前記高分子凝集剤を添加する前に、前記汚泥に無機凝集剤及び/又は有機高分子凝結剤を添加する助剤供給装置40をさらに含む。助剤供給装置40は、混合汚泥形成槽10と接続するライン41を介して混合汚泥形成槽10に助剤を供給するように構成されていても、あるいは、ライン13と接続するライン42を介して形成された混合汚泥に助剤を供給するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、汚泥に笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を混合した後に高分子凝集剤を添加し、機械脱水処理することで、笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物が凝集の核として作用し高分子凝集剤の作用により速やかに汚泥を凝集させ、その後の機械脱水処理に供することができるので、特にオキシデーションディッチ処理された難脱水性の汚泥であっても十分に脱水処理を行うことができる。
【0033】
また、笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を用いることにより、従来方法による消臭剤を用いることなく、脱臭効果も良好である。また、笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物は微生物分解されるので、コンポスト化処理に供することもできる。
【0034】
さらに、スクリュープレス脱水機を利用する場合にも、高分子凝集剤を多量に添加したり、調質条件を調製することなく、安定した運転が可能である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例に用いた高分子凝集剤の組成を下記表1に示す。使用時には、蒸留水で0.2重量%水溶液となるように調製した。
【0036】
【表1】

なお、得られた脱水ケーキの臭気測定は、以下の方法に従って行った。
(1) 脱水ケーキ20gを臭気測定用袋(容量:700ml)に入れ、ゴム栓で密栓する。
(2) 脱水ケーキ入りの臭気測定用袋内に、ゴム栓にシリンジを刺して600mlの無臭空気を注入する。
(3) シリンジを外した脱水ケーキ入りの臭気測定用袋を30℃の恒温槽に保管し、消臭剤添加後から所定時間毎(12時間)に北川式検知管で硫化水素、メチルメルカプタンを測定する。
【0037】
[実施例1]
オキシデーションディッチ方式下水処理場から発生する表2に示す性状の余剰汚泥スラリーにモウソウチクの葉の乾燥物の粉砕物(大きさは概ね5〜10mm)を汚泥中SSに対して2wt%添加して、汚泥スラリーを調製した。
【0038】
【表2】

次に、汚泥スラリー200mlを300mlのビーカーに入れ、高分子凝集剤aをSS当たり1.0%となるように添加し、準備した空の300mlビーカーに移し替えた。この移し替えを10回繰り返して、汚泥混合物を凝集させて凝集フロックを形成させた。得られた凝集フロックの大きさをメジャーで測定した後、ビーカー中に形成された凝集フロックを60メッシュのナイロンろ布で30秒間重力により脱水して濾過水をメスシリンダーに受け取り、30秒後の濾過水量を測定した。重力濾過後の汚泥を2枚のろ布に挟み、ピストン型脱水機を用いて、2kg/cm2の圧力で1分間圧搾し、得られた脱水汚泥の質量を測定した後、乾燥機内で105℃の温度にて4時間以上乾燥させて乾燥後の質量を測定し、両者の差から含水率を求めた。また、得られた脱水ケーキについて臭気測定試験を行った。結果を表3に記載する。
【0039】
[実施例2〜3、比較例1〜2]
実施例2〜3は、モウソウチクの葉の乾燥物の粉砕物の添加量を表3に記載したように変更した以外は実施例1と同様に試験を行った。比較例1は、モウソウチクの葉の乾燥物の粉砕物を添加しなかった対照実験であり、比較例2は、モウソウチクの葉に替えて桜の木の木屑(大きさは概ね5〜15mm)を添加した対照実験である。結果を表3に併記する。
【0040】
【表3】

[実施例4]
し尿処理施設から発生する表4に示す性状の余剰汚泥と凝集沈澱汚泥の混合汚泥スラリーに、クマザサの葉の乾燥物の粉砕物(大きさは概ね5〜20mm、含水率5%)をSSに対して1wt%添加して汚泥スラリーを調製した。次に高分子凝集剤bを使用して実施例1と同様に脱水試験を行った。結果を表5に記載する。
【0041】
【表4】

[実施例5〜6、比較例3〜4]
実施例5〜6は、クマザサの葉の乾燥物の粉砕物及び凝集剤の添加量を表5に記載したように変更した以外は実施例1と同様に試験を行った。比較例3は、クマザサの葉の乾燥物の粉砕物を添加しなかった場合の対照実験であり、比較例4は、クマザサの葉に替えて、籾殻の粉砕物(大きさは概ね3〜10mm)を使用した場合の対照実験である。結果を表5に併記する。
【0042】
【表5】

[実施例7]
オキシデーションディッチ方式下水処理場から発生した表6に示す性状の余剰汚泥スラリーに、クマザサ抽出物製造工程で排出される残渣の粉砕物(大きさは概ね10〜20mm、含水率9%)をSSに対して3wt%添加して汚泥スラリーを調製した。
【0043】
【表6】

次に、高分子凝集剤aを添加して実施例1と同様にして凝集させた後、スクリュープレス脱水機(スクリーン径300mmΦ)に供給し、脱水を行い、実施例1と同様にケーキ脱水率、SS回収率及び臭気測定を行った。結果を表7に記載する。
【0044】
[実施例8〜12、比較例5〜6]
実施例8〜12は、クマザサ抽出物残渣の粉砕物の添加量を表7に記載したように変更した以外は、実施例7と同様に試験を行った。比較例5及び6はクマザサ抽出物残渣を添加しなかった場合の対照実験である。結果を表7に併記する。
【0045】
【表7】

上記実施例の結果から明らかなように、本発明の汚泥脱水処理方法により処理した場合には良好な凝集フロックを形成するので重力ろ過水量は収量が多く、脱水後の汚泥含水率が低下しており、脱水ケーキからの臭気の発生も少ないことがわかる。一方、本発明の構成以外の場合では凝集フロックの状態は不良で、汚泥含水率も高く、脱水ケーキからの臭気の発生が多い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明の汚泥脱水処理方法を実施する装置の概略説明図である。
【符号の説明】
【0047】
10:混合汚泥形成槽
20:凝集フロック形成槽
30:脱水機
40:助剤供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥に笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を混合させて混合汚泥を形成する工程と、
得られた混合汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集フロックを形成させる工程と、
得られた凝集フロックを機械脱水する工程と、
を含む汚泥脱水処理方法。
【請求項2】
前記機械脱水は、スクリュープレスにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記汚泥は、下水処理場から発生するものである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記汚泥は、オキシデーションディッチ処理汚泥である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物は、1〜30mmの長さ寸法を有する乾燥物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物は、60%以下の含水率を有する抽出物残渣粉砕物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法
【請求項7】
前記笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物は、汚泥中SS分に対して0.1〜20重量%の量で添加される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を混合した後、前記高分子凝集剤を添加する前に、前記汚泥に無機凝集剤及び/又は有機高分子凝結剤を添加する工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
汚泥に笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を混合させて混合汚泥を形成する混合汚泥形成槽と、
得られた混合汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集フロックを形成させる工凝集フロック形成槽と、
得られた凝集フロックを機械脱水する脱水機と、
を含む汚泥脱水処理装置。
【請求項10】
前記笹の葉及び/又は竹の葉の粉砕物を混合した後、前記高分子凝集剤を添加する前に、前記汚泥に無機凝集剤及び/又は有機高分子凝結剤を添加する助剤供給装置をさらに含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記脱水機は、スクリュープレス脱水機である、請求項9又は10に記載の装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−305518(P2006−305518A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134016(P2005−134016)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(591030651)荏原エンジニアリングサービス株式会社 (94)
【Fターム(参考)】