説明

汚泥脱水装置

【課題】凝集剤溶液を注入した被処理汚泥を汚泥脱水機で分離液と脱水汚泥に分離する汚泥脱水装置であり、その注入する凝集剤溶液を粉状・粒状等の固形状あるいは濃縮液状の凝集剤を溶解水に溶解させたものを適用する場合においても、最適な溶解状態で凝集性能の高い凝集剤溶液を被処理汚泥に注入することができ、高い脱水性能を有する汚泥脱水装置を提供することにある。
【解決手段】被処理汚泥を分離液および脱水汚泥に分離する汚泥脱水機1と、該汚泥脱水機1へ被処理汚泥を供給する汚泥供給管2と、凝集剤および溶解水を撹拌混合して凝集剤溶液を生成する凝集剤溶液タンク3と、前記凝集剤溶液を導入してスクリーンろ過するとともに、凝集剤溶液中の凝集剤を溶解する凝集剤溶解機4と、該凝集剤溶解機4から流出した凝集剤溶液の粘度を測定する粘度計5と、該粘度計5の測定値に応じて前記凝集剤溶解機4の運転を制御する制御器6とからなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、汚泥を脱水処理して低含水率の脱水汚泥を生成する汚泥脱水装置において、汚泥に凝集剤を注入して汚泥脱水機で脱水する汚泥脱水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、初沈汚泥、余剰汚泥、消化汚泥等の含水率の高い被処理汚泥から水分を分離する脱水処理を行い、含水率の低い脱水汚泥を生成する汚泥脱水装置については、種々の装置が使用されている。
【0003】
特許文献1に、遠心脱水機を用いた汚泥脱水装置の一例が示されている。この特許文献1の汚泥脱水装置は、汚泥供給装置、遠心脱水機(汚泥脱水機)、薬品供給装置で構成されている。汚泥供給装置は、原汚泥(被処理汚泥)を汚泥槽で一時貯留し、汚泥供給ポンプと配管(汚泥供給管)で遠心脱水機に圧送するようになっている。また、薬品供給装置は、混合機で固形の凝集剤と溶解用の水とを混合して凝集剤槽に投入し、凝集槽に設けられている撹拌機で撹拌して凝集剤を水に溶解させて凝集剤溶解液を生成して貯留しておき、薬品供給用のポンプと配管で遠心脱水機に必要なだけ圧送するようになっている。遠心脱水機は、汚泥供給装置から送られ、薬品供給装置から送られる凝集剤溶解液と混合されて汚泥フロック(汚泥集塊)が形成された原汚泥を外胴ボウル内に導入し、さらに外胴ボウルが回転することで外胴ボウル内の原汚泥に遠心力が働き、汚泥フロックの集合体の汚泥ケーキ(脱水汚泥)と清澄水(分離液)に遠心分離される。そして、外胴ボウルに対して差速を有して回転するスクリューコンベアによって、遠心分離で含水率の低下した汚泥ケーキが排出口まで搬送されて、外部に排出されるようになっている。
【0004】
汚泥脱水機には、前記の遠心脱水機のほかにも、ベルトプレス脱水機、スクリュープレス脱水機等が広く知られている。また、被処理汚泥の含水率低下性能は遠心分離機等よりも低いが、スクリーン型汚泥濃縮機、遠心型汚泥濃縮機等も汚泥脱水機の一種としてその用途に応じて使用されている。
【0005】
被処理汚泥の含水率を低下させることは、凝集剤溶解液を被処理汚泥中に注入せずに汚泥脱水機で脱水処理するだけでも可能ではある。しかし、この場合、汚泥懸濁物質の粒子が小さいため脱水汚泥の含水率はあまり下がらず、また微細な汚泥懸濁物質の粒子が分離水に混ざり易く分離水の水質も悪い。このため、通常は、汚泥脱水装置では、汚泥フロックの形成作用を促す凝集剤溶解液を被処理汚泥に注入して汚泥脱水機で脱水処理を行う場合が多い。凝集剤溶解液を供給する設備としては、前記の特許文献1で示したような構成のもののほか、混合機を設けずに固形凝集剤と溶解水を別々に凝集剤貯留用タンクに直接投入して、撹拌機で撹拌する構成のものがある。
【0006】
汚泥脱水装置で適用する凝集剤には、無機系凝集剤と高分子凝集剤がある。通常、被処理汚泥中の懸濁物質粒子は、その表面が負に帯電していることから互いに反発し合ってしまい、汚泥フロックを形成しにくくなっている。無機系凝集剤は、汚泥懸濁物質の粒子表面の負の帯電を中和して、汚泥懸濁物質の粒子間の分子間力を働き易くして汚泥粒子を凝集させて汚泥フロックを形成させるものである。無機系凝集剤には、ポリ塩化アルミニウムやポリ硫酸第二鉄等があり、これらは、水に溶かすとAl、Feが正電荷の大きい多価陽イオンとなり、これら多価陽イオンが汚泥粒子表面の負の帯電を中和するようになっている。
【0007】
これに対して、高分子凝集剤は、水に溶かすと高分子鎖(紐状)の状態となって水中に存在する。高分子凝集剤は、カチオン(陽イオン)系、アニオン(陰イオン)系、ノニオン(非イオン)系、両性系(カチオン基部分とアニオン基部分の両方を有する高分子)のものに大別される。汚泥懸濁物質の粒子の場合、通常、負に帯電していることから、カチオン系や両性系のものが適用される。カチオン系高分子凝集剤、両性系高分子凝集剤のいずれの場合においても、カチオン基部分が汚泥懸濁物質の粒子の負の帯電を中和して汚泥懸濁物質の粒子同士の分子間力を高め、さらに高分子鎖同士が絡まり合って架橋化等(両性系の場合はこの他に中和段階で残ったカチオン部とアニオン部との間で生じる静電気力も加わる。)していくことで、汚泥フロックが凝集・形成されていくものである。無機凝集剤に比べて、汚泥懸濁物質の粒子同士の分子間力の他に、高分子鎖の架橋化等の作用も加わるので、より大きな汚泥フロックの凝集・形成を促進させることができ、このため、近年では、被処理汚泥の脱水処理においては、高分子凝集剤を添加する場合が多い。
【0008】
凝集剤は、液状のものもあるが、保存期間を長くするため、また、運搬等の利便性のため、通常、粒状や粉末状の固形の状態で製品化されている場合が多い。そして、前記の特許文献1の薬品供給装置等で示したように、凝集剤貯留用タンクに固形凝集剤と溶解水の混合物を撹拌機で撹拌して固形凝集剤を溶解させてから、使用するようになっている。無機系凝集剤は、その分子構造が比較的単純であるため、溶解水に比較的短時間で溶解させることができる。
【0009】
一方、高分子凝集剤は、高分子鎖が絡まり合った状態で粒状あるいは粉末状に固形化されており、粉末や粒状の無機系凝集剤を水に溶解させる場合とは、溶解するときのプロセスが若干異なる。高分子凝集剤の場合、最初に粒の表面に水が浸透して膨潤し、徐々に粒の表面の高分子鎖がほどけて広がっていき、その広がった隙間から水が浸透して浸透した二層目が膨潤して徐々にその表面の高分子鎖がほどけて(分離して)行くという順番でゆっくり溶解していくため、全て溶解させるまでにかなり時間が掛かる(通常1時間以上)。このため、1台のタンクには溶解済みの凝集剤溶解液を確保しておき、被処理汚泥への注入等を行い、その他のタンクでは、凝集剤の溶解処理作業を行えるように、凝集剤を溶解して貯留しておくための凝集剤貯留用タンクを2台以上用意しておく必要があった。凝集剤貯留用タンクは大容量であり、しかもそれを複数台設置することから、大きな設置スペースが必要となってしまい、問題となっていた。
【0010】
また、前記の凝集剤貯留用タンクと撹拌機の組み合わせの溶解機で高分子凝集剤の溶解処理を行う場合、凝集剤貯留用タンク内の溶解水中に粉末状あるいは粒状(以下、これらの状態を総称して粒状等という。)の高分子凝集剤を一度に投入すると、溶解する前にある程度の数の粒同士が集まって塊になってしまう、いわゆる継粉が発生してしまう。この継粉の状態になってしまうと、前記の通り、高分子凝集剤の溶解プロセスは粒の外周側から、水の浸透、膨潤、高分子鎖の分離の順序で少しずつ溶解していくので、塊になってしまうと、その塊の中心部まで水が浸透するのに大幅に時間が掛かってしまったり、塊の中心部まで水が浸透しきれず、高分子凝集剤が溶解しきれずに残ってしまったりする問題があった。
【0011】
近年、このような固形の高分子凝集剤を水に溶解する際の問題を解消することが可能な特許文献2に示されるミキシング装置(凝集剤溶解機)が開発されており、このミキシング装置は、次のような構成となっている。筒体(筒状容器)内に筒状濾過部材(円筒スクリーン)が設けられ、その筒状濾過部材の両端には、外周面が筒体の内面に接する2枚のフランジが設けられており、この2枚のフランジと筒状濾過部材の外周面と筒体の内周面との間に間隙部が形成されている。間隙部以外の筒体には供給口が設けられており、間隙部の筒体には排出口が設けられている。筒状濾過部材の中心には、駆動力が伝達されるシャフトが回転可能に挿通されており、シャフトと共に回転する2つの鍔部(保持部材)が取り付けられている。鍔部の外周面には凹部が形成されており、凹部にローラ(押圧部材)の回転軸がバネでそのローラが筒状濾過部材の内周面に押し付けられる方向に付勢されている。
【0012】
以上の構成の特許文献2に示されているミキシング装置では、小容量の凝集剤混合用のタンクと撹拌装置(撹拌機)の組み合わせによる溶解機で処理された継粉を含む処理液をミキシング装置の供給口から流入し、ミキシング装置で継粉が溶解処理された処理液が筒体外に流出するようになっている。具体的には、筒体内の継粉を含む処理液は、継粉以外の凝集剤が溶解した溶解液が、筒状濾過部材の内周面から外周面へ通過して間隙部に流出する。駆動機等が作動して駆動力がシャフトに伝達されているとき、ローラは、シャフトおよび鍔部によって筒状濾過部材の内周面に沿って移動し、かつ、ローラ自体も回転軸を中心に自転する。このとき、継粉は、シャフトの回転によって筒状濾過部材の内周面に沿って移動し、ローラによって押し潰される。これにより、継粉の膨潤部分に剪断力が加わって高分子鎖同士の絡まり合いをほどき、膨潤部分の高分子鎖が継粉から分離して筒状濾過部材の外周面へ通過し、継粉の未膨潤部分が溶解水と接触することができるようになって膨潤する。そしてその新たな膨潤部分がローラによって押し潰され、その部分の高分子鎖が継粉から分離するというプロセスの繰り返しによって、継粉が溶解処理されるようになっている。以上のように、特許文献2で示されたミキシング装置によって、従来の凝集剤貯留用タンクと撹拌機との組み合わせによる溶解機での処理水に継粉が残ってしまう問題については解決され、それなりの効果を得ることができていた。
【0013】
また、特許文献2のミキシング装置は、凝集剤溶液中の継粉を溶解処理する用途のみとは限らない。凝集剤溶液中の継粉の発生は、小容量の凝集剤貯留用タンクに粒状等の凝集剤を少量ずつ投入するようにすれば問題にならない程度に抑制することができる。しかし、この方法は、時間が掛かる割には生成できる凝集剤溶液の貯留量は少ないという問題がある。この問題を解決するため、小容量の凝集剤貯留用タンクでは、凝集剤と水とを短時間だけ撹拌混合するようにして凝集剤溶液中に未溶解粒が残存する状態のまま、特許文献2のミキシング装置に送るようにし、ミキシング装置でその凝集剤溶液中の未溶解粒を溶解処理する構成とすることがあった。この構成を用いることにより、粒状等の凝集剤から水に十分に溶解された凝集剤溶液を生成するまで時間の大幅な短縮を図ることができ、それなりの効果を得ることができていた。
【0014】
【特許文献1】特開2006−192403公報
【特許文献2】特許第3184797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献2記載のミキシング装置では、筒状濾過部材内周面上の継粉や未溶解粒(以下、これらを総称して未溶解粒という。)をバネによって付勢されたローラで押し潰す構成となっていることにより、未溶解粒を短時間で溶解処理することを可能とし、しかも、バネによる適度な付勢力によって未溶解粒に対して過度の剪断力が掛からないようにし、高分子凝集剤の高分子鎖の切断を可及的に防止できるようになっている。しかし、適正な剪断力によって未溶解粒を押し潰すことができていても、ローラの回転数が適正でなければ、高分子鎖を切断してしまう現象が発生してしまう。
【0016】
未溶解粒の膨潤部分は、高分子鎖同士の絡まり合いが多少ほどけているが、外力が加わらないと分離しにくい状態であり、その未溶解粒の未膨潤部分は、高分子鎖同士の絡まり合いが溶解水に投入する前の状態とほとんど変わらず、無理に高分子鎖を分離させようとすると、高分子鎖を切断してしまう状態である。前記の通り、未溶解粒は、ローラによって押し潰されることで未溶解粒の外側の膨潤部分から高分子鎖が分離していく。そして、分離後に表面に現われた内側の層(二層目)である未膨潤部分に水が浸入することで膨潤して新たな膨潤部分となり、ローラによって押し潰されて高分子鎖が分離する溶解プロセスとなっている。しかし、ローラの回転数が適正値よりも高速であると、二層目の未膨潤部分に水が進入して新たな膨潤部分となり、高分子鎖同士の絡まり合いが緩む前に、次のローラで押し潰されてしまい、膨潤部分に対して付与する剪断力としては適正値であっても、その二層目の未膨潤部分に対しては過度な剪断力を与えてしまうことになり、高分子鎖を切断してしまう、いわゆる過撹拌状態を引き起こしてしまう。
【0017】
高分子鎖が切断されてしまうと、被処理汚泥中で高分子鎖同士が絡まり合って汚泥懸濁物質の粒子同士を凝集する架橋化作用が低下し、高分子凝集剤の凝集性能も低下する(主に汚泥懸濁物質の粒子同士の分子間力に依存してしまう傾向が強くなる。)。このため、未溶解粒を溶解処理でき、凝集剤溶液の凝集性能を向上させることができてはいたが、凝集性能の飛躍的な向上には至っていなかった。汚泥脱水機で所定の脱水効率を得るために、高分子凝集剤の被処理汚泥中への注入量を増やしてやる必要が生じ、薬剤コストの増大を招き、問題となっていた。
【0018】
一方、ローラの回転数が適正値よりも低速であると、ローラによって押し潰されて未溶解粒の膨潤部分から高分子鎖が分離後の二層目の未膨潤部分に水が新たな膨潤部分となるまでの時間を十分確保することはできる。しかし、未溶解粒を全て溶解させるには、未膨潤部分が十分膨潤したときにローラで押し潰して高分子鎖を分離させないと、次の三層目の未膨潤部分が膨潤していかない。つまり、ローラの回転数が適正値よりも低速であると、未溶解粒を全て溶解させるまでに時間が掛かってしまうことになる。
【0019】
従来の溶解機では、撹拌機を備えた大容量(例えば1日の必要量分等)の凝集剤溶液貯留用のタンクで時間を掛けて凝集剤を溶解させて貯留し、必要時に凝集剤溶液をポンプ等で被処理汚泥中に注入する構成となっている。よって、凝集剤溶液貯留用のタンク内の凝集剤溶液は、凝集剤の溶解行程が終了した後は、概ね所定値の溶解濃度を維持することができる。
【0020】
これに対し、この特許文献2に示された撹拌装置を備えた小容量の凝集剤混合用タンクとミキシング装置を用いた構成においては、必要時に凝集剤溶液を生成して被処理汚泥中に注入する使用形態となっている。凝集剤溶液貯留用タンク内の未溶解粒を含む処理液は、チューブポンプによってミキシング装置へ圧送されるようになっており、また溶解処理中は、チューブポンプが定量で凝集剤溶液をミキシング装置に移送し続けるので、凝集剤溶液がミキシング装置内に流入してから溶解処理された凝集剤溶液として流出するまでの時間(通過時間)は概ね一定である。このとき、ミキシング装置のローラの回転数が適正値よりも低速であって、未溶解粒を全て溶解させるまでに時間が掛かってしまうと、流入した凝集剤溶液中の未溶解粒が通過時間の間で溶存し切れず、設定よりも低濃度の凝集剤溶液がミキシング装置から流出し、被処理汚泥に注入されてしまう。溶解濃度が低い凝集剤溶液では、その凝集効果を最大限発揮させる得ることは難しい。
【0021】
従来は、凝集剤溶液が所定の濃度でミキシング装置から流出させるために、凝集剤混合液とともにミキシング装置に流入した未溶解粒が残らず溶解するような最適なローラの回転数を手動で調整することや、凝集剤溶液の被処理汚泥への供給量を増やすことで対応していた。従来、手動で凝集剤溶解機の運転を調整していた場合、凝集剤溶液の溶解具合(液中の未溶解粒の残存状況等)を計る指標(粘度計での測定値等)を見て調整しているわけではなく、凝集剤溶液を注入した被処理汚泥を汚泥脱水機で脱水処理したときの脱水性能(脱水汚泥の含水率、分離液の水質等)を見て、作業員が経験に基づいて調整しているものであって、凝集剤溶液が最適な溶解具合とは限らない。そのときの被処理汚泥の性状においては最適な凝集剤溶液であっても、被処理汚泥の性状が変化したときには汚泥脱水機での脱水処理時に十分な凝集性能が発揮されない場合があり、問題となっていた。凝集剤溶液の被処理汚泥への注入量を変更する場合においても、凝集剤溶解機の運転を手動で再調整する必要があった。
【0022】
凝集剤溶解機で溶解された凝集剤溶液の溶解具合が不十分であり、凝集性能を十分に発揮できない場合において、作業員による凝集剤溶解機の再調整がすぐにできない場合においては、凝集剤溶液の供給量を増やして対応するが、この場合、凝集剤の消費量が増大し、ランニングコスト増となっていた。
【0023】
粒状等の無機凝集剤を溶解水で溶解処理して凝集剤溶液を生成する場合においても、従来の撹拌機を備えたタンクで無機凝集剤と溶解水を投入して撹拌する方法では、高分子凝集剤よりも溶解しやすいとはいえ、十分に溶解させるには時間が掛かるので、タンクを複数台用意する必要があった。このため、無機凝集剤の場合においても、特許文献2の構成のミキシング装置を用いることがあったが、無機凝集剤は高分子凝集剤と比較して短時間で溶解するので、手動でのローラの回転数の調整では十分に溶解できる以上の回転数に設定されてしまっているのが現状であり、必要以上の電力消費や部品の磨耗を招き、ランニングコスト増となり、問題となっていた。
【0024】
濃縮液状(エマルジョン状態)の高分子凝集剤を溶解水に溶解させて凝集剤溶液を生成させる場合においても、濃縮状態では高分子鎖同士が絡まり合った状態であり、従来の撹拌機を備えたタンクに高分子凝集剤と溶解水を投入して撹拌する方法では、短時間で液中に高分子鎖を均一に分布させることは容易ではなかった。このため、濃縮液状の高分子凝集剤の場合にも特許文献2の構成のミキシング装置等を用いることがあったが、粒状等の高分子凝集剤の場合よりも短時間で溶解するので低回転で十分であるが、最適な回転数を手動で調整することは難しく、過撹拌気味になる場合が多かった。
【0025】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、凝集剤溶液を注入した被処理汚泥を汚泥脱水機で分離液と脱水汚泥に分離する脱水処理を行う汚泥脱水装置であり、その注入する凝集剤溶液を粉状・粒状等の固形状あるいは濃縮液状の凝集剤を溶解水に溶解させたものを適用する場合においても、最適な溶解状態で凝集性能の高い凝集剤溶液を被処理汚泥に注入することができ、高い脱水性能を有する汚泥脱水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するために、本発明の汚泥脱水装置は、被処理汚泥を分離液および脱水汚泥に分離する汚泥脱水機と、該汚泥脱水機へ被処理汚泥を供給する汚泥供給管と、凝集剤および溶解水を撹拌混合して凝集剤溶液を生成する凝集剤溶液タンクと、前記凝集剤溶液を導入してスクリーンろ過するとともに、凝集剤溶液中の凝集剤を溶解する凝集剤溶解機と、該凝集剤溶解機から流出した凝集剤溶液の粘度を測定する粘度計と、該粘度計の測定値に応じて前記凝集剤溶解機の運転を制御する制御器とからなるものである。
【0027】
本発明の請求項2の汚泥脱水装置は、凝集剤溶解機が、筒状容器と、該筒状容器内に配設され、凝集剤溶液をろ過する円筒スクリーンと、該円筒スクリーンの内面に付着する凝集剤を押圧して溶解する一つまたは二つ以上の押圧部材と、該押圧部材を保持する保持部材と、該保持部材を介して前記押圧部材を前記円筒スクリーンの内面に沿って移動させる駆動機とからなることを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項3の汚泥脱水装置は、制御器が、粘度計の測定値に応じて駆動機の回転を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
この発明に係る汚泥脱水装置によれば、粒状等あるいは濃縮液状の凝集剤を溶解水に溶解させて凝集剤溶液を生成するに当たり、凝集剤溶液タンクで凝集剤と溶解水とを撹拌混合して凝集剤溶液を生成し、さらに、凝集剤溶解機に凝集剤溶液を取り入れ、スクリーンろ過し、さらに未溶解粒の溶解処理を行い、その凝集剤溶解機から流出した凝集剤溶液の粘度を粘度計で測定した結果を基に制御器で凝集剤溶解機の運転を制御する構成としたことにより、以下の効果がある。
(1)凝集剤溶液は、溶解水中での溶解具合によって凝集性能が変化する特性を有しており、この溶解具合と凝集性能との相関関係は、使用する凝集剤の種類によって異なる。また、凝集剤溶液の溶解具合は、粘度と相関関係がある。すなわち、凝集剤溶液の粘度と凝集性能には相関関係がある。予め、この相関関係から凝集剤溶液が最適な凝集性能を発揮するときの粘度を最適値として特定しておき、制御器に記憶させ、粘度計の測定値に応じて凝集剤溶解機の運転を制御することにより、常時、最適な凝集性能の凝集剤溶液を被処理汚泥に供給することが可能となり、脱水性能が大幅に向上する効果がある。
(2)凝集剤溶液の溶解具合の指標として粘度を測定してその測定値に応じて制御器で凝集剤溶解機の運転を調整していることから、被処理汚泥へ供給する凝集剤の種類を変更した場合でも、すぐに最適な凝集性能の凝集剤溶液を生成して供給でき、従来の凝集剤溶解機に比べて即応性に優れており、常時高い脱水性能を維持できる効果がある。
(3)溶解水の水質の変動や水温の変動に起因して、凝集剤溶液タンクで撹拌混合された凝集剤溶液の凝集剤の溶解具合が変化する場合においても、凝集剤溶解機で溶解処理された凝集剤溶液を粘度計で測定し、制御器で凝集剤溶解機の運転を制御することにより、凝集剤溶解機で溶解処理された凝集剤溶液が過撹拌気味や撹拌不足気味になって凝集性能が低下してしまうことを防止し、最適な溶解具合であり最適な凝集性能の凝集剤溶液を常時生成して被処理汚泥に供給することができる効果がある。
(4)被処理汚泥への凝集剤溶液の供給量を増減させた場合においても、凝集剤溶液の粘度計の測定値に応じて制御器が凝集剤溶解機の運転を調整するので、凝集剤溶解機への凝集剤溶液の流入量が変化しても、最適な凝集性能の凝集剤溶液を供給することができる効果がある。
(5)従来の凝集剤溶解機を手動で調整する場合においては、熟練の作業員であっても最適な溶解具合になるよう調整することは困難であり、最適値よりも回転数が若干低く調整すると凝集剤の溶解不足が懸念されるので、通常、最適値よりも回転数を若干高めに調整することが多く、過撹拌状態気味である。また、過撹拌状態気味で生成されて凝集性能が若干低下した凝集剤溶液であっても高い凝集性能を発揮させるために、凝集剤溶液を所定量よりも多く被処理汚泥に供給している。この発明の汚泥脱水機では、凝集剤溶解機が過撹拌状態となることを防止できるので、凝集剤溶液を所定量よりも多く供給する必要がなく、ランニングコストの低減を図ることができる効果がある。
(6)粘度計と制御器で凝集剤溶解機の運転を最適な状態で維持することができることから、従来、手動で凝集剤溶解機の運転を調整していた場合で、安全を見て最適状態よりも過剰気味に調整してしまっていたときに比べて、消費電力を低減することができ、部品の磨耗も低減させることができる効果がある。
【0030】
請求項2に記載の発明に係る汚泥脱水装置によれば、凝集剤溶液タンクで凝集剤と溶解水を撹拌混合されて生成された凝集剤溶液を、凝集剤溶解機の筒状容器内に導入して円筒スクリーンでろ過処理し、円筒スクリーン内面に付着した凝集剤の未溶解粒を押圧部材で押圧して溶解処理する構成としたことにより、未溶解粒が残存したままの凝集剤溶液が被処理汚泥に供給されてしまうことを防止でき、かつ未溶解粒を確実に溶解させることができる効果がある。
【0031】
請求項3に記載の発明に係る汚泥脱水装置によれば、制御器は、粘度計が測定する凝集剤溶液の粘度の測定値に応じて、凝集剤溶解機の駆動機の回転を制御する構成としたことにより、駆動機が保持部材を介して移動力を付与している押圧部材の円筒スクリーン内面に沿って移動する速度を調整することができる。これにより、押圧部材を最適な移動速度に制御できることから、凝集剤溶液を溶解不足の状態や過撹拌状態になるのを防止し、高い凝集性能を発揮できる最適な溶解具合とすることができるだけでなく、凝集剤溶液の被処理汚泥への供給量を増減させた場合においても、即応性に優れた溶解処理を行うことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における汚泥脱水装置の構成図であり、図2は凝集剤溶解機の図3に示すA−A線方向から見た断面図であり、図3は、凝集剤溶解機の図2に示すB−B線方向から見た断面図である。この実施の形態1の汚泥脱水装置は、被処理汚泥を分離液および脱水汚泥に分離する汚泥脱水機1と、該汚泥脱水機1へ被処理汚泥を供給する汚泥供給管2と、凝集剤および溶解水を撹拌混合して凝集剤溶液を生成する凝集剤溶液タンク3と、前記凝集剤溶液を導入してスクリーンろ過するとともに凝集剤溶液中の凝集剤を溶解する凝集剤溶解機4と、該凝集剤溶解機4から流出した凝集剤溶液の粘度を測定する粘度計5と、該粘度計5の測定値に応じて前記凝集剤溶解機4の運転を制御する制御器6とから主に構成されている。
【0033】
汚泥脱水機1には、図1に示した遠心脱水機のほか、ベルトプレス脱水機、スクリュープレス脱水機、回転加圧脱水機等が適用可能である。また、広義の汚泥脱水機として、スクリーン濃縮機、浮上濃縮機や遠心濃縮機等も適用可能である。汚泥供給管2には、前記汚泥脱水機1に被処理汚泥を圧送する汚泥供給ポンプ2Aが設けられている。
【0034】
凝集剤溶液タンク3の上部には凝集剤供給機7が配設されている。この凝集剤供給機7は、粒状等の凝集剤を貯蔵し、下端に凝集剤を凝集剤溶液タンク3内に供給する凝集剤供給口70aを備えるホッパー状容器70と、凝集剤供給口70aに配設される駆動機8を備える供給口開閉器9とにより構成されている。供給口開閉器9は、スライドシャッター構造、フラッパー弁構造、バタフライ弁構造、噛み合わせギア構造等、凝集剤供給口70aを駆動機8の駆動力で開閉可能であればどのような構造であってもよい。駆動機8には、電動モータによる駆動のほか、ソレノイド駆動、空気圧駆動等が適用可能である。なお、凝集剤供給口70aは、凝集剤溶液タンク3内で気化した湿気が浸入しやすく凝集剤の粒同士が固まってしまう恐れがあるので、ドライヤ等を設けて乾燥状態を維持することが望ましい。凝集剤溶液タンク3内には、溶解水供給管10から制御弁11を介して溶解水が供給されるようになっている。その溶解水には、水道水のほか、地下水、工業用水、ろ過水、雨水利用水、再生水等が適用可能である。
【0035】
凝集剤供給機7から凝集剤溶液タンク3に供給する凝集剤としては、粒状等の無機系凝集剤と高分子凝集剤が適用可能である。無機系凝集剤には、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等がある。また、高分子凝集剤には、カチオン系ポリマーのメタアクリル酸エステル系(メタクリル酸ジメチルアミノエチル等)、アクリル酸エステル系(アクリル酸ジメチルアミノエチル等)など、両性系ポリマーの例えば、アクリル酸ジメチルアミノエチルとアクリル酸等との共重合体などがある。被処理汚泥中の懸濁物質の粒子の凝集を促進する作用を有する粒状等の薬剤であれば、どのようなものでも適用可能である。
【0036】
凝集剤溶液タンク3には、前記凝集剤供給機7から供給された凝集剤と前記溶解水供給管10から供給された溶解水を撹拌混合して凝集剤溶液を生成する撹拌機12が設けられている。この撹拌機12は、電動モータ等の駆動機12Aと、この駆動機12Aの回転出力軸12Bに連結されて凝集剤溶液タンク3の内底部近傍に配設された撹拌羽根12Cとからなっている。さらに、凝集剤溶液タンク3内には、電極棒からなる水位計13が配設されている。また、凝集剤溶液タンク3には、凝集剤溶液の水位を検知する水位計13が設けられており、制御器6と電気配線で接続されている。この水位計13によって、制御弁11や圧送ポンプ15の故障等に起因して凝集剤溶液タンク3内の液位が異常上昇した際に制御器6がそれを検知し、警報の発報等ができるようになっている。
【0037】
凝集剤溶液タンク3内で生成された凝集剤溶液は、凝集剤溶液タンク3の底部に設けられた流出口と凝集剤溶解機4の凝集剤溶液流入口41cとを接続する凝集剤溶液移送管14および該凝集剤溶液移送管14に設けられた圧送ポンプ15によって凝集剤溶解機4内に圧送されるようになっている。なお、圧送ポンプ15には、渦巻ポンプに代表される遠心型ポンプ、一軸ねじポンプに代表される容積型ポンプ等、凝集剤溶液を圧送可能であればどのようなポンプでも適用可能であるが、この凝集剤溶液には未溶解粒が相当量含まれていることがあるので、容積型ポンプの適用が望ましい。
【0038】
凝集剤溶解機4は、円筒形の筒状容器40と、該筒状容器40内に配設されて凝集剤溶液をろ過する円筒スクリーン45と、該円筒スクリーン45の内面に付着する凝集剤を溶解する押圧部材46(図2では、4個)と、該押圧部材46の両端を保持する保持部材47A,47Bと、該保持部材47A,47Bを介して前記押圧部材46を前記円筒スクリーン45の内面に沿って移動させる駆動機48とを備えた構造となっている。
【0039】
さらに詳述すると、筒状容器40は両端にフランジ部40A,40Bを有しており、これらのフランジ部40A,40Bにシール部材(図示せず)を介してフランジ蓋41A,41Bがボルト・ナット42A,42Bにより固着されている。そして、一方のフランジ蓋41Aに設けられた凝集剤溶液流入口41Cに前記凝集剤溶液移送管14の流出側が接続されている。また、筒状容器40の内周面には、円筒スクリーン45の保持部材を兼ねた円環状の左右一対の仕切部材43A,43Bが設けられており、これらの仕切部材43A,43Bに前記円筒スクリーン45の両端が支持されている。筒状容器40の内部は、仕切部材43A,43Bと円筒スクリーン45によって、一次室44Aと二次室44Bとに区分形成されている。そして、圧送ポンプ15の圧送力によって前記凝集剤溶液流入口41Cから前記一次室44Aに流入した凝集剤溶液を前記円筒スクリーン45でろ過して前記二次室44B側に流出させるようになっている。このとき、凝集剤溶液中の未溶解粒は、円筒スクリーン45を通過できずに一次室44A側のスクリーン面に付着する。
【0040】
駆動機48は、凝集剤溶液流入口41Cを有するフランジ蓋41Aと反対側のフランジ蓋41Bの外側に配設され、駆動機48の駆動軸48Aは前記円筒スクリーン45の中心軸と同軸に延びて先端部が前記フランジ蓋41Aにベアリング49を介して低摩擦で回動自在に支持されている。前記駆動軸48Aには、該駆動軸48Aと同軸で一体回転する左右一対の保持部材47A,47Bが設けられ、該保持部材47A,47B間に跨って前記駆動軸48Aに平行する複数個(図2では4個)の押圧部材46が軸支されている。これらの押圧部材46は、前記駆動軸48Aの回転により前記円筒スクリーン45の内周面に沿って周回し、該円筒スクリーン45の内面に付着した未溶解粒を円筒スクリーン45の内面との間で押圧して、溶解処理するようになっている。
【0041】
押圧部材46は、保持部材47A,47Bによって両端が支持される軸部461とその軸部461の外周面を覆い、未溶解粒を直接押圧する接触部462とで構成され、軸部461は、保持部材47A,47Bとバネ等の付勢部材で円筒スクリーン45側に付勢されるように支持されている。保持部材47A,47Bと押圧部材46との構成であるが、押圧部材46が円筒スクリーン45の内面を接触状態で移動するように構成してもよいが、この場合、押圧部材46等の磨耗が早まる恐れがある。凝集剤溶液が円筒スクリーン45でスクリーンろ過される際に未溶解粒が堆積していくことで円筒スクリーン45内面に薄膜が形成されてくるので、押圧部材46がその薄膜を押圧可能な程度に円筒スクリーン45に非接触状態で移動するように構成すると、磨耗の問題も解消できて望ましい。駆動機48は、電動機等の動力源の回転数を減速させる減速機48Bが組み込まれており、この減速機48Bを介して駆動軸48Aに伝達されるようになっている。駆動機48の動力源が電動機の場合は、その回転数をインバータで制御することが望ましい。
【0042】
筒状容器40の二次室44B側には、凝集剤溶液流出口40Cが設けられている。凝集剤溶液流出口40Cには、凝集剤溶液供給管16の一端が接続されており、その他端は、汚泥供給管2に合流接続している。円筒スクリーン45でろ過され、かつ未溶解粒を溶解処理された二次室44B内の凝集剤溶液は、圧送ポンプ15の圧送力によって凝集剤溶液流出口40Cから流出し、凝集剤溶液供給管16を経て、汚泥供給管2を流れる被処理汚泥に供給されるようになっている。
【0043】
上述のように、筒状容器40の凝集剤溶液流出口40Cと汚泥供給管2とを接続する凝集剤溶液供給管16には、該凝集剤溶液供給管16を流れる溶解処理後の凝集剤溶液の粘度を測定し、その測定値信号を制御器6に送信する粘度計5が設けられている。この粘度計5には、回転式、振動式、細管式、落体式があり、その何れをも適用可能であり、それぞれの概要構造を以下に説明する。
(1)回転式の粘度計5は、測定対象の凝集剤溶液中に駆動機の動力によって回転する回転円筒管を挿入してその回転トルクを測定し、回転トルクとの相関関係から粘度を算出する構造となっている。
(2)振動式の粘度計5は、測定対象の液体中に振動子を挿入し、その振幅や振動維持に要する電流量との相関関係から粘度を算出する構造となっている。
(3)細管式の粘度計5は、細管に測定対象の凝集剤溶液を流し、その前後の差圧を測定し、その差圧との相関関係から粘度を算出する構造となっている。
(4)落体式の粘度計5は、垂直に置かれた円管中に測定対象の凝集剤溶液を充填し、その中に円柱体を落下させて落下時間を測定し、その落下時間との相関関係から粘度を算出する構造となっている。
【0044】
制御器6は、溶解水供給量(制御弁11)の制御、凝集剤供給量(凝集剤供給機7)の制御、撹拌機12の制御、圧送ポンプ15の制御に加え、前記粘度計5による凝集剤溶液の粘度測定値に応じて凝集剤溶解機4の運転、すなわち前記駆動機48の回転数を増減制御するようになっている。以下に制御器6による駆動機48の回転数制御について説明する。なお、制御器6は、凝集剤溶液タンク3から凝集剤溶解機4への凝集剤溶液の供給流量の制御も行う。この供給量の制御を行うために圧送ポンプ15をインバータ制御等で回転数を制御可能なポンプとした構成や、圧送ポンプ15の吸込側あるいは吐出側に流量制御弁を設けた構成とする必要がある。
【0045】
凝集剤供給機7から凝集剤溶液タンク3内に供給する凝集剤の種類毎に凝集剤溶液の粘度と溶解具合あるいは凝集性能との相関関係を予め調べておき、最適な溶解具合あるいは凝集性能のときの粘度をその凝集剤における最適値として定め、その最適値の粘度(以下、粘度最適値という)を制御器6に記憶させておく。粘度最適値を記憶した制御器6には、粘度計5から測定値信号が常時あるいは所定時間毎に送信されるようになっている。
【0046】
凝集剤溶解機4で溶解処理する際の運転制御は、例えば、単純な方法としては、以下のような制御が適用可能である。まず、駆動機48を低速で起動して押圧部材46を低速で円筒スクリーン45内面を移動させて未溶解粒の溶解処理を開始する。粘度計5で測定され、制御器6に測定値信号で取り込まれた溶解処理された凝集剤溶液の粘度測定値が粘度最適値になるまで、徐々に駆動機48の回転数を上昇させていく。そして、粘度測定値が粘度最適値に達したときに駆動機48の回転数を維持する。通常は、被処理汚泥の性状が大幅に変わらないと、凝集剤溶液の供給量を変えることはあまりないので、この単純な制御のみでも十分に対応可能である。また、被処理汚泥の性状が悪化し、凝集剤溶液の被処理汚泥への供給量を増やす必要が生じた場合には、凝集剤溶解機4で溶解処理される凝集剤溶液の流量が増加し、円筒スクリーン45内面に付着する未溶解粒の量も増加するので、当然最適な駆動機48の回転数が変わる。この場合は、再度、同様の制御を行わせて駆動機48の最適な回転数になるように、汚泥脱水装置の運転管理者が制御器6をリスタートする等し、再調整するとよい。
【0047】
なお、通常の場合、凝集剤溶液の被処理汚泥への供給量は、その汚水脱水装置の運転管理者が汚泥脱水機から排出される脱水汚泥の状況や分離液の状況を見て、増減を判断するので、制御器6に凝集剤溶液の供給量の増減に応じて、駆動機48の回転数を再調整する制御を自動で行わせる必要性は低い。しかし、被処理汚泥の性状に応じて凝集剤溶液の供給量を自動制御することを制御器6で行う場合には、供給量の変化を制御器6が認識できるようにするために凝集剤供給管16等に流量計を設置する、圧送ポンプ15の回転数を認識する回路を制御器6内に組み込む等して、駆動機48の回転数制御を行うとよい。特に、凝集剤溶液の供給量が自動的に変動する場合には、現在の粘度測定値の実測データのみでは駆動機48の制御が難しい。前回あるいは数回前までの粘度測定値も制御器6内に記憶できるようにしておき、凝集剤溶液の粘度の変化を見て駆動機48の回転数制御を行うような制御を組み込むことや、適応制御、ファジー制御、ニューラルネットワークによる制御等の高度な制御を組み込むことが望ましい。
【0048】
次に、実施の形態1における汚泥脱水装置の作用を説明する。被処理汚泥に凝集剤溶液を供給する場合には、制御器6からの出力信号によって、凝集剤供給機7の駆動機8を駆動させて供給口開閉器9を開くと共に、溶解水供給管10の制御弁11を開弁する。このとき、凝集剤供給機7の凝集剤供給口70aから凝集剤溶液タンク3内に粒状等の凝集剤(高分子凝集剤)が供給されると共に、溶解水供給管10から溶解水が供給されるが、この凝集剤と溶解水の供給量の比率で溶解処理後の凝集剤溶液の濃度が変わる。凝集剤溶液の濃度の調整方法であるが、溶解水供給管10に定流量弁や流量制御弁を設けて凝集剤溶液タンク3への溶解水の供給流量を一定になるように調整し、粒状等の凝集剤の所定時間当たりの凝集剤溶液タンク3への供給量を、供給口開閉器9を制御して変化させることで、凝集剤溶液タンク3で生成される凝集剤溶液の濃度を自在に調整することができる。しかし、この方法に限定されるわけではなく、凝集剤溶液の濃度の調整が可能であれば、どのような方法でも適用可能である。凝集剤溶液タンク3内では、制御器6からの出力信号で起動した撹拌機12によって、前記凝集剤と前記溶解水が撹拌混合されることにより凝集剤溶液が生成され、該凝集剤溶液は凝集剤溶液タンク3内に一時的に貯留される。この時点での凝集剤溶液は、未溶解粒が残った状態となっている。
【0049】
凝集剤溶液タンク3内の凝集剤溶液は、凝集剤溶液移送管14の圧送ポンプ15が制御器6の出力信号で起動することにより、予定される被処理汚泥への凝集剤溶液供給量に見合うだけの所定流量で凝集剤溶解機4に移送される。これにより、凝集剤溶解機4の筒状容器40の凝集剤溶液流入口41Cから一次室44Aには、未溶解粒を含む凝集剤溶液が流入してくる。一次室44Aに流入した凝集剤溶液は、円筒スクリーン45を通過するが、その通過時には凝集剤溶液中の未溶解粒が円筒スクリーン45の内面に付着して捕捉される。この時点では、制御器6の出力信号によって凝集剤溶解機4系統の駆動機48が起動しており、その駆動軸48Aの回転により前記円筒スクリーン45の内周面に沿って複数個の押圧部材46が周回している。このため、円筒スクリーン45の内面に付着した未溶解粒は、円筒スクリーン45の内面と押圧部材46との間で押圧されて、未溶解粒の表層の膨潤部分から高分子鎖が分離し、分離した高分子鎖が凝集剤溶液と共に円筒スクリーン45を通過して二次室44Bに流入する。
【0050】
二次室44Bに流入した凝集剤溶液は、凝集剤溶液移送管14の圧送ポンプ15が作動している限り、筒状容器40の凝集剤溶液流出口40Cから定流量で凝集剤溶液供給管16に流出する。その凝集剤溶液供給管16から汚泥供給管2内の被処理汚泥に凝集剤溶液が供給されるが、この際、凝集剤溶液供給管16の粘度計5によって、凝集剤溶液供給管16を流れる凝集剤溶液の粘度が測定され、その測定値信号が制御器6に送信されることにより、上述したように、制御器6による駆動機48の回転数制御が行われる。その回転数制御によって、汚泥供給管2の汚泥供給ポンプ2Aで汚泥脱水機1に圧送される汚泥供給管2内の被処理汚泥に前記凝集剤溶液供給管16から最適粘度であり最適な凝集性能である凝集剤溶液が注入される。
【0051】
このようにして最適な凝集性能の凝集剤溶液が注入された被処理汚泥は汚泥供給管2から汚泥脱水機(図1では遠心脱水機)1に送られることにより、該汚泥脱水機1では、流入した被処理汚泥中の凝集剤溶液によって、被処理汚泥が脱水汚泥と分離液とに効率よく分離され、汚泥脱水機1の脱水汚泥排出口1Aから脱水汚泥が系外に排出されると共に、分離液排出口1Bから系外に分離液が排出される。
【0052】
以上のように、実施の形態1の汚泥脱水装置によれば、粒状等の凝集剤を溶解水に溶解させて凝集剤溶液を生成するに当たり、凝集剤溶液タンク3内で凝集剤と溶解水とを撹拌機12により撹拌混合して凝集剤溶液を生成し、さらに、凝集剤溶解機4で円筒スクリーン45に凝集剤溶液を取り入れてスクリーンろ過し、さらに未溶解粒の溶解処理を行い、その凝集剤溶解機4から流出した凝集剤溶液の粘度を粘度計5で測定した結果を基に制御器6で凝集剤溶解機4の運転を制御する構成としたことにより、以下の効果がある。
(1)凝集剤溶液は、溶解水中での溶解具合によって凝集性能が変化する特性を有しており、この溶解具合と凝集性能との相関関係は、使用する凝集剤の種類によって異なる。また、凝集剤溶液の溶解具合は、粘度と相関関係がある。すなわち、凝集剤溶液の粘度と凝集性能には相関関係がある。予め、この相関関係から凝集剤溶液が最適な凝集性能を発揮するときの粘度を最適値として特定して制御器6に記憶させ、粘度計5の測定値に応じて凝集剤溶解機4の運転を制御することにより、常時、最適な凝集性能の凝集剤溶液を汚泥供給管2内の被処理汚泥に供給することが可能となり、脱水性能が大幅に向上する効果がある。
(2)凝集剤溶液の溶解具合の指標として粘度を測定してその測定値に応じて制御器6で凝集剤溶解機4の運転を調整していることから、被処理汚泥へ供給する凝集剤の種類を変更した場合でも、すぐに最適な凝集性能の凝集剤溶液を生成して供給でき、従来の凝集剤溶解機に比べて即応性に優れており、常時高い脱水性能を維持できる効果がある。
(3)溶解水の水質の変動が水温の変動に起因して、凝集剤溶液タンクで撹拌混合された凝集剤溶液の凝集剤の溶解具合が変化する場合においても、凝集剤溶解機で溶解処理された凝集剤溶液を粘度計で測定し、制御器で凝集剤溶解機の運転を制御することにより、凝集剤溶解機で溶解処理された凝集剤溶液が過撹拌気味や撹拌不足気味になって凝集性能が低下してしまうことを防止し、最適な溶解具合であり最適な凝集性能の凝集剤溶液を常時生成して被処理汚泥に供給することができる効果がある。
(4)凝集剤溶液の被処理汚泥への注入量を増減させた場合においても、凝集剤溶液の粘度計5の測定値に応じて制御器6が凝集剤溶解機4の運転を調整するので、凝集剤溶解機4への凝集剤溶液の流入量が変化しても、最適な凝集性能の凝集剤溶液を供給することができる効果がある。
(5)従来の凝集剤溶解機を手動で調整する場合においては、熟練の作業員であっても最適な溶解具合になるよう調整することは困難であり、最適値よりも回転数が若干低く調整すると凝集剤の溶解不足が懸念されるので、通常、最適値よりも回転数を若干高めに調整することが多く、過撹拌状態気味である。また、過撹拌状態気味で生成されて凝集性能が若干低下した凝集剤溶液であっても高い凝集性能を発揮させるために、凝集剤溶液を所定量よりも多く被処理汚泥に供給している。この実施の形態1の汚泥脱水装置では、凝集剤溶解機4が過撹拌状態となることを防止できるので、凝集剤溶液を所定量よりも多く被処理汚泥に供給する必要がなく、ランニングコストの低減を図ることができる効果がある。
(6)粘度計5と制御器6で凝集剤溶解機4の運転を最適な状態で維持することができることから、従来、手動で凝集剤溶解機の運転を調整していた場合で、安全を見て最適状態よりも過剰気味に調整してしまっていたときに比べて、消費電力を低減することができ、部品の磨耗も低減させることができる効果がある。
(7)凝集剤溶液タンク3で凝集剤と溶解液を撹拌混合されて生成された凝集剤溶液を、凝集剤溶解機4の筒状容器40内に導入して円筒スクリーン45でろ過処理し、円筒スクリーン45内面に付着した凝集剤の未溶解粒を押圧部材46で押圧して溶解処理する構成としたことにより、未溶解粒が残存したままの凝集剤溶液が被処理汚泥に供給されてしまうことを防止でき、かつ未溶解粒を確実に溶解させることができる効果がある。
(8)制御器6は、粘度計5が測定する凝集剤溶液の粘度の測定値に応じて、凝集剤溶解機4の駆動機48の回転を制御する構成としたことにより、駆動機48が保持部材47A,47Bを介して移動力を付与している押圧部材46の円筒スクリーン45内面に沿って移動する速度を調整することができ、即応性に優れた溶解処理を行うことができる効果がある。
【0053】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2における汚泥脱水装置を示す構成図であり、図1と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。また、凝集剤溶解機4に関しては、実施の形態1のものと同様の構造であるので、図2のA−A線方向断面図と、図3のB−B線方向断面図を援用する。この実施の形態2の汚泥脱水装置は、凝集剤供給機7から凝集剤溶液タンク3内に濃縮液状の凝集剤を供給するように構成した点が前記実施の形態1と大きく異なる。
【0054】
この実施の形態2の汚泥脱水装置における凝集剤供給機7は、濃縮液状の凝集剤を貯留する凝集剤貯留タンク74と、この凝集剤貯留タンク74内の濃縮液状の凝集剤を吸引して凝集剤溶液タンク3内に供給する吸引ポンプ71とを備えた構造となっている。吸引ポンプ71の吸込口には凝集剤貯留タンク74の凝集剤中に垂下する吸引管72が接続され、吸引ポンプ71の吐出口には凝集剤溶液タンク3に接続する凝集剤供給管73が接続されている。吸引ポンプ71は制御器6からの出力信号で起動および停止するようになっている。
【0055】
実施の形態2における汚泥脱水装置の作用は、凝集剤供給機7の凝集剤貯留タンク74内に貯留された濃縮液状の凝集剤を吸引ポンプ71で凝集剤溶液タンク3内に供給するほかは、前記実施の形態1と同様に行われる。なお、吸引ポンプ71には、種々のポンプが適用可能であるが、濃縮液状の凝集剤は粘度が高く、比較的腐食性の高い薬剤であることから、吸引力が高く、加圧動力部分に圧送する凝集剤と接触する面がないチューブポンプが最適である。
【0056】
以上のように、実施の形態2の汚泥脱水装置によれば、凝集剤供給機7から凝集剤溶液タンク3内に濃縮液状の凝集剤を供給するように構成したことにより、濃縮液状の凝集剤を適用した場合にも前記実施の形態1と同様の効果がある。特に濃縮液状の高分子凝集剤を使用する場合においては、液状であっても高分子鎖が絡まり合っており、溶解水中に供給したときに短時間で高分子鎖が拡散されるわけではない。凝集剤溶液タンク3内で撹拌混合するのみでは、高分子鎖が液中に分散するのにある程度の時間が必要であり、凝集剤溶液タンク3内で撹拌混合し、凝集剤溶解機4で溶解処理する構成では、粒状等の凝集剤よりも高分子鎖が拡散しやすいため、過撹拌になりやすいという問題を抱えていた。この実施の形態2の汚泥脱水装置の構成であれば、粘度計5からの凝集剤溶液の粘度測定値を基に制御器6で、凝集剤溶解機4で高分子鎖が分散する程度の速度になるように制御でき、凝集剤溶液の過撹拌を防止し、かつ最適な凝集性能の凝集剤溶液を被処理汚泥に供給することができる効果がある。
【0057】
実施の形態3.
図5は、実施の形態2における汚泥脱水装置を示す構成図であり、図1と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。また、凝集剤溶解機4に関しては、実施の形態1のものと同様の構造であるので、図2のA−A線方向断面図と、図3のB−B線方向断面図を援用する。この実施の形態3の汚泥脱水装置は、前記実施の形態1における凝集剤溶液供給管16の粘度計5よりも下流側に凝集剤溶液貯留槽17を配設し、粘度計5で粘度が測定された凝集剤溶液を一時的に貯留するようにした点、凝集剤溶液貯留槽17の底部側内部と汚泥供給管2との間の凝集剤溶液供給管16にポンプ18を設けて該ポンプ18により前記凝集剤溶液貯留槽17内の凝集剤溶液を汚泥供給管2内の被処理汚泥に供給するようにした点が前記実施の形態1と大きく異なる。
【0058】
実施の形態3における汚泥脱水装置の作用は、凝集剤供給機7から流出する凝集剤溶液の粘度を粘度計5で測定後、凝集剤溶液貯留槽に一時的に貯留し、ポンプ18で再度加圧されて汚泥供給管2内の被処理汚泥に供給するほかは、前記実施の形態1と同様に行われる。なお、粘度計5を凝集剤溶液供給管16に設置することに代えて、その粘度測定部を凝集剤溶液貯留槽17内の凝集剤溶液に接液するように設置し、凝集剤溶液貯留槽17内の凝集剤溶液の粘度を測定して凝集剤溶解機4の運転を制御することも可能である。また、この実施の形態3の凝集剤溶液貯留槽17とポンプ18を備えた汚泥脱水装置の構成は、実施の形態2の濃縮液状の凝集剤を使用する汚泥脱水装置に対しても適用可能である。
【0059】
以上のように、実施の形態3の汚泥脱水装置によれば、前記実施の形態1と同様の効果に加えて以下に示す効果がある。凝集剤溶解機4を起動させた直後は、凝集剤溶解機4の制御が不安定であり、しばらくの間、溶解処理された凝集剤溶液の溶解濃度にばらつきが発生しやすい。凝集剤溶解機4から送られる凝集剤溶液が凝集剤溶液貯留槽17に所定量、一時的に貯留されるように構成されていることにより、凝集剤溶液貯留槽17に貯留される間に溶解濃度の異なる凝集剤溶液同士が混ざり合って、最適な溶解濃度の凝集剤溶液を被処理汚泥に対して供給することができる効果がある。
【0060】
また、実施の形態1の汚泥脱水装置において、汚泥脱水機1を複数台設置して汚泥供給管2を分岐配管して各汚泥脱水機1に被処理汚泥を供給するようにして脱水処理を行う構成とする場合、凝集剤溶液は汚泥脱水機1に供給される直前の被処理汚泥に供給するよう、凝集剤溶解機4の凝集剤溶液供給管16を分岐配管した方が凝集剤溶液はより有効に働く。これは、分岐配管手前の汚泥供給管2に凝集剤溶液供給管16を接続して凝集剤溶液を供給した場合、凝集剤溶液が被処理汚泥に接触して汚泥懸濁物質の粒子が凝集されて汚泥フロックが形成された後に汚泥供給ポンプ2Aの圧力で汚泥供給管2内を移動することになって汚泥フロックが崩れやすく、その状態のまま被処理汚泥が汚泥脱水機1内に供給されても脱水効率が向上しないことがその理由にある。しかし、凝集剤溶液供給管16を分岐配管して汚泥供給管2の各分岐配管にそれぞれ供給する構成とした場合、凝集剤溶液の圧送力を圧送ポンプ15の1台に依存しており、しかも凝集剤溶液供給管16の各分岐配管間の配管長や配管抵抗を同一にすることが困難であるため、汚泥供給管2の各分岐配管への凝集剤溶液の供給量が均等になりにくいという問題がある。
【0061】
この実施の形態3の汚泥脱水システムでは、凝集剤溶解機4で溶解処理され、粘度計5で粘度が測定された凝集剤溶液を凝集剤溶液貯留槽17に一時貯留し、凝集剤溶液供給管16の各分岐配管に設けられた各ポンプで凝集剤溶液は確実に加圧され、汚泥供給管2の各分岐配管の被処理汚泥に供給される構成とすることができるので、どの分岐配管の被処理汚泥に対しても必要量の凝集剤溶液を確実に供給することができる。これにより、撹拌機12を備えた凝集剤溶液タンク3、凝集剤溶解機4等を1セットで複数台の汚泥脱水機への凝集剤溶液の供給が可能であり、かつ高い脱水性能を維持できるという効果がある。
【0062】
実施の形態4.
図6は、実施の形態4における汚泥脱水装置を示す構成図であり、図1と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。また、凝集剤溶解機4に関しては、実施の形態1のものと同様の構造であるので、図2のA−A線方向断面図と、図3のB−B線方向断面図を援用する。この実施の形態3の汚泥脱水装置は、凝集剤流入口1Cを汚泥流入管部1Dに備える、いわゆる機内注入型の遠心脱水機を汚泥脱水機1として適用し、凝集剤溶液供給管16の下流側端部を凝集剤流入口1Cに接続した構成とした点が前記実施の形態1と大きく異なる。その他は前記実施の形態1と同様の構造である。
【0063】
通常の汚泥供給管2内で被処理汚泥に凝集剤溶液を供給するタイプの遠心脱水機の場合、汚泥供給管2内を移送中に凝集剤溶液の凝集作用によって汚泥フロックが形成されている被処理汚泥が高速回転している遠心脱水機の外胴内に供給されたとき、高速回転の加速力で撹拌されて汚泥フロックが崩壊してしまい、このままでは脱水性能が低下してしまう。通常、この対策として、外胴内で一度崩壊した汚泥フロックを再形成させるため、凝集剤溶液の被処理汚泥への供給量を予め必要量以上に過剰供給にするようにしている。これによって、汚泥供給管2内で被処理汚泥中に汚泥フロックが形成された後でも凝集作用を未だ発揮していない凝集剤が残存するようにしておくことができ、被処理汚泥が外胴内に供給されて汚泥フロックが崩壊したときに、残存する凝集剤が凝集作用を発揮して再度汚泥フロックを形成させることで、遠心脱水機での脱水性能を高い水準に維持可能となっている。しかし、この方法は、凝集剤溶液を過剰に供給する必要があるため、ランニングコストが嵩んでしまうという問題を抱えていた。
【0064】
このような問題点を解消するために開発されたのが機内注入型の遠心脱水機である。この遠心脱水機は、一部が外胴内に挿入され、汚泥供給管2から被処理汚泥を受け入れて外胴内に供給する汚泥流入管部1Dを内管と外管とからなる二重管構造としている。また、外胴に挿入されていない部分の外管の外周面に凝集剤溶液供給管16が接続する凝集剤流入口1Cが設けられ、内管には被処理汚泥が流れ、内管と外管との間の空間には凝集剤溶液が流れるようになっている。これにより、被処理汚泥と凝集剤溶液は、外胴内に供給された段階で接触することになり、外胴の加速力で素早く混合され、そこで汚泥フロックが形成されるようになっているので、凝集剤溶液を過剰供給する必要がなく、ランニングコストが大幅に低減できる効果を機内注入型の遠心脱水機は有している。
【0065】
実施の形態4における汚泥脱水装置の作用は、前記実施の形態1と同様に行われる。なお、この実施の形態4の汚泥脱水装置の構成については、実施の形態2および実施の形態3の各汚泥脱水装置に対しても適用可能である。
【0066】
以上のように、実施の形態4の汚泥脱水装置によれば、前記実施の形態1で示した凝集剤溶液が最適な凝集性能を発揮することができる効果に加えて、汚泥脱水機1に機内注入型の遠心脱水機を適用したことにより、凝集剤溶液の供給量を抑制することができるので、凝集剤溶液の供給量を大幅に抑制しても高い脱水性能を維持することができ、ランニングコストを大幅に低減させることができる効果がある。
【0067】
実施の形態5.
図7は、実施の形態5における汚泥脱水装置を示す構成図であり、図1と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。また、凝集剤溶解機4に関しては、実施の形態1のものと同様の構造であるので、図2のA−A線方向断面図と、図3のB−B線方向断面図を援用する。この実施の形態7の汚泥脱水装置は、前記実施の形態1の汚泥脱水装置における汚泥脱水機1から排出される分離液の水質を測定する水質測定器31を設けた点が前記実施の形態1と大きく異なる。
【0068】
この実施の形態5の汚泥脱水装置における水質測定器31は、汚泥脱水機1の分離液排出口1Bから排出される分離液を受け入れる分離液受入容器32と、この分離液受入容器32の側部に接続されて分離液受入容器32から系外に分離液を排出する分離液排出管33と、分離液受入容器32の底部と分離液排出管33の中途部に跨って接続された分離液バイパス管34と、この分離液バイパス管34に設けられた分離液サンプリング用のサンプリングポンプ35とを備え、前記分離液バイパス管34に濁度計36を設けた構造となっている。濁度計36は、前記分離液の濁度を測定し、その濁度測定値信号を制御器6に送信するようになっている。
【0069】
濁度計36としては、例えば図7で示したように分離液バイパス管34の一部を石英ガラス等の透明材質の管材を使用し、その管周壁の外側にレーザー光等の光を照射する発光部と受光量を測定する受光部を備えた光センサーを設置し、対抗側の管周壁に反射板を設置した構成のものが適用可能である。この場合、光センサーの発光部から管内の分離液に向けて光を照射して反射板で反射させ、分離液を通過して減衰した光を受光部で受光量を測定して光の減衰量から分離液の濁度を測定するようになっている。ただし、濁度計36は、この構成に限定されるわけではなく、分離液の濁度を測定可能であれば、超音波を使用する濁度計など、どのような構成のものでもよい。一方、制御器6には、凝集剤溶液の粘度最適値および分離液の濁度最適値のそれぞれを予め設定している。それらの粘度最適値および濁度最適値は、凝集剤溶液の粘度測定値および分離液の濁度測定値の良否を判断する比較基準となるものである。
【0070】
次に、実施の形態5における汚泥脱水装置の作用を説明する。なお、水質測定器31および制御器6による制御系統以外の作用は、前記実施の形態1と同様のため説明を省略する。汚泥脱水機1の分離液排出口1Bから排出された分離液は分離液受入容器32に受け入れられる。分離液受入容器32に受け入れられた分離液は、その一部がサンプリングポンプ35の起動により分離液バイパス管34側の流路に取り込まれ、分離液排出管33に再度合流して系外に排出される。この際、分離液バイパス管34を流れる分離液の濁度が水質測定器31の濁度計36によって測定され、その濁度測定値信号が制御器6に送信される。制御器6は、濁度測定値を制御器6に設定された濁度最適値と比較することにより、濁度測定値が濁度最適値以上か否かを判断する。その結果、濁度測定値が濁度最適値以上の場合には凝集剤の供給量が不足していると判断して、圧送ポンプ15の回転数を上げて被処理汚泥への凝集剤溶液の供給量を増やす制御を行う。
【0071】
このとき、圧送ポンプ15の圧送量を増やしたことから、凝集剤溶解機4への凝集剤溶液の供給量も増えて凝集剤溶解機4の回転数が最適値ではなくなるので、粘度計5からの凝集剤溶液の粘度測定値を基に制御器6で凝集剤溶解機4の回転数の再調整を行うようになっている。なお、この実施の形態5の汚泥脱水装置の構成については、実施の形態2から実施の形態4の各汚泥脱水装置に対しても適用可能である。
【0072】
以上のように、実施の形態5の汚泥脱水装置によれば、実施の形態1の汚泥脱水装置と同様に凝集剤溶解機4の回転数を粘度計5で測定される凝集剤溶液の粘度から制御器6で制御し、さらに汚泥脱水機1から排出される分離液を分離液受入容器32に受け入れ、分離液排出管33で系外に排出するようにしておき、分離液の一部を分離液バイパス管34で水質測定器31に取り込んで濁度計36で測定し、その濁度測定値に応じて圧送ポンプ15を制御するようにしたことにより、実施の形態1に示した様々な効果に加え、汚泥供給管2から供給される被処理汚泥の性状が大きく変化したときにも、最適な凝集性能の凝集剤溶液を最適な供給量で被処理汚泥に供給することができる。これにより、汚泥脱水機1での脱水効率を常に高い状態に維持でき、かつ水質良好の分離液を得ることができる効果がある。
【0073】
実施の形態6.
図8は、実施の形態6における汚泥脱水装置を示す構成図であり、図7と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。また、凝集剤溶解機4に関しては、実施の形態1のものと同様の構造であるので、図2のA−A線方向断面図と、図3のB−B線方向断面図を援用する。この実施の形態6の汚泥脱水装置は、前記実施の形態5の汚泥脱水装置とは、広義の汚泥脱水機の一種である傾斜型スクリーン濃縮機を汚泥脱水機20として適用した点が大きく異なる。その他の構成は、前記実施の形態5と同一構成である。
【0074】
この実施の形態6の汚泥脱水機20は、汚泥供給管2の接続側が低くなるように傾斜させて設置された断面矩形状の汚泥脱水容器21と、この汚泥脱水容器21内に該汚泥脱水容器21と同一方向に傾斜させて回転可能に配設された平面状の脱水スクリーン22と、この脱水スクリーン22を回転駆動するスクリーン駆動機23とを備えている。汚泥脱水容器21の内部は、脱水スクリーン22によって上部の汚泥導入室24と下部の分離液室25とに区分されている。汚泥導入室24内における脱水スクリーン22の傾斜勾配の上部側には該脱水スクリーン22の上面に近接する固定スクレーパ26が汚泥脱水容器21に取り付けられている。
【0075】
汚泥脱水容器21は、汚泥供給管2からの被処理汚泥を汚泥導入室24内における脱水スクリーン22の傾斜勾配の中間高さよりもやや下方側に導入する汚泥導入管27と、汚泥導入室24内に脱水スクリーン22の傾斜勾配の上方側で接続して固定スクレーパ26で掻き寄せられた脱水汚泥を排出する脱水汚泥排出管28と、分離液室25内に傾斜勾配の下端側で接続して分離液を排出する分離液排出管29とを有している。そして、分離液排出管29の開口端部には、実施の形態5の場合と同様に分離液受入容器32、分離液バイパス管33および水質測定器31が配設されている。
【0076】
次に、実施の形態6における汚泥脱水装置の作用を説明する。凝集剤溶液タンク3内での凝集剤溶液の生成、凝集剤溶液タンク3から凝集剤溶解機4内への圧送ポンプ15による凝集剤溶液の供給、凝集剤溶解機4での凝集剤溶液の溶解処理、粘度計5による凝集剤溶液の粘度測定値に基づく駆動機48の回転数制御は、前記実施の形態1の場合と同様に行われるので、詳細な説明を省略する。
【0077】
汚泥供給管2の汚泥供給ポンプ2Aで圧送される被処理汚泥に凝集剤溶液供給管16から凝集剤溶液が注入された被処理汚泥は、汚泥脱水機20の汚泥移送管27を経由して汚泥脱水容器21の汚泥導入室24内に導入される。汚泥導入室24内に導入された被処理汚泥は、水分が脱水スクリーン22を通過すると共に、脱水汚泥が脱水スクリーン22の上面に残留する。脱水汚泥分が上面に付着した脱水スクリーン22はスクリーン駆動機23で回転駆動されているので、脱水スクリーン22上面の脱水汚泥は定位置の固定スクレーパ26で掻き集められ、固定スクレーパ26に沿って脱水汚泥排出管28に移送されて系外に排出される。
一方、脱水スクリーン22を通過した水分は汚泥懸濁物質が除去された分離液となって分離液排出管29の開口端部から分離液受入容器32に排出される。
【0078】
分離液バイパス管33以降の分離液の濁度の測定に関する事項、分離液の濁度に応じた圧送ポンプ15の制御に関する事項等に関しては、実施の形態5の汚泥脱水装置と同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態6では、汚泥脱水機20に傾斜型スクリーン濃縮機を適用したが、その他の汚泥濃縮機等、遠心脱水機よりも脱水性能は多少劣っていても被処理汚泥を脱水汚泥と分離液に分離可能であれば、どのような構成のものでも適用可能である。
【0079】
以上のように、実施の形態6の汚泥脱水装置によれば、傾斜型スクリーン濃縮機に対しても、実施の形態5で示した効果と同様の効果が得られる効果がある。また、傾斜型スクリーン濃縮機は、遠心脱水機に比べて動力源が消費する電力量が小さく、汚泥脱水装置の運転に係るランニングコストを低減できる効果がある。
【0080】
実施の形態7.
図9は、実施の形態7における汚泥脱水装置を示す構成図であり、図8と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。また、凝集剤溶解機4に関しては、実施の形態1のものと同様の構造であるので、図2のA−A線方向断面図と、図3のB−B線方向断面図を援用する。前記実施の形態6の汚泥脱水装置とは、汚泥脱水機20から分離液排出管29に流出する分離液の濁度を水質測定器31で測定していたが、この実施の形態7の汚泥脱水装置では、これに代えて汚泥脱水機20から脱水汚泥排出管28に流出する脱水汚泥の粘度を粘度計30で測定するようにした点が大きく異なる。
【0081】
脱水汚泥排出管28には、汚泥脱水機20の汚泥導入室24から排出される脱水汚泥の粘度を測定する汚泥粘度計30が設けられており、汚泥粘度計30は脱水汚泥の粘度測定値信号を制御器6に送信するようになっている。実施の形態1で示した遠心脱水機のような脱水効率の高い汚泥脱水機1の場合、脱水汚泥排出口1Aから排出される脱水汚泥は含水率が低く、塊に近い状態で排出されるため、粘度計で粘度を図ることは困難である。これに対して、この実施の形態7で示す傾斜型スクリーン濃縮機のような汚泥脱水機20の場合、脱水汚泥排出管28から排出される脱水汚泥は含水率が流動可能な程度に高いため、粘度計で粘度を計測することが十分可能である。制御器6には、凝集剤溶液の粘度最適値および脱水汚泥の粘度最適値が予め記憶設定されている。このように凝集剤溶液と脱水汚泥のそれぞれの粘度最適値が予め設定された制御器6は、凝集剤溶液の粘度計5と汚泥粘度計30のそれぞれから粘度測定値信号を受信することにより、凝集剤溶液および脱水汚泥の粘度最適値と粘度測定値とを比較し、その差分に基づいて凝集剤溶解機4および圧送ポンプ15の運転を制御するようになっている。
【0082】
実施の形態7における汚泥脱水装置の作用に関しては、汚泥粘度計30による脱水汚泥の粘度測定値をもとに圧送ポンプ15の凝集剤溶液の圧送量を制御器6で制御すること以外は、実施の形態6の場合と同様に行われるので、詳細な説明は省略する。
【0083】
以上のように、実施の形態7の汚泥脱水装置によれば、実施の形態6で示した効果に加え、水質測定器31を用いる場合に比べて安価な汚泥粘度計30を用いて脱水汚泥の粘度を測定し、その測定値をもとに圧送ポンプ15を制御して凝集剤溶液の被処理汚泥への供給量を制御するようにしたことから、イニシャルコストを低減することができる効果がある。
【実施例1】
【0084】
実施の形態1に示した汚泥脱水装置の構成を用いて、実際に汚泥を脱水処理したときの結果について、以下に示す。この実施例1は、以下の実施条件で行われた。
〔実施条件〕
・凝集剤溶液タンク3容量:1.4m3
・撹拌機12:2.2kW
・溶解水:汚水処理施設での処理水,供給量 167L/min
・凝集剤:粒状カチオン系高分子凝集剤 商品名「ハイモフロックMP−184」,
供給量 367g/min
・圧送ポンプ15:一軸ねじポンプ 吐出流量 120L/min,動力 3.7kW
・凝集剤溶解機4:駆動機48 電動機を使用、インバータで回転数制御
(制御周波数範囲17〜42Hz)
・凝集剤溶液:溶液濃度 0.22%,薬注率 1.0%/TS
・粘度計5:測定原理 回転式
・汚泥脱水機1:遠心型脱水機 設定差速 5.4min−1
・汚泥脱水機への汚泥供給量:50m3/h
【0085】
粘度計5で凝集剤溶液の粘度を測定し、その粘度測定値を基に制御器6で凝集剤溶解機4の回転を制御してその凝集剤が高い凝集性能を発揮する最適な溶解具合の凝集剤溶液を生成することを維持するには、使用する凝集剤の溶液の最適な粘度値を選定する事前検証を行う必要がある。このため、事前検証として、凝集剤溶解機4で溶解処理後の凝集剤溶液の粘度を粘度計5で測定しながら、駆動機48をインバータ制御の周波数を手動調整して凝集剤溶解機4の回転を調整して、所定粘度(90mPas,100mPas,110mPas,120mPas)の凝集剤溶液を生成し、各粘度の凝集剤溶液を被処理汚泥中に供給し、汚泥脱水機1で脱水処理された脱水汚泥の含水率の測定を行った。そして、凝集剤溶液粘度と脱水汚泥の含水率との相関図を作成(図10参照)した結果、今回使用する粒状カチオン系高分子凝集剤は、溶液濃度0.22%においては、110mPasの粘度値になるように凝集剤溶解機4の回転数を制御すると、最も高い凝集性能を発揮することが判明した。
【0086】
実際に、実施の形態1の構成の汚泥脱水装置に、制御器6に粘度最適値として110mPasを選定して入力を行った。そして、制御器6で、凝集剤溶解機4で溶解処理後の凝集剤溶液の粘度が粘度最適値になるように、駆動機48の回転数をインバータ制御し、溶解処理された凝集剤溶液を所定量供給した被処理汚泥を、汚泥脱水機1を連続運転して脱水処理を行った。このときの粘度計5で測定した凝集剤溶液の粘度測定値と脱水汚泥の含水率に関する時系列図を図11に示す。また、比較対象として、同様の実施条件で、凝集剤溶解機4の駆動機48の回転数を一定値(前記事前検証の測定で、粘度測定値が110mPasの凝集剤溶液を生成したときの駆動機48の回転数)で固定し、汚泥脱水装置で被処理汚泥の脱水処理を行った。このときの粘度計5で測定した凝集剤溶液の粘度測定値と脱水汚泥の含水率に関する時系列図を図12に示す。
【0087】
駆動機48の回転数を一定値で維持した汚泥脱水装置の場合には、図12の時系列図で明らかなように、凝集剤溶解機4の運転が安定した後の時間経過による凝集剤溶液の粘度測定値が±10mPas前後も変動している。この変動には種々の要因が考えられるが、の1つとしては、溶解水が汚水処理施設で汚水が浄化処理された処理水であることに起因する水質変動や水温変動等が考えられる。凝集剤溶解機4に流入する時点での凝集剤溶液の凝集剤の溶解具合が標準状態(事前検証時の溶解具合)から変動しているのにもかかわらず、駆動機48を同じ回転数で溶解処理してしまうため、過撹拌気味(2.0〜4.0hour)になってしまったり、撹拌不足気味(5.0〜7.0hour)になってしまったりする。そのときの凝集剤溶液は最適状態のときに比べて凝集性能が低下しているので、これが被処理汚泥に供給されたときの脱水汚泥の含水率は上昇してしまっている(凝集剤溶液の粘度測定値が最適値110mPas時における脱水汚泥の含水率が78.3%と良好であるのに対し、凝集剤溶液の粘度測定値が99mPasの過撹拌気味時における脱水汚泥の含水率が79.1%に上昇してしまっている)。
【0088】
これに対して、粘度計5から送られてくる粘度測定値に応じて制御器6で駆動機48の回転数を制御した実施の形態1の汚泥脱水装置の場合には、図11の時系列図で明らかなように、集剤溶解機4の運転が安定した後の時間経過による凝集剤溶液の最適粘度値からの変動幅が最大でも±3mPas(108〜113mPas)と少ない。これは、溶解水の水質変動や水温変動等によって凝集剤の溶解具合が標準状態(事前検証時の溶解具合)から変動しているとき、粘度計5で測定される粘度測定値を制御器6で粘度最適値と比較して、駆動機48の回転数を制御するため、撹拌処理が過撹拌気味になったり、撹拌不足気味になったりすることを防止しているためである。そして、常時最適な粘度で溶解処理された凝集剤溶液が被処理汚泥に供給されることにより、脱水汚泥の含水率も最低でも78.6%と良好な脱水処理が可能となっている。以上の実施結果から、この実施の形態1の汚泥脱水装置の優れた作用効果を証明することができたといえる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態1における汚泥脱水装置を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における凝集剤溶解機の図3に示すA−A線方向から見た断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における凝集剤溶解機の図2に示すB−B線方向から見た断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2における汚泥脱水装置を示す構成図である。
【図5】本発明の実施の形態3における汚泥脱水装置を示す構成図である。
【図6】本発明の実施の形態4における汚泥脱水装置を示す構成図である。
【図7】本発明の実施の形態5における汚泥脱水装置を示す構成図である。
【図8】本発明の実施の形態6における汚泥脱水装置を示す構成図である。
【図9】本発明の実施の形態7における汚泥脱水装置を示す構成図である。
【図10】実施例1における事前検証による凝集剤溶液の粘度測定値と脱水汚泥の含水率との関係を示す相関図である。
【図11】実施例1における駆動機48の回転数を粘度測定値に応じて制御した場合の凝集剤溶液の粘度測定値と脱水汚泥の含水率に関する時系列図である。
【図12】実施例1における駆動機48の回転数を一定値で固定した場合の凝集剤溶液の粘度測定値と脱水汚泥の含水率に関する時系列図である。
【符号の説明】
【0090】
1 汚泥脱水機
1A 脱水汚泥排出口
1B 分離液排出口
1C 凝集剤流入口
1D 汚泥流入管部
2 汚泥供給管
2A 汚泥供給ポンプ
3 凝集剤溶液タンク
4 凝集剤溶解機
5 粘度計
6 制御器
7 凝集剤供給機
70a 凝集剤供給口
8 駆動機
9 供給口開閉器
10 溶解水供給管
11 制御弁
12 撹拌機
12A 駆動機
12B 回転出力軸
12C 撹拌羽根
13 水位計
14 凝集剤溶液移送管
15 圧送ポンプ
16 凝集剤溶液供給管
17 凝集剤溶液貯留槽
18 ポンプ
20 汚泥脱水機
21 容器
22 スクリーン
23 スクリーン駆動機
24 汚泥導入室
25 分離液室
26 固定スクレーパ
27 汚泥移送管
28 脱水汚泥排出管
29 分離液排出管
30 汚泥粘度計
31 水質測定器
32 分離液受入容器
33 分離液排出管
34 分離液バイパス管
35 サンプリングポンプ
36 濁度計
40 筒状容器
40A,40B フランジ部
40C 凝集剤溶液流出口
41A,41B フランジ蓋
41C 凝集剤溶液流入口
42A,42B ボルト・ナット
43A,43B 仕切部材
44A 一次室
44B 二次室
45 円筒スクリーン
46 押圧部材
47A,47B 保持部材
48 駆動機
48A 駆動軸
48B 減速機
49 ベアリング
70 ホッパー状容器
70a 凝集剤供給口
71 吸引ポンプ
72 吸引管
73 凝集剤供給管
74 凝集剤溶液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理汚泥を分離液および脱水汚泥に分離する汚泥脱水機と、
該汚泥脱水機へ被処理汚泥を供給する汚泥供給管と、
凝集剤および溶解水を撹拌混合して凝集剤溶液を生成する凝集剤溶液タンクと、
前記凝集剤溶液を導入してスクリーンろ過するとともに、凝集剤溶液中の凝集剤を溶解する凝集剤溶解機と、
該凝集剤溶解機から流出した凝集剤溶液の粘度を測定する粘度計と、
該粘度計の測定値に応じて前記凝集剤溶解機の運転を制御する制御器と
からなる汚泥脱水装置。
【請求項2】
凝集剤溶解機は、
筒状容器と、
該筒状容器内に配設され、凝集剤溶液をろ過する円筒スクリーンと、
該円筒スクリーンの内面に付着する凝集剤を押圧して溶解する一つまたは二つ以上の押圧部材と、
該押圧部材を保持する保持部材と、
該保持部材を介して前記押圧部材を前記円筒スクリーンの内面に沿って移動させる駆動機と
からなることを特徴とする請求項1記載の汚泥脱水装置。
【請求項3】
制御器は、
粘度計の測定値に応じて駆動機の回転を制御することを特徴とする請求項2記載の汚泥脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−50754(P2009−50754A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217413(P2007−217413)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000147408)株式会社西原環境テクノロジー (44)
【Fターム(参考)】