説明

沈埋函接合用ガスケット

【課題】 ガスケット本体とフランジとの境界近傍に発生する損傷を抑制することにより耐久性を向上させると共に、優れた水密性を確保するようにした沈埋函接合用ガスケットを提供する。
【解決手段】 断面が略台形をなす本体部2と、この本体部2を沈埋函に固定するためのフランジ部3とを備えたゴム製のガスケット1で構成し、フランジ部3の端部から本体部4の側面に至る領域に補強層4を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は沈埋函接合用ガスケットに関し、さらに詳しくは、ガスケット本体とフランジとの境界近傍に発生する損傷を抑制することにより耐久性を向上させると共に、優れた水密性を確保するようにした沈埋函接合用ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
水中における既設沈埋函に新たな沈埋函を付設する沈埋函沈設工事は、図4に示すように、バルクヘッド10により開口端部が封鎖された既設の沈埋函11に、端面にガスケットGを取り付けた新たな沈埋函12を突き合わせて、既設の沈埋函11と新たな沈埋函12とを仮連結した後、それぞれのバルクヘッド10、10間に閉じ込められた水を排水し、新たな沈埋函12の背面(図中右側)からの水圧を利用して沈埋函11、12を水圧接合させることによって行なっている。
【0003】
図4のX部に取り付けられたガスケットGの形態は、図5に例示するように、断面が略台形状の本体部Gaとこれを沈埋函12の端部に固定するためのフランジ部Gbとからなり、接合に際して図6の(a)→(b)→(c)に示すように変形しながら、沈埋函11、12の間隙を封鎖して止水するようになっている。
【0004】
水圧接合が完了した時点では、ガスケットGには沈埋函12の背面水圧により、単位長さ当たり30〜150tf/m程度の圧縮荷重が作用し、この圧縮荷重により圧縮変形した状態で沈埋函11、12内部への漏水を防いでいる。さらに、ガスケットGには前記圧縮荷重とは別に、ガスケットGの外側面から水深に相当する水圧が作用するため、ガスケットGには沈埋函11、12の内側に倒れ込もうとする横力が働くことになる。これにより、ガスケットGの内側が沈埋函11の内側にはみ出したり、ガスケットGの本体部Gaとフランジ部Gbとの境界Y部の近傍に応力が集中してガスケットGが破損し、沈埋函11、12内部への水密性が保てなくなる事故に発展する場合がある。
【0005】
この対策として、既設の沈埋函11の開口端部にストッパ−等を取り付けたり(例えば、特許文献1、2参照)、ガスケットGの本体部Gaの断面形状を不等脚台形状にしたり(特許文献3参照)、ガスケットGの本体部Gaの上面付近に補強層を配置したり(例えば、特許文献4、5参照)するようにした提案がある。しかしながら、何れの提案にあっても、ガスケットGに発生する損傷を効率よく抑制することができず、良好な水密性を確保することができないことから、未だ改善の余地を残していた。
【特許文献1】特開平7−305366号公報
【特許文献2】特開平9−217368号公報
【特許文献3】特開平8−120698号公報
【特許文献4】特開平8−296244号公報
【特許文献5】特開平9−144039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、かかる従来の問題点を解消し、ガスケット本体とフランジとの境界近傍に発生する損傷を抑制することにより耐久性を向上させると共に、優れた水密性を確保するようにした沈埋函接合用ガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためのこの発明の沈埋函接合用ガスケットは、水中における既設沈埋函に新たな沈埋函を付設するに際して、既設沈埋函に対向する新たな沈埋函の端部側に取り付ける断面が略台形をなす本体部と、該本体部を沈埋函に固定するためのフランジ部とを備えたゴム製の沈埋函接合用ガスケットにおいて、前記フランジ部の端部から前記本体部の側面に至る領域に補強層を配置したことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の沈埋函接合用ガスケットは、断面が略台形をなす本体部と、この本体部を沈埋函の端部に固定するためのフランジ部とを備えたゴム製のガスケットで構成し、フランジ部の端部から本体部の側面に至る領域に補強層を配置したので、付設後のガスケットに側面方向からの水圧が作用しても、補強層がガスケットの変形を抑制すると共に、変形が生じた場合であっても、この変形に伴い本体部とフランジ部との境界近傍に発生する応力集中を緩和して、ガスケットの破損を抑制して耐久性を向上させると共に、優れた水密性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の構成につき添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1はこの発明の実施形態からなる沈埋函接合用ガスケットの構造を示す断面図で、図2は他の実施形態からなる図1に相当する断面図である。
【0011】
図1において、沈埋函接合用ガスケット(以下、単にガスケットという)1は、断面が略台形をなす本体部2と、この本体部2を沈埋函に固定するためのフランジ部3とを備えている。本体部2の両側に位置するフランジ部3、3には、ガスケット1の長手方向に図示しないボルト孔が間欠的に形成され、ガスケット1がボルトにより沈埋函の開口端部に取り付けられるようになっている。
【0012】
ガスケット1の表面側には、フランジ部3、3の端部から本体部2の側面に至る領域に補強層4が配置されている。補強層4は、繊維コード、織布又は不織布のうちの少なくとも一種から構成するとよい。なお、補強層4の層数は特に限定されるものではない。この補強層4は、ガスケット1の製造時に一体的に形成してもよく、製造後のガスケット1の表面に貼り合わせるようにしてもよい。このように形成されたガスケット1は、沈埋函の開口端部に取り付けられて、水中における既設沈埋函との接合用に使用される。
【0013】
これにより、付設後のガスケット1に側面方向からの水圧が作用しても、補強層4がガスケット1の変形を抑制すると共に、変形が生じた場合であっても、この変形に伴い本体部2とフランジ部3との境界近傍に発生する応力集中を緩和して、ガスケット1の破損を抑制して耐久性を向上させると共に、優れた水密性を確保することができる。
【0014】
さらに、沈埋函付設工事中にガスケット1が外部の障害物等に衝突して損傷を受けることがしばしばあり、このような事態が発生した場合であっても、フランジ部3、3の端部から本体部2の両側面に至る領域に配置された補強層4が、衝突による損傷の発生や成長を有効に防止する。
【0015】
なお、図1の実施形態では、補強層4を本体部2の両側面側に配置しているが、補強層4の配置は、外側のみでもよい。また、ガスケット1には、本体部2の上部にノ−ズ部6と、本体部2の底面にリッジ部7とをそれぞれ形成し、両側のフランジ部3、3には上記する補強層4とは別の補強層5を埋設している。ノ−ズ部6とリッジ部7とは、沈埋函同士の接合を円滑にすると共に水密性を向上させる役割を有し、補強層5はボルト孔の強度を向上させる役割を有している。
【0016】
この発明において、ガスケット1を構成するゴム材料には、長期にわたり止水性を維持する能力が要求される。このような観点から、ガスケット1を構成するゴム材料としては、天然ゴムを使用することが好ましい。さらに、沈埋函の付設時の水圧等を考慮して、ゴム材料のJIS−A硬度を40〜70とすることが好ましい。
【0017】
また、補強層4を構成する繊維の材料には、柔軟性と耐久性とを兼ね備えたナイロン又はポリエステルが好ましく使用される。補強層4を織布とする場合の織り構造は特に限定されるものではないが、ナイロンコ−ドやポリエステルコ−ドからなる平織り織布が好ましく使用される。
【0018】
この発明における補強層4は、フランジ部3、3の端部から本体部2の両側面の略中間位置以内までの領域に配置するとよい。すなわち、補強層4の配置領域は、図1に示すように、本体部2の側面における補強層4の端部4aが、フランジ部3の表面から、本体部2のフランジ部3の表面からの高さHの20〜50%に相当する高さhの位置になるように調整するとよい。これにより、本体部2とフランジ部3との境界近傍における損傷の発生を一層有効に防止することができる。
【0019】
さらに、補強層4を、図2に示すように、フランジ部3の内部において折り返すか、或いはフランジ部3を包み込むように配置するとよい。これにより、ガスケット1に横力が作用した場合であっても、ボルト孔の引き裂き抵抗を向上させてガスケット1のずれや脱落を防止することができる。
【0020】
この発明において、補強層4を構成する繊維コ−ド及び織布を構成するコ−ドの配置角度を、図3に被覆ゴムを破断して示すように、ガスケット1の長手方向に対して傾斜させるとよい。これにより、補強層4の端部位置において剛性が急変するのを防ぐことができ、ガスケット1の横倒れ時における引っ張り応力が局所的に増大するのを防止して、ガスケット1の耐久性を一層向上させることができる。
【0021】
上述するように、この発明のガスケットは、断面が略台形をなす本体部と、この本体部を沈埋函に固定するためのフランジ部とで構成し、フランジ部の端部から本体部の側面に至る領域に補強層を配置することにより、ガスケットの変形を抑制すると共に、変形が生じた場合であっても、本体部とフランジ部との境界近傍に発生する応力集中を緩和して耐久性を向上させると共に、優れた水密性を確保するもので、水中における沈埋函の接合用として広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施形態による沈埋函接合用ガスケットの構造を示す断面図である。
【図2】この発明の他の実施形態による沈埋函接合用ガスケットの構造を示す断面図である。
【図3】この発明の沈埋函接合用ガスケットにおける補強層のコ−ド配置を説明するための一部を破断して示す斜視図である。
【図4】沈埋函の付設工事の状況を説明するための側面図である。
【図5】従来の沈埋函接合用ガスケットの構造を示す断面図である。
【図6】沈埋函接合時におけるガスケットの変形形態を説明するための側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ガスケット
2 本体部
3 フランジ部
4、5 補強層
6 ノ−ズ部
7 リッジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中における既設沈埋函に新たな沈埋函を付設するに際して、既設沈埋函に対向する新たな沈埋函の端部側に取り付ける断面が略台形をなす本体部と、該本体部を沈埋函に固定するためのフランジ部とを備えたゴム製の沈埋函接合用ガスケットにおいて、
前記フランジ部の端部から前記本体部の側面に至る領域に補強層を配置した沈埋函接合用ガスケット。
【請求項2】
前記補強層が繊維コード、織布又は不織布のうちの少なくとも一種からなる請求項1に記載の沈埋函接合用ガスケット。
【請求項3】
前記ガスケットがJIS−A硬度を40〜70とする天然ゴムからなる請求項1又は2に記載の沈埋函接合用ガスケット。
【請求項4】
前記補強層を構成する繊維の材料がナイロン又はポリエステルである請求項1、2又は3に記載の沈埋函接合用ガスケット。
【請求項5】
前記本体部の側面における前記補強層の端部が、前記フランジ部の表面から、前記本体部の前記フランジ部の表面からの高さHの20〜50%に相当する高さhの位置にある請求項1〜4のいずれかに記載の沈埋函接合用ガスケット。
【請求項6】
前記補強層が前記フランジ部において折り返されている請求項1〜5のいずれかに記載の沈埋函接合用ガスケット。
【請求項7】
前記補強層を構成する繊維の配置角度が前記ガスケットの長手方向に対して傾斜する請求項1〜6のいずれかに記載の沈埋函接合用ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−152743(P2006−152743A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348145(P2004−348145)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】