説明

沈降炭酸マグネシウム

本発明は、水性環境においてハイドロマグネサイトを調製する方法に関するものである。本発明は、さらに特有の板様形態を特有の平均粒径と組合せて有するこのようなハイドロマグネサイトならびに紙、塗料、ゴムおよびプラスチック産業における無機物、充填剤および顔料としてのこれらの使用ならびに難燃剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性環境においてハイドロマグネサイトを調製する方法に関する。本発明は、板様形態を特有の平均粒径と組合せて有するこのようなハイドロマグネサイトならびに紙、塗料、ゴムおよびプラスチック産業における無機物、充填剤および顔料としてのこれらの使用ならびに難燃剤としての使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロマグネサイトまたはハイドロマグネサイトの標準業界名称である塩基性炭酸マグネシウムは、マグネシウムが豊富な無機物、例えば蛇紋石および変性されたマグネシウムが豊富な火成岩に見出されるだけではなく、ペリクレース大理石中のブルーサイトの変性生成物としても見出される、天然型無機物である。ハイドロマグネサイトは、以下の式を有するとして説明される:
Mg(CO(OH)・4H
ハイドロマグネサイトは、炭酸マグネシウムの非常に特有の無機形であり、針状結晶または刃形結晶の小型針様結晶またはクラストとして自然に発生することが認識されるべきである。これに加えて、ハイドロマグネサイトは炭酸マグネシウムの特徴的で独自の形であり、炭酸マグネシウムの他の形とは化学的、物理的および構造的に異なることに注目すべきである。ハイドロマグネサイトは、他の炭酸マグネシウムからX線回折分析、熱重量分析または元素分析によって容易に区別することができる。ハイドロマグネサイトとして特に記載しない限り、他のすべての形の炭酸マグネシウム(例えばアルチナイト(Mg(CO)(OH)・3HO)、ダイピング石(Mg(CO(OH)・5HO)、ギオルギオサイト(Mg(CO(OH)・5HO)、ポクロブスカイト(Mg(CO)(OH)・0.5HO)、マグネサイト(MgCO)、バリントナイト(MgCO・2HO)、ランスフォルダイト(MgCO・5HO)およびネスケホナイト(MgCO・3HO))は本発明の意味でのハイドロマグネサイトではなく、上記の式に化学的に一致しない。
【0003】
天然ハイドロマグネサイト以外に、合成ハイドロマグネサイト(または沈降炭酸マグネシウム)を調製することができる。例としてUS1,361,324、US935,418、GB548,197およびGB544,907は概して、次に塩基、例えば水酸化マグネシウムの作用によって変換されてハイドロマグネサイトを形成する、重炭酸マグネシウム(通例「Mg(HCO」と記載される。)の水溶液の形成について記載している。当分野で記載された他の方法は、水酸化マグネシウムが水と混合されて懸濁液を形成して、懸濁液が二酸化炭素および塩基性水溶液とさらに接触して対応する混合物を形成する、ハイドロマグネサイトおよび水酸化マグネシウムの両方を含有する組成物を調製することを提案している;例えばUS5,979,461を参照のこと。
【0004】
加えて、炭酸マグネシウムを調製する一般的な方法が当分野で説明されている。例えばEP0526121は、炭酸カルシウムおよび炭酸水酸化マグネシウムから成る炭酸カルシウム−マグネシウム複合体ならびにこれの調製方法について記載している。さらにGB594,262は、マグネシウムおよび炭酸カルシウムが機械的手段によって分離生成物に特殊な有用性を獲得して分離され得るように制御された炭酸化によって、それぞれの炭酸塩を別個の独立した形で得るためにマグネシア含有材料、例えば炭酸マグネシウムおよびカルシウム材料を処置する方法および装置に関する。US2007194276は、無機スラリーを還元漂泊するために、無機スラリー中に有効量のホルムアミジンスルフィン酸(FAS)および有効量のボロヒドリドを添加することを含む、無機スラリーを還元漂泊する方法について記載する。
【0005】
実際にハイドロマグネサイトは、製紙のためのコーティング、充填剤、増量剤および顔料ならびに電気ワイヤおよびケーブルの難燃剤などの各種の目的のためだけでなく、繊維の化学薬品への耐性を付与するためにも、紙、ゴムおよびプラスチック産業で大量に使用されている。例えばEP5043262、EP0393813、JP2150436、JP2255843、JP5170984、JP5098085およびKR2003/0040953は、他のマグネシウム化合物、例えばハンタイト、ドロマイトおよび/または水酸化マグネシウムと混和したハイドロマグネサイトを含む難燃性組成物について記載している。本文脈において、各種のマグネシウム化合物と組合されたハイドロマグネサイトは、難燃性および高い機械強度を提供するために樹脂組成物中に通常添加されるので、このような組成物は、電気ワイヤまたはケーブルの被覆または絶縁材料、火炎防止材料、自動車セクタ、電気器具の筺体の生産、または建築セクタなどの各種の分野の壁材料として使用することができる。
【0006】
ハイドロマグネサイトの別の用途は、ポリウレタンポリマーの固有特性に影響を及ぼすことなく、ハイドロマグネサイトを含有し、塩素への耐性を有するスパンデックス繊維に関連するWO2009/008600に記載されている。さらにWO97/09473は、ハンタイトおよびハイドロマグネサイトの無機混合物の粒子を含有するスパンデックスについて記載し、該スパンデックスは粘着性の低下および塩素誘発性分解への耐性の上昇を有すると記載している。
【0007】
加えて、他のマグネシウム化合物と組合されたハイドロマグネサイトは製紙産業において、印刷適性、高い不透明度における高い白色度だけでなく、好適な平滑度および光沢を紙製品、例えば雑誌に付与するために使用される。この点において、JP2003/293291は、原紙上に接着剤ならびに主にハンタイトおよびハイドロマグネサイトの少なくとも一方から成るコーティング層を配置することによって産生されたコート紙について記載し、得られたコート紙は、高い白色度、高い表面マスキング効果および優れた印刷適性を有する。
【0008】
ハイドロマグネサイトおよび他のマグネシウム化合物、例えば炭酸マグネシウムおよび水酸化マグネシウムは、多くの物理的特性または特徴、例えばふかし1回当りのタール送達量、燃焼速度、ふかし回数などを制御するために、喫煙用品、例えばタバコまたは葉巻の包装紙に充填剤として包含されることもできる。このような包装紙によって制御することができる喫煙用品の特に重要な側面の1つは、喫煙用品の燃焼端部からふかしの間に発生する煙である、副流煙である。しかしこのような煙は喫煙者付近の他の人々にとっては不快であり得るため、各種のマグネシウム化合物の使用を通じてこのような副流煙を減少させる試みが行われてきた。例えばUS5,092,306は、マグネサイトを充填組成物として使用する喫煙用品巻紙、および特にタバコ用紙に関する。他の例えばUS5,927,288およびUS5,979,461は、水酸化マグネシウムおよびハイドロマグネサイトの物理的混合物を使用しているが、他は、水酸化マグネシウムの量を、他のマグネシウム化合物で本ヒドロキシドを置き換えることにより減少させた組成物を開発する試みを行っている。例えばUS5,253,660は、紙充填剤が単独の、または炭酸カルシウムもしくは水酸化マグネシウムもしくは炭酸カルシウムおよび水酸化マグネシウムおよび炭素と混和された、2つの均質に混合された無機物、即ちハンタイトおよびハイドロマグネサイトから成る、タバコまたは葉巻用紙を開示している。
【0009】
しかしハイドロマグネサイトの上述の考えられる用途に関して、該当する充填剤粒子の適合性およびこれの利用分野に関して著しい制約があることに注目すべきである。製紙用途、喫煙用品での充填剤もしくはコーティングとして、および/または難燃剤として利用するための、天然源から得たまたは従来技術で記載された方法で調製したハイドロマグネサイトは通常、約5μm以上の平均粒径を有する。本文脈において、例えば喫煙用品用の包装紙は概して約30μmの範囲にあるので、ハイドロマグネサイトの喫煙用品中への包含はこのような製品の表面に所望の特性、例えば平滑性を付与しないことが多く、このため得られた製品の物理的および光学的特性が必ずしも満足の行くものでないことに注目すべきである。加えてカオリンならびに製紙用途分野での表面コーティングおよび充填剤としての使用から周知であるように、粒子の形態は、所望の光学的および物理的特性、例えば良好な印刷適性、高い不透明度での高い白色度、適度な多孔性ならびに好ましい平滑性および光沢を紙製品、例えば雑誌に付与する決定的な役割を果たす。多くの用途で粒子の板様形態は、前記特性を得るために非常に好ましい。小さい粒径を有する板様粒子の提供はとりわけ好都合である。本文脈において、ハイドロマグネサイトのより小さい粒子を得るためには、粒子の機械細砕は通常、好適および有効でない方法であることに、さらに注目すべきである。
【0010】
このため、当分野ではハイドロマグネサイトを調製するための別の方法を提供する必要がなお存在し、このような方法は単純および安価であるべきであり、特定のパラメータ、例えば得られた粒子の形態および密度と組合された粒径を制御する可能性を提供すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第1,361,324号明細書
【特許文献2】米国特許第935,418号明細書
【特許文献3】英国特許第548,197号明細書
【特許文献4】英国特許第544,907号明細書
【特許文献5】米国特許第5,979,461号明細書
【特許文献6】欧州特許第0526121号明細書
【特許文献7】英国特許第594,262号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2007194276号明細書
【特許文献9】欧州特許第0543262号明細書
【特許文献10】欧州特許第0393813号明細書
【特許文献11】特許第2150436号明細書
【特許文献12】特許第2255843号明細書
【特許文献13】特許第5170984号明細書
【特許文献14】特許第5098085号明細書
【特許文献15】韓国特許出願公開第2003/0040953号明細書
【特許文献16】国際公開第2009/008600号
【特許文献17】国際公開第97/09473号
【特許文献18】特開2003−293291号公報
【特許文献19】米国特許第5,092,306号明細書
【特許文献20】米国特許第5,927,288号明細書
【特許文献21】米国特許第5,253,660号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明の目的は、ハイドロマグネサイト、好ましくは小さくなった粒径と組合された特有の板様形態を有するハイドロマグネサイトを調製する別の方法を提供することである。本発明の別の目的は、高い絶対密度を有するハイドロマグネサイトを調製する方法の提供にある。本発明のさらなる目的は、改良された光学的特性およびとりわけ高い白色度R457を有するハイドロマグネサイトを調製する方法の提供にある。本発明のなおさらなる目的は、単純な方法で行うことができる方法の提供にある。本発明のまたさらなる目的は、穏和な条件下で行うことができる方法の提供にあり、得られたハイドロマグネサイトは、さらなる複雑でおよび費用のかかる処理段階なしに直接使用することができる。本発明のなお別の目的は、ハイドロマグネサイト材料を高い収率で調製することができる方法の提供にある。さらなる目的は、本発明の以下の説明から得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上の要求を実現するために、本明細書で請求項1に定義する主題による方法が提供される。
【0014】
本発明の方法の好都合な実施形態は、該当する従属請求項および明細書に定義されている。
【0015】
本出願の一態様により、水性環境においてハイドロマグネサイトを調製する方法が提供され、該方法は:
a)少なくとも1つの酸化マグネシウム源を提供する段階;
b)ガス状COおよび/または炭酸塩を含むアニオンを提供する段階;
c)酸化マグネシウムを少なくとも部分的に水酸化マグネシウムに変換するための、段階a)の前記酸化マグネシウム源の消和段階;
d)水酸化マグネシウムを少なくとも部分的に沈降ネスケホナイトに変換するために、段階c)の得られた水酸化マグネシウムを段階b)の前記ガス状COおよび/または炭酸塩を含むアニオンと接触させる段階;および
e)段階d)で得られた沈降ネスケホナイトを加熱老化段階で処置する段階
を含む。
【0016】
本発明者らは驚くべきことに、上記の方法がハイドロマグネサイトの効率的で制御された産生を可能にすることを見出した。本発明の方法により、板様形態ならびに粒径の縮小を有するハイドロマグネサイトを提供または直接調製することができる。より正確には、本発明者らは、前記方法によって得られるハイドロマグネサイトの形態ならびに物理値が、前記ハイドロマグネサイトの調製中に方法条件を特に制御または調整することによって改善できることを見出した。該方法は、酸化マグネシウムを調製するために使用できる、「純」酸化マグネシウム、無機物を含有する酸化マグネシウムなどの酸化マグネシウム源、またはマグネシウム化合物を含有する他の源、例えばドロマイトを消和することを包含する。さらなる方法段階で生じた水酸化マグネシウムは、ガス状二酸化炭素および/または炭酸塩を含むアニオンとの反応を受けて、沈降ネスケホナイトを中間生成物として生じる。本発明の1実施形態による炭化温度は、制御されるべきであり、好ましくは35℃より下であるべきである。最後にハイドロマグネサイトが、前記沈降中間生成物を熱処置段階により変換した後に直接得られる。このため本発明の一実施形態により、得られた沈降中間生成物はさらなる処理の前に粉砕されている。本発明の方法によって得られたハイドロマグネサイトは、複数の好都合な特徴、例えば小さい粒径を板様形態および高い絶対密度と組合せて提供する。
【0017】
本発明の目的のために、以下の用語が以下の意味を有することを理解すべきである:
「ハイドロマグネサイト」、「塩基性炭酸マグネシウム」または「炭酸水酸化マグネシウム」は本発明の意味において、化学式Mg(CO(OH)・4HOを有する、炭酸マグネシウムの合成的に調製された材料を定義する。
【0018】
「ネスケホナイト」は本発明の意味において、化学式MgCO・3HOまたはMg(HCO)(OH)・2HOを有する、炭酸マグネシウムの合成的に調製された材料を定義する。
【0019】
「沈降」という用語は本発明の意味において、化学反応の間の溶液中での固体材料の形成を指す。
【0020】
「懸濁物」または「スラリー」は本発明の意味において、不溶性固体および水ならびに場合によりさらなる添加剤を備え、通常、大量の固体を含有するため、これから形成される液体よりも粘性であり、概して高密度である。
【0021】
「消和」または「消和する」という用語は本発明の意味において、前記化合物を水または水分と接触させることによる、酸化マグネシウムの水和を指す。
【0022】
「焼成」という用語は本発明の意味において、水分の損失、還元または酸化、および炭酸塩の分解を引き起こす固体材料および該当する固体材料のオキシドを生じる他の化合物に適用される熱処置方法を指す。
【0023】
「炭酸化」という用語は本発明の意味において、少なくとも1個のヒドロキシド基が炭酸塩によって置き換えられる方法を指す。
【0024】
「加熱老化」という用語は本発明の意味において、最初により高い内部エネルギー状態を有する結晶が、より低いエネルギー状態を有する結晶中に溶解および再析することによって相変態を受ける、熱処置方法に関する。
【0025】
本発明の別の態様により、ハイドロマグネサイトが提供され、前記ハイドロマグネサイトはハイドロマグネサイトを調製するための本発明方法によって得ることができる。ハイドロマグネサイトは好ましくは、縮小した粒径ならびに改善された物理的および光学的特性と組合された板様形態を有する。さらなる態様により、本発明の方法によって得られる前記ハイドロマグネサイトは、上昇した密度を有する。別の態様により、本発明は、紙、塗料、ゴムおよびプラスチック用途における無機物、充填剤および顔料としての前記ハイドロマグネサイトの使用ならびに難燃剤としてのこれらの使用を指す。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態により、少なくとも1つの酸化マグネシウム源は、酸化マグネシウム、マグネサイト、ドロマイト、ハンタイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ブルサイトまたはこれらの混合物を含む。
【0027】
本発明の方法の別の好ましい実施形態により、ガス状COは、外部CO供給もしくはCOの再循環または両方から得られる。
【0028】
本発明の方法のまた別の好ましい実施形態により、炭酸塩を含むアニオンは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムまたはこれらの混合物から成る群より選択される。
【0029】
本発明の方法の好ましい一実施形態により、段階d)の開始温度は、5℃と35℃の間の温度に、および最も好ましくは10℃と30℃の間の温度に調整される。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態により、段階e)の加熱老化段階は、少なくとも90℃の、好ましくは90℃と150℃の範囲の温度にて、さらに好ましくは110℃と140℃の間の温度にて、なおさらに好ましくは120℃と135℃の間の温度にて、および最も好ましくは約130℃の温度にて行われる。
【0031】
本発明のまた別の実施形態により、加熱老化段階は、20分から60分の時間にわたって、好ましくは20分から40分の時間にわたって、最も好ましくは25から35分の時間にわたって行われる。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態により、段階d)で得られた沈降ネスケホナイトは、段階e)の加熱老化段階の前に粉砕される。
【0033】
本発明の別の好ましい実施形態により、粉砕後に得ることができる沈降ネスケホナイトは、少なくとも50重量%が25μm未満の、さらに好ましくは20μm未満の、なおさらに好ましくは15μm未満の、および最も好ましくは10μm未満の平均粒径を有する粒子を含む。
【0034】
本発明のまた別の実施形態により、該方法によって得ることができるハイドロマグネサイトは、10m/gから150m/gの、さらに好ましくは10m/gから100m/gの、および最も好ましくは20m/gから70m/gのBET比表面積を有する。
【0035】
本発明の好ましい一実施形態により、該方法によって得ることができるハイドロマグネサイトは、少なくとも80%の、さらに好ましくは少なくとも85%の、なおさらに好ましくは85%と99%の間の、および最も好ましくは85%と99%の間の白色度R457を有する。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態により、該方法によって得ることができるハイドロマグネサイトは、20μm未満の、好ましくは15μm未満の、さらに好ましくは10未満の、および最も好ましくは5μm未満の平均粒径d50を有する。
【0037】
本発明のまた別の実施形態により、該方法によって得ることができるハイドロマグネサイトは、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、モンタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、イソステアリン酸およびセロチン酸より選択される1つ以上の脂肪酸から成る群より好ましくは選択される脂肪酸によってさらに処置される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の方法によるハイドロマグネサイトを調製するための方法を示す簡略的なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
上記のように、改善された光学的および物理的特性を有するハイドロマグネサイトを調製するための本発明の方法は、段階a)、b)、c)、d)およびe)を含む。以下では、本発明のさらなる詳細、およびとりわけ縮小された粒径ならびに優れた光学的および物理的特性と組合された特有の形態を有する炭酸マグネシウム懸濁物を調製するための本発明の方法の上記の段階について言及される。当業者は、本明細書に記載される多くの実施形態が共に組合せできるまたは適用できることを理解する。
【0040】
段階a):酸化マグネシウム源の提供のキャラクタリゼーション
本発明の方法の段階a)により、少なくとも1つの酸化マグネシウム源が提供される。
【0041】
少なくとも1つの酸化マグネシウム源は本発明の意味において
酸化マグネシウム;および/または
酸化マグネシウムが自然に発生する材料;および/または
酸化マグネシウムに変換することができる少なくとも1つのマグネシウム化合物が発生する材料を指す。
【0042】
従って少なくとも1つの酸化マグネシウム源は、好ましくは酸化マグネシウム、酸化マグネシウム含有無機物、マグネシウム含有材料およびこれらの混合物より選択される。好ましい酸化マグネシウム源はマグネサイトおよびドロマイトであり、これには含有されたマグネシウム化合物を所望の酸化マグネシウムに変換するために焼成段階が必要である。
【0043】
少なくとも1つの酸化マグネシウム源が酸化マグネシウムから選択される場合、前記酸化マグネシウムは好ましくは、粉末の重量に基づいて95重量%を超える、およびさらに好ましくは98重量%を超える酸化マグネシウム含有率を有する粉末の形である。好ましい実施形態において、粉末の酸化マグネシウムの粒子は粒径が小さい;即ち酸化マグネシウムの粒子は、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、100μm未満のd99値および75μm未満のd95値の平均粒径を有する。
【0044】
1つの形の酸化マグネシウムが自然に発生する材料は、酸化マグネシウム含有無機物であると理解される。このような酸化マグネシウムが豊富な無機物の例は、例えばペリクレースによって示され、ペリクレースは接触変成岩中に自然に発生し、最も基本的な耐火れんがの主構成要素である。
【0045】
対照的に、酸化マグネシウムを合成によって得ることができる、即ち酸化マグネシウムに変換できる材料は、任意のマグネシウム含有材料、例えば水酸化マグネシウムおよび/または炭酸マグネシウムを含む材料であり得る。少なくとも1つの酸化マグネシウム源がマグネシウム含有材料である場合、前記材料はマグネシウム化合物をマグネシウム含有材料の相重量に基づいて、好ましくは少なくとも15重量%の、さらに好ましくは少なくとも25重量%の、および最も好ましくは少なくとも40重量%の量を含む。
【0046】
少なくとも1つの酸化マグネシウム源がマグネシウム含有材料である場合、前記材料は好ましくは、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネサイト、ブルサイト、ドロマイト、ハンタイト、塩化マグネシウムが豊富な塩水、酸化マグネシウムを得ることができる海水およびこれらの混合物より選択される。本文脈において、本発明による「炭酸マグネシウム」という用語は、無水炭酸マグネシウムならびに結晶水を含む炭酸マグネシウムの形(水和物)を含む。
【0047】
本発明により、本発明の方法の段階a)の酸化マグネシウム源は、上記の特定の無機物および/または材料に制限されない。むしろ、前記無機物および/または材料が、十分な量の酸化マグネシウムおよび/または該当する酸化マグネシウム含有無機物および/または少なくとも部分的に酸化マグネシウムに変換することができる材料もしくは無機物を含むという条件で、任意の無機物および/または材料を使用することができる。
【0048】
マグネシウム化合物の酸化マグネシウムへの前記の少なくとも部分的な変換は好ましくは、前記材料を焼成することによって行われる。前記焼成段階は、当業者に公知の任意の従来の焼成方法によって行うことができる。
【0049】
好ましい一実施形態において、少なくとも1つの酸化マグネシウム源はマグネサイト(MgCO)であり、マグネサイトは、単に無水炭酸マグネシウムのみから成る頻繁に発生する無機物である。このような材料は本発明の意味において、マグネシウム含有材料と見なされる。前記マグネサイトは好ましくは、苛性焼成マグネサイトの酸化マグネシウムを得るために約600℃から900℃の温度で焼成される。苛性焼成マグネサイトの得られた粒子は、高い多孔性を特徴とし、これの広い内面のために高い反応性を所有し、このため本発明の目的にとりわけ好適である。またはもしくは加えて、炭酸マグネシウムの他の形、例えば無水形および/もしくは結晶水を含む形の合成により調製された炭酸マグネシウムならびに/または炭酸マグネシウムの他の自然発生形も、少なくとも1つの酸化マグネシウム源を提供するために使用され得る。炭酸マグネシウムは、これらの炭酸マグネシウムを少なくとも部分的に酸化マグネシウムに変換するために、マグネサイトに適用されるのと同じ条件下で焼成され得る。
【0050】
好ましくは、得られた苛性焼成マグネサイトは、苛性焼成マグネサイトの総重量に基づいて、85重量%を超える、さらに好ましくは90重量%を超える、および最も好ましくは92重量%を超える酸化マグネシウムの含有率を有する。好ましい実施形態において、前記苛性焼成マグネサイトは、苛性焼成マグネサイトの総重量に基づいて、90重量%と99重量%の間の、および最も好ましくは92重量%と98重量%の間の酸化マグネシウムの含有率を有する。他の炭酸マグネシウムから得られた酸化マグネシウムは、酸化マグネシウムの総重量に基づいて、好ましくは90重量%を超える、例えば95重量%と99重量%の間の範囲の酸化マグネシウムの含有率を有する。
【0051】
炭酸マグネシウムの他の形から得られた苛性焼成マグネサイトおよび/または酸化マグネシウムの粒子は好ましくは、本発明の方法の段階c)で使用されるような、酸化マグネシウム源を少なくとも部分的に水酸化マグネシウムに変換するための該当する方法に包含される材料に従来用いられるような粒径分布を有する。概して、苛性焼成マグネサイト粒子および/または炭酸マグネシウムの他の形から得られた酸化マグネシウムの粒子は、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、1μmから100μmの、好ましくは5μmから50μmの、および最も好ましくは10μmから25μmの、例えば15μmと20μmの間の平均粒径d50値を有する。
【0052】
本明細書で使用する場合および当分野で概して定義されるように、d50値は、粒子質量の50%(中点)が所定の値に等しい粒径を有する粒子によって占められるサイズとして定義される。
【0053】
マグネシウム含有材料が水酸化マグネシウム高い水酸化マグネシウム含有率を含む材料である場合、前記材料は、本発明の方法の段階d)を直接受けることができる。またはもしくは加えて、前記マグネシウム含有材料は、本発明の方法の段階c)の消和を最初に受けさせることができる。
【0054】
別の好ましい実施形態において、少なくとも1つの酸化マグネシウム源はドロマイトであり、ドロマイトは単に炭酸カルシウムマグネシウム(CaMg(CO)より構成され、このためマグネシウム含有無機物に相当する。本発明の目的では、任意の利用可能な各種のドロマイトを少なくとも1つの酸化マグネシウム源として使用できる。しかし、好ましい一実施形態において、ドロマイトは比較的純粋なドロマイトに相当する白色ドロマイトであり、白色ドロマイトは例えばノルウェー産タルクのハンマーホール鉱床から入手または抽出され得る。マグネシウム化合物、即ち前記ドロマイトに含有される炭酸塩を少なくとも部分的に酸化マグネシウムに変換するために、ドロマイトは好ましくは高温にて焼成され、前記焼成段階は当業者に公知の任意の従来の焼成方法によって行うことができる。
【0055】
好ましい一実施形態において、ドロマイトは、焼成ドロマイト(MgO・CaO)を得るために、900℃と1200℃の間の温度にて、およびさらに好ましくは1000℃と1100℃の間の温度にて焼成される。またはドロマイトは、半焼成ドロマイト(MgO・CaCO)を得るために、600℃と900℃の間の、さらに好ましくは600℃と800℃の温度にて、および最も好ましくは約750℃の温度にて焼成される。化学的特徴、例えば半焼成または焼成ドロマイトの、即ち得られた酸化マグネシウムの反応性は主に、当業者に周知である、使用される温度および焼成方法に依存する。例としてドロマイトが焼成ドロマイトを得るために1000℃から1100℃の範囲の温度で焼成される場合、前記温度は好ましくは30分から120分の間の時間にわたって、および最も好ましくは45分から90分の間の時間にわたって、例えば約60分にわたって維持される。
【0056】
焼成方法を受けたドロマイトは好ましくは、焼成または半焼成ドロマイトを得るために該当する焼成方法に包含される材料に従来用いられるサイズ分布を有する。本文脈において、ドロマイトならびに他のマグネシウム含有材料、例えば本発明により少なくとも1つの酸化マグネシウム源として使用されるマグネサイトは通常、各種のサイズの岩または粒の形であることに注目すべきである。十分に高い反応性および/または十分な比表面積を有する十分な量の酸化マグネシウムを得るために、前記岩および/または粒は好ましくは、焼成前記マグネシウムが豊富な材料を焼成する前に機械処理段階によって細砕されて、元の粒度が縮小される。細砕の結果として、得られた粒子の平均粒度は好ましくは1mmから250mmの範囲、好ましくは1mmから150mmの範囲、なおさらに好ましくは1mmから100mmの範囲、および最も好ましくは1mmから75mmの範囲にある。好ましい一実施形態において、前記粒子は好ましくはRetsch(登録商標)(ドイツ)による分析試験用ふるいでスクリーニングして、選択されたサイズ範囲の質量画分を決定することによって測定されるように、10mmと50mmの間の範囲の平均粒度を有する。
【0057】
このような細砕段階は例えば、精製が2次体との衝突から主に生じるような条件下で、即ち縦型ビーズミル、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロール粉砕機、遠心分離インパクトミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダ、デクランパ(de−clumper)、ナイフカッター、もしくは当業者に公知の他の装置の1つ以上で行われ得るか、または自己粉砕が起こるような条件下で行われ得る。好ましい一実施形態において、このような細砕段階は、ボールミルを使用してドロマイトの岩および粒を粉砕することによって行われる。
【0058】
マグネシウム含有材料が焼成され、続いて本発明の方法の段階c)の該当する酸化マグネシウム源として使用される場合、前記細砕段階はまたはもしくは加えて、前記マグネシウム含有材料が焼成された後に、即ち本発明の方法の段階c)の前に行われ得る。酸化マグネシウムおよび/または酸化マグネシウム含有無機物が少なくとも1つの酸化マグネシウム源として使用される場合、このような細砕段階は本発明の方法の段階c)の前も実行され得る。本発明の方法の段階c)の前のこのような細砕は好ましくは、広すぎると見なされる酸化マグネシウム源の粒径分布が存在する場合および/または酸化マグネシウム源の中間直径が150μm超である場合に行われる。従って、本発明の方法の段階c)で使用される酸化マグネシウム源の粒子は、フランス、オルレアン、CILASの機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、好ましくは1μmから150μmの、さらに好ましくは5μmから100μmの、および最も好ましくは10μmから75μmの平均粒径d50値である。
【0059】
段階b):ガス状COおよび/または炭酸塩を含むアニオンを提供することのキャラクタリゼーション
本発明の方法の段階b)により、ガス状COおよび/または炭酸塩を含むアニオンが提供される。
【0060】
段階b)で提供された二酸化炭素は、ガス状COの任意の形、例えば二酸化炭素、ガスまたはカルボン酸を含有する二酸化炭素、即ち水に溶解した二酸化炭素であり得る。
【0061】
好ましい一実施形態において、ガス状COは同じ方法の段階a)で提供された各種の酸化マグネシウム源を焼成することによって得られたガス状排出物から得られ、即ちガス状二酸化炭素はCOの再循環によって供給される。このような源、例えばマグネサイトの形の例えば炭酸マグネシウムを焼成することによって、焼成方法中の温度の上昇は、方法中に放出される二酸化炭素ガスの量を増加させる。好ましくは、得られた酸化マグネシウム二酸化炭素と同様の水分を吸収する親和性を有するため、発生した二酸化炭素は反応容器から排出され、前記化合物は炭酸マグネシウムに戻る反応を受ける。このようなガスはおよそ5体積%から40体積%のCOを含有し、好ましくは精製、場合によりガス状排出物の精製、場合により濃度上昇または希釈の後に使用される。
【0062】
加えてもしくはまたは、二酸化炭素は外部源から、例えば鋼製シリンダーからまたは炉および窯を使用する工業方法の排煙および/もしくは排ガスからならびに/または炭酸塩の酸との好適な反応などから供給することができる。しかし、本発明の方法の段階b)で供給された二酸化炭素源は、前記源が反応性ガスを含有しないという条件で、特に限定されないことに注目すべきである。
【0063】
段階b)のガス状二酸化炭素は、濃縮形または希釈形で提供され得る。ガス状二酸化炭素が希釈形で提供される場合、二酸化炭素は好ましくは空気などと混和されて提供され得る。
【0064】
この場合、本発明の方法の段階b)で提供されるガス状二酸化炭素は体積に関して、ガス状組成物の総体積に基づいて、例えば空気中で40体積%未満の、さらに好ましくは35体積%未満のおよび最も好ましくは10体積%と30体積%の間の濃度を有する。二酸化炭素源中の二酸化炭素の最低含有率は、ガス状組成物の総体積に基づいて約8体積%であり得る。
【0065】
加えてもしくはまたは、炭酸塩を含むアニオンは、本発明の方法の段階b)で提供される。段階b)の炭酸塩を含むアニオンは、水に溶解性である、即ち水に溶解して均質溶液を形成する炭酸塩の任意の形で提供され得る。好ましい一実施形態において、炭酸塩を含むアニオンは、脱イオン水と混合されたときに、20℃にて50g/lを超える、好ましくは20℃にて100g/lを超える、さらに好ましくは20℃にて150g/lを超える、および最も好ましくは20℃にて200g/lを超える溶解度を提供する炭酸塩を指す。
【0066】
従って、段階b)の炭酸塩を含むアニオンは好ましくは、炭酸アルカリおよび/または炭酸水素アルカリを含む群より選択され、炭酸アルカリおよび/または炭酸水素アルカリのアルカリイオンは、ナトリウム、カリウムおよびこれらの混合物より選択される。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムおよびこれらの混合物は、本発明の方法の段階b)の好ましい炭酸塩を含むアニオンである。好ましい一実施形態において、炭酸塩を含むアニオンは炭酸ナトリウムである。
【0067】
本発明の文脈では、「炭酸ナトリウム」という用語は、無水形のならびに結晶水(水和物)を含む形の炭酸ナトリウムを含むものとする。好ましい一実施形態において、本発明の炭酸ナトリウムは、無水炭酸ナトリウム(NaCO)または炭酸ナトリウム10水和物(NaCO・10HO)である。
【0068】
「炭酸カリウム」という用語は、無水形のならびに結晶水(水和物)を含む形の炭酸カリウムも指す。好ましくは、本発明の炭酸カリウムは無水炭酸カリウム(KCO)である。
【0069】
本発明の文脈では、「炭酸水素ナトリウム」という用語は、無水形のならびに結晶水(水和物)結晶水(水和物)を含む形の炭酸水素ナトリウムを含むものとする。好ましくは、本発明の炭酸水素ナトリウムは、無水炭酸水素ナトリウム(NaHCO)である。
【0070】
本発明の文脈では、「炭酸水素カリウム」という用語は、無水形のならびに結晶水(水和物)結晶水(水和物)を含む形の炭酸水素カリウムも含むものとする。好ましくは本発明の水素カリウムは、無水炭酸水素カリウム(KHCO)である。
【0071】
炭酸塩を含むアニオンが本発明の方法の段階b)で提供される場合、前記炭酸塩を含むアニオンは任意の適切な固体形で、例えば顆粒または粉末の形で提供することができる。または前記炭酸塩を含むアニオンは、懸濁物または溶液の形で提供することができる。
【0072】
段階c):段階a)の前記酸化マグネシウム源の消化のキャラクタリゼーション
本発明の方法の段階c)により、段階a)の前記少なくとも1つの酸化マグネシウム源は消和されて、酸化マグネシウムの少なくとも一部が水酸化マグネシウムに変換される。
【0073】
「消和」は本発明の意味において、酸化マグネシウムが水和される方法を指す。このため「消和」という用語は、酸化マグネシウムに水を添加して水酸化マグネシウムを産生する方法を指す。従って、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源の酸化マグネシウムの粒子は消和方法にて水和され、水和は少なくとも1つの酸化マグネシウム源の酸化マグネシウムを水と接触させることによって行われる。本発明の方法により、酸化マグネシウムは少なくとも部分的に水酸化マグネシウムに変換される。
【0074】
段階c)の消和方法で使用される水は、利用可能な任意の水、例えば水道水および/または脱イオン水であり得る。好ましくは、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源を消和するために使用される水は、水道水である。
【0075】
本発明の好ましい一実施形態において、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源を1回の分量でおよび/または連続して1時間以下の時間にわたって、好ましくは45分以下の時間、さらに好ましくは30分以下の時間にわたって、および最も好ましくは15分以下の時間にわたって添加して、生じた懸濁物における好適な固体含有率を得るまたは提供する。別の好ましい実施形態において、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源を水に10分以下の時間にわたって、生じる懸濁物における好適な固体含有率まで添加する。本発明のさらに好ましい実施形態において、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源を水に、生じる添加物における好適な固体含有率まで数回の分量で、好ましくは2から5回の分量で、さらに好ましくは2から4回の分量で、なおさらに好ましくは2から3回の分量で、および最も好ましくは2回の分量で添加する。
【0076】
段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源を水に数回に分けて添加する場合、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源を好ましくはほぼ等しい分量で水に添加する。別法として、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源を等しくない分量で、即ち多い分量と少ない分量で水に添加することも可能である。好ましい一実施形態において、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源を消和または水和するために、生じる懸濁物に少なくとも1つの酸化マグネシウム源のより多い分量を先に添加して、続いて少なくとも1つの酸化マグネシウム源のより少ない分量を添加する。別の好ましい実施形態において、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源を少なくとも部分的に水酸化マグネシウムに変換するために、水に段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源のより少ない分量を先に添加して、続いてより多い分量を添加する。
【0077】
段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源の水に対する比は好ましくは、懸濁物が十分なまたは好適な粘度を生じるような方法で調整される。好ましい一実施形態において、かなりの過剰な水が使用されるので、懸濁物における水の少なくとも1つの酸化マグネシウム源に対する比は、比(水の体積):(少なくとも1つの酸化マグネシウム源の比)が40:1から3:1、さらに好ましくは30:1から3:1、および最も好ましくは20:1から3:1のようになる。例えば少なくとも1つの酸化マグネシウム源が苛性焼成マグネサイトより選択される場合、懸濁物における水の苛性焼成マグネサイトに対する比は、比(水の体積):(苛性焼成マグネサイトの比)が40:1から5:1、さらに好ましくは30:1から10:1および最も好ましくは20:1から15:1のようであり得る。段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源が焼成ドロマイトより選択される場合、懸濁物における水の焼成ドロマイトの比は、比(水の体積):(焼成ドロマイトの体積)が30:1から3:1、さらに好ましくは20:1から3:1、および最も好ましくは10:1から3:1のようであり得る。別の好ましい実施形態において、水および段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源を含む生じる水性懸濁物は、懸濁物の総重量に基づいて、1重量%から20重量%の、および最も好ましくは1.5重量%から17.5重量%の固体含有率を有する。
【0078】
好ましい一実施形態において、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源がより高い酸化マグネシウム含有率を有する場合、前記懸濁物はより低い固体含有率を有する。「高い含有率」という用語は本発明の意味において、酸化マグネシウム源の無水総重量に基づいて少なくとも70重量%の該当する酸化マグネシウム源において、酸化マグネシウムに変換することができる酸化マグネシウムまたはマグネシウム化合物の量を指す。例えば、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が酸化マグネシウムおよび/または高い含有率の酸化マグネシウムを有する酸化マグネシウム含有無機物および/または酸化マグネシウムに変換することができる高い含有率のマグネシウム化合物を有するマグネシウム含有材料である場合、懸濁物における固体含有率は、懸濁物の総重量に基づいて、1重量%と15重量%の間の範囲に、さらに好ましくは1.5重量%と12.5重量%の間の範囲に、および最も好ましくは2重量%と10重量%の間の範囲にあり得る。段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が酸化マグネシウム、ペリクレース、マグネサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムおよびこれらの混合物より選択される場合、このような固体含有率は好ましくは調整される。例として、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が焼成マグネサイトによって得られた苛性焼成マグネサイトである場合、懸濁物における固体含有率は、懸濁物の総重量に基づいて、好ましくは1重量%と12.5重量%の間の範囲の、さらに好ましくは1.5重量%と10重量%の間の範囲の、なおさらに好ましくは2重量%と7.5重量%の間の範囲の、および最も好ましくは4重量%と6重量%の間の範囲の、例えば4.5重量%と5.5重量%の間の範囲にある。
【0079】
別の好ましい実施形態において、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源がより低い酸化マグネシウム含有率を有する場合、前記懸濁物はより高い固体含有率を有する。「低い含有率」という用語は本発明の意味において、酸化マグネシウム源の無水総重量に基づいて70重量%未満の該当する酸化マグネシウムにおいて、酸化マグネシウムに変化することができる酸化マグネシウムまたはマグネシウム化合物の量を指す。例えば、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が低い含有率の酸化マグネシウムを有する酸化マグネシウム含有無機物および/または酸化マグネシウムに変換することができる低い含有率のマグネシウム化合物を有するマグネシウム含有材料である場合、懸濁物における固体含有率は、懸濁物の総重量に基づいて、10重量%と20重量%の間の範囲に、さらに好ましくは10重量%と17.5重量%の間の範囲に、および最も好ましくは12.5重量%と17.5重量%の間の範囲にあり得る。段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源がドロマイト、ハンタイトおよびこれらの混合物より選択される場合、このような固体含有率は好ましくは調整される。例えば段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が焼成ドロマイトを焼成することにより得られた焼成ドロマイトである場合、懸濁物における固体含有率は、懸濁物の総重量に基づいて、好ましくは10重量%と20重量%の間の範囲に、さらに好ましくは12.5重量%と17.5重量%の間の範囲に、および最も好ましくは15重量%と17.5重量%の間の範囲に、例えば16重量%と17重量%の間の範囲にある。
【0080】
装置および現場の条件に応じて、高い比表面を有する水酸化マグネシウムの小型粒子を提供するために、および加えてもしくはまたは十分な反応速度を得るために、消和方法は好ましくは高温を有する水を用いて行われる。さらに流入する水の温度が消和方法を行うために必要な時間に逆の影響を及ぼし得るので、少なくとも1つの酸化マグネシウム源の冷水との接触は好ましくは回避すべきである。冷水および酸化マグネシウムが接触する場合、「溺水(drowning)」と呼ばれる状態が発生し得て、非常に粗粒であり、あまり反応性でない水酸化マグネシウムの粒子を生じる。ゆえに消和方法で使用される水の温度は好ましくは室温より高いが、水の沸点よりは低いべきである。
【0081】
好ましい一実施形態において、前記段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源を消和するために反応容器に添加される水の温度は、好ましくは20℃と90℃の間の範囲に、さらに好ましくは30℃と60℃の間の範囲に、および最も好ましくは35℃と55℃の間の範囲に、例えば40℃または50℃にある。
【0082】
例えば、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が焼成マグネサイトを焼成することによって得られた苛性焼成マグネサイトである場合、前記温度は好ましくは20℃と45℃の間の範囲に、さらに好ましくは25℃と45℃の間の範囲に、および最も好ましくは35℃と45℃の間の範囲に、例えば約40℃にある。段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が、焼成ドロマイトを焼成することによって得られた焼成ドロマイトである場合、前記温度は好ましくは35℃と60℃の間の範囲に、さらに好ましくは40℃と55℃の間の範囲に、および最も好ましくは45℃と55℃の間の範囲に、例えば約50℃にある。
【0083】
消和方法の間に、反応容器中の温度は水温の変動、酸化マグネシウム反応性、および水の品質のために変動し、このため懸濁物の温度は頻繁に調整され得る。好ましくは温度は連続的に制御される。または温度は反復して制御され得る。別の好ましい実施形態において、懸濁物の温度は、本発明の方法の段階c)が行われている間には調整されない。
【0084】
好ましい一実施形態において、段階c)の消和方法は懸濁物の撹拌によって行われる。この点において、撹拌は連続的にまたは不連続的に行うことができる。しかし消和方法の撹拌の程度は得られた水酸化マグネシウムに影響を有し得るため、懸濁物は好ましくは連続的に撹拌される。この点において、撹拌が少なすぎると、懸濁物内に不均一な温度が生じ得て、高温および低温スポットが生じる。このような不均一な温度は大きいサイズの結晶および表面積の縮小および粒子の凝集を生じ得るが、低温スポットは溺水またはより大量の酸化マグネシウムの非水和粒子のどちらかを生じる。
【0085】
本発明の方法の段階c)の消和方法は好ましくは、少なくとも1つの酸化マグネシウム源に含有された酸化マグネシウムの少なくとも一部がこのそれぞれのヒドロキシド、即ち水酸化マグネシウムに変換される時点まで行う。この点において、少なくとも1つの酸化マグネシウム源に含有された酸化マグネシウムの一部のみが、段階c)の消和方法の間にそれぞれの水酸化マグネシウムに変換されることに注目すべきである。例えば少なくとも1つの酸化マグネシウム源を約40℃の温度を有する消和水と15分間接触させる場合、水酸化マグネシウムに変換された酸化マグネシウムの量は、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムの総重量に基づいて、5重量%と15重量%の間の範囲に、例えば約10重量%にあり、即ち酸化マグネシウム含有率は85重量%と95重量%の間の範囲に、例えば約90重量%にある。対照的に少なくとも1つの酸化マグネシウム源を約40℃の温度を有する消和水と30分間接触させる場合、水酸化マグネシウムに変換された酸化マグネシウムの量は、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムの総重量に基づいて、15重量%と25重量%の間の範囲に、例えば約20重量%にあり、即ち酸化マグネシウム含有率は75重量%と85重量%の間の範囲に、例えば約80重量%にある。
【0086】
段階a)の前記酸化マグネシウム源を40℃の水温および30分の消和時間にて消和することによって得られた少なくとも1つの酸化マグネシウム源および水酸化マグネシウムの混合物は、好ましくは10:1から2:1の、さらに好ましくは8:1から3:1の、および最も好ましくは6:1から3:1の比(酸化マグネシウムの重量):(水酸化マグネシウムの重量)を有し得る。本文脈において、得られた水酸化マグネシウムの、段階b)のガス状二酸化炭素および/または炭酸塩を含むアニオンとの変換または反応の後に、混合物中の段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源のさらなる酸化マグネシウムを水酸化マグネシウムに変換して、次に該水酸化マグネシウムも二酸化炭素および/または炭酸塩を含むアニオンと反応させられることに注目すべきである。言い換えれば、本発明の方法が酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウム(部分消和反応によって得られ得る。)の混合物を用いて行うことができるのは、開始混合物にすでに含有されていた水酸化マグネシウムが段階b)のガス状二酸化炭素および/または炭酸塩を含むアニオンと反応した後に、残存する酸化マグネシウムが水酸化マグネシウムに引き続き変換されるためである。段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源は、本発明の段階c)の消和を行うために水中に、数回に分けておよび/または本発明の方法を行うために所望の時間にわたって連続的におよび/または生じる生成物の所望の量が得られるまで添加され得る。前記方法において、水の量は、本発明の方法を行うのに好適な固体含有率および/または粘度を得るために頻繁に調整され得る。
【0087】
低い含有率の酸化マグネシウムを有する酸化マグネシウム含有無機物および/または酸化マグネシウムに変換することができる低い含有率のマグネシウム化合物を有するマグネシウム含有材料が、段階a)で提供される酸化マグネシウム源として使用される場合、前記無機物および/または材料は通常、酸化マグネシウム源の無水総重量に基づいて、70重量%未満の酸化マグネシウムおよび/または酸化マグネシウムに変換することができるマグネシウム化合物の含有率を備え;即ち元の材料が他の化合物、例えばアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の炭酸塩、酸化物、水酸化物などをさらに含むことに注目すべきである。
【0088】
例えば段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源がドロマイトである場合、前記無機物は炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウムのみから成る。しかしドロマイトの天然生成物は、特定の化合物に関する様々な組成だけではなく、広範な範囲で発生する前記マグネシウムおよび炭酸カルシウムの比に関しても様々な組成を有する。自然発生ドロマイトにおける炭酸マグネシウムの炭酸カルシウムに対する比は通常、比(炭酸マグネシウムの重量):(炭酸カルシウムの重量)が2:1から1:2、さらに好ましくは1.5:1から1:1.5、および最も好ましくは約1:1のようになっている。
【0089】
このためドロマイトを段階a)の酸化マグネシウム源として使用することにより、段階c)の消和の前に行われる焼成段階は、炭酸マグネシウムの酸化マグネシウムへの変換を生じるだけでなく、使用されたドロマイトに応じた該当する比での炭酸カルシウムの酸化カルシウムへの変換の変換も生じる。得られた酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムのこのような混合物が段階c)によって消和される場合、前記消和は酸化マグネシウムを少なくとも部分的に水酸化マグネシウムに変換し、これに加えて酸化カルシウムはほぼ完全に水酸化カルシウムに変換される;即ち本発明の方法の段階c)の焼成ドロマイトを消和することにより、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムを含む混合物が得られる。「ほぼ完全に変換された」という用語は本発明の意味において、化合物の少なくとも99重量%、さらに好ましくは少なくとも99.2重量%、および最も好ましくは少なくとも99.5重量%がそれぞれの反応生成物に変換される反応を指す。例えば酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムが段階c)によって消和される場合、前記消和は、酸化カルシウムの無水総重量に基づいて、酸化カルシウムの少なくとも99重量%、さらに好ましくは少なくとも99.2重量%、および最も好ましくは少なくとも99.5重量%を水酸化カルシウムに変換するが、酸化マグネシウムは部分的にのみ水酸化マグネシウムに変換される。
【0090】
段階c)の消和方法を行うのに必要とされる時間は、本発明の方法の段階d)を行うための少なくとも1つの酸化マグネシウム源の水和/消和によって十分な量の水酸化マグネシウムを得るのに必要とされる時間である。本時間は、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源に主に依存する。
【0091】
好ましい実施形態において、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源は、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源が、酸化マグネシウムおよび/または高い含有率の酸化マグネシウムを有する酸化マグネシウム含有無機物および/または酸化マグネシウムに変換することができる高い含有率のマグネシウム化合物を有するマグネシウム含有材料の形である場合、より短い時間にわたって消和される。前記時間は好ましくは、5分から30分の間の範囲、さらに好ましくは5分から20分の間の範囲、および最も好ましくは10分から20分の間の範囲である。このようなより短い時間は好ましくは、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が酸化マグネシウム、ペリクレース、マグネサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムおよびこれらの混合物より選択される場合に消和段階に適用される例として、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が焼成マグネサイトによって得られた苛性焼成マグネサイトである場合、前記時間は好ましくは、10分から30分の間の範囲、さらに好ましくは10分から25分の間の範囲、および最も好ましくは10分から20分の間の範囲、例えば約15分である。
【0092】
別の好ましい実施形態において、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源は、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が、低い含有率の酸化マグネシウムを有する酸化マグネシウム含有無機物および/または酸化マグネシウムに変換することができる低い含有率のマグネシウム化合物を有するマグネシウム含有材料である場合、より長い時間にわたって消和される。前記時間は好ましくは、5分から60分の間の範囲、さらに好ましくは10分から45分の間の範囲、および最も好ましくは20分から40分の間の範囲である。このようなより長い時間は好ましくは、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が、ドロマイト、ハンタイトおよびこれらの混合物より選択される場合に適用される。例えば、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が焼成ドロマイトによって得られた焼成ドロマイトである場合、前記時間は好ましくは15分と50分の間の範囲、さらに好ましくは15分と45分の間の範囲、および最も好ましくは25分と40分の間の範囲、例えば約30分である。
【0093】
本発明の段階c)を行った後に、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムの得られた混合物は、段階d)を行うために好適な懸濁物に形成される。本懸濁物の固体総含有率は好ましくは、段階c)で得られた懸濁物の総重量に基づいて、1重量%と20重量%の間の範囲に、さらに好ましくは1重量%と15重量%の間の範囲に、および最も好ましくは2重量%と10重量%の間の範囲にある。例えば水酸化マグネシウムが少なくとも1つの酸化マグネシウム源としてのマグネサイトから得られる場合、懸濁物の前記固体総含有率は、段階c)で得られた懸濁物の総重量に基づいて、好ましくは2重量%と8重量%の間の範囲、さらに好ましくは3重量%と7重量%の間の範囲、および最も好ましくは4重量%と6重量%の間の範囲、例えば約5重量%である。水酸化マグネシウムが少なくとも1つの酸化マグネシウム源としてのドロマイトから得られる場合、懸濁物の前記固体総含有率は、段階c)で得られた懸濁物の総重量に基づいて、好ましくは5重量%と10重量%の間の範囲、さらに好ましくは6重量%と10重量%の間の範囲、および最も好ましくは7重量%と9重量%の間の範囲、例えば約8重量%である。
【0094】
加えてもしくはまたは、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを含む得られた懸濁物は、LV−3スピンドルを装備したBrookfield DV−II粘度計によって100rpmの速度にて測定されるように、好ましくは1.000mPa・s未満の、およびさらに好ましくは100mPa・s未満の粘度を有する。得られた懸濁物が所望の範囲より上もしくは下の固体含有率を有するおよび/または前記懸濁物の粘度が高すぎるもしくは低すぎる場合、さらなる方法段階のための前記所望の固体含有率および/または粘度の懸濁物を得るために、懸濁物は水によって希釈され得る、または当業者に公知の任意の従来の方法によって高濃度化され得る。
【0095】
水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを含む得られた懸濁物は、本明細書で下の実施例部に記載する測定方法に従って測定されるように、好ましくは8を超える、さらに好ましくは9を超える、および最も好ましくは10を超えるpHを有する。
【0096】
段階d):得られた水酸化マグネシウムを前記ガス状COおよび/または炭酸塩を含むアニオンと接触させることのキャラクタリゼーション
本発明の方法の段階d)により、段階c)の前記得られた水酸化マグネシウムを段階b)の前記ガス状二酸化炭素および/または炭酸塩を含むアニオンと接触させて、少なくとも一部の水酸化マグネシウムを沈降ネスケホナイトに変換する。
【0097】
水酸化マグネシウムは好ましくは懸濁物の形であり、水、水酸化マグネシウム、未処置酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウム懸濁物に通常関連する不純物、例えばシリカ、酸化カルシウム、水酸化カルシウムおよび他のマグネシウム化合物、例えば炭酸マグネシウムなどから成る。
【0098】
好ましい実施形態において、前記懸濁物は、懸濁物の総重量に基づいて、最大で20重量%の、好ましくは最大で15重量%の、さらに好ましくは最大で10重量%の、および最も好ましくは1重量%と8.5重量%の間の固体総含有率を有する。
【0099】
水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを含む懸濁物が少なくとも1つの酸化マグネシウム源としてのマグネサイトから得られる場合、前記懸濁物の固体含有率は段階c)で得られた懸濁物の総重量に基づいて、好ましくは2重量%と8重量%の間の範囲に、さらに好ましくは3重量%と7重量%の間の範囲に、および最も好ましくは4重量%と6重量%の間の範囲に、例えば4.5重量%と5.5重量%の間の範囲にある。水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを含む懸濁物が段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源としてのドロマイトから得られる場合、前記懸濁物中の水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムの固体含有率は段階c)で得られた懸濁物の総重量に基づいて、好ましくは1重量%と10重量%の間の範囲に、さらに好ましくは2.5重量%と5重量%の間の範囲に、および最も好ましくは3重量%と5重量%の間の範囲に、例えば3.5重量%と4.5重量%の間の範囲にある。
【0100】
好ましい一実施形態において、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源としてのドロマイトの消和によって得られた前記懸濁物は、さらに水酸化カルシウムを含む。この場合、懸濁物中の水酸化カルシウムの固体含有率は段階c)で得られた懸濁物の総重量に基づいて、好ましくは1重量%と10重量%の間の範囲に、さらに好ましくは2.5重量%と5重量%の間の範囲に、および最も好ましくは3重量%と5重量%の間の範囲に、例えば3.5重量%と4.5重量%の間の範囲にある。別の好ましい実施形態において、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムを含む前記懸濁物の固体含有率は段階c)で得られた懸濁物の総重量に基づいて、好ましくは2重量%と20重量%の間の範囲に、さらに好ましくは2重量%と10重量%の間の範囲に、なおさらに好ましくは5重量%と10重量%の間の範囲に、および最も好ましくは6重量%と10重量%の間の範囲に、例えば7重量%と9重量%の間の範囲にある。
【0101】
加えてもしくはまたは、本発明の方法の段階c)において少なくとも1つの酸化マグネシウム源としての焼成ドロマイトの消和によって得られた懸濁物中の酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムの水酸化カルシウムに対する比は、広い範囲で変動し得る。しかし、段階c)の懸濁物が段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源としての焼成ドロマイトから得られる場合、得られた懸濁物中の酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムの水酸化カルシウムに対する比は、好ましくは比(酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムの重量):(水酸化カルシウムの重量)は2:1から1:2、さらに好ましくは1.5:1から1:1.5および最も好ましくは約1:1のようになっている。
【0102】
任意の実施形態において、懸濁物中の水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムの得られた混合物の粒子は、これの粒径によってまたは不純物から方法段階d)の前に分離され得る。好ましくは、水酸化マグネシウムは300μmを超える粒径を有する粒子からおよびさらに好ましくは200μmを超える粒径を有する粒子から、当業者に公知の分離技法によって、例えば振動ふるいなどによって分離される。
【0103】
段階d)は、提供された水酸化マグネシウムの少なくとも一部が結晶性炭酸マグネシウム沈降物(沈降炭酸マグネシウム)に変換されるまで、段階c)で得られた水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムの懸濁物を段階b)で提供された十分なガス状COおよび/または炭酸塩を含むアニオンと接触させることを包含する。本文脈において、前記結晶性炭酸マグネシウム沈降物の形成が懸濁物中に残存する酸化マグネシウムの水酸化マグネシウムに変換され、該水酸化マグネシウムは、得られた水酸化マグネシウムを段階b)で提供された十分なガス状COおよび/または炭酸塩を含むアニオンと接触させることによって前記結晶性炭酸マグネシウム沈降物にさらに変換され得ることに注目すべきである。炭酸化は実質的にすべてのマグネシウムが沈降するまで継続するので、懸濁物はほぼ完全に結晶性炭酸マグネシウム沈降物から構成されている。前記結晶性炭酸マグネシウム沈降物は、式Mg(HCO)(OH)・2HOを有するネスケホナイトとして特徴付けられ、MgCO・3HOとも記載され得る。得られた沈降ネスケホナイト結晶は、ネスケホナイトに典型的である細角柱型である。
【0104】
段階c)で得られた水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを含む懸濁物を段階b)の前記ガス状COを接触させるために、ガスは好ましくは懸濁物にバブリングされる。ガス状COを懸濁物にバブリングすることによって、懸濁物中のガス流により十分な混合が達成され得るので、追加の撹拌は必要ない。加えてもしくはまたは、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを含む懸濁物は撹拌され、より完全な混合、および、このため水酸化マグネシウムの炭酸マグネシウムへの変換、即ち沈降ネスケホナイトを完了するためのより短い時間が提供され得る。好ましい実施形態において、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを含む懸濁物は、未反応水酸化マグネシウム粒子を前記COと接触させるように十分な量の粒子を提供するために、粒子が完全に混合されるようにさらに撹拌される。このような撹拌は、混合が水酸化マグネシウムの炭酸マグネシウムへの十分な変換を提供する限り、連続的にまたは不連続的に行うことができる。好ましい一実施形態において、懸濁物は好ましくは連続的に撹拌される。
【0105】
好ましい一実施形態において、前記ガス状COは好ましくは、二酸化炭素を懸濁物中に一定速度でバブリングすることによって、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを含む懸濁物に懸濁される。前記速度は好ましくは、酸化マグネシウム1kgに付き0.1と10kgCO/時間の間の範囲に、さらに好ましくは酸化マグネシウム1kgに付き0.2と5kgCO/時間の間の範囲に、および最も好ましくは酸化マグネシウム1kgに付き0.5と2kgCO/時間の間の範囲にある。
【0106】
好ましくは、水性懸濁物中の水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを含む懸濁物のガス状COに対する比、体積比は、(懸濁物の体積):(ガス状COの体積)は1:0.5から1:10、およびさらに好ましくは1:0.5から1:5のようになる。好ましい一実施形態において、懸濁物中の水酸化マグネシウムのガス状COに対する比、体積比は、(水酸化マグネシウムの体積):(ガス状COの体積)は、1:2から1:100、およびさらに好ましくは1:5から1:50のようになる。
【0107】
好ましい一実施形態において、炭酸化;即ち水酸化マグネシウムの変換は、反応の進行または完了を制御するために、オフガス中のpH値および/または導電率および/または温度および/またはCO含有率の変化によって追跡される。
【0108】
例として、前記結晶性炭酸マグネシウム沈降物が段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源としての苛性焼成マグネサイトから得られる場合、本発明の方法の段階d)の前の酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムを含む懸濁物のpHは、好ましくはpH10と12の間の範囲、およそ約pH11である。好ましい一実施形態において、前記懸濁物のpHは、段階d)を行った後に得られた懸濁物が7と8の間の、およそpH7.5と8の範囲のpHを有するように、段階c)の得られた水酸化マグネシウムと段階b)の前記ガス状COとの接触の間に低下する。
【0109】
対照的に、前記結晶性炭酸マグネシウム沈降物が段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源としての焼成ドロマイトから得られる場合、本発明の方法の段階d)の前の酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムを含む懸濁物のpHは、好ましくはpH11超、およそ約pH12である。好ましい一実施形態において、前記懸濁物のpHは、方法段階d)を行った後に得られた懸濁物が7と8の間の、およそpH7.5と8の範囲のpHを有するように、段階c)の得られた水酸化マグネシウムと段階b)の前記ガス状COとの接触の間に低下する。
【0110】
本発明の段階d)の始めに提供される温度は、用いられる温度が特定の範囲内で変動し得ても、生じる沈降ネスケホナイトの形成またはこれの特性の制御にとって決定的である。例えば、段階d)で提供される炭酸化段階の開始温度は、5℃から35℃の間の範囲、および最も好ましくは10℃から30℃の間の範囲の温度に調整され得る。
【0111】
懸濁物の温度は、段階d)が開始される間に好ましくは前記開始温度で制御および維持される。この点において、前記方法段階の間の「温度が維持される」という用語は本発明の意味において、好ましくは5℃を超えて開始温度を超過しない温度に関し;即ち開始温度が例えば25℃の温度に調整される場合、方法段階中の温度は30℃を超過し得ないことに注目すべきである。例えば段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が焼成マグネサイトによって得られた苛性焼成マグネサイトである場合、方法段階d)の始めの前記開始温度は、好ましくは20℃と28℃の間の範囲に、および最も好ましくは24℃と26℃の間の範囲にある。段階d)が行われる間に、温度は好ましくは20℃と25℃の間で制御および維持される。別の例として、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が焼成ドロマイトによって得られた焼成ドロマイトである場合、方法段階d)の開始時の前記開始温度は、好ましくは20℃と28℃の間の範囲に、および最も好ましくは24℃と26℃の間の範囲にある。段階d)が行われる間に、温度は好ましくは20℃と30℃の間で制御および維持される。
【0112】
別の好ましい実施形態において、方法段階d)の開始温度は、段階d)が行われる間に上昇させられる。しかし発熱反応のために、反応混合物の温度は、50℃以上の温度に上昇し得る。方法の本実施形態での最高温度は、好ましくは50℃以下であり、および最も好ましくは段階d)の間に達する最高温度は約45℃以下である。段階d)が行われる間に温度が上昇される場合、調整された開始温度は好ましくは5℃と15℃の間の範囲にある。このような設定は好ましくは、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源がドロマイト、ハンタイトおよびこれらの混合物より選択される場合に適用される。例えば段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源が焼成ドロマイトによって得られた焼成ドロマイトである場合、本発明の方法の段階d)の間の前記開始温度は、好ましくは7℃と15℃の間の範囲に、さらに好ましくは10℃と15℃の間の範囲に、および最も好ましくは11℃と13℃の間の範囲にある。段階d)が行われる間に、温度は、最大で50℃の、好ましくは40℃と45℃の最高温度まで上昇される。
【0113】
段階c)で得られた水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを含む懸濁物を段階b)の前記炭酸塩を含むアニオンと接触させる場合、炭酸塩を含むアニオンは好ましくは前記懸濁物に任意の適切な固体形で、例えば顆粒もしくは粉末の形で、または懸濁物もしくは溶液の形で添加される。好ましい一実施形態において、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムを含む懸濁物は炭酸塩を含むアニオンの添加の間に撹拌され、このことはより完全な混合、およびこのため水酸化マグネシウムの炭酸マグネシウムへの変換、即ち沈降ネスケホナイトを完了するためのより短い時間を提供し得る。このような撹拌は、混合が水酸化マグネシウムの炭酸マグネシウムへの十分な変換を提供する限り、連続的にまたは不連続的に行うことができる。好ましい一実施形態において、懸濁物は好ましくは連続的に撹拌される。
【0114】
好ましくは、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムを含む懸濁物中の炭酸塩を含むアニオンの濃度は、前記懸濁物:炭酸塩を含むアニオンの重量比が300:1から10:1、さらに好ましくは250:1から25:1、およびなおさらに好ましくは200:1から50:1のようになる。
【0115】
本発明の方法の段階d)を行うことによって、沈降中間生成物は、段階c)の水酸化マグネシウムの得られた懸濁物を段階b)のガス状COおよび/または炭酸塩を含むアニオンと接触させることによって得られる。前記沈降中間生成物は、式Mg(HCO)(OH)・2HOを有するネスケホナイトとして特徴付けられ、MgCO・3HOとも記載され得る。得られた沈降ネスケホナイト結晶は、ネスケホナイトに典型的である細角柱型である。
【0116】
従って、段階d)の炭酸化を行うために必要とされる時間は、段階c)で得られた水酸化マグネシウムの沈降ネスケホナイトへの変換をほぼ完了させるために必要とされる時間である。水酸化マグネシウムの沈降ネスケホナイトへのこのようなほぼ完全な変換は、段階c)の少なくとも部分的に得られた水酸化マグネシウムと前記ガス状COおよび/または炭酸塩を含むアニオンとの接触の開始から計算して、好ましくは4時間以内に、さらに好ましくは3時間以内に、なおさらに好ましくは2時間以内に、および最も好ましくは90分以内に得られる。
【0117】
得られた沈降ネスケホナイトは好ましくは、水性懸濁物の形である。懸濁物の総重量に基づいて、懸濁物中に50重量%までの、好ましくは1と50重量%の間の、さらに好ましくは1と25重量%の間の、および最も好ましくは5と15重量%の間の固体含有率を有する沈降ネスケホナイトの懸濁物が好ましいことが見出されている。得られた懸濁物が所望の範囲より上もしくは下の固体含有率を有する場合、懸濁物は水によって希釈され得る、またはさらなる方法段階のための、前記所望の固体含有率の懸濁物を得る任意の従来の方法によって、高濃度化され得る。
【0118】
任意の実施形態において、懸濁物中の得られた沈降ネスケホナイトの粒子は、粒径によって、または不純物から、加熱老化段階の前に分離され得る。好ましい一実施形態において、沈降ネスケホナイトは、選択されたサイズ範囲の質量分率をスクリーニングおよび決定することによって測定されるように、200μmを超える平均粒径d50値を有する粒子、さらに好ましくは150μmを超える平均粒径d50値を有する粒子から、および最も好ましくは100μmを超える平均粒径d50値を有する粒子から分離される。
【0119】
本文脈において、得られた沈降ネスケホナイトの平均粒径d50値は広範囲で変動し得るが、概して得られた沈降ネスケホナイトの粒子は、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、50μm未満の、さらに好ましくは35μm未満の、なおさらに好ましくは20μm未満の、および最も好ましくは15μm未満の平均粒径d50値を有することに注目すべきである。
【0120】
例えば少なくとも1つの酸化マグネシウム源が苛性焼成マグネサイトの形のマグネサイトから得られる場合、懸濁物中の得られた沈降ネスケホナイトの粒子は、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、好ましくは30μm未満の、さらに好ましくは25μm未満の、なおさらに好ましくは20μm未満の、および最も好ましくは10μmと15μmの間の平均粒径d50値を有する。
【0121】
対照的に、段階d)の沈降ネスケホナイトは、段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源としての焼成ドロマイトから得られる場合、段階d)で得られた懸濁物は沈降炭酸カルシウム(PCC)をさらに含むことができる。この場合、懸濁物中の沈降ネスケホナイトおよび沈降炭酸カルシウムの得られた粒子の混合物は、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、好ましくは20μm未満の、さらに好ましくは15μm未満の、なおさらに好ましくは10μm未満の、および最も好ましくは7.5μm未満の、例えば5μm未満の全平均粒径d50値を有する。
【0122】
とりわけ好ましい実施形態において、懸濁物中の得られた沈降ネスケホナイトの粒子は、縮小した粒径を有する粒子を提供するためにおよび/またはほぼ等しい直径の粒子を提供するために、加熱老化段階の前に粉砕される。粉砕段階は、当業者に公知の従来の粉砕装置、例えば粉砕ミルによって行うことができる。好ましい一実施形態において、水性懸濁物中の沈降ネスケホナイト粒子は、縦型ビーズミルで湿式粉砕される。好ましくは前記湿式粉砕は、10kWh/乾燥トンと500kWh/乾燥トンの間の範囲での粉砕の間の比エネルギー入力にて、さらに好ましくは20kWh/乾燥トンと300kWh/乾燥トンの間の範囲の粉砕の間の比エネルギー入力にて、および最も好ましくは50kWh/乾燥トンと200kWh/乾燥トンの間の範囲の粉砕の間の比エネルギー入力にて、例えば約100kWh/乾燥トンの粉砕の間の比エネルギー入力にて行われる。
【0123】
中間粉砕段階は、酸化マグネシウム源が苛性焼成マグネサイトの形のマグネサイトから得られる場合にとりわけ好都合である。従って、沈降ネスケホナイト粒子が本発明の方法の段階e)の加熱老化の前に粉砕される場合、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源としての苛性焼成マグネサイトから得られたネスケホナイト粒子は、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、好ましくは25μm未満の、さらに好ましくは20μm未満の、なおさらに好ましくは15μmおよび最も好ましくは10μm未満の平均粒径d50値を有する。
【0124】
しかし、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源としての焼成ドロマイトから得られた沈降ネスケホナイトおよび沈降炭酸カルシウムの粒子の混合物が加熱老化段階の前に粉砕される場合、沈降ネスケホナイトおよび沈降炭酸カルシウムの得られた混合物中の粒子は、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、好ましくは10μm未満の、さらに好ましくは7.5μm未満の、なおさらに好ましくは5μm未満の、および最も好ましくは3μm未満の、例えば2.5μm未満の全平均粒径d50値を有する。
【0125】
段階d)の沈降ネスケホナイトが段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源としての焼成ドロマイトから得られる場合、本発明の方法の段階d)で得られた懸濁物の沈降ネスケホナイトおよび沈降炭酸カルシウムの比は広い範囲で変動し得ることに、さらに注目すべきである。好ましくは得られた懸濁物中での沈降ネスケホナイトの沈降炭酸カルシウムに対する比は、好ましくは比(沈降ネスケホナイトの重量):(沈降炭酸カルシウムの重量)は、3:1から1:3、さらに好ましくは2:1から1:2および最も好ましくは1.5:1から1:1.5のようになっている。
【0126】
加えてもしくはまたは、本発明の方法の段階d)が行われる前にポリサッカライドが懸濁物に添加され得る;即ち少なくとも1つの酸化マグネシウム源を含有する懸濁物は、段階d)の炭酸化の間に前記ポリサッカライドを含有する。ポリサッカライドは好ましくは、ソルビトール、マンニトール、スクロースおよびこれらの混合物から成る群より選択される。好ましい一実施形態において、ポリサッカライドはソルビトールである。
【0127】
ポリサッカライドは好ましくは、ポリサッカライドが生じる懸濁物中に懸濁物の総重量に基づいて、0.001重量%と5重量%の間の、さらに好ましくは0.01重量%と0.1重量%の間の、および最も好ましくは0.05重量%と0.75重量%の間の濃度で含有されるような量で懸濁物に添加される。
【0128】
ポリサッカライドは、任意の適切な固体形で、例えば顆粒または粉末の形で懸濁物に添加することができる。またはポリサッカライドは、懸濁物または溶液の形で懸濁物に添加することができる。
【0129】
段階e):得られた沈降ネスケホナイトを加熱老化段階で処置することのキャラクタリゼーション
本発明の方法の段階e)により、段階d)の前記得られた沈降ネスケホナイトを、ハイドロマグネサイトを得るために加熱老化によって処置する。
【0130】
「加熱老化」という用語は本発明の意味において、最初により高い内部エネルギー状態を有するネスケホナイトなどの結晶が、より低いエネルギー状態を有する結晶中に溶解および再析することによって相変態を受ける、熱方法に関する。該方法は、より完全な結晶格子構造、より狭い粒径分布、粒子離散度およびより低い表面エネルギーを特徴とする、最終結晶生成物を生じる。
【0131】
段階d)で得られた沈降ネスケホナイトの加熱老化は、90℃を超える温度にて、および最も好ましくは90℃と150℃の間の範囲の温度にて行われ、前記温度範囲は、得られた沈降ネスケホナイトをハイドロマグネサイトに変換するために必要とされる時間を反映している;即ち加熱老化が行われる温度が高いほど、沈降ネスケホナイトのハイドロマグネサイトへのほぼ完全な変換を達成するために必要とされる時間がより短い、または加熱老化が行われる温度が低いほど、沈降ネスケホナイトのハイドロマグネサイトへのほぼ完全な変換を達成するために必要とされる時間がより長い。好ましくは、沈降ネスケホナイトは、ネスケホナイトの形態を最終生成物のハイドロマグネサイトの最終形に再配置させるのに十分な時間にわたって加熱老化温度に維持される。この点において、沈降ネスケホナイトから開始するハイドロマグネサイトへのほぼ完全な変換を達成するのに必要とされる時間は、前記加熱老化段階の間に加えられる温度に応じて、10分と数時間の間で変動し得る。
【0132】
沈降ネスケホナイトが縮小された粒径を有する新たな形態に再結晶するために加熱老化温度にて維持されるべき時間は、沈降ネスケホナイトの初期形態ならびに炭酸マグネシウム中に存在する不純物の性質および程度の両方によって決定される。例えば沈降ネスケホナイト材料は、小さい初期粒径を有する場合、約130℃での前記老化段階の時間は短く、例えば約30分である。
【0133】
ハイドロマグネサイトの特に小さい粒子に到達するために、沈降ネスケホナイトをハイドロマグネサイトに変換するための加熱老化方法は、好ましくは90℃と150℃の間の範囲の、好ましくは110℃と140℃の範囲の、さらに好ましくは120℃と135℃の範囲の、および最も好ましくは約130℃の温度にて行われる。
【0134】
例として、沈降ネスケホナイトの加熱老化温度が約130℃の温度に調整される場合、前記温度は、好ましくは10分を超える時間にわたって、およびさらに好ましくは20分と60分の間の時間にわたって維持される。好ましい一実施形態において、加熱老化温度は、20分と40分の間の時間にわたって、さらに好ましくは25と35分の間の時間にわたって、および最も好ましくは約30分にわたって維持される。加熱老化反応は、ハイドロマグネサイトの表面積および/または伝導率を特定の間隔で測定することによって追跡することができる。
【0135】
任意の実施形態において、漂白剤が段階d)で得られたネスケホナイトの懸濁物に添加される;即ち前記漂白剤は、段階e)の加熱老化が行われる前に添加される。加えてもしくはまたは、漂白剤は炭酸化段階の間に、即ち段階c)の得られた水酸化マグネシウムが段階b)のガス状COと接触される段階の間に添加され得る。
【0136】
好ましい一実施形態において、漂白剤は亜ジチオン酸ナトリウムである。さらなる好ましい実施形態において、漂白剤はホルムアミジンスルフィン酸である。またはもしくは加えて、他の好適な漂白剤が使用され得る。
【0137】
漂白剤は好ましくは、漂白剤が水酸化マグネシウムおよび沈降ネスケホナイトの生じる懸濁物にそれぞれ懸濁物の総重量に基づいて、0.001重量%と10重量%の間の、さらに好ましくは0.01重量%と1重量%の間の、および最も好ましくは0.05重量%と0.5重量%の間の濃度で含有されるような量で該当する懸濁物に添加される。
【0138】
漂白剤は該当する懸濁物に、任意の適切な固体形、例えば顆粒または粉末の形で添加することができる。または漂白剤は該当する懸濁物に、懸濁物または溶液の形で添加することができる。
【0139】
本発明の方法を使用することにより、特に縮小された粒径を有するハイドロマグネサイト粒子を提供することが可能である。好ましくは得られたハイドロマグネサイト粒子は、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、20μm未満の範囲の、好ましくは15μm未満の、さらに好ましくは10μm未満の、および最も好ましくは5μm未満の平均粒径d50値を有する。
【0140】
好ましい一実施形態において、高い含有率のハイドロマグネサイトを有するハイドロマグネサイト懸濁物を得ることが可能であるのは、前記ハイドロマグネサイトが酸化マグネシウムおよび/または高い含有率の酸化マグネシウムを有する酸化マグネシウム含有無機物および/または酸化マグネシウムに変換することができる高い含有率のマグネシウム化合物を有するマグネシウム含有材料の形の酸化マグネシウム源から得られる場合である。ハイドロマグネサイトの前記含有率は、懸濁物中の固体含有物の総重量に基づいて、好ましくは85重量%超、さらに好ましくは90重量%超、および最も好ましくは95重量%超である。例えばマグネサイトが段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源として使用される場合、ハイドロマグネサイトの含有率は、懸濁物中の固体含有物の総重量に基づいて、好ましくは90重量%超、さらに好ましくは93.5重量%超および最も好ましくは97重量%超である。
【0141】
さらに、前記ハイドロマグネサイトが、酸化マグネシウムおよび/または高い含有率の酸化マグネシウムを有する酸化マグネシウム含有無機物および/または酸化マグネシウムに変換することができる高い含有率のマグネシウム化合物を有するマグネシウム含有材料の形の酸化マグネシウム源から得られる場合、前記方法は、特に縮小された粒径を有するハイドロマグネサイト粒子を提供する。好ましくは得られたハイドロマグネサイト粒子は、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、20μm未満の範囲の、好ましくは0.1μmから15μmの範囲の、さらに好ましくは0.5μmから10μmの範囲の、および最も好ましくは1μmから5μmの範囲の、例えば4.75μmから5μmの範囲の平均粒径d50値を有する。加えて本発明の方法を使用することによって得られた粒子は、好ましくは板様形態である。上記の特徴を有する粒子は好ましくは、酸化マグネシウムおよび/または高い含有率の酸化マグネシウムを有する酸化マグネシウム含有無機物および/または酸化マグネシウムに変換することができる高い含有率のマグネシウム化合物を有するマグネシウム含有材料の形の段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源が、酸化マグネシウム、ペリクレース、マグネサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムおよびこれらの混合物より選択される場合に得られる。
【0142】
好ましい実施形態において、上記の特徴を有する粒子は好ましくは、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源がマグネサイトおよび最も好ましくは苛性焼成マグネサイトの形のマグネサイトである場合に得られる。
【0143】
前記ハイドロマグネサイトが低い含有率の酸化マグネシウムを有する酸化マグネシウム含有無機物および/または酸化マグネシウムに変換することができる低い含有率のマグネシウム化合物を有するマグネシウム含有材料の形の酸化マグネシウム源から得られる場合、生じる懸濁物中のハイドロマグネサイトの含有率は、懸濁物中の固体含有物の総重量に基づいて、好ましくは20重量%と70重量%の範囲にある。ハイドロマグネサイトがドロマイトから得られる場合、生じる懸濁物中のハイドロマグネサイトの含有率は、懸濁物中の固体含有物の総重量に基づいて、例えば30重量%と60重量%の間の範囲に、およびさらに好ましくは35重量%と50重量%との間の範囲にあり得る。
【0144】
加えて段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源がドロマイトである場合、本発明の方法を使用することによって、沈降炭酸カルシウムと混和して得られ、得られた組成物が板様形態を有するハイドロマグネサイトおよびコロイド形態を有する沈降炭酸カルシウムを含むことに注目すべきである。
【0145】
ハイドロマグネサイトが沈降炭酸カルシウムと混和して得られる場合、生じる懸濁物中の沈降炭酸カルシウムの含有率は、懸濁物の固体含有物の総重量に基づいて、例えば40重量%と70重量%の間の範囲に、さらに好ましくは50重量%と65重量%の間の範囲にあり得る。
【0146】
さらに、本発明の方法を使用することによって縮小された粒径を有する他の粒子と混和したハイドロマグネサイト粒子を得ることが可能であるのは、前記ハイドロマグネサイトが、低い含有率の酸化マグネシウムを有する酸化マグネシウム含有無機物および/または酸化マグネシウムに変換することができる低い含有率のマグネシウム化合物を有するマグネシウム含有材料の形の酸化マグネシウム源から得られる場合である。前記方法は好ましくは、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、15μmまでの範囲の、好ましくは0.1μmから10μmの範囲の、さらに好ましくは0.5μmから5μmの範囲の、および最も好ましくは1μmから4μmの範囲の、例えば3.25μmと3.5μmの間の範囲の平均粒径d50値を有する他の粒子と混和したハイドロマグネサイト粒子を提供する。前記特徴を有する粒子は好ましくは、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源がドロマイト、ハンタイトおよびこれらの混合物より選択される場合に得られる。
【0147】
好ましい実施形態において、上記の特徴を有する粒子は好ましくは、段階a)の少なくとも1つの酸化マグネシウム源がドロマイト、および最も好ましくは焼成ドロマイトおよび/または半焼成ドロマイトの形のドロマイトに得られる。
【0148】
好ましい実施形態において、本発明の得られたハイドロマグネサイトは、好ましくは懸濁物の形であり、該固体含有率は紙、塗料、ゴムおよびプラスチック産業における用途に好適な任意の固体含有率に調整することができる。この点において、得られたハイドロマグネサイトは、さらなる処置段階を行うことなく直接使用できることに注目すべきである。
【0149】
好ましい一実施形態において、懸濁物の形のハイドロマグネサイトは、懸濁物の総重量に基づいて、30重量%までの、好ましくは1重量%と20重量%の間の、さらに好ましくは5重量%と15重量%の間の、および最も好ましくは7重量%と11重量%の間の固体含有率を有する。
【0150】
別の好ましい実施形態において、前記懸濁物は、好ましくは6から11の範囲のpH値、好ましくは7から10.5のpH値およびさらに好ましくは8.5から10.5のpH値を有する。粘度は好ましくは、LV−3スピンドルを装備したBrookfield DV−I粘度計によって100rpmの速度にて測定されるように、2.500mPa・s未満、さらに好ましくは2.000mPa・s未満、および最も好ましくは1.750mPa・s未満である。
【0151】
好ましい実施形態において、得られたハイドロマグネサイト懸濁物の水相は、脱イオン水によって置換され得る。任意の実施形態において、得られたハイドロマグネサイト懸濁物は、場合により無水ハイドロマグネサイト生成物が得られる点まで濃縮され得る。上記の水性懸濁物が脱水される場合、ハイドロマグネサイトの得られた固体(即ち無水または液体形でないだけのわずかな水を含有する。)は顆粒または粉末の形であり得る。無水生成物の場合、本生成物は脱水の間および/または前および/または後に脂肪酸によって加えて処置され得る。前記脂肪酸は、好ましくはステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、モンタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、イソステアリン酸およびセロチン酸より選択される。
【0152】
本発明の方法により酸化マグネシウム源から得られたハイドロマグネサイトは、特に縮小された粒径と組合された特徴的な板様形態であり、このため紙、塗料、ゴムおよびプラスチック産業における容易および経済的な利用が可能となる。本発明により得られたハイドロマグネサイトの粒子は、得られた粒子が20μm未満の範囲の、好ましくは15μm未満の、さらに好ましくは10μm未満の、および最も好ましくは5μm未満の平均粒径d50値を有する粒径分布を有する。好ましい実施形態において、本発明の方法は、20μm未満の、好ましくは0.1μmから15μmの範囲の、さらに好ましくは0.5μmから10μmの範囲の、および最も好ましくは1μmから5μmの範囲の、例えば4.75μmと5μmの間の範囲の平均粒径d50値を有するハイドロマグネサイト粒子を提供し得る。別の好ましい実施形態において、本発明の方法は、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、15μmまでの範囲の、好ましくは0.1μmから10μmの範囲の、さらに好ましくは0.5μmから5μmの範囲の、および最も好ましくは1μmから4μmの範囲の、例えば3.25μmと3.5μmの範囲の平均粒径d50値を有するハイドロマグネサイト粒子を提供し得る。
【0153】
好ましい一実施形態において、得られたハイドロマグネサイトは2.25g/cm超の絶対密度を提供または表示し、さらに好ましくは密度は2.26g/cmと2.40g/cmの間であり、なおさらに好ましくは密度は2.26g/cmと2.35g/cmの間であり、および最も好ましくは密度は2.26g/cmと2.32g/cmの間である。例えばハイドロマグネサイトが段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源としての苛性焼成マグネサイトから得られる場合、ハイドロマグネサイトの密度は約2.29g/cmであり得る。
【0154】
別の好ましい実施形態において、得られたハイドロマグネサイトは、窒素およびISO9277によるBET法を使用して測定されるように、10m/gから150m/gの、さらに好ましくは10m/gから100m/gの、および最も好ましくは20m/gから70m/gのBET比表面積を提供する。
【0155】
例えばハイドロマグネサイトが段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源としての苛性焼成マグネサイトから得られる場合、前記ハイドロマグネサイトは、窒素およびISO9277によるBET法を使用して測定されるように、好ましくは10m/gから70m/gの、さらに好ましくは20m/gから50m/gの、および最も好ましくは25m/gから40m/gの、例えば30m/gから35m/gのBET比表面積を特徴とする。ハイドロマグネサイトが段階a)で提供された少なくとも1つの酸化マグネシウム源としての焼成ドロマイトから得られる、即ち段階e)の生じる懸濁物も沈降炭酸カルシウムを含む場合、前記組成物は、窒素およびISO9277によるBET法を使用して測定されるように、好ましくは40m/gから100m/gの、さらに好ましくは45m/gから80m/gの、および最も好ましくは50m/gから70m/gの、例えば55m/gから65m/gのBET比表面積を特徴とする。
【0156】
別の好ましい実施形態において、得られたハイドロマグネサイトは20から50m/gのBET比表面積を有し、ならびに該粒子は、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、20μm未満の、好ましくは0.1μmから15μmの範囲の、さらに好ましくは0.5μmから10μmの範囲の、および最も好ましくは1μmから5μmの範囲の、例えば4.75μmと5μmの範囲の平均粒径d50値を有する。
【0157】
なおさらに好ましくは、BET比表面積は、45から80m/gの範囲内であり、ならびに該粒子は、CILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を使用したレーザ回折により決定されるように、15μmまでの範囲の、好ましくは0.1μmから10μmの範囲の、さらに好ましくは0.5μmから5μmの範囲の、および最も好ましくは1μmから4μmの範囲の、例えば3.25μmと3.5μmの間の範囲の平均粒径d50値を有する。
【0158】
さらに得られたハイドロマグネサイトは、ISO2469規格に従って測定される、少なくとも80%の、さらに好ましくは少なくとも85%の、なおさらに好ましくは85%と99%の間の、および最も好ましくは85%と99%の間の白色度R457を有することが好ましい。別の好ましい実施形態において、得られたハイドロマグネサイトは、ISO2469規格に従って測定される、少なくとも89%の、さらに好ましくは89%と99%の間の白色度R457を有することが好ましい。さらなる好ましい実施形態において、得られたハイドロマグネサイトは、ISO2469規格に従って測定される、少なくとも93%の白色度R457を有することが好ましい。加えてもしくはまたは、本発明の方法によって得ることができるハイドロマグネサイトは、DIN 6167に従って、5未満の、さらに好ましくは4未満の、および最も好ましくは3未満の黄色度指数を有する。
【0159】
ハイドロマグネサイトが懸濁物の形で提供される場合、前記ハイドロマグネサイトは場合により分散される。当業者に公知の従来の分散剤を使用することができる。分散剤はアニオン性およびカチオン性であることができる。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸をベースとしている。このような分散剤は好ましくは、前記ハイドロマグネサイトの総重量に基づいて、約0.3重量%から約3重量%に相当するように調合される。
【0160】
このように得られたハイドロマグネサイトは、紙、ティッシュペーパー、プラスチックまたは塗料に使用され得る。特に前記ハイドロマグネサイトは、無機充填剤としておよび/または紙のコーティングのためのならびに特に喫煙用品の包装紙の無機充填剤として使用することができる。特に、本発明によるコーティング組成物および/または無機充填剤組成物は、本発明の方法によって得られたハイドロマグネサイトを含有すること、およびこれらが従来技術のハイドロマグネサイトを含む組成物と比較して改良された光学的特性を提供することを特徴とする。製造および/またはコーティングされ紙および特に喫煙用品のための包装紙は、本発明の方法によって得られた前記ハイドロマグネサイトを含有することを特徴とする。別の利点として、本発明の該方法によって得ることができるハイドロマグネサイトは、例えば他の塩または着色化合物などの不純物の除去なしに、紙作製用途に直接使用することができる。さらに得られたハイドロマグネサイトは、非導電特性を有する難燃剤として使用され、さらに電気絶縁体として機能する。このような難燃剤は、電気および電子部品、建築材料、排水管、樋、自動車部品、テレビ、コンピュータおよび同様の機器のキャビネット、形材および取付具、例えばケーブル用取付具、電気スイッチ、シーラント、石膏および塗料に包含され得る。ハイドロマグネサイトを含む難燃剤はこのため、好ましくは建設産業、船舶、航空機、列車および自動車に使用され得る。
【0161】
以下の実施例は加えて本発明を示すが、本発明を例示された実施形態に限定するものではない。下の実施例は、本発明による良好な光学的特性、例えば炭酸カルシウム懸濁物の不透明度を示す:
【実施例】
【0162】
測定方法
以下の測定方法は、実施例および請求項に与えるパラメータを評価するために使用される。
【0163】
brookfield粘度
スラリーのBrookfield粘度は、LV−3スピンドルを装備したBrookfield粘度計RVT型によって、100rpmの速度および室温(20±3℃)にて決定した。
【0164】
材料のBET比表面積
BET比表面積は、250℃にて30分の時間にわたって加熱することによる試料の調製後に、ISO4652によるBET法により測定した。このような測定の前に、試料を濾過して、すすぎ、乾燥器内で110℃にて少なくとも12時間乾燥させた。
【0165】
微粒子材料の粒径分布(サイズ<Xを有する粒子の質量%)および平均粒径(d50
微粒子材料の平均粒径および平均粒径質量分布は、レーザ回折、即ち懸濁物を通過するレーザからの光を介して決定され、および粒径分布は生じる回折パターンから計算される。測定はCILAS(フランス、オルレアン)の機器CILAS 920粒径分析装置を用いて行う。
【0166】
該方法は当業者に周知であり、微粒子材料の粒径分布を決定するために一般に使用される。測定は、該当する懸濁物(脱イオン水;ピロリン酸ナトリウムの0.1重量%溶液)を希釈することによって行う。高速撹拌機および超音波を使用して試料を分散させた。
【0167】
水性懸濁物のpH
水性懸濁物のpHは、標準pHメーターを使用しておよそ22℃にて測定する。
【0168】
固体粒子の密度
生成物の密度は、Micromeriticsによって販売されている標準密度分析装置Micromeritics AccuPyc(登録商標)を使用して測定する。
【0169】
水性懸濁物の固体含有率
懸濁物固体含有率(「乾燥重量」としても公知)は、Mettler−Toledoによって販売されている水分分析装置HR73を以下の設定:温度120℃、自動スイッチオフ3、標準乾燥、懸濁物5から20gを使用して決定する。
【0170】
[比較例]
以下の比較例は、従来技術の方法によるハイドロマグネサイトの調製を示す。前記方法は、苛性焼成マグネサイトを消和すること、および得られた水酸化マグネシウムをガス状COと接触させて得られた水酸化マグネシウムをハイドロマグネサイトに変換することによって行われ、炭酸化は約60℃の開始温度にて行われる。
【0171】
苛性焼成マグネサイト(Van Mannekus M95)90kgは、撹拌反応装置内の40℃の水道水1700リットルに前記マグネサイトを添加することによって消和した。マグネサイトを連続撹拌しながら15分にわたって消和して、生じる懸濁物を水による希釈によって約5%の固体含有率に調整した。炭酸化は、ガス供給撹拌機、二酸化炭素/空気ガス流をインペラに誘導するためのステンレス鋼炭酸化管ならびに懸濁物のpHおよび伝導率を追跡するためのプローブを装備した、1800リットルのバッフル付き円筒状ステンレス鋼反応装置内で行った。消和段階で得られた懸濁物を60℃の温度まで調整して、炭酸化反応容器に添加した。次に空気中26体積%のCOのガスを、240rpmのスラリ撹拌下で、200m/時の速度で上方の懸濁物中にバブリングした。炭酸化の間、反応混合物の温度は制御しなかった。85分後(前記ガスの導入開始から計算)、ガスの導入を停止した。生成物を水性懸濁物として回収した。特徴および物理的特性を表1の列Aに与える。
【0172】
[実施例1]
本発明の以下の例証的な実施例は、苛性焼成マグネサイトを消和すること、および得られた水酸化マグネシウムをガス状COと接触させて得られた水酸化マグネシウムをハイドロマグネサイトに変換することによる、炭酸化が約20℃から25℃の開始温度によって行われるハイドロマグネサイトの調製、ならびに続いての加熱老化段階を包含する。
【0173】
苛性焼成マグネサイト(Van Mannekus M95)90kgは、撹拌反応装置内の40℃の水道水1700リットルに前記マグネサイトを添加することによって消和した。マグネサイトを連続撹拌しながら15分にわたって消和して、生じる懸濁物を水による希釈によって約5%の固体含有率に調整した。炭酸化は、ガス供給撹拌機、二酸化炭素/空気ガス流をインペラに誘導するためのステンレス鋼炭酸化管ならびに懸濁物のpHおよび伝導率を追跡するためのプローブを装備した、1800リットルのバッフル付き円筒状ステンレス鋼反応装置内で行った。消和段階で得られた懸濁物を約25℃の温度まで調整して、炭酸化反応容器に添加した。次に空気中26体積%のCOのガスを、240rpmのスラリ撹拌下で、200m/時の速度で上方のスラリ中にバブリングした。炭酸化の間に、反応ミックスの温度を20と25℃の間で制御および維持した。85分後(前記ガスの導入開始から計算)、ガスの導入を停止した。炭酸化の直後に、生じる懸濁物は縦型ビーズミルで320リットル/時の流速にて湿式粉砕され、約100kWh/乾燥トンの粉砕比エネルギー消費を生じる。生じる懸濁物に、ホルムアミジンスルフィン酸(Degussa−HulsからのDegaFAS(登録商標))1.8kgを添加した。スラリーを次に加圧容器に移し、約130℃まで30分間加熱した。生成物を水性懸濁物として回収する。特徴および物理的特性を表1の列Bに与える。
【0174】
[実施例2]
本発明の以下の例証的な実施例は、白色ドロマイト石を焼成および消和することならびに得られた水酸化マグネシウムをガス状COと接触させて得られた水酸化マグネシウムをハイドロマグネサイトに変換することによる、炭酸化が約12℃の開始温度によって行われるハイドロマグネサイトの調製、ならびに続いての加熱老化段階を包含する。
【0175】
白色ドロマイト石(Hammerfall A/S)を破砕して10から50mmの粒度を得て、1050℃の回転窯で60分間焼成した。生じる焼成ドロマイト(CaO・MgO)をボールミルで粉砕して、約40μmの平均粒径を有する粉末を得た(CILASレーザ回折法)。
【0176】
撹拌反応装置内の50℃の水道水1000リットルに添加することによって、前記焼成ドロマイト200kgを消和した。焼成ドロマイトを連続撹拌しながら30分にわたって消和して、生じる懸濁物を水による希釈によって約8%の固体含有率に調整した。炭酸化は、ガス供給撹拌機、二酸化炭素/空気ガス流をインペラに誘導するためのステンレス鋼炭酸化管ならびに懸濁物のpHおよび伝導率を追跡するためのプローブを装備した、1800リットルのバッフル付き円筒状ステンレス鋼反応装置内で行った。消和段階で得られた懸濁物1800リットルを12℃の温度まで調整して、炭酸化反応容器に添加した。次に空気中26体積%のCOのガスを、240rpmのスラリ撹拌下で、200m/時の速度で上方のスラリ中にバブリングした。炭酸化の間に、反応ミックスの温度は制御せず、発熱反応で発生した熱のために上昇させた。85分後(前記ガスの導入開始から計算)、ガスの導入を停止した。懸濁物を次に加圧容器に移し、約130℃まで30分間加熱した。生成物を水性スラリーとして回収した。特徴および物理的特性を表1の列Cに与える。
【0177】
【表1】

表1に示すデータから推測されるように、本発明の方法はとりわけ、著しく小さい粒径(平均粒径d50)を有する生成物をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性環境においてハイドロマグネサイトを調製する方法であって:
a)少なくとも1つの酸化マグネシウム源を提供する段階;
b)ガス状COおよび/または炭酸塩を含むアニオンを提供する段階;
c)酸化マグネシウムを少なくとも部分的に水酸化マグネシウムに変換するための、段階a)の前記酸化マグネシウム源の消和段階;
d)水酸化マグネシウムを少なくとも部分的に沈降ネスケホナイトに変換するために、段階c)の得られた水酸化マグネシウムを段階b)の前記ガス状COおよび/または炭酸塩を含むアニオンと接触させる段階;および
e)段階d)で得られた沈降ネスケホナイトを加熱老化段階で処置する段階
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、少なくとも1つの酸化マグネシウム源が酸化マグネシウム、マグネサイト、ドロマイト、ハンタイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ブルサイトおよびこれらの混合物から成る群より選択される方法。
【請求項3】
請求項1から2のいずれか一項に記載の方法であって、ガス状COが外部CO供給もしくはCOの再循環または両方から得られる方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法であって、炭酸塩を含むアニオンが炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムまたはこれらの混合物から成る群より選択される方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法であって、段階d)の開始温度が5℃と35℃の間の温度に、および最も好ましくは10℃と30℃の間の温度に調整される方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法であって、加熱老化段階e)が少なくとも90℃の、好ましくは90℃と150℃の範囲の温度にて、さらに好ましくは110℃と140℃の間の温度にて、なおさらに好ましくは120℃と135℃の間の温度にて、および最も好ましくは約130℃の温度にて行われる方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、加熱老化段階が20分から60分の時間にわたって、好ましくは20分から40分の時間にわたって、最も好ましくは25から35分の時間にわたって行われる方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法であって、段階d)で得られた沈降ネスケホナイトが段階e)の加熱老化段階の前に粉砕される方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、粉砕後に得られたネスケホナイトが少なくとも50重量%が25μm未満の、さらに好ましくは20μm未満の、なおさらに好ましくは15μm未満の、および最も好ましくは10μm未満の平均粒径を有する粒子を含む方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法であって、該方法によって得られたハイドロマグネサイトが10m/gから150m/gの、さらに好ましくは10m/gから100m/gの、および最も好ましくは20m/gから70m/gのBET比表面積を有する方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法であって、該方法によって得られたハイドロマグネサイトが少なくとも80%の、さらに好ましくは少なくとも85%の、なおさらに好ましくは85と99%の間の、および最も好ましくは85と99%の間の白色度R457を有する方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法であって、該方法によって得られたハイドロマグネサイトが20μm未満の、好ましくは15μm未満の、さらに好ましくは10未満の、および最も好ましくは5μm未満の平均粒径d50を有する方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法であって、該方法によって得られたハイドロマグネサイトが脂肪酸、好ましくはステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、モンタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、イソステアリン酸およびセロチン酸より選択される1つ以上の脂肪酸から成る群より選択される脂肪酸によってさらに処置される方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるハイドロマグネサイト組成物。
【請求項15】
請求項14に記載のハイドロマグネサイト組成物であって、ハイドロマグネサイトが2.26g/cmと2.40g/cmの間の密度、さらに好ましくは2.26g/cmと2.35g/cmの間の密度および最も好ましくは2.26g/cmと2.32g/cmの間の密度を有するハイドロマグネサイト組成物。
【請求項16】
紙コーティング用のまたは紙の無機充填剤としての請求項14または15に記載のハイドロマグネサイト組成物の使用。
【請求項17】
請求項16に記載のハイドロマグネサイト組成物の使用であって、無機充填剤が喫煙用品の包装紙に使用されるハイドロマグネサイト組成物の使用。
【請求項18】
難燃剤としての請求項14に記載のハイドロマグネサイト組成物の使用。
【請求項19】
請求項18に記載のハイドロマグネサイト組成物の使用であって、難燃剤が電気および電子部品、建築材料、排水管、樋、自動車部品、テレビ、コンピュータおよび同様の機器のキャビネット、形材および取付具、例えばケーブル用取付具および電気スイッチ、シーラント、石膏、塗料またはこれらの混合物に使用されるハイドロマグネサイト組成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2013−510206(P2013−510206A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537374(P2012−537374)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066664
【国際公開番号】WO2011/054831
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(505018120)オムヤ・デイベロツプメント・アー・ゲー (31)
【Fターム(参考)】