説明

油ちょう済み冷凍揚げ物及びその製造方法

【課題】解凍・調理した場合、油ちょう直後の揚げ物と同じような、サク味のある衣の食感、風味良好な具材の食感等を有する油ちょう済み冷凍揚げ物及びその製法を提供することを本発明の課題とする。
【解決手段】打ち粉として澱粉を使用して揚げ種をまぶす工程と、打ち粉をまぶした揚げ種に、揚げ物衣用粉に米粉と食用油脂を配合したミックス粉を用いて調整したバッターを付着させた後、油ちょうをする工程、及び油ちょう済み揚げ物をジェット噴射式加熱装置で加熱した後冷凍する工程を経ることにより油ちょう済み冷凍揚げ物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の食材を油ちょう(油の中で加熱して揚げること)後、凍結保存し、電子レンジ、オーブントースター、或いは、電子レンジとオーブントースターが一体となったオーブンレンジなどにより解凍・調理することにより、油ちょう直後と同じような、おいしさ、食感を味わうことができる、油ちょう済み冷凍揚げ物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜類や魚介類に、小麦粉など穀類粉末、水や卵などを加え、柔らかく流動性のある状態にしたもの(バッター)で衣を付けて油で加熱した揚げ物は本邦において人気のある食べ物の一種である。油ちょうは、油温度の加減が難しい事や、出火原因になったりすることもあり、嫌われる傾向が顕著になりつつある。そして調理機器類の進歩とも相俟って電子レンジ等により手軽に調理できる、油ちょう済み冷凍揚げ物が望まれるようになっている。
【0003】
揚げ物は、揚げた時はサクサクした食感(サク味)を味わうことができても、時間経過とともに、衣の中の具材(揚げ種)の中の水分が衣に移行して、衣の香ばしさやサク味が薄れる傾向があり、油ちょう済み冷凍揚げ物においても、この傾向は変わらない。
【0004】
油ちょう済み冷凍揚げ物を、電子レンジで調理した時に、衣の香ばしさやサク味が得られるように、揚げ物の衣材や冷凍前の処理方法について種々の開発が試みられている。
【0005】
たとえば衣材が、薄力小麦粉60〜80重量%、トウモロコシ澱粉10〜30重量%、米粉2〜4重量%、トウモロコシ粉2〜7重量%を少なくとも含み、該トウモロコシ澱粉中の1〜5重量%がアルファ化澱粉である天ぷら用小麦粉配合物であるもの(特許文献1)、小麦粉とα化ハイアミロース澱粉及び/又はその誘導体と、架橋澱粉、エーテル化澱粉、モチ種澱粉、タピオカ澱粉及びハイアミロース澱粉から選ばれた少なくとも1種の澱粉とを含有するもの(特許文献2)、α化澱粉、生澱粉、食用油脂及び水からなり、小麦粉を含まない揚げ物用バッター液に関するもの(特許文献3)さらにシクロデキストリンを必須成分として含むマイクロ波調理油ちょう食品用被覆材に関するもの(特許文献4)などが開示されている。
【0006】
衣の形態に関して、衣が揚げ種に接してそのみずみずしさを保持する機能をもった一次衣と、一次衣についた、サクミをもつだけでなくサクミを保持する機能をもった二次衣の組み合わせを特徴とするフライ済み食品についての開示もある(特許文献5)。
【0007】
又油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法に関しては、油ちょうした後、凍結する前に、50〜90℃の温水に浸漬するか又は温水をかけ流して、衣の表層部の油の一部を除去するとともに、当該衣の表層部に水分を補給置換し、その後、衣の表面に卵白液又は小麦粉や米粉などの溶き粉水溶液によりコーティング処理を行う油ちょう済み冷凍天ぷらの製造方法(特許文献6)がある。
【0008】
以上特許文献に記載された衣材の使用、或いは方法により製造した、油ちょう済み冷凍揚げ物、特に天ぷらついては、サク味等の食感、揚げ種のおいしさ等風味、保存性等総合的に見て、未だ満足できるとは言い難く改良の余地がある。
【0009】
【特許文献1】特開平6-269255公報
【特許文献2】特開平11-46711号公報
【特許文献3】特開2000-33363 公報
【特許文献4】特開2005-34083 公報
【特許文献5】特開2000-262249公報
【特許文献6】特開平10-257860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
油ちょう済み冷凍揚げ物は、油ちょう後、冷凍保存され、油ちょう直後とは相当異なった条件におかれる宿命にあり、しかも油ちょう後電子レンジ若しくはオーブンにより調理されるまでの期間が相当長くなることもあり、このような場合、油ちょう直後の衣のサク味を再現することは大変困難で、特に油ちょう済み冷凍天ぷらにおいては、必ずしも満足できる製品が見当たらないのが現状である。
【0011】
上記のような問題点に鑑み、解凍・調理した場合、油ちょう直後の揚げ物と同じような、サク味のある衣の食感、風味良好な具材の食感等を有する油ちょう済み冷凍揚げ物及びその製法を提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は上記課題を解決するために、油ちょう済み冷凍揚げ物の衣材や一連の製法について鋭意研究の結果、本発明を完成した。
【0013】
即ち本発明は、
(1)打ち粉として澱粉を使用して揚げ種をまぶす工程と、打ち粉をまぶした揚げ種に、揚げ物衣用粉に米粉及び食用油脂を配合したミックス粉を用いて調整したバッターを付着させた後、油ちょうをする工程、及び油ちょう済み揚げ物をジェット噴射式加熱装置で加熱した後冷凍する工程、からなること特徴とする油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法、
(2)揚げ物用衣粉に米粉を0.5〜7重量%及び食用油脂を0.1〜5重量%を配合したミックス粉を用い、ジェット噴射加熱装置で170〜200℃の温度で加熱することを特徴とする(1)記載の油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法、
(3)食用油脂が、植物性食用油脂又は/及び食用加工油脂から選択されたものであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載された油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法、
(4)上記(3)記載の植物性食用油脂が、パーム油、大豆油のいずれかであることを特徴とする油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法、
(5)上記(3)記載の食用加工油脂が、ショートニング、大豆発酵油脂のいずれかであることを特徴とする油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法、
(6)ジェット噴射式加熱装置が、ジェットオーブンであることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載された油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法、
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載された製造方法により製造されたものであることを特徴とする油ちょう済み冷凍揚げ物
に関する。
【0014】
以下本発明について詳述する。
最初に、打ち粉として澱粉類を使用して揚げ種をまぶす工程について説明する。打ち粉とは一般に餅や麺生地などを取り扱う際に、手や台に粘着するのを防ぐ目的で台の上に振る粉のことで、通常バレイショ澱粉、トウモロコシ澱粉などが用いられている。本発明における打ち粉としては、バレイショ澱粉、トウモロコシ澱粉の他に小麦澱粉、サツマイモ澱粉、タピオカ澱粉、クズ粉、カタクリ等が使用しうるが、特にバレイショ澱粉が望ましい。
【0015】
本発明の第一の特徴はこの打ち粉を使用して揚げ種をまぶすことであり、これによって目的にかなった油ちょう済み冷凍揚げ物を得ることができる。
【0016】
「まぶす」とは小学館発行の国語大辞典には「(粉などを)物の表面に満遍なく行き渡らせるようにする。」と記述されているが、打ち粉を揚げ種に満遍なく行き渡らせることができれば好ましいが、揚げ種によっては必ずしも満遍なくとは行かない場合もあり、ある程度に揚げ種に付着しているような場合も、「まぶす」実施態様として包含されることは言うまでもない。
【0017】
揚げ種は、油ちょう済み揚げ物の中種であり、農産物系、水産物系及び畜産物系の具材が使用しうる。農産物系の具材としては、例えば、サツマイモ、カボチャ、ニンジン、ゴボウ、レンコン、タマネギ、ネギ、ナス、アスパラガス、三つ葉、マイタケ・シイタケ・マツタケ・エノキタケ・ブナシメジ・エリンギ等キノコ類が挙げられる。水産系の具材としては、例えば、エビ、イカ、ハゼ、アジ、アナゴ、シラウオ、キス、シャコ、サケ、カキ、カイバシラ、カニ等が挙げられる。畜産物系の具材としては、ウシ、ニワトリ初め食用鳥類、ブタ、ヒツジ等の各部位の肉類が挙げられる。以上はあくまでも例示でこれらに限定されるものではない。
【0018】
次いで、打ち粉をまぶした揚げ種に、揚げ物衣用粉に米粉と食用油脂を配合したミックス粉を用いて調整したバッターを付着させた後油ちょうをする工程について説明する。
【0019】
揚げ物衣用粉としては、一般に揚げ物の衣用粉として、使用されている粉類を意味し、例えば、小麦粉、コーンフラワー、デンプン、ベーキングパウダー、卵白粉、脱脂大豆粉、パンプキンパウダー等若しくはそれらの2以上の混合粉があげられる。何れにしても例示したものに限定されることなく、一般に市販、若しくは使用されているものを意味する。
【0020】
本発明の第二の特徴は、揚げ物衣用粉に米粉と食用油脂を配合したミックス粉を用いることにある。
【0021】
米粉は、普通に日常食している米(うるち米)若しくはもち米を粉末としたものが使用しうるが、普通に食している米の粉末が好ましい。
【0022】
食用油脂としては食用に供される、植物性、動物性の油脂が使用しうる。植物性食用油脂としては、大豆油、パーム油、ひまわり油、サフラワー油、なたね油(エルカ酸を低める改良がなされたキャノーラ油を包含する。)、綿実油、ごま油、とうもろこし油、こめ油、落花生油、オリーブ油、ふどう油、パーム核油、やし油、カカオ脂、2以上の植物性食用油脂を調合した調合油等、動物性食用油脂としては牛脂、豚脂(ラード)、魚油、鯨油などが挙げられる。
【0023】
更に食用油脂には食用加工油脂も包含される。例えばショートニング、マーガリン、ファットスプレッド、バター等乳脂、精製ラード、粉末油脂、発酵油脂等が包含される。ショートニングについては日本農林規格(JAS)では「食用油脂を原料として製造した固状又は流動状のものであって、可そ性、乳化性等の加工性を付与したもの」と定義されており、斯かる定義に当てはまるものであれば、どの様な食用油脂を原料としたものも使用しうる。マーガリン、ファットスプレッド等も日本農林規格の定義に従ったものを意味する。
【0024】
粉末油脂とは食用油脂に炭水化物やタンパク質を加えて乳化剤で均一に分散され、それを高温空気中に噴霧して乾燥,粉末化したものである。発酵油脂とは、穀類の発酵物を食用油脂に配合したものなどを意味し、具体的には大豆に米麹、塩を入れ発酵した後パーム油を加えた大豆発酵油脂(エヌアイフーズ株式会社 製品名「クレマール」が市販されている。)等が包含される。
【0025】
以上例示した食用油脂の中で、大豆油、パーム油、ショートニング、大豆発酵油脂、等が好ましいが、特にショートニング、大豆発酵油脂が好ましい。
【0026】
上記米粉は、揚げ物衣用粉に対して0.5〜7重量%の範囲で、好ましくは2〜5重量%、又油脂は0.1〜5重量%、好ましくは2〜4重量%、大豆発酵油脂について好ましくは0.5〜1重量%を、それぞれ配合してミックス粉とする。
【0027】
ミックス粉は通常の方法でバッターに調整する。例えば、水、牛乳、卵、砂糖その他調味料、香料、香辛料、更に必要に応じて乳化剤、膨張剤など加えて流動的な状態に調整する。水はミックス粉に対して1.3倍から2倍程度加える。場合によっては攪拌機など使用する。
【0028】
打ち粉をまぶした揚げ種へのバッターの付着は、小規模の場合は該揚げ種をバッターに浸漬させれば良い。又かき揚げの場合は揚げ種をバッター中に入れかき混ぜ適当な大きさの杓子で掬えばよい。比較的規模が大きい場合は、バッターを槽の中に入れ、該槽の中を揚げ種をくぐらす方式(浸漬槽方式)や揚げ種をバッターのシャワーの中を通す方式(シャワーリング方式)などを採用しても良い。
【0029】
フライなど揚げ物をつくる場合はプレッディング工程を付加する。該工程では揚げ種全面に均一なパン粉を付着させる必要があり、例えばローラーなどでパン粉を付着後しっかり抑えることが好ましい。使用するパン粉は生パン粉や乾燥パン粉、クラッカーを粉末にしたもの等があり、製品の目標、品質によりメッシュを変えたり着色することもできる。
【0030】
バッターを付着した揚げ種、及び必要に応じプレッディングした揚げ種の油ちょうの工程は、家庭におけると同様に、下から加熱した油を入れた鍋に、揚げ種を浸漬して揚げ上がった時点で掬い上げることによっても可能であるが、ある程度の規模においては揚げ用熱器具であるフライヤーを使用する。フライヤーはガス若しくは電気を熱源としたもので、自動式、連続式、手揚げ式、卓上型があり何れも使用しうる。
【0031】
油ちょうに使用する油としては植物油、例えば大豆油、パーム油、ひまわり油、サフラワー油、なたね油(キャノーラ油を包含する。)、綿実油、ごま油、トウモロコシ油、こめ油、落花生油、オリーブ油、2以上の植物油を調合した食用調合油、ショートニング等使用しうるが大豆油、なたね油(キャノーラ油)、コーン油、パーム油が、特に大豆油やなたね油の精製品であるしらしめ油が通常良く使用される。油ちょうにおける油の温度は150〜200℃の間で、油ちょう時間は1〜4分の間で、揚げ種の種類等勘案して常法により適宜行いうる。
【0032】
上記のようにして得られた油ちょう済み揚げ物を、ジェット噴射式加熱装置で加熱したのち冷凍する工程について説明する。
【0033】
本発明の第3の特徴は油ちょう済み揚げ物を、ジェット噴射式加熱装置で加熱することである。ジェット噴射式加熱装置とは、加熱した空気に圧力をかけ、ジェット噴射で食品を加熱する装置で、現在使われているものの多くは、食品がコンベアで、庫内で上下からジェット噴射されて中を通過してゆく連続式のもので、ジェット噴射の吹き出し速度を何段階かに調節できるものもあり、高温、短時間で満遍なく加熱調理ができる特徴を有する。市販の機械は、ジェットオーブン、或いはエアーフォースオーブンの名前で販売されている。
【0034】
本発明においては特に機械に限定されることなく、ジェット噴射式加熱装置であればどの様なものも使用できる。油ちょう後直ちにジェット噴射式加熱処理を行うことにより目的が達成できる。加熱処理の目安は、噴射の温度が170〜200℃で、時間は2〜4分であり、好ましくは噴射の温度190℃前後、時間は3分前後である。
【0035】
油ちょう時、揚げ種の水分が衣の中に留まっていると、油と反応して分解物ができる可能性がある。ジェット噴射式加熱により、衣中に留まっている水分と余分な油を蒸散させることができる。得られた揚げ物は常法により、例えば−25℃〜−35℃で急速凍結しその後−15℃〜−20℃で冷凍保存する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によって得られる油ちょう済み冷凍揚げ物は、幅広い具材に応用ができ煩雑な工程を経ることなく、市販の調理器具・機械類を使用して製造することができる。そしてオーブン、電子レンジ等で調理することにより、外観、具材の食感、衣の食感(サク味等)等において、従来品に比べ格段に優れ、油ちょう直後とほぼ同等乃至かなり近い食感が得られる商品価値の高い製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0038】
[実施例1]
表1に示した揚げ物用衣粉に米粉3.2重量%と大豆油3重量%を配合したミックス粉に冷水をミックス粉の1.6倍加えミキサーでよく攪拌して流動性のあるバッターを調整した。同様に大豆油に替えてパーム油、ショートニング、大豆発酵油脂(クレマール:本品については0.5重量%を配合)をそれぞれ配合したバッターを調整した。
【0039】
尚、クレマールは、エヌアイフーズ株式会社の製品名で、大豆に米麹、塩を入れ発酵した後、パーム油を加えたもので、その分析値は、水分32%、総炭水化物28%、総タンパク質10%、その他(総脂質等)30%である。(小数点以下は四捨五入)
【0040】
マイタケの茎の部分を除き、枝と傘の部分を通常の天ぷらとして食する程度の大きさに割き揚げ種を下ごしらえした。該マイタケ揚げ種に打ち粉としてバレイショ澱粉をまぶし、先に調整した4種類のバッターを入れた槽にそれぞれ浸漬し、それぞれをガスを熱源とし、大豆シラシメ油を張った手揚げ式フライヤーで180℃で約2分間油ちょうした。金網で掬い上げ油きりをしたのち、ジェット噴射式加熱装置である連続式ジェットオーブン(マジマック製 商品名 FGJO7D)で、2.5分、190℃熱風を上下より噴射加熱し、ついで冷凍機で急速凍結(設定温度 -30℃)し、4種類のマイタケの油ちょう済み冷凍揚げ物を得た。これらを−18℃の冷凍庫で1ヶ月間保存した。
【0041】
[比較例1]
表1に示した揚げ物衣用粉に冷水を1.6倍を加えミキサーでよく攪拌して流動性のあるバッターを調整した。
【0042】
実施例1と同様に下ごしらえしたマイタケ揚げ種を、調整したバッターを入れた槽に浸漬し、ついでガスを熱源とし、大豆シラシメ油を張った手揚げ式フライヤーで180℃で約2分間油ちょうした。金網で掬い上げ油きりをしたのち、冷凍機で急速凍結(設定温度 −30℃)し、−18℃の冷凍庫で1ヶ月間保存した。
【0043】
【表1】

【0044】
[評価1]
実施例1で得られた4種類のマイタケ油ちょう済み冷凍揚げ物及び比較例1で得られた1種類のマイタケ油ちょう済み冷凍揚げ物を電子レンジで解凍・調理して、パネラー10名により、色彩、外観、具材の食感、衣の食感、吸油及び水っぽさについての検食比較評価を行なった。評価基準と点数評価は以下の通りである。
【0045】
〈評価基準〉
単品ごとに色彩、外観、具材の食感、衣の食感、吸油及び水っぽさについて、揚げ物の油ちょう直後と比較してほぼ同等と考えられる状態を5点と定め、5段階評価を行った。
【0046】
色彩 : 最良(5点)良(4点)普通(3点)不良(2点)最不良(1点)
外観 : 最良(5点)良(4点)普通(3点)不良(2点)最不良(1点)
具材の食感 : 最良(5点)良(4点)普通(3点)不良(2点)最不良(1点)
衣の食感 : 非常にサク味あり(5点)サク味あり(4点)普通(3点)ベタつき あり(2点)ベタベタ(1点)
吸油 : ない(5点)少ない(4点)多少(3点)ある(2点)かなりある (1点)
水っぽさ : ない(5点)少ない(4点)多少(3点)ある(2点)かなりある (1点)
〈点数評価〉
10名のパネラーの合計点数の数値に基づき以下のように評価判定した。
【0047】
10点 最不
11〜20点 不
21〜30点 普
31〜40点 良
41〜50点 最良
結果は表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
[実施例2]
タマネギとニンジンを適当な大きさに切り、およそ半々に混ぜ打ち粉として、バレイショ澱粉をまぶし、次いで実施例1と同様に調整した4種類のバッターとそれぞれ良く混ぜ、適当な大きさの木杓子にのせ、ガスを熱源とし、大豆シラシメ油を張った手揚げ式フライヤーで175℃で約2分間油ちょうした。金網で掬い上げ油きりをしたのち、ジェット噴射式加熱装置である連続式ジェットオーブン(マジマック製 商品名 FGJO7D)で、2.5分、190℃の熱風を上下より噴射加熱し、ついで冷凍機で急速凍結(設定温度 −30℃ )し、4種類の野菜かき揚げの油ちょう済み冷凍揚げ物を得た。これらを−18℃の冷凍庫で1ヶ月間保存した。
【0050】
[比較例2]
タマネギとニンジンを適当な大きさに切り、およそ半々に混ぜ、次いで比較例1と同様に調整したバッターと良く混ぜ、適当な大きさの木杓子にのせ、ガスを熱源とし、大豆シラシメ油を張った手揚げ式フライヤーで175℃で約2分間油ちょうした。金網で掬い上げ油きりをしたのち、冷凍機で急速凍結(設定温度 −30℃)し、−18℃の冷凍庫で1ヶ月間保存した。
【0051】
[評価2]
実施例2で得られた、4種の野菜かき揚げの油ちょう済み冷凍揚げ物及び比較例2で得られたかき揚げ油ちょう済み冷凍揚げ物を、評価1と同様に、解凍・調理してパネラーによって検食比較評価を行った結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
[実施例3]
エビの殻をむき背わたを抜き、尾先を切って腹側に包丁を入れ揚げ種の下ごしらえをした。該エビ揚げ種に打ち粉としてバレイショ澱粉をまぶし、実施例1と同様に調整した4種のバッターを入れた槽にそれぞれ浸漬し、それぞれを、ガスを熱源とし、大豆シラシメ油を張った手揚げ式フライヤーで180℃で2分間油ちょうした。金網で掬い上げ油きりをしたのち、ジェット噴射式加熱装置である連続式ジェットオーブン(マジマック製 商品名 FGJO7D)で、2.5分、190℃の熱風を上下より噴射加熱し、ついで冷凍機で急速凍結(設定温度 −30℃)し、4種類のエビの油ちょう済み冷凍揚げ物を得た。これらを−18℃の冷凍庫で1ヶ月間保存した。
【0054】
[比較例3]
実施例3と同様に下ごしらえをしたエビ揚げ種を、比較例1と同様に調整したバッターを入れた槽に浸漬し、ついでガスを熱源とし、大豆シラシメ油を張った手揚げ式フライヤーで180℃で2分間油ちょうした。金網で掬い上げ油きりをしたのち、冷凍機で急速凍結(設定温度 −30℃)し、−18℃の冷凍庫で1ヶ月間保存した。
【0055】
[評価3]
実施例3で得られた4種のエビの油ちょう済み冷凍揚げ物と比較例3で得られたエビの油ちょう済み冷凍揚げ物を、評価1と同様に解凍・調理してパネラーによって検食比較評価を行った。結果を表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
[実施例4]
キスのうろこを取り除いて洗い、頭を落として背開きにし、中骨と腹骨をすきとり揚げ種の下ごしらえをした。該キスの揚げ種に打ち粉としてバレイショ澱粉をまぶし、実施例1と同様に調整した4種のバッターを入れた槽にそれぞれ浸漬し、それぞれを、ガスを熱源とし、大豆シラシメ油を張った手揚げ式フライヤーで180℃で約2分間油ちょうした。金網で掬い上げ油きりをしたのち、ジェット噴射式加熱装置である連続式ジェットオーブン(マジマック製 商品名 FGJO7D)で、2.5分、190℃の熱風を上下より噴射加熱し、ついで冷凍機で急速凍結(設定温度 -30℃)し、4種類のキスの油ちょう済み冷凍揚げ物を得た。これらを−18℃の冷凍庫で1ヶ月間保存した。
【0058】
[比較例4]
実施例4と同様に下ごしらえしたキスの揚げ種を、比較例1と同様に調整したバッターを入れた槽に浸漬し、ついでガスを熱源とし、大豆シラシメ油を張った手揚げ式フライヤーで180℃で約2分間油ちょうした。金網で掬い上げ油きりをしたのち、冷凍機で急速凍結(設定温度 −30℃)し、−18℃の冷凍庫で1ヶ間保存した。
【0059】
[評価4]
実施例4で得られた4種類のキスの油ちょう済み冷凍揚げ物と比較例4で得られたキスの油ちょう済み冷凍揚げ物を、評価1と同様に解凍・調理してパネラーによって検食比較評価を行った。結果を表5に示す。
【0060】
【表5】

【0061】
[実施例5]
イカの薄皮を剥ぎ、幅約4cm、長さ約10cmに切り、周囲に切り込みをいれ揚げ種の下ごしらえをした。該イカ揚げ種に打ち粉としてバレイショ澱粉をまぶし、実施例1と同様に調整した4種類のバッターを入れた槽にそれぞれ浸漬し、それぞれを、ガスを熱源とし、キャノーラ油を張った手揚げ式フライヤーで180℃で約2分間油ちょうした。金網で掬い上げ油きりをしたのち、ジェット噴射式加熱装置である連続式ジェットオーブン(マジマック製 商品名 FGJO7D)で、2.5分、190℃の熱風を上下より噴射加熱し、ついで冷凍機で急速凍結(設定温度 −30℃)し、4種類のイカの油ちょう済み冷凍揚げ物を得た。これらを−18℃の冷凍庫で1ヶ月間保存した。
【0062】
[比較例5]
実施例5と同様に下ごしらえをしたイカの揚げ種を、比較例1と同様に調整したバッターを入れた槽に浸漬し、ついでガスを熱源とし、キャノーラ油を張った手揚げ式フライヤーで 180℃で約2分間油ちょうした。金網で掬い上げ油きりをしたのち、冷凍機で急速凍結(設定温度 −30℃)し、−18℃の冷凍庫で1ヶ月間保存した。
【0063】
[評価5]
実施例5で得られた4種類のイカの油ちょう済み冷凍揚げ物と比較例5で得られたイカ油ちょう済み冷凍揚げ物を評価1と同様に解凍・調理してパネラーによって検食比較評価を行った。結果を表6に示す。
【0064】
【表6】

【0065】
[比較例5]
以上結果から、本発明の方法による油ちょう済み冷凍揚げ物(実施例1〜5)は、電子レンジで解凍・加熱した場合、色彩、外観、具材食感、衣食感、吸油、水っぽさ等の点で本発明の方法によらないで一般的な方法で製造した油ちょう済み冷凍揚げ物(比較例1〜5)に比較して格段に優れていることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち粉として澱粉を使用して揚げ種をまぶす工程と、打ち粉をまぶした揚げ種に、揚げ物衣用粉に米粉及び食用油脂を配合したミックス粉を用いて調整したバッターを付着させた後、油ちょうをする工程、及び油ちょう済み揚げ物をジェット噴射式加熱装置で加熱した後冷凍する工程、からなること特徴とする油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法。
【請求項2】
揚げ物衣用粉に米粉を0.5〜7重量%及び食用油脂を0.1〜5重量%を配合したミックス粉を用い、ジェット噴射加熱装置で170〜200℃の温度で加熱することを特徴とする請求項1記載の油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法。
【請求項3】
食用油脂が、植物性食用油脂又は/及び食用加工油脂から選択されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の植物性食用油脂が、パーム油、大豆油のいずれかであることを特徴とする油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法。
【請求項5】
請求項3記載の食用加工油脂が、ショートニング、大豆発酵油脂のいずれかであることを特徴とする油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法。
【請求項6】
ジェット噴射式加熱装置が、ジェットオーブンであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された油ちょう済み冷凍揚げ物の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載された製造方法により製造されたものであることを特徴とする油ちょう済み冷凍揚げ物。

【公開番号】特開2008−228607(P2008−228607A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70110(P2007−70110)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(599096097)株式会社トータク (1)
【Fターム(参考)】