説明

油中水型日焼け止め化粧料

【課題】耐水性と使用性を損ねることなく、保湿性の高い日焼け止め化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】オリゴ糖とリン脂質及びその誘導体とメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体から選ばれる1種又は2種以上の物質で表面処理した無機固形紫外線遮蔽剤を配合することで保湿性が極めて高く、且つ耐水性、使用性に優れた油中水型日焼け止め化粧料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐水性、保湿性及び使用性に優れる油中水型日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料の耐水性、耐汗性を向上させるためにアセチル化ヒアルロン酸を配合する技術があるが(特許文献1)、このような化粧料はべたつきを生じる問題があり、保湿性及び使用性の向上が求められている。
また、この他に皮膚の保湿機能を亢進させる目的でセラミド類と水溶性紫外線吸収剤を配合する技術(特許文献2)、紫外線散乱剤の分散安定性を高める目的でサクシノグルカンを配合する技術(特許文献3)、耐水性、耐油性を高め、紫外線散乱剤の分散安定性を高めるためにシリコーン化多糖化合物を配合する技術(特許文献4)、高い保湿効果を持たせるためにリン脂質、ステリン類を配合する技術(特許文献5)等が知られているが、耐水性、保湿性及び使用性の全てを両立することは困難であり、新しい技術の開発が求められている。
【特許文献1】特開平11−012149号公報
【特許文献2】特許第03207996号公報
【特許文献3】特開2001−220338号公報
【特許文献4】特許第03515872号公報
【特許文献5】特開2001−002545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来、油中水型日焼け止め化粧料の保湿性を高めようとすれば耐水性、使用性に劣り、保湿性、耐水性及び使用性に優れた日焼け止め化粧料を調製することが困難であったことに鑑みなされたものである。すなわち、本発明は、保湿性、耐水性及び使用性に優れた油中水型日焼け止め化粧料の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、オリゴ糖と、リン脂質及びその誘導体とメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体から選ばれる1種又は2種以上の物質で表面処理した固形紫外線遮蔽剤を配合することで日焼け止め化粧料の保湿性を高め、且つ耐水性、使用性に優れることを見出した。すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)A)及びB)を含むことを特徴とする油中水型日焼け止め化粧料。
A)オリゴ糖
B)リン脂質及びその誘導体とメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体から選ばれる1種又は2種以上の物質で表面処理した無機固形紫外線遮蔽剤
(2)有機紫外線吸収剤を含まない上記(1)に記載の油中水型日焼け止め化粧料。
(3)A)がラフィノース、マルトース、グリコシルトレハロース、マルトトリオシルトレハロースから選ばれる多糖類である上記(1)又は(2)に記載の油中水型日焼け止め化粧料。
(4)B)の無機固形紫外線遮蔽剤が微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛から選ばれる1種又は2種以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の油中水型日焼け止め化粧料。
(5)A)が0.1質量%以上、B)の無機固形紫外線遮蔽剤に対するリン脂質及びその誘導体とメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体から選ばれる1種又は2種以上の物質の表面処理量が0.001〜5.0質量%である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の油中水型日焼け止め化粧料。
【発明の効果】
【0005】
本発明の化粧料は、保湿性、耐水性及び使用性に優れるため、これを用いれば化粧くずれやべたつきがなく、また、しっとり感が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
成分A)について
本発明で用いるオリゴ糖は2〜10個程度の単糖により構成された炭水化物を意味し、主に二糖類〜五糖類が好ましく、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。オリゴ糖としては、例えば、ラフィノース、スクロース、ラクトース、マルトース、マルチトール、キシロビオース、メリビオース、マルトトリオース、トレハロース、グリコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトトリオシルトレハロース等が挙げられるが、特にラフィノース、マルトース、グリコシルトレハロース、マルトトリオシルトレハロースが好ましい。
本発明のオリゴ糖の配合量は0.1〜5.0質量%が好ましい。0.1質量%未満では保湿効果が十分ではなく、5.0質量%を超えて配合しても、保湿効果はあまり増大しない。
【0007】
成分B)について
本発明で用いられる用いるリン脂質及びその誘導体としてはホスファチジルコリン、ホスファチジルトリエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴリン脂質等が挙げられ、これらの類似物あるいはこれらを含有する組成物、すなわち大豆レシチン、卵黄レシチン等、あるいはそれらの水素添加物、またそれらの誘導体なども挙げられる。また、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体としては、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体等が挙げられる。特にメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体とメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体が耐水性、保湿性の点で好ましい。
リン脂質及びその誘導体とメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体から選ばれる1種又は2種以上の物質の無機固形紫外線遮蔽剤への表面処理量は、無機固形紫外線遮蔽剤に対して0.001〜5.0質量%が好ましい。表面処理量が0.001質量%未満の場合は十分な耐水性と保湿性を保てず、5.0質量%を超えると紫外線遮蔽能が低下する。
【0008】
リン脂質及びその誘導体とメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体から選ばれる1種又は2種以上の物質の無機固形紫外線遮蔽剤への表面処理方法は特に限定されず、湿式法、スプレードライ法又は乾式法等が挙げられる。湿式法は、リン脂質及びその誘導体とメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体から選ばれる1種又は2種以上の物質からなる処理剤を溶媒で溶解し、無機固形紫外線遮蔽剤からなる粉体と混合分散し、乾燥させる方法である。また、乾式法は、粉体と処理剤を乾いた状態で混合後、焼き付ける方法である。
【0009】
無機固形紫外線遮蔽剤は特に限定されず、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化クロム、タングステン酸などを使用することができる。特に酸化チタン、酸化亜鉛が紫外線遮蔽効果に優れ、好ましい。
リン脂質及びその誘導体とメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体から選ばれる1種又は2種以上の物質で表面処理した無機固形紫外線遮蔽剤の配合量は1.0〜50.0質量%が好ましい。1.0質量%未満の場合、紫外線遮蔽能に劣り、50.0質量%を超えると安定性、使用性に劣る。
【0010】
本発明の油中水型化粧料には、体質顔料、有機粉末、パール剤、無機顔料、有機顔料等を用いることができる。例えば、タルク、マイカ、カオリン、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、スチレンパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、デンプン、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム、雲母チタン、酸化チタン、酸化鉄雲母チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ等が挙げられる。
【0011】
本発明の油中水型化粧料には、さらに、多価アルコールを使用することができ、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリンなどが例示できる。
また、本発明の油中水型化粧料には、炭化水素油、エステル油、ロウ、シリコーン油、動植物油等の化粧料に通常用いられる油剤を用いることができる。
さらに、本発明の油中水型化粧料には、界面活性剤として非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
【0012】
本発明の油中水型化粧料には、発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常用いられている成分、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、保香剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤その他の美容成分、薬効成分などを配合することができる。
また、本発明の油中水型化粧料は、有機紫外線吸収剤によるアレルギーを考慮する必要がある場合、該吸収剤を用いずに保湿性を高めることができるので、使用者に対しての安全性が高くその点においても優れている。
【0013】
本発明の化粧料としては、サンスクリーンクリーム、サンスクリーンローション、サンオイル、サンケアスプレー、サンスクリーンエマルジョン、サンスクリーンムース、リキッドファンデーション、クリームファンデーション、メーキャップベース、リキッドアイシャドウ、リキッドチークカラーなどが挙げられる。
【実施例】
【0014】
本発明を利用した化粧料を調製し、耐水性試験、保湿性試験及び実使用試験を行った。
[耐水性試験]
上腕内側部の皮膚上の一定部分を色差計(Σ90、日本電色製)にて測色し、ブランクとする。次に同じ部分に4mg/cm2になるように化粧料を塗布し、色差計にて測色する。その後、15℃〜25℃の流水に10分間さらした後、軽く水気を拭き取り30分間乾燥させる。乾燥後、さらに色差計にて測色し、次の式により化粧料の残存率とし、これが高いほど耐水性が高いと評価した。
残存率(%)=ΔEC-A/ΔEB-A×100
ΔEB-A:塗布後とブランクの色差
ΔEC-A:流水処理後とブランクの色差
【0015】
[保湿性試験]
上腕内側部の皮膚上の角層水分量の指標としてコルネオメーター(C+K社)にて測定し、ブランクとする。次に同じ部分に4mg/cm2になるように化粧料を塗布し、2時間経過後同様にコルネオメーターにて水分量を測定する。塗布前後のコルネオメーターの測定値の変化を保湿性とし、正の変化量が多いほど保湿性が高いと評価した。
【0016】
[実使用試験]
女子被験者(25〜40歳)20人に本発明の化粧料、及び比較例の化粧料を使用させて、使用感(のび、保湿感、べたつき感、被膜感)を官能評価し、以下の評価基準に準じて判定した。
◎:20人中、16名以上が良好と評価した。
○:20人中、12名以上15名以下が良好と評価した。
△:20人中、8名以上11名以下が良好と評価した。
×:20人中、7名以下が良好と評価した。
【0017】
〔実施例1、2、比較例1、2〕
表1の各成分について下記製造方法によりサンスクリーンクリームを調整し、各試験を行った。結果を表1に示す。
【0018】
(サンスクリーンクリームの製造方法)
成分6〜10を80℃に加熱し、均一に混合し(a)、次に、成分1〜5、11〜12をaに添加して混合する(b)。成分13〜17を80℃に加熱し、均一に混合した後、これをbに添加し乳化混合して室温まで冷却する。
【0019】
【表1】

表1の結果より実施例1,2のサンスクリーンクリームは耐水性、保湿性に優れ、使用感にも優れていることがわかった。
【0020】
〔実施例3、4、比較例3、4〕
表2の各成分について下記製造方法によりサンスクリーンローションを調整し、各試験を行った。結果を表2に示す。
【0021】
(サンスクリーンローションの製造方法)
成分1〜10を均一に混合し(a)、次に、成分11〜15を均一に混合した後、これをaに添加して乳化混合する。
【0022】
【表2】

表2の結果より実施例3,4のサンスクリーンローションは耐水性、保湿性に優れ、使用感にも優れていることがわかった。
【0023】
〔実施例5〕
下記組成及び製造方法によりサンスクリーンローションを調整し、各試験を行った。この結果、実施例5のサンスクリーンローションは耐水性、保湿性に優れ、使用感にも優れていることがわかった。
(組成)
(質量%)
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 10
(2)大豆レシチン処理微粒子酸化チタン 10
(3)メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・
メタクリル酸ステアリル 20
共重合体処理微粒子酸化亜鉛
(4)メチルポリシロキサン 5
(5)オクタン酸セチル 5
(6)ジイソステアリン酸ポリグリセリル−3 2
(7)ポリオキシエチレン変性シリコーン 2
(8)アクリル酸アクリルコポリマー 10
(マツモトマイクロスフェアーS-100)
(9)グリコシルトレハロース 2
(10)グリセリン 5
(11)1,2−ペンタンジオール 2
(12)精製水 適量
(サンスクリーンローションの製造方法)
上記成分(1)〜(8)を均一に混合し(a)、次に、成分(9)〜(12)を均一に混合した後、これをaに添加して乳化混合する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、耐水性、保湿性及び使用性に優れ、化粧くずれが少なくしっとり感が得られる化粧料を提供することができる。従って、特に日焼け止め化粧料に最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)及びB)を含むことを特徴とする油中水型日焼け止め化粧料。
A)オリゴ糖
B)リン脂質及びその誘導体とメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体から選ばれる1種又は2種以上の物質で表面処理した無機固形紫外線遮蔽剤
【請求項2】
有機紫外線吸収剤を含まない請求項1に記載の油中水型日焼け止め化粧料。
【請求項3】
A)がラフィノース、マルトース、グリコシルトレハロース、マルトトリオシルトレハロースから選ばれるオリゴ糖である請求項1又は2に記載の油中水型日焼け止め化粧料。
【請求項4】
B)の無機固形紫外線遮蔽剤が微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の油中水型日焼け止め化粧料。
【請求項5】
A)が0.1質量%以上、B)の無機固形紫外線遮蔽剤に対するリン脂質及びその誘導体とメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体から選ばれる1種又は2種以上の物質の表面処理量が0.001〜5.0質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の油中水型日焼け止め化粧料。

【公開番号】特開2006−213620(P2006−213620A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26372(P2005−26372)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】