説明

油入電機機器の破砕装置

【課題】コンデンサなどの油入電機機器からPCB油を抜き取るための容器の破砕作業を効率的に、かつ、迅速に行うことで、作業員のPCBに接する時間を大幅に短縮し、しかも、構造が大幅に簡素化された破砕装置を提供する。
【解決手段】機台1と、この機台1の上に間隔可変可能にそれぞれ設置される左右一対の切断刃2と、この左右一対の切断刃2の間隔可変方向に対して直交する方向におけて機台1の上に設置され、左右一対の切断刃2に向けてコンデンサBを移動させるための油圧シリンダ3とを備え、かつ、機台1の下には、コンデンサBが、左右一対の切断刃2によって破砕されたときに流出するPCB油を受け取り回収するためのオイル受け4が備えられていることにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油入電機機器の破砕装置に係り、詳しくは、PCB油(絶縁油)などを含有するコンデンサ、トランスなどの油入電機機器からPCB油を抜き取るために用いられる破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PCB(Polychlorinated biphenyl, ポリ塩化ビフェニル:ビフェニルの塩素化異性体の総称)は、化学的安定性、不燃性(高耐熱性)、電気絶縁性が良好などの特性を有していることから、電機機器のコンデンサやトランスなどの絶縁油として多量に利用されてきた。
しかし、PCB油は、化学的な処理などによって容易に分解されないために、使用済のコンデンサなどが廃棄処理された後には、水、土壌などに蓄積して、食品などを介して人体に入るおそれがある。
【0003】
このように、PCB油は、分解されにくく極めて強い毒性を有し、人体への有害性が指摘されてからは、製造が禁止されている。そして、PCBを含んだ絶縁油(PCB含有絶縁油)を使用したコンデンサなどは厳重に保管され、その早急な処理が必要とされている。
【0004】
ちなみに、コンデンサなどの電機機器は、本体と絶縁油、及びこれらを収容するための容器などから構成されている。本体は、素子、その他の付属物とから構成されている。そして、素子は、帯状の電極と帯状の絶縁体が重ねられた状態で、これらが何層にも巻かれた状態に形成されている。
【0005】
ところで、コンデンサなどを廃棄処理する際には、容器の解体処理が不可欠であるが、通常、容器にはPCBに汚染されている絶縁油を抜き取るための開口部などは存在していない。そのために、何らかの方法によって、容器を切断または破砕するなどして、容器からPCB油を抜き取るための開口部を設けるまたは容器を解体しなければならない。
【0006】
そこで、従来では、例えば、コンデンサなどを固定しておき、容器の壁板に沿わせて回転刃を備える切断手段を移動さながら、容器を二つに分離するように切断するなどによって、容器からPCB油を抜き取るように構成されている切断装置が知られている(特許文献1参照)。
【0007】
また、従来においては、容器の壁板に食い込ませるための切断刃と、この切断刃とによって壁板を挟み込むための挟持刃とを備えている切断機構と、この切断機構を容器の壁板(外周形状)に沿わせて移動させるための駆動機構とを備えて構成されている解体装置が知られている(特許文献2参照)。
【0008】
なお、コンデンサなどを廃棄処理する際には、容器内から抜き取られた絶縁油については、そのPCBを確実に分解処理(無害化)することが求められる。そして、コンデンサなどを構成する容器や素子については、絶縁油を抜き取り除去した後に、少なからずPCBに汚染された絶縁油が残留しているため、これらを完全に除去した後、安全な状態で廃棄あるいは再利用する必要が求められる。
【特許文献1】特開2005−45190号公報(請求項1、段落番号0012、0020〜0022、及び図3、図4参照)
【特許文献2】特開2003−285036号公報(請求項1、請求項2、段落番号0044〜0047、及び図1〜図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の従来装置は、回転刃を回転によって、容器を切断する方法であることから、回転刃の回転による容器と摩擦によって熱が発生し、この熱が引火を引き起こす温度域まで加熱されるという問題があった。
また、このように切断するときに発生する熱によって、容器内のPCB油が気化し、蒸発するおそれがあるなどの汚染の問題を引き起こすなど安全性の面において悪化を招く問題があった。さらには、回転刃による切断に時間が掛かるなどから、作業者がPCB油に接する時間が長引いてしまうといった問題があった。
【0010】
一方、特許文献2に記載の従来装置では、容器の壁板を、切断しながらその切断片のカエリが外向きになるようにしていることから、特許文献1の回転刃を用いた切断に比べて容器との摩擦による熱の発生量を抑えることができる。
しかしながら、この特許文献2に記載の従来装置は、容器の壁板を切断しながら、切断片のカエリが外向きになるようにするための切断機構の動きが複雑であるなどから、切断に時間が掛かる。また、装置自体が大型化し、なおかつ、構造が複雑化であるなどから製作コストの高騰を招くなどの問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、前記課題を解消するために創案されたものであり、コンデンサなどの油入電機機器からPCB油を抜き取るための容器の破砕作業を効率的に、かつ、迅速に行うことで、作業員のPCBに接する時間を大幅に短縮し、しかも、構造が大幅に簡素化された破砕装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明では、平面視で略矩形形状を呈している機台と、この機台の上に間隔可変可能にそれぞれ設置される左右一対の切断刃と、この左右一対の切断刃の間隔可変方向に対して直交する中心線上における前記機台の上に設置されて、前記左右一対の切断刃に向けて油入電機機器を移動させるためのプッシャ手段と、を備え、かつ、前記機台の下には、前記油入電機機器が、前記左右一対の切断刃によって破砕されたときに流出するPCB油を受け取り回収するためのオイル受けが備えられていることを特徴とする(請求項1)。
ここで、前記プッシャ手段が、油圧シリンダであり、この油圧シリンダを作動させる操作が、遠隔操作で行われるように構成されていることが好適なものとなる(請求項4)。
【0013】
請求項1に記載の構成によれば、プッシャ手段によって左右一対の切断刃に向けて油入電機機器が移動されてくると、容器の壁板に左右一対の切断刃の刃先が食い込み、壁板は破られるように切断される。これにより、容器内からPCB油が抜き取られる。容器から抜き取られたPCB油は機台に下に備えられているオイル受けによって受け取られて回収される。
そして、請求項4のように構成されていることにより、プッシャ手段が、迅速な動きで作動する油圧またはエアシリンダ、特に、油圧シリンダであることで、容器の壁板は、一瞬にして左右一対の切断刃によって破られるように切断される。しかも、油圧シリンダは遠隔操作によって作動することから、作業者のPCBに接する時間は短時間ですむ。つまり、コンデンサなどの油入電機機器の容器を破砕してPCB油を抜き取るときに、作業者がPCBに接する時間は、プッシャ手段によって移動し得るように、機台の上に油入電機機器をセットするときのみの短い時間ですむ。
【0014】
また、本発明では、前記油入電機機器を、前記プッシャ手段によって前記左右一対の切断刃に向けて押し込み移動される前記機台の移送路の側部に、前記油入電機機器の機種に合わせて間隔にて位置決め調整された前記左右一対の切断刃による破砕線上に合わせて、前記油入電機機器を位置決めするための位置決め手段が備えられていることを特徴とする(請求項2)。
ここで、前記油入電機機器の機種とは、油入電機機器の能力を意味するもので、この能力によって油入電機機器の本体外形寸法(容器の巾、高さ、長さなど)が異なるために、油入電機機器の機種に合わせた左右一対の切断刃の相対する間隔と、この左右一対の切断刃によって切断される破砕線上に油入電機機器を合わせるための位置決め調節が必要となる。
また、前記破砕線上は、容器の内部に収容されている素子、その他の付属物(例えば、鉄心に巻かれている銅線コイルからなる低圧巻線、高圧巻線)などから構成されている本体を切断せずに、容器の壁板のみを切断することができる壁板と本体との間に定めることができる。
【0015】
請求項2に記載の構成によれば、油入電機機器は、位置決め手段によって位置決め規制された状態で左右一対の切断刃に向けてプッシャ手段により移動されてくる。これにより、容器の定められた破砕線上に沿って左右一対の切断刃は、同容器の壁板をそれぞれ破るように切断することとなる。換言すれば、容器の内部に収容されている本体を切断することなく、容器の壁板のみを破るように切断することができることで、本体を構成する例えば、鉄心に巻かれている銅線コイルからなる低圧巻線、高圧巻線のばらつきなどを防いで、次の処理工程などへ搬送などによって移行させることができる。
【0016】
さらに、本発明では、前記油入電機機器の機種に合わせて、前記左右一対の切断刃の間隔を位置決め調整するための位置合わせ目盛が、前記機台の上に備えられていることを特徴とする(請求項3)。
ここで、前記位置合わせ目盛は、例えば、油入電機機器の能力に応じて、この油入電機機器ごとに印字示されている能力表示を用いることが好適なものとなる。
【0017】
請求項3に記載の構成によれば、機台の上に備えられている位置あわせ目盛、例えば、能力に応じて油入電機機器にそれぞれ印字されている能力表示に合わせて左右一対の切断刃の間隔を調節することができる。これにより、ここの能力を有する油入電機機器の容器を切断処理するに際して、左右一対の切断刃の間隔を油入電機機器に合わせて調節するその段取りを迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る油入電機機器の破砕装置は以上のように構成されていることで、コンデンサなどの油入電機機器を、同電機機器の機種に合わせた間隔に可変調節されて機台に固定されている左右一対の切断刃に向けてプッシャ手段である油圧またはエアシリンダなどにより移動押し込むことによって、PCB油を抜き取るための容器の破砕作業を一瞬にして行うことができる。これにより、容器を効率的に、かつ、迅速に破砕することができる。
【0019】
また、本発明に係る油入電機機器の破砕装置は、機台と、この機台の上に間隔可変可能に設置される左右一対の切断刃、この左右一対の切断刃に向けて油入電機機器を移動押し込むための油圧またはエアシリンダなどからなるプッシャ手段とから構成されている単純な構造であるが故に、従来装置に比べて、低コストにて製作して提供することができる。加えて、構造が大幅に簡素化されている故に、故障なども少なく、メンテナンスなどの面においても有益になる。
【0020】
さらに、本発明では、プッシャ手段である油圧シリンダは、遠隔操作で作動させることができることで、作業員のPCBに接する時間を大幅に短縮することができる。これにより、作業員に対する安全性の面においても大幅に向上、改善させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る油入電機機器の破砕装置を示す平面図であり、図2は、同縦断側面図であり、図3及び図4は、同縦断正面図である。
なお、本実施形態では、平面から見た機台の短手方向(幅方向)を側方と称し、長手方向を前後方向と称する。
【0022】
≪破砕装置の構成≫
破砕装置Aは、図1〜図3に示すように、機台1の上に、間隔可変可能に左右一対の切断刃2が設置されている。
また、左右一対の切断刃2の間隔可変方向に対して直交する方向における機台1の上にはプッシャ手段である油圧シリンダ3が設置されている。これにより、油入電機機器であるコンデンサBを、左右一対の切断刃2に向けて押し込むように移動させて、コンデン容器B−1の両面壁板bを左右一対の切断刃によって破るように切断するようにしている。
また、機台1の下には、コンデンサ容器B−1の両面壁板bが、一対の切断刃2によって破られるように切断されたときに、コンデンサ容器B−1から流出するPCB油を受け取り回収するためのオイル受け4が備えられている。
【0023】
また、破砕装置Aは、図1及び図3に示すように、左右一対の切断刃2によるコンデンサ容器B−1の側面壁板bの破砕線上X(後記する図8参照)に合わせて、コンデンサBを位置決めするための位置決め手段5を備え、さらに、左右一対の切断刃2の間隔Lを、コンデンサBの機種に合わせて調節するための調節手段6を備えている。
【0024】
さらに、破砕装置Aは、図1に示すように、コンデンサBの機種に合わせて、左右一対の切断刃2の間隔Lを位置決め調整するとき、また、位置決め手段5によりコンデンサBを左右一対の切断刃2による破砕線上Xに合わせて位置決めするときに、作業者が目視により確認するための位置合わせ目盛7が、機台1に備えられている。
【0025】
ちなみに、コンデンサBの機種とは、コンデンサBの大きさに伴う能力を意味するもので、この能力によってコンデンサの本体外形寸法(コンデンサ容器B−1の巾、高さ、長さなど)が異なるために、コンデンサBの機種に合わせて左右一対の切断刃2の間隔Lの調節と、調節された左右一対の切断刃2に合わせて切断されるコンデンサ容器B−1の破砕線上Xに合わせるための位置決め調節が必要となる。
【0026】
≪機台の構成≫
機台1は、油圧シリンダ3によってコンデンサBを、左右一対の切断刃2に向けて移動させる前後方向に長く、左右一対の切断刃2が間隔可変可能に設置される左右の幅方向に短い平面視で略矩形形状を呈している機台ベース部1−1と、この機台ベース部1−1の裏面に、短手方向に適宜の間隔をおいて前後方向に並列に取り付けられる脚部1−2とを備えて形成されている。さらに、機台1の剛性を向上させるための補強材などが備えられている。
【0027】
機台ベース部1−1は、適宜の板厚を有する板材によって形成されており、図1及び図3に示すように、左右一対の切断刃2がスライド可能(摺動可能に)に設置される短辺側一側の前端縁側に、幅方向に延びる左右のスライド誘導路8が開設されている。
また、機台ベース部1−1には、図1及び図4に示すように、左右のスライド誘導路8のうち、一方のスライド誘導路8と平行に、位置決め手段5の後記する当て板5−1をスライド自在に設置するためのスライド誘導路9が開口されている。
【0028】
≪切断刃の構成≫
図5は、切断刃と、この切断刃を取り付ける刃先ブラケット及びスライドブラケットを示す分解斜視図であり、図6は、図3の一部を示す拡大断面図である。ここでは、図2を適宜参照しながら説明する。
左右一対の切断刃2は、図5に示すように、側面視で略くの字形状に形成されている。詳しくは、図2に示すように、左右一対の切断刃2は、機台1の幅方向の側方に向けて外向きのテーパ状に傾斜させた刃先2a側を、コンデンサBが油圧シリンダ3によって押されて移動されてくる機台1の後方に向けるように側面視で略くの字形状に形成されている。
【0029】
これにより、左右一対の切断刃2は、鏃のように先が尖った刃先2a部分が、油圧シリンダ3によって移動されてくるコンデンサ容器の上面壁板にスムーズに突き刺さるようにしている(後記する図8の(a)参照)。つまり、コンデンサ容器B−1の両面壁板bを破るように切断するときの切断開始時における上面壁板b−1に対する刃先2aの切断抵抗を抑えて、コンデンサ容器b−1の上面壁板b−1から始まる切断が、スムーズに、かつ、確実に行われるようにしている。
【0030】
なお、左右一対の切断刃2の屈曲部分の屈曲角度θとしては特に限定されるものでないが、例えば、70°位〜90°以内に設定することが好適なものとなる。つまり、鋭角であればあるほど、切断開始時においてコンデンサ容器B−1の上面壁板b−1に突き刺さるときの切断抵抗が抑えられて、該上面壁板b−1をスムーズに突き破るように切断することができる。
【0031】
また、左右一対の切断刃2は、図5に示すように、屈曲部分を境として、上側刃部2−1側よりも、下側刃部2−2側が長く形成されており、この上側刃部2−1と下側刃部2−2には、止めボルト10 を用いて左右一対の切断刃2を、左右の刃先ブラケット11にそれぞれ取り付けるための複数のネジ孔12が並列状に備えている。
【0032】
≪刃先ブラケットの構成≫
刃先ブラケット11は、左右一対の切断刃2を、後記するスライドブラケット13を介して、機台1にスライド自在に取り付け支持するために、それぞれ左右に存在する。
この刃先ブラケット11は、図5に示すように、前端縁側に刃取付部13を備えているベース板部11aと、このベース板部11aの後端縁から適宜の高さにて立ち上がる取り付けられる背面板部11bと、この背面板部11bからベース板部11aの前端側に向けて傾斜状に取り付けられる補強板部11cとを備えて形成されている。
【0033】
ベース板部11aは、切断刃2の板厚よりも厚い板材を用いて、図5に示すように、切断刃2の側面形状と略同一形状の略くの字形状に形成されている刃取付部13を前端側に備え、後端側を平面的(フラット)とする側面視で略山形形状に形成されている。
【0034】
刃取付部13は、図5に示すように、ベース板部11aの側面視が略くの字形を呈している前端縁の裏面に、切断刃2の板厚に相当する段差にて他の部分よりも一段ほど低く形成されている。
これにより、切断刃2は、図5に二点鎖線で示すように、他の部分と面一状態で、刃取付部13に取り付けられるようになっている。
【0035】
また、ベース板部11aの刃取付部14が形成される前端縁には、この前端縁から突出するように取り付けられる切断刃2の刃先2aの外向き傾斜に沿わせて延長させたテーパ部15が形成されている。
これにより、コンデンサ容器B−1の両面壁板bが、左右一対の切断刃2によって切断されたときに、その切断片部16が機台1の幅方向の両側に向けて末広がるようにしている。つまり、後記する図8の(b)に示すように、切断された切断片部16が外側に向けて末広がるように逃げることで、コンデンサBが油圧シリンダ3により移動される範囲において継続して行われる切断作業中に、切断片部16が、例えば、コンデンサBの移動を妨げる、または、油圧シリンダ3の後記するプッシャ部材3−3の動きを妨げるなどの不具合などが生じないようにしている。
【0036】
そして、刃先ブラケット11の背面板部11bにおける中央の補強板部11cを挟む上下位置にボルト挿通孔17が開設されており、ボルトナット18,19によってスライドブラケット13の後記する前面板部13aに締結されて取り付けられるようにしている。
【0037】
≪スライドブラケットの構成≫
スライドブラケット13は、左右一対の切断刃2を、それぞれの刃先ブラケット11を介して機台1にスライド自在に取り付け支持するために、それぞれ左右に存在する。
このスライドブラケット13は、刃先ブラケット11の背面板部11bの高さ幅に相当する大きさにて略コの字形状の断面を呈している側面視が略縦長矩形形状に形成されており、刃先ブラケット11の背面板部11bのボルト挿通孔17に対応する前面板部13aに、ボルト挿通孔20が開設されている。
【0038】
また、スライドブラケット13の底面板部13bには、図5に示すように、ボルト挿通孔21が開設されている。これにより、スライドブラケット13の底面板部13bに、図6及び図に示すように、機台ベース部1−1の左右のスライド誘導路8のそれぞれ一部を塞ぐように、左右のスライド誘導路8の開口縁裏面側にそれぞれ宛がわれるスライド板22がボルト23によって締結されて取り付けられるようにしている。
【0039】
≪油圧シリンダの設置構成≫
油圧シリンダ3は、ケーシング3−1の後端側が、機台ベース部1−1の後端縁側における幅方向の略中心部において、後端ブラケット24によって機台ベース部1−1にボルト、ピン(図示省略)などによって締結されて定着されている。また、油圧シリンダ3のロッド3−2の先端には、プッシャ部材3−3が取り付けられている。
このプッシャ部材3−3は、図1、図2及び図8に示すように、コンデンサ容器B−1の底面壁板b−2に相当する大きさにて側面視で略L字形状に形成されており、機台ベース部1−1の中心部においてコンデンサBが移動される移送路S範囲で前後方向にわたるように開口されている誘導路25によって横振れなどのガタツキを起すことなく直線的に、かつ、スムーズに案内されて機台ベース部1−1の前後方向に移動するようにしている。
【0040】
なお、油圧シリンダ3は、図示を省略しているが、油圧ポンプからの作動油によって、ロッド3−2をケーシング3−1から突出させる前進動作、そして、ケーシング3−1に戻す後退動作を行うものであるが、本実施形態では、油圧シリンダ3と油圧ポンプとを繋ぐ油圧ホースの配管途中に電磁弁を備え、この電磁弁の開閉操作を別室において遠隔操作し得るようにしている。つまり、油圧シリンダ3を作動させる操作を遠隔操作により行うようにしている。
これにより、本実施例に係る破砕装置AによってコンデンサBを破砕するための作業室に、作業者が滞在する時間をできる限り最小限に抑えるようにしている。つまり、作業者のPCB暴露の危険を少なくすることができる。
【0041】
≪位置決め手段の構成≫
図7は、図4の一部を示す拡大断面図である。ここでは、図4を適宜参照しながら説明する。
位置決め手段5は、機台ベース部1−1のスライド誘導路にスライド自在に設置される当て板5−1と、この当て板5−1をスライド誘導路9に沿わせて移動させるためのボール軸5−2と、このボール軸5−2を正逆方向に回転操作するためのハンドル5−3とを備えて構成されている。
【0042】
当て板5−1は、油圧シリンダ3のプッシャ部材3−3と同様に略L字形状に形成されて、スライド誘導路9にスライド可能に設置されている。そして、スライド誘導路9から機台ベース部1−1の裏面側に臨む下面にはボールナット部材26が備えられており、このボールナット部材26を介してボール軸5−2との繋がりが形成されている。
これにより、当て板5−1は、ボール軸5−2の回転によって左右方向、機台ベース部1−1の幅方向に移動されるようにしている。
【0043】
ボール軸5−2は、図4に示すように、スライド誘導路9の長手方向において機台ベース部1−1の裏面における左右に2ヶ所に取り付けられる軸受け部材27によって両端部が回転可能に支持され、機台ベース部1−1の幅方向の長辺一側より側方に向けて突出させた端部に操作ハンドル5−3が備えられるようになっている。
【0044】
≪調節手段の構成≫
ここでは、図3及び図6を適宜参照しながら説明する。
調節手段6は、左右一対の切断刃2の間隔Lを、コンデンサBの機種に合わせて調節するためのものであり、図3に示すように、左右一対の切断刃2を左右のスライド誘導路8にそれぞれスライド可能に挟み込み支持するスライド板22にそれぞれ取り付けられるナット部材6−1と、このナット部材6−1に螺挿させて連繋させるボール軸6−2と、このボール軸6−2を正逆方向に回転操作するためのハンドル6−3とを備えて構成されている。
【0045】
ボール軸6−2は、左右一対の切断刃2を、機台ベース部1−1の幅方向の中心線上を境として、この中心線上に接近させる左右方向と、この中心線上から離間させる左右方向にそれぞれ移動させるように、右回り螺子部27と左回り螺子部28を備えている。
そして、このボール軸6−2は、図3に示すように、左右のスライド誘導路8の開口する長手方向において機台ベース部1−1の裏面における左右に2ヶ所に取り付けられる軸受け部材29によって両端部が回転可能に支持され、機台ベース部1−1の幅方向の長辺一側より側方に向けて突出させた端部には操作ハンドル6−3が備えられている。
【0046】
そして、このように構成されている位置決め手段5によるコンデンサBの左右一対の切断刃2に対する切断位置の位置決め調節と、調節手段6による左右一対の切断刃2の間隔Lの調節を行うときに、作業者が目視によって確認するための位置合わせ目盛7は、機台ベース部1−1の移送路Sの側方に目盛ラベルを面一に取り付ける、または、機台ベース部1−1の上面に刻設するなどの適宜の手段によって機台ベース部1−1の上面に備えられるようになっている。
【0047】
≪オイル受けの構成≫
ここでは、図1及び図2を適宜参照しながら説明する。
オイル受け4は、コンデンサ容器B−1の両面壁板bが、一対の切断刃2によって破られるように切断されたときに、コンデンサ容器B−1から流出するPCB油を受け取り回収するためのであり、図1及び図2に示すように、左右一対の切断刃2によってコンデンサ容器B−1が切断される破砕範囲における機台ベース部1−1の裏面に取り付けられるように形成されている。
そして、オイル受け4は、図2に示すように、機台ベース部1−1の前後方向の一方向に向けて傾斜させた傾斜底部4aを備えている。この傾斜底部4aの傾斜最下端には、回収パイプ30が接続されており、この回収パイプ30を介して回収タンク(図示省略)などにPCB油が回収されるようになっている。
【0048】
また、本実施形態では、図2〜図4に示すように、PCB油の飛散を防ぐためのトンネル型の飛散防止壁31を機台ベース部1−1に備えている。
この飛散防止壁31は、透明なアクリル板やその他の透明、不透明などの耐薬品性に優れている板材と骨組みとなる適宜の枠材などによって形成されている。
そして、この飛散防止壁31は、図2、図3及び図4に示すように、機台ベース部1−1の前後の長手方向を2分割する長さにそれぞれ形成されている前側と後側とから形成されており、機台ベース部1−1の幅方向の長手両側縁に備えられているレール32を転動する滑車33よって、前後に開閉移動するようになっている。
【0049】
つぎに、以上のように構成されている本実施形態に係る破砕装置Aに使い方について簡単に説明する。
図8は、コンデンサ容器の両面壁板が、左右一対の切断刃によって破られるように切断されるときの過程を示す概略斜視図である。ここでは、図1〜図4を適宜参照しながら説明する。
まず、破砕するコンデンサBの機種を確認したのちに、図1及び図2に示すように、後退位置で待機している油圧シリンダのプッシャ部材の前にコンデンサBを載承セットする。このとき、機台ベース部1−1の幅方向の中心線上にセンタ位置合わせをした状態で、コンデンサBを載せるようにするとよい。
【0050】
コンデンサBを機台ベース部1−1の上に載せた後に、調節手段6の操作ハンドル6−3を回して、左右一対の切断刃2の間隔Lを、コンデンサBの機種に合わせて調節する。
このとき、作業者は、機台ベース部1−1の上面に備えられている位置合わせ目盛7の見ながら、操作ハンドル6−3を右回し、または、左回しに操作することによって、左右一対の切断刃2の間隔Lを調節し、さらに、位置決め手段5の操作ハンドル5−3を回して、当て板5−1を移動させることによって、コンデンサBを左右一対の切断刃2による破砕線上Xに合わせて位置決めする。このときも同様に、位置合わせ目盛7を見ながら、操作ハンドル5−3を回すことによって行うことができる。
最後に、前後の飛散防止壁31によって機台ベース部1−1を覆うように、飛散防止壁31を閉じることによって(図2の二点鎖線の状態)、コンデンサBの破砕装置Aに対するセットが完了となる。
【0051】
コンデンサBの破砕装置Aへのセットが完了したら、作業者は、油圧シリンダ3を遠隔装置で行う別の部屋に移動し、油圧シリンダ3に繋がる油圧ホースの電磁弁を遠隔操作で操作し、油圧シリンダ3を作動させる。これにより、コンデンサ3は、プッシャ部材3−3によって押されて左右一対の切断刃2の方向へと移動される。この移動は、一瞬に行われる。
コンデンサBが油圧シリンダ3によって、左右一対の切断刃2まで移動されてくると、図8の(a)に示すように、コンデンサ容器B−1の上面壁板b−1に左右一対の切断刃2の鋭角な刃先2aが突き刺さるように、該上面壁板b−1を切断する。この切断によって、切れ目が入れられたコンデンサ容器B−1は大きな切断抵抗を受けることなく、図8の(b)に示すように、両面壁板bが破かれるように切断され、切断された切断片部16は、機台ベース部1−1の幅方向両側の外側に向けて末広がるように逃げる。
【0052】
コンデンサ容器B−1の側面壁板bが切断されることによって、コンデンサ容器B−1から流出だれたPCB油は、機台ベース部1−1に開口されているスライド誘導路8,9、誘導路25から機台ベース部1−1の裏面に備えられているオイル受け4に滴下されて回収される。
【0053】
このように構成されている本実施形態に係る破砕装置Aによれば、油圧シリンダ3によって左右一対の切断刃2に向けてコンデンサBが移動されてくると、コンデンサ容器b−1の両側面壁板bに左右一対の切断刃2の刃先2aが食い込み、両側面壁板bは破られるように切断される。これにより、コンデンサ容器B−1内からPCB油が抜き取られる。コンデンサ容器B−1から抜き取られたPCB油は機台ベース部1−1の裏面に備えられているオイル受け4によって受け取られて回収される。
【0054】
また、左右一対の切断刃2に向けてコンデンサBを移動させるためのプッシャ手段が、迅速な動きで作動する油圧シリンダ3であることで、コンデンサ容器B−1の両側面壁板bは、一瞬にして左右一対の切断刃2によって破られるように切断される。
しかも、油圧シリンダ3は遠隔操作によって作動することから、作業者のPCBに接する時間は短時間ですむ。つまり、コンデンサBなどの油入電機機器の容器を破砕してPCB油を抜き取るときに、作業者がPCBに接する時間は、油圧シリンダ3によって移動し得るように、機台ベース部1−1の上にコンデンサBをセットするときのみの短い時間ですむ。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態に係る油入電機機器の破砕装置を示し、油飛散防止壁を取り外した状態の平面図である。
【図2】図1のII−II線における縦断側面図である。
【図3】図1のIII−III線における縦断正面図である。
【図4】図1のIV−IV線の縦断正面図である。
【図5】左右一対の切断刃と、刃先ブラケット及びスライドブラケットとを示す分解斜視図である。
【図6】図3のVI一VI線における拡大断面図である。
【図7】図4のVI−VI線における拡大断面図である。
【図8】コンデンサ容器の両側面壁板が、左右一対の切断刃によって破られるように切断されるときの過程を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
A 破砕装置
1 機台
2 切断刃
2a 刃先
3 油圧シリンダ(プッシャ手段)
4 オイル受け
5 位置決め手段
6 調節手段
7 位置合わせ目盛
B コンデンサ(油入電機機器)
B−1 コンデンサ容器
b 側面壁板(壁板)
S 移送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で略矩形形状を呈している機台(1)と、
この機台(1)の上に間隔可変可能にそれぞれ設置される左右一対の切断刃(2)と、
この左右一対の切断刃(2)の間隔可変方向に対して直交する方向において前記機台(1)の上に設置されて、前記左右一対の切断刃(2)に向けて油入電機機器を移動させるためのプッシャ手段と、を備え、
かつ、前記機台(1)の下には、前記油入電機機器の容器が、前記一対の切断刃(2)によって切断されたときに流出するPCB油を受け取り回収するためのオイル受け(4)が備えられていることを特徴とする油入電機機器の破砕装置。
【請求項2】
前記油入電機機器を、前記プッシャ手段によって前記左右一対の切断刃(2)に向けて押し込み移動させる前記機台(1)の移送路(S)の側部に、前記油入電機機器の機種に合わせて間隔(L)が調節された前記左右一対の切断刃(2)による前記容器の破砕線上(X)に合わせて、前記油入電機機器を位置決めするための位置決め手段(5)が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の油入電機機器の破砕装置。
【請求項3】
前記油入電機機器の機種に合わせて、前記左右一対の切断刃(2)の間隔(L)を調節するための位置合わせ目盛(7)が、前記機台(1)の上に備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油入電機機器の破砕装置。
【請求項4】
前記プッシャ手段が、油圧シリンダ(3)であり、この油圧シリンダ(3)を作動させるための操作が、遠隔操作で行われるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の油入電機機器の破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−166372(P2008−166372A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352028(P2006−352028)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(507001243)旭建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】