説明

油圧作業機のハイブリッド駆動回路

【課題】第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプを備えたものにあって油圧ポンプの駆動効率を高めることができ、また、動力回収用の電動機を含めて電動機の数を少なくすることができる油圧作業機のハイブリッド駆動回路。
【解決手段】複数の油圧アクチュエータを制御するコントロールバルブ13は、第1油圧ポンプ11に接続され複数の方向制御弁14b,15a,16b,17aから成る第1方向制御弁群13aと、ポンプ・モータ12から成る第2油圧ポンプに接続され別の複数の方向制御弁14a,15b,16a,17bから成る第2方向制御弁群13bとを含み、エンジン18と電動機19とを互いに独立させて配置し、第1油圧ポンプ11をエンジン18に接続し、ポンプ・モータ12から成る第2油圧ポンプを電動機19に接続した構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の油圧作業機に備えられ、油圧ポンプを駆動する原動機であるエンジンと、動力回収用の電動機とを備えた油圧作業機のハイブリッド駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、エンジン及び油圧ポンプと同軸上に電動機を設けるとともに、旋回に伴う動力回収用の別の電動機、すなわち旋回電動機を備えた構成になっている。この従来技術では、旋回電動機は制動時に発電し、そのとき蓄えた電力を使って旋回体を旋回させることが行われる。この旋回体の旋回に際して電力の不足を生じた場合には、エンジンに直結した前述の電動機の発電によってまかなわれる。また、余剰電力が発生した場合には、エンジンの出力をアシストするようになっている。
【0003】
ところで、油圧作業機が油圧ショベルである場合には、複数の油圧ポンプが備えられることがある。この場合、油圧ショベルには例えば、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプと、これらの第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプから吐出される圧油によって作動する複数の油圧アクチュエータと、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向制御弁から成るコントロールバルブとが備えられる。このような構成を有する油圧ショベルに、前述した特許文献1に示される従来技術の考え方を適用させたときには、エンジンの同軸上に電動機と、第1油圧ポンプと、第2油圧ポンプとを設けることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4121016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプを有する油圧ショベルにおいて、特許文献1に示される考え方を採用した場合には、電動機は単体で第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプを駆動する容量を有さないものとなりやすい。しかし仮に、電動機を第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプを駆動し得る容量のものに設定できたとしても、このような構成にあっては、同軸上に配置されたエンジンと、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプによる大きな慣性・抵抗が働くために油圧ポンプの駆動効率が低下しやすい。これにより大きなエネルギロスを生じ、経済性の点で問題がある。
【0006】
なお、このような構成の油圧ショベルにあって、フロント作業装置に含まれるブームの動作、すなわちブーム下げ動作に伴って動力を回収することを考えた場合には、前述の電動機とは別の動力回収用の電動機を設けることが必要になる。したがって、当該ハイブリッド駆動回路の製作コストが高くなり、また、回路構成の大型化を招くという別の問題を生じる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプを備えたものにあって油圧ポンプの駆動効率を高めることができ、また、動力回収用の電動機を含めて電動機の数を少なくすることができる油圧作業機のハイブリッド駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る油圧作業機のハイブリッド駆動回路は、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプと、これらの第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプから吐出される圧油によって作動する複数の油圧アクチュエータと、上記第1油圧ポンプ及び上記第2油圧ポンプから上記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向制御弁から成るコントロールバルブとを備えるとともに、油圧ポンプを駆動する原動機であるエンジンと、動力回収用の電動機とを備えた油圧作業機のハイブリッド駆動回路において、上記コントロールバルブは、上記第1油圧ポンプに接続され複数の方向制御弁から成る第1方向制御弁群と、上記第2油圧ポンプに接続され別の複数の方向制御弁から成る第2方向制御弁群とを含み、上記エンジンと上記電動機とを互いに独立させて配置し、上記第1油圧ポンプを上記エンジンに接続し、上記第2油圧ポンプを上記電動機に接続し、上記第2油圧ポンプがポンプ・モータから成ることを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、エンジンによって第1油圧ポンプを駆動し、電動機によってポンプ・モータを駆動するので、第1油圧ポンプ及びポンプ・モータのそれぞれの駆動に伴う慣性・抵抗を小さくすることができる。すなわち、第1油圧ポンプ、及びポンプ・モータから成る第2油圧ポンプを備えたものにあって、油圧ポンプの駆動効率を高めることができる。また、電動機を第2油圧ポンプであるポンプ・モータの駆動源として活用できるとともに、動力回収に際しては油圧アクチュエータからの戻り油でポンプ・モータを回転させることによって電動機を駆動し、発電させることができ、このポンプ・モータが接続する電動機を動力回収に活用させることができる。すなわち、電動機を油圧ポンプの駆動用と動力回収用に兼用させることができ、動力回収用の電動機を含めて電動機の数を少なくすることができる。
【0010】
また、本発明に係る油圧作業機のハイブリッド駆動回路は、上記発明において、上記ポンプ・モータをモータとして活用させる動力回収時に、上記ポンプ・モータに接続される第2方向制御弁群に含まれる複数の方向制御弁のうちの特定方向制御弁を除く他の全ての方向制御弁を中立に保持する中立保持手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、動力回収時には、中立保持手段によってポンプ・モータに接続される第2方向制御弁群に含まれる特定方向制御弁を除く他の全ての方向制御弁が中立に保持され、特定方向制御弁を介してこの特定方向制御弁で制御される油圧アクチュエータからの戻り油をポンプ・モータに供給して、このポンプ・モータを回転させ、動力回収を行わせることができる。
【0012】
また、本発明に係る油圧作業機のハイブリッド駆動回路は、上記発明において、上記油圧作業機が、ブーム、アーム、及びバケットを含むフロント作業装置を有する油圧ショベルから成り、上記油圧アクチュエータが上記ブームを駆動するブームシリンダを含み、上記ポンプ・モータと上記ブームシリンダとの間に、上記ブームシリンダの伸長動作、及び収縮動作の双方を可能とする第1ブーム用方向制御弁を備え、上記第1油圧ポンプと上記ブームシリンダとの間に、上記ブームシリンダの伸長動作のみを可能にする第2ブーム用方向制御弁を備え、上記特定方向制御弁は、上記第1ブーム用方向制御弁から成ることを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、ブーム下げ動作時に、ブームシリンダの収縮に伴って、ブームシリンダのボトム室からの戻り油を第1ブーム用方向制御弁を介してポンプ・モータに供給し、このポンプ・モータを回転させ、動力回収を行わせることができる。
【0014】
また、本発明に係る油圧作業機のハイブリッド駆動回路は、上記発明において、上記ポンプ・モータと上記第1ブーム用方向制御弁との間に、ジャッキアップ弁を設けたことを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明は、フロント作業装置が接地した状態からジャッキアップ動作が行われるときには、ジャッキアップ弁、及び第1ブーム用方向制御弁を介して、ポンプ・モータから吐出される圧油をブームシリンダのロッド室に供給して、このブームシリンダを収縮させ、所望のジャッキアップ動作を行わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、第1油圧ポンプと第2油圧ポンプのうちの第1油圧ポンプをエンジンによって駆動させ、ポンプ・モータから成る第2油圧ポンプをエンジンとは独立して配置した電動機によって駆動させるようにしたことから、第1油圧ポンプ及びポンプ・モータそれぞれによる慣性・抵抗を小さくすることができ、油圧ポンプの駆動効率を高めることができる。したがって、従来に比べて省エネを実現させることができ、優れた経済性を確保することができる。また、第2油圧ポンプを構成するポンプ・モータを油圧アクチュエータからの戻り油で回転させることによって電動機を駆動して発電させ、動力を回収することができる。これにより、電動機を油圧ポンプすなわちポンプ・モータの駆動用と動力回収用に兼用させることができ、動力回収時に活用される電動機を含めて電動機の数を少なくすることができ、当該ハイブリッド駆動回路の製作コストを従来よりも安くすることができる。また、回路構成のコンパクト化を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るハイブリッド駆動回路の一実施形態が備えられる油圧作業機の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】本実施形態に係るハイブリッド駆動回路の概略構成を示す回路図である。
【図3】図2に示すハイブリッド駆動回路の要部構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る油圧作業機のハイブリッド駆動回路の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係るハイブリッド駆動回路の一実施形態が備えられる油圧作業機の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【0020】
この図1に示す油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2に上下方向の回動可能に取り付けられるフロント作業装置3とを備えている。このフロント作業装置3は、旋回体2に取り付けられるブーム4と、このブーム4の先端に取り付けられるアーム5と、このアーム5の先端に取り付けられ、土砂の掘削作業等を行うバケット6とを含んでいる。また、このフロント作業装置3は、ブーム4を駆動するブームシリンダ7と、アーム8を駆動するアームシリンダ8と、バケット6を駆動するバケットシリンダ9とを含んでいる。
【0021】
図2は本実施形態に係るハイブリッド駆動回路の概略構成を示す回路図、図3は図2に示すハイブリッド駆動回路の要部構成を示す回路図である。
【0022】
図2に示す本実施形態に係るハイブリッド駆動回路は、複数の油圧ポンプ、例えば1つの可変容量油圧ポンプから成る第1油圧ポンプ11と、1つのポンプ・モータ12から成る第2油圧ポンプとを含んでいる。また、第1油圧ポンプ11及びポンプ・モータ12から吐出される圧油によって作動する複数の油圧アクチュエータ、すなわち前述したフロント作業装置3に含まれるブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9の他、走行体1を走行させる走行モータ10、及び旋回体2を旋回させる図示しない旋回モータ等を備えている。走行モータ10は、図示を簡略にさせてあるが、走行体1の右側履帯を駆動する走行右モータと、走行体1の左側履帯を駆動する走行左モータとを含んでいる。
【0023】
また、本実施形態は、第1油圧ポンプ11及びポンプ・モータ12から上述した複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向制御弁から成るコントロールバルブ13を備えている。このコントロールバルブ13は、第1油圧ポンプ11に接続され複数の方向制御弁から成る第1方向制御弁群13aと、ポンプ・モータ12に接続され複数の方向制御弁から成る第2方向制御弁群13bとを含んでいる。
【0024】
コントロールバルブ13の第1方向制御弁群13aには、ブームシリンダ7を制御可能な第2ブーム用方向制御弁14bと、アームシリンダ8を制御可能な第1アーム用方向制御弁15aと、バケットシリンダ9を制御可能な第2バケット用方向制御弁16bと、走行モータ10中の走行右モータを制御可能な走行右用方向制御弁17a等が含まれている。また、第2方向制御弁群13bには、ブームシリンダ7を制御可能な第1ブーム用方向制御弁14aと、アームシリンダ8を制御可能な第2アーム用方向制御弁15bと、バケットシリンダ9を制御可能な第1バケット用方向制御弁16aと、走行モータ10の走行左モータを制御可能な走行左用方向制御弁17b等が含まれている。
【0025】
また、本実施形態は、油圧ポンプの駆動源であるエンジン18と、油圧ポンプの駆動源
であるとともに、発電可能な電動機19とを互いに独立させて配置してある。第1方向制御弁群13aが接続される第1油圧ポンプ11をエンジン18に接続し、第2方向制御弁群13bが接続され第2油圧ポンプを構成するポンプ・モータ12を電動機19に接続させてある。すなわち、エンジン18と電動機19とは互いに並設させてある。標準クラスの油圧ショベルに備えられるエンジンの出力を仮に100とすると、本実施形態に備えられるエンジン18の出力は例えば50に設定してあり、電動機19の出力も例えば50に設定してある。つまり本実施形態におけるエンジン18の出力と電動機19の出力の割合は、例えば50:50に設定してある。なお、電動機19は、バッテリによって駆動するようにしてもよく、商用電源によって駆動するようにしてもよい。
【0026】
また、本実施形態は、各油圧アクチュエータに対応する方向制御弁を切り換え操作する操作装置を備えている。例えば図2に示すように、第1ブーム用方向制御弁14a及び第2ブーム用方向制御弁14bを切り換え操作するブーム用操作装置20や、第1アーム用方向制御弁15a及び第2アーム用方向制御弁15bを切り換え操作するアーム用操作装置21などを備えている。
【0027】
また、本実施形態は、ポンプ・モータ12をモータとして活用させる動力回収に際して、ブーム下げ動作に伴う動力回収を考慮しており、このブーム下げ動作を行うブームシリンダ7を制御する第2方向制御弁群13bに含まれる第1ブーム用方向制御弁14aを特定方向制御弁に設定してある。
【0028】
また、動力回収時にポンプ・モータ12を回転させる際に、第2方向制御弁群13bに含まれる複数の方向制御弁のうちの前述した特定方向制御弁である第1ブーム用方向制御弁14aを除く他の全ての方向制御弁、すなわち第2アーム用方向制御弁15b、第1バケット用方向制御弁16a、走行右用方向制御弁17b等を中立に保持する中立保持手段を備えている。この中立保持手段は、同図2に示す切換弁22等によって構成されている。切換弁22は、アーム用操作装置21の操作に関連して設けたものであり、ブーム用操作装置20がブーム下げ動作を行うように操作されたとき、ブーム用操作装置20から出力されたパイロット圧に応じて中立位置である下段の切換位置22aから上段の切換位置22bに切り換えられ、アーム用操作装置21による第1方向制御弁群13aに含まれる第1アーム用方向制御弁15aの切り換え操作を可能とするものの、第2方向制御弁群13bに含まれる第2アーム用方向制御弁15bの左右制御部をタンク23に連通させて中立に保持する。なお、切換弁22は、中立位置である下段の切換位置22aに保たれているときには、アーム用操作装置21の操作に応じて、第1アーム用方向制御弁15aと第2アーム用方向制御弁15bの双方の切り換え操作が可能となっている。
【0029】
図示省略してあるが、前述した切換弁22と同等の切換弁、すなわち中立保持手段を構成する切換弁を、図示しないバケット用操作装置に関連させて設けてある。同様に、切換弁22と同様の切換弁を、図示しない走行用操作装置に関連させて設けてある。
【0030】
図3に示すように、前述した第1ブーム用方向制御弁14aはブーム上げ動作のためにブームシリンダ7のボトム室7aに圧油を供給して、このブームシリンダ7を伸長させる切換位置である上段の切換位置14a1と、ブーム下げ動作のためにブームシリンダ7のロッド室7bに圧油を供給して、このブームシリンダ7を収縮させる切換位置である下段の切換位置14a2とを有している。これに対して、前述した第2ブーム用方向制御弁14bは、ブーム上げ動作のための切換位置である上段の切換位置14b1は有するものの、ブームシリンダ7を収縮させるための切換位置は有していない。この第2ブーム用方向制御弁14bは、例えばセンタバイパス型の方向制御弁から成っている。
【0031】
第1油圧ポンプ11と第2ブーム用方向制御弁14bとの間には、第2ブーム用方向制御弁14b側から第1油圧ポンプ11側への圧油の逆流を阻止する逆止弁24を設けてある。また、ポンプ・モータ12の出口ポート12bに連絡される管路28には、第1ブーム用方向制御弁14a側からポンプ・モータ12側への圧油の逆流を阻止する逆止弁25を設けてある。
【0032】
さらに、本実施形態は、ポンプ・モータ12と、第1ブーム用方向制御弁14a及び逆止弁25との間に、フロント作業装置3を接地させて行なわれるジャッキアップ操作時に活用されるジャッキアップ弁26を設けてある。
【0033】
このジャッキアップ弁26は、同図3の上段の中立位置26aに、ポンプ・モータ12の入口ポート12aに連絡される管路27と連通する油路26a1と、ポンプ・モータ12の出口ポート12bに連絡される管路28と連通する油路26a2と、タンク23に連絡される管路23aに連通する油路26a3と、油路26a1と油路26a3との接続点26a4よりも第1ブーム用方向制御弁14a側に位置する油路26a1部分に設けられる絞り26a5とを有している。また、このジャッキアップ弁26は、同図3の下段の切換位置26bに、ポンプ・モータ12の入力ポート12aに連絡される管路27と連通する油路26b1と、ポンプ・モータ12の出口ポート12bに連絡される管路28と連通する油路26b2と、タンク23に連絡される管路23aと油路26b2とを接続させる油路26b3とを有している。このような中立位置26a及び切換位置26bを有するジャッキアップ弁26は、管路27の圧力の上昇に伴って切換位置26bに切り換えられ、管路28の圧力の低下に伴ってばねの力により中立位置26aに復帰するようになっている。
【0034】
なお、ポンプ・モータ12が接続される電動機19は、図示しない制御装置によって、ブーム用操作装置20の操作量に応じた回転数に制御されるようになっている。
【0035】
このように構成した本実施形態は、当該油圧ショベルで実施される土砂の掘削作業等の通常作業時には、エンジン18によって第1油圧ポンプ11が駆動され、電動機19によって第2油圧ポンプを構成するポンプ・モータ12が駆動される。したがって、第1油圧ポンプ11から吐出される圧油が図2に示すコントロールバルブ13に含まれる第1方向制御弁群13aの第2ブーム用方向制御弁14b、第1アーム用方向制御弁15a、第2バケット用方向制御弁16b、走行右用方向制御弁17a等に供給され、ポンプ・モータ12から吐出される圧油がコントロールバルブ13に含まれる第2方向制御弁群13bの第1ブーム用方向制御弁14a、第2アーム用方向制御弁15b、第1バケット用方向制御弁16a、走行左用方向制御弁17b等に供給される。これにより、ブーム用操作装置20、アーム用操作装置21等の操作装置を操作することによりコントロールバルブ13に含まれる対応する方向制御弁が切り換えられて所望の作業を実施できる。
【0036】
例えば、ブーム用操作装置20がブーム上げ側に操作されたときには、図3に示す第1ブーム用方向制御弁14aが上段の切換位置14a1に切り換えられ、第2ブーム用方向制御弁14b1が上段の切換位置14b1に切り換えられる。これにより、第1油圧ポンプ11から吐出される圧油が逆止弁24、第2ブーム用方向制御弁14bの切換位置14b1を介してブームシリンダ7のボトム室7aに供給される、同時にブーム用操作装置20の操作量に応じて回転数が制御される電動機19によって駆動されるポンプ・モータ12から吐出される圧油が、出口ポート12bの管路28に導かれ、ジャッキアップ弁26の中立位置26aの油路26a2、逆止弁25、第1ブーム用方向制御弁14aの切換位置14a1を介してブームシリンダ7のボトム室7aに供給される。また、ブームシリンダ7のロッド室7bの油は、第1ブーム用方向制御弁14aの切換位置14a1、管路27、ジャッキアップ弁26の切換位置26aの油路26a1、絞り26a5、油路26a3、管路23aを介してタンク23に戻される。したがって、ブームシリンダ7が伸長して所望のブーム上げ動作が行われる。
【0037】
また、ブーム用操作装置20がブーム下げ側に操作されたときには、第2ブーム用方向制御弁14bは中立に保持されたままとなり、第1ブーム用方向制御弁14aは同図3に示す下段の切換位置14a2に切り換えられる。これにより、ポンプ・モータ12から吐出される圧油が管路28、ジャッキアップ弁26の中立位置26aの油路26a2、逆止弁25、第1ブーム用方向制御弁14aの下段の切換位置14a2を介してブームシリンダ7のロッド室7bに供給され、ブームシリンダ7のボトム室7aの油は第1ブーム用方向制御弁14aの切換位置14a2、管路27、ジャッキアップ弁26の切換位置26aの油路26a1、絞り26a5、油路26a3、管路23aを介してタンク23に戻される。したがって、ブームシリンダ7が収縮して所望のブーム下げ動作が行われる。
【0038】
なお、このブーム下げ動作の間、ブーム用操作装置20のブーム下げ操作に伴って、図2に示す切換弁22が上段位置22に切り換えられ、コントロールバルブ13の第2方向制御弁群13bに含まれる第2アーム用方向制御弁15b、第1バケット用方向制御弁16a、及び走行左用方向制御弁17bは中立に保たれるので、アーム用操作装置21等の他の操作装置の操作によってブーム下げ動作が影響を受けることがない。仮にブーム下げ動作とともに、アーム用操作装置21等のブーム用操作装置とは異なる他の操作装置が操作されたときには、第1油圧ポンプ11から吐出された圧油がコントロールバルブ13の第1方向制御弁群13aに含まれる第1アーム用方向制御弁15a、第2バケット用方向制御弁16b、走行右用方向制御弁17a等を介して、それぞれ対応する油圧アクチュエータを作動させて所望の複合操作を実施することができる。
【0039】
そして、前述のようなブーム下げ動作が行われる間、管路27に油が戻される際に、ジャッキアップ弁26の中立位置26aの絞り26a5によって、ジャッキアップ弁26の上流側の管路27部分の圧力による力が、ばね力よりも高くなると、ジャッキアップ弁26が下段の切換位置26bに切り換えられる。これによりブームシリンダ7のボトム室7aの油がジャッキアップ弁26の切換位置26bの油路26b1、管路27を介してポンプ・モータ12の入口ポート12aに導かれ、ポンプ・モータ12の出口ポート12bから排出した油は管路28、ジャッキアップ弁26の切換位置26bの油路26b2,26b3、管路23aを介してタンク23に導かれる。これに伴いポンプ・モータ12がモータとして働き、このポンプ・モータ12によって電動機19が駆動され、発電する。この発電によって生じた電力は、例えば図示しないバッテリ等に蓄えられる。このようにして蓄えられた電力は、例えば電動機19の駆動用に活用される。
【0040】
このようなブーム下げ動作によって、フロント作業装置3が接地すると、管路27内の圧力が低下して、ジャッキアップ弁26は、そのばね力等により再び中立位置26aに復帰する。したがって、フロント作業装置3の接地に引き続いてジャッキアップ操作が行われる場合等にあっては、ブーム用操作装置20の下げ操作が継続されることにより、第1ブーム用方向制御弁14aは切換位置14a2のままに保たれる。したがって、ポンプ・モータ12から吐出される圧油が、管路28、ジャッキアップ弁26の中立位置26aの油路26a1、逆止弁25、第1ブーム用方向制御弁14aの切換位置14a2を介してブームシリンダ7のロッド室7bに供給され、ブームシリンダ7のボトム室7aの油は、第1ブーム用方向制御弁14aの切換位置14a2、ジャッキアップ弁26の中立位置26aの絞り26a5、油路26a1,26a3、管路23aを介してタンク23に戻される。これにより、ブームシリンダ7が収縮して所望のジャッキアップ操作が行われる。
【0041】
このように構成した本実施形態によれば、エンジン18によって第1油圧ポンプ11を駆動し、電動機19によって第2油圧ポンプを構成するポンプ・モータ12を駆動するので、第1油圧ポンプ11及びポンプ・モータ12のそれぞれの駆動に伴う慣性・抵抗を小さくすることができる。すなわち、第1油圧ポンプ11、及びポンプ・モータ12から成る第2油圧ポンプを備えたものにあって、油圧ポンプの駆動効率を高めることができる。したがって、省エネを実現させることができ、優れた経済性を確保することができる。また、電動機19を第2油圧ポンプであるポンプ・モータ12の駆動源として活用できるとともに、ブーム下げ操作に伴う動力回収に際しては、前述したようにブームシリンダ7のボトム室7aからの戻り油でポンプ・モータ12を回転させ、電動機19を駆動して発電させることができ、このポンプ・モータ12に接続している電動機19を動力回収用に活用させることができる。すなわち、電動機19を油圧ポンプの駆動用と動力回収用に兼用させることができ、動力回収用の電動機を含めて電動機の数を少なくすることができる。したがって、この本実施形態に係るハイブリッド駆動回路の製作コストを安くすることができる。また、回路構成のコンパクト化を実現させることができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、エンジン18によって駆動される第1油圧ポンプ11を単に1つ設けた構成にしてあるが、当該油圧ショベルが大型となる場合等にあっては、エンジン18によって駆動される複数の第1油圧ポンプを設けた構成にしてもよい。また上記では、第2油圧ポンプを構成するポンプ・モータ12aを単に1つ設けた構成にしてあるが、第2油圧ポンプを複数のポンプ・モータによって構成してもよい。その場合にはポンプ・モータごとに異なる電動機を設けることもできる。
【0043】
また、上記実施形態では、エンジン18と電動機19の出力の割合を50:50に設定してあるが、この割合を異ならせるように構成してもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、ポンプ・モータ12と第1ブーム用方向制御弁14aとの間にジャッキアップ弁26を設けた構成にしてあるが、ジャッキアップ動作を必要としない油圧ショベル等の油圧作業機にあっては、このジャッキアップ弁を除いた構成とすることができる。
【0045】
また、図3に示すように、第2ブーム用方向制御弁14bはセンタバイパス型の方向制御弁によって構成してあるが、第1ブーム用方向制御弁14aも、第2ブーム用方向制御弁14bと同様のセンタバイパス型の方向制御弁によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
3 フロント作業装置
4 ブーム
7 ブームシリンダ
7a ボトム室
7b ロッド室
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 走行モータ
11 第1油圧ポンプ
12 ポンプ・モータ(第2油圧ポンプ)
13 コントロールバルブ
13a 第1方向制御弁群
13b 第2方向制御弁群
14a 第1ブーム用方向制御弁(特定方向制御弁)
14b 第2ブーム用方向制御弁
18 エンジン
19 電動機
20 ブーム用操作装置
22 切換弁(中立保持手段)
23 タンク
23a 管路
26 ジャッキアップ弁
26a2 絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプと、これらの第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプから吐出される圧油によって作動する複数の油圧アクチュエータと、上記第1油圧ポンプ及び上記第2油圧ポンプから上記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向制御弁から成るコントロールバルブとを備えるとともに、油圧ポンプを駆動する原動機であるエンジンと、動力回収用の電動機とを備えた油圧作業機のハイブリッド駆動回路において、
上記コントロールバルブは、上記第1油圧ポンプに接続され複数の方向制御弁から成る第1方向制御弁群と、上記第2油圧ポンプに接続され別の複数の方向制御弁から成る第2方向制御弁群とを含み、
上記エンジンと上記電動機とを互いに独立させて配置し、
上記第1油圧ポンプを上記エンジンに接続し、上記第2油圧ポンプを上記電動機に接続し、
上記第2油圧ポンプがポンプ・モータから成ることを特徴とする油圧作業機のハイブリッド駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧作業機のハイブリッド駆動回路において、
上記ポンプ・モータをモータとして活用させる動力回収時に、上記ポンプ・モータに接続される第2方向制御弁群に含まれる複数の方向制御弁のうちの特定方向制御弁を除く他の全ての方向制御弁を中立に保持する中立保持手段を備えたことを特徴とする油圧作業機のハイブリッド駆動回路。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧作業機のハイブリッド駆動回路において、
上記油圧作業機が、ブーム、アーム、及びバケットを含むフロント作業装置を有する油圧ショベルから成り、
上記油圧アクチュエータが上記ブームを駆動するブームシリンダを含み、
上記ポンプ・モータと上記ブームシリンダとの間に、上記ブームシリンダの伸長動作、及び収縮動作の双方を可能とする第1ブーム用方向制御弁を備え、
上記第1油圧ポンプと上記ブームシリンダとの間に、上記ブームシリンダの伸長動作のみを可能にする第2ブーム用方向制御弁を備え、
上記特定方向制御弁は、上記第1ブーム用方向制御弁から成ることを特徴とする油圧作業機のハイブリッド駆動回路。
【請求項4】
請求項3に記載の油圧作業機のハイブリッド駆動回路において、
上記ポンプ・モータと上記第1ブーム用方向制御弁との間に、ジャッキアップ弁を設けたことを特徴とする油圧作業機のハイブリッド駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−231823(P2011−231823A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100993(P2010−100993)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】