説明

油圧作業機械

【課題】機械室外部から排気後処理装置へのアクセスを可能にする開閉可能なカバー部材を備えた油圧作業機械において、排気フィルタを粒子状物質の目詰まりから再生させるための再生制御を、カバー部材が開いているときに行わないようにすることができること。
【解決手段】機械室には、この機械室外部から排気後処理装置31へのアクセスを可能にする開閉可能なカバー部材6a,6bと、これらのそれぞれの閉じた状態を検知するリミットスイッチ70,71とが設けられている。コントローラ50は、リミットスイッチ70によりカバー部材6aの閉じた状態が検知されないとき、および、リミットスイッチ71によりカバー部材6bの閉じた状態が検知されないときには、再生手段(燃料噴射装置14a、可変機構部15a、可変絞り弁40)に対し再生制御を行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気に含まれる粒子状物質を排気フィルタにより捕捉する排気後処理装置を備え、排気フィルタを目詰まりさせている粒子状物質を燃焼させて除去することにより排気フィルタの機能を再生させる油圧作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧作業機械は、エンジンを駆動源とする油圧ポンプの吐出流量と吐出圧の両方を上昇させる再生制御を行う再生制御手段を備えている。油圧ポンプの吐出流量と吐出圧の両方を上昇させることによってエンジン出力が上昇し、これにより、排気の温度が上昇する。この結果、排気フィルタを目詰まりさせている粒子状物質が排気の熱により燃焼させられ、排気フィルタから除去される。また、再生制御は、排気フィルタの目詰まりを検知したときに自動的に行われるようになっている。(特許文献1参照)
また、油圧作業機械の一種である油圧ショベルにおいて、この油圧ショベルの本体である旋回体には、機械室が区画形成されている。この機械室には、油圧ポンプ、この油圧ポンプを駆動するエンジン、および、排気後処理装置を含むエンジンの補機類等の機器が収容されている。機械室の天井の一部は、旋回体に対して回動可能に設けられたカバー部材により形成されている。このカバー部材を上方向に回動させることによって機械室の上方から機械室内へのアクセスが可能になり、これによって機械室内の機器に対しメンテナンスが行えるようになる。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3073380号公報
【特許文献2】特開11−78988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目詰まりした排気フィルタを十分に再生させるのに必要な排気温度は、枯葉等の可燃物を発火させるほど高温である。また、カバー部材が開かれて機械室が開放された状態では、排気後処理装置上およびその周囲に、枯葉等の可燃物が接近したり接触したりするおそれがある。これらのことから、目詰まりした排気フィルタを再生させるための再生制御を行うときには、火災の発生を防止するためにカバー部材を閉じておくことが望ましい。
【0005】
また、カバー部材が開かれて機械室が開放された状態では、人が機械室内の排気後処理装置に対して、または排気後処理装置近傍の機器に対してメンテナンスを行っている可能性がある。再生制御が自動的に行われる場合、メンテナンスを行う人の存在に関係なく、再生制御が行われることになる。このことから、カバー部材が開いた状態では、再生制御が行われないようにすることが望ましい。
【0006】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであって、その目的は、機械室外部から排気後処理装置へのアクセスを可能にする開閉可能なカバー部材を備えた油圧作業機械において、排気フィルタを粒子状物質の目詰まりから再生させるための再生制御を、カバー部材が開いているときに行わないようにすることができる油圧作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するために本発明に係る油圧作業機械は次のように構成されている。
【0008】
本発明に係る油圧作業機械は、エンジンの排気に含まれる粒子状物質を排気フィルタにより捕捉する排気後処理装置と、この排気後処理装置を収容した機械室と、前記排気フィルタを目詰まりさせている粒子状物質を燃焼させて除去する再生手段と、この再生手段に対し再生制御を行って前記排気フィルタから粒子状物質を除去させる再生制御手段と、を備え、前記機械室には、この機械室の外部から前記排気後処理装置へのアクセスを可能にする開閉可能なカバー部材が設けられた油圧作業機械において、前記機械室には、前記カバー部材が閉じた状態であることを検知する検知手段が設けられ、前記再生制御手段は、前記検知手段により前記カバー部材の閉じた状態が検知されたことを条件として前記再生手段に対し再生制御を行い、前記検知手段により前記カバー部材の閉じた状態が検知されないときには前記再生手段に対し再生制御を行わないことを特徴とする。
【0009】
このように構成された油圧作業機械において、再生制御手段は、検知手段によりカバー部材の閉じた状態が検知されたことを条件として、再生手段に対し再生制御を行い、検知手段によりカバー部材の閉じた状態が検知されないときには、すなわち、カバー部材の開いた状態が検知されたときには、再生手段に対し再生制御を行わない。これにより、再生制御をカバー部材が開いているときに行わないようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前述のように、排気フィルタを粒子状物質の目詰まりから再生させるための再生制御を、カバー部材が開いているときに行わないようにすることができる。したがって、再生制御中に排気後処理装置上およびその周囲に、枯葉等の可燃物が接近したり接触したりすることを防止でき、また、排気後処理装置に対し、または排気後処理装置近傍の機器に対し人がメンテナンスを行っているときに再生制御が行われることを防止できる。つまり、再生制御時の油圧作業機械の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧作業機械である油圧ショベルの左側面図である。
【図2】図1に示した油圧ショベルの本体である旋回体の拡大上面図である。
【図3】図2のIII−III切断線により旋回体を切断して機械室内の機器の配置を示す図である。
【図4】図2に示した第1カバー部材および第2カバー部材が閉じた状態を示す斜視図である。
【図5】図4に示した第2カバー部材が開いた状態を示す斜視図である。
【図6】図1に示した油圧ショベルに備えられた排気後処理装置の排気フィルタの再生に係る構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示したコントローラにおける処理のうち、自動的に再生制御を行う自動再生モードへの移行、および自動再生モードの解除に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】コントローラが自動制御モード時に行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】カバー部材の別の例を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る油圧作業機械の別の例であるホイールローダの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について図1〜図8を用いて説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る油圧作業機械の一例としての油圧ショベル1は、履帯を駆動して走行する走行体2と、油圧ショベル1の本体であって走行体2に旋回自在に結合している旋回体3と、旋回体3の前部の略中央に設けられたバックホウタイプのフロント作業装置7とを有する。
【0014】
旋回体3は、フロント作業装置7の左側方に設けられた運転室4と、旋回体3の後端部を形成しているカウンタウェイト5とを有する。
【0015】
図2に示すように、運転室4とカウンタウェイト5の間には、機械室6が設けられている。図3に示すように、その機械室6内には、エンジン14(ディーゼルエンジン)が収容されている。機械室6内において、エンジン14の右端部には、可変容量型油圧ポンプ15と不図示の固定容量型油圧ポンプとが、エンジン出力を伝達可能に結合している。エンジン14の左端部には、冷却ファン80がエンジン出力を伝達可能に結合している。冷却ファン80の左方には、ラジエータ等の熱交換器81が設けられている。
【0016】
エンジン14、可変容量型油圧ポンプ15および固定容量型油圧ポンプ、冷却ファン80の上方に位置する機械室6の天井部分は、開閉可能な第1カバー部材6aおよび第2カバー部材6bにより形成されている。
【0017】
第1カバー部材6aの左縁部は旋回体3の上面にヒンジ結合されている。図4と図5を比較して分かるように、第1カバー部材6aを上方向に回動させることによって、機械室6上面のうち左側の領域が開き、これにより機械室6外部から冷却ファン80および熱交換器81に対しメンテナンスのためのアクセスができるようになる。
【0018】
エンジン14からは、このエンジン14の排気を油圧ショベル1の外部に導くための排気管30が導出されている。エンジン14よりも上方に位置する排気管30の部分には、排気後処理装置31が設けられている。この排気後処理装置31の下流側からは排気管30の終端部30aが延びている。この終端部30aは第2カバー部材6bを貫通して位置し、排気口30bを有する。第2カバー部材6bは旋回体3の上面に対し、複数個所をネジ止めされて着脱可能になっている。第2カバー部材6bを旋回体3の上面から取り外すことによって機械室6の上面のうち右側の領域が開き、これにより機械室6外部から排気後処理装置31に対しメンテナンスのためのアクセスができる。
【0019】
可変容量型油圧ポンプ15は、走行体2の駆動源である不図示の左走行モータ(油圧モータ)および右走行モータ(油圧モータ)と、旋回体3の駆動源である不図示の旋回モータ(油圧モータ)と、ブーム8を駆動するブームシリンダ11(油圧シリンダ)と、アーム9を駆動するアームシリンダ12(油圧シリンダ)と、バケット10を駆動するバケットシリンダ13(油圧シリンダ)とに供給する圧油を吐出するメインポンプである。
【0020】
図示しないが、可変容量型油圧ポンプ15と左走行モータとの間、可変容量型油圧ポンプ15と右走行モータとの間、可変容量型油圧ポンプ15と旋回モータとの間、可変容量型油圧ポンプ15とブームシリンダ11との間、可変容量型油圧ポンプ15とアームシリンダ12との間、可変容量型油圧ポンプ15とバケットシリンダ13との間のそれぞれには、個別にコントロールバルブが設けられている。各コントロールバルブは、そのコントロールバルブに対応する1の油圧アクチュエータに、すなわち、左走行モータ、右走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ11、アームシリンダ12およびバケットシリンダ13のうちの1に供給される圧油の流量と流れの方向とを制御するものであり、その油圧アクチュエータへの圧油を遮断することができるものである。前出の不図示の固定容量型油圧ポンプは、各コントロールバルブに与えるパイロット圧の油圧源、すなわちパイロットポンプである。
【0021】
運転室4内には、左走行操作レバー装置16、右走行操作レバー装置17、旋回・アーム操作レバー装置18、ブーム・バケット操作レバー装置19Dが設けられている。
【0022】
左走行操作レバー装置16は、予め設定された中立位置から前後方向に傾倒操作可能なペダル付操作レバー16aと、このペダル付操作レバー16aの操作方向および操作量に応じたパイロット圧を固定容量型油圧ポンプの吐出圧から生成するパイロット圧生成部16bとを有する。パイロット圧生成部16bは、前方向へのペダル付操作レバー16aの傾倒操作に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁と、後方向へのペダル付操作レバー16aの傾倒操作に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁とが内蔵されている。右走行操作レバー装置17も左走行操作レバー装置16と同様の、ペダル付操作レバー17aとパイロット圧生成部17bとを有する。左走行操作レバー装置16により生成されるパイロット圧は、左走行モータに対応するコントロールバルブを操作する。右走行操作レバー装置17により生成されるパイロット圧は、右走行モータに対応するコントロールバルブを操作する。
【0023】
旋回・アーム操作レバー装置18は、予め設定された中立位置から十字方向(前後左右方向)に傾倒操作可能な操作レバー18aと、この操作レバー18aの操作方向および操作量に応じたパイロット圧を固定容量型油圧ポンプの吐出圧から生成するパイロット圧生成部18bとを有する。パイロット圧生成部18bは、前方向への操作レバー18aの傾倒操作に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁と、後方向への操作レバー18aの傾倒操作に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁と、左方向への操作レバー18aの傾倒操作に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁と、右方向への操作レバー18aの傾倒操作に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁とが内蔵されている。
【0024】
前後方向への操作レバー18aの傾倒操作に伴って旋回・アーム操作レバー装置18により生成されるパイロット圧は、旋回モータに対応するコントロールバルブを操作する。左右方向への操作レバー18aの傾倒操作に伴って旋回・アーム操作レバー装置18により生成されるパイロット圧は、アームシリンダ12に対応するコントロールバルブを操作する。
【0025】
ブーム・バケット操作レバー装置19Dは、予め設定された中立位置から十字方向(前後左右方向)に傾倒操作可能な操作レバー19aと、この操作レバー19aの操作方向および操作量に応じたパイロット圧を固定容量型油圧ポンプの吐出圧から生成するパイロット圧生成部19bとを有する。パイロット圧生成部19bは、前方向への操作レバー19aの傾倒操作に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁と、後方向への操作レバー19aの傾倒操作に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁と、左方向への操作レバー19aの傾倒操作に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁と、右方向への操作レバー19aの傾倒操作に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁とが内蔵されている。
【0026】
前後方向への操作レバー19aの傾倒操作に伴ってブーム・バケット操作レバー装置19Dにより生成されるパイロット圧は、ブームシリンダ11に対応するコントロールバルブを操作する。左右方向への操作レバー19aの傾倒操作に伴ってブーム・バケット操作レバー装置19Dにより生成されるパイロット圧は、バケットシリンダ13に対応するコントロールバルブを操作する。
【0027】
排気後処理装置31はエンジン14の排気に含まれる粒子状物質を捕捉する排気フィルタ31aと、この排気フィルタ31aにおける粒子状物質の燃焼を促す酸化触媒31bと、これら排気フィルタ31aおよび酸化触媒31bを収容した円筒状のケース31cとを有する。
【0028】
排気フィルタ31aは捕捉した粒子状物質により目詰まりする。この目詰まりを解消して排気フィルタ31aの機能(排気を通過させつつ粒子状物質を捕捉する機能)を再生させるために、排気後処理装置31には、排気フィルタ31aに堆積した粒子状物質を燃焼させて除去する再生手段が付設されている。本実施形態においては、その再生手段として、通常時よりもエンジン出力を上昇させて排気温度を高くし、その排気温度により粒子状物質を燃焼させるものが採用されている。
【0029】
その再生手段は、可変容量型油圧ポンプ15の吐出圧を、管路を絞って上昇させる可変絞り弁40と、可変容量型油圧ポンプ15の押し退け容積の調整を可能にしている可変機構部15aと、エンジン14の燃料噴射装置14aとから構成されている。これら可変絞り弁40、可変機構部15aおよび燃料噴射装置14aは、コントローラ50により制御されるようになっている。
【0030】
コントローラ50は、CPU、ROMおよびRAMを有し、そのROMに書き込まれたコンピュータプログラムに従って動作するものである。このコントローラ50は、排気フィルタ31aが再生するよう可変絞り弁40、可変機構部15aおよび燃料噴射装置14aの制御を行う再生制御手段54として機能する。この再生制御手段54は、可変容量型油圧ポンプ15の吐出圧が予め設定された高さになるよう可変絞り弁40を制御し、かつ、最小押し退け容積が予め設定された大きさになるよう可変機構部15aを制御し、かつ、未燃の燃料が酸化触媒31bに達するタイミングで燃料噴射が行われる状態に燃料噴射装置14aを制御する。つまり、可変絞り弁40、可変機構部15a、燃料噴射装置14aを制御することによってエンジン出力を上昇させるとともに、酸化触媒31bで生じた反応熱により燃料を燃焼させることによって、粒子状物質の燃焼に十分な排気温度が確保されるようになっている。
【0031】
前出の左走行操作レバー装置16において、パイロット圧生成部16bには、ペダル付操作レバー16aの前方向への傾倒操作により生成されたパイロット圧をパイロット圧信号(電気信号)に変換して出力するパイロット圧センサ61A(圧力センサ)と、ペダル付操作レバー16aの後方向への傾倒操作により生成されたパイロット圧をパイロット圧信号に変換して出力するパイロット圧センサ61Bとが設けられている。これと同様に、右走行操作レバー装置17において、パイロット圧生成部17bには、ペダル付操作レバー17aの前方向の傾倒操作により生成されたパイロット圧をパイロット圧信号に変換して出力するパイロット圧センサ62Aと、ペダル付操作レバー71aの後方向への傾倒操作により生成されたパイロット圧をパイロット圧信号に変換して出力するパイロット圧センサ62Bとが設けられている。パイロット圧センサ61A,61B,62A,62Bのそれぞれから出力されたパイロット圧信号はいずれもコントローラ50に入力されるようになっている。
【0032】
また、旋回・アーム操作レバー装置18において、パイロット圧生成部18bには、操作レバー18aの前方向への傾倒操作により生成されたパイロット圧をパイロット圧信号に変換して出力するパイロット圧センサ63Aと、操作レバー18aの後方向への傾倒操作により生成されたパイロット圧をパイロット圧信号に変換して出力するパイロット圧センサ63Bと、操作レバー18aの左方向への傾倒操作により生成されたパイロット圧をパイロット圧信号に変換して出力するパイロット圧センサ63Cと、操作レバー18aの右方向への傾倒操作により生成されたパイロット圧をパイロット圧信号に変換して出力するパイロット圧センサ63Dとが設けられている。これらのパイロット圧センサ63A〜63Dのそれぞれから出力されたパイロット圧信号はいずれもコントローラ50に入力されるようになっている。
【0033】
これと同様に、ブーム・バケット操作レバー装置19Dにおいて、パイロット圧生成部19bには、操作レバー19aの前方向への傾倒操作により生成されたパイロット圧をパイロット圧信号に変換して出力するパイロット圧センサ64Aと、操作レバー19aの後方向への傾倒操作により生成されたパイロット圧をパイロット圧信号に変換して出力するパイロット圧センサ64Bと、操作レバー19aの左方向への傾倒操作により生成されたパイロット圧をパイロット圧信号に変換して出力するパイロット圧センサ64Cと、操作レバー19aの右方向への傾倒操作により生成されたパイロット圧をパイロット圧信号に変換して出力するパイロット圧センサ64Dとが設けられている。これらのパイロット圧センサ64A〜64Dのそれぞれから出力されたパイロット圧信号はいずれもコントローラ50に入力されるようになっている。
【0034】
排気後処理装置31には差圧センサ67が付設されている。この差圧センサ67は排気フィルタ31aの上流側と下流側との間の差圧を差圧信号(電気信号)に変換して出力するようになっている。この差圧信号もコントローラ50に入力されるようになっている。
【0035】
第1カバー部材6aと第2カバー部材6bとにより開閉される開口部6cの縁部のうち、第1カバー部材6a側の部分には、第1カバー部材6aが閉じたことに連動してオン状態になり第1閉状態検知信号(電気信号)を出力する第1リミットスイッチ70が設けられている。さらに、その縁部の第2カバー部材6b側の部分には、第2カバー部材6bが閉じたことに連動してオン状態になり第2閉状態検知信号(電気信号)を出力する第2リミットスイッチ71が設けられている。第1,第2閉状態検知信号はいずれもコントローラ50に入力されるようになっている。第1リミットスイッチ70は第1カバー部材6aが閉じた状態であることを検知する検知手段であり、第2リミットスイッチ71は第2カバー部材6bが閉じた状態を検知する検知手段である。
【0036】
コントローラ50は、開閉判定手段51、目詰まり判定手段52、操作状態判定手段53、および前出の再生制御手段54として機能し、図7,図8に示す流れで処理を行うよう設定されている。再生制御手段54は、排気フィルタ31aの目詰まりを契機に自動的に再生制御を行う自動再生モードで再生制御を行うよう設定されている。
【0037】
自動再生モードに係る処理ついて図7を用いて説明する。
【0038】
図7に示す処理を行う際、はじめに、コントローラ50は操作状態判定手段53として機能する。この操作状態判定手段53としてのコントローラ50は、パイロット圧センサ61A,61B,62A,62B,63A〜63D,64A〜64Dのそれぞれから出力されたパイロット圧信号を全て入力し、それらのパイロット圧信号に示されたパイロット圧が全て最低値(タンク圧)であるか、すなわち、全ての操作レバー16a〜19aの中立状態が検知された状態かを判定する(図7中のステップS1)。これにより、油圧ショベル1が停止状態であるかどうかが判定されることになる。
【0039】
油圧ショベル1が停止状態であると判定した場合(ステップS1でYES)、コントローラ50は、操作状態判定手段53と並行して自動再生モードで再生制御手段54として機能する状態に移行する(ステップS2)。その後、全ての操作レバー16a〜19aの中立状態が継続している限り、すなわち、油圧ショベル1の停止状態が継続している限り(ステップS3でYES)、コントローラ50は自動再生モードで再生制御手段54として機能する状態を継続する(ステップS3の繰り返し)。
【0040】
コントローラ50は自動再生モードで再生制御手段54として機能する状態に移行した後、操作レバー16a〜19aの1つでも操作されると(ステップS3でNO)、すなわち、油圧ショベル1が動作するときには、自動再生モードで再生制御手段54として機能する状態を解除し(ステップS4)、ルーチンをステップS1に戻す。
【0041】
自動再生モードでは、図7に示した処理と並行して、図8に示す処理が行われる。
【0042】
図8に示す処理を行う際、はじめに、コントローラ50は目詰まり判定手段52として機能する。この目詰まり判定手段52としてのコントローラ50は、差圧センサ67からの差圧信号に示された差圧、すなわち、排気フィルタ31aの下流側に対する上流側の圧力の高さを示す差圧が、所定値よりも大きいかどうかを判定する(ステップS11)。その所定値は、再生制御の必要な目詰まりが生じたときの差圧の値として設定されている。
【0043】
その差圧の値が所定値よりも大きい場合、すなわち、排気フィルタ31aが目詰まりしている場合(ステップS11でYES)、コントローラ50は開閉判定手段51として機能する。この開閉判定手段51は、第1,第2閉状態検知信号を入力したかどうかにより、第1リミットスイッチ70と第2リミットスイッチ71とがいずれもオン状態かどうか、すなわち第1カバー部材6aと第2カバー部材6bとがいずれも閉じた状態であるかどうかを判定する(ステップS12)。
【0044】
第1リミットスイッチ70と第2リミットスイッチ71との両方がオン状態であると判定したとき(ステップS12でYES)、コントローラ50は再生制御手段54として機能し、再生手段(可変絞り弁40、可変機構部15a、燃料噴射装置14a)に対し再生制御を開始する(ステップS13)。
【0045】
コントローラ50は再生制御手段54としての機能中、開閉判定手段51としても並行して機能している。これによって再生制御を行いながら、第1リミットスイッチ70および第2リミットスイッチ71がいずれもオン状態を継続しているどうかを判定する(ステップS14)。また、再生制御手段54としてのコントローラ50は、再生制御の開始から所定時間が経過したかどうかを判定する(ステップS15)。これによりステップS14,S15は、第1リミットスイッチ70および第2リミットスイッチ71がいずれもオン状態を継続していれば、所定時間が経過するまでの間繰り返される(ステップS14でYES→ステップS15でNO→ステップS14→・・・)。なお、所定時間は、排気フィルタ31aの目詰まりが解消されるのに十分な時間として設定されている。
【0046】
次に、コントローラ50は、所定時間が経過すると、再生制御を終了し(ステップS16)、ステップS11からのルーチンに戻る。
【0047】
なお、ステップS11において、排気フィルタ31aの下流側に対する上流側の圧力の高さを示す差圧が所定値よりも大きくないと判定した場合(ステップS11でNO)、コントローラ50は、再生制御を開始することなく、ステップS11をやり直す(ステップS11でNO→ステップS11)。
【0048】
ステップS12において、第1リミットスイッチ70および第2リミットスイッチ71の一方または両方がオン状態でないと判定した場合(ステップS12でNO)にも、コントローラ50は再生制御を開始することなく、ルーチンをステップS11に戻す。また、再生制御が開始された後、ステップS14において、第1リミットスイッチ70および第2リミットスイッチ71の一方または両方がオン状態でないと判定した場合(ステップS14でNO)には、コントローラ50は再生制御手段54としての機能を停止させて再生制御を中断し(ステップS17)、ルーチンをステップS11に戻す。つまり、再生制御手段54としてのコントローラ50は、第1リミットスイッチ70および第2リミットスイッチ71のいずれもオン状態であることを条件として再生制御を行い、第1リミットスイッチ70および第2リミットスイッチ71の一方または両方がオン状態でないときには再生制御を行わない。
【0049】
本実施形態に係る油圧ショベル1によれば次の効果を得られる。
【0050】
油圧ショベル1において、再生制御手段54としてのコントローラ50は、第1リミットスイッチ70および第2リミットスイッチ71のいずれもオン状態であることを条件として再生制御を行い、第1リミットスイッチ70および第2リミットスイッチ71の一方または両方がオン状態でないときには再生制御を行わない。これにより、第1カバー部材6aおよび第2カバー部材6bの一方または両方が開いているときには、再生制御を行わないようにすることができる。したがって、再生制御中に排気後処理装置31上およびその周囲に、枯葉等の可燃物が接近したり接触したりするのを防止でき、また、機械室6内の機器に対して人がメンテナンスを行っているときに再生制御が行われることを防止できる。つまり、再生制御時の油圧作業機械の安全性を向上させることができる。
【0051】
前述の実施形態に係る油圧作業機械は、機械室の外部から排気後処理装置へのアクセスを可能にする開閉可能なカバー部材として、第1カバー部材6aおよび第2カバー部材6bを有するが、本発明におけるカバー部材はそれら第1カバー部材6aおよび第2カバー部材6bに限定されない。その他のカバー部材の例としては、第2カバー部材6bがネジ止めされるものではなく、第1カバー部材6aと同様に回動することで開口部6cの右側の領域を開閉できるものでもあってもよい。また、図9に示すカバー部材90のように、開口部6cの全体を1つのカバー部材で開閉できるようにしてもよい。
【0052】
前述の実施形態に係る油圧作業機械は油圧ショベルであったが、本発明に係る油圧作業機械機は油圧ショベルに限定されるものではなく、図10に示すようなホイールローダ100であってもよい。このホイールローダ100においては、運転室101の後方に機械室102が設けられている。この機械室102の側面に扉状のカバー部材103が設けられていて、このカバー部材103を開くことによって、機械室102外部から排気後処理装置にアクセスできるようになっている。
【0053】
前述の実施形態において、再生手段は、可変容量型油圧ポンプ15および可変機構部15aが再生制御手段54を制御することによってエンジン出力を上昇させるとともに、酸化触媒31bで生じた反応熱により燃料を燃焼させることによって、粒子状物質の燃焼に十分な排気温度が確保されるようになっているものであったが、本発明における再生手段はそれに限定されるものではなく、排気後処理装置に設けられた電熱ヒータにより粒子状物質の燃焼に必要な熱を生じさせるものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 油圧ショベル
2 走行体
3 旋回体
4 運転室
5 カウンタウェイト
6 機械室
6a 第1カバー部材
6b 第2カバー部材
6c 開口部
7 フロント作業装置
8 ブーム
9 アーム
10 バケット
11 ブームシリンダ
12 アームシリンダ
13 バケットシリンダ
14 エンジン
14a 燃料噴射装置
15 可変容量型油圧ポンプ
15a 可変機構部
16 左走行操作レバー装置
16a ペダル付操作レバー
16b パイロット圧生成部
17 右走行操作レバー装置
17a ペダル付操作レバー
17b パイロット圧生成部
18 旋回・アーム操作レバー装置
18a 操作レバー
18b パイロット圧生成部
19 ブーム・バケット操作レバー装置
19a 操作レバー
19b パイロット圧生成部
30 排気管
30a 終端部
30b 排気口
31 排気後処理装置
31a 排気フィルタ
31b 酸化触媒
31c ケース
40 可変絞り弁
50 コントローラ
51 開閉判定手段
52 目詰まり判定手段
53 操作状態判定手段
54 再生制御手段
61A,61B パイロット圧センサ
62A,62B パイロット圧センサ
63A〜63D パイロット圧センサ
64A〜64D パイロット圧センサ
67 差圧センサ
70,71 リミットスイッチ
80 冷却ファン
81 熱交換器
90 カバー部材
100 ホイールローダ
101 運転室
102 機械室
103 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気に含まれる粒子状物質を排気フィルタにより捕捉する排気後処理装置と、この排気後処理装置を収容した機械室と、前記排気フィルタを目詰まりさせている粒子状物質を燃焼させて除去する再生手段と、この再生手段に対し再生制御を行って前記排気フィルタから粒子状物質を除去させる再生制御手段と、を備え、
前記機械室には、この機械室の外部から前記排気後処理装置へのアクセスを可能にする開閉可能なカバー部材が設けられた油圧作業機械において、
前記機械室には、前記カバー部材が閉じた状態であることを検知する検知手段が設けられ、
前記再生制御手段は、前記検知手段により前記カバー部材の閉じた状態が検知されたことを条件として前記再生手段に対し再生制御を行い、前記検知手段により前記カバー部材の閉じた状態が検知されないときには前記再生手段に対し再生制御を行わない
ことを特徴とする油圧作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−17259(P2011−17259A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161025(P2009−161025)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】