説明

油圧駆動装置

【課題】油圧ポンプ本体によって油圧的に駆動される油圧モータ本体が作業機を作動的に駆動するように構成された油圧駆動装置において、作業機のOFF操作時におけるパワーロスを可及的に低減させると共に、作業機が意に反して回転することを防止する。
【解決手段】作業機の駆動をON/OFFする操作に応じて、駆動源から油圧ポンプ本体への動力伝達を係合又は遮断するように構成する。前記動力伝達の係合時には前記油圧モータ本体の吐出側を低圧部に流体接続させ且つ前記動力伝達の遮断時には前記油圧モータ本体の吐出側をブロックさせる開閉弁を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプ本体及び油圧モータ本体を備え、前記油圧モータ本体によって作業機を作動的に駆動する油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプ本体及び油圧モータ本体を備え、前記油圧モータ本体によって作業機を作動的に駆動する油圧駆動装置は、従来から公知である(例えば、下記特許文献1参照)。
詳しくは、前記特許文献1に記載の油圧駆動装置は、吸引側がリザーバタンクに流体接続された状態で駆動源によって作動的に駆動される油圧ポンプ本体と、吸引側が供給ラインを介して前記油圧ポンプ本体の吐出側に流体接続された油圧モータ本体と、前記油圧モータ本体からの吐出油を前記リザーバタンクへ戻すリターンラインと、前記供給ラインに介挿された切換弁とを備え、前記切換弁が前記油圧ポンプ本体から前記油圧モータ本体への作動油の供給を係合又は遮断することによって、前記油圧モータ本体を選択的に駆動又は駆動停止させ得るようになっている。
【0003】
しかしながら、前記従来構成においては、前記作業機の駆動停止時においても、前記駆動源は前記油圧ポンプ本体を作動的に回転し、該油圧ポンプ本体は作動油を吐出し続けており、パワーロスを招くという問題があった。
【0004】
さらに、前記従来構成においては、前記油圧ポンプ本体から前記油圧モータ本体への作動油供給を遮断することのみによって、前記作業機の駆動を停止させている為、前記作業機を駆動状態から駆動停止状態へ移行した際に該作業機の回転停止に長時間を要し、さらには、前記作業機の駆動停止状態においても該作業機が外力によって意に反して回転する恐れがあった。
【特許文献1】米国特許第3,918,240号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、駆動源によって作動的に駆動される油圧ポンプ本体と前記油圧ポンプ本体に流体接続された油圧モータ本体とを備え、前記油圧モータ本体によって作業機を作動的に駆動する油圧駆動装置であって、前記作業機のOFF操作時におけるパワーロスを可及的に低減させると共に、前記作業機のOFF操作時に該作業機が意に反して回転することを有効に防止し得る油圧駆動装置の提供を、一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成する為に、駆動源によって作動的に駆動される油圧ポンプ本体と、前記油圧ポンプ本体に流体接続された油圧モータ本体とを備え、前記油圧モータ本体によって作業機を作動的に駆動する油圧駆動装置であって、前記作業機の駆動をON/OFFするON/OFF操作に応じて、前記駆動源から前記油圧ポンプ本体への動力伝達を係合又は遮断するように構成され、前記動力伝達の係合時には前記油圧モータ本体の吐出側を低圧部に流体接続させ且つ前記動力伝達の遮断時には前記油圧モータ本体の吐出側をブロックさせる開閉弁を備えた油圧駆動装置を提供する。
【0007】
好ましくは、前記開閉弁は、前記作業機を作業方向へ回転させる際に前記油圧ポンプ本体から吐出される作動油を前記油圧モータ本体へ供給する作業時高圧ラインと前記作業機を作業方向へ回転させる際に前記油圧モータ本体から吐出される油を前記低圧部へ流す作業時低圧ラインとの差圧をパイロット圧として作動するように構成される。
【0008】
より好ましくは、前記作業時高圧ラインの油圧を設定する作業時高圧側リリーフ弁と、前記作業時低圧ラインの油圧を設定する作業時低圧側リリーフ弁とを備え得る。
【0009】
さらに好ましくは、前記作業時高圧側リリーフ弁及び前記作業時低圧側リリーフ弁は、対応する油圧ラインの油圧上昇に伴ってリリーフ圧が上昇する可変リリーフ弁とされる。
斯かる構成において、前記作業時高圧側リリーフ弁の初期圧を前記作業時低圧側リリーフ弁の初期圧よりも低く設定し得る。
【0010】
一態様においては、前記作業時高圧ライン及び前記作業時低圧ラインは閉回路を形成するように前記油圧ポンプ本体及び前記油圧モータ間を流体接続し得る。
前記一態様において、好ましくは、前記油圧ポンプ本体の容積量を変化させる容積調整機構をさらに備え、前記容積調整機構によって、前記油圧ポンプ本体から前記作業時高圧ラインに作動油が吐出される作業状態と、前記油圧ポンプ本体から前記作業時低圧ラインに作動油が吐出される反転状態とが切り換え可能とされ得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業機のOFF操作時においても油圧ポンプ本体が回転駆動され、該油圧ポンプ本体が作動油を吐出し続ける従来構成に比して、パワーロスを有効に低減させることができる。
さらに、本発明によれば、作業機のOFF操作時において、前記油圧モータ本体に対して油圧的に制動力を付加させることができる。従って、作業機を駆動状態から駆動停止状態へ移行させた際における該作業時の制動時間を短縮できると共に、作業機の駆動停止状態において該作業機が意に反して回転することを有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1
以下に、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係る油圧駆動装置100が適用された作業車輌1Aの側面図を示す。
又、図2に、前記作業車輌1Aのうち前記油圧駆動装置100を含む部分の油圧回路図を、図3に、前記作業車輌1Aのうち残りの部分の油圧回路図を示す。図2にX,Yは図3におけるX,Yにそれぞれ流体接続されている。
さらに、図4に、図1におけるIV−IV線に沿った横断平面図を示す。
【0013】
本実施の形態においては、前記作業車輌1Aは、図1〜図4に示すように、胴体屈折(articulate)式の乗用芝刈り機とされている。
具体的には、前記作業車輌1は、車輌前後方向一方側(本実施の形態においては前方)に配設された第1フレーム11と、車輌前後方向他方側(本実施の形態においては後方)に配設された第2フレーム12であって、前記第1フレーム11に対して略垂直方向に沿った枢支軸10回り揺動自在に連結された第2フレーム12と、車輌前後方向一方側に配設された左右一対の第1駆動輪21L,21Rと、車輌前後方向他方側に配設された左右一対の第2駆動輪22L,22Rと、前記第1及び第2フレーム11,12の一方(図示の形態においては第2フレーム12)に支持された駆動源30と、前記駆動源30によって作動的に駆動される少なくとも一つの走行系油圧ポンプ本体42を有する走行系油圧ポンプユニット40と、前記左右一対の第1駆動輪21L,21Rを駆動する少なくとも一つの走行系油圧モータ本体52を有する第1車軸駆動装置50であって、前記第1フレーム11に連結された第1車軸駆動装置50と、前記左右一対の第2駆動輪22L,22Rを駆動する少なくとも一つの走行系油圧モータ本体を有する第2車軸駆動装置60であって、前記第2フレーム12に連結された第2車軸駆動装置60と、前記駆動源30によって作動的に駆動される作業機系油圧ポンプ本体120及び前記作業系油圧ポンプ本体120によって油圧的に駆動される作業系油圧モータ本体220を有する前記油圧駆動装置100と、前記作業系油圧モータ本体220によって作動的に駆動されるモア装置等の作業機70とを備えている。
【0014】
本実施の形態においては、前記作業車輌1Aは、図3に示すように、さらに、ステアリングホイール等の人為操作可能な操舵部材5に連動して、前記第1フレーム11を前記第2フレーム12に対して前記枢支軸10回りに揺動させる油圧操舵装置15と、前記作業機70を昇降させる油圧昇降装置16とを備えている。
【0015】
前記走行系油圧ポンプユニット40は、図2及び図4に示すように、前記駆動源30に作動連結された走行系ポンプ軸41と、前記走行系ポンプ軸41に相対回転不能に支持された前記走行系油圧ポンプ本体42と、前記走行系ポンプ軸41を支持すると共に前記走行系油圧ポンプ本体42を収容するポンプ空間を形成する走行系ポンプケース43とを備えている。
【0016】
前記走行系油圧ポンプ本体42は、前記第1車軸駆動装置50における少なくとも一つの前記油圧モータ本体52、及び、前記第2車軸駆動装置60における少なくとも一つの前記油圧モータ本体62と共働して走行系HSTを形成するように、前記各油圧モータ本体52,62と流体接続されている。
【0017】
本実施の形態においては、図2に示すように、前記第1車軸駆動装置50は、前記左右の第1駆動輪21L,21Rをそれぞれ駆動する左右の第1ホイールモータ装置50L,50Rを備えている。そして、前記左右の第1ホイールモータ装置50L,50Rは、それぞれ、走行系第1油圧モータ本体52を有している。
同様に、前記第2車軸駆動装置60は、前記左右の第2駆動輪22L,22Rをそれぞれ駆動する左右の第2ホイールモータ装置60L,60Rを備えている。そして、前記左右の第2ホイールモータ装置60L,60Rは、それぞれ、走行系第2油圧モータ本体62を有している。
【0018】
従って、前記走行系油圧ポンプ本体42は、図2に示すように、閉回路を形成するように前記一対の走行系第1油圧モータ本体52及び前記一対の走行系第2油圧モータ本体62と流体接続されている。
具体的には、前記走行系油圧ポンプ本体42の前進時吐出側ポートは、第1作動油ライン55aを介して前記一対の走行系第1油圧モータ本体52の前進時吸引側ポートの双方に流体接続されている。
前記一対の走行系第1油圧モータ本体52の前進時吐出側ポートの双方は、第2作動油ライン55bを介して前記一対の走行系第2油圧モータ本体62の前進時吸引側ポートの双方に流体接続されている。
そして、前記一対の走行系第2油圧モータ本体62の前進時吐出側ポートの双方は、第3作動油ライン55cを介して前記走行系油圧ポンプ本体42の前進時吸引側ポートに流体接続されている。
【0019】
前記走行系ポンプケース43には、図2に示すように、前記第1作動油ライン55aの一部を形成する前進時高圧側作動油路47aと、前記第3作動油ライン55cの一部を形成する前進時低圧側作動油路47bとが設けられている。
さらに、前記ポンプケース43には、油圧源から前記走行系HSTの閉回路に作動油を補給する為の走行系チャージラインの一部を形成する走行系チャージ油路47cであって、前記油圧源から前記閉回路への油の流れを許容し且つ逆向きの流れを防止する走行系チェック弁47hが介挿された走行系チャージ油路47cと、前記前進時高圧側作動油路47a及び前記前進時低圧側作動油路47bの間を流体接続するバイパス油路47dであって、切換弁47eによって選択的に連通又は遮断されるバイパス油路47dと、一端部が前記ポンプケース43の内部空間に流体接続され且つ他端部が前記走行系チェック弁47hより補給油流れ方向上流側において前記走行系チャージ油路47cに流体接続された自吸油路47fとが設けられている。
なお、図2中の符号47gは、前記走行系チャージラインの油圧を設定する走行系チャージリリーフ弁である。
【0020】
前記走行系ポンプケース43は、図4に示すように、前記走行系油圧ポンプ本体42を囲繞するケース本体44であって、前記走行系油圧ポンプ本体42が挿通し得る開口が設けられたケース本体44と、前記開口を閉塞するように前記ケース本体44に着脱可能に連結されるポートブロック45とを有しており、前記各油路は前記ポートブロック45に形成されている。
【0021】
本実施の形態においては、前記走行系ポンプケース43は、図4に示すように、前記走行系ポンプ軸41が前記駆動源30に作動連結され得る状態で、前記駆動源30に連結されたフライホイールカバー36に固定されている。
詳しくは、図2及び図4に示すように、前記駆動源30の出力部30aにはフライホイール本体35が連結されており、前記走行系ポンプ軸41は、前記フライホイール本体35を介して該駆動源30に作動連結されている。
そして、前記走行系ポンプケース43は、前記フライホイール本体35を外部からカバーするように前記駆動源30に連結された前記フライホイールカバー36に固定されている。
【0022】
本実施の形態においては、前記走行系ポンプ軸41は、ダンパー機能を有する軸連結機構38を介して、前記フライホイール本体35に作動連結されている。
詳しくは、図4に示すように、前記フライホイール本体35には、剛性の出力部材37が連結されている。
前記軸連結機構38は、前記出力部材37に連結された弾性部材38aと、前記弾性部材38aに連結された剛性の軸連結部材38bとを有している。
前記軸連結部材38bには、前記走行系ポンプ軸41の入力端部に設けられたスプラインと係合するスプラインが設けられている。
【0023】
このように、前記走行系ポンプ軸41を前記弾性部材38aを介して前記フライホイール本体35に作動連結することにより、前記弾性部材38aによるダンパー作用によって、前記駆動源30の出力の角速度変動が前記走行系ポンプ軸41へ伝播することを有効に防止することができる。
【0024】
本実施の形態においては、前記走行系油圧ポンプ本体42は吸引/吐出量が可変とされた可変容積型とされている。
即ち、前記走行系油圧ポンプユニット40は、前記構成に加えて、外部操作に基づき前記走行系油圧ポンプ本体42の吸引/吐出量を変更させる走行系出力調整部材46(図2参照)を有している。
前記走行系出力調整部材46は、例えば、前記走行系油圧ポンプ本体42におけるピストンの進退動作範囲を画する可動斜板46a(図4参照)と、前記可動斜板46aを傾転動作させ得るように該可動斜板46aに作動連結された制御軸46b(図1参照)とを有している。
【0025】
前記制御軸46bは、運転席近傍に備えられた人為操作可能な走行変速操作部材6(図1参照)に作動連結されている。
なお、本実施の形態においては、前記可動斜板46aは、中立位置を挟んで正逆双方向に傾転可能とされている。
即ち、前記走行変速操作部材6を前進方向へ操作すると前記可動斜板46aは前進方向へ傾転し、且つ、前記走行変速操作部材6を後進方向へ操作すると前記可動斜板46aは後進方向へ傾転するようになっている。なお、本実施の形態においては、前記変速操作部材6をシーソーペダル式に構成したが、前進専用、後進専用それぞれの2ペダル式でも構わない。
【0026】
本実施の形態においては、前記走行系油圧ポンプユニット40は、さらに、前記構成に加えて、前記ポンプ軸41によって作動的に駆動される第1補助ポンプ本体48a及び第2補助ポンプ本体48bを備えている。
【0027】
図2に示すように、前記第1補助ポンプ本体48aは、前記走行系HSTに対して作動油を補給するチャージポンプとして作用している。
前記第2補助ポンプ本体48bは、図2及び図3に示すように前記油圧操舵装置15及び前記油圧昇降装置16に対して作動油を供給している。
前記第1補助ポンプ本体48aは、例えば、トロコイドポンプとされ、前記第2補助ポンプ本体48bは、例えば、ギヤポンプとされ得る。
【0028】
なお、前記作業車輌1Aは、図2に示すように、外部タンク90を有しており、前記第1及び第2補助ポンプ本体48a,48bは前記外部タンク90を油源として作用するように構成されている。
【0029】
ここで、本実施の形態に係る前記油圧駆動装置100について説明する。
前記油圧駆動装置100は、図2に示すように、前記駆動源30によって作動的に駆動される作業機系油圧ポンプ本体120と、前記作業機系油圧ポンプ本体120によって流体的に駆動され且つ前記作業機70を作動的に駆動する作業機油圧モータ本体220とを備えている。
【0030】
詳しくは、前記油圧駆動装置100は、前記駆動源30に作動的に連結される作業機系ポンプ軸110と、前記作業機系ポンプ軸110に相対回転不能に支持された前記作業機系油圧ポンプ本体120と、前記作業機系油圧ポンプ本体120から吐出される作動油によって油圧的に駆動される前記作業機系油圧モータ本体220と、前記作業機系油圧モータ本体220によって作動的に回転駆動され、前記作業機70へ向けて回転動力を出力する作業機系モータ軸210とを有している。
【0031】
本実施の形態においては、前記油圧駆動装置100は、前記作業機70の駆動をON/OFFするON/OFF操作に応じて、前記駆動源30から前記作業機系油圧ポンプ本体120への動力伝達が係合又は遮断されるように構成されており、これにより、従来構成に比して、作業機70の駆動停止時におけるパワーロスを低減させることができる。
【0032】
即ち、前記従来構成においては、作業機の駆動停止時においても、駆動源によって作業機系油圧ポンプ本体が駆動され、作業機を駆動する際と同一油量が作業機系油圧ポンプ本体から吐出され続けていた。斯かる従来構成によれば、前記作業機系油圧ポンプ本体及び該油圧ポンプ本体を作動的に駆動する駆動源に負荷が掛かり続けることになる。
これに対し、本実施の形態においては、前記作業機70の駆動停止時においては、前記駆動源30から前記作業機系油圧ポンプ本体120への動力伝達が遮断され、これにより、前記駆動源30の負荷を低減させることができる。
さらに、前記駆動源30から前記作業機系油圧ポンプ本体120への動力伝達が遮断されている状態においては、当然ながら、前記作業機系油圧ポンプ本体120からは作動油が吐出されない。従って、前記作業機系油圧ポンプ本体120に対する負荷も有効に低減させることができる。
【0033】
前記駆動源30から前記作業機系油圧ポンプ本体120への動力伝達の係合又は遮断の切替は、前記駆動源30から前記作業機系ポンプ軸110への動力伝達経路に介挿されるクラッチ部材175を介して行われている。
【0034】
詳しくは、前記油圧駆動装置100は、前記駆動源30から前記走行系ポンプ軸41へ至る伝動経路から回転動力を分岐して、前記作業機系ポンプ軸110へ伝達する作業機系伝動機構170を有している。
本実施の形態においては、前記作業機系伝動機構170は、図2及び図4に示すように、前記出力部材37に相対回転不能に設けられたプーリー等の駆動側部材171と、前記作業機系ポンプ軸110に相対回転不能に外挿された作業機系入力軸172と、前記作業機系入力軸172に相対回転自在に支持されたプーリー等の従動側部材173と、前記駆動側部材171及び前記従動側部材173に巻き回されたプーリー,コグベルト又はチェーン等の伝動部材174と、前記従動側部材173から前記作業機系入力軸172への動力伝達を選択的に係合又は遮断させる前記クラッチ部材175とを備えている。
【0035】
本実施の形態においては、図2及び図4に示すように、前記クラッチ部材175は、電磁クラッチとされている。
具体的には、前記電磁クラッチ175は、前記従動側部材173に対して相対回転不能とされた入力側部材176と、前記作業機系入力軸110に対して相対回転不能とされた出力側部材177と、前記入力側部材176から前記出力側部材177への動力伝達を選択的に係合又は遮断させるクラッチ本体178とを有している。
【0036】
前記クラッチ本体178の係合状態又は遮断状態の制御は、例えば、運転席近傍に備えられる作業機駆動入切レバー等の作業機操作部材7のON/OFF操作を検出するON/OFFスイッチ8からの信号に基づき、コントローラ2によって行われる。(図1及び図2参照)。
【0037】
好ましくは、前記コントローラ2は、前記クラッチ本体178を遮断状態から係合状態へ移行させる際に、該クラッチ本体178の係合状態及び遮断状態を交互に繰り返しつつ最終的に該クラッチ本体178を係合状態とさせるソフトエンゲージ制御を行うように構成され得る。
斯かる構成を備えることにより、前記作業機70を駆動停止状態から駆動状態へ移行させる際に、前記作業機70が急激に回転し始めることを有効に防止できる。
【0038】
次に、前記油圧駆動装置100の具体的な構成について説明する。
本実施の形態に係る前記油圧駆動装置100においては、前記作業機系油圧ポンプ本体120及び作業機系油圧モータ本体220が互いに離間配置可能とされている。
【0039】
具体的には、前記油圧駆動装置100は、図1及び図2に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120を有する作業機系油圧ポンプユニット100Aと、前記作業機系油圧モータ本体220を有する作業機系油圧モータユニット200Aとを備えている。
【0040】
前記作業機系油圧ポンプユニット100Aは、図2及び図4に示すように、前記駆動源30に作動連結される前記作業機系ポンプ軸110と、前記作業機系ポンプ軸110に相対回転不能に支持された前記作業機系油圧ポンプ本体120と、前記作業機系ポンプ軸110を軸線回り回転自在に支持すると共に前記作業機系油圧ポンプ本体120を収容する作業機系ポンプケース130とを備えている。
【0041】
前記作業機系ポンプケース130は、図4に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120を囲繞するような形状とされた作業機系ポンプケース本体131と、前記作業機系ポンプケース本体131に連結される作業機系ポンプ側ポートブロック135とを備えている。
【0042】
前記作業機系ポンプケース本体131は、前記作業機系ポンプ軸110の軸線と直交する方向に延びる端壁132と、前記端壁132の周縁部から前記作業機系ポンプ軸110の軸線方向に延びる周壁133とを有し、前記周壁133の自由端側に前記油圧ポンプ本体120が挿通可能な開口が設けられている。
前記作業機系ポンプ側ポートブロック135は、前記開口を閉塞するように前記作業機系ポンプケース本体131に着脱可能に連結されている。
【0043】
前記作業機系ポンプケース130は、前記作業機系ポンプ軸110が前記駆動源30に作動連結され得る状態で設置箇所に固定されるようになっている。
本実施の形態においては、図4に示すように、前記作業機系ポンプケース130は、前記作業機系ポンプ軸110が前記走行系ポンプ軸41と略平行となるように、前記フライホイールカバー36に連結された第1取付ブラケット181に固定されている。
詳しくは、前記作業機系ポンプケース本体131の前記端壁132には取付フランジ132aが設けられており、前記作業機系ポンプケース130は前記取付フランジ132aを介して前記第1取付ブラケット181に固定されている。
【0044】
なお、図4中の符号182は、前記第1取付ブラケット181と対向するように前記フライホイールカバー36に連結された第2取付ブラケットであり、前記作業機系入力軸172は、前記作業機系ポンプ軸110に対して相対回転不能に外挿された状態で、前記第1及び第2取付ブラケット181,182に支持されている。
【0045】
前記作業機系ポンプケース130には種々の油路が形成されているが、これらの油路については後述する。
【0046】
前記作業機系ポンプ軸110は、入力端部を形成するように一端部が外方へ延在された状態で前記作業機系ポンプケース130に軸線回り回転自在に支持されている。
前記作業機系ポンプ軸110の前記入力端部は、前述の通り、前記作業機系伝動機構170を介して前記駆動源30に作動連結されている。
【0047】
前記作業機系油圧ポンプ本体120は、例えば、アキシャルピストンタイプとされる。
即ち、前記作業機系油圧ポンプ本体120は、前記作業機系ポンプ軸110に相対回転不能に支持されたシリンダブロックと、前記シリンダブロックに前記ポンプ軸110を基準にして軸線回り相対回転不能且つ軸線方向進退可能に支持された複数のピストンとを有し得る。
【0048】
前記作業機系油圧ポンプユニット100Aは、さらに、前記作業機油圧ポンプ本体120の容積量を変化させる容積調整機構150を備えている。
前記容積調整機構150は、例えば、前記作業機系油圧ポンプ本体120から吐出される作動油の方向を切り換える為に備えられる。
即ち、本実施の形態においては、図2に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120及び前記作業機系油圧モータ本体220は、一対の第1及び第2作業機系油圧ライン301a,301bを介して閉回路を形成するように流体接続されている。
斯かる構成においては、前記容積調整機構150によって前記作業機系油圧ポンプ本体120の作動油吐出方向を切り換え可能とすることにより、前記作業機70を作業方向に回転させる作業状態と、前記作業機70を作業方向とは反対方向に回転させる反転状態とを容易に得ることができる。
なお、前記反転状態は、例えば、前記作業機70がモア装置や除雪機である場合において、石等の不要物が挟まった際に、前記不要物を除去する際に有効に使用され得る。
【0049】
前記容積調整機構150は、前記ピストン122の自由端部と直接又は間接的に係合した状態で前記作業機系ポンプ軸110と直交する揺動軸線回りに傾転可能とされた可動斜板151と、前記作業機系ポンプケース130に前記揺動軸線回り回転自在に支持された制御軸であって、軸線回りの回転によって前記可動斜板151を傾転させ得るように該可動斜板151に作動連結された制御軸とを有し得る。
【0050】
前記容積調整機構の前記作業状態又は前記反転状態の切換は、例えば、運転席近傍に備えられた人為操作可能な切換操作部材(図示略)であって、前記制御軸に作動連結された切換操作部材によって行われる。
詳しくは、前記制御軸が軸線回り第1位置に位置されると、前記可動斜板151は作業位置に位置し、これにより、前記作業機系油圧ポンプ本体120は、前記作業機を作業方向へ回転させる方向に、仕様により設定される作業機の回転速度に応じた所定油量を吐出する。
一方、前記制御軸が軸線回り第2位置に位置されると、前記可動斜板151は反転位置に位置し、これにより、前記作業機系油圧ポンプ本体120は、前記作業機を反転方向へ回転させる方向に、仕様により設定される所定油量を吐出する。
斯かる構成において、前記切換操作部材は、人為操作に基づき前記制御軸を前記第1位置及び前記第2位置に位置させ得るように該制御軸に作動連結されている。
好ましくは、前記切換操作部材は、前記制御軸を前記第1位置及び前記第2位置に保持するディテント機能を有すると共に、前記ディテント機能を解除して前記制御軸の前記第1位置又は前記第2位置への切換操作を行うように構成され得る。
【0051】
前述の通り、本実施の形態においては、図2に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120及び前記作業機系油圧モータ本体220は閉回路を形成するように流体接続されている。
斯かる構成においては、前記閉回路に作動油を補給する為の油圧源を備える必要がある。
この点に鑑み、本実施の形態においては、前記作業機系油圧ポンプユニット100Aには、図2及び図4に示すように、作業機系補助ポンプ本体190が備えられている。
前記作業機系補助ポンプ本体190は、前記駆動源30によって作動的に駆動されるようになっている。
【0052】
具体的には、図4に示すように、前記作業機系ポンプ軸110は、入力端部を形成する一端部とは反対側の他端部も前記作業機系ポンプケース130から外方へ延在されている。そして、前記作業機系補助ポンプ本体190は、前記作業機系ポンプ軸110の他端部によって駆動されている。
【0053】
このように、本実施の形態においては、前記作業機系油圧ポンプユニット100Aは前記作業機系補助ポンプ本体190を有している。従って、前記作業機系ポンプケース130は、さらに、図4に示すように、前記作業機系補助ポンプ本体190を囲繞する作業機系補助ポンプケース139を有している。
なお、本実施の形態においては、前記作業機系ポンプ軸110は、図4に示すように、前記一端部が前記作業機系ポンプケース本体131から外方へ延在して前記入力端部を形成し、且つ、前記他端部が前記作業機系ポンプ側ポートブロック135から外方へ延在して前記作業機系補助ポンプ本体190を駆動する出力端部を形成している。従って、前記作業機系補助ポンプケース139は、前記作業機系補助ポンプ本体190を囲繞するように前記作業機系ポンプ側ポートブロック135に連結されている。
【0054】
図5に、図1におけるV−V線に沿った前記作業機系油圧モータユニット200Aの縦断側面図を示す。
図2及び図5に示すように、前記作業機系油圧モータユニット200Aは、前記作業機系油圧ポンプ本体120によって油圧的に駆動される前記作業機系油圧モータ本体220と、前記作業機系油圧モータ本体220によって軸線回りに回転駆動される前記作業機系モータ軸210と、前記作業機系モータ軸210を軸線回り回転自在に支持すると共に前記作業機系油圧モータ本体220を収容する作業機系モータケース230とを備えている。
【0055】
前記作業機系モータケース230は、独立して設置箇所に固定可能とされている。
本実施の形態においては、図1及び図5に示すように、前記作業車輌1Aは、前記作業機70としてモア装置を備えている。従って、前記作業機系モータケース230は、前記作業機系モータ軸210と前記モア装置70との間の伝動容易化を図る為に、前記モア装置70に固定されている。
【0056】
詳しくは、前記モア装置70は、図1及び図5に示すように、略垂直方向に沿った入力軸71a及び前記入力軸71aに相対回転不能に支持された刈刃71bを有する刈刃アッセンブリ71と、前記刈刃アッセンブリ71を外部から保護する刈刃カバー72とを有している。
なお、本実施の形態においては、前記モア装置70は、前記刈刃アッセンブリ71を複数個、有している。
従って、前記モア装置70は、複数の前記刈刃アッセンブリ71及び前記刈刃カバー72に加えて、前記作業機系モータ軸210から動力が入力される一の刈刃アッセンブリ(以下、入力側刈刃アッセンブリという)から他の刈刃アッセンブリ(以下、従動側刈刃アッセンブリという)へ動力を伝達する伝動機構と、前記伝動機構を外部から保護する伝動カバー76とを有している。
【0057】
本実施の形態においては、前記伝動機構はプーリー伝動機構75とされている。
詳しくは、前記プーリー伝動機構75は、図5に示すように、前記入力側刈刃アッセンブリ71の入力軸71aに相対回転不能に支持された駆動側プーリー75aと、前記従動側刈刃アッセンブリの入力軸に相対回転不能に支持された従動側プーリー(図示せず)と、前記駆動側プーリー71a及び従動側プーリーに巻き回されたベルト等の伝動体75bとを有している。
【0058】
前記プーリー伝動機構75は、図5に示すように、前記刈刃カバー72より上方側に配置されている。
従って、前記伝動カバー76は、前記プーリー伝動機構75を覆うように前記刈刃カバー72の上面に固着されている。
そして、前記作業機系モータケース230は、前記作業機系モータ軸210が略垂直方向に沿うように、前記伝動カバー76に固定されている。
【0059】
詳しくは、前記作業機系モータケース230は、前記作業機系油圧モータ本体220が挿通可能な開口を有する作業機系モータケース本体231と、前記開口を閉塞するように前記作業機系モータケース本体231に連結される蓋部材235とを備えている。
【0060】
本実施の形態においては、前記作業機系油圧モータ本体220は、図5に示すように、ギヤモータとされている。
前記ギヤモータ型の作業機系油圧モータ本体220は、互いに噛合された一対の第1及び第2モータギヤ221,222を有している。
なお、当然ながら、前記作業機系油圧モータ本体220として、アキシャルピストンタイプを採用することも可能である。
【0061】
前記作業機系モータ軸210は、前記一対の第1及び第2モータギヤ221,221の一方(図示の形態においては第1モータギヤ221)を相対回転不能に支持した状態で、一端部が前記入力側刈刃アッセンブリ71の入力軸71aに軸線回り相対回転不能に連結される出力端部を形成するように、前記作業機系モータケース230に軸線回り回転自在に支持されている。
【0062】
ここで、前記油圧駆動装置100の油圧回路について説明する。
図6及び図7に、前記油圧駆動装置の油圧回路図を示す。
なお、図6は前記作業機70を作業方向へ駆動している状態を示し、図7は前記作業機70の駆動を停止している状態を示している。
【0063】
図6及び図7に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120は、一方が吸引ポートとして作用し且つ他方が吐出ポートとして作用する一対の第1及び第2ポンプ側ポート120a,120bを有している。
同様に、前記作業機系油圧モータ本体220は、一方が吸引ポートして作用し且つ他方が吐出ポートとして作用する一対の第1及び第2モータ側ポート220a,220bを有している。
【0064】
前記油圧駆動装置100は、一端部が前記一対のポンプ側ポート120a,120bのうち前記作業機70を作業方向に回転させる際(以下、作業時という)に吐出ポートとして作用する側の第2ポンプ側ポート120bに流体接続され、且つ、他端部が前記一対の第1及び第2モータ側ポート220a,220bのうち作業時に吸引ポートとして作用する第1モータ側ポート220aに流体接続された作業時高圧ライン310aと、一端部が前記一対の第1及び第2モータ側ポート220a,220bのうち作業時に吐出ポートとして作用する第2モータ側ポート220bに流体接続された作業時低圧ライン310bと、前記作業機70の駆動時には前記作業時低圧ライン310bを低圧部に流体接続させ且つ前記作業機70の駆動停止時には前記作業時低圧ライン310bをブロックさせる開閉弁350とを有している。
【0065】
なお、本実施の形態においては、前述の通り、前記作業機系油圧ポンプ本体120及び前記作業機系油圧モータ本体220は、一対の第1及び第2作業機系油圧ライン301a,301bを介して閉回路を形成するように流体接続されている。
斯かる構成においては、前記第1作業機系油圧ライン301a及び前記第2作業機系油圧ライン301bが、それぞれ、前記作業時高圧ライン310a及び前記作業時低圧ライン310bとして作用する。
【0066】
そして、前記開閉弁350は、前記作業機70の作業方向への駆動時に前記第2作業機系油圧ライン301bを前記一対のポンプ側ポート120a,120bのうち作業時に吸引ポートとして作用する第1ポンプ側ポート120aに流体接続させ、且つ、前記作業機70の駆動停止時に前記第2作業機系油圧ライン301bをブロックするように構成されている。
即ち、本実施の形態においては、前記一対のポンプ側ポート120a,120bのうち作業時に吸引ポートとして作用する前記第1ポンプ側ポート120aが前記低圧部として作用する。
【0067】
このように、本実施の形態に係る油圧駆動装置100は、前記作業機70の駆動停止時においては前記開閉弁350によって前記作業時低圧ライン301bがブロックされるように構成されており、これにより、前記作業機系油圧モータ本体220に対して油圧的な制動力が付加されるようになっている。従って、前記作業機70を駆動状態から駆動停止状態へ移行させた際に該作業機70を速やかに停止させ得ると共に、前記作業機70の駆動停止時に該作業機70が意に反して回転することを有効に防止できる。
【0068】
なお、前記油圧駆動装置100は、仕様に応じて、前記作業機70を作業方向へのみ回転駆動させる構成と、前記作業機70を作業方向に加えて、反転方向へも回転駆動させ得る構成とを取り得る。
前記油圧駆動装置100が前記作業機70を作業方向へのみ回転させ得るように構成されている場合、即ち、前記第1モータ側ポート220aが必ず吸引ポートとして作用し且つ前記第2モータ側ポート220bが必ず吐出ポートとして作用するように構成されている場合には、前記開閉弁350は、前記作業機70のON操作の際に前記作業時低圧側ライン310bを低圧部(本実施の形態においては前記第1ポンプ側ポート120a)に流体接続させる作業位置と、前記作業機70のOFF操作の際に前記作業時低圧側ライン310bをブロックさせるブロック位置との2位置を選択的に取り得るように構成される。
【0069】
本実施の形態においては、前述の通り、前記油圧駆動装置100は、前記作業機70を作業方向に加えて反転方向へも回転させ得るように構成されている。
前記作業機70を反転方向へ駆動させている状態から駆動停止状態へ移行させた際においても、前記作業機70に対して油圧的な制動力を付加させる為に、本実施の形態においては、前記開閉弁350は選択的に3位置を取り得るように構成されている。
【0070】
詳しくは、前記作業時高圧ライン310aとして作用する前記第1作業機系油圧ライン301a及び前記作業時低圧ライン310bとして作用する(即ち、作業機70を反転方向へ回転させる際に高圧となる)前記第2作業機系油圧ライン301bには、それぞれ、前記作業機系油圧ポンプ本体120から前記作業機系油圧モータ本体220への油の流れを許容し且つ逆向きの流れを防止する第1及び第2作業機系チェック弁315a,315bが介挿されている。
【0071】
前記開閉弁350は、前記第1及び第2作業機系チェック弁315a,315bに対して並列配置されている。
即ち、前記油圧駆動装置100は、前記一対の第1及び第2作業機系油圧ライン301a,301bに加えて、前記第1作業機系油圧ライン301aのうち前記第1作業機系チェック弁315aより前記油圧ポンプ本体120側に位置する部分に流体接続された第1ポンプ側バイパスライン320aと、前記第1作業機系油圧ライン301aのうち前記第1作業機系チェック弁315aより前記油圧モータ本体220側に位置する部分に流体接続された第1モータ側バイパスライン321aと、前記第2作業機系油圧ライン301bのうち前記第2作業機系チェック弁315bより前記油圧ポンプ本体120側に位置する部分に流体接続された第2ポンプ側バイパスライン320bと、前記第2作業機系油圧ライン301bのうち前記第2作業機系チェック弁315bより前記油圧モータ本体220側に位置する部分に流体接続された第2モータ側バイパスライン321bとを備えている。
【0072】
斯かる構成において、前記開閉弁350は、前記第1及び第2作業機系油圧ライン301a,301bの差圧をパイロット圧として、前記第2モータ側バイパスライン321bを前記第2ポンプ側バイパスライン320bに流体接続させる作業状態(図6参照)と、前記第1モータ側バイパスライン321a及び前記第2モータ側バイパスライン321bをブロックするブロック状態(図7参照)と、前記第1モータ側バイパスライン321aを前記第1ポンプ側バイパスライン320aに流体接続させる反転状態とを選択的に取り得るように構成されている。
【0073】
より詳しくは、前記開閉弁350は、弁本体351と、前記弁本体351を軸線方向一方側及び他方側にそれぞれ付勢する一対の中立バネ352と、前記第1作業機系油圧ライン301aの油圧を前記弁本体351に作用させて該弁本体351を軸線方向一方側の作業位置に位置させる第1パイロットライン352aと、前記第2作業機系油圧ライン301bの油圧を前記弁本体351に作用させて該弁本体351を軸線方向他方側の反転位置に位置させる第2パイロットライン352bとを有している。
【0074】
即ち、前記作業機70の駆動停止状態の際には、前述の通り、前記駆動源30から前記作業機系油圧ポンプ本体120への動力伝達が遮断される。この状態においては、前記第1及び第2作業機系油圧ライン301a,301b間には実質的に差圧が生じない。従って、前記弁本体351は、前記一対の中立バネ352によって、前記第1モータ側バイパスライン321a及び前記第2モータ側バイパスライン321bをブロックするブロック位置に保持される(図6参照)。
【0075】
前記作業機70が作業方向へ駆動される場合には、前記第1作業機系油圧ライン301aが高圧となり且つ前記第2作業機系油圧ライン301bが低圧となる。従って、前記弁本体351は、前記第1パイロットライン352aの油圧によって軸線方向一方側の作業位置に位置される(図7参照)。
これに対し、前記作業機70が反転方向へ駆動される場合には、前記第2作業機系油圧ライン301bが高圧となり且つ前記第1作業機系油圧ライン301aが低圧となる。従って、前記弁本体351は、前記第2パイロットライン352bの油圧によって軸線方向他方側の反転位置に位置される。
【0076】
好ましくは、前記油圧駆動装置100は、図6及び図7に示すように、前記作業時高圧ライン310aの油圧を設定する作業時高圧側リリーフ弁330aと、前記作業時低圧ライン310bの油圧を設定する作業時低圧側リリーフ弁330bとを有し得る。
【0077】
前記作業時高圧側リリーフ弁330aを備えることにより、前記作業機70を作業方向へ駆動させる為の油圧を確保しつつ、前記作業機70に石等が挟まった際に前記作業時高圧ライン310aが異常高圧となることを有効に防止できる。
又、前記作業時低圧側リリーフ弁330bを備えることにより、前記作業機70を作業方向へ駆動している状態から駆動停止状態へ移行させた際に、前記作業時低圧ライン310bが異常高圧となることを有効に防止できる。
【0078】
本実施の形態においては、図6及び図7に示すように、前記作業時高圧側リリーフ弁330a及び前記作業時低圧側リリーフ弁330bは、対応する油圧ライン310a,310bの油圧上昇に伴ってリリーフ圧が上昇する可変リリーフ弁とされている。
前記作業時高圧側リリーフ弁330aを可変リリーフ弁とすることにより、前記作業時高圧ライン310aの油圧を最大設定油圧まで徐々に漸増させることができ、従って、前記作業機70の駆動開始をスムーズに行うことができる。
又、前記作業時低圧側リリーフ弁330bを可変リリーフ弁とすることにより、前記作業時低圧ライン310bの油圧を最大設定油圧まで徐々に漸増させることができ、前記作業機70を駆動状態から駆動停止状態へ移行させた際に、前記作業機70に急激に制動力が付加されることを防止できる。
【0079】
より好ましくは、前記作業時高圧側リリーフ弁330aの初期圧を前記作業時低圧側リリーフ弁330bの初期圧よりも低く設定することができ、これにより、前記作業機70の駆動開始をよりスムーズに行うことができる。
例えば、前記作業時高圧側リリーフ弁330aは、弁本体331と、先端部が前記弁本体331の軸線方向一方側に係合された状態でバネ室に収容されたリリーフバネ332と、前記作業時高圧ライン310aの油圧を前記弁本体331の軸線方向他方側へ作用させて、前記弁本体331を前記リリーフバネ332の付勢力に抗して連通位置へ向けて押動させる受圧ライン333と、前記リリーフバネ332の基端部に係合された状態で前記バネ室に摺動可能に収容されたピストン部材334と、前記作業時高圧ライン310aの油圧を絞りを介して前記ピストン部材334へ作用させて、前記リリーフバネ332を圧縮させる方向へ前記ピストン部材334を押動させる可変リリーフ圧設定ライン335とを有し、前記作業時高圧ライン310aが初期圧の際に前記リリーフバネ332が実質的に自由長となるように構成される。
【0080】
なお、本実施の形態においては、前記油圧駆動装置100は、図6及び図7に示すように、前記作業時高圧ライン310a及び前記作業時低圧ライン310bの間を連通する第1及び第2油圧設定ライン340a,340bを有しており、前記作業時高圧側リリーフ弁330aは、リリーフ油が前記作業時低圧ライン310bへ流入するように前記第1油圧設定ライン340aに介挿され、前記作業時低圧側リリーフ弁330bは、リリーフ油が前記作業時高圧ライン310aへ流入するように前記第1油圧設定ライン340bに介挿されている。
【0081】
前述の通り、本実施の形態に係る油圧駆動装置100は、前記作業機系油圧ポンプ本体120及び前記作業機系油圧モータ本体220が閉回路を形成するように流体接続されており、前記閉回路に作動油を補給するチャージポンプ本体として作用する前記作業機系補助ポンプ本体190を有している。
従って、前記油圧駆動装置100は、さらに、一端部がリザーバタンク90等の油源に流体接続され且つ他端部が前記作業機系補助ポンプ本体190の吸引側に流体接続されたチャージ用吸引ライン370と、一端部が前記補助ポンプ本体190の吐出側に流体接続され且つ他端部がチャージ用チェック弁385を介して前記一対の作業機系油圧ライン301a,301bの少なくとも一方に流体接続された作業機系チャージライン380とを有している。
本実施の形態においては、前記作業機系チャージライン380は、前記一対の作業機系油圧ライン301a,301bの双方に対応するチャージ用チェック弁385を介して流体接続されている。
なお、図6及び図7中の符号390は、前記作業機系チャージライン380の油圧を設定するチャージリリーフ弁395が介挿されたチャージ圧設定ラインである。
又、図2,図6及び図7中の符号361,362は、それぞれ、前記作業機系ポンプケース130内の油及び前記作業機系モータケース230内の油を前記リザーブタンク90へ排出する為のポンプ側ドレンライン及びモータ側ドレンラインである。
【0082】
実施の形態2
以下、本発明の他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図8に、本実施の形態に係る油圧駆動装置101の油圧回路図を示す。
なお、図8中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0083】
図8に示すように、本実施の形態に係る油圧駆動装置101は、前記作業機系油圧ポンプ本体120及び前記作業機系油圧モータ本体220が開回路を形成するように流体接続されている。
【0084】
具体的には、前記油圧駆動装置101は、一端部が前記リザーバタンク90等の油源に流体接続され且つ他端部が前記作業機系油圧ポンプ本体120の吸引ポート120inに流体接続された吸引ライン420と、一端部が前記作業機系油圧ポンプ本体120の吐出ポート120outに流体接続された吐出ライン430と、一端部が前記第1及び第2モータ側ポート220a,220bのうち作業時に吸引ポートとして作用する第1モータ側ポート220aに流体接続された第1作業機系油圧ライン401aと、前記第1及び第2モータ側ポート220a,220bのうち作業時に吐出ポートとして作用する第2モータ側ポート220bに流体接続された第2作業機系油圧ライン401bと、一端部が前記低圧部として作用する前記リザーバタンク90に流体接続された排出ライン440と、作業時に前記第2作業機系油圧ライン401bを前記排出ライン440に流体接続させる作業状態を取り且つ前記作業機70の駆動が停止される際に前記第2作業機系油圧ライン401bをブロックするブロック状態を取る前記開閉弁350とを備えている。
【0085】
本実施の形態においては、図8に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120として固定容積型ポンプ本体を採用しつつ、前記作業機70を反転方向へも駆動可能とする為に、下記構成を備えている。
即ち、前記油圧駆動装置101は、前記吐出ライン430を前記第1作業機系油圧ライン401aに流体接続させ且つ前記第2作業機系油圧ライン401bを前記排出ライン440に流体接続させる作業状態と、前記吐出ライン430を前記第2作業機系油圧ライン401bに流体接続させ且つ前記第1作業機系油圧ライン401aを前記排出ライン440に流体接続させる反転状態とを選択的に取り得る切換弁450を有している。
前記切換弁450は、例えば、人為操作に応じて作業状態又は反転状態が選択的に切り替わるように構成される。
【0086】
なお、前記油圧駆動装置101は、図8に示すように、さらに、前記第1作業機系チェック弁315a、前記第2作業機系チェック弁315b、前記第1ポンプ側バイパスライン320a、前記第1モータ側パイパスライン321a、前記第2ポンプ側バイパスライン320b,前記第2モータ側バイパスライン321b,前記作業時高圧側リリーフ弁330a及び前記作業時低圧側リリーフ弁330bを有している。
【0087】
本実施の形態に係る油圧駆動装置101においても、前記実施の形態1におけると同様、前記作業機70の駆動停止時におけるパワーロス低減、並びに、前記作業機70を駆動状態から駆動停止状態へ移行した際の該作業機70の停止時間の短縮化及び前記作業機70の駆動停止時における意に反した回転防止を図ることができる。
【0088】
実施の形態3
以下、本発明のさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図9に、本実施の形態に係る油圧駆動装置102における前記作業機系油圧ポンプ本体120を含む縦断面図を示す。
なお、図9中、前記実施の形態1又は2におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0089】
前記実施の形態1及び2においては、前記作業機系油圧ポンプ本体120は専用の前記作業機系ポンプケース130に収容されており、前記走行系ポンプユニット40とは離間配置されていたが、本実施の形態に係る油圧駆動装置102においては、図9に示すように、前記作業機系油圧ポンプ本体120が前記走行系油圧ポンプ本体42を収容する走行系ポンプケース43Cに収容されている。
【0090】
詳しくは、本実施の形態においては、前記走行系油圧ポンプユニット40は、前記走行系ポンプケース43に代えて、走行系ポンプケース43Cを有している。
図9に示すように、前記走行系ポンプケース43Cは、ケース本体44Cと、前記ケース本体44Cに着脱可能に連結されるポートブロック45Cとを有している。
【0091】
前記ケース本体44C及び前記ポートブロック45Cは、前記走行系油圧ポンプ本体42及び前記作業機系油圧ポンプ本体120の双方を収容するように構成されている。
本実施の形態においては、前記ケース本体44Cには、前記走行系油圧ポンプ本体42及び前記作業機系油圧ポンプ本体120が挿通可能な開口が設けられており、前記ポートブロック45Cが前記開口を閉塞するように前記ケース本体44Cに連結されることで、前記両ポンプ本体42,120の収容空間が形成されている。
【0092】
斯かる構成において、前記作業機系ポンプ軸110は前記ケース本体44Cの端壁と前記ポートブロック45Cとによって軸線回り回転自在に支持されており、前記作業機系油圧ポンプ本体120は前記収容空間内に位置するように前記作業機系ポンプ軸110に相対回転不能に支持されている。
なお、本実施の形態においては、前記作業機系ポンプ軸110は前記走行系ポンプ軸41と略平行に配設されている。
【0093】
本実施の形態に係る油圧駆動装置102は、前記駆動源30から前記作業機系ポンプ軸110への動力伝達が前記収容空間内において行われるように構成されている。
詳しくは、前記油圧駆動装置102は、前記作業機系伝動機構170に代えて、作業機系伝動機構170Cを有している。
【0094】
前記作業機系伝動機構170Cは、図9に示すように、前記走行系ポンプ軸41に相対回転不能に支持された駆動側ギヤ171Cと、前記駆動側ギヤ171Cと噛合した状態で前記作業機系ポンプ軸110に相対回転自在に支持された従動側ギヤ172Cと、前記作業機系ポンプ軸110に相対回転不能に支持されたスプラインハブ174Cと、前記従動側ギヤ172Cから前記スプラインハブ174Cへの動力伝達を選択的に係合又は遮断させるクラッチ部材175Cとを有している。
【0095】
本実施の形態においては、前記クラッチ部材175Cとしてクラッチスライダが用いられている。
詳しくは、前記従動側ギヤ172Cには、前記スプラインハブ174Cと略同一ピッチの出力スプライン173Cが形成されている。
一方、前記クラッチスライダ175Cには、前記スプラインハブ174C及び前記出力スプライン173Cと係合可能な入力スプラインが設けられている。
【0096】
前記クラッチスライダ175Cは、前記従動側ギヤ172C及び前記スプラインハブ174Cに軸線方向移動可能且つ軸線回り相対回転不能に支持されており、前記出力スプライン173C又は前記スプラインハブ174Cの一方にのみ係合する遮断位置(図9において、前記作業機系ポンプ軸110の下側に記載の位置)と、前記出力スプライン173C及び前記スプラインハブ174Cの双方に係合する動力伝達位置(図9において、前記作業機系ポンプ軸110の上側に記載の位置)とを選択的にとり得るように構成されている。
前記クラッチスライダ175Cを該クラッチスライダ175Cに係合された外部クラッチアーム(図示せず)を介して前記作業機操作部材7に機械的に作動連結することで、前記クラッチスライダ175Cの位置制御を行うことができ、若しくは、前記作業機操作部材7のON/OFF操作に基づいて作動される油圧的又は電気的なアクチュエータを介して前記クラッチスライダ175Cの位置制御を行うことも可能である。
【0097】
本実施の形態においては、前記各実施の形態における効果に加えて、ポンプケースの共用によるコスト低廉化、及び、前記作業機系伝動機構の構造簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る油圧駆動装置が適用された作業車輌の側面図である。
【図2】図2は、図1に示す作業車輌の油圧回路図であり、前記油圧駆動装置を含む一部分を示している。
【図3】図3は、図1に示す作業車輌の油圧回路図であり、図2に示す一部分以外の他の部分を示している。
【図4】図4は、図1におけるIV−IV線に沿った横断平面図である。
【図5】図5は、図1におけるV−V線に沿った縦断面図である。
【図6】図6は、実施の形態1に係る油圧駆動装置の油圧回路図であり、作業機を作業方向へ駆動している状態を示している。
【図7】図7は、実施の形態1に係る油圧駆動装置の油圧回路図であり、作業機の駆動を停止している状態を示している。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2に係る油圧駆動装置の油圧回路図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態3に係る油圧駆動装置の作業機系油圧ポンプ本体近傍の断面図である。
【符号の説明】
【0099】
30 駆動源
70 作業機
100〜102 油圧駆動装置
120 作業機系油圧ポンプ本体
220 作業機系油圧モータ本体
301a 作業時高圧ライン
301b 作業時低圧ライン
330a 作業時高圧側リリーフ弁
330b 作業時低圧側リリーフ弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源によって作動的に駆動される油圧ポンプ本体と、前記油圧ポンプ本体に流体接続された油圧モータ本体とを備え、前記油圧モータ本体によって作業機を作動的に駆動する油圧駆動装置であって、
前記作業機の駆動をON/OFFするON/OFF操作に応じて、前記駆動源から前記油圧ポンプ本体への動力伝達を係合又は遮断するように構成され、
前記動力伝達の係合時には前記油圧モータ本体の吐出側を低圧部に流体接続させ且つ前記動力伝達の遮断時には前記油圧モータ本体の吐出側をブロックさせる開閉弁を備えたことを特徴とする油圧駆動装置。
【請求項2】
前記開閉弁は、前記作業機を作業方向へ回転させる際に前記油圧ポンプ本体から吐出される作動油を前記油圧モータ本体へ供給する作業時高圧ラインと前記作業機を作業方向へ回転させる際に前記油圧モータ本体から吐出される油を前記低圧部へ流す作業時低圧ラインとの差圧をパイロット圧として作動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項3】
前記作業時高圧ラインの油圧を設定する作業時高圧側リリーフ弁と、前記作業時低圧ラインの油圧を設定する作業時低圧側リリーフ弁とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧駆動装置。
【請求項4】
前記作業時高圧側リリーフ弁及び前記作業時低圧側リリーフ弁は、対応する油圧ラインの油圧上昇に伴ってリリーフ圧が上昇する可変リリーフ弁とされており、
前記作業時高圧側リリーフ弁の初期圧が前記作業時低圧側リリーフ弁の初期圧よりも低く設定されていることを特徴とする請求項3に記載の油圧駆動装置。
【請求項5】
前記作業時高圧ライン及び前記作業時低圧ラインは閉回路を形成するように前記油圧ポンプ本体及び前記油圧モータ間を流体接続していることを特徴とする請求項3又は4に記載の油圧駆動装置。
【請求項6】
前記油圧ポンプ本体の容積量を変化させる容積調整機構をさらに備え、
前記容積調整機構によって、前記油圧ポンプ本体から前記作業時高圧ラインに作動油が吐出される作業状態と、前記油圧ポンプ本体から前記作業時低圧ラインに作動油が吐出される反転状態とが切り換え可能とされていることを特徴とする請求項5に記載の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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