説明

油性ボールペン用インキ組成物

【課題】本発明の課題は、油性ボールペン用インキ組成物において、書き味が良好であり、かつ、ボール座の摩耗抑制することが可能な油性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、少なくとも着色剤、有機溶剤、水、アルキル基を有するノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物を用いる。
さらに、前記アルキル基を有するノニオン性界面活性剤の該アルキル基の炭素数が、1〜30であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油性ボールペン用インキ組成物に関し、さらに詳細としてはインキ組成物中に、アルキル基を有するノニオン性界面活性剤と水を含有する油性ボールペン用インキ組成物に関するものである。
【0002】
従来より、ボールペンは他の種類の筆記具と異なり、先端にステンレス鋼などからなる金属チップと、該金属チップのボール受け座に抱持される超鋼などの金属からなる転写ボールと、からなるボールペンチップをインキ収容筒に装着した構成を有するが、筆記時にボールの回転によって、ボール座に摩耗が発生し、筆跡に線飛び、カスレなどが生じたり、書き味が悪くなるという問題があった。
【0003】
こうした問題を解決するため、ボールペンチップのボールとボール座との潤滑性向上を目的として、様々な潤滑剤を用いた油性ボールペン用インキ組成物が多数提案されている。
【0004】
このような潤滑剤を用いた油性ボールペン用インキ組成物としては、フッ素系、シリコン系界面活性剤を用いたものとしては、特開平6−248217号公報「ボールペン用インキ組成物」、特開平9−151354号公報「油性ボールペン用インキ組成物」、アルキルβ−D−グルコシドを用いたものとしては、特開平5−331403号公報「油性ボールペンインキ」、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールもしくはその塩を用いたものとしては、特開2000−104003号公報「油性ボールペンインキ」等に、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】「特開平6−248217号公報」
【特許文献2】「特開平9−151354号公報」
【特許文献3】「特開平5−331403号公報」
【特許文献4】「特開2000−104003号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜4のような各種潤滑剤を用いた場合、ある程度書き味を向上しつつ、ボール座の摩耗を抑制することはできるが、十分に満足できるものではなく、筆跡に線飛び、かすれ等が発生してしまう問題を抱えていた。
【0007】
本発明の目的は、書き味が良好で、かつ、ボール座の摩耗抑制することが可能な油性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.少なくとも着色剤、有機溶剤、水、ノニオン性界面活性剤を含有する油性ボールペン用インキ組成物であって、前記ノニオン性界面活性剤がアルキル基を有することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
2.前記アルキル基の炭素数が、1〜30であることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物
3.前記アルキル基を有するノニオン性界面活性剤が、脂肪酸アルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステルのうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする第1項または第2項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
4.前記アルキル基を有するノニオン性界面活性剤の含有量が、0.1〜20.0質量%であることを特徴とする第1項ないし第3項の何れか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
5.前記油性ボールペン用インキ組成物に、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンのうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする第1項ないし第4項の何れか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
6.前記油性ボールペン用インキ組成物に、水溶性高分子を含有することを特徴とする第1項ないし第5項の何れか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
7.前記水の含有量が、0.1〜15.0質量%であることを特徴とする第1項ないし第6項の何れか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
8.20℃、剪断速度190sec−1におけるインキ粘度が、10〜5000mPa・sであることを特徴とする第1項ないし第7項の何れか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。」とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、書き味が良好で、かつ、ボール座の摩耗抑制することが可能な油性ボールペン用インキ組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴は、油性ボールペン用インキ組成物中にアルキル基(R、R’)を有するノニオン性界面活性剤と水を含有することである。
【0011】
ノニオン性界面活性剤を単独で用いた場合、若干潤滑性を高めることは可能であるが、書き味や、ボール座の摩耗を抑制する効果としては、十分満足できなかった。そこで、本発明者は、潤滑性について鋭意研究した結果、前記アルキル基を有するノニオン性界面活性剤に水を含有することで、書き味が良好で、かつ、ボール座の摩耗抑制することが可能となることが解った。また、水を含有する場合には、ノニオン性界面活性剤は、水に溶けても、イオン化しないため、着色剤やその他の添加剤と反応しずらく、インキ経時安定性に優れるため、好ましい。
【0012】
前記アルキル基を有するノニオン性界面活性剤は、該アルキル基がボールペンチップのボールやボール座の金属表面に吸着する、また、水を含有することで、ノニオン性界面活性剤中の(-CH2-CH-O-)部位や(-CH2 CH-CH-O-)部位などに水が配位しやすく、水同士の流体潤滑が起こり、潤滑性が向上し、ボールとボール座間の金属接触を抑制する効果が得られると推定する。そのため、書き味が良好となり、ボール座の摩耗抑制する効果がある。さらに、油性ボールペン用インキ組成物に水を含有することで、インキ粘度を、より低粘度化することが可能となり、書き味をより向上し易く、また、紙面に対しての滲み、裏抜けの抑制する効果があるため、好ましい。
【0013】
また、アルキル基(R、R’)を有するノニオン性界面活性剤の炭素数は、30を越えると、親油性が強すぎるため、水を含有する場合は、溶解安定しずらいため、アルキル基(R、R’)の炭素数は、1〜30が好ましく、さらに潤滑性を考慮すれば、アルキル基(R、R’)の炭素数が5〜20である方が最も好ましい。
【0014】
また、アルキル基を有するノニオン性界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0015】
その中でも、より潤滑性やインキ経時安定性を考慮すれば、(化1)のような脂肪酸アルカノールアミド、(化2)のようなグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
【化1】

[式中、Rは、水素又はアルキル基を、nは0〜20、mは1〜20の整数を示す。]

【化2】

[式中、R’は、水素又はアルキル基を、lは1〜20の整数を示す。]
【0016】
また、具体的に、脂肪酸アルカノールアミドとしては、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミドが挙げられる。脂肪酸モノエタノールアミドとして、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、リノール酸モノエタノールアミド、ラウリル酸イソプロパノールアミド等が挙げられ、脂肪酸ジエタノールアミドとして、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、パルミチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド(1:1型)、オレイン酸ジエタノールアミド(1:2型)、ラウリル酸ジエタノールアミド(1:1型)、リノール酸ジエタノールアミド等が挙げられる。また、グリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンラウリル酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンエルカ酸エステルなどのポリグリセリン脂肪酸エステルや、ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノ・ジグリセライド、モノイソステアリン酸グリセリルなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0017】
脂肪酸アルカノールアミドの具体例は、スタホームF、スタホームT、スタホームFK、スタホームDL、スタホームDF-1、スタホームDF-2、スタホームDF−4、スタホームDFC、スタホームDO、スタホームDOS、スタホームMFペレット、スタホームLIPA(日油(株)社製)、ポリノンDAO、ポリノンDAL-C、ポリノンDAT(昭栄薬品(株)製)など、ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例は、ユニグリGO−102R、ユニグリGO−106、ユニグリGL−106、ユニグリGS−106(日油(株)製)、リョートーポリグリエステルL−10D、リョートーポリグリエステルL−7D、リョートーポリグリエステルM−10D、リョートーポリグリエステルM−7D、リョートーポリグリエステルP−8D、リョートーポリグリエステルSWA−20D、リョートーポリグリエステルリョートーポリグリエステルSWA−10D、リョートーポリグリエステルO−50D、リョートーポリグリエステルO−15D、リョートーポリグリエステルER−60D(三菱化学フーズ(株)製)、NIKKOL DGMO−CV、NIKKOL DGMO−90V、NIKKOL Tetraglyn1-OV、NIKKOL Decaglyn1-OV、NIKKOL Decaglyn 1-LN、NIKKOL Decaglyn 5-HS 、NIKKOL Decaglyn 5-OV、NIKKOL Decaglyn 7-OV、NIKKOL Decaglyn10-OV、NIKKOL Decaglyn 10-MAC、NIKKOL Decaglyn PR-20 (日光ケミカルズ(株))などが挙げられる。
【0018】
また、脂肪酸アルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステルのアルキル基(R、R’)の炭素数は、1〜30が好ましいが、さらに潤滑性を考慮すれば、アルキル基(R、
R’)の炭素数が5〜20であるステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド(1:1型)、オレイン酸ジエタノールアミド(1:2型)、ラウリル酸ジエタノールアミド(1:1型)、リノール酸ジエタノールアミド、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンラウリル酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステルなどが最も好ましい。
【0019】
また、アルキル基を有するノニオン性界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、潤滑効果が得られないおそれがあり、20.0質量%を越えると、インキ経時が不安定になるおそれがあるため、インキ組成物全量に対し、0.1〜20.0質量%が好ましく、さらに、好ましくは、1.0〜15.0質量%であり、最も好ましくは、インキ組成物全量に対し、3.0〜10.0質量%である。
【0020】
有機アミンについては、前記アルキル基を有するノニオン性界面活性剤と水を含有する油性ボールペン用インキ組成物中に、(-CH2-CH-O)部位を有する有機アミンを含有すると、より潤滑効果が得られ易い。そのため、有機アミンとして、(-CH2-CH-O)部位を有するオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンを用いる方が好ましい。これ等は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0021】
オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、具体的には、ナイミーンL−201、ナイミーンL−202、同L−207、同S−202、同S−204、同S−210、同T2-206、同S−210、同DT−203、同DT−208、ナイミーンL−207、同T2-206、同DT−208(日本油脂(株))等が挙げられる。
【0022】
また、有機アミンの含有量は、潤滑性や経時安定性を考慮すると、インキ組成物全量に対し、0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは、1.0〜5.0質量%である。
【0023】
また、今回のように油性ボールペン用インキ組成物中に水を含有する場合、水溶性高分子を用いる方が、より好ましい。油性ボールペン用インキ組成物中には、ドライアップ等を抑制するのに、保湿性を高めるため、蒸発しにくい有機溶剤を用いると良いが、水は比較的蒸発しやすいため、水の蒸発を抑制する保湿効果のある水溶性高分子を含有することで、水を安定して油性ボールペン用インキ組成物中に保ち易い。そのため、本発明のように、水が少なくなると、潤滑効果が得られなくなるため、水溶性高分子を含有することで、保湿することが好ましい。
【0024】
水溶性高分子の具体例は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド等が挙げられる。これ等は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0025】
また、水の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑効果が得られないおそれがあり、15.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になるおそれがあるため、インキ組成物全量に対し、0.1〜15.0質量%が好ましい。より好ましくは、インキ組成物全量に対し、1.5〜10.0質量%であり、最も好ましくは、4.0〜8.0質量%である。尚、水の添加方法は特に限定されないが、水以外の成分を適宜混合したインキ中に水をそのままの状態で添加しても、着色剤や樹脂などの油性ボールペン用インキに用いる成分に予め水分を吸湿や吸水させておいても良い。
【0026】
本発明の油性インキ組成物のインキ粘度は、特に限定されるものではないが、20℃、剪断速度190sec−1におけるインキ粘度が10mPa・s未満の場合には、筆跡に滲みやインキ垂れ下がりの影響が出やすいため、また、20℃、剪断速度190sec−1におけるインキ粘度が5,000mPa・sを超えると、筆記時のボール回転抵抗が大きくなり、書き味が重くなる傾向がある。そのため、20℃、剪断速度190sec−1におけるインキ粘度は、10〜5,000mPa・sが好ましい。より好ましくは、50〜3、000mPa・sであり、最も好ましくは、ボール座の摩耗を抑制する効果が顕著である100〜1、500mPa・sである。
【0027】
本発明に用いる着色剤については、染料、顔料があるが、染料については、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等が採用可能である。
【0028】
染料について、具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1621、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB−B、BASE OF BASIC DYES RO6G−B、BASE OF BASIC DYES VPB−B、BASE OF BASIC DYES VB−B、BASEOF BASIC DYES MVB−3(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンブラック GMH−スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C−RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C−RH、アイゼンスピロンレッド C−GH、アイゼンスピロンレッド C−BH、アイゼンスピロンイエロー C−GNH、アイゼンスピロンイエロー C−2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH−スペシヤル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー510、S.B.N.イエロー530、S.R.C−BH(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0029】
また、顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。これらの染料および顔料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。着色剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、1.0〜50.0質量%が好ましい。
【0030】
本発明に用いる有機溶剤としてはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3―メトキシブタノール、3―メトキシー3―メチルブタノール等のグリコールエーテル類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノ−ル、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール類、フェニルセロソルブ等のセロソルブ類等、油性ボールペン用インキとして一般的に用いられる有機溶剤が例示でき、これらを1種又は2種以上用いることができる。有機溶剤の含有量は、着色剤の溶解性、筆跡乾燥性、にじみ等を考慮すると、インキ組成物全量に対し、5.0〜50.0質量%が好ましい。
【0031】
また、その他として、着色剤の経時安定性や潤滑性を向上させるために、有機酸や界面活性剤として、オレイン酸、ステアリン酸、リシノール酸、ラウリル酸、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等を、顔料分散剤として、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂等を、粘度調整剤として、ケトン樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル等の樹脂や有機酸アマイド、架橋型アクリル酸重合体などの擬塑性付与剤を、また、染料安定剤、可塑剤、キレート剤等を適宜用いても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0032】
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、着色剤として、染料、有機溶剤として、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、水、潤滑剤として、オレイン酸ジエタノールアミド(スタホームDO:日本油脂(株)社製)、オキシエチレンアルキルアミン(ナイミーンL207:日本油脂(株)社製)、樹脂としてポリビニルピロリドン(PVP K−90:アイエスピー・ジャパン(株)社製)、ケトン樹脂(ハイラック110H:日立化成(株)社製)を採用し、水以外を所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させ、室温まで冷却して、水を所定秤量しディスパー攪拌機をもちいて混合させ油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。尚、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製 レオメーターSR5を用いて20℃の環境下で、剪断速度190sec−1にてインキ粘度を測定したところ、180mPa・sであった。
【0033】
実施例1
染料(スピロンブラック−GMH−S) 15.0質量%
染料(バリーファ−スト バイオレット1701) 15.0質量%
有機溶剤(ベンジルアルコール) 25.0質量%
有機溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル) 25.0質量%
水 5.0質量%
潤滑剤(脂肪酸アルカノールアミド) 10.0質量%
安定剤(オレイン酸) 1.0質量%
安定剤(オキシエチレンアルキルアミン) 1.0質量%
樹脂(ポリビニルピロリドン) 0.5質量%
樹脂(ケトン樹脂) 2.5質量%
【0034】
実施例2〜17
表1、2に示すように、各成分を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜17の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表1、2に測定、評価結果を示す。
【表1】

【表2】

【0035】
比較例1〜7
表3に示すように、各成分を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、配合し、比較例1〜7の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表3に測定、評価結果を示す。

【表3】

【0036】
試験及び評価
実施例1〜17及び比較例1〜7で作製した油性ボールペン用インキ組成物を、インキ収容筒(ポリプロピレン)に、ボール径がφ0.7mmのボールを回転自在に抱持したボールペンチップ(ステンレス綱線)を装着したボールペン用レフィルに充填し、筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
【0037】
書き味:手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・◎
滑らかなもの ・・・○
やや重いもの ・・・△
重いもの ・・・×
【0038】
耐摩耗試験:荷重200gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて筆記試験後のボール座の摩耗を測定した。
ボール座の摩耗が2μm未満であり、筆記可能なもの ・・・◎
ボール座の摩耗が2μm以上、5μm未満であり、筆記可能なもの ・・・○
ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であり、筆記不良になってしまうもの ・・・△
ボール座の摩耗が10μm以上であり、筆記不能になってしまうもの ・・・×
【0039】
実施例1〜17では、書き味、耐摩耗試験ともに良好な性能が得られた。
【0040】
比較例1〜3、6では、アルキル基を有するノニオン性界面活性剤を用いてないため、書き味が重く、耐摩耗試験において、ボール座の摩耗がひどく10μmを超えてしまい、筆記不良になるものもあった。
【0041】
比較例4〜5、7では、水を用いてないため、書き味がやや重い、耐摩耗試験において、ボール座の摩耗がひどく10μmを超えてしまい、筆記不良になるものもあった。
【0042】
また、インキの垂れ下がりを防止するため、ボールペンチップ先端に回転自在に抱持したボールを、コイルスプリングにより直接又は押圧体を介してチップ先端縁の内壁に押圧して、筆記時の押圧力によりチップ先端縁の内壁とボールに間隙を与えインキを流出させる弁機構を具備し、チップ先端の微少な間隙も非使用時に閉鎖することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は油性ボールペン用インキ組成物に関し、さらに詳細としては、少なくとも着色剤、有機溶剤、水、アルキル基を有するノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物を用いることで、書き味が良好で、かつ、ボール座の摩耗抑制することが可能な油性ボールペン用インキ組成物を提供することができる。そのため、キャップ式、ノック式等、ボールペンとして広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤、有機溶剤、水、ノニオン性界面活性剤を含有する油性ボールペン用インキ組成物であって、前記ノニオン性界面活性剤がアルキル基を有することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項2】
前記アルキル基の炭素数が、1〜30であることを特徴とする請求項1に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項3】
前記アルキル基を有するノニオン性界面活性剤が、脂肪酸アルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステルのうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項4】
前記アルキル基を有するノニオン性界面活性剤の含有量が、0.1〜20.0質量%であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項5】
前記油性ボールペン用インキ組成物に、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンのうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項6】
前記油性ボールペン用インキ組成物に、水溶性高分子を含有することを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項7】
前記水の含有量が、0.1〜15.0質量%であることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
【請求項8】
20℃、剪断速度190sec−1におけるインキ粘度が、10〜5000mPa・sであることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。

【公開番号】特開2011−99027(P2011−99027A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253899(P2009−253899)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】