説明

油性廃水浄化方法

油性廃水を浄化する方法において、当該方法が、デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、及びハイパーブランチポリエチレンイミン、及びこれらとグルコノラクトン、酸化アルキレン、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸の塩、塩化アルキル、塩化ベンジル、及び硫酸ジアルキルとの反応生成物から成る群より選択された一又はそれ以上の乳化破壊剤を有効浄化量、前記廃水に加えるステップを具える方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン又はハイパーブランチポリエチレンイミン、又はこれらの官能性誘導体を用いて油性廃水を浄化する方法に関する。
【0002】
本発明の背景
乳化炭化水素を含有する油性廃水は、製鉄及びアルミ業、化学プロセス業、自動車製造業、洗濯業、及び原油回収及び精製業を含む各種の工業で生じる。典型的な乳化炭化水素としては、潤滑剤、切削剤、タール、グリース、原油、ディーゼル油、ガソリン、灯油、ジェット燃料等が挙げられる。
【0003】
通常、水中の乳化炭化水素は、数十乃至数千ppmの範囲で存在する。この残留炭化水素は、工業プロセスにおいて環境へ水を排出する前に又はこの水を再利用する前に取り除かれなければならない。また、環境への関心と政府の規制に加えて、工業プロセスにおける乳化油を含有する水を使用すると、実際に上記の業界の生産量を減らし、運転コストが増えるので、乳化炭化水素を効果的に除去することは、経済的な理由で極めて重要である。
【0004】
乳化油を除去する最も効果的な方法の1つは、水浄化剤の使用を介するものである。歴史的に、乾燥ポリマ、溶液ポリマ、水溶性分散ポリマ、逆エマルジョンラテックス及び金属イオンを用いて、プロデューストウォータを処理してきた。各材料は、それ自身利点及び欠点を有する。乾燥ポリマは、輸送コストを低減する利点があるが(溶媒がないため体積が小さい)、同様の理由で、乾燥ポリマは、当該分野での使用の前に乾燥ポリマを溶解するために、特別な装置を必要とする。
【0005】
ラテックスポリマの性能は、非常に優れており、頻繁に用いられている;しかし、ラテックスポリマ自体に一連の問題がある。ラテックスポリマは処理範囲が狭く、その結果、多くの場合、過剰処理となる。
また、使用前に反転させなければならない。従って、乾燥ポリマのように、油田に特別な装置を必要とする。非常に多くの場合この装置は入手できず、未反転生成物を使用すると、供給システムにおいて多くの閉塞問題を引き起こす。
【0006】
多くの場合、溶液ポリマは、溶解度に限界があるので、非常に希薄である。また、溶液ポリマは、通常分散した油を凝集することが不可能であり、従って、凝集させるためには、別の化学物質(ラテックス又は分散ポリマ)を必要とする。従って、溶液ポリマは、この分野では逆エマルジョンを破壊するために用いられるが、第2の「最終生成物」を、水の浄化の最終段階で加える。
【0007】
Fe3+、Zn2+、Al3+等の金属イオンは、長い間逆エマルジョンを破壊するために用いられてきたが、近年は政府の規制によって、排出量のレベルが制限されている。また、金属イオンは逆エマルジョンを破壊する点で効果的であるが、油を凝集させるために別の化学物質を必要とする。
【0008】
分散ポリマは、これらの問題のいくつかを解決するものであるが、全く問題がないわけではない。分散ポリマは水溶性であるが、分散ポリマの非常に大きな分子量、及びこの粘性に関連した希釈の変化は、非常に高度な給気システムを必要とする。このことは、多くの場合、当該分野における分散ポリマの使用の妨げとなる。
【0009】
また、上記で挙げられた水浄化剤のうち最もよい水浄化剤のいくつかを用いて、石油化学工業の希釈蒸気システムの急冷水から残留油を取り除いた。エチレン製造プラントでは、急冷カラム(塔)で水を用いて、一次蒸留塔(一次精流塔)に残っているガスを冷却する。この塔の基部では、油が系に還流として戻る間に、熱くなった急冷水(hot quench water)が濃縮炭化水素から分離され、希釈蒸気発生器に送り返される。油と水が乳化すると、往々にして化学添加剤の使用によって2層の分離が促進されるが、他方、残留油が、希釈蒸気システムを汚染し、下流側で更なる汚染問題を引き起こす。この2層の分離は、系の保持時間が短いため即時に行うべきである。従って、製品が優れた性能を有することは必須である。
【0010】
従って、油性廃水を浄化する効率的経済的で環境に優しい方法が依然として求められている。
【0011】
本発明の概要
本発明は、デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、及びハイパーブランチポリエチレンイミン、及びこれらとグルコノラクトン、酸化アルキレン、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸の塩、塩化アルキル、塩化ベンジル、及び硫酸ジアルキルとの反応生成物から成る群より選択された一又はそれ以上の乳化破壊剤を有効浄化量、前記廃水に加えるステップを具える油性廃水を浄化する方法である。
【0012】
本発明の詳細な説明
本発明の方法で用いられる好適な乳化破壊剤としては、水溶性及び油溶性デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、及びハイパーブランチポリエチレンイミン、及びデンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、及びハイパーブランチポリエチレンイミンを、グルコノラクトン、酸化アルキレン、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸の塩、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、及び硫化ジアルキルと反応させることによって生成したこれらの誘導体が挙げられる。
【0013】
一実施例では、ポリアルキレンイミンの分子量は、約300乃至約5,000,000ダルトンである。
【0014】
一実施例では、ポリアルキレンイミンは、式



のデンドリティックポリアミンであり、式中、R及びRは、H及び−(CHCHNH)−Hから各場合で独立して選択され、ここで、mは1乃至約4である。
【0015】
典型的には、デンドリティックポリアミンは、アクリロニトリルとジアミノブタンの反応後、水素化することによって調製される。デンドリティックポリアミンは、商標名DAB−AMの下でウィスコンシン州ミルウォーキー所在のAldrich社、及び商標名Astramolの下で、蘭国へレーン所在のDSM社を含む様々な供給源から市販で入手可能である。
【0016】
一実施例では、デンドリティックポリアミンの分子量は、約300乃至約4,000ダルトンである。
【0017】
本実施例による代表的なデンドリティックポリアミンとしては、 DAB−Am−4(R,R=H,MW316)、DAB−Am−8(R,R=−CHCHCHNH,MW773),DAB−Am−16(R,R=−(CHCHCHNH)H,MW1687)及びDAB−Am−32(R,R=−(CHCHCHNH)H,MW3510)が挙げられる。
【0018】
実施例では、ポリアルキレンイミンは、式



のデンドリティックポリアミドアミンであり、式中、RはOH及び式−NCHCHN(Rの群から各場合で独立して選択され、ここで、Rは、H及び式−CHCHCOの群から各場合で独立して選択され、ここで、RはH又は式−NCHCHN(Rの群であり、ここで、Rは、H及び式−CHCHCOの群から各場合で独立して選択され、ここで、Rは、H及び式−NCHCHNHの群から各場合で独立して選択される。
【0019】
デンドリティックポリアミドアミンは、アクリル酸メチルに対するエチレンジアミンのマイケル付加し、次いで開始テトラエステルのエチレンジアミンによるアミド化によって調製される。アクリル酸メチルと、続くエチレンジアミンとの反応シーケンスは、所望の分子量が得られるまで繰り返される。また、デンドリティックポリアミドアミンは、例えば、商標名Starburstの下でミシガン州ミッドランド所在のDendritech社から市販で入手可能である。
【0020】
実施例では、デンドリティックポリアミドアミンの分子量は、約296乃至約4,000である。
【0021】
本実施例による代表的なデンドリティックポリアミドアミンとしては、Starburst Gen.−0.5(R=OH,MW296),Starburst Gen.0(R=NHCHCHNH,MW517),Starburst Gen.0.5.(R=NHCHCHN(R,R=CHCHCOH),Starburst Gen.1(R=NHCHCHN(R),R=CHCHCOR,R=NHCHCHNH,MW1430),Starburst Gen.1.5(R=NHCHCHN(R,R=CHCHCO,R=NHCHCH(R,R=CHCHCOH),Starburst Gen.2(R=NHCHCHN(R,R=CHCHCOR,R=NHCHCHN(R);R=CHCHCOR,R=NHCHCHNH,MW3256)が挙げられる。
【0022】
一実施例では、ポリアルキレンイミンは、式



のハイパーブランチポリエチレンイミンであり、式中、R及びR10は、H及び−(HNCHCHNH)−Hから各場合で独立して選択され、rは、1乃至約200である。
【0023】
一実施例では、ハイパーブランチポリエチレンイミンの分子量は、約800乃至約2,000,000ダルトンである。
【0024】
好適なハイパーブランチポリエチレンイミンは、国際公開番号第WO97/21760号に記載されているようなエチレンイミン(アジリジン)の触媒開環重合によって調製される。また、ハイパーブランチポリエチレンイミンは、商標名Lupasolの下で、ウィスコンシン州ミルウォーキー所在のBASF社から、及び商標名Epominの下で、ニュージャージー州フォートリー所在のSummit Specialty社から市販で入手可能である。
【0025】
代表的なハイパーブランチポリエチレンイミンとしては、Lupasol FG(MW800)、Lupasol G20(MW1300)、Lupasol PR8515(MW2,000)、Lupasol G35(MW2,000)、Lupasol PS(MW750,000)、Lupasol P(MW750,000)、Lupasol SK(MW2,000,000)、Lupasol SU312、PEI600(Aldrich社、MW600)及びEpomin006(MW600)が挙げられる。
【0026】
実施例では、デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、又はハイパーブランチポリエチレンイミンは、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、及び硫酸ジアルキルから選択された一又はそれ以上のアルキル化剤との反応によって官能化される。本明細書で用いられているように、「アルキル」は、1乃至約4つの炭素原子を有する直鎖又は分枝脂肪族炭化水素を意味する。「ベンジル」は、一又はそれ以上の芳香族水素原子が、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、又はハロアルキル基と選択的に置換される式CCH−の群を意味する。硫酸ジアルキルは、式(R’O)SOの群を意味し、式中、R’はアルキルである。「ハロゲン」、「ハロゲン化物」、及び「ハロゲンの」は、Br、Cl、F、又はIを意味する。
【0027】
実施例では、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、及び硫酸ジアルキルは、ハロゲン化メチル、ハロゲン化ベンジル、及び硫酸ジメチルから成る群より選択される。
【0028】
典型的なアルキル化手順では、デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、又はハイパーブランチポリエチレンイミンの50%水溶液を僅かに過剰のアルキル化剤を用いて、約2時間還流しながら加熱する。次いで、この混合物を周囲温度に冷却して、所望の濃度、一般的には、約50パーセントのポリマ活性に水で希釈する。また、一般的に「第4級化」誘導体、又は「第4級化合物(quats)」といわれる代表的なアルキル化誘導体を表1に示す。
【0029】
表1
代表的なアルキル化乳化破壊剤


【0030】
実施例では、デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、又はハイパーブランチポリエチレンイミンは、グルコノラクトンとの反応によって官能化される。
【0031】
実施例では、デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、又はハイパーブランチポリエチレンイミンの分子量は、約300乃至約7,000ダルトンである。
【0032】
典型的な手順では、デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、又はハイパーブランチポリエチレンイミンをDMSOに溶解させて、約10倍の過剰のグルコノラクトンを、アルゴンでパージしつつ緩やかにかき混ぜながら加える。次いで、この混合物を約40℃に徐々に温め、アルゴン雰囲気下で夜通し放置する。次いで、この混合物をイソプロパノールに注いで半流動残留物を形成して、フラスコの底に沈殿させる。この材料をメタノールで繰り返し洗浄すると、濃厚で粘性のある金色のタフィ状の材料のようなグルコノラクトン−キャップド誘導体が生じる。代表的なグルコノラクトンキャップド誘導体を表2に示す。
【0033】
表2
代表的なグルコノラクトンキャップド乳化破壊剤


【0034】
実施例では、デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、又はハイパーブランチポリエチレンイミンは、3−クロロ−2−ヒドロキシ−3−スルホン酸又はこの塩との反応によって官能化される。
【0035】
典型的な手順では、ポリアルキレンイミン、及びポリアルキレンイミンに対して約70乃至約300質量パーセントの1−クロロ−2−ヒドロキシ−3−スルホン酸ナトリウム塩を、約20乃至40パーセント活性で水中に溶解させる。この混合物を、反応pHが安定するまで機械的シェーカ又はオーバーヘッドスターラによって撹拌する。これは、一般的に周囲温度で約72時間又は還流で約4時間を必要とする。pHは、典型的に、達成されるアルキル化の量に依存して2乃至3単位下がる。第1級アミンのアルキル化が、優れていると考えられているが、少量の第2級及び第3級アミンのアルキル化も可能である。
【0036】
一実施例では、ポリアルキレンイミンは、ハイパーブランチポリエチレンイミンである。
【0037】
一実施例では、デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、又はハイパーブランチポリエチレンイミンは、一又はそれ以上の酸化アルキレンとの反応によって官能化されて、ヒドロキシアルキル化誘導体を形成する。
【0038】
ヒドロキシアルキル化誘導体は、約80℃乃至約135℃の温度で、選択的にナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシド、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム等といったアルカリ金属触媒の存在下で、デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、又はハイパーブランチポリエチレンイミンの水溶液を所望の量の酸化アルキレンと共に加熱することによって調製される。
【0039】
この反応を圧力容器内で、又は水を継続的に除去しながら実行する。代替として、本反応は、酸化アルキレンの一部を加えて反応させ、次いで、必要に応じて、アルキレンの第2部分と追加の塩基を加える多段階で実行される。所望であれば、段階間に蒸留によって反応混合物から水を除去する。ポリアルキレンイミンのヒドロキシアルキル化の手順は、米国特許第5,445,767号及び国際公開公報第WO97/27879号に詳細に記載されており、これらは参照することによって、本明細書に組み込まれる。
【0040】
本発明のヒドロキシアルキル化ポリエチレンイミンを調製するために有益な酸化アルキレンは、式



を有し、式中、RはH又はC乃至Cアルキルである。代表的な酸化アルキレンとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、ブチレン−5−オキシド(butylene5 oxide)等が挙げられる。
【0041】
一実施例では、酸化アルキレンは、酸化エチレン及び酸化プロピレンから選択される。
【0042】
一実施例では、ハイパーブランチポリエチレンイミンは、酸化エチレン、及び選択的に酸化プロピレンとの反応によって官能化される。
【0043】
一実施例では、ハイパーブランチポリエチレンイミンは、ポリエチレンイミンのエチレン単位につき約1乃至約85モル当量の酸化エチレンとの反応によって官能化される。
【0044】
一実施例では、ハイパーブランチポリエチレンイミンは、ポリエチレンイミンのエチレン単位につき約5乃至約85モル当量の酸化エチレン及び約5乃至約85モル当量の酸化プロピレンとの反応によって官能化される。
【0045】
一実施例では、ハイパーブランチポリエチレンイミンは、最初に酸化プロピレンと、次いで酸化エチレンと反応させる。
【0046】
一実施例では、ハイパーブランチポリエチレンイミンは、ポリエチレンイミンのエチレン単位につき約5乃至約25モル当量の酸化エチレン及び約85乃至約98モル当量の酸化プロピレンとの反応によって官能化される。
【0047】
本発明による代表的なヒドロキシアルキル化ハイパーブランチポリエチレンイミンを表3に示す。
【0048】
表3
代表的なオキシアルキル化ポリエチレンイミン


【0049】
好適な市販のオキシアルキル化ポリエチレンイミンとしては、BASF社から入手可能なLupasol SC−61B、及びデラウェア州ニューキャッスル所在のUniquema社から入手可能なKemelix 3550X、3423X、3546X、D600及び3582Xが挙げられる。
【0050】
実施例では、本発明の乳化破壊剤は、油田プロデューストウォータの浄化に用いられる。
【0051】
石油を生産し及び処理する間、ほとんどの原油は油中水エマルジョンの形状であり、その割合は、自然条件及び油層の使用歴に依存する。油層が古くなって枯渇するにつれて、石油と共に生産される水の量が増加し、従って、運用効率及び収益性が低下する。多くの場合、可採年数のある時点で、油田オペレータは、生成物中に水又は蒸気を入れることによって、石油生産を減少させ続ける。
【0052】
この方法は、非常に広く用いられており、二次石油回収と呼ばれる。一次及び二次石油回収の双方において、生産した流体は乳化した水及び油から成る。油を回収するために、効率のよい分離プロセスと化学物質が用いられる。しかし、いくらかの油はプロデューストウォータ内で乳化して残留する。この水を油層内に入れて戻すか、環境に流出させるか、又は蒸気発生装置に向ける前に、この残留油を取り除かなくてはならない。
【0053】
プロデューストウォータを浄化するために、本発明による乳化破壊剤は、典型的に、約5乃至約90重量パーセントの濃度の水溶液として、プロデューストウォータに加えられる。また、メタノール及び/又はグリコール等のアルコールを組成物に加えて、低温でのその取扱特性を改善する。
【0054】
ある種の用途では、約100ppm程度の投与量を必要とするが、プロデューストウォータを浄化するための典型的な投与範囲は、約0.5乃至約20ppmの乳化破壊剤である。本発明の乳化破壊剤は、ラテックス又は分散ポリマのように容易に過剰処理せず、その素晴らしい溶解度のために、金属イオン組成物等の溶液から沈殿しない。
【0055】
この乳化破壊剤は、乳化油が水から分離し、フロックとして水の表面に浮かぶことを助ける。このフロックは、次いで、スキミング、デカンティング、フィルタリング等を含む従来の手段によって水の表面から実質的に除去され、洗浄した水は再利用するか、環境に放出することができる。
【0056】
別の実施例では、本発明の乳化破壊剤は、石油化学工業の廃水を浄化するために用いられる。
【0057】
例えば、エチレン製造プラントでは、急冷カラム(塔)で水を用いて、一次蒸留塔(一次精流塔)に残っているガスを冷却する。この塔の基部では、油が系に戻る間、熱くなった急冷水(hot quench water)を濃縮炭化水素から分離して、希釈蒸気発生器に送り返す。油と水が乳化されると、残留油は希釈蒸気システムを汚染し、下流側に汚染の問題が生じる。更に、システム保持時間が短いため、この層は即時に分離されなければならない。この分離は、本発明のヒドロキシアルキル化ポリエチレンイミンの存在下で即時に生じる。
【0058】
浄化有効投与量は、乳化安定性に依存し、様々な設備及び石油化学プラントの設計によって異なる。一般的に、ほとんどの石油化学工業用途では、約1乃至約40ppmの乳化破壊剤を用いる。しかし、ある種の用途では最大200ppmの生成物が必要とされる。
【0059】
上記の記載は、次の例を参照することによってより良く理解されるであろう。これらの例は、例示のために存在し、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0060】
例1
石油化学工業における代表的な乳化破壊剤の評価
本発明による代表的な乳化破壊剤の処理効率は、米国及び加国のいくつかの現場で評価された。全ての試験で、プロセス試料を採取して、30分以内に用いられた。各プロセス試料は、50mLアリコートに分けて、これらのアリコートは6オンスボトルに入れられた。1本の6オンスボトルは未処理で放置し、その他のボトルには試験を行う製品を投与した。各試験場で、現行の乳化破壊剤と本発明の代表的な乳化破壊剤とを比較した。試験を行った現行の乳化破壊剤は、全てイリノイ州ナパービル所在のNalco Company社から入手可能であり:
a)市販品I−ジメチルアミン−エピクロロヒドリン(DMAEM)等の溶液ポリマ−アンモニアターポリマ又はDMAEMホモポリマ;
b)市販品II−塩化ベンジルをジメチルアミノエチルアクリラートと反応させて調製した第4級アンモニウム塩等の分散ポリマ;
c)市販品III−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミドラテックスポリマ等のラテックスポリマ;
が挙げられる。
【0061】
投与後すぐにボトルにふたをし、ラベルを付けて、50回6セット、ハンドシェイクし、撹拌後に5分間、水の浄化を評価した。ボトルの水の浄化は、濁度モードのHach2000又はHach2010マルチメータを用いて決定した。全ての値はNTU単位で報告されている。低濁度はよりよい分離を示し、従ってよりよい性能を示す。この結果を表4に示す。
【0062】
表4
代表的な乳化破壊剤の用量反応


【0063】
表4に示すように、本発明の代表的な乳化破壊剤は、現在市販されている処理剤と同様の能力を示す。乳化破壊剤は、低用量及び高用量(過処理を低リスクにする)同様の効率を示し、浄化特性が良好である。適用の容易さと合わせて、これらの乳化破壊剤は、現行の入手可能な処理剤を超える利点を示している。
【0064】
また、時間の関数として反応を測定して、乳化破壊剤が水をどれだけ早く浄化するかを実証した。結果を表5に示す。
【0065】
表5
代表的な乳化破壊剤の時間反応


【0066】
表4及び5は、本発明の乳化破壊剤が2つの広く用いられている2つの市販の製品の性能パターンにどれだけ近いかを示す。これらの乳化破壊剤は、広範囲の用量及び時間に渡って同様の汎用性及び効率性を示す。しかし、本発明の乳化破壊剤の最も大きな利点は、処理した水との相溶性に起因する。実質的な水の混和性は、これらの乳化破壊剤を適用しやすくし、処理した流れの中で沈殿しにくくする。
【0067】
例2
油田における水浄化器の評価
また、油田プロデューストウォータを浄化するための代表的な乳化破壊剤の効率も、カリフォルニア州及びワイオミング州のいくつかの現場で評価した。2乃至5ガロンの油田プロデューストウォータを採取し、乳化の安定性に依存して、次の2乃至4時間以内に用いた。6オンスの透明ガラスボトルを100mLの水で満たして数回反転させ、乳化した流体でボトルを被覆した。処理化学物質を、1パーセント水溶液として個々のボトルに加えた。
【0068】
投与後すぐに、ボトルを閉め、ラベルを付けて、撹拌した。試料を全て同じように撹拌し、系中の乱流をシミュレートした。試料を乳化安定性に応じて、50回か100回を6セット、ハンドシェイクし、水の浄化を、数セット(通常2乃至3セット)の撹拌を通して視覚的に評価した。
【0069】
1本のボトルを未処理で放置し、その他のボトルには、試験を行う目的用量の生成物を入れた。各ボトルは独自の化学物質を含んでいる。いくつかのボトルで透明の水が観察されるまで、一連のシェイク、典型的には少なくとも3シリーズのシェイクを行った後に、読みを記録した。
【0070】
ボトルの水を、このセット内で比較して、0乃至10のスケールで等級を付けた。ここで、0は、試験の最初で完全に不透明なブランク試料を示すが、10は、人が読み取ることができる透き通った水に割り振られている。
【0071】
本発明の代表的な乳化破壊剤は、特定の場所で用いられる現行の市販の化学物質と比較し、選択された一連の基準物質とも比較した。この基準物質は、入手可能な主要な化学物質を示す一般的に用いられている水浄化剤から成る。これらの基準物質は、イリノイ州ナパービル所在のNalco Company社から全て入手できる次の生成物:
d)金属イオン−市販品IV;
e)溶液ポリマ−市販品V;
f)分散ポリマ−市販品VI;
g)ラテックスポリマ−市販品VII;
を含む。
【0072】
この結果を表6乃至9に示す。
【0073】
表6
ワイオミング州の現場での20ppmの投与量での代表的な乳化破壊剤と市販の処理剤の比較


【0074】
表7
カリフォルニア州の現場での代表的な乳化破壊剤と市販の処理剤についての用量反応


【0075】
表8
カナダの現場での140ppmの投与量での代表的な乳化破壊剤と市販の処理剤の比較


【0076】
表9
カリフォルニア州の現場での代表的な乳化破壊剤と市販の処理剤に対する用量反応


【0077】
表6乃至9に示すように、本発明の代表的な乳化破壊剤は、現行の処理剤と比較した場合、広範な処理範囲に渡る低用量と、過剰処理する傾向が低い点において、比較できる又は優れた性能を示す。
【0078】
特許請求の範囲に記載されている本発明の概念及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている本発明の方法の組成物、操作、構成を変更することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性廃水を浄化する方法において、当該方法が、デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、及びハイパーブランチポリエチレンイミン、及びこれらとグルコノラクトン、酸化アルキレン、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸の塩、塩化アルキル、塩化ベンジル、及び硫酸ジアルキルとの反応生成物から成る群より選択された一又はそれ以上の乳化破壊剤を有効浄化量、前記廃水に加えるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記乳化破壊剤の分子量が、約300乃至約5,000,000ダルトンであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記乳化破壊剤が、式



のデンドリティックポリアミンであり、式中、R及びRは、H及び−(HNCHCHNH)−Hから各場合で独立して選択され、mが1から約4であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、前記デンドリティックポリアミンの分子量が、約300乃至約4,000ダルトンであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、前記乳化破壊剤が、式



のデンドリティックポリアミドアミンであり、式中、Rは、OH及び式−NCHCHN(Rの群から各場合で独立して選択され、ここで、Rは、H及び式−CHCHCOの群から各場合で独立して選択され、ここで、Rは、H又は式−NCHCHN(Rの群であり、ここで、Rは、H及び式−CHCHCOの群から各場合で独立して選択され、式中Rは、H及び式−NCHCHNHの群から各場合で独立して選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記デンドリティックポリアミドアミンの分子量が、約296乃至約4,000であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法において、前記乳化破壊剤が、式



のハイパーブランチポリエチレンであり、式中、R及びR10は、H及び−(HNCHCHNH)−Hから各場合で独立して選択され、ここで、rは1乃至約200であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記ハイパーブランチポリエチレンの分子量が、約800乃至2,000,000ダルトンであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項2に記載の方法において、前記デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン、又はハイパーブランチポリエチレンイミンが、一又はそれ以上のハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、又は硫酸ジアルキルとの反応によって官能化されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、及び硫酸ジアルキルが、ハロゲン化メチル、ハロゲン化ベンジル、及び硫酸ジメチルからなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項2に記載の方法において、前記デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン又はハイパーブランチポリエチレンイミンが、グルコノラクトンとの反応によって官能化されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項2に記載の方法において、前記デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン又はハイパーブランチポリエチレンイミンが、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸又はこの塩との反応によって官能化されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項2に記載の方法において、前記デンドリティックポリアミン、デンドリティックポリアミドアミン又はハイパーブランチポリエチレンイミンが、一又はそれ以上の酸化アルキレンとの反応によって官能化されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記酸化アルキレンが、酸化エチレン及び酸化プロピレンからなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、ハイパーブランチポリエチレンイミンが、酸化エチレン及び選択的に酸化プロピレンとの反応によって官能化されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記ハイパーブランチポリエチレンイミンが、前記ポリエチレンイミンのエチレン単位当たり約1乃至約85モル当量の酸化エチレンとの反応によって官能化されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、前記ハイパーブランチポリエチレンイミンが、前記ポリエチレンイミンのエチレン単位当たり約5乃至約85モル当量の酸化エチレン及び約5乃至約85モル当量の酸化プロピレンとの反応によって官能化されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法において、前記ハイパーブランチポリエチレンイミンが、先ず酸化ポリプロピレンと反応し、次いで、前記酸化エチレンと反応することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法において、前記ハイパーブランチポリエチレンが、前記ポリエチレンイミンのエチレン単位当たり約5乃至25モル当量の酸化エチレン及び約85乃至約98モル当量の酸化プロピレンとの反応によって官能化されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、前記油性廃水が、油田プロデューストウォータであることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、前記油性廃水が、石油化学工業廃水であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項8に記載の方法において、前記廃水が、希釈蒸気系中の急冷水であることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2009−507619(P2009−507619A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518391(P2008−518391)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/024319
【国際公開番号】WO2007/002298
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】