説明

油水分離装置および排水制限方法

【課題】含油量が所定の許容値を超えた汚濁水が排水されることを確実に防止するとともに、その状況を確実にユーザに報知する。
【解決手段】ビルジポンプ6とフィルタカートリッジ10(10A,10B)とを備え、ビルジポンプ6により船体内の汚濁水を吸引し、フィルタカートリッジ10を通過させる間に汚濁水の含油量を所定の許容値以下にして船体外へと排水する油水分離装置において、フィルタカートリッジ10の油分の吸着状態を検出する吸着油分検出手段(カラーセンサ38)を配設するとともに、吸着油分検出手段(38)による吸着油分検出値と、許容含油量に応じて予め設定した基準値とを比較する比較手段(カラーセンサ38が内蔵するマイコン)と、比較手段による比較結果が一致、または、吸着油分検出値が基準値を超えるとビルジポンプ6の動作を停止させる制御手段39と、を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体内に溜まった油を含む汚濁水の含油量を所定の許容値以下にして船体外に排水する油水分離装置および排水制限方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋汚染は国際的な問題となっている。そこで、船舶は、船体内に溜まった汚濁水(海水や油などが混ざり合ってできた液体)を海洋に排水する際には、許容含油量(油分濃度)を許容値(15ppm)以下にすることが義務付けられている。また、海洋に油を流出させた場合には、中和剤の散布や油の回収等が義務付けられている。
【0003】
船体内の汚濁水に含まれる油分を分離し、含油量を許容値以下として海洋に排水する先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】特許第3827707号公報
【0004】
この特許文献1には、図8に示すように、例えば総トン数が20t未満の小型船舶のエンジンルーム1に設置する油水分離装置が記載されている。この小型船舶のエンジンルーム1には、エンジン2が搭載され、このエンジン2に連結されたプロペラシャフト3が船体外に突出され、その突出された先端にプロペラ4が配設されている。そのため、このエンジンルーム1内には、プロペラシャフト3を船体外に突出させる挿通孔から海水が浸入する。また、エンジンルーム1には、エンジン2やプロペラシャフト3などのメンテナンスを行った際の油が付着している。そのため、船底の水溜部5には、これらが混ざり合った汚濁水が溜まっている。
【0005】
そして、この特許文献1に記載の油水分離装置は、小型の排水用ポンプであるビルジポンプ6が搭載されている。このビルジポンプ6には、吸引側に接続した接続パイプ7aが船底の水溜部5に配管され、吐出側に接続した第1接続パイプ7bがフィルタカートリッジ8に接続されている。また、フィルタカートリッジ8の出口側に接続した第2接続パイプ7cが船体外を臨むように配管されている。
【0006】
しかしながら、この油水分離装置では、油分を分離するためのフィルタカートリッジ8は、使用するにつれて油分の吸着能力が低下するにも拘わらず、その交換時期をユーザが判断することはできない。そのため、油分吸着能力が低下した状態で排水を行うと、含油量が許容値を越えた排水を海洋に流出させるという問題がある。
【0007】
なお、大型船舶では、以前より排水の含油量を直接検出する方法が採用されているが、その油分濃度検出器は、非常に高価なものであるため、個人が使用するフィッシングボートやプレジャーボートなどの小型船舶には採用できない。
【0008】
また、一般的な汚水処理装置では、ポンプからの吐出流量の低減に基づいてフィルタの目詰まりを判断することが一般的である。しかし、船舶の排水機構では、フィルタカートリッジの油分吸着能力が低下した場合と正常な場合とで、流量に殆ど差がないため、この方法も採用できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、含油量が所定の許容値を超えた汚濁水が排水されることを確実に防止するとともに、その状況を確実にユーザに報知できる油水分離装置および排水制限方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の油水分離装置は、船体に取り付けたビルジポンプと、前記船体に交換可能に取り付けたフィルタカートリッジとを備え、ビルジポンプにより船体内の汚濁水を吸引し、フィルタカートリッジを通過させる間に汚濁水の含油量を所定の許容値以下にして船体外へと排水する油水分離装置において、前記フィルタカートリッジの油分の吸着状態を検出する吸着油分検出手段を配設するとともに、前記吸着油分検出手段による吸着油分検出値と、所定の許容含油量に対応して予め設定した基準値とを比較する比較手段と、前記比較手段による比較結果が一致、または、吸着油分検出値が基準値を超えると前記ビルジポンプの動作を停止させる制御手段と、を備える構成としている。
【0011】
この油水分離装置では、前記フィルタカートリッジを2個以上直列に接続し、前記ビルジポンプによる排水方向の最も上流側を除く下流側のフィルタカートリッジの入口側に、前記吸着油分検出手段を配設することが好ましい。
【0012】
また、本発明の排水制限方法は、船体外に排水する汚濁水の含油量を所定の許容値以下に制限する排水制限方法であって、船体内の汚濁水を排水するビルジポンプの排水側に2個以上のフィルタカートリッジを直列に接続し、ビルジポンプによる排水方向の最も上流側を除く下流側のフィルタカートリッジの油分の吸着状態を吸着油分検出手段によって監視し、吸着油分検出手段による吸着油分検出値と、所定の許容含油量に応じて予め設定した基準値とを比較し、その比較結果が一致、または、吸着油分検出値が基準値を超えるとビルジポンプの動作を停止させるものである。
【0013】
このように構成した油水分離装置および排水制御方法では、フィルタカートリッジの吸着能力が低下することにより、排水する処理水の含油量が所定の許容値(例えば15ppm)越える状態を、基準値として設定している。そのため、吸着油分検出値と基準値とが一致すると、または、吸着油分検出値が基準値を超えると、フィルタカートリッジの吸着能力が低下し、排水に含まれる含油量が許容値を越える状態であることを判断できる。そして、本発明では、この状態になると、制御手段によりビルジポンプを自動的に停止するため、海洋汚染対策に貢献できる。また、ユーザがフィルタカートリッジの油分吸着状況を監視する必要がないため、利便性を向上できる。
【0014】
しかも、2個以上のフィルタカートリッジを直列に接続し、下流側のフィルタカートリッジに吸着油分検出手段を配設しているため、ビルジポンプの動作を停止した状態では、上流側のフィルタカートリッジは、油分を吸着可能な残余部分は全くない。一方、下流側のフィルタカートリッジは、まだ油分を吸着可能な残余部分が存在する。そのため、下流側のフィルタカートリッジを上流側に取り付け、下流側に新たなフィルタカートリッジを取り付けることにより、各フィルタカートリッジの吸着能力を無駄なく最後まで使用できる。
【0015】
なお、油水分離装置の吸着油分検出手段は、前記フィルタカートリッジが油分を吸着することによる変色を検出するものであることが好ましい。このようにすれば、フィルタカートリッジの油分吸着状況を、安価かつ確実に検出(監視)することができる。ここで、色を検出可能な所謂カラーセンサは、光の三原色RGBのうちいずれの成分を読み取るように設定するかにより、フィルタカートリッジの吸着が進むに従って、その読取値は減少する場合と増加する場合とがある。そして、本発明の吸着油分検出値とは、カラーセンサによる読取値自体ではなく、この読取値に対応するフィルタカートリッジの油分吸着度合いを意味するものである。
【0016】
また、前記制御手段は、ビルジポンプの動作を停止すると、その状態を報知手段により報知することが好ましい。このようにすれば、ユーザに対してフィルタカートリッジの交換時期を確実に認識させることができる。また、ビルジポンプが動作しない原因が、故障であるなどの誤認識を防止できる。
【0017】
さらに、前記ビルジポンプの側に連通する接続パイプに接続されるとともに前記フィルタカートリッジの入口部と着脱可能に接続する第1接続部と、前記船体外に連通する接続パイプに接続されるとともに前記フィルタカートリッジの出口部と着脱可能に接続する第2接続部と、を備えた取付装置を設けることが好ましい。このようにすれば、フィルタカートリッジの交換作業性を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の油水分離装置および排水制限方法では、吸着油分検出手段による吸着油分検出値と、予め設定した基準値とを比較し、フィルタカートリッジの吸着能力が低下したことと意味する比較結果である場合には、ビルジポンプを自動的に停止するため、海洋汚染対策に貢献できる。また、ユーザがフィルタカートリッジの油分吸着状況を監視する必要がないため、利便性を向上できる。しかも、2個以上のフィルタカートリッジを直列に接続し、下流側のフィルタカートリッジに吸着油分検出手段を配設しているため、フィルタカートリッジの吸着能力を無駄なく最後まで使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る油水分離装置を示す。この油水分離装置は、総トン数が20t未満の小型船舶のエンジンルーム1に設置するもので、ビルジポンプ6と、一対の取付装置21A,21Bに着脱可能に配設するフィルタカートリッジ10A,10Bと、下流側に位置するフィルタカートリッジ10Bの変色を検出するカラーセンサ38と、該カラーセンサ38からの入力信号に基づいてビルジポンプ6を制御する制御装置39とを備えている。
【0021】
ビルジポンプ6は、内部に吐出流量を検出する流量検出器(図示せず)を内蔵した従来と同様のものである。このビルジポンプ6の吸引部には、水溜部5に配管した接続パイプ7aが接続されている。また、ビルジポンプ6の吐出部には、フィルタカートリッジ10Aの取付装置21Aに接続した第1接続パイプ7bが接続されている。
【0022】
フィルタカートリッジ10A,10Bは、図2に示すように、円筒状をなすカートリッジ本体11と、該カートリッジ本体11の両端開口を閉塞する一対のキャップ12,12とを備え、その内部に、粒状をなす油吸着材16と、リング状をなす液流抑制材17とを配設し、一端の入口部19から汚濁水が流入され、油分を除去した処理水が出口部20から流出されるものである。
【0023】
そのうち、カートリッジ本体11は、内部を透視可能な樹脂製のものである。キャップ12の外端面中央には、円形状に窪む凹部13が設けられるとともに、該凹部13の中心に外向きに突出する被連結部14が設けられている。そして、キャップ12には、流体経路を構成する貫通孔15が、内面側から被連結部14を貫通して延びるように設けられている。なお、一対のキャップ12,12のうち、一方のキャップ12の被連結部14が入口部19となり、他方のキャップ12の被連結部14が出口部20となる。油吸着材16は、カートリッジ本体11内に充填され、通水される汚濁水が含む油分を吸着するものである。液流抑制材17は、カートリッジ本体11内の内周面近傍での汚濁水の流れを抑制するものである。また、本実施形態のフィルタカートリッジ10A,10Bには、キャップ12の内面側に、貫通孔15からの油吸着材16の流出を防止する網目状をなすスペーサ18が配設されている。
【0024】
フィルタカートリッジ10A,10Bの取付装置21A,21Bは、図2および図3に示すように、大略、ベース部23と、該ベース部23に固定した第1および第2接続部28,30と、これら接続部28,30に配設した連結部29,31と、ベース部23に着脱可能に配設するカバー35とを備えている。本実施形態では、隣接する取付装置21A,21Bは、ビルジポンプ6に連通する上流側の取付装置21Aの第2接続部30と、船体外に連通する下流側の取付装置21Bの第1接続部28とが、連結パイプ22によって直列に接続されている。
【0025】
ベース部23は、フィルタカートリッジ10A,10Bより長尺な矩形状をなすベース板材24と、該ベース板材24に固定した補強板材25とを備え、船舶のエンジンルーム1の所定位置にネジ止めにより固定される金属製のものである。補強板材25は、平面視略U字形状をなし、その側板部26,26にカバー35を固定するためのネジ締付部27が設けられている。
【0026】
第1接続部28は金属製であり、フィルタカートリッジ10A,10Bの入口部19をビルジポンプ6と連通する上流側に接続するもので、ベース部23の下端に固定されている。具体的には、第1接続部28は、横方向に延びる円筒状のもので、その一端に接続部材33が締め付けにより固定され、逆側の他端に閉塞部材34が締め付けにより固定される。また、第1接続部28には、外周部である上側頂部中央に第1連結部29が固定されている。この第1連結部29は金属製であり、フィルタカートリッジ10A,10Bの入口部19を密閉状態で接続するものである。
【0027】
第2接続部30は金属製であり、フィルタカートリッジ10A,10Bの出口部20を船体外と連通する下流側に接続するもので、ベース部23の上端に固定されている。この第2接続部30は、第1接続部28と同様に、横方向に延びる円筒状のもので、その一端に接続部材33が締め付けにより固定され、逆側の他端に閉塞部材34が締め付けにより固定される。また、第2接続部30には、外周部である下側頂部中央に第2連結部31が取り付けられている。この第2連結部31は金属製であり、フィルタカートリッジ10A,10Bの出口部20を密閉状態で接続するものである。この第2連結部31は、ネジ溝部とネジ部との螺合により第2接続部30に対して進退可能に固定される可動式であり、その回転操作を行うための操作レバー32が放射状に突設されている。
【0028】
接続部28,30に接続する接続部材33は、締付固定用のネジ軸部と配管接続部とを軸方向に連続して設けた筒状のものである。そして、上流側の取付装置21Aでは、第1接続部28の接続部材33に第1接続パイプ7bが接続され、第2接続部30の接続部材33に連結パイプ22が接続される。また、下流側の取付装置21Bでは、第1接続部28の接続部材33に連結パイプ22が接続され、第2接続部30の接続部材33に第2接続パイプ7cが接続され、この第2接続パイプ7cが船体の外部を臨むように配管されている。なお、前記閉塞部材34は、外周部にネジ溝を形成し、閉塞端面に着脱操作用の治具挿入部を形成したものである。
【0029】
カバー35は、接続部28,30間に固定したフィルタカートリッジ10A,10Bを覆う金属製のものである。このカバー35は、平面視略U字形状をなし、側板部26,26の外面に位置する側部35aには、ベース部23のネジ締付部27に対応する略L字形状の挿通溝36が設けられている。また、側部35a,35aには、長手方向に延びる長円形状の覗き窓部37が設けられ、内部に位置するフィルタカートリッジ10A,10Bを目視できるようになっている。
【0030】
このように構成した取付装置21A,21Bは、可動式の第2連結部31を操作レバー32によって回転操作することにより、該第2連結部31を第1接続部28に向けて進退移動させることができる。具体的には、第2連結部31が進出するように操作レバー32を操作すると、第1連結部29がフィルタカートリッジ10A,10Bの入口部19に外嵌するとともに、第2連結部31がフィルタカートリッジ10A,10Bの出口部20に外嵌し、液体を流動可能に接続できる。また、第2連結部31が後退するように操作レバー32を逆向きに操作すると、各連結部29,31と出入口部19,20との接続を解除できる。よって、フィルタカートリッジ10A,10Bを交換する際の作業性を極めて向上できる。
【0031】
カラーセンサ38は、下流側に位置するフィルタカートリッジ10Bの油分吸着状態を検出する吸着油分検出手段、および、その吸着油分検出値と許容含油量に応じて予め設定した基準値とを比較する比較手段の役割をなすものである。そして、検出対象物であるフィルタカートリッジ10Bの色を検出した後、予め設定(記憶)した色(基準値)と比較し、その比較結果に基づいた信号を出力するもので、例えばオムロン株式会社製のデジタルファイバセンサ(E3X−DAC−S)が適用可能である。このカラーセンサ38は、光の三原色RGBのうち、色成分毎に光量を設定することにより、所定の「色」を読み取ること(検出)が可能なものである。
【0032】
本実施形態では、排水中の含油量が予め定めた許容値(例えば、15ppm)内に収まるように、カラーセンサ38によりフィルタカートリッジ10Bの変色を検出して制御を行っている。一方、使用するフィルタカートリッジ10A,10Bは、性能に応じてある特定の許容値に対応する変色度合いは異なる。そのため、許容値に対応するフィルタカートリッジ10A,10Bの着色状態を予め知る必要がある。これは、次のようにして行う。まず、カラーセンサ38をフィルタカートリッジ10Bの出口部20に配設した状態で、通過後の処理水の実際の含油量を濃度検出器で検出する。そして、この濃度検出器による検出値が許容値に達したときの「色」を基準値として、カラーセンサ38内のメモリに記憶している。
【0033】
また、カラーセンサ38はマイコンを内蔵しており、このマイコンにより、吸着油分検出値に対応する読取値(色)と、記憶した基準値とを比較し、その比較結果に基づいてNG信号またはOK信号を出力する構成としている。ここで、カラーセンサ38による読取値は、三原色RGBのうちいずれの成分を読み取るように設定するかにより、フィルタカートリッジ10Bの吸着が進むと、徐々に減少する場合と、徐々に増加する場合がある。例えば、吸着色と補色関係にあるB(青)成分の濃さを読み取る構成とした場合には、フィルタカートリッジ10Bの吸着が進むと、読取値は徐々に減少する。また、吸着色自体の濃さを読み取る構成とした場合には、フィルタカートリッジ10Bの吸着が進むと、読取値は徐々に増加する。そして、吸着油分検出値とは、カラーセンサ38の読取値自体ではなく、フィルタカートリッジ38の油分吸着度合いを意味するものである。即ち、カラーセンサ38により吸着色の薄さを検出するように設定した場合には、読取値が減少すると、吸着油分検出値は、増加したことを意味する。また、カラーセンサ38により吸着色の濃さを検出するように設定した場合には、読取値が増加すると、吸着油分検出値は、同様に増加したことを意味する。そして、本実施形態では具体的に、以下のように制御を行う構成としている。
【0034】
まず、フィルタカートリッジ10A,10Bは、非使用状態では白色であり、使用により吸着が進むと薄茶色に変色する。そして、使用によりフィルタカートリッジ10A,10Bが白色から薄茶色に変色するに従って、青成分は減少する。そこで、このB(青)成分の光量変化を読み取るように設定し、この青成分の読取値と、許容値に対応する予め設定した青成分の基準値とを比較する。そして、読取値が基準値以下の場合、即ち、読取値に対応する吸着油分検出値が基準値以上の場合、フィルタカートリッジ10A,10Bが許容値以下まで吸着できない状態を意味するNG信号を出力する。また、読取値が基準値より高い場合、即ち、読取値に対応する吸着油分検出値が基準値未満の場合、フィルタカートリッジ10A,10Bが許容値以下まで吸着できる状態を意味するOK信号を出力する構成としている。
【0035】
さらに、本実施形態では、一対のフィルタカートリッジ10A,10Bのうち、カラーセンサ38を下流側のフィルタカートリッジ10Bを検出(監視)するように、取付装置21Bに配設している。しかも、その取付位置は、カバー35の覗き窓部37を通して、フィルタカートリッジ10Bの入口部19の側を検出するように配設している。即ち、フィルタカートリッジ10Bの出口部20において、許容値境界の変色状態を記憶する一方、実際の設置位置は、フィルタカートリッジ10Bの入口部19の側としている。これにより、カラーセンサ38によって、入口部19に位置する油吸着材16が油分を許容値以下まで吸着できない状態を検出したときに、カラーセンサ38の下流側に位置する油吸着材16で、確実に許容値を下回るように油分を吸着できるように構成している。因みに、下流側のフィルタカートリッジ10Bの入口部19に位置する油吸着材16の油分吸着能力が低下した状態では、その上流側に位置するフィルタカートリッジ10Aは、全ての油吸着材16の油分吸着能力が低下した状態を意味する。
【0036】
制御装置39は、電源に接続される電源入力部40と、ビルジポンプ6に接続されるポンプ信号入力部41と、カラーセンサ38に接続されるフィルタ信号入力部42とを備え、ビルジポンプ6の流量検出器およびカラーセンサ38からの入力信号に従って、ビルジポンプ6の動作を制御するものである。この制御装置39は、基板に電子部品を実装した電気回路方式と、マイコン方式のいずれでも適用可能である。具体的には、図1に示すように、制御装置39は、表面に操作パネル部43を備えている。この操作パネル部43は、電力を入力してビルジポンプ6の動作およびカラーセンサ38の検出を可能な状態とする電源スイッチ44、および、電源がオン(通電)状態であることを示す通電表示部45を備えている。電源スイッチ44の横には、ビルジポンプ6の動作を停止させるためのポンプ停止スイッチ46と、ビルジポンプ6の動作を開始させるためのポンプ始動スイッチ47と、ブザー警報を停止するためのブザー停止スイッチ48とが、順番に設けられている。また、通電表示部45の横には、ポンプの動作状態を示すポンプ運転表示部49と、フィルタカートリッジ10Aの吸着性能が低下したことを示すビルジ警報表示部50とが順番に設けられている。そして、ビルジ警報表示部50の横には、圧電ブザーによる警報を出力する出力部51が設けられている。
【0037】
具体的には、本実施形態の制御装置39は、電源スイッチ44をオンした状態で、ポンプ始動スイッチ47が操作されるとビルジポンプ6を動作させて排水処理を実行する。この排水処理は、ポンプ停止スイッチ46が操作されると停止する。また、ビルジポンプ6から流量異常を意味する信号が入力されると終了する。さらに、カラーセンサ38から油分吸着能力の低下状態を意味するNG信号が入力されると終了する(排水制限機能)。そして、流量異常およびフィルタ異常により排水処理を終了した場合には、その状況を表示部49,50により表示する表示処理を実行する。また、フィルタ異常により排水処理を終了した場合には、更に圧電ブザーにより警報音を出力する警報処理を実行する。即ち、本実施形態では、フィルタ異常を検出すると、表示処理と警報処理とからなる報知処理を実行する。
【0038】
次に、前記油水分離装置の全体動作について具体的に説明する。
【0039】
この油水分離装置は、電源スイッチ44がオン状態になると、図4に示すように、まず、ステップS1で、通電表示部45を点灯させた後、ステップS2で、ポンプ始動スイッチ47がオンされるまで待機する。
【0040】
そして、ポンプ始動スイッチ47がオンされると、ステップS3で、ビルジポンプ6の流量検出器からの異常信号Spおよびカラーセンサ38からの異常(NG)信号Ssのうち、いずれか一方でも入力されている場合にはステップS2に戻り、ビルジポンプ6の停止状態を維持し、いずれも入力されていない場合にはステップS4で、ビルジポンプ6を動作させる。ついで、ステップS5で、ポンプ運転表示部49を点灯させる。
【0041】
その後、ステップS6で、ビルジポンプ6の流量検出器が流量(吐出量)を検出する。そして、ステップS7で、流量に異常があるか否かを判断し、流量に異常がある場合にはステップS8で、ポンプ異常処理を実行してステップS2に戻り、流量が正常である場合にはステップS9に進む。
【0042】
ステップS9では、カラーセンサ38がフィルタカートリッジ10Bの油分吸着状態を検出する。そして、ステップS10で、フィルタカートリッジ10Bに異常があるか否か、即ち、吸着油分検出値に対応する読取値が基準値以下であるか否かを判断し、異常と判断した場合(読取値≦基準値(吸着油分検出値≧基準値))にはステップS11で、フィルタ異常処理を実行してステップS2に戻り、正常であると判断した場合(読取値>基準値(吸着油分検出値<基準値))にはステップS12に進む。
【0043】
ステップS12では、ポンプ停止スイッチ46が操作された場合にはステップS13で、ビルジポンプ6を停止させてステップS2に戻り、ポンプ停止スイッチ46が操作されていない場合にはステップS6に戻る。
【0044】
なお、ステップS6,7のビルジポンプ6の流量検出、ステップS9,10のカラーセンサ38によるフィルタカートリッジ10Bの吸着状態検出、および、ステップS13のポンプ停止スイッチ46の操作検出は、実際にはそれぞれ独立して並行処理される。
【0045】
ステップS8のポンプ異常処理では、図5(A)に示すように、まず、ステップS8−1で、ビルジポンプ6の流量検出器が流量異常信号Spを制御装置39に対して出力する。これにより、制御装置39は、ステップS8−2で、ビルジポンプ6の動作を停止させた後、ステップS8−3で、ポンプ運転表示部49を消灯させてリターンする。
【0046】
また、ステップS11のフィルタ異常処理では、図5(B)に示すように、まず、ステップS11−1で、カラーセンサ38がフィルタ異常(NG)信号Ssを制御装置39に対して出力する。これにより、制御装置39は、ステップS11−2で、ビルジポンプ6の動作を停止させた後、ステップS11−3で、ポンプ運転表示部49を消灯させるとともに、ビルジ警報表示部50を点灯させる。また、ステップS11−4で、ブザー警告音を出力部51から出力させ、ステップS11−5で、ブザー停止スイッチ48が操作されるまで待機する。そして、ブザー停止スイッチ48が操作されると、ステップS11−6で、ブザー警報の出力を停止してリターンする。
【0047】
このようにしてポンプ異常処理またはフィルタ異常処理を実行してステップS2に戻った場合には、ポンプ始動スイッチ47が操作されても、流量異常信号Spまたはフィルタ異常信号Ssが信号入力部41,42に入力されているため、ビルジポンプ6は動作されない。また、この状態で、電源スイッチ44をオフ操作すると、ビルジポンプ6およびカラーセンサ38に対する駆動電力も遮断されるため、流量異常信号Spおよびフィルタ異常信号Ssの出力も停止(クリア)される。その結果、その後に再び電源スイッチ44がオン操作され、かつ、ポンプ始動スイッチ47がオン操作されると、ビルジポンプ6の流量検出器およびカラーセンサ38が異常を検出するまでの極めて短い時間だけ、ビルジポンプ6が動作することになるが、その作動時間は、汚濁水を海洋に排水できない程度のものである。
【0048】
このように、本発明の油水分離装置および排水制御方法では、フィルタカートリッジ10Bの吸着能力が低下することにより、排水する処理水の含油量が許容値を越える状態を、基準値として設定している。そして、吸着油分検出値(読取値)と基準値との検出結果が、フィルタカートリッジ10Bの吸着能力が低下した状態を意味する場合、制御装置39によりビルジポンプ6を自動的に停止するため、海洋汚染対策に貢献できる。また、ユーザがフィルタカートリッジ10A,10Bの油分吸着状況を監視する必要がないため、利便性を向上できる。さらに、ビルジポンプ6を停止させるだけでなく、報知手段を構成するブザー警報音とビルジ警報表示部50とで、ユーザに対してフィルタカートリッジ10A,10Bの交換時期を確実に認識させることができる。よって、ビルジポンプ6が動作しない原因が、故障であるなどの誤認識を防止できる。
【0049】
しかも、2個のフィルタカートリッジ10A,10Bを直列に接続し、下流側のフィルタカートリッジ10Bにカラーセンサ38を配設しているため、ビルジポンプ6を動作不可能とした状態では、上流側のフィルタカートリッジ10Aは、油分を吸着可能な残余部分は全くない。また、下流側のフィルタカートリッジ10Bは、カラーセンサ38による検出位置より下流側に、まだ油分を吸着可能な残余部分が存在する。そのため、カラーセンサ38に多少の検出誤差が生じても、フィルタカートリッジ10Bにおけるカラーセンサ38の下流側の油吸着材16により、出口部20から流出した処理水の含油量を確実に許容値以下に抑えることができる。また、フィルタカートリッジ10A,10Bの交換時には、取付装置21Bに装着した下流側のフィルタカートリッジ10Bを上流側の取付装置21Aに装着し、下流側の取付装置21Bに新たなフィルタカートリッジ10を取り付けることにより、フィルタカートリッジ10の吸着能力を無駄なく最後まで使用できる。
【0050】
また、吸着油分検出手段として変色を検出するカラーセンサ38を使用しているため、排水(処理水)の含油量を直接検出する油分濃度検出器を使用する場合と比較して、大幅にコストダウンが可能であり、個人が使用するフィッシングボートやプレジャーボートなどの小型船舶でも実現可能である。また、カラーセンサ38は、液体流量(流速)には影響されないため、確実にフィルタカートリッジ10Bの油分吸着状況を監視できる。
【0051】
図6は第2実施形態の油水分離装置を示す。この第2実施形態では、上流側の取付装置21Aと下流側の取付装置21Bとを連結する連結パイプ22に、上流側のフィルタカートリッジ10Aの油分吸着能力を判断するための小型の判断用フィルタ52を介設し、該判断用フィルタ52を監視するようにカラーセンサ38を配設する構成とした点で、第1実施形態と相違している。このように構成した第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0052】
なお、本発明の油水分離装置は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、前記実施形態では、2個のフィルタカートリッジ10A,10Bを直列に接続したが、図7に示すように、1個のフィルタカートリッジ10だけで構成してもよい。この場合、カラーセンサ38の配設位置は、フィルタカートリッジ10の出口部20より上流側に位置させ、所定の残余部分を下流側に残すようにすることが好ましい。このようにすれば、カラーセンサ38に多少の検出誤差が生じても、フィルタカートリッジ10の出口部20から流出した処理水の含油量は、確実に許容値以下に抑えることができる。そして、海洋汚染対策という第1の目的は確実に達成できる。
【0054】
また、前記実施形態では、フィルタカートリッジ10Bから流出した処理水の含油量の実測値によりカラーセンサ38で検出する色(基準値)を設定し、カラーセンサ38の取付位置を特に限定しない構成とした。しかし、検出可能な「色」が予め設定されているカラーセンサ38を使用する場合には、次のようにして取付位置を設定する。まず、フィルタカートリッジ10Bを通過した後の処理水の実際の含油量を濃度検出器で検出する。そして、その検出値が許容値限界に達したときの状態で、カラーセンサ38の読取値(吸着油分検出値)が基準値と一致するフィルタカートリッジ10B中の位置を特定する。そして、その箇所から所定の残余部分を形成するように上流側に配設する。
【0055】
また、前記実施形態では、カラーセンサ38による読取値が基準値以下になると、即ち、吸着油分検出値が予め設定した基準値以上になると、ビルジポンプ6を停止する構成としたが、吸着油分検出値が基準値と一致した場合のみ、ビルジポンプ6を停止する構成としてもよい。また、吸着油分検出値が基準値を越えると、ビルジポンプ6を停止する構成としてもよい。
【0056】
さらに、前記実施形態では、カラーセンサ38により、フィルタカートリッジ10A,10Bの青成分を検出するようにしたが、汚れの濃さ(茶色)を検出する設定する構成としてもよい。この場合、カラーセンサ38による読取値は、フィルタカートリッジ10A,10Bの使用により吸着が進むに従って徐々に増加する。勿論、カラーセンサ38により読み取る成分(色)は、フィルタカートリッジ10A,10Bの性能に応じて変色が異なるため、フィルタカートリッジ10A,10Bの種類毎に変更(設定)することが好ましい。
【0057】
また、前記実施形態では、フィルタカートリッジ10,10A,10Bの油分の吸着状態を検出する吸着油分検出手段として、変色を検出するカラーセンサ38を用いたが、これに限定されるものではない。即ち、フィルタカートリッジ10,10A,10Bの油分の吸着が進むと、変色により光りの透過、散乱、反射等が変化する。そのため、発光手段と受光手段とを配設し、透過光、散乱光、反射光などを測定することにより、吸着状態を判断する構成としてもよい。
【0058】
さらに、前記実施形態では、2個のフィルタカートリッジ10A,10Bを直列に接続したが、3個以上のフィルタカートリッジを直列に接続してもよい。この場合、吸着油分検出手段は、ビルジポンプ6の側から2本目のフィルタカートリッジに配設してもよく、3本目のフィルタカートリッジに配設してもよい。即ち、最も上流側に位置するフィルタカートリッジを除く下流側のフィルタカートリッジに配設すればよい。また、4個以上のフィルタカートリッジを用いる場合には、並列に接続した上流側フィルタカートリッジ群と、個々のフィルタカートリッジに直列に接続した下流側フィルタカートリッジ群とで構成してもよい。
【0059】
そして、前記実施形態では、比較手段であるマイコンをカラーセンサ38に搭載したが、制御装置39に制御手段としてマイコンを実装する場合には、該制御装置39のマイコンを比較手段として兼用する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態の油水分離装置を示す概略図である。
【図2】取付装置およびフィルタカートリッジの構成を示す断面図である。
【図3】図2の取付装置の分解斜視図である。
【図4】油水分離装置の制御を示すフローチャートである。
【図5】(A)は図4のポンプ異常処理を示すフローチャート、(B)は図4のフィルタ異常処理を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態の油水分離装置を示す概略図である。
【図7】油水分離装置の変形例を示す概略図である。
【図8】フィルタカートリッジを用いた船舶の油水分離装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0061】
1…エンジンルーム
2…エンジン
3…プロペラシャフト
4…プロペラ
5…水溜部
6…ビルジポンプ
7a,7b,7c…接続パイプ
10,10A,10B…フィルタカートリッジ
21A,21B…取付装置
22…連結パイプ
38…カラーセンサ(吸着油分検出手段)
39…制御装置
43…操作パネル部
50…ビルジ警報表示部(報知手段)
51…出力部(報知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に取り付けたビルジポンプと、前記船体に交換可能に取り付けたフィルタカートリッジとを備え、ビルジポンプにより船体内の汚濁水を吸引し、フィルタカートリッジを通過させる間に汚濁水の含油量を所定の許容値以下にして船体外へと排水する油水分離装置において、
前記フィルタカートリッジの油分の吸着状態を検出する吸着油分検出手段を配設するとともに、
前記吸着油分検出手段による吸着油分検出値と、所定の許容含油量に対応して予め設定した基準値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果が一致、または、吸着油分検出値が基準値を超えると前記ビルジポンプの動作を停止させる制御手段と、
を備えることを特徴とする油水分離装置。
【請求項2】
前記フィルタカートリッジを2個以上直列に接続し、前記ビルジポンプによる排水方向の最も上流側を除く下流側のフィルタカートリッジの入口側に、前記吸着油分検出手段を配設したことを特徴とする請求項1に記載の油水分離装置。
【請求項3】
前記吸着油分検出手段は、前記フィルタカートリッジが油分を吸着することによる変色を検出するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油水分離装置。
【請求項4】
前記制御手段は、ビルジポンプの動作を停止すると、その状態を報知手段により報知するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の油水分離装置。
【請求項5】
前記ビルジポンプの側に連通する接続パイプに接続されるとともに前記フィルタカートリッジの入口部と着脱可能に接続する第1接続部と、前記船体外に連通する接続パイプに接続されるとともに前記フィルタカートリッジの出口部と着脱可能に接続する第2接続部と、を備えた取付装置を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の油水分離装置。
【請求項6】
船体外に排水する汚濁水の含油量を所定の許容値以下に制限する排水制限方法であって、
船体内の汚濁水を排水するビルジポンプの排水側に2個以上のフィルタカートリッジを直列に接続し、ビルジポンプによる排水方向の最も上流側を除く下流側のフィルタカートリッジの油分の吸着状態を吸着油分検出手段によって監視し、
吸着油分検出手段による吸着油分検出値と、所定の許容含油量に応じて予め設定した基準値とを比較し、その比較結果が一致、または、吸着油分検出値が基準値を超えるとビルジポンプの動作を停止させることを特徴とする排水制限方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−297653(P2009−297653A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155109(P2008−155109)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(591125566)ユニカス工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】