説明

油汚れ用洗浄剤組成物

【課題】本発明の目的は、優れた防汚効果と頑固な油汚れに対する高い洗浄効果を持ち、高pHタイプでありながら長期保存安定性が良好な洗浄剤組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明の油汚れ用洗浄剤組成物は、(A)成分としてN,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩モノマー由来のユニットを30〜100モル%含有する(共)重合体;(B)成分としてアルカリ剤;(C)成分として一般式(1)
【化1】


(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、nは、1〜6の数を表す。)
で表される水溶性有機溶剤;及び水を含有する組成物であって、組成物中に(A)成分が0.01〜10質量%、(C)成分が0.1〜15質量%、且つ組成物のpHが11以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頑固な油汚れに対する洗浄性及び長期保存安定性が良好で、且つ防汚効果を有する洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭における台所の換気扇やガスレンジ、風呂釜、トイレ、食器類、あるいは車両、建築物等は、金属、プラスチック、ガラス、陶磁器、コンクリート等の硬質素材によってできている。これらの硬質表面には、風雨、食物類、排出物、油類、排気ガス等によって様々な汚れが付着する。こうした汚れを除去するために様々な洗浄剤が使用されているが、洗浄後に汚れの再付着を防止(防汚効果)するため、洗浄剤にカチオン系のポリマーを配合した洗浄剤が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(a)非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる一種以上の界面活性剤、並びに(b)4級アンモニウム基又は3級アミノ基を有するモノマー単位を含む重合体を、(a)/(b)=1/10〜50/1の重量比で含有する硬質表面用洗浄剤組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、硬質表面に親水性を付与するために水溶性又は水分散性共重合体を使用する方法において、重合単位の形態で、(a)所定の少なくとも1種の単量体化合物、(b)(a)と共重合可能であり且つ適用媒体中においてイオン化することができる酸性の機能を有する少なくとも1種の親水性単量体、(c)エチレン性不飽和を含有し、中性電荷を有し、1個又はそれ以上の親水性基を有し、且つ(a)及び(b)と共重合可能な、随意成分としての少なくとも1種の親水性単量体化合物、を含み、しかも(a)/(b)モル比が60/40〜5/95であることからなる水溶性又は水分散性共重合体を使用する方法が開示されている。
【0005】
更に、特許文献3には、気圧0.1MPaでの沸点が150℃以上であり、かつ気圧0.1MPaでの引火点が40℃以上である液状の石油系炭化水素7〜50質量%、微粒子状金属酸化物3〜30質量%、アニオン界面活性剤0.1〜3質量%、非イオン界面活性剤0.5〜10質量%、両性アクリル系ポリマー0.1〜4質量%、及び水30〜70質量%を含有することを特徴とする樹脂表面用洗浄剤が開示されている。
【0006】
こうしたカチオン系のポリマーによる汚れの再付着防止機能を発揮させるには、組成物中に一定量以上の配合が必要であるが、ポリマーの配合量が多すぎると洗浄剤の製品安定性が悪くなって凝集や沈殿を生じてしまい、その結果、洗浄力が劣ってしまう場合がある。一方、洗浄剤の製品安定性を高めるために、あるいは洗浄力を維持するためにポリマーの配合量を一定量以下に減らすと、ポリマーによって得られる防汚効果が十分に発揮されないという問題があり、様々な配合が検討されてきた。
【0007】
本発明者等は、防汚効果の高いカチオンポリマーを配合し、且つ油汚れに対して良好な洗浄力を持ち、製品安定性の良好な洗浄剤を既に提案している。例えば、特願2010−91342号において、(A)酸性基及び/又はアニオン性基と、カチオン性基及び/又はアミノ基とを含有する両性ポリマー、(B)カルボン酸型両性界面活性剤、(C)ノニオン界面活性剤、(D)アルカリ剤及び水を含有し、(A)/(B)=1/0.2〜1/100(質量比)の割合であることを特徴とする硬質表面用洗浄剤組成物を提案している。この硬質表面用洗浄剤組成物は防汚効果に優れ、通常の油汚れに対して優れた洗浄力を有するものの、非常に頑固な油汚れに対して洗浄力が足りない場合もあり、市場からは頑固な油汚れに対する更なる洗浄力の向上を求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−146395号公報
【特許文献2】特表2003−505535号公報
【特許文献3】特開2008−169361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
油汚れに対する洗浄として、最も効果的な方法の一つとして製品のpHを上げることが知られている。しかしながら、pHが高くなると、配合直後に分離や白濁してしまう場合や、洗浄剤組成物内に配合した界面活性剤やカチオン系のポリマー等が長期間の保存によって分離してしまう場合がある。市場に洗浄剤を供給する上で、その形態が長期間安定であることは必須のことである。
【0010】
従って、本発明が解決しようとする課題は、優れた防汚効果と頑固な油汚れに対する高い洗浄効果を持ち、高pHタイプでありながら長期保存安定性が良好な洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明者等は鋭意検討し、高いpHでありながら、長期保存安定性に優れるカチオン系のポリマーを配合した洗浄剤組成物を見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、(A)成分としてN,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩モノマー由来のユニットを30〜100モル%含有する(共)重合体;
(B)成分としてアルカリ剤;
(C)成分として一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、nは、1〜6の数を表す。)
で表される水溶性有機溶剤;及び水を含有する組成物であって、組成物中に(A)成分が0.01〜10質量%、(C)成分が0.1〜15質量%、且つ組成物のpHが11以上であることを特徴とする油汚れ用洗浄剤組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果は、優れた防汚効果と頑固な油汚れに対する高い洗浄効果を持ち、高pHタイプでありながら長期保存安定性が良好な洗浄剤組成物を提供したことにある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の油汚れ用洗浄剤組成物の(A)成分は、N,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩モノマー由来のユニットを30〜100モル%含有する(共)重合体である。具体的には、下記の一般式(2)で表されるカチオンモノマーを重合して得られるホモポリマー、あるいは当該カチオンモノマーと他のモノマーを共重合して得られる共重合体であって、当該コポリマー中の当該カチオンモノマーが30モル%以上の共重合体である:
【0014】
【化2】

(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
【0015】
一般式(2)のXはハロゲン原子を表し、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。これらの中でも原料事情がよいことから、塩素原子及び臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0016】
一方、共重合体に必要な上記の一般式(2)で表されるカチオンモノマー以外のモノマーは、水溶性のモノマーであれば種類を選ばず、例えば、ジメチルモノアリルアミン、アクリルアミド、アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0017】
これらの(共)重合体の中でも、得られる洗浄剤の防汚効果が高いことから、N,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩モノマー由来のユニットを50モル%以上含有することが好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましく、100モル%(ホモポリマー)であることが最も好ましい。
【0018】
本発明の油汚れ用洗浄剤組成物の(B)成分はアルカリ剤である。アルカリ剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属化合物;メタケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム等のケイ酸塩;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアンモニウム化合物;ナトリウムメチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属メチラートが挙げられる。これらの中でも、少量の添加量でpHを11以上にすることができることから水酸化アルカリ金属化合物、オルソケイ酸ナトリウム及びアルカリ金属メチラートが好ましく、水酸化アルカリ金属化合物がより好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが更に好ましい。
【0019】
本発明の油汚れ用洗浄剤組成物の(C)成分は、下記の一般式(1)で表される水溶性有機溶剤である:
【化3】

(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、nは、1〜6の数を表す。)
【0020】
は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。こうしたアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基等が挙げられる。これらのアルキル基の中でも、洗浄力を向上させる効果が高く、更に長期保存安定性を良好にする効果も高いことから、炭素数2〜4のアルキル基が好ましく、炭素数3又は4のアルキル基がより好ましく、炭素数4のアルキル基が更に好ましい。なお、アルキル基の炭素数が5以上になると配合した洗浄剤の洗浄力を上げる効果が劣ってしまうことがあるために好ましくない。
【0021】
は、炭素数2又は3のアルキレン基を表す。こうしたアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基等が挙げられる。これらの中でも、洗浄力を向上させる効果が高いことからエチレン基であることが好ましい。
【0022】
nは、1〜6の数を表すが、洗浄力を向上させる効果が高く、更に長期保存安定性を良好にする効果も高いことから、nは1〜4の数が好ましく、1〜3がより好ましい。nの値が6を超えると長期保存安定性が劣ってしまう場合や洗浄力を向上させる効果がなくなる場合があるために好ましくない。
【0023】
本発明の油汚れ用洗浄剤組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分及び水を含有する水溶液である。(A)成分は本発明の洗浄剤組成物全量に対して0.01〜10質量%含有するものであるが、長期保存安定性と防汚効果のバランスを考慮すると、0.01〜5質量%が好ましく、0.02〜3質量%がより好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。10質量%を超えると長期保存安定性が悪くなり、0.01質量%未満になると良好な防汚効果が得られないことがあるために好ましくない。
【0024】
また、(C)成分は本発明の洗浄剤組成物全量に対して0.1〜15質量成分含有するものであるが、長期保存安定性、洗浄性及び防汚効果のバランスを考慮すると、0.3〜10質量%が好ましく、1〜7質量%がより好ましい。0.1質量%未満になると良好な長期保存安定性が得られず、効果的な洗浄力も得られない。また15質量%を超えても添加量に見合った効果が得られないために好ましくない。
【0025】
なお、(B)成分の含有量は特に規定されるものではなく、洗浄剤組成物のpHが11以上になる量を含有させればよく、好ましくはpH11.5以上、より好ましくはpH12以上、更に好ましくは13以上になる量である。pHが11未満になると長期保存安定性は良好になるが、頑固な油汚れを洗浄することができないために好ましくない。pHは、本発明の油汚れ用洗浄剤組成物を直接測定すればよく、具体的にはpHメーターを本発明の洗浄剤組成物に直接入れて測定すればよい。
【0026】
また、本発明の油汚れ用洗浄剤組成物は、更に洗浄力を向上させるために(D)成分としてノニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を含有させることが好ましい。なお、(C)成分はノニオン界面活性剤と類似の構造を持つが、本発明においては、(C)成分をノニオン界面活性剤に分類しないものとする。
【0027】
(D)成分としてのノニオン界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態は、ランダム状、ブロック状の何れでもよい。)、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸−N−メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、N−長鎖アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも洗浄力を向上させる効果が良好なことから、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリアルキレンオキサイド付加物が好ましく、下記の一般式(3)で表されるノニオン界面活性剤がより好ましい:
【0028】
−(OC−OH (3)
(式中、Rは、炭素数10〜18の脂肪族炭化水素基を表し、nは、5〜20の数を表す。)
【0029】
一般式(3)のRは、炭素数10〜18の脂肪族炭化水素基を表し、こうした基としては、例えば、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ペプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;デセニル基、ぺンタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基が挙げられる。これらの中でも洗浄力が大きいことから炭素数12〜16のアルキル基が好ましい。また、nは、5〜20の数であるが、6〜18の数が好ましく、8〜15の数がより好ましい。nの値が5未満または20を超えると頑固な油汚れに対する洗浄効果が期待できないために好ましくない。
【0030】
(D)成分としての両性界面活性剤は、例えば、ラウリルジメチルベタイン、ラウリルジエチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、オレイルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等のアルキルベタイン型両性界面活性剤;N−ヤシ脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(2−ヤシアルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン)、N−ヤシ脂肪酸アシル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N−牛脂脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N−牛脂脂肪酸アシル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリウムベタイン型両性界面活性剤;ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ステアリン酸アミドプロピルベタイン、オレイン酸アミドプロピルベタイン等のアミドプロピルベタイン型両性界面活性剤;ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、オレイルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、オレイルアミノジプロピオン酸ナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤が挙げられる。これらの中でも洗浄力を向上させる効果が良好なことから、ベタイン型両性界面活性剤及びアミノ酸型両性界面活性剤が好ましい。
【0031】
(D)成分のノニオン界面活性剤と両性界面活性剤は、それぞれ単独あるいは併用することができる。配合量は特に規定されないが、本発明の油汚れ用洗浄剤組成物全量に対して(D)成分全量を0.1〜8質量%配合することが好ましく、0.2〜6質量%が更に好ましい。0.1質量%未満では洗浄力を向上させる効果が期待できず、8質量%を超えると配合量に見合った効果が得られない場合や、長期保存安定性が悪くなる場合があるために好ましくない。
【0032】
本発明の油汚れ用洗浄剤組成物は、更に防汚効果を向上させるために(E)成分としてカチオン界面活性剤を含有させることが好ましい。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキル(アルケニル)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(アルケニル)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、エーテル基或いはエステル基或いはアミド基を含有するモノ或いはジアルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、アルキル(アルケニル)ピリジニウム塩、アルキル(アルケニル)ジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)イソキノリニウム塩、ジアルキル(アルケニル)モルホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキル(アルケニル)アミン、アルキル(アルケニル)アミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。なお(A)成分はカチオン基を有するポリマーであるが、本願において(A)成分はカチオン界面活性剤には分類しない。
【0033】
これらのカチオン界面活性剤を配合すると防汚効果が向上する場合がある。その配合量は特に指定されないが、本発明の油汚れ用洗浄剤組成物全量に対して0.01〜2質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましく、0.1〜0.5質量%が更に好ましい。0.01質量%未満になると防汚効果が期待できない場合があり、2質量%超えると添加量に見合った効果が得られない場合や長期保存安定性が悪くなる場合があるために好ましくない。
【0034】
本発明の油汚れ用洗浄剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、キレート剤、(C)成分以外の有機溶剤、ビルダー、防腐剤、色素、香料等の他の成分を配合することができる。中でも高硬度の水に対応させるためにも、硬水においても良好な洗浄力を維持させることができるキレート剤を添加することが好ましい。
【0035】
キレート剤としては、例えば、オルトリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等のリン酸塩;ニトリロ三酢酸塩(NTA)、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミノ五酢酸塩(DTPA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸塩(TTHA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸塩(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、メチルグリシン二酢酸塩(MGDA)、グルタミン酸二酢酸塩(GLDA)、アスパラギン酸二酢酸塩(ASDA)、β-アラニン二酢酸塩(ADA)、セリン二酢酸(SDA)等のアミノポリ酢酸塩;グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸や、グルコール酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸;ポリアクリル酸又はその塩、ポリフマル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸又はその塩、ポリアセタールアクリル酸又はその塩等の高分子が挙げられる。これらのキレート剤は、本発明の油汚れ用洗浄剤組成物全量に対して0.1〜5質量%配合することが好ましい。
【0036】
本発明の油汚れ用洗浄剤組成物の使用方法は限定されず、そのまま原液を油汚れに塗布あるいは噴霧して擦り洗い等する方法や、ウエス等の布類に原液を染み込ませて油汚れを洗浄する方法、あるいは原液を水で希釈した希釈液を使用して洗浄する方法等が挙げられる。これらの中でも洗浄性が良好なことから原液を油汚れに塗布あるいは噴霧して洗浄する方法が好ましい。なお水で希釈する場合は、原液を2〜100倍量に希釈すればよい。洗浄対象は硬質表面であれば種類を選ばず、例えば、アルミ、銅、鉄あるいはこれら金属の合金等の金属表面、プラスチック等の硬質樹脂表面、タイル等の陶器表面が挙げられる。具体的な洗浄場所としては、台所、浴室、洗面台周り等が挙げられるが、一般的に頑固な油汚れは台所で発生する場合が多く、レンジ周り、換気扇、鍋やフライパン等に付着した油汚れの除去に使用することが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。
洗浄試験、防汚試験、長期保存安定性試験の3種類の試験方法およびその試験結果を下記に記す。
(洗浄試験)
ステンレス板(10cm×5cm)の片面に大豆油が0.1±0.01gになるように均一に塗布し、200℃のオーブン内で30分焼き付けを行った。このステンレス板を、表1〜表3に記載の洗浄剤サンプルの入ったビーカー内に室温で10分間完全に浸漬した。浸漬後のテストピースをビーカーから取り出し、流水で軽く洗浄した後に乾燥させ、洗浄前後の重量変化より下記の式にて洗浄率を算出した:
洗浄率(%)={((大豆油を塗布して焼付けた後のステンレス板)−(洗浄後のステンレス板))/塗布した大豆油の実際の質量}×100
【0038】
(防汚試験)
ステンレス板のテストピース(15cm×15cm)を、表1に記載の洗浄剤サンプルを十分に染み込ませたスポンジで、テストピースの片面全体を5往復擦り洗いし、流水で30秒間すすいだ後に乾燥させた。乾燥後のテストピースの洗浄面に、大豆油2mlをへらで均一に塗布し、その後流水で30秒間すすぎ、乾燥させた。この「大豆油塗布→すすぎ→乾燥」の工程を合計で2回行い、終了後のテストピースの表面状態を下記の指標に従って評価した:
A:汚れの付着が見当たらない
B:汚れがテストピースの面積の1割未満だが、汚れは目視で確認できる
C:汚れがテストピースの面積の1割〜5割に付着している
D:汚れがテストピースの面積の5割より多く付着している
【0039】
(長期保存安定性試験)
表1および表2に示した各組成物を密閉したガラス容器に入れ、40℃の恒温槽内に6ヶ月放置し、6ヶ月後の状態を下記の指標に従って目視で安定性を評価した:
A:安定性試験前と同じ状態(均一状態)
B:溶液が不均一(白濁を含む)
C:溶液が完全に分離
【0040】
<試験用サンプル>
(A)成分
ポリマー1:塩化ジアリルジメチルアンモニウムのホモポリマー(重量平均分子量40 000)
ポリマー2:塩化ジアリルジメチルアンモニウム/マレイン酸(60/40(モル比) )の共重合体(重量平均分子量1700000)
ポリマー3:ジアリルモノメチルアミン塩酸塩のホモポリマー(重量平均分子量360 00)
【0041】
(C)成分
水溶性有機溶剤1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
水溶性有機溶剤2:ジプロピレングリコールモノブチルエーテル
水溶性有機溶剤3:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
水溶性有機溶剤4:ポリエチレングリコール(8)モノブチルエーテル
水溶性有機溶剤5:ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル
水溶性有機溶剤6:ジブチレングリコールモノプロピルエーテル
水溶性有機溶剤7:ジエチレングリコール
水溶性有機溶剤8:ブタノール
【0042】
(D)成分
ノニオン界面活性剤1:ポリエチレングリコール(8)モノドデシルエーテル
両性界面活性剤1:ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム
【0043】
(F)成分
カチオン界面活性剤1:塩化ベンザルコニウム
【0044】
上記試験用サンプルにおいて、カッコ内の数字はオキシエチレン基の重合度を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の油汚れ用洗浄剤組成物は、例えば、アルミ、銅、鉄あるいはこれら金属の合金等の金属表面、プラスチック等の硬質樹脂表面、タイル等の陶器表面の洗浄に好適に使用することができ、具体的には、台所、浴室、洗面台周り等の洗浄に使用することができ、特に、頑固な油汚れが発生する台所のレンジ周り、換気扇、鍋やフライパン等に付着した油汚れの除去に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてN,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩モノマー由来のユニットを30〜100モル%含有する(共)重合体;
(B)成分としてアルカリ剤;
(C)成分として下記の一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、nは、1〜6の数を表す。)
で表される水溶性有機溶剤;及び水を含有する組成物であって、組成物中に(A)成分が0.01〜10質量%、(C)成分が0.1〜15質量%、且つ組成物のpHが11以上であることを特徴とする油汚れ用洗浄剤組成物。
【請求項2】
(A)成分がN,N−ジアリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩のホモポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の油汚れ用洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に(D)成分として、ノニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の油汚れ用洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に(E)成分として、カチオン界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の油汚れ用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2012−193287(P2012−193287A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58772(P2011−58772)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【出願人】(593085808)ADEKAクリーンエイド株式会社 (25)
【Fターム(参考)】