説明

油汚染床面用洗浄剤組成物

【課題】 床洗浄処理において、洗浄性が良好で、またそれ自体に環境汚染物質を含まず、洗浄後、中でも床洗浄後の排水処理において、簡易な作業だけで、油分などの汚染物を分離することができる洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】 (A)脂肪酸石鹸0.1〜20質量%及び(B)テトラデシルジメチルアミンオキシド0.5〜10質量%を含有し、
水による200倍希釈液1800mlにスピンドル油200mlを加え、50回振とうし、15時間経過後に分層して得たpH7.5〜8.5の下層について行った排水処理性評価において、n‐ヘキサン抽出物含有量5mg/L未満、化学的酸素要求量(COD)40mg/L未満を示すことを特徴とする油汚染床面用洗浄剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物、中でも床洗浄用のもの、さらには工場、展示場、建物、車両、航空機又は船舶用のものとして好適な、油性汚染の洗浄後の排水処理において簡単に油分を水と分離することができ、またそれ自体にも環境汚染物質を含まず、環境保全に資する洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、床洗浄剤としては、アルキルフェノールエトキシレートを含有させたものが良好な洗浄性のため、多用されてきたが、このような床洗浄剤を用いて油性汚濁物などの被洗浄物を洗浄した後の排水処理において、芳香族系成分に内分泌攪乱物質などの環境汚染物質であるものが存在することが判明してきたため、国の排水基準では排出量が厳しく規制されるようになり、また、このような排水を希釈しても化学的酸素要求量(COD)、n‐ヘキサン抽出物質含有量、水素イオン濃度(水素指数)などは国の排水基準を満たさないため、さらなる排水処理行程を要し、煩雑な作業が免れないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、このような事情の下、洗浄処理、中でも床洗浄処理において、洗浄性が良好で、またそれ自体に環境汚染物質を含まず、洗浄後、中でも床洗浄後の排水処理において、簡易な作業だけで、油分などの汚染物を分離することができ、化学的酸素要求量(COD)、n‐ヘキサン抽出物質含有量、水素イオン濃度(水素指数)などを低下させうる洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記した良好な特性を示す洗浄剤組成物を開発するために鋭意研究を重ねた結果、脂肪酸石鹸と特定のアミンオキシドとを活性成分とした処方のものや、このものにさらに特定の添加剤を配合した処方のものが、その目的に適合することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
(1)(A)脂肪酸石鹸0.1〜20質量%及び(B)テトラデシルジメチルアミンオキシド0.5〜10質量%を含有し、
水による200倍希釈液1800mlにスピンドル油200mlを加え、50回振とうし、15時間経過後に分層して得たpH7.5〜8.5の下層について行った排水処理性評価において、n‐ヘキサン抽出物含有量5mg/L未満、化学的酸素要求量(COD)40mg/L未満を示すことを特徴とする油汚染床面用洗浄剤組成物。
(2)前記脂肪酸石鹸がヤシ油脂肪酸石鹸である(1)記載の油汚染床面用洗浄剤組成物。
(3)さらに(C)防錆剤0.01〜0.01質量%を含有する(1)または(2)記載の油汚染床面用洗浄剤組成物。
(4)前記防錆剤がベンゾトリアゾール系、ジカルボン酸系のものである(3)記載の油汚染床面用洗浄剤組成物。
(5)さらに(D)防腐剤0.01〜1質量%を含有する(1)ないし(4)のいずれかに記載の油汚染床面用洗浄剤組成物。
(6)前記防腐剤がイソチアゾリン系、イソチアゾール系、チアゾリン系、チアゾール系のものである(5)記載の油汚染床面用洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄処理、中でも床洗浄処理、特にエポキシ又はウレタン系塗装が施された床の洗浄処理において、洗浄性が良好で、油性汚染の洗浄後の排水処理において簡単に油分を水と分離することができ、またそれ自体にも環境汚染物質を含まず、洗浄後、中でも床洗浄後の排水処理において、簡易な作業だけで、油分などの汚染物を分離することができ、処理後の排水について、化学的酸素要求量(COD)、n‐ヘキサン抽出物質含有量、水素イオン濃度(水素指数)などを低下させるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の洗浄剤組成物において(A)成分として用いられる脂肪酸石鹸については、炭素数8〜22、好ましくは10〜18、より好ましくは 10〜14のものが挙げられる。この脂肪酸石鹸に相応する脂肪酸の例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和酸や、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸などの不飽和酸や、これらの混合系であるヤシ油脂肪酸などが挙げられる。
【0008】
また、(B)成分として用いられるテトラデシルジメチルアミンオキシドはそれより低級のアルキルアミンオキシド、中でもラウリルアミンオキシドよりも高粘性であるものの、低粘度でも洗浄力を高めうるので、より少量で有効である。
【0009】
また、(C)成分として用いられる防錆剤の例としては、ベンゾトリアゾール系やジカルボン酸系のもの、その他ジシクロヘキシルアンモニウムニトラート、 p‐tert‐ブチル安息香酸などが挙げられ、中でもベンゾトリアゾールやダイアシッド1550のような脂肪族ジカルボン酸系のものが好ましい。
ジカルボ ン酸系のものの例としては、炭素数が6〜30、好ましくは8〜25のもの、例えばアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1‐,9‐ノナメチレンジカルボン酸、1‐,10‐デカメチレンジカルボン酸、1‐,11‐ウンデカメチレンジカルボン酸、1‐,12‐ドデカメチレンジカルボン酸のような脂肪族ジカルボン酸、中でも特にアゼライン酸、セバシン酸、1‐,9‐ノナメチレンジカルボン酸、1‐,10‐デカメチレンジカルボン酸であって、塩を形成する塩基又は塩基残基がナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、モルホリンなどのアミンであるものなどが挙げられ、中でも上記塩基又は塩基残基がカリウム又はアミン、特にカリウムであるものが好ましい。
【0010】
また、(D)成分として用いられる防腐剤の例としては、5‐クロロ‐2‐メチル‐4‐イソチアゾリン‐3‐オン、2‐メチル‐4‐イソチアゾリン‐3‐オ ンなどのイソチアゾリン系やイソチアゾール系のもの、2‐(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系やチアゾリン系のもの、安息香酸ナトリウムやパラオキシ安息香酸ナトリウムやパラオキシ安息香酸エステル(例えば、ブチルエステル、プロピルエステルなど)のような安息香酸系のものなどが挙げられ、中でも5‐クロロ‐2‐メチル‐4‐イソチアゾリン‐3‐オン、2‐メチル‐4‐イソチアゾリン‐3‐オンなどのイソチアゾリン系のものが好ましい。
【0011】
本発明の洗浄剤組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じ、防菌・防黴剤、希釈溶剤、安定化溶剤、ハイドロトロープ、凍結防止剤、研磨剤、紫外線吸収剤、色素、香料などを配合することができる。
防菌・防黴剤としては、例えばクロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘ キシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化リゾチーム、塩化セチルピリジニウム、石炭酸誘導体(この例にはチモール、ヘキシルレゾルシン、o‐フェニルフェノール、ビオゾールなどがある)などが挙げられる。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物には、上記組成成分の他、水を含有させるのが好ましく、エタノールやイソプロパノールなどの低級アルコールなどの水性溶媒も用いうるが、その場合には少量を水とともに用いた水系溶媒とするのがよい。
【0013】
本発明の洗浄剤組成物における上記組成成分の含有割合は、脂肪酸石鹸については0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは0.3〜7質量%の範囲で選ばれる。この割合が0.1質量%未満では洗浄効果が十分には発揮されないし、また20質量%を超えると排水処理時の化学的酸素要求量(COD)、n‐ヘキサン抽出物質含有量、水素イオン濃度(水素指数)などを十分に低下させることができなくなる。
また、テトラデシルジメチルアミンオキシドについては0.5〜10質量%、好ましくは0.7〜5質量%、より好ましくは1〜3.5質量%の範囲で選ばれる。この割合が0.5質量%未満では洗浄効果が十分には発揮されないし、また10質量%を超えると排水処理時の化学的酸素要求量(COD)、n‐ヘキサン抽出物質含有量、水素イオン濃度(水素指数)などを十分に低下させることができなくなる。
また、さらに防錆剤や防腐剤を配合した処方の場合は、防錆剤については0.01〜1質量%、好ましくは0.02〜0.5質量%の範囲で選ばれる。この割合が0.01質量%未満では防錆効果が十分には発揮されないし、また1質量%を超えると排水処理時の化学的酸素要求量(COD)を高めることになる。
また、防腐剤については0.01〜1質量%、好ましくは0.02〜0.5質量%の範囲で選ばれる。この割合が0.01質量%未満では防腐効果が十分には発揮されないし、また1質量%を超えると排水処理時の化学的酸素要求量(COD)を高めることになる。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物は、床、具体的には、工場(例えば自動車の補修工場、機械修理工場、産業廃棄物処理工場、各種製造工場など)、展示場(例えば自動車のショールーム、OA機器や家電などの展示場など)、建物(例えば住宅、オフィスビル、ホテル、図書館、美術館、博物館、公会堂、コンサートホールのような各種ホールなど)、自動車や鉄道車両などの車両、航空機、船舶などの床に施用され、特にエポキシ又はウレタン系塗装が施された床に適用するのが好ましい。床の材質としては、例えばフローリングなどの木材やコンクリート、その塗装物などが挙げられる。
【実施例】
【0015】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各例中の組成成分の割合は質量%で表す。
【0016】
実施例1〜7、比較例1〜3
表1に示す組成成分及び配合割合の床洗浄剤組成物を各試料として調製した。
【0017】
各試料について各種性能試験を以下のとおり行った。
・洗浄性: 100mlビーカーに各試料の50%水溶液すなわち各試料を水で2倍に希釈した水溶液を調製し、これを洗浄液とした。25×50mm寸法のポリプロピレン 製シートに、パラフィンワックス、鉱物油、植物油脂、青色染料を加温し、均一に溶解してなる汚染油を付着させ、均一に塗り広げてこれをテストピースとし、その色差をあらかじめミノルタ社製CR−210型色差計により測定した。
このテストピースを450rpmで回転させた洗浄液に30℃で10分間浸漬したのち、再度上記色差計により色差を測定し、以下の数式により洗浄率を求め、以下の評価基準で判定した。
洗浄率(%)=(ΔE−ΔE)×100/ΔE
(ここで、ΔEは洗浄試験前のテストピースの色差、ΔEは洗浄試験後のテストピースの色差を示す)
洗浄性
◎:良好(洗浄率90%以上)
○:やや良好(洗浄率70%以上90%未満)
△:やや不良(洗浄率50%以上70%未満)
×:不良(洗浄率50%未満)
【0018】
・油水分離性:各試料を水で200倍に希釈して試験水溶液を調製した。この試験水溶液90mlを100mlの共栓付メスシリンダーに入れ、その上からスピンドル油10mlを入れ、メスシリンダーに栓をして50回振とうし、次いで常温で1時間放置したのち、分離した水層について日本電色工業社製300A型色差・濁度 測定器により透過率を測定し、次の評価基準で判定した。
油水分離性
◎:良好(透過率90%以上)
○:やや良好(透過率70%以上90%未満)
△:やや不良(透過率50%以上70%未満)
×:不良(透過率50%未満)
【0019】
・排水処理性:各試料を水で200倍に希釈して試験水溶液を調製した。この試験水溶液1800mlを2L(リットル)の分液ロートに入れ、その上からスピンドル油200mlを入れ、分液ロートに栓をして50回振とうし、次いで15時間放置したのち、試験液の下層部を分離、ろ過し、pH、n‐ヘキサン抽出物含有量、化学的酸素要求量(COD)を測定し、n‐ヘキサン抽出物含有量及び化学的酸素要求量(COD)については次の評価基準で判定した。
n‐ヘキサン抽出物含有量
○:5mg/L未満
△:5mg/L以上20mg/L未満
×:20mg/L以上
化学的酸素要求量(COD)
○:40mg/L未満
△:40mg/L以上120mg/L未満
×:120mg/L
以上の試験結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
表中、商品名又は略号で示した各種成分は、次のとおりのものである。
アロモックスDM14D−N:ライオン社製、テトラデシルジメチルアミンオキシド
ノイゲンET−135:第一工業薬品社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル
ノイゲンEA−130T:第一工業薬品社製、ノニルフェノールエトキシレート
MEA:モノエタノールアミン
ダイアシッド1550:ジカルボン酸系防錆剤
BTZ: 城北化学社製、ベンゾトリアゾール系防錆剤
トップサイド600:パーマケム・アジア社製、チアゾリン系防腐剤
【0022】
表より、各実施例の洗浄剤は、各比較例の洗浄剤とほぼ同等の良好な洗浄性を示すとともに、各比較例のものより総じて排水処理性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪酸石鹸0.1〜20質量%及び(B)テトラデシルジメチルアミンオキシド0.5〜10質量%を含有し、
水による200倍希釈液1800mlにスピンドル油200mlを加え、50回振とうし、15時間経過後に分層して得たpH7.5〜8.5の下層について行った排水処理性評価において、n‐ヘキサン抽出物含有量5mg/L未満、化学的酸素要求量(COD)40mg/L未満を示すことを特徴とする油汚染床面用洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記脂肪酸石鹸がヤシ油脂肪酸石鹸である請求項1記載の油汚染床面用洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに(C)防錆剤0.01〜0.01質量%を含有する請求項1又は2記載の油汚染床面用洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記防錆剤がベンゾトリアゾール系、ジカルボン酸系のものである請求項3記載の油汚染床面用洗浄剤組成物。
【請求項5】
さらに(D)防腐剤0.01〜1質量%を含有する請求項1ないし4のいずれかに記載の油汚染床面用洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記防腐剤がイソチアゾリン系、イソチアゾール系、チアゾリン系、チアゾール系のものである請求項5記載の油汚染床面用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2010−31293(P2010−31293A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256342(P2009−256342)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【分割の表示】特願2002−46490(P2002−46490)の分割
【原出願日】平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】