説明

油脂被覆コラーゲン粉末及びその粉末を含有する圧縮成形体

【課題】 咀嚼する際にコラーゲンによるねちゃつきを防止できるコラーゲン粉末、咀嚼する際にコラーゲンによるねちゃつきを防止できるチュアブル錠等の圧縮成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】平均粒子径40〜300μmのコラーゲン粉末50〜95質量部を融点50〜80℃の油性成分5〜50質量部で被覆した油脂被覆コラーゲン粉末。
前記の油脂被覆コラーゲン粉末5〜90質量部、下記の賦形剤10〜95質量部から製造される圧縮成形体。
賦形剤:粒子径74〜350μmの粒子含有量が65質量%以上であり、粒子径350μmを超える粒子含有量が35質量%以下である賦形剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂被覆コラーゲン粉末及びこれを原料とした圧縮成形体に関する。更に詳しくは、コラーゲンを含有する圧縮成形体を咀嚼する際の、口腔内や歯に貼りつくことによる不快感(ねちゃつき)を防止したコラーゲン粉末及び圧縮成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは真皮、靭帯、腱、骨、軟骨などの全身のあらゆる組織を構成しているタンパク質である。ヒトでは、全タンパク質の約1/3を占め、必要不可欠な栄養成分といえる。コラーゲンは食品機能素材として美容の維持や改善等に使われ、健康食品をはじめ広く利用されている。コラーゲンの1日推奨摂取量は2000〜5000mg/日といわれている。
コラーゲンの摂取形態として、食事の他、ゼリー、キャンデー、粉末飲料、ドリンク剤、カプセル錠、タブレット錠等と様々なものが挙げられる(特許文献1〜5)。その中でもコラーゲンの1日推奨摂取量を摂取する形態として、粉末飲料やドリンク剤等が考えられる。しかし、これらの方法は液体による摂取であり摂取量が多くなり、携帯に不向きであることから簡便な摂取形態ではない。そこで、摂取時の状況や場所を選ばない形態として錠剤がある。飲込み錠やカプセル錠は1錠あたりの重量が制限されるために1日推奨摂取量を摂取しようとした場合、多数の錠剤を摂取しなければならず、手間がかかってしまう。それに対して、1錠当りのコラーゲン含有量を増やすことができるチュアブル錠は摂取粒数を減らすことができるために、より簡便な摂取形態として好ましい。
一方で、コラーゲンには粘着性があり、コラーゲン粉体もしくはコラーゲン粉体を含有する製剤を摂取する際、口腔内や歯に貼りつくことにより不快感を与え、食べづらいという問題がある。いわゆる、ねちゃつきを感じるものである。
このようなねちゃつきを防止できる製剤の製造方法として、コラーゲンを高分子で被覆する方法、例えば、水を含浸させた高分子基材にコラーゲンを混合した後、親水性溶媒を添加して均一な顆粒に調整し、これを乾燥するコラーゲン含有製剤の製造方法が知られている(特許文献6)。しかし、この方法では被覆工程が複雑となり、また、摂食の際に十分にねちゃつきを防止できるものではない。
最近では、チュアブル錠に含有したコラーゲンペプチドの平均分子量を4000以下にすることにより、ねちゃつき感を軽減するという報告があるがその効果は十分ではない(特許文献7)。
次に、チュアブル錠のような圧縮成形体を製造する際、コラーゲン粉末を賦形剤等と混合後、これをホッパーに充填し、自由落下もしくはフィーダーにより打錠臼に分注して打錠杵で圧縮成形するものであるが、打錠臼に混合粉末を分注する際にホッパー内で固まりが生じると打錠臼に混同粉末を均一に分注できず、製造されるチュアブル錠において、硬度や粒重量等においてバラツキが生じ易い。また、このような場合、咀嚼する際の食感においてざらつきを感じ易くなる。
コラーゲン粉末は軟らかく粘着性があり、賦形剤等と混合すると固まりを生じ易いので、このような問題が生じ易くなる。
【特許文献1】特開2002−238471号公報
【特許文献2】特開2001−288073号公報
【特許文献3】特開2004−254632号公報
【特許文献4】特開2005−328842号公報
【特許文献5】特開2006−204287号公報
【特許文献6】特開2006−096690号公報
【特許文献7】特開2008−118962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、チュアブル錠等の圧縮成形体の原料に使用しても、咀嚼する際にコラーゲンによるねちゃつきを防止できるコラーゲン粉末を提供することを目的とする。さらに、本発明は、コラーゲンを高含有しながら咀嚼する際にねちゃつきを防止でき、食感においてざらつきがないコラーゲン含有圧縮成形体を提供する。このコラーゲン含有圧縮成形体は品質にバラツキが少なく均質に製造できることが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記の問題点に鑑み、鋭意検討した結果、特定の粒子径のコラーゲン粉末をある融点の範囲の油脂で被覆すると、これを原料として使用し製造されたチュアブル錠において咀嚼する際にコラーゲンによるねちゃつきを大幅に防止できることを見出した。また、本発明者らは、このようにして得られた油脂被覆コラーゲンと特定の分布の粒子径の賦形剤を混合すると、食感においてざらつきのないチュアブル錠を均質な品質で製造できることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[3]である。
[1] 平均粒子径40〜300μmのコラーゲン粉末50〜95質量部を融点50〜80℃の油性成分5〜50質量部で被覆した油脂被覆コラーゲン粉末。
[2] 前記 [1]の油脂被覆コラーゲン粉末5〜90質量部、下記の賦形剤10〜95質量部から製造される圧縮成形体。
賦形剤:粒子径74〜350μmの粒子含有量が65質量%以上であり、粒子径350μmを超える粒子含有量が35質量%以下である賦形剤。
[3] コラーゲン粉末が、予め高分子を被覆したコラーゲン粉末である、前記[1]の油脂被覆コラーゲン粉末。
【発明の効果】
【0005】
本発明によると、チュアブル錠等の圧縮成形体の原料に使用しても、咀嚼する際にコラーゲンによるねちゃつきを防止できるコラーゲン粉末を提供することができる。さらに、コラーゲンを高含有量で含みながら咀嚼する際にねちゃつきを防止でき、食感においてざらつきがないコラーゲン含有圧縮成形体を提供することができる。このコラーゲン含有圧縮成形体は品質にバラツキが少なく均質に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<油脂被覆コラーゲン粉末>
本発明は、平均粒子径40〜300μmのコラーゲン粉末50〜95質量部を融点50〜80℃の油性成分5〜50質量部で被覆した油脂被覆コラーゲン粉末である。
本発明は、平均粒子径40〜300μmのコラーゲン粉末を使用する。好ましくは、70〜200μmである。40μm未満のコラーゲン粉末を使用すると、油脂粉末を被覆する場合、油性成分が付着しづらく、皮膜形成が困難になる。300μmを超えると圧縮成形体の均質化に影響を与える。
なお、コラーゲン粉末の平均粒子径はレーザー回折式による乾式測定により測定できる。
本発明に用いるコラーゲンの原料として、特に限定はされないが、牛骨、豚皮、鶏足、魚鱗、魚皮等の動物由来が挙げられる。例えば、コラーゲンの製造方法は、溶解し酵素反応後、脱臭し、噴霧乾燥する方法が挙げられる。コラーゲンの平均分子量は特に限定されないが、より好ましくは、酵素処理等により分解して低分子化された、体内への吸収がしやすくなった平均分子量5000以下のコラーゲンペプチドが挙げられる。
コラーゲンの粒子径は例えば噴霧乾燥工程により調整することができる。また、粉砕してもかまわない。
例えば、コラーゲン粉末〔新田ゼラチン(株)製、商品名 イクオスHDL-50F〕などが市販されている。
【0007】
また、本発明において、コラーゲン粉末は、予め高分子で被覆したコラーゲン粉末を使用してもかまわない。
予め高分子で被覆したコラーゲン粉末を使用すると、よりねちゃつき防止効果があるので使用に適している。
本発明で使用できる高分子は、プルラン、デンプン、デキストリン、クラスターデキストリン、大豆多糖類、アラビアガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、トウモロコシたん白などが挙げられる。
これらの高分子の被覆量は、コラーゲン粒子100質量部に対して1〜20質量部が好ましい。
1質量部未満であれば、予め高分子で被覆した効果が発揮し難く、20質量部を超えると被覆したコラーゲン粉末の粒径が大きくなりやすく、圧縮成形体含有時にざらつきなどの食感を有し、悪影響を及ぼす可能性がある。
被覆に適した高分子として、プルラン〔(株)林原製、商品名 食品添加物プルラン〕や大豆多糖類〔フロイント産業(株)製、商品名 ヘミロース〕、トウモロコシタたん白〔小林香料(株)製、商品名 小林ツェインDP〕などが市販されている。
なお、被覆時には被膜能を向上するために、高分子原料にグリセリンや中鎖トリグリセライドのような添加剤を加えてもよい。
【0008】
本発明において、コラーゲン粉末の高分子による被覆方法には以下の方法が挙げられる。
例えば、流動層装置にてコラーゲン粉末を流動させながら、高分子を溶液状態で噴霧して、コラーゲン粉末に高分子を被覆する。この際に使用する流動層装置は、空気を給気しながらコラーゲン粉末を流動状態に保つ装置であり、例えば、流動層造粒機、転動流動層造粒機、ワースター型転動流動層造粒機などの一般的な流動層装置が挙げられる。高分子溶液の噴霧は、スプレーエアガンを用いて行うことができる。例えば、ニューマルメライザー〔(株)ダルトン製〕、マルチプレックス〔(株)パウレック製〕などが挙げられる。
なお、高分子被覆時にコラーゲン粉末の粒子径が増大することがあるが、平均粒子径40〜300μmの範囲とする。
【0009】
<油性成分>
本発明では、コラーゲン粉末に被覆する油性成分の融点は50〜80℃である。好ましくは60〜70℃である。
融点が50℃未満の油性成分を使用して被覆しても、コラーゲンのねちゃつきを十分に防止することができないことがある。融点が80℃を超える油性成分で被覆すると歯切れが悪くなるおそれがある。
すなわち、本発明では、融点が50〜80℃の油性成分でコラーゲン粉末を被覆するものであるが、融点を高くしてチュアブル錠等を口腔内で咀嚼する際に被覆した油性成分が溶融しなくするとともに、融点が高すぎることによる結晶化による問題を解消するものである。
本発明で用いる油性成分の原料としては、食用油脂、脂肪酸エステル、ワックス、ろう、高級アルコール、その他の脂質などが挙げられる。本発明で用いる融点50℃以上の油性成分としては、前記の食用油脂、脂肪酸エステル、ワックス、ろう、高級アルコール、前記の成分の分別したもの、水素添加した硬化物等が挙げられる。前記の成分は、適宜一種単独で、または二種以上のものを配合して選ぶことができる。融点が50〜80℃の油性成分としては、例えば、動植物油脂の硬化物が好ましく挙げられ、さらに好ましくは、大豆油、サフラワー油、ナタネ油、パーム油等の硬化油が挙げられる。
【0010】
本発明において、油脂被覆コラーゲン粉末はコラーゲン粉末50〜95質量部を油性成分5〜50質量部で被覆した粉末である。
コラーゲン粉末が50質量部未満、すなわち油性成分が50質量部を超える場合では打錠性が悪化するおそれがあり、また、コラーゲン粉末が95質量部を超える場合、すなわち油性成分が5質量部を未満では、被覆が十分ではなくねちゃつきの防止効果が十分でなくなるおそれがある。
【0011】
<油脂被覆コラーゲン粉末の製造方法>
次に、本発明のコラーゲン粉末粒子の表面を油性成分で被覆する製造方法について説明する。
油脂被覆コラーゲン粉末は、コラーゲン粉末を芯材として、その粉末表面に、被覆剤として前記の融点50℃〜80℃の油性成分を用いて被覆物を作製する。
粉末被覆にあたっては、芯物質と融点50℃以上の油性成分の粉体とを互いに接触・衝突させる方法が挙げられる。例えば、高能率粉体混合機、高速気流粉砕機、ボールミル、電気乳鉢、各種高速撹拌混合機などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。使用する油性成分の粉体平均粒子径は0.1μm〜1000μmが好ましく、1μm〜50μmがさらに好ましく挙げられ、芯物質の粉末と同程度またはそれ以下の粒子径であることが好ましい。この際用いることができる高速撹拌混合機としては、例えば、ハイスピードミキサー〔深江パウテック(株)製〕や、バーチカルグラニュレーター〔(株)パウレック製〕などがある。
次に、油性成分を用いた被覆物の作製は、溶融した油性成分を用いる被覆方法も挙げることができる。油脂粉末による被覆時と同様な機器を用いることにより、溶融した油性成分を噴霧し芯物質を被覆する。この場合、油性成分の温度は50℃〜70℃であることが好ましく、50℃〜60℃であることがより好ましい。
なお、コラーゲン粉末に、予め高分子を被覆したコラーゲン粉末を使用する場合も、同様の方法で油脂被覆することができる。
【0012】
本発明において、製造される油脂被覆コラーゲン粉末は、チュアブル剤等の圧縮成形体の原料に使用する場合、被覆された油脂の多形がβ型であることが好ましい。β型とすると、賦形剤との混合において、固まりが生じ難く、混合粉体の均質性が維持できるので好ましい。
一般に油脂被覆後において油性成分の多形はα形であるが、これをテンパリング(α型融点以下の温度に一定時間放置する)することによりβ型への転移することができる。油性成分の多形は、例えばX線回折法により測定できる。油性成分のX線回折における2θ(19°)のピーク強度と2θ(21°)のピーク強度比0.6以下であれば不安定な多形のα型が多い状態である。テンパリング操作によりピーク強度比が2以上になることで、安定なβ型が多い状態へ転移したことになる(特開2007−261985号を参照)。
【0013】
<圧縮形成体>
本発明の圧縮成形体は、前記の油脂被覆コラーゲン粉末5〜90質量部及び粒子径74〜350μmの粒子含有量が65質量%以上であり、粒子径350μm以上の粒子含有量が35質量%以下である賦形剤10〜95質量部から製造される圧縮成形体である。
油脂被覆コラーゲン粉末が5質量部未満すなわち賦形剤が95質量部を超えると1錠中のコラーゲン含量が減り、摂取粒数が多くなってしまう。油脂被覆コラーゲン粉末が90質量部を超える場合すなわち賦形剤が10質量部未満では賦形剤が十分ではなく、製造時に打錠機のホッパー内で固まりが生じるなどし、均質的な圧縮成形体形成されないので好ましくない。
ここで、コラーゲン粉末は粘着性で軟らかく、油脂で被覆しても賦形剤等と混合すると固まりを生じ易いので、チュアブル剤等の圧縮成形体を製造する際、あるいは、製造されるチュアブル剤等の食感において問題となる。そこで、本発明では、油脂被覆コラーゲン粉末と混合する賦形剤の粒子径の分布に着目し、特定の粒子径の分布のとき、これらの問題が解決されることを見出した。本発明では、粒子径74〜350μmの粒子含有量が65質量%以上であり、粒子径350μmを超える粒子含有量が35質量%以下である賦形剤を使用する。
この範囲を超える粒子径の分布の賦形剤を使用すると、チュアブル剤咀嚼時のコラーゲンのねちゃつきは防止されるものの、製造されるチュアブル剤の硬度等の品質にバラツキが生じ、食感においてざらつきを感じ易くなる。
ここで、賦形剤の粒子径の分布は、本発明ではメッシュ篩いの残留量を測定したものである。JIS Z8801規格に基づいた篩いを用いた。
【0014】
賦形剤の素材は、乳糖、デキストリン、結晶セルロース、でんぷん、コーンスターチ、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、エリスリトール等の還元糖;果糖、ショ糖、ブドウ糖などの糖;アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガム等のガム質;カゼインナトリウム、脱脂粉乳、乳タンパク、乳清タンパクなどのたんぱく質等が挙げられる。それらの中でも好ましくは、乳糖、デキストリン、結晶セルロース、マルチトール等が挙げられる。
【0015】
<圧縮成形体の製造方法>
本発明において、チュアブル錠等の圧縮成形は例えば以下のように製造することができる。
油脂被覆コラーゲン粉末および賦形剤等を配合したものを混合し、これに0.5〜3.0kNで直接圧縮成形して打錠成形体を得ることができる。チュアブル錠を製造するには、1.0〜2.0kNが好ましい。
なお、油脂被覆コラーゲン粉末や賦形剤以外に、香料、酸味料、香料、滑沢剤等を配合してもよい。
本発明には、圧縮成形加工機として特に限定しないがロータリー式打錠機が好ましい。
【0016】
<チュアブル錠>
本発明で製造されるチュアブル錠の錠剤硬度は、好ましくは30〜200Nで、より好ましくは50〜150Nである。錠剤硬度が30Nより低い場合は、得られた成形体が製造ライン上もしくは流通過程で壊れやすくなり好ましくない。また、錠剤硬度が200Nより高い場合は、硬すぎて、テクスチャーが悪くなる。なお、このようにして得られた成形体の大きさは、特に限定されないが、コラーゲンの摂取量、その他の配合物の配合量や摂取回数により、適宜選択することが好ましい。例えば、服用の点から、1錠の大きさは通常直径5〜20mmが好ましく、またその質量は200〜1500mgが好ましい。また前記成形体の形状は、丸型、四角型、六角型、円柱型さらには碁石型等様々あるが特に限定されるものではない。また、香料や甘味料等の味付け成分や滑沢剤を添加してもよいが、特に限定するものではない。
【実施例】
【0017】
油脂被覆コラーゲン粉末の製造方法の違いにおける本発明を具体例に基づいて、さらに詳細に説明する。
なお、実施例において、粉末の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機「SALD−2100」((株)島津製作所製)にて測定した。
粉末の粒子径の分布は、篩試験(メッシュはJIS Z8801準拠)にて測定した。具体的には、74μm、350μmの篩を用い、一定時間振動を与え、篩上に残った粉体の重量を測り、粒度分布を測定した。
油性成分の融点は、日本油化学会制定である基準油脂分析試験法(2.2.4.1,2−1996)に準じ、測定した。硬度は、デジタル硬度計KHT−20N(藤原製作所製)を使用して、測定し、各錠剤につき任意に採取した10錠の測定平均値を示した。ねちゃつき評価は、〔◎〕咀嚼開始後、およそ10〜30秒間において、ほとんど歯つきがなく、食感がよい場合、〔○〕若干歯つきがあるが、食感がよい場合、〔×〕歯つきがあり、食感が悪い場合とした。圧縮成形体の均質性評価は、〔○〕硬度のCV値が20以下のとき、〔×〕20より大きいときとした。ざらつきの評価は、咀嚼開始後およそ15秒以内において、〔○〕食感が良好のとき、〔△〕わずかにざらつきを感じるとき、〔×〕ざらつきを感じるときとした。
【0018】
実施例1
コラーゲン粉末〔新田ゼラチン(株)製、商品名 イクオスHDL−50F、平均粒子径74μm〕90質量部、油性成分として融点67℃のナタネ極度硬化油〔平均粒子径10μm〕10質量部を用いて、バーチカルグラニュレーター〔(株)パウレック製〕で25〜35℃で30分間処理して油脂被覆コラーゲン粉末を得た。油脂被覆した後、45℃(α型融点以下)に保ち、24時間以上テンパリング操作を行い、β型へ固相転移させた。
得られた油脂被覆コラーゲン粉末を42.8質量部(被覆油性成分として4.3質量部、コラーゲン粉末として38.5質量部)、還元パラチニース〔三井製糖(株)製、商品名 ISOMALT(パラチニット)DC−100、平均粒径200μm〕37質量部、還元麦芽糖水飴B〔三菱商事フードテック(株)製、商品名 粉末マルチトールG−3、232μm〕10質量部、香料〔小川香料(株)製、商品名 ストロベリーコートン〕3.3質量部、クエン酸〔磐田化学工業(株)製、商品名 クエン酸(無水)〕2質量部、甘味料〔ステビア、日本製紙ケミカル(株)製、商品名 SKスイートZ3〕0.4質量部をよく混合し、篩過後、ステアリン酸カルシウム〔日油(株)製、商品名 オーラブライトCA−65〕1質量部を添加し、再びよく混合し、直接圧縮成型して成形体を得た。圧縮成型体の製造方法としては、打錠機のホッパーへ充填し、杵臼に充填された混合粉末を圧縮することで得た。打錠機は卓上打錠機〔(株)エステック製〕を用いた。圧縮成形体の形状は直径15mm、粒重量1300mgとした。
ねちゃつきの評価については、表1に記載した。
【0019】
実施例2
コラーゲン粉末〔新田ゼラチン(株)製、商品名 イクオスHDL−50F、平均粒子径74μm〕90質量部に、油性成分として70℃で溶融したナタネ極度硬化油(融点67℃)10質量部をスプレー噴霧しながら(噴霧時間30秒)、バーチカルグラニュレーター〔(株)パウレック製〕で30分間処理して油脂被覆コラーゲン粉末を得た。
他の処理、圧縮成形体の製造方法は実施例1と同様である。
ねちゃつきの評価については、表1に記載した。
【0020】
実施例3
コラーゲン粉末〔新田ゼラチン(株)製、商品名 イクオスHDL−50F、平均粒子径74μm〕95質量部をニューマルメライザー〔(株)ダルトン〕に仕込み、水に溶解したプルラン〔(株)林原製、商品名 食品添加物プルラン〕5質量部を噴霧し、造粒した。プルラン水溶液は水100質量部に対し、プルラン1質量部を溶解して得た。造粒条件は、給気温度85℃、給気量0.6m3/minの空気を給気しこれを流動させた。
乾燥後、造粒したコラーゲン粉体80質量部、融点67℃のナタネ極度硬化油〔平均粒子径10μm〕20質量部を用いて、バーチカルグラニュレーター〔(株)パウレック製〕で25〜35℃で30分間処理して油脂被覆コラーゲン粉末を得た。
他の処理、圧縮成形体の製造方法は実施例1と同様である。
ねちゃつきの評価については、表1に記載した。
【0021】
実施例4
コラーゲン粉末〔新田ゼラチン(株)製、商品名 イクオスHDL−50F、平均粒子径74μm〕95質量部をニューマルメライザー〔(株)ダルトン製〕に仕込み、エタノール水に溶解したトウモロコシタたん白〔小林香料(株)製、商品名 小林ツェインDP〕5質量部を噴霧し、造粒した。トウモロコシタたん白のエタノール水溶液は、エタノール水〔甘糟化学産業(株)製、 商品名 アマノールJP〕100質量部に対し、トウモコロシたん白5質量部、中鎖トリグリセリド〔日油(株)製、商品名 パナセート810〕2質量部を溶解して得た。造粒条件は、給気温度85℃、給気量0.6m3/minの空気を給気しこれを流動させた。
乾燥後、造粒したコラーゲン粉体80質量部、融点67℃のナタネ極度硬化油〔平均粒子径10μm〕20質量部を用いて、バーチカルグラニュレーター〔(株)パウレック製〕で25〜35℃で30分間処理して油脂被覆コラーゲン粉末を得た。
他の処理、圧縮成形体の製造方法は実施例1と同様である。
ねちゃつきの評価については、表1に記載した。
【0022】
実施例5
コラーゲン粉末〔新田ゼラチン(株)製、商品名 イクオスHDL−50F、平均粒子径74μm〕95質量部をニューマルメライザー〔(株)ダルトン製〕に仕込み、水に溶解したHPMC〔信越化学工業(株)製、商品名 メトローズSE−06〕5質量部を噴霧し、造粒した。HPMC水溶液は水100質量部に対してHPMC8質量部、グリセリン〔花王(株)製、商品名 食品添加物グリセリン〕1.6質量部を溶解して得た。造粒条件は、給気温度85℃、給気量0.6m3/minの空気を給気しこれを流動させた。
乾燥後、造粒したコラーゲン粉体80質量部、融点67℃のナタネ極度硬化油〔平均粒子径10μm〕20質量部を用いて、バーチカルグラニュレーター〔(株)パウレック製〕で25〜35℃で30分間処理して油脂被覆コラーゲン粉末を得た。
他の処理、圧縮成形体の製造方法は実施例1と同様である。
ねちゃつきの評価については、表1に記載した。
【0023】
実施例6〜9
実施例1〜5と同様にして、油脂被覆コラーゲン粉末を作製した後、圧縮成形体を得た。評価結果については、表1に記載した。
【0024】
比較例1
コラーゲン粉末〔新田ゼラチン(株)製、商品名 イクオスHDL−50F、平均粒子径74μm〕42.8質量部、還元パラチノース〔三井製糖(株)製、商品名 ISOMALT(パラチニット)DC−100、平均粒径200μm〕37質量部、還元麦芽糖水飴B〔三菱商事フードテック(株)製、商品名 粉末マルチトールG−3、平均粒径232μm〕10質量部、香料〔小川香料(株)製、商品名 ストロベリーコートン〕3.3質量部、クエン酸〔磐田化学工業(株)製、商品名 クエン酸(無水)〕2質量部、甘味料〔ステビア、日本製紙ケミカル(株)製、商品名 SKスイートZ3〕0.4質量部をよく混合し、篩過後、ステアリン酸カルシウム〔日油(株)製、商品名 オーラブライトCA−65〕1質量部を添加し、再びよく混合し、直接圧縮成型して成形体を得た。圧縮成型体の製造方法としては、打錠機のホッパーへ充填し、杵臼に充填された混合粉末を圧縮することで得た。打錠機は卓上打錠機〔エステック(株)製〕を用いた。
ねちゃつきの評価については、表1に記載した。
【0025】
比較例2
コラーゲン粉末〔新田ゼラチン(株)製、商品名 イクオスHDL−50F、平均粒子径74μm〕90質量部、油性成分として融点30℃のパーム核油10質量部を用いて、バーチカルグラニュレーター〔(株)パウレック製〕で25℃で30分間処理して油脂被覆コラーゲン粉末を得た。
次に、比較例1と同様にして圧縮成形体を得た。
ねちゃつきの評価については、表1に記載した。
【0026】
比較例3
コラーゲン粉末〔新田ゼラチン(株)製、商品名 イクオスHDL-50F、平均粒子径74μm〕95質量部をニューマルメライザー〔(株)ダルトン製〕に仕込み、プルラン〔(株)林原製、商品名 食品添加物プルラン〕5質量部を水99質量部に溶解して噴霧し、造粒した。造粒条件は、給気温度85℃、給気量0.6m3/minの空気を給気しこれを流動させた。
乾燥後、比較例1と同様にして圧縮成形体を得た。
ねちゃつきの評価については、表1に記載した。
【0027】
比較例4〜5
実施例4、5と同様にして、表1の組成で高分子被覆コラーゲン粉末を作製した後、比較例1と同様にして圧縮成形体を得た。
ねちゃつき評価については、表1に記載した。
【0028】
【表1】

【0029】
本発明の油脂被覆コラーゲン粉末はねちゃつきが防止され、食感がよかった。高分子で被覆後、油脂被覆を行った場合(実施例3,7,8,9)、ほとんど歯つきがなく、食感がよかった。また、それに対し、油脂被覆に用いた油性成分の融点が30℃の場合や油脂被覆せずに高分子で造粒しただけの場合(比較例2〜5)、歯つきがあり、食感がよくなかった。
【0030】
賦形剤の粒度に違いにおける本発明の効果を実施例に基づいて、具体的について説明する。
実施例10
実施例1と同じ操作をしてコラーゲン粉末を含む圧縮成形体を得た。
賦形剤における粒度分布は、350μmを超える粒子が20質量%、74〜350μmが78.4質量%、74μm未満が1.6質量%であった。
圧縮成形体の硬度のCV値は14.9%であり、良好であった。
評価結果を表2に記載した。
【0031】
実施例11〜20
表2に示す組成で、実施例1で作製した油脂被覆コラーゲン粉末を用い、実施例10と同様にして圧縮成形体を得た。
評価結果を表2に記載した。
【0032】
比較例6
実施例1で作製した油脂被覆コラーゲン粉末(コラーゲン粉末90質量部、油性成分10質量部)47.7質量部、賦形剤として還元麦芽糖水飴A〔三菱商事フードテック(株) 商品名 アマルティMR20、平均粒子径460μm〕52.3質量部を用いて、実施例10と同様にして圧縮成型体を得た。
賦形剤における粒度分布は、350μmを超える粒子が84.3質量%、74〜350μmが15.7質量%、74μm未満が0.1質量%であった。
圧縮成形体の硬度のCV値は54.1%で、均質性は不良であった。ざらつきも強く感じた。
評価結果を表2に記載した。
【0033】
比較例7
実施例1で作製した油脂被覆コラーゲン粉末(コラーゲン粉末90質量部、油性成分10質量部)47.7質量部、賦形剤として還元麦芽糖水飴A〔三菱商事フードテック(株) 商品名 アマルティMR20、平均粒子径460μm〕24.5質量部、還元麦芽糖水飴B〔三菱商事フードテック(株) 商品名 粉末マルチトールG−3、平均粒径232μm〕27.5質量部を用いて、実施例10と同様にして圧縮成型体を得た。
賦形剤における粒度分布は、350μmを超える粒子が39.5質量%、74〜350μmが60.4質量%、74μm未満が1.1質量%であった。
圧縮成形体の硬度のCV値は16.5%で、均質性は良好であった。ただし、ざらつきは強く感じ、食感は不良であった。
評価結果は表2に記載した。
【0034】
比較例8
コラーゲン粉末42.9質量部、賦形剤として還元パラチノース〔三井製糖(株)製、商品名 還元パラチノースDC−100、平均粒子径200μm〕45質量部、還元麦芽糖水飴B〔三菱商事フードテック(株)製、商品名 粉末マルチトールG−3、平均粒子径232μm〕12.1質量部を用いて、実施例10と同様にして圧縮成型体を得た。
賦形剤における粒度分布は、350μmを超える粒子が20質量%、74〜350μmが78.4質量%、74μm未満が1.6質量%であった。
圧縮成形体のCV値は12.1%で、均質性は良好であった。ざらつきもなかった、歯つきがあり、食感がよくなかった。
評価結果を表2に記載した。
【0035】
【表2】

【0036】
(注1)還元麦芽糖水飴A:アマルティMR20
(注2)還元麦芽糖水飴B:粉末マルチトールG−3
(注3)還元麦芽糖水飴C:アマルティMR50
(注4)油脂被覆コラーゲン:コラーゲン粉末90質量部、油性成分10質量部
【0037】
実施例10〜20では、硬度のCV値が15以下であり、充填性は安定していた。また、実施例10、11、12、13、15、16、18はざらつきがなく、食感もよかった。実施例14および17はざらつきを若干感じるが、食感はよく、実施例19は若干歯にはりつくが、食感はよかった。それに対し、比較例6は硬度のCV値が54.1と非常に高く、充填性は安定せず、ざらつき、食感も悪かった。比較例7は、ざらつきを感じ、食感が悪い、比較例8はねちゃつきを感じ、食感が悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径40〜300μmのコラーゲン粉末50〜95質量部を融点50〜80℃の油性成分5〜50質量部で被覆した油脂被覆コラーゲン粉末。
【請求項2】
請求項1の油脂被覆コラーゲン粉末5〜90質量部、下記の賦形剤10〜95質量部から製造される圧縮成形体。
賦形剤:粒子径74〜350μmの粒子含有量が65質量%以上であり、粒子径350μmを超える粒子含有量が35質量%以下である賦形剤。
【請求項3】
コラーゲン粉末が、予め高分子を被覆したコラーゲン粉末である、請求項1記載の油脂被覆コラーゲン粉末。

【公開番号】特開2010−98991(P2010−98991A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272429(P2008−272429)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】