説明

治療台

【課題】より適切な治療がしやすく、使い勝手の良い治療台を提供する。
【解決手段】治療台本体3の胴部マット61が、頭部台4と胸部台5との間の第1の支点Bを中心として回動可能である。胴部マット61を第1の支点Bを回転中心としてガスシリンダ65にて回動させた後、ストッパ64によるスライドボックス63の溝部63a内の被係合部65dへの係合を解除させることにより、胴部マット61を第1の支点Bを回動中心としてさらに下方へ回動できる。患者の肥大した腹部を胴部マット61で支持しつつ、この患者の脊椎の位置や形状に対応させて頭部台4および腰部台7を最適な位置に移動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者を寝かせて脊椎関節等の治療を行うために使用する治療台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の脊椎関節等の治療を行うための治療台としては、例えば下記特許文献1および2に記載のように、患者の頭部を支持する頭部台と、患者の胴部を支持する胴部台と、患者の腰部を支持する腰部台とが長手方向に並べて配設されており、頭部台が、この頭部台の幅方向の中心位置上方を中心として幅方向に揺動可能に構成され、胴部台が固定され、腰部台が、この腰部台の胴部台側とは反対側の端部を中心として回動可能に構成されているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4724828号明細書
【特許文献2】米国特許第4660549号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1および2にかかる従来技術によれば、胴部台が固定されているため、腹部の大きな患者等については、腹部が邪魔になってしまい、患者の脊椎の形状や捩じれ等に対応させて頭部台および腰部台を適切な位置に移動しにくく、また、これら頭部台および胴部台を適切な位置に移動することができた場合であっても、この位置から胴部台を移動することができないため、適切な治療がしにくい場合がある。さらに、これら従来技術では、頭部台のみが幅方向に揺動可能であるため、この頭部台を患者の脊椎の形状や捩じれ等に対応させて揺動させた場合に、この頭部台の揺動に追従させて腰部台を移動することができず、患者の脊椎の形状や捩じれ具合等によっては、頭部台および胴部台を適切な位置に移動することができないから、適切な治療がしにくい場合があり、使い勝手が良くないといった問題がある。
【0005】
そこで本発明は、従来技術における上記問題を解決し、より適切な治療がしやすく、使い勝手の良い治療台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、請求項1にかかる本発明は、患者の頭部を支持する頭部台と、患者の胴部を支持する胴部台と、患者の腰部を支持する腰部台を備え、これら頭部台、胴部台および腰部台が長手方向に並べて配設された治療台であって、前記胴部台は、この胴部台の頭部台側に位置する第1の支点を中心として略水平な位置から下方に向けて回動可能に構成され、前記第1の支点とは異なる第2の支点に一端が回動可能に固定され長手方向を有する進退可能な保持手段を有し、この保持手段の他端は、前記胴部台の前後方向に沿って移動可能となるように前記胴部台に回転可能に取り付けられている、ことを特徴とする治療台である。
【0007】
請求項2は、請求項1の治療台において、胴部台には、保持手段の他端の前記胴部台の長手方向に沿った移動を固定する固定手段が設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3は、請求項1または2の治療台において、胴部台には、第1の支点との間に所定のテンションを与える回動調整手段が設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4は、請求項1ないし3いずれかの治療台において、頭部台および腰部台は、これら頭部台および腰部台の幅方向の中心位置上方を中心として幅方向に揺動可能に構成されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5は、請求項1ないし4いずれかの治療台において、患者の胸部を支持する胸部台を備え、この胸部台は、頭部台と胴部台との間に配設され、前記頭部台側に向けて下方に傾斜した斜め方向に昇降可能に構成されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項6は、患者の頭部を支持する頭部台と、患者の腰部を支持する腰部台とを備え、これら頭部台および腰部台が長手方向に並べて配設された治療台であって、前記頭部台および腰部台は、これら頭部台および腰部台の幅方向の中心位置上方を中心として幅方向に揺動可能に構成されている、ことを特徴とする治療台である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、胴部台の頭部台側に位置する第1の支点を中心として略水平な位置から下方に向けて胴部台が回動可能に構成されており、この第1の支点とは異なる第2の支点に一端が回動可能に固定され長手方向を有する進退可能な保持手段の他端が、胴部台の前後方向に沿って移動可能となるように胴部台に回転可能に取り付けられているため、例えば、腹部の大きな患者等の場合においては、保持手段を進退させることによって、胴部台を第1の支点を中心として略水平な位置から下方に回動でき、この患者の脊椎の形状や捩じれ等に対応させて頭部台および腰部台を適切な位置に移動できるとともに、さらに、この保持手段の他端を胴部台の前後方向に移動させることによって、保持手段にて胴部台を第1の支点を中心として回動させた位置から、この胴部台をさらに第1の支点を中心として回動できるので、より適切な治療がしやすく、使い勝手を向上できる。
【0013】
また、保持手段の他端の胴部台の長手方向に沿った移動を固定する固定手段が胴部台に設けられているため、保持手段の他端の胴部台の長手方向に沿った移動を固定手段にて固定することにより、保持手段の進退にて調整された胴部台の第1の支点を中心とした回動が固定されるため、患者の体型や症状に対応させて胴部台の第1の支点を中心とした回動を固定することが可能となり、より様々な体型や症状の患者に対応させて治療できる。
【0014】
さらに、第1の支点との間に所定のテンションを与える回動調整手段が胴部台に設けられているため、保持手段の他端を胴部台の前後方向に移動させることによる、第1の支点を中心とした胴部台の回動調整をより確実に行うことができるから、より適切な治療がしやすく、使い勝手をより向上できる。
【0015】
また、患者の胸部を支持する胸部台を頭部台と胴部台との間に配設し、この胸部台を、頭部台側に向けて下方に傾斜した斜め方向に昇降可能としたことにより、患者の胸部の大きさに対応させて胸部台を昇降させて調整できると同時に、治療する際の力を胸部に適切に加えることができるため、より適切な治療がしやすく、使い勝手をより向上できる。
【0016】
また、患者の脊椎の両端部を支持する頭部台および腰部台のそれぞれが、幅方向の中心位置上方を中心として幅方向に揺動可能に構成されているため、頭部台を患者の脊椎の形状や捩じれ等に対応させて揺動させた場合に、この頭部台の揺動に追従させて腰部台を揺動でき、患者の脊椎の形状や捩じれ具合等に合わせて、頭部台および胴部台を適切な位置に移動できるから、より適切な治療がしやすく、使い勝手を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態による治療台の概要を示す正面図である。
【図2】上記治療台の概要を示す平面図である。
【図3】上記治療台の頭部台の概要を示す平面図である。
【図4】上記治療台の頭部台の概要を示す左側面図である。
【図5】上記治療台の胸部台および胴部台の概要を示す平面図である。
【図6】上記治療台の腰部台の概要を示す平面図である。
【図7】上記治療台の腰部台の概要を示す左側面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態による治療台の概要を示す正面図である。
【図9】上記治療台の概要を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施の形態による治療台について図1ないし図7を参照して説明する。
【0019】
この治療台1は、主として頸椎等の脊椎関節の治療を行うために使用されるものであって、患者をうつ伏せにして頭部と腰部とを支えた状態で、この患者の脊椎関節等を治療したり施術したりする施術台である。具体的に、この治療台1は、図1および図2に示すように、走行可能に構成された機台2上に、ベッド状の治療台本体3が設置されている。この治療台本体3は、この治療台本体3上に患者を寝そべらせた場合に、この患者の頭部を支持する頭部台4と、この患者の胸部を支持する胸部台5と、この患者の胴部を支持する胴部台6と、この患者の腰部を支持する腰部台7と、この患者の脚部を支持する脚部台8とを備えている。そして、これら頭部台4、胸部台5、胴部台6、腰部台7および脚部台8のそれぞれは、治療台本体3の長手方向に沿って並べられて配設されている。さらに、この治療台本体3は、機台2に取り付けられた昇降機構21によって、治療台本体3の基端側を回転中心として回動可能かつ昇降可能に構成されており、この昇降機構21は、一端が機台2の長手方向の中心位置より頭部台4側である先端寄りの位置に接続された駆動手段としての油圧シリンダ22を備えている。
【0020】
一方、治療台本体3は、一対の本体フレーム31を備えており、これら一対の本体フレーム31の脚部台8側である基端側が機台2に回転可能に接続されており、これら一対のフレーム31の基端側と機台2との間に油圧シリンダ22の他端が回動可能に接続され、この油圧シリンダ22の駆動にて治療台本体3の先端側を上方に向けて移動させ、水平位置から、例えば、63°ほど起立できるように構成されている。さらに、これら一対のフレーム31の基端側には、治療台本体3を回動させて起立させた場合に、患者の足部が載って自立可能にさせる踏台部32が取り付けられている。この踏台部32は、昇降機構21の油圧シリンダ22による治療台本体3の起立および動作に連動して、この踏台部32の基端側を中心として回動するように構成されている。
【0021】
次いで、頭部台4は、一対の本体フレーム31の先端側に取り付けられており、図1ないし図4に示すように、平面視略凹状の頭部マット41を備えている。この頭部マット41は、凹状の開口部41a側を基端側に向けた状態で、平板状の頭部プレート42上に設置されて取り付けられており、この頭部プレート42の基端側が、平板状の頭部スイングプレート43の基端側に設けられた連結部43aによって、上下方向に回動可能に取り付けられている。そして、この頭部プレート42は、この頭部プレート42の先端側の中心位置に取り付けられた昇降ハンドル44を回転させることによって、この頭部プレート42の基端側の連結部43aを中心として、この頭部プレート42の先端側を上下方向に回動させて、この頭部プレート42の先願側を水平位置から、例えば7mmほど上昇させて傾けることができるように構成されている。
【0022】
さらに、頭部スイングプレート43は、この頭部スイングプレート43の基端寄りの中心位置が、上下方向に沿った軸方向を有する回転軸45に回転可能に連結されており、この回転軸45を中心として水平方向に回転可能に取り付けられている。ここで、この頭部スイングプレート43は、図2に示すように、この頭部スイングプレート43の長手方向を機台2の長手方向に沿わせた状態から回転軸45を回転中心として各幅方向に各15°ずつ水平回転できるように構成されており、頭部プレート42の幅方向の両端部に取り付けられた首振バー47を把持して移動させることによって、頭部マット41を所定の角度に回転できるように構成されている。
【0023】
そして、この頭部スイングプレート43の下方には、図4に示すように、頭部台4の頭部マット41の幅方向の中心位置上方に位置する支点Aを中心として幅方向に揺動可能にさせる頭部揺動機構48が設けられている。この頭部揺動機構48は、凹弧状に湾曲した断面L字状の一対のレール体48aを備えており、これらレール体48aを向かい合わせた状態で頭部スイングプレート43の下面の長手方向の両端部に取り付けられている。ここで、これらレール体48aは、支点Aが中心位置となる曲率に湾曲されて形成されている。そして、これらレール体48a内には、円柱状のローラ体である一対のカムフロア48bが回転可能に収容されており、これらレール体48aの湾曲方向に向けて各カムフロア48bが相対的に移動可能となるように固定されている。ここで、これらカムフロア48bは、連結ベース48cの長手方向の両端部に回転可能に取り付けられており、この連結ベース48cの幅方向に沿って連動軸48dが取り付けられている。この連動軸48dは、この連動軸48dの両端部に取り付けられた回転ハンドル48eを回転させ、この連動軸48dの中間部に取り付けられた台形ねじ48fを回転させることによって、この台形ねじ48fに嵌合された筒状体48gを軸方向に移動させ、この筒状体48gに一端が回動可能に連結され頭部スイングプレート43に他端が回動可能に連結されたリンクプレート48hの他端を連動軸48dの軸方向に移動させて、この頭部スイングプレート43を一対のレール体48aの湾曲方向に沿って、中心位置から、例えば各10°ずつ揺動、すなわち旋回(ツイスト)するように構成されている。さらに、この頭部揺動機構48の下方には、頭部昇降機構49が取り付けられており、この頭部昇降機構49のペダル49aを操作することによって頭部台4の頭部マット41が、例えば90mmほど上下方向に昇降可能に構成されている。
【0024】
さらに、頭部台4の頭部プレート42と頭部スイングプレート43との間には、頭部マット41を上方に引っ張ることによって所定間隔、例えば7mmほど上昇移動して固定され、この頭部マット41に上方から所定の圧力を加えることによって、この頭部マット41が所定間隔、例えば7mmほどスライド移動する頭部ドロップ機構42aが設けられている。
【0025】
次いで、胸部台5は、平面視略矩形状の胸部マット51を備えており、この胸部マット51は、平板状の取付プレート52上に昇降可能に取り付けられている。ここで、この取付プレート52は、図1に示すように、胴部台6の前後方向を水平に位置させた状態で、この取付プレート52の前後方向が、胴部台6側に向けて下方に傾斜させて取り付けられている。したがって、胸部マット51は、頭部台4側に向けて、例えば40°〜50°程度の角度に下方に向けて傾斜した斜め方向に沿って昇降可能となるように構成されている。そして、図1に示すように、この取付プレート52の先端側の端部が、頭部台4と胸部台5との間に位置する第1の支点Bを中心として回動可能に接続されている。具体的に、この取り付プレート52は、胸部マット51の先端側が水平位置から、例えば11mmほど上昇させて傾けることができるように構成されている。また、この取付プレート52の下部には、胸部マット51の第1の支点Bを中心とした回動を操作するための操作レバー53が取り付けられている。
【0026】
そして、胸部台5の胸部マット51と取付プレート52との間においても、この胸部マット51を上方に引っ張ることによって所定間隔、例えば11mmほど上昇移動して固定され、この胸部マット51に上方から所定の圧力を加えることによって、この胸部マット51が所定間隔、例えば11mmほど下方にスライド移動する胸部ドロップ機構52aが設けられている。
【0027】
さらに、胴部台6は、平面視略矩形状の胴部マット61を備えており、この胴部マット61は、一対の胴部マットフレーム62の先端側の平坦な平坦部62a上に設置されている。ここで、この胴部マット61の下部には、回動調整手段としてのスイングボックス63が取り付けられており、このスイングボックス63は、胴部マットフレーム62の平坦部62a間に挿入されて取り付けられており、このスイングボックス63の内部には胴部台6の前後方向に沿って形成された溝部63aが設けられている。そして、これら胴部マットフレーム62の基端側に位置する略コ字状に屈曲した屈曲部62bの先端寄りの位置に固定手段としてのストッパ64が取り付けられ、このストッパ64の先端部がスイングボックス63内に挿入可能となるように構成されている。
【0028】
そして、これら胴部マットフレーム62の屈曲部62bの基端部は、第1の支点Bを中心として回動可能に取り付けられており、この第1の支点Bに回動可能に取り付けられた胸部台5の胸部マット51とともに、第1の支点Bを中心として胴部マット61が回転可能に取り付けられている。ここで、これら胸部マット51および胴部マット61は、第1の支点Bを中心とした略水平な位置、例えば水平位置から上方へ3°ほど上昇させた位置から下方に向けて、例えば14°ほど回動できるように構成されている。さらに、これら胴部マットフレーム62の平坦部62aの基端寄りの位置と機台2との間には、胸部マット51および胴部マット61の回動位置を調整して保持することが可能な保持手段としてのガスシリンダ65が取り付けられている。
【0029】
このガスシリンダ65は、図1に示すように、機台2の基端側から先端側に向けて下方に傾斜して取り付けられており、このガスシリンダ65のピストン部65aの先端部が胸部マット61の下方位置の機台2に回動可能に連結され、このピストン部65aの先端部が第1の支点Bとは異なる第2の支点Dとされている。そして、このガスシリンダ65は、このガスシリンダ65のピストン部65aの先端部が連結されている位置に近接した機体上に設けられたペダル65cを操作することによって、このガスシリンダ65のピストン部65aが進退動作し、このガスシリンダ65のストローク(長さ)を操作して、胸部マット51および胸部マット61の第1の支点Bを回転中心とした回動角度を操作できるように構成されている。
【0030】
さらに、このガスシリンダ65のシリンダ部65bの基端部には、側面視円形状の被係合部65dが形成されており、この被係合部65dは、スイングボックス63の溝部63a内に摺動可能かつ回動可能に収容されており、この溝部63aの長手方向、すなわち平坦部62aに沿って直線上に移動可能、すなわちスイング移動可能に取り付けられている。そして、この被係合部65dは、この被係合部65dがスイングボックス63の溝部63a内の最も前側に移動した位置において、ストッパ64の先端部に係合可能に構成されており、このストッパ64による被係合部65dへの係合によって、ガスシリンダ65を進退させることによる胴部マット61の第1の支点Bを回転中心とした上下方向の回動以外の、スイングボックス63の溝部63a内で被係合部65dがスライド移動することによる、胴部マット61の第1の支点Bを回転中心とした上下方向の回動が固定されるように構成されている。したがって、これら被係合部65dおよびストッパ64によって、スイングボックス63の溝部63a内で被係合部65dがスライド移動することによる第1の支点Bを回転中心とした胴部マット61の回動を固定するロック機構としての係合保持機構69が構成されている。
【0031】
また、ガスシリンダ65のシリンダ部65bの被係合部65dには、リンクフレーム66の一端が回転可能に連結されている。このリンクフレーム66の他端は、ガスシリンダ65のピストン部65aの先端部の連結位置よりも機台2の基端寄りの位置に回転可能に連結されている。そして、このリンクフレーム66の他端には、支持フレーム67の一端が回動可能に連結されており、この支持フレーム67の他端は、胴部マットフレーム62の屈曲部62bの基端側の角部に回動可能に連結されている。さらに、この支持フレーム67の他端が連結された胴部マットフレーム62の屈曲部62bの基端側の角部と、リンクフレーム66の中間部との間に回動調整手段としてのスプリング68が取り付けられている。このスプリング68は、第1の支点Bと胴部マット61との間、具体的には、胴部マットフレーム62の屈曲部62bとリンクフレーム66の中間部との間に所定のテンション(張力)を与えるものであって、このスプリング68の弾性力によって、スイングボックス63の溝部63a内の被係合部65dへのストッパ64の係合を取り外した状態における、胸部マット51および胴部マット61の第1の支点Bを回転中心とした回動位置をある程度維持させ、これら胸部マット51および胴部マット61の第1の支点Bを回転中心とした回動をより確実に調整できるようにするために設けられている。
【0032】
すなわち、スイングボックス63は、ガスシリンダ65の操作にて第1の支点Bを回転中心とした胸部マット51および胴部マット61の回動が調整されて位置決め保持された位置から、このスイングボックス63の溝部65a内に摺動可能に収容された被係合部65dに対するストッパ64の係合を解除させることによって、ガスシリンダ65およびリンクフレーム66の回動可能に連結された基端側の被係合部65dがスイングボックス63の溝部65a内にてスイング移動可能となり、操作レバー53を用いて胸部マット51および胴部マット61を第1の支点Bを回転中心として回動調整できるように構成されている。よって、これら胸部マット51および胴部マット61は、ペダル65cを用いたガスシリンダ65の進退操作によって第1の支点Bを回動中心として回動操作できるとともに、ストッパ64を回動させてスイングボックス63の溝部63a内の被係合部65dへの係合を解除させることによって、胴部マット61の回動がスプリング68の弾性力によって、ある程度維持されて保持されながら第1の支点Bを回動中心として操作レバー53を用いて回動操作できるため、ガスシリンダ65による調整と、操作レバー53による調整とにより、これら胸部マット51および胴部マット61を2段階に亘って調整できるように構成されている。
【0033】
さらに、腰部台7は、一対の本体フレーム31の基端側に取り付けられており、図1、図2および図7に示すように、平面視略凹状の腰部マット71を備えている。この腰部マット71は、凹状の開口部71a側を先端側に向けた状態で、平板状の腰部プレート72上に設置されて取り付けられており、この胴部プレート72の基端側が、平板状の腰部スイングプレート73の基端側に設けられた連結部73aによって、上下方向に回動可能に連結されている。そして、この腰部プレート72は、この腰部プレート72の先端側の両側部に取り付けられた摘み74を把持して上下操作することによって、この腰部プレート72の基端側の連結部73aを回転中心として、この腰部プレート72の先端側を水平位置から、例えば20°ほど上方に回動させて昇降できるように構成されている。
【0034】
また、この腰部スイングプレート73は、図6に示すように、この腰部スイングプレート73の先端側の幅方向の中心位置が、上下方向に沿った軸方向を有する回転軸75に回転可能に連結されており、この回転軸75を回転中心として水平方向に回転可能に取り付けられている。ここで、この腰部スイングプレート73は、この腰部スイングプレート73の長手方向を機台2の長手方向に沿わせた状態から各幅方向に向けて水平に回転できるように構成されており、腰部プレート72の基端側の両側部に取り付けられた首振バー76を把持して移動させることによって、腰部マット71を所定の角度に水平に回動できるようにされている。
【0035】
そして、この腰部スイングプレート73の下方には、図7に示すように、腰部台7の腰部マット71の幅方向の中心位置上方に位置する支点Cを回転中心として幅方向に揺動可能にさせる腰部揺動機構78が設けられている。この腰部揺動機構78は、凹弧状に湾曲した断面L字状の一対のレール体78aを備えており、これらレール体78aを対向させた状態で腰部スイングプレート73の下面の長手方向の両端部に取り付けられている。ここで、これらレール体78aは、支点Cが中心位置となる曲率に湾曲されて形成されている。そして、これらレール体78a内には、円筒状のローラ体である一対のカムフロア78bが回転可能に収容されており、これらレール体78aの湾曲方向に向けて各カムフロア78bが相対的に移動可能となるように固定されている。ここで、これらカムフロア78bは、連結ベース78cの長手方向の両端部に回転可能に取り付けられており、この連結ベース78cの幅方向に沿って連動軸78dが取り付けられている。この連動軸78dは、図6および図7に示すように、この連動軸78dの両端部に取り付けられた回転ハンドル78eを回転させて、この連動軸78dの中間部に取り付けられた台形ねじ78fを回転させることによって、この台形ねじ78fに嵌合された筒状体78gを軸方向に移動させ、この筒状体78gに一端が回動可能に連結され腰部スイングプレート73に他端が回動可能に連結されたリンクプレート78hの他端を連動軸78dの軸方向に移動させて、この腰部スイングプレート73を一対のレール体78aの湾曲方向に沿って、中心位置から、例えば各10°ずつ揺動可能となるように構成されている。
【0036】
ここで、これら腰部プレート72と腰部スイングプレート73と間においても、この腰部マット71を上方に引っ張ることによって所定間隔、例えば11mmほど上昇移動して固定され、この腰部マット71に上方から所定の圧力を加えることによって、この腰部マット71が所定間隔、例えば11mmほど下方にスライド移動する腰部ドロップ機構72aが設けられている。また、これら腰部プレート72と腰部スイングプレート73との間には、この腰部プレート72を腰部スイングプレート73に対して長手方向、すなわち前後方向にスライド移動可能にさせるスライド機構72bが設けられている。このスライド機構72bは、腰部スイングプレート73に取り付けられているハンドル72cを操作して、これら腰部スイングプレート73と腰部プレート72との間の固定を解除させることによって、この腰部プレート72を長手方向にスライド移動させ、ハンドル72cを操作して腰部スイングプレート73と腰部プレート72とを固定することによって、この腰部プレート72のスライド位置が固定される。
【0037】
さらに、脚部台8は、平面視細長矩形状の脚部マット81を備えており、この脚部マット81は、平板状の脚部プレート82上に取り付けられている。そして、この脚部プレート82の下面には、一対の本体フレーム31と踏台部32との間に回動可能に取り付けられた連結フレーム83の先端寄りの位置の上方に下端が多段階に長さ調整可能かつ回動可能に接続された脚部フレーム84の上端が回動可能に接続されている。さらに、この脚部プレート82の下面には、連結フレーム84の中間位置に下端が回動可能に接続された保持手段としてのシリンダ85の上端が回動可能に接続されており、脚部マット81は、脚部フレーム84の下端の回動位置、すなわち係合位置を調整することによって、多段階、例えば3段階に高さ調整可能に構成されているとともに、この高さ調整がシリンダ85によって保持されている。このシリンダ85は、このシリンダ85の長さを調整することによって、脚部マット81を踏台部32側に向けて回動調整できるように構成されている。
【0038】
さらに、連結フレーム83の中間部には、側面視円板状の回転軸86が回転可能に取り付けられており、この回転軸86は、機台2に取り付けられたカム87に沿って移動可能に設置され、この機台2から昇降機構21にて本体フレーム31を略水平な状態から起立動作させる際、およびこの本体フレーム31を起立状態から略水平な状態に戻す動作をさせる際に、このカム87に沿って移動して、本体フレーム31の移動に連動させて脚部マット81および踏台部32を動作させる。
【0039】
次に、上記一実施の形態の治療台1の使用方法について、説明する。
【0040】
<治療準備>
まず、治療台1の昇降機構21の油圧シリンダ22を駆動させて、機台2から治療台本体3を起立させた状態に移動させる。この状態で、この治療台1を用いて脊椎関節等の治療を行う患者を、この治療台1の治療台本体3側に向かせて踏台部に起立させる。このとき、この治療台2の頭部台4を必要に応じ本体フレーム31に沿って移動させて、この頭部台4の位置を調整する。
【0041】
次いで、この治療台1の昇降機構21の油圧シリンダ22を再度駆動させて、治療台本体3が略水平となるように移動させて、この治療台本体3上に患者をうつ伏せで寝そべらせた状態とする。このとき、この治療台本体3の頭部台4の頭部マット41の開口部41aに患者の顔部の鼻や口等を位置させ、この頭部マット41の開口部41aの両側部にて患者の頭部の前面両側を支持させる。また、この治療台本体3の胸部台5の胸部マット51にて患者の胸部前面を支持させるとともに、この治療台本体3の胴部台6の胴部マット61にて患者の胴部前面を支持させる。同時に、この治療台本体3の腰部台7の腰部マット71の開口部71aに患者の股間を位置させ、この腰部マット71にて患者の腰部前面を支持させるとともに、この治療台本体3の脚部台8の脚部マット81にて患者の脚部前面を支持させる。また必要に応じ、治療台1の昇降機構21の油圧シリンダ22を適宜操作して、この治療台1の治療台本体3の基端側を中心として回動させて、この治療台本体3の傾きを調整する。
【0042】
<頭部調整>
そして、必要に応じ、この治療台本体3の頭部台4の頭部マット41にて支持されている患者の頭部の位置や向きを適宜調整する。この場合に、この頭部台4の頭部マット41にて支持されている患者の頭部の高さ位置を調整する場合には、この頭部台4の頭部昇降機構49のペダル49aを操作して、頭部台4の頭部マット41を昇降させて上下調整する。また、この患者の頭部の前後方向の傾きを調整する場合には、頭部台4の昇降ハンドル44を適宜回転させて、この頭部台4の頭部マット41の基端側の連結部43aを回転中心として回動させて、この頭部マット41の長手方向の傾きを調整する。さらに、患者の頭部の横方向の傾きを調整する場合には、頭部台4の首振バー47を把持して頭部マット41を回転軸45を中心として回転させて、この頭部マット41の水平方向の傾きを調整する。
【0043】
さらに、患者の頭部を左右方向に捩じって向きを調整する場合には、頭部台4の回転ハンドル48eを適宜回転させる。このとき、この回転ハンドル48eを回転することによって、連動軸48dおよび台形ねじ48fが回転し、この台形ねじ48fに取り付けられている筒状体48gが軸方向に移動し、この筒状体48gの移動によってリンクプレート48hを介して頭部スイングプレート43が一対のレール体48aの湾曲方向に沿って揺動して、頭部マット41が支点Aを中心として幅方向に揺動し、この頭部マット41の幅方向の捩じれを調整する。
【0044】
<胸部および胴部調整>
また、必要に応じ、治療台本体3の胸部台5の胸部マット51にて支持されている患者の胸部位置および、この治療台本体3の胴部台6の胴部マット61にて支持されている患者の胴部位置を適宜調整する。このとき、これら胸部マット51および胴部マット61にて支持されている患者の胸部および胴部の傾きを調整する場合には、ペダル65cを踏んでガスシリンダ65を適宜進退操作して、この胸部台5の胸部マット51および胴部台6の胴部マット61のそれぞれを第1の支点Bを回転中心として回動させ、これら胸部マット51および胴部マット61の傾きを調整する。この場合に、この治療台本体3上に載っている患者が妊婦や肥満等で、この患者の腹部が大きく膨らんで肥大している場合には、べダル65cを踏んでガスシリンダ65を適宜進退操作して、第1の支点Bを中心として胴部台6の胴部マット61を下方に向けて大きく回動させて、これら胸部台5の胸部マット51および胴部台6の胴部マット61にて患者の胸部および胴部を適切に支持させる。
【0045】
このとき、この第1の支点Bを中心とした胸部マット51および胴部マット61の傾き調整については、これら胸部マット51および胴部マット61の傾きを調整した状態が、スイングボックス63の溝部63a内の被係合部65dへのストッパ64の係合によって保持されている。そこで、この治療台本体3上に載っている患者が妊婦や肥満等で、この患者の腹部が大きく膨らんで肥大している場合に、これら胸部マット51および胴部マット61をさらに下方に向けて移動させたい場合においては、ストッパ64を下方へ回動させ、このストッパ64によるスイングボックス63の溝部63a内の被係合部65dへの係合を解除させてから、胸部台5の操作レバー53を適宜操作して被係合部65dをスイングボックス63の溝部63a内の後端側へスライド移動させて、胸部マット51および胴部マット61を第1の支点Bを回転中心としてさらに下方に回動させて、胸部台5の胸部マット51および胴部台6の胴部マット61にて患者の胸部および胴部を適切に支持させる。
【0046】
<腰部調整>
また、必要に応じ、治療台本体2の腰部台7の腰部マット71にて支持されている患者の腰部の位置や向きを適宜調整する。この場合に、この腰部台7の腰部マット71にて支持されている患者の腰部の前後方向の傾きを調整する場合には、この腰部台7の摘み74を適宜操作して、この腰部台7の腰部マット71の先端側の連結部73aを中心として回動させて、この腰部マット71の長手方向の傾きを調整する。また、この患者の腰部を支持する腰部マット71の前後方向の位置を調整する場合には、ハンドル72cを解除方向に回転させてスライド機構72bにて腰部マット71を前後方向にスライド移動できる状態にしてから、腰部マット71を前後方向にスライド移動させて位置調整した後に、ハンドル72cを逆方向である固定方向に回転させて、スライド機構72bによる腰部マット71の前後方向のスライド移動を固定させて調整する。また、この患者の腰部の横方向の傾きを調整する場合には、腰部台7の首振バー76を把持して腰部マット71を回転軸75を中心として回転させて、この腰部マット71の水平方向の傾きを調整する。さらに、頭部台4の頭部マット41による患者の頭部の左右方向への捩じり調整に対応させて、この患者の腰部を左右方向に捩じって向きを調整する場合には、腰部台7の回転ハンドル78eを適宜回転させる。このとき、この回転ハンドル78eを回転させることによって、連動軸78dおよび台形ねじ78fが回転し、この台形ねじ78fに取り付けられている筒状体78gが軸方向に移動し、この筒状体78gの移動よってリンクプレート78hを介して腰部スイングプレート73が一対のレール体78aの湾曲方向に沿って揺動して、腰部マット71が支点Cを中心として幅方向に揺動し、この腰部マット71の幅方向の捩じれを調整する。
【0047】
<脚部調整>
さらに、必要に応じ、治療台本体3の脚部台8の脚部マット81にて支持されている患者の脚部位置を適宜調整する。この場合に、この脚部台8の脚部マット81にて支持されている患者の脚部の高さ位置を調整する場合には、この脚部台8の脚部マット81等を把持し、この脚部マット81をシリンダ85に抗して進退させたり、この脚部マット81を支持する脚部フレーム84の下端の回動位置を適宜ずらしたりして、この脚部マット81の高さ位置および前後方向の位置を適宜調整する。
【0048】
<治療>
上記のように、治療台1の治療台本体3上にうつ伏せに寝そべらせた患者の脊椎の形状、捩じれおよび状態等に合わせて、この治療台本体3の頭部台4、胸部台5、胴部台6、腰部台7および脚部台8それぞれの位置を調整した状態で、この患者の適正部位やつぼを医師等が押したり引っ張ったりして、この患者の頸椎・胸椎・腰椎等の脊椎関節の治療を行う。
【0049】
このとき、この患者の適正部位やつぼ等を押して治療する際に頭部ドロップ機構42aを用いる場合には、頭部マット41を上方に引っ張って上昇移動させて固定してから、この頭部マット41に載った患者の頭部のつぼ等に所定の圧力を加えることによって、この頭部マット41を所定間隔ほど下方へドッップ移動させる。同様に、胸部ドロップ機構52aを用いる場合には、胸部マット51を上方に引っ張って上昇移動させて固定してから、この胸部マット51に載った患者の背中のつぼ等に所定の圧力を加えることによって、この頭部マット51を所定間隔ほど下方へドッップ移動させる。さらに、腰部ドロップ機構72aを用いる場合には、腰部マット71を上方に引っ張って上昇移動させて固定してから、この腰部マット71に載った患者の腰のつぼ等に所定の圧力を加えることによって、この腰部マット71を所定間隔ほど下方へドッップ移動させて、治療を行う。
【0050】
前述のように、本発明の治療台1は、治療台本体3の胴部台6の胴部マット61が、この胴部台6より頭側に位置する頭部台4と胸部台5との間の第1の支点Bを回転中心として回動可能に構成されており、この第1の支点Bとは異なる第2の支点Dに先端側が回動可能に固定されたガスシリンダ65の基端側の被係合部65dが、スイングボックス63の溝部63a内において胴部マット61の前後方向に沿って移動可能に収容されて取り付けられているため、この胴部マット61の第1の支点Bを回転中心とした回動がガスシリンダ65にて保持されているとともに、このガスシリンダ65の進退操作によって、この胴部マット61の第1の支点Bを回転中心とした回動調整ができる。また、このガスシリンダ65の基端側の被係合部65dをスイングボックス63の溝部63a内でスライド移動させることによって、ガスシリンダ65にて胴部マット61の回動を調整した位置から、さらに下方に向けて回転調整できる。このため、この胴部台6の胴部マット61を第1の支点Bを回転中心としてガスシリンダ65にて回動させて下方に移動させた状態において、さらに必要に応じ、被係合部65dをスイングボックス63の溝部63a内でスライド移動させることにより、この胴部マット61を第1の支点Bを回転中心としてさらに下方に回動できるため、この胴部マット61の下方への回動調整をより適切に調整できる。
【0051】
したがって、例えば妊婦や肥満等の腹部が大きく膨らんで肥大した患者等であっても、この患者の肥大した腹部を胴部マット61にて支持しつつ、この患者の頭部、胸部および腰部を頭部台4の頭部マット41、胸部台5の胸部マット51および腰部台6の腰部マット61にて適切に支持でき、この腹部が肥大した患者の脊椎の位置や形状に対応させて頭部台4および腰部台7を治療に最適な位置に移動することができるから、より適切な治療がしやすく、治療台1の使い勝手を向上できる。
【0052】
特に、この治療台1の胴部台6の胴部マット61をガスシリンダ65の進退操作にて第1の支点Bを中心として回動させて患者の適切な位置に移動させるとともに、この治療台1の頭部台4、胸部台5、腰部台7および脚部台8のそれぞれを患者の適切な位置に移動させた状態から、この治療台1の胴体台6のストッパ64によるスイングボックス63の溝部63a内の被係合部65dへの係合を解除させることによって、この被係合部65dがスイングボックス63の溝部63a内の後側に向けてスライド移動可能となり、この胴部マット61を第1の支点Bを回転中心として、さらに下方に回動させることができる。したがって、これら頭部台4、胸部台5、胴部台6、腰部台7および脚部台8のそれぞれの位置を調整した状態から、胴部台6の胴部マット61をさらに下方に向けて移動させて回動させることができるため、様々な体型の患者に対応させて治療台1を用いることができ、この治療台1の使い勝手をさらに向上できる。
【0053】
さらに、胴部台6の胴部マット61の第1の支点Bを中心とした回動については、この胴部台6の胴部マットフレーム62とリンクフレーム66との間に取り付けられたスプリング68による弾性力によって、この胴部マット61を第1の支点Bを中心として適宜回動させた状態がある程度維持されるとともに、この胴部台6の胴部マットフレーム62と機台2との間に取り付けられたガスシリンダ65によって、この胴部マット61を第1の支点Bを中心として適宜回動させた状態が保持される。したがって、この胴部台6の胴部マット61の位置を第1の支点Bを中心に回動調整して保持した状態で、この胴部台6以外の頭部台4、胸部台5、腰部台7および脚部台8のそれぞれを患者の適切な位置に移動させることができる。また、これら頭部台2、胸部台5、腰部台7および脚部台8のそれぞれを適切な位置に移動させた状態において、胴部台6のスイングボックス63の溝部63a内の被係合部65dへのストッパ64の係合を解除させることによって、ガスシリンダ65の基端側の被係合部65dがスイングボックス63の溝部63a内でスライド移動可能となり、この胴部台6の胴部マット61を第1の支点Bを回転中心として、さらに下方または上方に向けて回動できるから、ガスシリンダ65による調整とスイングボックス63による調整との、2段階に亘って胴部マット61を調整できるため、より適切な治療がしやすくなる。
【0054】
また、治療台1の治療台本体3上に患者を寝そべらせた場合に、この患者の脊椎の上端部を支持する頭部台4の頭部マット41と、この患者の脊椎の下端部を支持する腰部台7の腰部マット71のそれぞれが、これら頭部マット41および腰部マット71の幅方向の中心位置上方の支点A,Cを中心として幅方向に揺動可能に構成されているため、例えば、頭部台4の頭部マット41を患者の脊椎節の形状や曲がり等に対応させて揺動させた場合に、この頭部台4の頭部マット41の揺動に追従させたり、この頭部マット41の揺動と対称的に、腰部台7の腰部マット71を揺動させたりすることができる。このため、患者の脊椎の形状、特に曲がり具合や捩じれ具合等に対応させて、これら頭部台4の頭部マット41および腰部台7の腰部マット71をより適切な位置に移動することができるから、より適切な治療がしやすく、使い勝手を向上できる。
【0055】
さらに、胴部台6の前後方向を水平に位置させた状態で、この胴部台6の前側に位置する胸部台5の取付プレート52の前後方向を、胴部台6側に向けて下方に傾斜させて取り付けたことにより、この取付プレート52に取り付けられている胸部マット51が、頭部台4側に向けて下方に傾斜した斜め方向に沿って昇降可能となる。このため、患者の胸部の大きさに対応させて胸部マット51を昇降させて高さを調整できると同時に、この胸部マット51にて支持する患者の胸部に対し、治療する際に加える力を適切に加えることができる。よって、より様々な体型の患者に対しても、より適切な治療がしやすくなるため、使い勝手をより向上できる。
【0056】
また、頭部台4の頭部マット41の高さ調整にて調整される頸椎(1C〜7C)については、この頸椎を支える他の骨が存在しない。このため、胸部台5の胸部マット51の高さを調整して、この頸椎の傾斜角度を改めて調整する必要がある。さらに、胸椎(1D〜8D)は肋骨および胸骨に跨るため、上方に移動(スライド)しない。このため、胸椎には、体幹と同様の落下作用(下方へのスライド移動:ドロップ作用)を与える必要があり、頸椎への落下作用に連動させた落下作用が必要となる。すなわち、これら胸椎および頸椎については、これら胸椎および頸椎が落下作用時に共に落下しない場合には、固定したサブラクセイション(ズレ又は歪みによって神経伝達異常を発生させている椎骨)に対して大きな力が加わってしまい、落下作用によるダメージが生じるおそれがある。そこで、上述のように、胸部台5の胸部マット51の前後方向の傾斜角度を、胴部台6側に向けて下方に傾斜させ、この状態で上下方向に昇降可能としたことにより、この胸部台5の胸部マット5の高さ調整にて調整される頸椎および上部胸椎(1D〜3D)のそれぞれに対して落下作用による効果を期待できる。この場合に、胸部台5の胸部マット51の胴部台6側に位置する側を回転中心(支点)としたドロップ機構52aとすることにより、頸椎および胸椎が連結されていることから、これら頸椎および胸椎のいずれかの椎骨に落下作用を与えることによって、他の頸椎および胸椎に対しても落下作用による効果を期待できる。
【0057】
次に、本発明の他の実施の形態による治療台について図8および図9を参照して説明する。
【0058】
この図8および図9に示す治療台1aは、図1ないし図7に示す治療台1と略同様の構成であるが、この治療台1aの頭部台4より前端側の本体フレーム31上に、治療者が腰掛ける等するための腰掛マット9が取り付けられたものである。具体的に、この腰掛マット9は、一対の本体フレーム31上に橋渡しされて固定されており、前端側から後端側に向けて徐々に広がる平面視略台形状に形成されている。さらに、この腰掛マット9の後端側の中央部には、上下方向に貫通して切り欠かれた平面視略凹状の切欠凹部9aが設けられている。そして、この腰掛マット9は、治療台1の略水平状態の治療台本体3上にうつ伏せに寝そべった患者の、特に頭部の治療を行う場合等において、治療者が腰掛ける等して姿勢や状態を安定させて、患者の治療を正確かつ確実に行うことができるようにするために設けられている。
【0059】
また、頭部台4の頭部マット41の開口部41aの開口内縁が徐々に開口したテーパ状に形成されたテーパ面41bとされているとともに、この頭部マット41の後側に位置する各面が内側に進むにつれて後端側に突出する傾斜面41cとされており、この頭部台4の頭部マット41を回転軸45を回転中心として水平方向に回転させて調整した際に、この頭部マット41が胸部マット51に接触等しにくくなるように構成されている。一方、胸部台5の胸部マット51の前端側に位置する面は、上方から下方に向けて後側に傾斜した傾斜面51aとされており、この胸部台5の胸部マット51を第1の支点Bを回転中心として下方に回動させた場合に、この胸部マット51の前側の下端部が頭部マット41と接触等しにくくなるように構成されている。
【0060】
なお、上記各実施の形態では、治療台1の治療台本体3上に患者を寝そべらせた状態で、この治療台本体3の頭部台4、胸部台5、胴部台6、腰部台7および脚部台8の順に、これら頭部台4、胸部台5、胴部台6、腰部台7および脚部台8の位置をそれぞれ調整したが、これら頭部台4、胸部台5、胴部台6、腰部台7および脚部台8を調整する順については、患者の体型や状態等に合わせて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 治療台
4 頭部台
5 胸部台
6 胴部台
7 腰部台
65 ガスシリンダ(保持手段)
64 ストッパ(固定手段)
68 スプリング(回動調整手段)
B 第1の支点
D 第2の支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の頭部を支持する頭部台と、患者の胴部を支持する胴部台と、患者の腰部を支持する腰部台を備え、これら頭部台、胴部台および腰部台が長手方向に並べて配設された治療台であって、
前記胴部台は、この胴部台の頭部台側に位置する第1の支点を中心として略水平な位置から下方に向けて回動可能に構成され、
前記第1の支点とは異なる第2の支点に一端が回動可能に固定され長手方向を有する進退可能な保持手段を有し、
この保持手段の他端は、前記胴部台の前後方向に沿って移動可能となるように前記胴部台に回転可能に取り付けられている
ことを特徴とした治療台。
【請求項2】
胴部台には、保持手段の他端の前記胴部台の長手方向に沿った移動を固定する固定手段が設けられている
ことを特徴とした請求項1記載の治療台。
【請求項3】
胴部台には、第1の支点との間に所定のテンションを与える回動調整手段が設けられている
ことを特徴とした請求項1または2記載の治療台。
【請求項4】
頭部台および腰部台は、これら頭部台および腰部台の幅方向の中心位置上方を中心として幅方向に揺動可能に構成されている
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか記載の治療台。
【請求項5】
患者の胸部を支持する胸部台を備え、
この胸部台は、頭部台と胴部台との間に配設され、前記頭部台側に向けて下方に傾斜した斜め方向に昇降可能に構成されている
ことを特徴とした請求項1ないし4いずれか記載の治療台。
【請求項6】
患者の頭部を支持する頭部台と、患者の腰部を支持する腰部台とを備え、これら頭部台および腰部台が長手方向に並べて配設された治療台であって、
前記頭部台および腰部台は、これら頭部台および腰部台の幅方向の中心位置上方を中心として幅方向に揺動可能に構成されている
ことを特徴とした治療台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−224361(P2011−224361A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83046(P2011−83046)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(303014818)株式会社岩崎製作所 (4)
【出願人】(507410423)
【Fターム(参考)】