説明

治療支援システム及び医用画像処理装置

【課題】高密度焦点式超音波療法(HIFU:High Intensity Focused Ultra sound)における残治療領域を可視化する治療支援システムおよび手術支援方法を提供する。
【解決手段】超音波プローブを有しHIFUにより被検体の治療を行う超音波プローブ37と、MRI装置1と、MRI装置1内部に配置され被検体24の超音波画像を撮像可能な超音波診断治療装置40と、超音波音波プローブ37の位置を検出する三次元位置検出装置を備える治療支援システム10であって、治療後に、造影前後のMRI撮像を行ってえられた複数の画像を減算することにより残治療領域を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療支援システム及び医用画像処理装置に係り、特に、高密度焦点式超音波療法(HIFU:High Intensity Focused Ultra sound)における残治療領域を可視化する手術支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
HIFUは、焦点を高密度に集束した超音波を用いて、侵襲性の低い治療を行うことが可能である。例えば、前立腺は直腸内に配置した超音波発生器を用いて治療可能である。特許文献1には、HIFUによる超音波治療装置が開示されている。この超音波治療装置は、治療用の連続波の発生および超音波断層像を得るためのパルス波の発生という二つの役割を併せもつ集束型超音波発生源を含む治療用プローブ、および治療用プローブに接続された超音波診断装置と集束超音波発生用の電源、超音波を反射する尿道用カテーテルから構成され、温熱療法に供せられる。また、HIFU治療領域をモニタリングする手法として、MRIが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−507857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に治療前にターゲットとなる病変領域(例えば腫瘍領域)を確認する方法として、造影MRI撮像が行われる。造影MRI画像は、腫瘍領域のみが高輝度に描出されることから、正常組織との境目が一目で分かる。しかし、HIFU照射領域をMRIでモニタリングする場合においても高輝度で描出されることから、病変領域及びHIFU照射領域の双方共に高輝度描出され、造影MRI画像で描出される高輝度画像内に埋もれてしまい、治療領域が特定できない問題があった。この問題について、図13に基づいて更に詳しく説明する。図13は、従来のHIFU治療プロトコルを示す説明図である。例えば、治療前に造影前後のTW画像1301、T2W画像1303を撮像する。撮像の目的は、造影剤で染色される病変領域(例えば腫瘍領域)1302やそれを含む炎症領域1304を描出することである。そして、造影MRI画像をナビゲーション画像として用いたナビゲーション治療1305時において、病変領域(例えば腫瘍領域)腫瘍領域1302をターゲットとしてHIFU照射を行う。1回に行うHIFU照射領域1306は小さい範囲なので、複数回の治療(HIFU照射)を繰り返す。治療後には治療前と同様に造影前後のTW画像1308、T2W画像1309を撮像し、これらを視認することで治療効果を確認する。ここで、ターゲットとなる病変領域(例えば腫瘍領域)及びHIFU照射領域が、共に高輝度に検出されるため、残治療領域1307が存在したとしてもその抽出・切り分けが困難という問題があった。
【0005】
本発明は、HIFU照射治療後の被検体画像のように、被検体画像内において治療後領域と病変領域と抽出・切り分けが困難な場合における残治療領域の特定・可視化を容易にする治療支援システムおよび医用画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る治療支援システムは、被検体の病変部位に対して加熱又は凍結処理を行う治療手段と、及びその治療手段を駆動・制御する駆動手段と、を備えた治療装置と、前記被検体の病変部位を撮像する医用画像撮像装置と、前記医用画像撮像装置により、前記被検体に対して行われた加熱又は凍結処理の結果、組織変性が生じた部位が撮影された領域と、前記加熱又は凍結処理が施されていない部位が撮影された領域と、のコントラストが相対的に高い第一医用画像と、前記加熱又は凍結処理により組織変性が生じた部位及び前記病変部位が撮影された領域と、前記加熱又は凍結処理により組織変性が生じていない、前記病変部位の周辺部位が撮影された領域と、のコントラストが相対的に高い第二医用画像と、を撮像し、前記第一医用画像及び前記第二医用画像を差分処理することにより、前記病変部位が撮像された領域のうち、前記加熱又は凍結処理が施された部位を除く領域が描出された差分画像を生成する差分画像生成手段と、前記差分画像を表示する画像表示手段と、を備えることを特徴とする。本明細書でいう「コントラストが相対的に高い」とは、被検体画像中において、コントラストの対比が行われる領域の画素値が、一見して視認できる程度に異なることをいう。
【0007】
また、本発明に係る医用画像処理装置は、組織変性が生じた部位が撮影された領域と、前記加熱又は凍結処理が施されていない部位が撮影された領域と、のコントラストが相対的に高い第一医用画像と、前記加熱又は凍結処理により組織変性が生じた部位及び前記病変部位が撮影された領域と、前記加熱又は凍結処理により組織変性が生じていない、前記病変部位の周辺部位が撮影された領域と、のコントラストが相対的に高い第二医用画像と、を撮像し、前記第一医用画像及び前記第二医用画像を差分処理することにより、前記病変部位が撮像された領域のうち、前記加熱又は凍結処理が施された部位を除く領域が描出された差分画像を生成する差分画像生成手段と、前記差分画像を表示する画像表示手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、HIFU照射治療後の被検体画像のように、被検体画像内において治療後領域と病変領域と抽出・切り分けが困難な場合であっても、残治療領域の特定・可視化が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る治療支援システム10の全体構成を示す模式図
【図2】超音波診断治療装置40の構成を示す模式図
【図3】集束超音波を用いた治療の概要を示す説明図であって、(a)は、集束超音波304がターゲット303に集束する様子を示し、(b)は、集束超音波の直径を示し、(c)は、ターゲットの位置を順次移動させながら治療領域全域に集束超音波を照射する状態を示す。
【図4】治療支援システム10における誘導支援表示機能を示す説明図
【図5】MRI、超音波交互撮像時における撮像断面構成図
【図6】治療支援プログラムの構成を示すブロック図
【図7】本実施形態に係る治療支援システム10における残治療領域の描出・特定方法を示す説明図
【図8】本実施形態に係る治療支援システムの処理の流れを示すフローチャート
【図9】術前シミュレーションのGUI表示例を示す模式図
【図10】画像補償に用いられる(拡大・)縮小率の一例を示す模式図
【図11】手術・治療時のGUI表示例を示す模式図
【図12】治療後のMRI撮像および残治療領域描出のGUI表示例を示す模式図
【図13】従来のHIFU治療プロトコルを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。同一機能を有する構成及び同一の処理内容の手順には同一符号を付し、その説明の繰り返しを省略する。
【0011】
まず、図1に基づいて、本発明の実施形態に係る治療支援システム10の全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係る治療支援システムの全体構成を示す模式図である。本実施形態に係る治療支援システム10は、主に、核磁気共鳴撮像装置(以下、MRI装置と称する)1と超音波診断治療装置40とが、パーソナルコンピュータ19に連結される。そして、超音波診断治療装置40に接続された超音波プローブ37に取り付けられたポインタ27を位置検出デバイス9が連続的に追随し、ポインタ27の位置情報を転送することで、MRI(またはCT)装置1と超音波プローブ37の位置とが連結される。パーソナルコンピュータ19は、MRI装置1からのMRI画像と、超音波診断治療装置40からの超音波画像と、を取得し、それらを用いたナビゲーション画像を生成・表示する。
【0012】
パーソナルコンピュータ19に接続された映像記録装置34は、術中の動画像(映像信号)を同時記録する。モニタ38には、超音波診断治療装置40からの超音波画像が表示される。
【0013】
図1のMRI装置1は、例えば、垂直磁場方式永久磁石MRI装置であり、垂直な静磁場を発生させる上部磁石3と下部磁石5、これら磁石を連結するとともに上部磁石3を支持する支柱7、位置検出デバイス9、アーム11、モニタ13、14、モニタ支持部15、基準ツール17、MRI装置1の制御を行う制御部パーソナルコンピュータ19、ベッド21、制御部23などを含んで構成されている。MRI装置1の図示しない傾斜磁場発生部は、領斜磁場をパルス的に発生させる。更に、MRI装置1は、静磁場中の被検体24に核磁気共鳴を生じさせるための図示しないRF送信器、被検体24からの核磁気共鳴信号を受信する図示しないRF受信器を備える。
【0014】
位置検出デバイス9は、2台の赤外線カメラ25と、赤外線を発光する図示しない発光ダイオードを含んで構成され、断層面指示デバイスであるポインタ27の位置及び姿勢を検出するものである。また、位置検出デバイス9は、アーム11により移動可能に上部磁石3に連結され、MRI装置1に対する配置を適宜変更するものである。モニタ13は、術者29が把持するポインタ27により指示された被検体24の断層面の画像を表示するもので、モニタ支持部15により、赤外線カメラ25と同様に上部磁石3に連結されている。基準ツール17は、赤外線カメラ25の座標系とMRI装置1の座標系をリンクさせるもので、3つの反射球35を備え、上部磁石3の側面に設けられている。パーソナルコンピュータ19には、赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の情報が、術具位置データとして、例えば、RS232Cケーブル33を介して送信される。制御部23は、ワークステーションで構成され、図示しないRF送信器、RF受信器などを制御する。また、制御部23は、パーソナルコンピュータ19と接続されている。パーソナルコンピュータ19では、赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の位置をMRI装置1での撮像範囲の位置データに変換し、制御部23へ送信する。位置データは、撮像シーケンスの撮像断面へ反映される。新たな撮像断面で取得されたMRI画像はモニタ13に表示される。また、MRI画像は映像記録装置34に同時記録される。例えば断層面指示デバイスであるポインタ27を穿刺針などにとりつけ、穿刺針のある位置を常に撮像断面とする様に構成した場合、モニタ13には穿刺針を常に含む断面が表示されることになる。また、本実施形態のように、超音波プローブ37に取り付けた場合には、超音波プローブ37から照射される集束超音波の焦点を含む断面が表示される。ポインタ27の位置検出の方式には、上記に限らず、機械式、光学式、磁気式、超音波式などの方式を用いてもよい。
【0015】
また、超音波診断治療装置40はMRI装置1を制御するパーソナルコンピュータ19と接続されており、位置を検出するためのポインタ27が取り付けられた超音波プローブ37で得られた超音波画像を専用のモニタ38に映し出すだけでなく、パーソナルコンピュータ19に超音波画像を転送することで、画像処理が行われる。画像処理された超音波画像もモニタ13、14に映し出される。超音波プローブ37はMRI装置1の磁場内でも作動可能なセラミックなどの非磁性体で形成されている。
【0016】
次に、図2に基づいて、上記超音波診断治療装置40の構成について説明する。図2は、超音波診断治療装置40の構成を示す模式図である。超音波診断治療装置40は、被検体24内に超音波を送受信し得られた反射エコー信号を用いて診断部位について2次元超音波画像或いは3次元超音波画像を形成して表示するとともに、被検体24に集束超音波を照射して超音波治療を行うものである。超音波診断治療装置40は、被検体24に超音波を照射し受信する振動子素子を備えた超音波プローブ37と、超音波信号を送受信する超音波送受信部204と、受信信号に基づいて2次元超音波画像(Bモード画像)或いは3次元超音波画像を構成する超音波画像構成部205と、超音波画像構成部205構成された超音波画像を表示する表示部206(図1のモニタ38に相当する)と、被検体24に照射する超音波の量を切り換えるHIFUコントローラ209と、各構成要素を制御する制御部207と、制御部207に指示を与えるコントロールパネル208とから構成されている。HIFUコントローラ209は、診断装置として動作させる場合は被検体24に照射する超音波の量を弱め、治療装置として動作させる場合は被検体24に照射する超音波の量を強めるように、照射する超音波の大きさを制御する。なお、この例では、超音波診断装置と超音波治療装置とを一つの超音波診断治療装置として構成したが、超音波診断装置と超音波治療装置を別々の装置として構成しても良い。
【0017】
次に、超音波診断治療装置40から照射される集束超音波を用いた治療の概要について、図3を基に説明する。図3は、集束超音波を用いた治療の概要を示す説明図であって、(a)は、集束超音波304がターゲット303に集束する様子を示し、(b)は、集束超音波の直径を示し、(c)は、ターゲットの位置を順次移動させながら治療領域全域に集束超音波を照射する状態を示す。
【0018】
図3の(a)に示されるように、超音波プローブ37からの集束超音波304は、ある1点のターゲット303に集束するように照射が行われる。この集束超音波304の1回の照射により焼灼される範囲は、(b)に示すように、直径Φが5〜10mmである。したがって、集束超音波による治療を行う際は、(c)に示すように、集束超音波の照射位置であるターゲット303の位置を順次移動させて、治療対象となる病変領域302の全域に集束超音波を照射する。ここで、ARFI(Acoustic Radiation Force Impulse)による焦点可視化を行うことで理想的な焼灼領域に対して、生体組織内の実際の影響領域が算出され、三次元計測を行うことで立体的な治療予定領域を算出できる。
【0019】
次に、本実施形態に係る治療支援システム10における誘導支援表示機能について図4に基づいて説明する。図4は、治療支援システム10における誘導支援表示機能を示す説明図である。例えば被検体24は手術台(図1のベッド21に相当する)上に固定されており、超音波プローブ37または治療機器を用いて患部の治療を行う。本例では、治療機器として集束超音波を照射可能な超音波プローブ37を用いており、非侵襲治療を行っている様子を示している。超音波プローブ37は、位置検出デバイス9に取り付けられた赤外線カメラ25にてポインタ27位置からプローブ位置を検出し、アキシャル(Axial)404、サジタル(Sagittal)405、コロナル(Coronal)406の各誘導支援画像上404〜406にそれぞれ表示される。誘導支援画像404〜406の他にはVolume Rendering画像407等を任意に設定できる。術者29は、手術前に、病変領域である特定領域414〜416および警告領域・マージン417〜419をAxial404、Sagital405、Coronal406の各誘導支援画像にそれぞれ設定しておく。誘導支援画像404〜406上には、超音波プローブの位置408〜4を重畳表示する。誘導支援画像404〜406上には、さらに術具に応じた治療予定領域411〜413を表示する。治療予定領域411〜413は、中心部(図中の414〜413内の網掛け部分)が病変領域であり、その周囲の黒丸部分が警告領域・マージン部分を示す。
【0020】
また、例えば、誘導支援画像404〜406上の治療予定領域411〜413が警告領域内に入った場合に、誘導支援画像404〜406や治療パラメータを自動的に変更する機能も有している。その他、上記条件を手術環境に応じて変更することができる。
【0021】
次に、図5に基づいて、MRI、超音波交互撮像時の処理を説明する。図5は、MRI、超音波交互撮像時における撮像断面構成図である。被検体24に対して術者29が超音波プローブ37による画像情報を用いて治療対象(ターゲット)に対して治療が開始される。画像情報はモニタ13、14、38に表示される。ここで、超音波プローブ37には位置を検出するためのポインタ27が取り付けられており、位置検出デバイス9を用いてターゲットの位置に追従する。ターゲットの位置情報を用いて超音波プローブ37及びそれから照射される超音波502の位置を追従し、超音波502の位置をMRI装置に送ってその位置におけるMRI画像を撮像する。これにより、超音波プローブ37から照射される超音波202を含む超音波撮像断面501の超音波画像とMRI画像とを得ることが可能になり、同一被検体の同一断面を撮像した超音波画像とMRI画像とを得ることができる。これらをそれぞれ交互に撮像を行い画像情報を取得することで、MRI装置1によるフルオロスコピー撮像によるリアルタイム動画像の撮像面を、超音波撮像断面501と一致させることができる。但し、MRI装置1と超音波診断治療装置40を交互に撮像するシステムは、各装置の撮像時間を干渉することなく規程時間毎に交互に撮像するものである。また、超音波診断治療装置は通常の撮像の他に血流方向を描出する撮像と組織の硬さを計測する方法も必要に応じて併用される。
【0022】
次に図6に基づいて、本実施形態に係る治療支援システムに用いられる治療支援プログラムについて説明する。図6は、治療支援プログラムの構成を示すブロック図である。治療支援プログラムは、パーソナルコンピュータ19の図示しない記憶装置に格納され、パーソナルコンピュータ19に備えられた図示しないメモリにロードされてCPUにより実行されることにより、各プログラムとパーソナルコンピュータ19を構成するハードウェアとが協働してプログラムが備える機能を実現する。
【0023】
治療支援プログラムは、被検体24の3次元ボリュームデータを取得する画像データ取得部19aと、3次元ボリュームデータに基づいて3次元ボリューム画像(以下「3D画像」という)を3次元再構成する画像再構成部19bと、種類が異なる3次元画像の加減算処理する画像加減算処理部19cと、被検体画像から病変部位が撮影された病変領域を含む特定領域を抽出する特定領域抽出部19dと、抽出した特定領域を、予め定められた拡大率又は縮小率に基づいて拡大又は縮小処理を行い画像補償を行う画像補償部19eと、位置検出デバイス9からの位置情報に基づいて、超音波プローブ37及び被検体24の実空間上の位置をもとめ、これをMRI装置1が使用可能な検出空間の座標系に変換し、更に検出空間の座標系を被検体の再構成画像上の座標系に変換して、被検体の再構成画像の座標と、超音波プローブ37及び被検体24の実空間上の座標と、を一致させる位置検出処理部19fと、術具の経路、特に本実施形態では、超音波プローブ37の芯線の延長方向や先端位置(集束超音波の焦点位置)を、位置検出デバイス9が求めたポインタ27の傾き等のパラメータに基づいて算出したり、実際の治療プローブの位置から集束超音波の予想経路を求めたり、また推奨される集束超音波の経路や治療プローブの位置を算出する経路算出部19gと、被検体の再構成画像に特定領域の位置や超音波プローブ37の位置を重畳表示したナビゲーション画像を生成するナビゲーション画像生成部19hと、特定領域から治療予定領域がはみ出している場合、及び治療予定領域が組織変性を禁止する禁忌領域と重複している場合に警告を行う警告部19iと、特定領域から治療済領域及び治療予定領域を差分して、残治療領域を算出する差分画像生成部19jと、ナビゲーション画像や再構成画像をモニタ13、14へ表示制御する表示制御部19kと、治療経過情報を基にログ情報を生成するログ生成部19lと、そのログ情報を記憶するログ記憶部19mと、禁忌領域の設定を行う禁忌領域設定部19nと、を備える。
【0024】
本実施形態では、画像データ取得部19aは、MRI装置1から3次元ボリュームデータを取得し、画像再構成部19bが3D画像を再構成するが、予め撮像された3次元ボリュームデータを、図示しない記憶装置に格納しておき、画像再構成部19bが記憶された3次元ボリュームデータの再構成処理を行ってもよい。この場合、画像データ取得部19aは必須ではない。また、本実施形態では、画像データ取得部19aは、超音波診断治療装置40から2次元のリアルタイム画像データも取得する。
【0025】
次に、本実施形態に係る治療支援システム10における残治療領域を描出・特定方法について、図7に基づいて説明する。図7は、本実施形態に係る治療支援システム10における残治療領域の描出・特定方法を示す説明図である。
【0026】
例えば、治療前に非造影のT強調画像(TW)701、T強調画像(TW)702を撮像し、病変領域(例えば腫瘍領域)703と炎症領域704とを描出する。この2つの画像701、702を加算することでT強調画像701に病変領域(腫瘍領域)703と炎症領域704を重畳した加算画像705が得られる。ただし、この加算画像705に描出された病変領域及び炎症領域を含む領域706は治療領域としては大きすぎる。これは、炎症領域は正常組織であるため、治療必須領域とは必ずしもならないためである。そこで、予め算出しておいた拡大率または縮小率を用いて領域706のみを画像拡大又は縮小する。通常、領域706に対して治療必須領域は小さいので、画像縮小処理を行うが、これは、負の拡大率を用いて画像拡大処理することと同義である。よって、本実施形態では、(拡大・)縮小率と記載する。T強調画像(非造影)+T強調画像707をナビゲーション治療709に適用し、病変部位(腫瘍)に対する治療を実施する。治療後かつ造影剤の投与前のT強調画像710は、造影剤を用いていないことから、HIFU治療範囲712のみを描出することができる。その後に造影剤を併用してT強調画像を撮像すると、HIFU治療領域712と病変領域(腫瘍領域)715の両方を高輝度に描出されたT強調画像711を撮像できる。これら2つの画像710、711の差分画像714を生成することで、残治療領域713を描出することができる。必要に応じてこの画像をナビゲーションに転送して追加治療を行うこともできる。
【0027】
次に、図8〜図12に基づいて、本実施形態に係る治療支援システム10による処理について説明する。図8は、本実施形態に係る治療支援システム10の処理の流れを示すフローチャートである。図9は、術前シミュレーションのGUI表示例を示す模式図である。図10は、画像補償に用いられる(拡大・)縮小率の一例を示す模式図である。図11は、手術・治療時のGUI表示例を示す模式図である。図12は、治療後のMRI撮像および残治療領域描出のGUI表示例を示す模式図である。本実施形態では、被検体24の病変部位(例えば腫瘍)を、集束超音波により加熱治療を行う場合を例に挙げて説明する。
【0028】
治療支援システム10により術前シミュレーションをするときには、モニタ13、14には、図9に示す術前シミュレーション時の画面が表示される。図9の画面は、操作ボタンが表示されるボタン領域90と、被検体24の画像が表示されるナビゲーション画像表示領域91と、治療計画情報が表示される治療計画情報領域92と、と、を含む。
【0029】
ボタン領域90には、MRI装置1により被検体の3Dボリューム撮像を行うためのボタン「3DScan(MRI)」901と、MRI装置1及び超音波診断治療装置40により撮像された各3D画像のうち、病変部位が撮影された領域である特定領域を検出するためのボタン「特定領域描出(MRI)」902と、治療パラメータを入力するためのボタン「治療パラメータ入力」903と、HIFUによる治療計画を立てるためのボタン「HIFU治療計画(プローブ位置計算)」904と、治療行為を禁止する被検体領域を登録・表示するための「禁忌情報」ボタン905と、術具の初期位置登録(レジストレーション)を行い、術具の位置や集束超音波の進行方向を表示するナビゲーション画像の表示を開始するための「ナビゲーション」ボタン906と、が備えられる。各ボタンの機能は、このボタンを用いるステップ内において説明する。以下、図8のフローチャートのステップ順に沿って説明する。
【0030】
(ステップS101)
術者29が「3DScan(MRI)」901を押し下げると、MRI装置1は、被検体24の病変部位を含む領域をMRI装置1により3次元ボリューム撮像(以下「3D撮像」という。)を行う。画像データ取得部19aが3次元ボリューム画像データ(以下「3Dデータ」という。)を読み込む。画像再構成部19bは、3Dデータの3次元再構成を行って、アキシャル、サジタル、コロナル、ボリュームレンダリング、の種類毎にT強調画像とT強調画像とを生成する。
【0031】
(ステップS102)
画像加減算処理部19cは、ステップS101で撮像されたT強調画像(図7における701)とT強調画像と(図7における702)を用いて既述の図7で説明した画像の加減算処理を行い、加減算画像(図7における705)を生成する(S102)。加減算画像は、アキシャル画像910、サジタル像911、コロナル画像912、ボリュームレンダリング画像913として、ナビゲーション画像表示領域91内に表示される。
【0032】
(ステップS103)
術者29が「特定領域抽出(MRI)」902を押し下げると、術者がマウス等のツールを用いることにより、臓器毎のセグメンテーションが行われる。ボリューム情報およびセグメンテーション情報は治療計画情報画面920にも表示される。治療対象となるセグメンテーションされた領域情報は、特定領域抽出部19dにより記憶される。または、特定領域抽出部19dは、画像加減算処理部19cがステップS102で生成した加減算画像からなるアキシャル画像910、サジタル像911、コロナル画像912、ボリュームレンダリング画像913から、濃度値や形状を基に自動的に臓器毎のセグメンテーションを行い、治療必須領域となる特定領域の抽出を行ってもよい。
【0033】
(ステップS104)
画像補償部19eは、ステップS103で描出された特定領域のみを、既述の図7に示したように、事前に算出した縮小(又は拡大)率の画像補償を行い、炎症範囲を除く腫瘍領域(治療必須領域の一部)を描出した画像(図7の画像707)を生成し、ナビゲーション画像表示領域91内のアキシャル画像910、サジタル像911、コロナル画像912、ボリュームレンダリング画像913を、画像補償された画像に更新表示する(S104)。この画像補償処理に用いられる拡大・縮小率を図10に基づいて説明する。腫瘍領域を含む炎症領域706のみを(拡大)縮小するための(拡大・)縮小率は、手術前日までに造影剤を用いた検査を行い、正確な縮小(拡大)率を算出しておくのが理想的だが、都合により造影検査を事前に実施できないことがある。その場合に、手術前に行われた臨床や実験から得られた測定値を基に設定された(拡大・)縮小率換算表を用いる。縮小(拡大)率換算表は、編集・アップデートが可能である。
【0034】
(拡大・)縮小率は、筋肉や臓器によって腫瘍の種類や特性が異なるので、拡大・縮小率も腫瘍が発生した部位(臓器、筋肉、骨など)毎に測定し、設定される。図10では、臓器Aから臓器Fまでの6種類の臓器について、単位腫瘍体積(例えばml)に対する画像の拡大・縮小率を、測定値をフィッティングして得られた6つの曲線1001〜1006が定義されている。そして、ステップS103において描出された特定領域が臓器Fに発現したものであるとすると、画像補償部19eは、ステップS101の3D再構成画像に基づいてその特定領域の体積を計測する。その結果、体積値が1009であるとすると、画像補償部19eは、曲線1006における(拡大・)縮小率1008を算出し、この(拡大・)縮小率1008を用いて抽出された特定領域の画像補償を行う。画像補償部19eは、ステップS103において、複数の特定領域が抽出された場合には、特定領域毎の発症部位・体積を算出し、臓器と体積と似合った(拡大・)縮小率を算出して画像補償を行う。(拡大・)縮小率1008をナビゲーション機能とリンクしておくことで、自動的に縮小(または拡大)することも可能となる。アキシャル画像910、サジタル画像911、コロナル画像912、ボリュームレンダリング画像913内の特定領域914は、画像補償後の大きさにより表示される。
【0035】
本実施形態では、加減算画像を生成してから一旦表示し、そのあと、特定領域の抽出処理の指示入力を行うことにより、加減算画像内の特定領域の画像補償を行って更新表示したが、加減算画像を生成した後、特定領域の抽出を特定領域抽出部19dにより自動抽出し、抽出された特定領域の画像補償を行った後に、加減算画像からなるアキシャル画像910、サジタル画像911、コロナル画像912、ボリュームレンダリング画像913を表示してもよい。これにより、初めから画像補償された特定領域を含むナビゲーション画像を表示させることができる。
【0036】
(ステップS105)
術者29は「治療パラメータ入力」903を押し下げ、治療に必要なパラメータを入力する。治療に必要なパラメータとは、例えば、集束超音波の照射治療時間、治療インターバルタイム(集束超音波による加熱部位の冷却待機時間)、特定領域の周辺に位置する正常組織のうち、特定領域と共に治療対象とする領域を定義づけるマージン率などである。
【0037】
次に、術者29は、特定領域のうち、集束超音波の照射ターゲットとなる位置を指定することにより、HIFU治療計画の作成時において、治療必須領域となる病変領域だけでなく、それらの病変領域を含む正常組織からなるマージン領域を、治療予定領域として設定する。治療予定領域の設定は、術者29が、ナビゲーション画像(アキシャル画像910、サジタル画像911、コロナル画像912、ボリュームレンダリング画像913)上において、ステップS103で抽出された複数の特定領域のうち、治療対象となる特定領域をターゲット914として設定することにより行う。
【0038】
更に術者29は、ターゲット914にアプローチするための仮プローブ位置915の位置を、ナビゲーション画像上において行う。
【0039】
経路算出部19gは、ターゲット914の位置と、仮プローブ位置915の位置と、を基に、仮プローブ位置915から照射される集束超音波の照射経路を算出し、ナビゲーション画像上に照射経路916として重畳表示する。ここで、既に入力された治療パラメータ応じて仮プローブ位置915を術者29が補正し、これに応じて照射経路916も補正され、その結果がGUI上に表示される。
【0040】
入力された治療パラメータや、ボリューム情報およびセグメンテーション情報は治療計画情報画面92に表示される。治療計画情報画面92は、指定された治療予定領域が表示される画面920と、治療情報を表示する領域924とを含む。この治療予定領域には、画像補償された特定領域923と、それらを含むマージン領域922とが含まれる。画面920はxyzの3軸の方向を指定することで、別視点/角度からみた画面920へ切り替えることができる。更に、治療計画情報画面920は、実際の手術時には手術の経過を表示することができ、情報画面924に治療経過・生体情報の他にログとして腫瘍領域と治療領域の差も情報としてリアルタイム表示することができる。
【0041】
(ステップS106)
術者29は、「HIFU治療計画(プローブ位置計算)」904の押下げ、これに応動して、位置検出処理部19fが、術具(本実施形態における超音波プローブ37)とその初期位置の登録処理(レジストレーションという)を行う(S106)。
【0042】
位置検出処理部19fは、ポインタ27の実空間上のMRI装置1に対する相対的な座標を、基準ツール17を基準に算出する。位置検出処理部19fは、位置検出デバイス9の各カメラ25、25の撮影した各画像中の基準ツール17のマーカ35の位置の変位より各マーカ35の、位置検出デバイス9に対して初期的に定義された検出空間上の座標を求める。そして、この各マーカ35の座標を基準に、検出空間の定義を、MRI装置1において定義されている検出空間に一致するよう修正する。すなわち、同じ実空間の座標に対応する、位置検出処理部19fの検出する検出空間上の座標と、MRI装置1が用いる検出空間上の座標とが一致するようにする。
【0043】
次に、位置検出処理部19fは、位置検出デバイス9の各カメラ25、25の撮影した各画像中のポインタ27の位置の変位より各ポインタ27の検出空間上の座標や、ポインタ27先端の座標を算出する。また、本実施形態では、位置検出処理部19iにおいて、各マーカ27の検出空間上の座標よりポインタ27の指示方向、すなわちポインタ27の向きをも算出する。経路算出部19gは、ポインタ27の向きから集束超音波の中心軸(z軸)方向を算出して照射経路を求める。
【0044】
次に、位置検出処理部19fは、被検体24上に置かれた被検体マーカ(腹部撮像の場合は例えば被検体の剣状突起上に位置させておく)を指示している状態に対して算出したポインタ27の先端の検出空間の座標より、ボリュームデータ記憶部19hに記憶されているボリュームデータの画像系の座標と検出空間上の座標との関係式、すなわち、検出空間上の現在の被検体の剣状突起がある位置と、ボリュームデータ中において被検体24の剣状突起が写り込んだ位置(画像系の座標)と、を対応づける関係式を求め、これをレジストレーション結果として記憶する。より具体的には、たとえば、その時点でポインタ27の先端で指示している被検体マーカのボリュームデータ中の座標への、算出したポインタ27の先端の検出空間の座標の変換を行う、または、その逆の変換を行う座標変換式を求め、これをレジストレーション結果として記憶する。検出空間の座標は、モニタ20に表示される画像における画像上の座標に変換される。
【0045】
被検体マーカの被検体24に対する位置が不変であれば、ステップS101において、MRI装置1とは異なる装置、例えばX線CT装置により被検体マーカを装着した被検体24を撮像してもよい。異なる装置で得た3次元ボリューム画像にも、被検体マーカが写り込んでいるため、ベッド21に載置した被検体24の被検体マーカをポインタ27の先端で指して位置を検出することにより、ベッド21に載置した被検体24の実空間座標と、X線CT装置で撮像したときに被検体24の実空間座標とが異なっていても、ベッド21に載置した被検体24の被検体マーカの実空間座標を検出空間上の座標に変換し、変換後の座標と3次元ボリューム画像に写り込んだ被検体マーカの画像上の座標とを一致させることができ、3次元ボリューム画像上にポインタ27から得られる画像を、画像上の座標を一致させて表示することができる。X線CT装置から得た3次元ボリューム画像を用いる場合には、特定領域抽出部19dは、CT値を基に、特定領域の自動抽出を行ってもよい。
【0046】
また、被検体24にポインタを取り付けられない場合は、レーザを用いたサーフェススキャン法を用いてもよい。このサーフェススキャン法では、術前にレーザによるサーフェススキャンを行って被検体形状を取得・記録し、そのデータを基にレジストレーションを行い、手術中は随時レーザにより被検体形状を取得し続けることによりポインタ装着と同じ効果が得られる。これにより、被検体24の呼吸動・体動による位置ズレが生じた場合でも、レーザによるサーフェス再スキャンの結果に基づいて撮像断面を自動追従・補正することで、常に三次元空間と画像画素の位置関係を一定に保つことができる。
【0047】
「HIFU治療計画(プローブ位置計算)」904の付加機能として、未(残)治療領域に対する治療の経路を算出する機能があり、このボタンの押下げに応動して、経路算出部19gが、未(残)治療領域へのアプローチ経路を算出する。算出された経路は、後述の図11における1138のように、ナビゲーション画像上に重畳表示される。
【0048】
治療予定領域の周辺に、重要な血管のように、治療不可な領域(以下「禁忌領域」)がある場合には、術者29はナビゲーション画像上において図示しないマウスなどのポインティングデバイスを用いて禁忌領域を指定し、「禁忌情報」ボタン905を押し下げて禁忌領域の登録を行う。禁忌領域設定部19nは、指定された領域を禁忌領域として登録し、後述する集束超音波の進路と禁忌領域とが重複すると、警告部19iが警告表示または警告音を発生する。
【0049】
(ステップS107)
術者29は、被検体24の生体情報を取得するためのモニタ(同期ユニット)を装着し、生体情報(例:血圧・心拍数・発汗・体温等の異常上昇や意識の喪失)の術中モニタリングを開始する(S107)。
【0050】
(ステップS108)
術者29は「ナビゲーション」ボタン906を押し下げ、ナビゲーション機能を起動する。位置検出処理部19fによる超音波プローブ37のトラッキング(位置検出の連続実行)と、ナビゲーション画像生成部19hによるナビゲーション画像の更新表示とが開始する(S108)。「ナビゲーション」ボタン906を押し下げると、画面は、図11に示す術中画面に遷移する。図11の画面は、各種ボタンが配列されるボタン領域110と、リアルタイム画像を表示するリアルタイム画像領域111と、ナビゲーション画像を表示するナビ画像領域113と、を備える。
【0051】
ボタン領域110には、「手術開始」ボタン1101、「生体情報」ボタン1102、「US SCAN」ボタン1103、「ARFI(治療予定領域)」ボタン1104、「領域(範囲)情報1105、「治療開始」ボタン1106、「画像情報」ボタン1107、「治療経過」ボタン1108、「ログ」ボタン1109、及び「治療確認」ボタン1110が備えられる。
【0052】
リアルタイム画像表示領域111では、治療前の超音波画像1111、治療中の超音波画像1113、治療後の超音波画像(リアルタイム画像)1118、被検体情報や手術情報の表示領域1124が含まれる。
【0053】
治療後の超音波画像1118画像では、生体1121に対してHIFU経路1122が描写されているが、このHIFU経路1122は、一つ前の治療領域1123に対する現在の治療領域1119をターゲットとしている。一つ前の治療領域1123と現在の治療領域1119との間の距離1120は、予め設定された距離になるようGUI上で誘導する。ここでいう「GUI上で誘導」とは、例えば、距離1120を超える場合に、術者29に対して現在の治療領域1119の再設定を促す警告を警告部19iが行うことをいう。警告がされると、術者29が再度現在の治療領域(特定領域)1119を設定し、この治療領域1119に対するHIFU経路1122を経路算出部19gが算出することで、GUI上での誘導が可能となる。
【0054】
一方、ナビ画像領域112には、3軸断面1131、1132、1133と、ボリュームレンダリング画像1134とが表示される。これらの画像1131、1132、1133、1134上には、超音波プローブの位置を示すマーク1135を重畳表示することもできる。さらに超音波プローブの位置に応じた治療予定領域(マージン含む)1136も表示することができる。ナビゲーション画像は、画像誘導用と治療用の画像を変更することもできる。また、マージンを含む治療予定領域1136を設定しておくことで、3軸断面1131〜1133に重畳表示することができ、実空間と画像情報を用いて手術をすることなる。
【0055】
3軸断面1131〜1133およびボリュームレンダリング画像1134上には治療経過画像が表示されており、ナビゲーション画像上における特定領域(治療領域等)、警告領域(マージン)に対して、治療済み領域および未(残)治療領域が重畳表示されているほか、直前(最近)の治療領域1137が重畳表示されている。
【0056】
(ステップS109)
術者は、「手術開始」ボタン1101を押し下げ、手術を開始する(S109)。「手術開始」ボタン1101の押下に応動して、MRI装置1の撮影が開始し、超音波診断治療装置40等の接続された機器の主電源がONになる。更に、「手術開始」ボタン1101の押下に応動して、「US SCAN」ボタン1103もONになる。
【0057】
「US SCAN」ボタン1103がONになると、治療前の超音波画像1111、治療中(リアルタイム)の超音波画像1113、治療後(リアルタイム)1118画像の撮像及び表示の他、深度や周波数等の各種パラメータの表示処理が開始する。超音波画像上では、治療前の特定領域1112から治療中の領域1115と残治療領域1117が分かるようになっている。この特定領域1112は予め算出した縮小(拡大)率によって縮小(または拡大)されている。
【0058】
さらに、術者29は、治療開始直前に「ARFI(治療予定領域抽出)」ボタン1104を押下することで治療予定領域1119が描出され、深度や周波数等の情報が事前に描出される。
【0059】
必要があれば、術者29は、「生体情報」ボタン1102を押し下げ、画面1124内に、随時モニタリングして得られるリアルタイムの被検体24の情報、例えば、脈、呼吸、血圧情報等の被検体情報や、手術経過時間及び治療経過情報を表示して確認する。画面1124には、手術に関するリアルタイム情報、例えば術具種類、術具の状態(使用中/停止等)情報、治療割合(%)、加熱治療に伴う治療部位の拡張(膨張)率が表示される。画面1124は、図11ではリアルタイム画像領域111に表示したが、表示箇所はこれに限らず、適宜変更可能である。また生体情報の表示は、本ステップに限らず、随時「生体情報」ボタン1102を押し下げることにより行うことができる。
【0060】
また、「領域情報」ボタン1105を押下することで、リアルタイム超音波画像上1118に各種警告情報を表示することもできる。例えば、画面1124に予定している治療予定領域を越えている場合や被検体に異常が生じた場合等が考えられる。また、現在治療領域1115を中心とした規程範囲1116を表示している。これは、生体に間接的に影響する範囲を描写したものであり、正常組織に極力触れないようにする指標として術者が使用するものである。
【0061】
また、オプション機能として、本実施形態に係る治療支援システム10に、図5により説明したISC機能を持たせてもよい。図11のボタン領域110内に図示しない「ISC」ボタンを備えておく。そして、MRI1内部で治療を行う場合には、「ISC」ボタンを押し下げると、制御部23からMRI装置1に対して、超音波断面画像の撮像面の位置情報が送信され、その位置情報を基に超音波断面画像と同断面のMRI画像をMRI装置1により撮像することができる。撮像されたMRI画像は、超音波断面画像とは別画面に表示される。このMRI画像上には、超音波断面画像と同様、病変領域(腫瘍領域)及びマージン領域を含む特定領域と、ARFIによる治療予定領域とが表示される。これにより、超音波断面画像及びそれと同一断面のMRI画像には、組織コントラストの異なる画像が表示され、同一断面を異なるモダリティで撮像した画像が表示され、視認性(診断能)の向上に寄与することができる。これら超音波断面画像及び同一断面のMRI画像からなる直前の治療画像を、術者が目視して術具の移動と追加治療を行うことができる。
【0062】
(ステップS110)
術者29が超音波プローブ37の位置を移動させると、位置検出デバイス9及び位置検出処理部19dが超音波プローブ37のリアルタイム位置を追従して検出し、ナビゲーション画像生成部19fが、ナビゲーション画像1131〜1134上に超音波プローブ37の位置を重畳表示する(S110)。
【0063】
(ステップS111)
術者29は、GUI及び数値情報を用いて超音波プローブ37を目的位置へ誘導する(S111)。術者29による超音波プローブ37の位置の移動に応じて、経路算出部19gが手術経路(本実施形態では集束超音波の中心軸の経路)を算出(補正)し、更新表示する。
【0064】
(ステップS112)
誘導後は超音波画像やMRI画像にてターゲットの位置を確認後、集束超音波による治療が行われる(S112)。
【0065】
術者は、「治療開始」ボタン1106を押し下げし、これに連動して「画像情報」ボタン1107、「治療経過」ボタン1108、「ログ」ボタン1109がONとなるが、必要に応じて手動でOFFとすることもできる。この機能により、治療前情報と治療中およびその差分情報(治療経過情報、残治療領域等)が画像情報として表示される。「ログ」1109ボタンがONとなると、ログ生成部19lがログを生成し、ログ記憶部19mへのログ情報の記録を開始する。ログ情報は、過去に行った治療経過内容を見直すために使用されることとなる。この状態で、超音波プローブ37から集束超音波を照射する。
【0066】
本ステップでは、治療時の画像モニタ(MRI、超音波他)は必ず実施する。画像モニタ情報から治療効果(キャビテーション)が確認できたら、次のステップへ進む。
【0067】
(ステップS113)
術者は、追加(残)治療領域があるかどうか判断する(S113)。残治療領域が存在する場合には、ステップS110へもどり、超音波プローブ37の位置追随(S111)から繰り返す。ナビゲーションによる治療が終了したら、「治療確認」ボタン1110を押し下げ、画面が図12の治療効果確認画面に遷移し、ステップS114へ進む。
【0068】
図12に、治療後のMRI撮像および残治療領域描出のGUI表示例を示す。図12に示す治療後のMRI撮像および残治療領域描出時の画面には、各種ボタンが表示されたボタン領域120と、治療後の画像を表示する画像表示領域121と、MRI画像のセグメンテーション領域および治療領域を拡大表示画面が備えられた画像表示領域122とが含まれる。
【0069】
ボタン領域120には、「3D Scan(MRI)」」ボタン1201と、造影後の3次元MRI画像の撮像又は読出し・表示を行う「造影剤(MRI)」」ボタン1202と、「被検体情報」ボタン1203、「手術情報」ボタン1204、「差分(残治療領域描出)」ボタン1205、「再治療計画」ボタン1206、「追加治療」ボタン1207、及び「終了」ボタン1208とが含まれる。各ボタンの機能は、このボタンを用いるステップ内において説明する。
【0070】
(ステップS114)
造影剤を被検体24に投与し、造影前/後の画像を取得して病変領域を描出する(S114)。「3D Scan(MRI)」」ボタン1201を押下することで、造影前の3次元MRI画像の撮像又は読出し・表示を行い、Axial断面1211、Sagittal断面1212、Coronal断面1213、Volume Rendering画面1214に再構成・表示される。
【0071】
また、「造影剤」ボタン1202を押下することで、造影MRI画像が得られる。表示されるMRI画像は予め算出した治療計画(セグメンテーション)領域1215と実際に治療した領域1216がそれぞれ表示される。Volume Rendering像1217は、任意の回転が可能なだけでなく周辺組織の消去(または透明化)をすることで見やすくする機能を有している。
【0072】
(ステップS115)
当該画像から特定領域と造影(腫瘍)領域の差分による治療効果判定を行う(S115)。これより、治療範囲特定と残治療領域の可視化が可能となる。
【0073】
術者29が「患者情報」ボタン1203ボタンを押下することで、治療前後の被検体特有の情報(脈、呼吸、血圧情報、手術経過時間、治療経過情報等)が情報表示画面1229内に表示される。同様に、「手術情報」ボタン1204を押下することで、手術情報として過去の治療ログ(治療回数、治療時間、治療割合(%)、残治療回数)が情報表示画面1229内に表示される。
【0074】
画像表示領域122には、MRI画像のセグメンテーション領域および治療領域を拡大表示画面が設けられており、MRI造影前のセグメンテーション領域および治療領域の拡大画像1221と造影後の同拡大画像1223がそれぞれ表示される。MRI造影前1221の画像は、HIFUによる治療領域1222が高信号に描出され、造影後1223画像では、腫瘍領域1225と、HIFUによる治療領域1222と、が高信号に描出される。
【0075】
ここで、「差分(残治療領域描出)」ボタン1205を押下することで、差分画像生成部19jは、2つの領域、すなわち腫瘍領域1225とHIFUによる治療領域1222との差分処理を行い、差分領域1226、1228が算出・表示される。
【0076】
(ステップS116)
術者29は、この差分画像1227と情報表示画面1229内の手術情報から再治療を行うかどうか判断する(S116)。必要と判断した場合には「再治療計画」ボタン1206を押下する。そのときには、ステップS111へ戻り、ナビゲーション画像生成部19hが、差分画像生成部19jから差分領域1226,1228の位置情報を取得し、差分領域1226、1228が新たに重畳表示されたAxial断面1211、Sagittal断面1212、Coronal断面1213、Volume Rendering画面1214に更新表示される。差分領域1226、1228が新ターゲットとして表示(図示を省略)され、新ターゲット1228における追加治療のためのプローブ位置と照射経路が、経路算出部19gにより自動的に計算されGUI上に描写される。ここでも、治療パラメータに応じて仮HIFUプローブおよび照射経路の補正が行われ、結果がGUI上に表示される。問題なければ「追加治療」ボタン1207を押し下げ、再治療に必要な機器をONにしたり、ログ情報の収集の再開をしたりなど、再治療に必要な諸準備を整え、手術・治療開始となる。
【0077】
残治療領域がない、又は仮に残治療領域が存在してもさまざまな条件を考慮して追加治療を実施しない場合には、「終了」ボタン1208を押下して手術・治療終了となる。
【0078】
本実施形態に係る治療支援システムによれば、造影前に撮像された病変領域が撮像された画像と、造影後に撮像された病変領域と治療済領域とが表示された画像と、の差分画像を生成することにより、残治療領域を明瞭に表示することができる。この残治療領域情報を基に、治療支援システムの制御部(経路算出部19g)から超音波プローブの設置位置を算出し、術者に提示する再治療フィードバック機能を有することで、追加治療の要否判断に資する情報を提供することができる。
【0079】
本実施形態では、残治療領域の描出のために、治療後かつ造影前のMRI画像と造影後かつ造影後のMRI画像とを差分して残治療領域が描出された差分画像を生成したが、この差分画像の生成は、治療済領域と周辺領域とが区別されて描出された画像と、治療済領域及び病変領域を含む領域と周辺領域とが区別されて描出された画像と、であれば、上記造影前のMRI画像と造影後かつ造影後のMRI画像に限定されることはない。
【0080】
また、本実施形態では、治療後に造影剤を投与するため、治療前のナビゲーション画像として造影剤を用いずにMRI撮像をしたTW画像(周辺領域と病変領域及び炎症領域とが判別しにくい画像)と、TW画像(周辺領域と病変領域及び炎症領域とが判別しやすい画像)とを加減算処理し、さらに、炎症領域が病変領域に含まれないように画像補償を行ったが、ナビゲーション画像は、本実施形態に記載したものには限らず、造影剤を用いることなく病変領域が描出され、その3次元的位置が把握できる画像であれば、画像の種類は問わない。
【0081】
更に、本実施形態では、HIFUを用いた加熱治療時における治療支援システムを例に説明したが、加熱治療装置は、HIFUに限らず、例えば、被検体内の病変部位に穿刺を行い、その穿刺針に一対の電極を用いるモノポーラ方式や展開針方式を用いた温熱治療装置を接続し、穿刺針による加熱治療を行う術式でもよい。また、本実施形態では、術式として加熱治療を例に説明するが、凍結治療にも本実施形態は適用できる。例えば、ジュール・トムソン効果を利用した凍結と解凍ができるMR対応冷凍治療器を備え、病変部位、例えば腫瘍に穿刺したプローブ内においてアルゴンガスなどの凍結ガス及びヘリウムガスなどの解凍ガスの噴出・停止をすることにより、腫瘍領域を凍結治療する装置を用いた凍結治療に本実施形態に係る治療支援システムを適用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…MRI装置、3…上部磁石、5…下部磁石、7…支柱、9…位置検出デバイス、11…アーム、13、14…モニタ、15…モニタ支持部、17…基準ツール、19…パーソナルコンピュータ、21…ベッド、23…制御部、24…被検体、25…赤外線カメラ(位置検出デバイス)、27…ポインタ、29…術者、33…RS232Cケーブル、34…映像記録装置、35…反射球、37…超音波プローブ、38…モニタ、40…超音波診断治療装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の病変部位に対して加熱又は凍結処理を行う治療手段と、及びその治療手段を駆動・制御する駆動手段と、を備えた治療装置と、
前記被検体の病変部位を撮像する医用画像撮像装置と、
前記医用画像撮像装置により、前記被検体に対して行われた加熱又は凍結処理の結果、組織変性が生じた部位が撮影された領域と、前記加熱又は凍結処理が施されていない部位が撮影された領域と、のコントラストが相対的に高い第一医用画像と、前記加熱又は凍結処理により組織変性が生じた部位及び前記病変部位が撮影された領域と、前記加熱又は凍結処理により組織変性が生じていない、前記病変部位の周辺部位が撮影された領域と、のコントラストが相対的に高い第二医用画像と、を撮像し、前記第一医用画像及び前記第二医用画像を差分処理することにより、前記病変部位が撮像された領域のうち、前記加熱又は凍結処理が施された部位を除く領域が描出された差分画像を生成する差分画像生成手段と、
前記差分画像を表示する画像表示手段と、
を備えることを特徴とする治療支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の治療支援システムにおいて、
前記医用画像撮像装置は、磁気共鳴イメージング装置であり、
前記第一医用画像は、前記磁気共鳴イメージング装置により、造影剤を用いることなく前記被検体の前記病変部位を撮像したT強調画像であり、
前記第二医用画像は、前記磁気共鳴イメージング装置により、造影剤注入後の前記被検体の前記病変部位を撮像したT強調画像である、
ことを特徴とする治療支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の治療支援システムにおいて、
前記医用画像撮像装置により撮像した前記病変部位及びその周囲に位置する炎症部位と、前記病変部位及び炎症部位の周辺に位置する周辺正常部位と、のコントラストが相対的に低い第三医用画像と、前記医用画像撮像装置により撮像した前記病変部位及び前記炎症部位と、前記周辺正常部位と、のコントラストが相対的に高い第四医用画像と、を読込み、前記第三医用画像と前記第四医用画像とを加減算処理することにより、前記周辺正常部位に対して、前記病変部位及び前記炎症部位のコントラストが相対的に高い加減算画像を生成する画像加減算処理手段と、
前記治療手段の位置情報を検出する位置検出処理手段と、
前記治療手段の位置情報に基づいて、前記加減算画像に前記治療手段の位置を重畳表示したナビゲーション画像を生成するナビゲーション画像生成手段と、を更に備える、
ことを特徴とする治療支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の治療支援システムにおいて、
前記医用画像撮像装置は、磁気共鳴イメージング装置であり、
前記第三医用画像は、前記磁気共鳴イメージング装置により、造影剤を用いることなく前記被検体を撮像したT強調画像であり、
前記第四医用画像は、前記磁気共鳴イメージング装置により、造影剤を用いることなく前記被検体を撮像したT強調画像である、
ことを特徴とする治療支援システム。
【請求項5】
請求項3に記載の治療支援システムにおいて、
前記病変部位が発症した前記被検体の臓器種類又は前記病変部位の体積の少なくとも一つに応じて設定された画像拡大又は縮小率を算出し、前記加減算画像に含まれる前記病変部位及び前記炎症部位が撮像された領域に対し、前記算出した画像拡大又は縮小率に応じて画像の拡大又は縮小処理を行う画像補償手段を更に備える、
ことを特徴とする治療支援システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一つに記載の治療支援システムにおいて、
ユーザにより指定された前記治療手段による治療予定部位と、前記治療手段により既に加熱又は凍結処理された部位との距離が閾値以下になると警告を行う警告手段を更に備える、
ことを特徴とする治療支援システム。
【請求項7】
組織変性が生じた部位が撮影された領域と、前記加熱又は凍結処理が施されていない部位が撮影された領域と、のコントラストが相対的に高い第一医用画像と、前記加熱又は凍結処理により組織変性が生じた部位及び前記病変部位が撮影された領域と、前記加熱又は凍結処理により組織変性が生じていない、前記病変部位の周辺部位が撮影された領域と、のコントラストが相対的に高い第二医用画像と、を撮像し、前記第一医用画像及び前記第二医用画像を差分処理することにより、前記病変部位が撮像された領域のうち、前記加熱又は凍結処理が施された部位を除く領域が描出された差分画像を生成する差分画像生成手段と、
前記差分画像を表示する画像表示手段と、
を備えたことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の医用画像処理装置において、
前記第一医用画像は、磁気共鳴イメージング装置により、造影剤を用いることなく前記被検体の前記病変部位を撮像したT強調画像であり、
前記第二医用画像は、前記磁気共鳴イメージング装置により、造影剤注入後の前記被検体の前記病変部位を撮像したT強調画像である、
ことを特徴とする医用画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−228286(P2012−228286A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96665(P2011−96665)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 日本コンピュータ外科学会 刊行物名 日本コンピュータ外科学会誌 第12巻 第3号 第19回日本コンピュータ外科学会大会特集号 発行日 平成22年11月2日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的国際標準化推進事業/標準化フォローアップ/集束超音波治療装置に関する国際標準化」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【出願人】(591173198)学校法人東京女子医科大学 (48)
【Fターム(参考)】