説明

治療用の抗体標的指向サイトカイン

本発明は、IL-10、IL15、IL-24およびGM-CSF、それらの機能性断片および機能性誘導体からなる群から選択されるサイトカインと融合した、癌胎児性フィブロネクチンの細胞外ドメイン(ED-B)または癌胎児性テネイシンの細胞外ドメインの少なくとも1つのいずれかに特異的結合親和性を有する抗体、その機能性断片または機能性誘導体を含む融合タンパク質に関する。本発明は、前記融合タンパク質の少なくとも1つの、医薬製造のための使用も目的とする。特に、本発明は、腫瘍またはアテローム性動脈硬化、関節炎および乾癬などの慢性炎症性疾患の治療のための前記医薬の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL-10、IL15、IL-24およびGM-CSF、それらの機能性断片および機能性誘導体からなる群から選択されるサイトカインと融合した、癌胎児性フィブロネクチンの細胞外ドメイン(ED-B)、または癌胎児性テネイシン細胞外ドメインの少なくとも1つのいずれかに特異的結合親和性を有する抗体、その機能性断片または機能性誘導体を含む融合タンパク質に関する。本発明は、前記融合タンパク質の少なくとも1つの医薬の製造のための使用も対象とする。特に、本発明は、腫瘍、またはアテローム性動脈硬化、関節炎および乾癬などの慢性炎症性疾患の治療のための前記医薬の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインは免疫調節タンパク質であり、それらのいくつかは、癌と闘うばかりでなく、慢性炎症性状態および感染性疾患に干渉するためにも、前臨床および臨床で使用されてきた。
【0003】
組換えサイトカインの治療潜在性は、低濃度さえも激しい副作用によってしばしば制約され、それにより標的組織における十分なサイトカイン濃度が妨げられる。最近、モノクローナル抗体が、サイトカインの能力を増大させ毒性効果から正常組織を助ける目的で、疾患部位を標的としてサイトカインを送達するために使用された。実際、多数の抗体-サイトカイン融合タンパク質が、癌治療に応用するためにすでに研究されていて、しばしば印象的な結果が得られている。例えば、フィブロネクチンのED-Bドメイン(血管新生のマーカー)に特異的なヒト抗体L19が、炎症誘発性サイトカイン(IL-2、IL-12またはTNFなど)を固形腫瘍に送達するために使用され、時には驚異的な治療効果が得られている[総説および対応文献についてはNeri & Bicknell、Nat. Rev. Cancer (2005) 5:436〜446頁を、WO 01/62298も参照されたい]。しかしながら、多くのサイトカインは、単独薬剤として、またはモノクローナル抗体との融合相手として使用されたときのいずれにおいても、臨床的失敗の歴史を有する。例えば、組換えIL-2(「Proleukin」、Chiron)は、腎細胞癌患者の治療について承認されているが、奏功率は、この適応症に対して通常低く(概して20%未満)および他のタイプの癌に対してはさらに低い。他のサイトカイン(インターロイキン-12またはインターロイキン-10など、下記参照)は、一連の臨床試験において、実質的有効性を示せず、それが臨床開発プログラムを遅らせた。これらのサイトカインは生物薬剤として未だ承認されていない。インターフェロンγは、非常に狭い適応症(慢性肉芽腫症の治療、Genentech)に対して承認されているサイトカインの他の例であり、それは他の適応症に対して実質的な臨床的利点を示せていない。
【0004】
抗体と融合したときでさえ、治療指数における驚異的向上は予想されない。例えば、抗GD2抗体-IL2融合EMD273063は、多数の臨床試験、神経芽細胞腫を有する小児における最後の、しかし最小ではない試験において、実質的治療効果を示し得なかった(Osenga et al.、Clin. Cancer Res. 3月15日; 12(6):1750〜9頁(2006))。
【0005】
インターロイキン-10(IL-10)は、活性化単球およびT細胞により産生されるホモ二量体サイトカインであり、それは炎症性応答および免疫反応の調節に深く関与している。その主たる全体的機能は、免疫応答の緩和剤として最もよく説明されるが、IL-10は刺激性の活性も有している。IL-10は最初、Th1細胞の活性化およびそれによるサイトカイン産生を阻害する、マウスTh2細胞により生ずる活性、すなわちサイトカイン合成阻害因子(CSIF)として報告された[Fiorentino et al.、J. Exp. Med. 170(6):2081〜95頁(1989)]。ヒトIL-10をコードする遺伝子は、第1染色体上に位置して[Kim et al.、J. Immunol. 148(11):3618〜23頁(1992)]、160個のアミノ酸から構成され、18.5kDaの分子質量を有するタンパク質に翻訳される。ヒトIL-10は、ジスルフィド結合のない37kDaのホモ二量体として活性である[Syto et al.、Biochemistry 37(48):16943〜51頁(1998)]。
【0006】
IL-10は、その強力なin vitro免疫調節活性および急性および慢性の炎症、自己免疫、癌および感染性疾患の動物モデルにおける証明された効果により、治療用の魅力的な候補と考えられてきた。Schering-Ploughは、臨床試験のための組換えヒトIL-10(イロデカキン、Tenovil(登録商標))を開発した。そのタンパク質は、大腸菌(E. coli)で産生され、161個のアミノ酸からなり、アミノ末端におけるメチオニン残基を例外として内在性ヒトタンパク質と同一である。静脈内または皮下経路により投与されたIL-10の単回または多回投与量の安全性、寛容性、薬物動態、薬物動力学、免疫学的および組織学的影響を調べる第Iおよび第II相臨床試験が、健常志願者および特定の患者集団において種々の設定で実施された[Moore et al.、Annu Rev. Immunol. 19:683〜765頁(2001)]。しかしながら、臨床開発は、この化合物の有効性の欠如により中止された。最近、IL-10療法のジレンマを少なくとも一部説明することができるデータが提示された。Tilgらは、IL-10の高投与量が、IFN-γおよびネオプテリンの産生を上方制御して、それによりその免疫抑制特性を均衡させることを見出した。Tilgらは、全身投与されたhuIL-10の治療作用が、サイトカインの炎症誘発性効果により制約されると結論づけ、この問題は、全身のIL-10濃度の増大を惹起せずに効果的な粘膜送達をもたらすアプローチにより回避し得ることを示唆した[Tilg et al.、Gut 50(2):191〜5頁(2002)]。
【0007】
インターロイキン-15(IL-15)は、114個のアミノ酸から構成される、4個のα-へリックスの束からなるサイトカインファミリーの14から15kDaのメンバーである。特に、IL-15タンパク質は、翻訳を阻害する多制御要素により転写後に調節され、5'非翻訳領域(UTR)の12上流のAUG、2つの特異なシグナルペプチド(21個のアミノ酸の短いペプチドは細胞内にとどまり、48個のアミノ酸の長いペプチドは分泌用である)および成熟タンパク質のC-末端を含む[Bamford et al.、J. Immunol.、160(9):4418〜26頁(1998)]。ヒトおよびサルIL-15の間には97%の、およびヒトおよびマウスの間には73%の配列同一性がある。このことは、huIL-15が、サルおよびマウス細胞に対する生物活性を賦与されるのに十分であるように思われる。IL-15は、2つの別々の受容体およびシグナル伝達経路を使用する:すなわち、IL-2/15β、γcおよびIL-15Rαサブユニットからなる高親和性IL-15R系が、T細胞およびNK細胞で発現される。IL-2/15Rβおよびγcサブユニットは、IL-2受容体と共有される(Giri et al.、EMBO J.、3(12):2822〜30頁(1994)]。肥満細胞は、IL-2受容体と要素を共有しないで新規な60から65kDaのIL-15RXサブユニットを使用する受容体系で、IL-15に応答する。胎盤、骨格筋、腎臓、線維芽細胞、上皮細胞、樹状細胞および単球など種々の組織がIL-15を発現する。
【0008】
IL-15は、炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNFα、IL-1、IFNγ)の産生、活性化B細胞の増殖およびIg合成、TH1、単球およびリンホカイン活性化キラー細胞の活性化、肥満細胞およびT細胞の増殖を刺激して、かつTおよびB細胞のアポトーシスを阻害する。上記の機能活性に加えて、IL-15は、NK細胞の発生、生存および機能に中心的役割を演ずる[Joost J. Oppenheim et al.、Cytokine Reference; 213〜221頁、(2002)]。In vivoの研究は、外因性IL-15が腫瘍反応性のCD8+T細胞の抗腫瘍活性を増強することを示した[Fehniger et al.、Cytokine Growth Factor Rev.、13(2):169〜83頁(2002)]。
【0009】
IL-15発現の異常な高レベルが、炎症性、新生物疾患および自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病および多発性硬化症で報告されている[Joost J. Oppenheim et al.、Cytokine Reference; 213〜221頁、(2002)]。
【0010】
IL-2およびIL-15は同じ受容体サブユニットを使用するので、それらは多くの特徴を共有する。それらの主な相違は合成および分泌の部位である。IL-2は活性化T-細胞により産生される。それに対して、上記のようにIL-15種々の組織で発現される。IL-2はアポトーシスおよび限られたCD8+記憶T-細胞の生存および増殖を助長することができるが、一方IL-15は記憶CD8+集団の維持を助け、およびアポトーシスを阻害することができる。IL-2と同様な生物学的効果を媒介すると最初は考えられていたIL-15は、基礎および前臨床研究で、癌の免疫療法において利点になり得る独特の特性を有することが示された[Fehniger et al.、Cytokine Growth Factor Rev.、(2):169〜83頁 2002)]。IL-15の毒性プロファイルもIL-2の毒性に非常によく似ており[Munger et al.、Cell Immunol.、5(2):289〜93頁(1995)]、したがって、治療指数の点から見て、IL-15の標的送達が全身送達に優ることを示唆している。
【0011】
IL-15受容体に結合する原因であるIL-15のエピトープを同定する研究は、アゴニストまたはアンタゴニストのいずれかの特性を示したIL-15変異体が、治療用薬剤として有用であり得ることを明らかにした[Bernard et al.、J. Biol. Chem.、279(23):24313〜22頁(2004)]。IL-15変異体IL-15D8SおよびIL-15Q108Sは、CTLL-2バイオアッセイでは不活性であったが、改変されていないIL-15の生物学的活性を競争的に阻害することができた[Pettit et al.、J. Biol. Chem.、272(4):2312〜8頁(1997)]。
【0012】
メラノーマ分化関連遺伝子-7(mda-7=IL-24)は、最初、メラノーマ分化中に誘発されるというその特性の結果として1990年代に同定された。それは、サイトカインのIL-10ファミリーのメンバーである。IL-24遺伝子のcDNAは23.8kDaの206アミノ酸タンパク質をコードする。ヒト細胞において、分泌されたタンパク質は、細胞内タンパク質(30/23kDa)と比較して、高度のN-グリコシル化に基づく有意に高い、分子量(40kDa)を有する。ヒトIL-24の、ラットの同等物(MOB-5)に対する相同性は68%であり、マウスの同等物(FISP)に対しては69%である。IL-24に対しては2つの機能性ヘテロ二量体受容体がある:すなわちIL-20R1/IL-20R2およびIL-22R1/IL-20R2である[Wang et al.、Genes lmmun.、5(5):363〜70頁(2004)]、[Chada et al.、Mol. Ther.、10(6):1085〜95頁(2004)]。IL-20R1およびIL-22R1受容体鎖は、広範囲で発現されるが、ある非造血組織における通常のIL-20R2の限定的発現は、造血系外におけるIL-24の多面性の役割を示唆する[Wolk et al.、J. Immunol.、168(11):5397〜402頁(2002)]。IL-24は単球、T細胞、樹状細胞およびメラノサイトにより発現される。IL-24は、IFNγ、IL-6、TNFα、IL-1-βおよびGM-CSFの分泌を誘発し、プロTh-1サイトカインとしての機能を示す。IL-10(Th2サイトカイン)はIL-24活性を阻害する。
【0013】
IL-24沈着物の量は、メラノーマの進行に反比例する。これらの発見は、mda-7産生がメラノーマ侵入中に失われるという仮説に通じ、腫瘍抑制剤としてのIL-24の役割を示唆する[Chada et al.、Mol. Ther.、10(6):1085〜95頁(2004)]。
【0014】
腫瘍中のIL-24の発現は、免疫アクセサリーおよびエフェクター細胞の活性化または刺激により抗原提示を助長することができる[Chada et al.、Mol. Ther.、10(6):1085〜95頁(2004)]。
【0015】
多量のデータは、プラスミドベクターまたは複製欠陥アデノウイルスのいずれかを使用するIL-24遺伝子の過剰発現は、広範囲の癌細胞において、細胞内シグナル伝達経路の活性化による増殖抑制およびアポトーシス誘発を生ずるということを示す。この種の遺伝子移入は、正常細胞において最小の毒性を示すが、一方、種々の癌細胞においては、強力なアポトーシスを誘発する[Sieger et al.、Mol. Ther.、9(3):355〜67頁(2004)]。IL-24を発現するアデノウイルス構築物が22名の進行癌患者に投与された第I相投与量増加臨床試験は、全ての腫瘍において、IL-24発現、アポトーシス誘発を生じて、患者は、治療後、CD3+CD8+T細胞の増加を示した[Tong et al.、Mol. Ther.、11(1):160〜72頁(2005)]。IL-24の異なる遺伝子移入試験は、腫瘍が、対照の腫瘍に比較して小さく、血管新生が少ないように思われることを示し、このことから、IL-24の抗血管新生活性が示唆される[Saeki et al.、Oncogene.、21(29):4558〜66頁(2002)]。アデノウイルスmda-7(Ad-mda7)を使用するとき、臨床の環境でその適用に対する大なる欠点があることは注意すべきである:第1に、Ad-Mda7を有する癌患者から得られたヒト癌細胞の体外での形質導入に続く癌患者への再導入は現実的でない;第2に、強い抗腫瘍免疫応答を生じさせるためのAd-mda7の腫瘍内投与は、限局性腫瘍にのみ適用可能で、散在性腫瘍には適用可能ではない。したがって、別のアプローチが開発される必要がある [Miyahara et al.、Cancer Gene Ther. 2006]。
【0016】
顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、17個のアミノ酸の分泌配列を含む141アミノ酸(マウス)/144アミノ酸(ヒト)タンパク質である。成熟グリコシル化タンパク質の見かけの分子量は、14〜33kDaであり、それは変性およびタンパク分解条件に対して非常に耐性である。GM-CSFのin vivo活性は、GM-CSF-特異的α鎖、およびヒトについては、IL-3およびIL-5受容体と共有されるシグナル伝達βサブユニットを含む高親和性受容体への結合により媒介される[Joost J. Oppenheim et al.、Cytokine Reference、899〜908頁、2002]。
【0017】
GM-CSFは、顆粒球およびマクロファージ系統の主要な調節剤である。それは、好中球、マクロファージおよび好酸球系統の造血性コロニー形成細胞の生存、増殖および分化を刺激する。それに加えて、それは巨核球性および赤血球系細胞系統の造血性コロニー形成細胞の生存を維持する[Joost J. Oppenheim et al.、Cytokine Reference、899〜908頁、2002]。それは、種々の細胞における抗原提示の増大、単球におけるMHCクラスIIの増大した発現およびT細胞増殖の増幅を含む、多面的効果を有する強力な免疫刺激剤でもある [Fischer et al.、J. Immunol.、141(11):3882〜8頁(1988)、Smith et al.、J. Immunol.、144(10):3829〜34頁(1990)、Morrissey et al.、J. Immunol.、139(4):1113〜9頁(1987)]。
【0018】
病理学では、GM-CSFの過剰発現は、炎症性反応(例えば関節リウマチ)、毒性ショック、失明および自己免疫に至る可能性があり、一方生理学的レベル未満の発現は肺胞タンパク質分解の幾つかの症例に関与している可能性がある。肺胞タンパク質分解は、マクロファージ媒介クリアランスにおける欠陥に起因して界面活性タンパク質が肺内に蓄積する致命的肺疾患である[Joost J. Oppenheim et al、Cytokine Reference;899〜908頁、2002]。
【0019】
動物モデルにおいて、B16メラノーマを担持するマウスに対する、マウス顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を発現している追加照射腫瘍細胞の接種は、腫瘍の免疫原性を増大させることにより、強力で長期持続しかつ特異的な抗腫瘍免疫を刺激した[Dranoff et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A.、90(8):3539〜43頁(1993)]。さらに、GM-CSFは、化学療法に伴う好中球減少、すなわち化学療法薬剤により惹起された好中球の減少を減少させるため腫瘍に広く使用されている[Danova et al.、Haematologica.、82(5):622〜9頁(1997)]、[Vose et al.、J. Clin. Oncol.、13(4):1023〜35頁(1995)]。閾値があって、それを超えると、GM-CSFによるワクチンはその有効性を失うだけでなく、それより重要なことは、in vivoで実質的免疫抑制をもたらす。GM-CSFの二元的効果は、全身性で局所的でないこのサイトカインの濃度により媒介される[Serafini et al.、Cancer Res.、64(17):6337〜43頁(2004)]。重大な有害事象は、ヒトについては、1日当たり16μg/kgの投与量で見られる[Joost J. Oppenheim et al.、Cytokine Reference;899〜908頁(2002)]。
【0020】
フィブロネクチンは、血漿および他の体液中に可溶性形態でならびに細胞外マトリックス中に非可溶性形態で存在する高分子量接着性糖タンパク質である。EDBは、組織再構築が起こるときはいつでも選択的スプライシング機構により1次転写のレベルでフィブロネクチン分子中に挿入される、91個のアミノ酸のタイプIII 相同性 ドメインである [Zardi et al.、Embo J. 6(8):2337〜42頁(1987)]。
【0021】
EDBは、健康な成体組織中では、本質的に検出可能でない。その発現は、細胞外マトリックスの再構築および血管新生と強く関連している。そのドメインは、多くの悪性度の高い腫瘍中に多く、また腫瘍のタイプに依存して、主として脈管性または散在間質性いずれかのパターンの発現を示す[Carnemolla et al.、J. Cell Biol. 108(3):1139〜48頁(1989)]。正常組織中におけるその非常に限定された発現および多くの固形腫瘍中におけるその強い発現にも拘らず、EDBの機能は必要不可欠であるようには思われない。それはEDBエキソンを欠くマウスが正常に発育し、繁殖可能であり、および骨折を治癒するからである。さらに、EDBエキソンおよびp53を欠く二重ノックアウトマウスは、EDBを発現する動物と比較して、生存期間に何らの相違も示さなかった[Fukuda et al.、Cancer Res 62(19):5603〜10頁(2002)]。
【0022】
EDB配列は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サルおよびヒトで同一であるから、このドメインに対する抗体をハイブリドーマ技法により生じさせることは、生来の寛容があるので、未だ可能になっていない。2〜3年前に、EDBに対する高親和性scFv抗体断片(L19)がファージディスプレイ技法により単離された[Carnemolla et al.、Int. J. Cancer 68(3):397〜405頁(1996); Neri et al.、Nat. Biotechnol. 15(12):1271〜5頁(1997); Pini et al.、J. Biol. Chem. 273(34):21769〜76頁(1998)]。L19は、広範囲の実験腫瘍モデルにおいて、およびヒト腫瘍および他の血管新生疾患の領域において、腫瘍血管を染色することができる[Carnemolla et al.、J. Cell Biol. 108(3):1139〜48 頁(1989); Kaczmarek et al.、Int. J. Cancer 59(1):11〜6頁(1994); Berndt et al.、Histochem. Cell Biol. 109(3):249〜55頁(1998)]。Castellaniらは、L19が段階III〜IVの星細胞腫中の腫瘍血管を染色するが、段階I〜IIの星細胞腫における血管の10%未満しか染色しないことを示し、これらの病変におけるEDBの発現が腫瘍の等級づけに使用し得ることを提案した[Castellani et al.、Am. J. Pathol. 161(5):1695〜700頁(2002)]。
【0023】
抗原の保存に基づいて、L19の標的性能は免疫適格性の同系動物モデルで研究することができた。種々の放射性標識された抗体型(scFv、小さい免疫タンパク質/SIPおよびIgG)を用いる生体内分布の研究は、腫瘍部位における、組織1グラム当たりのL19の注射投与量(%ID/g)の20%までの選択的蓄積を示した(Borsi et al、Blood 102(13):4384〜92頁(2003)]。123Iで標識したL19-ダイアボディを用いたヒト癌患者における最初の免疫シンチグラフィ研究により、抗体もヒト固形腫瘍および転移に局在することが確認された[Santimaria et al.、Clin. Cancer Res. 9(2):571〜9頁(2003)]。
【0024】
フィブロネクチンのEDBドメインは、種々の固形腫瘍に過剰発現する血管新生の良質のマーカーである(例えば、腎細胞癌、 結直腸癌、 肝細胞癌、高段階星細胞腫、頭部および頚部腫瘍、膀胱癌、その他)が、正常成体組織では事実上検出不可能である(増殖期の子宮内膜および卵巣の幾つかの血管を例外として)。しかしながら、EDBは、乳癌、前立腺癌および肺癌の幾つかのタイプの大部分の形態で僅かに弱く発現し、したがって、新生物への治療用サイトカインの抗体媒介標的送達に使用され得る新規な血管腫瘍抗原の探索を活気づける。
【0025】
EDBに加えて、癌胎児性テネイシンの細胞外ドメインは、治療法における興味ある標的として確立されている。テネイシン-Cのスプライスアイソフォームは、特に低レベルのEDBが検出され得るこれらの腫瘍のクラスに対して、抗体による治療戦略の標的と考えられる。テネイシン-Cは、細胞外マトリックスの糖タンパク質である。それは、選択的スプライシングによる1次転写で含められても省かれてもよい、幾つかのフィブロネクチンタイプ3の相同性反復を含み、明確な生物学的機能を有する小さいアイソフォーム、および大きいアイソフォームになる。小さいアイソフォームは幾つかの組織で発現されるが、一方テナシン-Cの大きいアイソフォームは、より限定された発現パターンを示す。それは、健康な成体組織では事実上検出不可能であるが、胚形成中に発現され、また、新生物を含む組織再構築経過中の成体組織中で再び発現される。その発現は、乳癌、口腔扁平上皮癌、肺癌、前立腺癌、結直腸癌または星細胞腫および他の脳腫瘍を含む種々の異なる腫瘍の腫瘍間質中の血管構造の周辺に限局される。伝統的に、科学界は、全ての選択的スプライスによるドメインを含むであろうと推定されるテネイシン分子についてはテネイシン-Cの大アイソフォームに、およびこれらのドメインが存在しなかったときはいつでも、テネイシン-Cの小アイソフォームに帰属させた。Carnemollaおよび共同研究者らは、選択的スプライスによるテネイシン-CのドメインCが、他の選択的スプライスによるドメインと比較したとき、より限定されたパターンの発現を示すことを報告した。他の選択的スプライスによるテネイシン-Cのドメインもテネイシン分子中への限定された組込みを示すかどうか、および個々のスプライスされたドメインを抗体を用いる治療戦略の標的として別々に評価することがより適当かどうかということは、その時には不明確なままであった。テネイシン-CのドメインA1およびDに特異的な放射性標識抗体は、神経膠腫およびリンパ腫の治療に臨床的に使用することに成功した。さらに、抗テネイシン抗体による腫瘍の効果的な標的指向が、アビジン/ビオチンを用いるプレ標的指向手法を使用して、あるいは、より最近、テネイシン-Cの小アイソフォームに対して特異的なモノクローナル抗体を使用して、臨床的に示された。しかしながら、全てのこれらの抗体は、マウス由来であって、それ故ヒト患者への反復投与および生物医薬の開発には適していない恐れが最も大である。これらの理由で、テネイシン-CのドメインAl、CおよびDに対して特異的なヒト抗体が、抗体ファージ技法を使用して生成された[Philogen S.p.AのPCT/EP2005/011624]。
【0026】
上に示したように、サイトカインの治療的有用性一般、特に腫瘍および/または炎症性疾患を治療するためのサイトカインの治療的有用性に関する分野に含まれる不確実性は未だ大である。先行技術は、幾つかの特異的抗体-サイトカイン融合タンパク質が標的指向治療処置を可能にするかも知れないことを散発的に示しているが、結果が予測可能でないので、成功を期待する理由は未だない。当業者は、治療的に有用なサイトカインの性質および抗体またはその誘導体とそれの組合せが有する効果に関して推量する段階である。したがって、当業者は、結果が予測できないので、多くの既知のサイトカインと多くの既知の標的指向抗体との適切な組合せを選択する独創的な技術を求めている。
【特許文献1】WO 01/62298
【特許文献2】Philogen S.p.AのPCT/EP2005/011624
【特許文献3】米国特許第5582981号
【非特許文献1】Neri & Bicknell、Nat. Rev. Cancer (2005) 5:436〜446頁
【非特許文献2】Osenga et al.、Clin. Cancer Res. 3月15日; 12(6):1750〜9頁(2006)
【非特許文献3】Fiorentino et al.、J. Exp. Med. 170(6):2081〜95頁(1989)
【非特許文献4】Kim et al.、J. Immunol. 148(11):3618〜23頁(1992)
【非特許文献5】Syto et al.、Biochemistry 37(48):16943〜51頁(1998)
【非特許文献6】Moore et al.、Annu Rev. Immunol. 19:683〜765頁(2001)
【非特許文献7】Tilg et al.、Gut 50(2):191〜5頁(2002)
【非特許文献8】Bamford et al.、J. Immunol.、160(9):4418〜26頁(1998)
【非特許文献9】Giri et al.、EMBO J.、3(12):2822〜30頁(1994)
【非特許文献10】Joost J. Oppenheim et al.、Cytokine Reference; 213〜221頁(2002)
【非特許文献11】Fehniger et al.、Cytokine Growth Factor Rev.、13(2):169〜83頁(2002)
【非特許文献12】Fehniger et al.、Cytokine Growth Factor Rev.、(2):169〜83頁(2002)
【非特許文献13】Munger et al.、Cell Immunol.、5(2):289〜93頁(1995)
【非特許文献14】Bernard et al.、J. Biol. Chem.、279(23):24313〜22頁(2004)
【非特許文献15】Pettit et al.、J. Biol. Chem.、272(4):2312〜8頁(1997)
【非特許文献16】Wang et al.、Genes lmmun.、5(5):363〜70頁(2004)
【非特許文献17】Chada et al.、Mol. Ther.、10(6):1085〜95頁(2004)
【非特許文献18】Wolk et al.、J. Immunol.、168(11):5397〜402頁(2002)
【非特許文献19】Sieger et al.、Mol. Ther.、9(3):355〜67頁(2004)
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
癌および/または炎症性疾患の治療のための、特に、乾癬、アテローム性動脈硬化および関節炎を治療するための、疾患部位への治療物質の標的送達を可能にし、それにより医薬を集中して残余の健康な組織に対する毒性負荷を減少させることが可能となる、新規な治療物質を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
驚くべきことに、(a)IL-10、(b)IL15、(c)IL-24および(d)GM-CSFからなる群から選択されるサイトカインと融合した、癌胎児性フィブロネクチンの細胞外ドメイン(ED-B)または癌胎児性テネイシンの細胞外ドメインのいずれかを標的とする抗体の特定の組合せが、新規かつ治療上有効な融合タンパク質を提供することが見出された。
【0029】
したがって、上記の目的は、
(i)(ii)と融合した、癌胎児性フィブロネクチンの細胞外ドメイン(ED-B)または癌胎児性テネイシンの細胞外ドメインの少なくとも1つのいずれかに特異的結合親和性を有する抗体、その機能性断片または機能性誘導体と、
(ii)(a)IL-10、(b)IL15、(c)IL-24および(d)GM-CSF、それらの機能性断片および機能性誘導体からなる群から選択されるサイトカインと
を含む融合タンパク質を提供することにより解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
「特異的結合親和性」という用語は、本明細書中で使用されるとき、抗体、その機能性断片または機能性誘導体が、大きい親和性をもって標的タンパク質に特異的に結合し、かつin vivoまたはin vitroの同じ環境、すなわちアッセイ系または身体、器官その他に所在する他のタンパク質には、同じ条件下(例えばpH、温度、緩衝液、その他)で、有意の親和性では結合しないことを意味すると理解されるべきである。一般に、結合特異性は、特異的標的分子との、および多数の無関係な物質との結合アッセイを実施することにより試験される。さらに、機能性試験、免疫組織検査および他の手順を、特定の抗体の結合特異性を評価するために使用することができる。
【0031】
特異的結合し得る抗体、その機能性断片または機能性誘導体を用いる多くのバイオアッセイ(例えばELISA)に対して、1マイクロモル濃度以下の解離定数が、特定の結合様式としばしば関連する検出可能な結合シグナルを得るために必要とされる。本発明で使用するための抗体、機能性断片または機能性誘導体は、約5未満、好ましくは約1マイクロモル濃度(μM)以下、より好ましくは約0.1μM以下、最も好ましくは約1nM以下またはさらに1pM以下の解離定数に対応する特異的結合親和性を有することが好ましい。
【0032】
本発明を実施するための抗体、その機能性断片および機能性誘導体は、標的抗原が利用可能でありさえすれば、ハイブリドーマ技法(Kohler and Milstein、Nature 256、495〜497頁、1975)、抗体ファージディスプレイ(Winter et al.、Annu. Rev. Immunol. 12、433〜455頁、1994)、リボソームディスプレイ(Schaffitzel et al.、J. Immunol. Methods、231、119〜135頁、1999)および反復性コロニーフィルタースクリーニング(Giovannoni et al.、Nucleic Acids Res. 29、E27、2001)により日常的に入手することができる。抗体を断片化して機能性生成物にする典型的プロテアーゼは周知である。他の断片化技法は、生じた断片が特異的高親和性および、好ましくは、マイクロモルからピコモル濃度の範囲の解離定数を有しさえすれば、同様に使用することができる。
【0033】
scFv形態の抗体断片の血管腫瘍を標的とする性能は、(少なくともマイクロモルからピコモル濃度の解離定数については)抗体の標的に対する親和性に決定的に依存することが示されている。例えば、フィブロネクチンのED-Bドメインに対して特異的であり、血管新生のマーカーである高親和性抗体断片scFv(L19)は、抗原に対する親和性のより低い親抗体断片scFv(E1)よりも、腫瘍の新生血管をより有効に標的とすることが示された[Viti et al.、Cancer Res. 15;59(2):347〜52頁(1999)]。ある場合に、(例えば、ある種のホモ二価抗体の形態で会合した)結合活性は、モノマーの中程度の結合親和性を補うことができる[Nielsen et al.、Cancer Res.、60(22):6434〜40 (2000)]。
【0034】
標的指向の用途に非常に便利な抗体断片は、一本鎖Fv断片であり、その中では可変Hドメインおよび可変Lドメインがポリペプチドリンカーによって結合され一緒になっている。血管を標的とする用途のための他の抗体断片は、Fab断片、Fab2断片、ミニ抗体(小免疫タンパク質とも呼ばれる)、タンデムscFv-scFv融合体ならびに適当なドメインとのscFv融合体(例えば、免疫グロブリンのFc部分との)を含む。ある種の抗体形態についての総説としては、Holliger P、Hudson PJ.; Engineered antibody fragments and the rise of single domains. Nat Biotechnol. 2005年9月、23(9):1126〜36頁を参照されたい。
【0035】
本発明に使用するための抗体の「機能性誘導体」という用語は、誘導体が元の抗原に対する実質的に同じ結合親和性を有し、好ましくは、マイクロ、ナノまたはピコモル濃度の範囲の解離定数を有する限り、そのアミノ酸配列中で化学的にまたは遺伝子的に、例えば、アミノ酸残基の付加、置換、および/もしくは欠失により改変された、ならびに/またはその原子および/もしくは機能性化学基の少なくとも1つを化学的に、例えば、付加、欠失、転位、酸化、還元、その他により改変された任意の抗体またはその断片を含むことを意味する。本発明において使用するために最も好ましい抗体誘導体は、下記でより詳細に定義する抗体融合タンパク質である。
【0036】
好ましい実施形態において、本発明で使用するための抗体、その断片または機能性誘導体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDRグラフト抗体、Fv-断片、Fab-断片およびFab2-断片および抗体様結合性タンパク質、例えば、アフィリン(affilines)、アンチカリン(anticalines)およびアプタマーからなる群から選択されるものである。
【0037】
抗体様結合性タンパク質の総説については、Binz et al. 「on engineering binding proteins from non-immunoglobulin domains」、Nature Biotechnology、Vol. 23、No.10、2005年10月、1257〜1268頁を参照されたい。「アプタマー」という用語は、ポリペプチドに高い親和性で結合する核酸のことをいう。アプタマーは、異なる一本鎖RNA分子の大きいプールから、SELEXなどの選別方法(例えば、Jayasena、Clin. Chem.、45、1628〜1650頁、(1999); Klug and Famulok、M. Mol. Biol. Rep.、20、97〜107頁(1994); 米国特許第5582981号を参照されたい)により単離することができる。アプタマーは、合成することもでき、また、それらの鏡像体で、例えば、L-リボヌクレオチドとして選別することもできる(Nolte et al.、Nat. Biotechnol.、14、1116〜1119頁、(1996); Klussmann et al.、Nat. Biotechnol.、14、1112〜1115頁、(1996))。この様に単離された形態は、それらが天然に生ずるリボヌクレアーゼによって分解されず、したがって、より大なる安定性を有するという利点を有する。
【0038】
他の抗体様結合性タンパク質および古典的な抗体の代替物は、いわゆる「タンパク質骨格」であり、例えば、リポカリンに基づくアンチカリンである(Beste et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、96、1898〜1903頁、(1999))。リポカリン、例えば、レチノール結合性タンパク質またはビリン結合性タンパク質の天然のリガンド結合部位は、例えば、「コンビナトリアルタンパク質設計」アプローチを利用することにより、それらが選択されたハプテンに結合するように変化させることができる(Skerra、Biochem. Biophys. Acta、1482、337〜350頁、(2000))。他のタンパク質骨格について、それらが抗体の代替物であることも知られている(Skerra、J. Md. Recognit、13、167〜287頁、(2000))、(Hey、Trends in Biotechnology、 23、514〜522頁、(2005))。
【0039】
本発明によれば、機能性抗体誘導体という用語の意味は、抗体に代わる前記タンパク質誘導代替物、すなわち、癌胎児性フィブロネクチンまたは癌胎児性テネイシンの少なくとも1つの細胞外ドメインを特異的に認識する抗体様結合性タンパク質、例えば、アフィリン、アンチカリンおよびアプタマーなどを含む。
【0040】
まとめると、抗体、その機能性断片および機能性誘導体という用語は、癌胎児性フィブロネクチンまたは癌胎児性テネイシンの細胞外ドメインのいずれか1つに対して、これらの標的に対する特異的結合親和性を有する完全抗体と同じまたは同様な特異的結合親和性を有する全ての物質を意味する。
【0041】
テネイシンについては、利用可能な多数のアイソフォーム、例えばテネイシン-C、テネイシン-Rおよびテネイシン-Xがある。本発明を実施するためには、テネイシン-Cの大きいアイソフォームの細胞外ドメインが、本発明の融合タンパク質の一部分である抗体、その機能性断片または機能性誘導体の特異的標的として最も好ましい。
【0042】
好ましい実施形態において、本発明の融合タンパク質の一部分である抗体、その機能性断片または機能性誘導体は、癌胎児性テネイシン-Cの細胞外ドメインの少なくとも1つに、より好ましくは、テネイシン-Cの大きいアイソフォームの細胞外ドメインの少なくとも1つに、特異的結合親和性を有する。
【0043】
テネイシン-Cの細胞外ドメインは、ドメインAl、A2、A3、A4、B、CおよびDと表される。これらのドメインの1つに対して向けられた利用可能な多数の抗体がすでにある(Siri A. et al.、「Different susceptibility of small and large human tenascin-C isoforms to degradation by matrix metalloproteinases.」 J. Biol. Chem.、1995年4月14日、270(15):8650〜4頁; Carnemolla B. et al.、「Identification of a glioblastoma-associated tenascin-C isoform by a high affinity recombinant antibody.」 Am. J. Pathol. 1999年5月、154(5):1345〜52頁; Silacci M. et al、「Human monoclonal antibodies to domain C of tenescin-C selectively target solid tumors in vivo.」 Protein Eng. Des. Sel. 2006年10月、19(10):471〜8頁を参照されたい)。
【0044】
より好ましい実施形態において、本発明は、テネイシン-Cの細胞外ドメイン、すなわちAl、A2、A3、A4、B、CおよびDのいずれか1つに、好ましくはドメインAl、CまたはD、より好ましくはテネイシン-CのドメインCのいずれか1つに特異的結合親和性を有する抗体、その機能性断片または機能性誘導体を含む、本発明の融合タンパク質に関する。
【0045】
「融合タンパク質」という用語は、本発明の文脈で使用されるとき、前記抗体、断片または機能性誘導体が、(a)IL-10、(b)1L15、(c)IL-24および(d)GM-CSF、それらの機能性断片および機能性誘導体からなる群から選択されるサイトカインに、何らかの形で、例えば、共有結合および/または非共有結合、例えばイオン結合により結合されている、全ての複合体を包含することを意味する。この用語は、両方の結合配置、すなわち抗体-サイトカインまたはサイトカイン-抗体を包含する。
【0046】
前記サイトカインに関する機能性断片および機能性誘導体という用語は、本質的に、抗体に対する同じ用語との類推で解釈されるものである。サイトカインの機能性断片および誘導体は、本質的に、天然に生ずるサイトカインと同じ生理学的機能/活性を有するものである。例えば、本発明による融合タンパク質を調製するためのサイトカイン、その断片および誘導体の機能/活性を測定するのに好ましいアッセイは:
【0047】
IL-10またはその機能性誘導体のサイトカイン活性/機能は、マウスの肥満細胞MC/9で増殖アッセイを実施することにより測定することができる。例えば、前記細胞は、10%FBS、10%Rat T-Stim(Becton Dickinson)、1%抗生物質、2mMグルタミンおよび0.05mMβ-メルカプトエタノールを含むDMEM培地中で培養される[Thompson-Snipes et al.、J. Exp. Med. 173(2):507〜10頁(1991)]。アッセイを準備するために、Rat T-Stimを含まない100μlの培地を超低付着の96ウェルの平底組織培養プレート(Costar(登録商票)3474)の第1列以外の各ウェルに入れる。200μlの組換えヒト(rhu)IL-10(100ng/ml)または試験すべき試料の等モル量を、第1列のウェルに入れる。マイクロタイタープレートの列を横切る1:2段階希釈を、第1列から始めて、100μlの試料を列の次のウェルに移して混合することにより準備する。1つの列のウェルは、陰性対照として100μlのアッセイ培地のみ(サイトカインなし)を含む。次にMC/9細胞を計数しておよび5×105細胞/mlの濃度に希釈する。残留サイトカインを除去するために、細胞を、Rat T-Stimを含まない培養培地で遠心分離することにより2回洗浄し、培地をアスピレーターで吸引し、細胞を新鮮培地中に再懸濁させる。100μlのこの細胞懸濁液を96ウェルプレートのウェルに加える(5×104細胞/ウェル)。48〜72時間後、20μlの5mg/ml MTT溶液(PBS中、濾過済み)、ミトコンドリアのデヒドロゲナーゼのための基質、を細胞に加える。その4時間後、プレートを2400gで10分間遠心する。培地を吸引して、100μlのDMSO(Fluka 41641)を加えることにより細胞を溶解する。最後に、プレートを570nmで読む。各濃度は3連で試験する。
【0048】
例えば、huIL15またはその機能性誘導体のサイトカイン活性/機能は、細胞障害性Tリンパ球系統2(CTLL-2)でアッセイを実施することにより測定することができる(Biosource Cytokine Facts handbook)。前記細胞は、10%FBS、1%抗生物質、2mMグルタミン(100×)、1mMピルビン酸ナトリウム(100×)および50μM 2-メルカプトエタノール(1000×)を含むRPMI培地中で増殖させる。それに加えて、CTLL-2細胞は20U/ml huIL-2(Roche 1 011 456)を必要とする。アッセイ開始の約1週間前、細胞は飢餓にして、10U/mI huIL-2のみを与えるべきである。アッセイの準備として、50μlのCTLL-2アッセイ培地を、超低付着の96ウェルの平底組織培養プレート(Costar(登録商票)3474)の第1列以外の各ウェルに入れる。100μlの組換えヒトIL-15標準(10ng/ml)または等モル量の試験試料を最初のウェルに入れる。最初のウェルで始めて、50μlを列の次のウェルに移すことにより、1:2段階希釈を行う。1つの列のウェルは、陰性対照として50μlのアッセイ培地のみ(rhuIL-15なし)を含む。CTLL-2細胞を計数して5×105細胞/mlの濃度に希釈する。残留huIL-2を除去するために、細胞を次のようにして洗浄する:細胞を5分間1100rpmで遠心した後、培地を吸引して、細胞ペレットを新鮮培地中に再び懸濁させる。この洗浄操作は、2回繰り返す。50μlの細胞懸濁液を各マイクロタイタープレートのウェルに加え(5×104細胞/ウェル)、プレートを37℃および5%CO2でインキュベートする。測定は、3連で行う。72時間後、20μlの5mg/ml MTT(Sigma 206-069-5)溶液(PBS中)を各ウェルに加える。その2から4時間後、プレートを2400gで10分間遠心する。培地を吸引して、100μlのDMSO(Fluka 41641)を加えることにより、細胞を溶解させる。次に、プレートを570nmで読む。
【0049】
例えば、サイトカインとしてのIL-24またはその機能性誘導体の生物学的機能/活性を試験する目的で、PBMCによる2次サイトカイン分泌(IL-6、TNFαおよびIFNγ)のその誘発を検査することができる[Caudell et al.、J. Immunol.、168(12):6041〜6頁(2002)]。2次サイトカインの検出は特異的ELISAにより行うことができる。
【0050】
他の選択肢は、癌細胞におけるアポトーシスを選択的に誘発する、IL-24またはその機能性誘導体の能力を試験することである[Sauane et al.、Cancer Biol. Ther.、3(8):739〜51頁(2004)]。これを行うために、癌細胞様のDU-145、PC-3、LNCaP、MDA-MB-231その他を使用することができる。細胞を96ウェルのディッシュに入れて12時間付着させた後、IL-24処理(異なる濃度、通常約25〜50μg/ml)を行う。細胞は5〜7日間インキュベートする。細胞増殖および生存細胞数は、MTT染色によりモニターする。570nmで測定した結果の吸光度は生存細胞数に直接比例する。
【0051】
例えば、GM-CSFまたはその機能性誘導体のサイトカイン活性/機能は、マウス肥満細胞MC/9で増殖アッセイを実施することにより測定することができる(Biosource Cytokine Facts handbook)。前記細胞は、10%FBS、10%Rat T-Slim(Becton Dickinson)、1%抗生物質、2mMグルタミンおよび0.05mM β-メルカプトエタノールを含むDMEM培地中で培養される。10%FBS、1%抗生物質、2mMグルタミンおよび0.05M 1-メルカプトエタノールを含むRPMI培地は、アッセイ培地として使用される。アッセイを準備するために、100μlのアッセイ培地を、超低付着の96ウェルの平底組織培養プレート(Costar(登録商票)3474)の第1列以外の各ウェルに入れる。200μlの組換えmuGM-CSF(5ng/ml)または等モル量の試料を、第1列のウェルに入れる。マイクロタイタープレートの列を横切る1:2段階希釈を、第1列から始めて、100μlの試料を列の次のウェルに移して、混合することにより行う。1つの列のウェルは、陰性対照として、100μlのアッセイ培地(GM-CSFなし)のみを含む。MC/9細胞を計数して、5×404細胞/mlの濃度に希釈する。残留サイトカインを除去するために、細胞を遠心することにより、RPMIで2回洗浄し、培地を吸引して、細胞を新鮮RPMIに再び懸濁させる。100μlのこの細胞懸濁液を、96ウェルのプレートの、rmuGM-CSFまたはGM-CSF融合タンパク質に富む100μlの対応する培地がすでに入れられたウェルに加える(5×103細胞/ウェル)。48〜72時間後、20μlの5mg/ml MTT溶液(PBS中、濾過済み)、ミトコンドリアのデヒドロゲナーゼの基質を細胞に加える。その4時間後に、プレートを2400gで10分間遠心する。培地を吸引して、100μlのDMSO(Fluka 41641)を加えることにより、細胞を溶解させる。最後に、プレートを570nmで読む。各濃度は、3連で試験する。
【0052】
本発明の好ましい実施形態において、本発明による融合タンパク質は、配列番号6で表されるアミノ酸配列を有するダイアボディscFv L19(長)を含む。
【0053】
本発明の他の好ましい実施形態において、本発明による融合タンパク質は、配列番号7で表されるアミノ酸配列を有するダイアボディL19(短)を含む。
【0054】
本発明のさらに好ましい実施形態において、融合タンパク質は、癌胎児性テネイシンの細胞外ドメインの少なくとも1つに特異的結合親和性を有する抗体、その機能性断片または機能性誘導体が、配列番号8〜13でそれぞれ表されるアミノ酸配列を有するF16(長)、F16(短)、F16(A34M)(長)、F16(A34M)(短)、G11(長)およびG11(短)からなる群から選択される融合タンパク質である。
【0055】
より好ましくは、本発明による融合タンパク質は、L19(長)、L19(短)、F16(長)、F16(短)、F16(A34M)(長)、F16(A34M)(短)、G11(長)およびG11(短)からなる群のメンバーが、GM-CSF、IL-10、IL15およびIL-24、それらの機能性断片および機能性誘導体からなる群から選択されるサイトカインと融合している融合タンパク質である。
【0056】
本発明の全ての実施形態および態様にとって、サイトカインはマウスまたはヒト、好ましくはヒトのサイトカイン、その機能性断片または機能性誘導体であることが好ましい。
【0057】
本発明による融合タンパク質は、サイトカイン、その機能性断片または機能性誘導体が、抗体、その機能性断片または機能性誘導体とN-末端またはC-末端で融合しているように配置され得る。
【0058】
驚いたことに、L19、F16およびG11の短いリンカー機能性誘導体は、長リンカー変種に比較して、ダイアボディの形成増加をもたらすことが見出された。さらに、驚くべきことに、アミノ酸配列(A->M)[配列番号10および11]中の34位に変異のあるscFv F16(長または短)を含む融合タンパク質は、通常のscFv F16配列に比較してずっと高い発現率を示したことが示された。
【0059】
短変種の上記の利点のために、抗体断片またはその機能性誘導体が、L19(短)、F16(短)、F16(A34M)(短)およびG11(短)からなる群から選択される、本発明によるそれらの融合タンパク質は好ましい。
【0060】
F16(A34M)変種(長または短)を含む融合タンパク質はより好ましく、および短F16(A34M)変種を含むそれらは最も好ましい。
【0061】
実際のところ、独立の態様において本発明は、
(i)任意のサイトカイン、その機能性断片および機能性誘導体に融合した、癌胎児性テネイシンの細胞外ドメインの少なくとも1つに特異的結合親和性を有するF16(A34M)(短または長、好ましくは短)
を含む融合タンパク質に関する。
【0062】
好ましい実施形態において、本発明による融合タンパク質は、L19-IL-10、IL15-L19、IL-24-L19、L19-GM-CSF、L19-IL15、IL24-L19からなる群から選択される。
【0063】
他の好ましい実施形態において、本発明による融合タンパク質は、配列番号14〜19で表されるアミノ酸配列を有するものからなる群から選択される。
【0064】
他の態様において、本発明は、本発明による融合タンパク質の、医薬製造のための使用に関する。
【0065】
好ましい実施形態において、本発明は、上記の融合タンパク質の、哺乳類における、好ましくはヒトにおける癌の治療のための使用に関する。
【0066】
他の好ましい実施形態において、本発明は、上記の融合タンパク質の、哺乳類における、好ましくはヒトにおける炎症性疾患、好ましくは慢性炎症性疾患の治療のための使用に関する。
【0067】
好ましくは、炎症性疾患は、乾癬、アテローム性動脈硬化、関節炎、好ましくは関節リウマチからなる群から選択される。
【0068】
本発明のさらなる態様は、本発明の少なくとも1つの融合タンパク質、および場合により薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0069】
本発明の医薬組成物は、通常治療的有効量の本発明による融合タンパク質および場合により薬学的に許容される賦形剤などの補助物質を含む。前記医薬組成物は、医薬の技術分野において周知の形で調製される。担体または賦形剤は、有効成分の媒体または媒質として役立ち得る液体材料であってよい。適当な担体または賦形剤は、当技術分野において周知であり、例えば、安定剤、抗酸化剤、pH調節剤、制御放出賦形剤を含む。本発明の医薬製剤は、例えば非経口用途に適用可能であり、溶液剤の剤形等で患者に投与することができる。
【0070】
最後に、本発明の他の態様は、有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者、好ましくは癌および/または炎症性疾患を患う患者に投与する治療方法に関する。
【0071】
上記の疾患または状態を患う被検者の治療の実施に当たって、本発明の融合タンパク質は、治療化合物を有効量で生体利用可能にする、経口または非経口経路を含む任意の形態または様式で投与することができる。例えば、本発明の組成物は、皮下、筋肉内、静脈内等に投与することができる。製剤調製分野の当業者は、選択された製品の具体的特徴、治療すべき疾患または状態、疾患または状態の段階および他の関連する状況に依存して、投与の適当な形態および方式を容易に選択することができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co. (1990)を参照されたい)。本発明の組成物は、単独または薬学的に許容される担体もしくは賦形剤と組み合わせた医薬製剤の形態で投与することができ、その比率および性質は、選択された製品の溶解度および化学的特性、選択された投与経路および標準的薬務により決定される。本発明の製品は、それ自体有効であるが、安定性、結晶化し易さ、溶解度増大等の目的で、それらの薬学的に許容される塩、例えば酸付加塩または塩基付加塩などの塩の形態で製剤化し、および投与することができる。
【0072】
配列リスト
配列番号1は、ヒトIL-10のアミノ酸配列を示す; アクセッション番号:P22301 (SwissProt); Vieira et al.、 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88(4)、1172〜1176頁(1991)。
MHSSALLCCLVLLTGVRASPGQGTQSENSCTHFPGNLPNMLRDLRDAFSRVKTFFQMKDQLDNLLLKESLLEDFKGYLGCQALSEMIQFYLEEVMPQAENQDPDIKAHVNSLGENLKTLRLRLRRCHRFLPCENKSKAVEQVKNAFNKLQEKGIYKAMSEFDIFINYIEAYMTMKIRN
【0073】
配列番号2は、ヒトIL-15のアミノ酸配列を示す; アクセッション番号:P40933 (SwissProt); Grabstein et al.、Science 264 (5161)、965〜968頁(1994)。
NWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS
【0074】
配列番号3は、ヒトIL-24アミノ酸配列を示す; アクセッション番号:Q13007 (SwissProt); Jiang et al.、Oncogene 11 (12)、2477〜2486頁(1995)。
AQGQEFHFGPCQVKGVVPQKLWEAFWAVKDTMQAQDNITSARLLQQEVLQNVSDAESCYLVHTLLEFYLKTVFKNYHNRTVEVRTLKSFSTLANNFVLIVSQLQPSQENEMFSIRDSAHRRFLLFRRAFKQLDVEAALTKALGEVDILLTWMQKFYKL
【0075】
配列番号4は、ヒトGM-CSFのアミノ酸配列を示す; アクセッション番号:P04141(SwissProt); Lee et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82 (13)、4360〜4364頁(1985)。
APARSPSPSTQPWEHVNAIQEARRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEPTCLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQIITFESFKENLKDFLLVIPFDCWEPVQE
【0076】
配列番号5は、マウスGM-CSFのアミノ酸配列を示す; アクセッション番号:P01587 (SwissProt); Miyatake et al.、EMBO J. 4 (10)、2561〜2568頁(1985)。
APTRSPITVTRPWKHVEAIKEALNLLDDMPVTLNEEVEVVSNEFSFKKLTCVQTRLKIFEQGLRGNFTKLKGALNMTASYYQTYCPPTPETDCETQVTTYADFIDSLKTFLTDIPFECKKPVQK
【0077】
配列番号6は、L19(長)のアミノ酸配列を示す; Viti et al.、Cancer Res.、59(2):347〜52頁(1999)。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFSMSWVRQAPGKGLEWVSSISGSSGTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPFPYFDYWGQGTLVTVSSGDGSSGGSGGASTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYYASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQTGRIPPTFGQGTKVEIK
(太字は14アミノ酸のリンカーを示す)
【0078】
配列番号7は、L19(短)のアミノ酸配列を示す(未公表)。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFSMSWVRQAPGKGLEWVSSISGSSGTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPFPYFDYWGQGTLVTVSSGSSGGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYYASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQTGRIPPTFGQGTKVEIK
(太字は5アミノ酸のリンカーを示す)
【0079】
配列番号8は、F16(長)のアミノ酸配列を示す。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYGASWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKAHNAFDYWGQGTLVTVSRGGGGSGGGGSGGGGSSELTQDPAVSVALGQTVRITCQGDSLRSYYASWYQQKPGQAPVLVIYGKNNRPSGIPDRFSGSSSGNTASLTITGAQAEDEADYYCNSSVYTMPPVVFGGGTKLTVLG
【0080】
配列番号9は、F16(短)のアミノ酸配列を示す。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYGASWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKAHNAFDYWGQGTLVTVSRGSSGGSSELTQDPAVSVALGQTVRITCQGDSLRSYYASWYQQKPGQAPVLVIYGKNNRPSGIPDRFSGSSSGNTASLTITGAQAEDEADYYCNSSVYTMPPVVFGGGTKLTVLG
(太字は5アミノ酸のリンカーを示す)
【0081】
配列番号10は、F16(A34M)(長)のアミノ酸配列を示す。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYGMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKAHNAFDYWGQGTLVTVSRGGGGSGGGGSGGGGSSELTQDPAVSVALGQTVRITCQGDSLRSYYASWYQQKPGQAPVLVIYGKNNRPSGIPDRFSGSSSGNTASLTITGAQAEDEADYYCNSSVYTMPPVVFGGGTKLTVLG
(下線を引いたアミノ酸はAのMへの置換を示す)
【0082】
配列番号11は、F16(A34M)(短)のアミノ酸配列を示す。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYGMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKAHNAFDYWGQGTLVTVSRGSSGGSSELTQDPAVSVALGQTVRITCQGDSLRSYYASWYQQKPGQAPVLVIYGKNNRPSGIPDRFSGSSSGNTASLTITGAQAEDEADYYCNSSVYTMPPVVFGGGTKLTVLG
(下線を引いたアミノ酸はAのMへの置換を示す。太字は5アミノ酸のリンカーを示す)
【0083】
配列番号12は、G11(長)のアミノ酸配列を示す。
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSGSRMGWVRQAPGKGLEWVSAINEEGGQTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKHPPHRPFDYWGQGTLVTVSRGGGGSGGGGSGGGGSSELTQDPAVSVALGQTVRITCQGDSLRLYYASWYQQKPGQAPVLVIYGKNNRPSGIPDRFSGSSSGNTASLTITGAQAEDEADYYCNSSHGPRRPVVFGGGTKLTVLG
【0084】
配列番号13は、G11(短)アミノ酸配列を示す。
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSGSRMGWVRQAPGKGLEWVSAINEEGGQTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKHPPHRPFDYWGQGTLVTVSRGSSGGSSELTQDPAVSVALGQTVRITCQGDSLRLYYASWYQQKPGQAPVLVIYGKNNRPSGIPDRFSGSSSGNTASLTITGAQAEDEADYYCNSSHGPRRPVVFGGGTKLTVLG
【0085】
配列番号14は、融合タンパク質L19(長)-huIL-10のアミノ酸配列を示す:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFSMSWVRQAPGKGLEWVSSISGSSGTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPFPYFDYWGQGTLVTVSSGDGSSGGSGGASTGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYYASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQTGRIPPTFGQGTKVEIKSSSSGSSSSGSSSSGSPGQGTQSENSCTHFPGNLPNMLRDLRDAFSRVKTFFQMKDQLDNLLLKESLLEDFKGYLGCQALSEMIQFYLEEVMPQAENQDPDIKAHVNSLGENLKTLRLRLRRCHRFLPCENKSKAVEQVKNAFNKLQEKGIYKAMSEFDIFINYIEAYMTMKIRN
【0086】
配列番号15は、融合タンパク質L19(短)-huIL15のアミノ酸配列を示す:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFSMSWVRQAPGKGLEWVSSISGSSGTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPFPYFDYWGQGTLVTVSSGSSGGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYYASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQTGRIPPTFGQGTKVEIKSSSSGSSSSGSSSSGNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS
【0087】
配列番号16は融合タンパク質huIL15-L19(短)のアミノ酸配列を示す:
NWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTSSSSSGSSSSGSSSSGEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFSMSWVRQAPGKGLEWVSSISGSSGTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPFPYFDYWGQGTLVTVSSGSSGGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYYASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQTGRIPPTFGQGTKVEIK
【0088】
配列番号17は、融合タンパク質のhuIL24-L19(短)アミノ酸配列を示す:
AQGQEFHFGPCQVKGVVPQKLWEAFWAVKDTMQAQDNITSARLLQQEVLQNVSDAESCYLVHTLLEFYLKTVFKNYHNRTVEVRTLKSFSTLANNFVLIVSQLQPSQENEMFSIRDSAHRRFLLFRRAFKQLDVEAALTKALGEVDILLTWMQKFYKLSSSSGSSSSGSSSSGEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFSMSWVRQAPGKGLEWVSSISGSSGTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPFPYFDYWGQGTLVTVSSGSSGGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYYASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQTGRIPPTFGQGTKVEIK
【0089】
配列番号18は、融合タンパク質L19(短)huGM-CSFのアミノ酸配列を示す:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFSMSWVRQAPGKGLEWVSSISGSSGTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPFPYFDYWGQGTLVTVSSGSSGGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYYASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQTGRIPPTFGQGTKVEIKSSSSGSSSSGSSSSGAPARSPSPSTQPWEHVNAIQEARRLLNLSRDTAAEMNETVEVISEMFDLQEPTCLQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQHCPPTPETSCATQIITFESFKENLKDFLLVIPFDCWEPVQE
【0090】
配列番号19は、融合タンパク質L19(短)-マウスのGM-CSFアミノ酸配列を示す:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFSMSWVRQAPGKGLEWVSSISGSSGTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKPFPYFDYWGQGTLVTVSSGSSGGEIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSFLAWYQQKPGQAPRLLIYYASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQTGRIPPTFGQGTKVEIKSSSSGSSSSGSSSSGAPTRSPITVTRPWKHVEAIKEALNLLDDMPVTLNEEVEVVSNEFSFKKLTCVQTRLKIFEQGLRGNFTKLKGALNMTASYYQTYCPPTPETDCETQVTTYADFIDSLKTFLTDIPFECKKPVQK
【0091】
(実施例)
(実施例1)
融合タンパク質の調製
サイトカインは、15アミノ酸のリンカーにより分離されている、scFv抗体断片のCまたはN末端のいずれかに、遺伝子的に融合させた。組換えタンパク質の分泌に必要な分泌配列に先行される生じた断片は、哺乳類の発現ベクター中にクローニングされて、融合タンパク質が安定にトランスフェクトされたHEK 93細胞中で発現した。その構築物を培養培地から抗原カラムで親和クロマトグラフィにより精製し、1〜2mg/lの収率であった。品質管理は、SDS-PAGEおよびゲル濾過により行った。
【0092】
(実施例2)
融合タンパク質の製剤化および投与
融合タンパク質は、生理的溶液に溶解して、動物に静脈内投与する。そのタンパク質は、それらの等電点および所望の貯蔵期間に依存して、次の緩衝液の1つに貯蔵する。タンパク質は、マイナス80℃で長期間(1か月を超えて)保存される。解凍凍結反復サイクルによる凝集を防止するために、1%グリセロールおよび0.04%ツイーン80を添加することができる。
PBS(リン酸緩衝食塩水):100mM NaCl、30mM Na2HPO4×2H2O、20mM NaH2PO4×2H2O、pH 7.4
K-PBS:137mM NaCl、8mM Na2HPO4×2H20、2.7mM KCl、1.5mM KH2PO4、pH 7.4
PBS Siena: 20mM NaCl、6.7mM Na2HPO4×2 H2O、1.8 mM KCl、133mMマンニトール、pH 6.3
トリス(トリス緩衝食塩水):20mMトリス、130mM NaCl、pH 8.2
注射は、通常、毎日または隔日で、3〜5回投与する。投与量は、通常の実験法にしたがって文献値により選択する。
【0093】
(実施例3)
皮下F9腫瘍を移植した129Svマウスにおける融合タンパク質の標的効率
L19-IL10の放射化製剤のin vivo標的特性を、皮下F9奇形癌を担持する129SvEv マウスにおける生体内分布実験で評価した。有利な腫瘍/器官比(7:1と128:1の間の範囲にある)が、静脈内投与後24時間に観察された。L19-IL15、IL15-L19、IL24-L19およびL19-GM-CSFの放射化製剤のin vivo標的特性を、皮下F9奇形癌を担持する129SvEv マウスにおける生体内分布実験で評価した。有利な腫瘍:機関比が、静脈内投与後24時間で観察された。
【0094】
(実施例4)
ヒトモノクローナル抗体L19およびG11は、関節炎部位に選択的に蓄積する。
ミニ抗体形式におけるL19およびG11のin vivo標的指向性能(Borsi et al.、Int. J. Cancer、102(1):79〜85頁(2002))を、抗体検出のため蛍光および放射能の両方を使用して、関節炎マウスで研究した。
【0095】
関節炎マウスに、近赤外色素Alexa 750で標識したSIP(L19)、SIP(G11)または対照SIPを注射した。静脈内注射の24時間後に、動物を近赤外蛍光イメージャーを使用して撮像し、SIP(L19)およびSIP(G11)の場合に、関節炎肢に存在する病変部における強い選択的な抗体蓄積を明らかにした[図2]。それに反して、対照SIP、すなわち、陰性対照として使用されたマウスには無関係な特異性の抗体を注射されたマウスは、炎症のある肢において、洩れ易い血管を通った標識抗体の非特異的な血管外遊出による微かな蛍光シグナルを示しただけである。
【0096】
関節炎マウスに、放射性標識されたSIP(L19)およびSIP(G11)を注射した。24時間後、マウスを屠殺して、肢をオートラジオグラフィにより撮像した。放射能の選択的蓄積が、SIP(L19)およびSIP(G11)を注射されたマウスの炎症のある四肢で観察され、一方マウスに無関係な特異性のSIP抗体を注射された、同程度の炎症を示すマウスでは、選択的な抗体の蓄積は検出されなかった[図3]。
【0097】
(実施例5)
関節炎のコラーゲン誘発マウスモデルにおける融合タンパク質L19-IL10の治療的有効性
最も広く使用される最良の関節リウマチ動物モデルは、マウスまたはラットのいずれかにおけるII型コラーゲンに誘発された関節炎(CIA)である[Bliven et al.、Arthritis Rheum. 29(9):1131〜8頁((1986)]。このモデルは、コラーゲンに対する液性および細胞性免疫応答、主要組織適合性部位に存在する遺伝子への連関および幾つかの同様な組織学的症状発現を含む、ヒトの関節リウマチ(RA)に共通する多くの特徴を有すると報告されている。MainiおよびFeldmannは、RAに対する治療戦略として、抗腫瘍壊死因子抗体の研究などの彼らの先駆的研究の大部分を、この動物モデルを使用して実施した[Williams et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A、 89(20):9784〜8頁(1992); Williams et al.、J. Immunol. 165(12):7240〜5頁(2000)]。
【0098】
関節炎病変部へのサイトカインの標的送達の効果:
最初の実験で、CIAを有するマウスを使用して、L19-IL10の治療潜在性を、L19-およびL19-TNFと比較した。食塩水を注射したマウスを、対照群として使用した。関節炎発症後第1日に開始して、マウスに48時間毎に3回注射した。腫瘍治療実験のために以前使用したのと等しい累積投与量は、60μgのL19IL-2および15μgのL19-TNFであった。この実験で、および抗体-IL10融合タンパク質を用いる後続の実験では、マウスで有効であって毒性でないと以前に認められたIL10投与量に合わせて、1匹のマウス当たり450μgのL19-IL10が使用された。
【0099】
L19-IL10は、関節炎スコアおよび肢腫大に対する明確な治療効果を有した(図4参照)。この効果の大きさは、同じ動物モデルにおけるTNF-中和抗体に対して観察された効果に匹敵した。対照的に、L19-IL2およびL19-TNFは、食塩水対照群よりも重症の、急速かつ深刻な患部四肢の腫大をもたらした。治療された動物で死ぬかまたは15%を超える体重減少を示したものはなく、関節炎パラメーターが、3回目の抗体投与後に有意に悪化することはなかった(図4)。
【0100】
IL10の全身的適用に対する標的送達の比較:
非標的指向サイトカインと比較したときの、標的指向型IL10の治療上の優位性を示す目的で、2つの融合タンパク質L19-IL10およびHyHel10-IL10を関節炎のCIAモデルで研究した。前の実験のように、6匹の関節炎マウス群を、関節炎発症の第1日に開始して2日目毎に、L19-IL10、HyHel10-IL10または食塩水の注射で処置した。両方の融合タンパク質について、各マウスに投与された累積投与量は、450μgであった。予想されたように、L19-IL10は、食塩水対照群と比較したとき、有意の治療応答を示し、関節炎スコアおよび肢腫大は関節炎発症後9日(すなわち、最後の注射後4日)まで低いままであった。このモデルにおけるIL10の治療活性の以前の観察結果と一致して、非標的指向HyHEL10-IL10融合タンパク質は、食塩水対照と比較して治療上の利点を示したが、それはL19-IL10の場合程には有効でなかった(図5)。
【0101】
(実施例6)
皮下F9腫瘍を移植された129Sv マウスにおける融合タンパク質L19-IL15、IL24-L19およびL19-GMCSFの治療的有効性
最初の実験において、L19-GM-CSF、L19-IL15およびIL24-L19の治療潜在性を、皮下F9 腫瘍を有するマウスを使用して評価した。食塩水を注射されたマウスを対照群として使用した。腫瘍がすでに可視的かつ測定可能になった腫瘍細胞埋め込み4日後に開始して、マウスに、24時間毎に合計4回注射した。腫瘍治療実験のために以前使用されたのと等しい累積投与量は、L19-GM-CSFについては240μg、L19-IL15については200μg、およびIL24-L19については200μgであった。全ての3種の融合タンパク質は、この設定で無毒性であり、対照群と比較して有意の腫瘍成長遅延を示した(図6〜8)。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】129Svマウスの皮下F9腫瘍中における融合タンパク質の蓄積を例示する図である。生体内分布データは、全て4種の融合タンパク質が正常器官に比較して腫瘍でより高い取り込みを有することを示す。放射性標識タンパク質の注射後24時間におけるデータを示す:A)L19-IL10、B)IL15-L19、C)IL24-L19、D)L19-GMCSFおよびE)L19IL-15。
【図2】関節炎マウスの抗体に媒介された近赤外撮像を示す図である。動物には、SIP(L19)-Alexa750(a)、SIP(G11)-Alexa750(b)または対照SIP-Alexa750(c)を注射した。写真は、蛍光標識抗体の注射後24時間に取った。矢印は、マウス前肢における2度の腫大を示す。
【図3】関節炎肢における放射性標識SIP(L19)およびSIP(G11)の蓄積を示す図である。パネルAは、SIP(L19)-125lを注射されたマウスの関節炎四肢を示す。左肢は2度、右肢は1度の関節炎と分類された。パネルBは、SIP(G11)-1251による同じ実験を示す。この図で、左肢は1度、右肢は2度の関節炎と分類された。パネルCは、マウス中の如何なる構造にも結合しない抗体である対照SIP-125Iを注射されたマウスを示す。この図で、左肢は2度、右肢は1度の関節炎と分類された。
【図4】関節炎病変部へのサイトカインの標的指向を例示する図である。 関節炎マウスの外側尾静脈の静脈内(i.v.)に、食塩水(黒丸)、200μlの食塩水で希釈したL19-IL2(黒三角、波線)、L19-TNFα(カケ印、波線)またはL19-IL10(中抜き四角)を注射した。注射は、関節炎発症後第1日に開始して、それから矢印で示したように、2日目毎に1匹の動物当たり3回注射を繰り返した。融合タンパク質の累積投与量は:1匹のマウス当たりそれぞれ、20μg当量のIL2、6μg当量のTNFαおよび150μg当量のIL10であった。関節炎スコアは、毎日評価して、平均±SEMとして表した。四肢の腫大は2日目毎に測定して、四肢全ての平均を、肢の厚さとして各動物に帰属させた。示した結果は各群の平均±SEMである。各群は7匹のマウスで構成された。
【図5】IL10の炎症部位への標的送達が、全身的IL10処置の優ることを示す図である。関節炎マウスの外側尾静脈の静脈内(i.v.)に、食塩水(黒丸)、200μlの食塩水で希釈したL19-IL10(中抜き四角)またはHyHel10-IL10(バツ印、破線)を注射した。注射は、関節炎発症後第1日に開始して、それから矢印で示したように、2日目毎に1匹の動物当たり3回注射を繰り返した。融合タンパク質の累積投与量は、マウス1匹当たり150μg当量のIL10であった。関節炎スコアは、毎日評価して、平均±SEMとして表した。四肢の腫大は2日目毎に測定して、四肢全ての平均を、肢の厚さとして各動物に割り当てた。示した結果は各群の平均±SEMである。各群は6匹のマウスで構成された。
【図6】異なる量のL19-GM-CSFによる皮下F9腫瘍の治療を例示する図である。60μgのL19-GM-CSFを使用する4日間連続した毎日の静脈内注射(矢印)は、食塩水(PBS)処置群と比較して有意の腫瘍成長遅延を示した。
【図7】L19-IL15による皮下F9腫瘍の治療を例示する図である。50μgのL19-IL15を使用する4日間連続した毎日の静脈内注射(矢印)は、対照(PBS)群と比較して有意の腫瘍成長遅延を示した。
【図8】IL24-L19による皮下F9腫瘍の治療を例示する図である。50μgのIL24-L19を使用する4日間連続した毎日の静脈内注射(矢印)は、対照(PBS)群と比較して有意の腫瘍成長遅延を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)(ii)と融合した、癌胎児性フィブロネクチンの細胞外ドメイン(ED-B)または癌胎児性テネイシンの細胞外ドメインの少なくとも1つのいずれかに特異的結合親和性を有する抗体、その機能性断片または機能性誘導体と、
(ii)(a)IL-10、(b)IL15、(c)IL-24および(d)GM-CSF、それらの機能性断片および機能性誘導体からなる群から選択されるサイトカインと
を含む融合タンパク質。
【請求項2】
抗体、その機能性断片または機能性誘導体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDR-グラフト抗体、Fv-断片、Fab-断片、Fab2-断片および抗体様結合性タンパク質からなる群から選択される、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
抗体の機能性誘導体が、配列番号6で表されるアミノ酸配列を有するダイアボディL19(長)である、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
抗体の機能性誘導体が、配列番号7で表されるアミノ酸配列を有するダイアボディL19(短)である、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
癌胎児性テネイシンの細胞外ドメインの少なくとも1つに特異的結合親和性を有する抗体、その機能性断片または機能性誘導体が、配列番号8から13で表されるアミノ酸配列をそれぞれ有するF16(長)、F16(短)、F16(A34M)(長)、F16(A34M)(短)、G11(長)およびG11(短)からなる群から選択される、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
L19(長)、L19(短)、F16(長)、F16(短)、F16(A34M)(長)、F16(A34M)(短)、G11(長)およびG11(短)からなる群のメンバーが、GM-CSF、IL-10、IL15およびIL-24、それらの機能性断片および機能性誘導体からなる群から選択されるサイトカインに融合している、請求項1から5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
サイトカインが、マウスまたはヒト、好ましくはヒトのサイトカイン、その機能性断片または機能性誘導体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
サイトカイン、その機能性断片または機能性誘導体が、抗体、その機能性断片または機能性誘導体に、N末端またはC末端で、好ましくはN末端で融合している、請求項1から7のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
抗体断片またはその機能性誘導体が、L19(短)、F16(短)、F16(A34M)(短)およびG11(短)、好ましくはF16(A34M)(短)からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
L19-IL-10、IL15-L19、IL-24-L19、L19-GM-CSF、L19-IL15、IL24-L19からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
配列番号14〜19で表されるアミノ酸配列を有するものからなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の融合タンパク質の、医薬製造のための使用。
【請求項13】
哺乳類における、好ましくはヒトにおける癌の治療のための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
哺乳類における、好ましくはヒトにおける炎症性疾患、好ましくは慢性炎症性疾患の治療のための、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
炎症性疾患が、乾癬、アテローム性動脈硬化、関節炎、好ましくは関節リウマチからなる群から選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの融合タンパク質、および場合により薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項17】
有効量の請求項16に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者、好ましくは、癌および/または炎症性疾患を患う患者に投与する治療方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公表番号】特表2009−536170(P2009−536170A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508239(P2009−508239)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004044
【国際公開番号】WO2007/128563
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508255850)
【Fターム(参考)】