説明

治療用化合物としてのムスカリン作用剤

脳の認知機能を刺激するための作用剤として有用なM選択性を有する式(I)で表されるムスカリンアゴニスト。
【化36】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳の認知機能を刺激するための作用剤として有用なM−選択性を有するムスカリンアゴニストに関する。
【発明の開示】
【0002】
本発明の第1実施形態によれば、下記式で表される化合物またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【化13】

式中、
AはCHまたは窒素であり、
Bは−CH−、−CHF−、−CF−、NRまたはOであり、AがNである場合には、Bは−CH−、−CHF、−または−CF−であり、
Gは酸素または=N−CNであり、
は水素またはC−Cアルキルであり、
は水素;C−Cアルコキシまたはハロゲンで任意に置換されたC−C10アルキル;ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C2−ハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換されていてもよいアラルキル、−CH−複素環、または−CH−Cシクロアルキル環であり、
は水素、炭素数3〜6の環状アルキルラジカル、またはC−Cアルキルであり、
は水素または低級アルキルであり、
は以下の構造の1つを有する5員不飽和複素環構造であり、
【化14】

式中、LおよびMは互いに独立してOまたはN(または必要な場合にはNH)であり、LとMの両方がOであることはできず、
YはS、CH、OまたはN(または必要な場合にはNH)であり、
XはCまたはNであり、
は低級アルキル;水素;ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換されたアリールアミノ;ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換されたアラルキル;または下記式で表される基であり、
【化15】

式中、nは1〜4の整数であり、HETはハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換された複素環基であり、または
はC−Cアラルキル(例えばCH−CH−フェニル)または―CH−O−R(式中、Rはフッ素またはヒドロキシで任意に置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアラルキル(例えばCH−CH−フェニル)である)であってもよく、
は水素または(ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換された)アリールであり、
およびRの一方が水素ではない場合、他方は水素である。
【0003】
本発明の第2実施形態によれば、治療上有効な量の第1実施形態に係る化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0004】
本発明の第3実施形態によれば、薬剤として使用される本発明の第1実施形態に係る化合物が提供される。
【0005】
本発明の第4実施形態によれば、アセチルコリンまたはムスカリン系の異常によって生じる疾患を治療するための薬剤の製造における、本発明の第1実施形態に係る化合物の使用が提供される。
【0006】
本発明の第5実施形態によれば、アセチルコリンまたはムスカリン系の異常によって生じる疾患を治療、予防および/または抑制するための方法であって、治療上有効な量の本発明の第1実施形態に係る化合物を患者に投与することを含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施形態において、Gは好ましくは酸素である。
【0008】
は好ましくは水素または低級アルキル(メチル等)である。Rは最も好ましくは水素である。
【0009】
は、C−Cアルキル(n−C11等)、または、アリールがハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換されていてもよい−CH−アリール(好ましくは−CH−C)であることができる。あるいは、Rは、−CH−Cシクロアルキル(−CH−シクロペンタンまたは−CH−シクロペンタ−1,3−ジエン等)であってもよい。他の好ましいRラジカルは、−CH−複素環アリール(−CH−ベンズオキサゾール等)であり、−CH−複素環アリールはハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換されていてもよい。ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換されていてもよい他の−CH−複素環アリール基(−CH−ベンゾジオキソール、−CH−ベンゾオキサチオール、−CH−ベンズイミダゾール、−CH−ベンゾチアゾール、−CH−ベンゾジチオール、−CH−ピリジル、−CH−ピリミジル等)も本発明の範囲に含まれる。また、ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換されていてもよい他の非芳香族−CH−複素環基(−CH−チオフェン、−CH−フラン、−CH−ピロリジン、−CH−オキサチオラン、−CH−チアゾリジン、−CH−オキサゾリジン、−CH−ジチオラン、−CH−ジオキソラン、−CH−イミダゾリン等)も本発明の範囲に含まれる。
【0010】
また、ナフチルがハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換された(または置換されていない)−CH−ナフチルも本発明で使用することができるが、現状ではやや好ましくない。
【0011】
は好ましくは水素、シクロブチル、シクロプロピル、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチルであり、より好ましくは水素またはシクロブチルである。
【0012】
は好ましくは水素である。
【0013】
は好ましくは以下の5員不飽和複素環構造の1つである。
【化16】

【0014】
式中、Rは好ましくはメチル、アラルキル、アリールアミノ、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するメチレン基を有するアラルキル、または、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するエチレン基を有するアラルキルであり、Rはより好ましくはフェニル、1以上のハロゲン(例えば塩素)によって置換されたフェニルアミノ、1以上のハロゲン(例えば塩素)によって置換されたフェニルメチル、または1以上のハロゲン(例えば塩素)によって置換されたフェネチルであり、Rは最も好ましくはメタ塩素置換フェニルアミノ、メタ塩素置換フェニルメチル、またはメタ塩素置換フェネチルである。
【0015】
上記5員不飽和複素環のうちで現在より好ましいものは、5−メチル−1,2,4−チアジアゾール−3−イル、5−メチル−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、5−メチル−1,4−オキサゾール−3−イル、4−メチル−1,3−オキサゾール−2−イル、5−メチル−1,3−オキサゾール−2−イル、5−メチル−1,4−オキサゾール−2−イルである。
【0016】
が−CH−O−Rである場合、Rは好ましくは−C−Cアラルキルであり、より好ましくは−CH−CH−アリールであり、最も好ましくは−CH−CH−フェニルである。
【0017】
は好ましくは水素、フェニル、またはハロゲン置換フェニルであり、より好ましくはフッ素置換フェニルであり、最も好ましくは3,5−ジフルオロフェニルである。
【0018】
第1実施形態の一態様では、AはCHであり、Bは−CH−であり、Gは酸素であり、Rは水素であり、RはC−C10アルキル(例えばn−C11)、(後述するように任意に置換された)−CH−アリール(例えば−CH−C)、または(後述するように任意に置換された)−CH−複素環アリール(例えば−CH−ベンズオキサゾール)である。Rはシクロブチルまたは水素であり、Rは上述した好ましいまたはより好ましい5員不飽和複素環構造の1つであり、Rは水素または(ハロゲンで任意に置換された)フェニルである。この定義に該当する化合物の例を以下に示す。
【化17】

【化18】

【0019】
別の態様では、AはCHであり、Bは酸素であり、Gは酸素であり、Rは水素であり、RはC−C10アルキル(例えばn−C11)、(後述するように任意に置換された)−CH−アリール(例えば−CH−C)、(後述するように任意に置換された)−CH−C10、または(後述するように任意に置換された)−CH−複素環アリール(例えば−CH−ベンズオキサゾール)である。Rはシクロブチルまたは水素であり、Rは上述した好ましいまたはより好ましい5員不飽和複素環構造の1つ、−CH−O−CH、または−CH−O−CH−CH−Cであり、Rは水素または(ハロゲンで任意に置換された)フェニルである。この定義に該当する化合物の例を以下に示す。
【化19】

【化20】

【0020】
別の態様では、AはCHであり、BはNHであり、Gは酸素であり、Rは水素であり、RはC−C10アルキル(例えばn−C11)、−CH−アリール(例えば、(後述するように任意に置換された)−CH−C、(後述するように任意に置換された)−CH−C10)、(後述するように任意に置換された)−CH−複素環アリール(例えば、−CH−ベンズオキサゾール、−CH−ピリジル、−CH−ピリミジル)、(後述するように任意に置換された)−CH−複素環基、または、(上述したように任意に置換された)−CH−置換Cシクロアルキルであり、Rはシクロブチルまたは水素であり、Rは水素であり、Rは上述した好ましいまたはより好ましい5員不飽和複素環構造の1つ、−CH−O−CH、または−CH−O−CH−CH−Cであり、Rは水素または(ハロゲンで任意に置換された)フェニルである。この定義に該当する化合物の例を以下に示す。
【化21】

【0021】
別の態様では、AはNであり、Bは−CH−であり、Gは酸素であり、Rは水素であり、RはC−C10アルキル(例えば、n−C11)、−CH−アリール(例えば、後述するように任意に置換された−CH−C)、(後述するように任意に置換された)−CH−C10、(後述するように任意に置換された)−CH−複素環アリール(例えば、−CH−ベンズオキサゾール、−CH−ピリジル、または−CH−ピリミジル)、(後述するように任意に置換された)−CH−複素環基、または(上述したように任意に置換された)−CH−置換Cシクロアルキルであり、Rはシクロブチルまたは水素であり、Rは上述した好ましいまたはより好ましい5員不飽和複素環構造の1つであり、Rは水素または(ハロゲンで任意に置換された)フェニルである。この定義に該当する化合物の例を以下に示す。
【化22】

【化23】

【0022】
別の態様では、AはNであり、Bは−CH−であり、Gは酸素であり、Rは水素であり、RはC−C10アルキル(例えば、n−C11)、(後述するように任意に置換された)−CH−アリール(例えば、−CH−C)、(後述するように任意に置換された)−CH−複素環アリール(例えば、−CH−ベンズオキサゾール、−CH−ピリジルまたは−CH−ピリミジル)、(上述したように任意に置換された)−CH−複素環基、または、(後述するように任意に置換された)−CH−置換Cシクロアルキルであり、Rはシクロブチルまたは水素であり、Rは−CH−O−CHであり、Rは水素または(ハロゲンで任意に置換された)フェニルである。この定義に該当する化合物の例を以下に示す。
【化24】

【化25】

【化26】

【0023】
別の態様では、AはNであり、Bは−CH−であり、Gは酸素であり、Rは水素であり、RはC−C10アルキル(例えばn−C11等)、(後述するように任意に置換された)−CH−アリール(例えば−CH−C等)、(後述するように任意に置換された)−CH−C10、(後述するように任意に置換された)−CH−複素環アリール(例えば、−CH−ベンズオキサゾール、−CH−ピリジルまたは−CH−ピリミジル)、または(上述したように任意に置換された)−CH−複素環基であり、Rは水素またはシクロブチルであり、Rは上述した好ましいまたはより好ましい5員不飽和複素環構造の1つであり、Rはフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、または水素である。
この定義に該当する化合物の例を以下に示す。
【化27】

【化28】

【化29】

【0024】
ここで、アルキルは直鎖状または分岐状であってもよい。アルキルがC−Cアルキルである場合、C−Cアルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、またはヘキシルであってもよい。「低級アルキル」という用語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはターシャリーブチル等の、直鎖状または分岐状であってもよいC−Cアルキルを意味する。
【0025】
「アルケニル」という用語は、2−プロペニル、2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニル、2−メチル−2−プロペニル、または3−メチル−2−ブテニル等の、二重結合を含むC−Cの直鎖状またはC−Cの分岐状アルキル基を意味する。「ハロアルケニル」という用語は、1以上のハロゲン(例えば、F、Cl、Br、またはI)で置換されていてもよい、上に定義したようなアルケニル基を意味する。
【0026】
「アルキニル」という用語は、2−プロピニル、2−ブチニル、2−ペンチニル、2−ヘキシニル、または4−メチル−2−ペンチニル等の、三重結合を含むC−Cの直鎖状またはC−Cの分岐状アルキル基を意味する。「ハロアルキニル」という用語は、1以上のハロゲン(例えば、F、Cl、Br、またはI)で置換されていてもよい、上に定義したようなアルキニル基を意味する。
【0027】
「アラルキル」という用語は、例えば1以上のハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、またはC−Cハロアルキニルによって置換されてもよいアリール基(好ましくはフェニル基、複素環アリール基、またはナフチル基)で置換されていてもよい(本明細書で定義するような)低級アルキル基を意味する。好ましいアラルキルは、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル、1−メチル−1−フェニルエチル、6−エチルベンズオキサゾール、−CH−ナフチルである。アラルキルのアリール基(好ましくは、フェニル基、複素環アリール基、またはナフチル基)が、ハロアルキル(好ましくはC−Cアルキル)、ハロゲン、低級アルキル、またはC−Cアルコキシで置換されている場合、該アリール基はモノ−、ジ−、またはトリ−置換されていてもよく、ジ−またはトリ−置換されている場合、置換基は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。フェニルの好ましい置換基は、−CF、クロロ、ブロモ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシである。ナフチルの好ましい置換基は、−CF、クロロ、ブロモ、C−Cアルキル(メチル等)、C−Cアルコキシである。
【0028】
「複素環(heterocycle)」という用語は、複素環基(heterocyclic group)を意味し、1以上のハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、またはC−Cハロアルキニルで置換されていてもよい、上述した複素環アリール基または非芳香族複素環基であってもよい。本発明の好ましい複素環は、後述する任意に置換された5員環である。
【0029】
「ハロゲン」という用語はF、Cl、Br、またはIを意味し、Cl、Br、およびFが好ましい。
【0030】
「アルコキシ」という用語は、C−Cの直鎖状またはC−Cの分岐状アルコキシ基を示す。そのような基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、2−メチルエトキシ、2−エチルプロポキシ、1−エチル−2−メチル−プロポキシが挙げられる。
【0031】
「ハロアルコキシ」という用語は、1以上のハロゲン(例えば、F、Cl、Br、またはI)で置換されていてもよい、上に定義したようなアルコキシ基を意味する。
【0032】
好適な塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩等の無機酸付加塩または有機酸付加塩、あるいは同様の薬学的に許容される無機酸付加塩または有機酸付加塩が挙げられる。
【0033】
本発明の化合物は、幾何学的および/または光学的異性体として存在する。本発明は、あらゆる鏡像異性体およびそれらの混合物を含む。以下に示す異性体が好ましい。
【化30】

【0034】
本発明の化合物は、選択的M−ムスカリン受容体アゴニストであるため、中毒を起こさない有効な量をほ乳類(通常はヒト)の患者に投与することによって、アセチルコリン(AcCh)またはムスカリン系の異常によって生じる疾患(アルツハイマー病等)を治療するための方法において有用である。
【0035】
本発明の化合物は既知の方法によって製造することができる。
【0036】
したがって、例えば、AがNであり、Bが−CH−であり、Rが−CH−O−Meである化合物は、以下の合成経路にしたがって製造することができる。
【0037】
[反応スキーム1]
【化31】

【0038】
(工程1および2)
アリルアルコール1をメタノール中において塩酸で処理して既知のエーテル2を得、臭素を添加することによって既知の二臭化物3に転換させる。
【0039】
(工程3および4)
不活性雰囲気において高沸点溶剤の存在下で過剰のベンジルアミンを用いて求核置換反応を行い、ジアミン4を得る。空気の存在下でジェミナルジアミン5が生成する。ジェミナルジアミン5は水素化分解によってジアミン4に転換させることができる。同様に、p−メトキシベンジルアミンとの反応によって、以降の反応において同一の方法で使用することができる類似生成物が得られる。p−メトキシベンジルアミン誘導体は、ベンジルアミン誘導体よりも容易に開裂するという利点を有する(工程6を参照)。
【0040】
(工程5)
クロロ酢酸エチルまたはその他のα−ハロエステル(例えば、他のアルキル置換基を有するα−ブロモエステルまたはα−ヨードエステル)と反応させ、ピペリジノン6、位置異性体、ジアシル化生成物、およびジアルキル化生成物を得る。塩化メチレン中において−10℃で1.2当量の塩化α−クロロアセチルと反応させ、所望の異性体6を70%の収率で分離することができる混合物を得る。ピペリジノン6は、以降の全ての反応の共通の出発原料となる。括弧内に示す反応(工程6および工程9)は、存在する置換基/保護基に応じて適宜使用される。以下の例では一般的な方法を説明する。
【0041】
(工程6〜9)
(a)RがBnまたはp−MeOBnであり、Rがアルキル、アリール、またはベンジルであり、R=アルキル、アリール、またはベンジルである化合物7〜11
アミドベンジルアミン置換体を液体アンモニア中でナトリウムを使用して開裂させ、アミド7(R=H)を得る。続いて、アミド7をDMSO(またはその他の強塩基)中で水素化ナトリウムおよびハロアミド8(Xは好ましくはClであるが、BrまたはIであってもよい)で処理し、第三級アミド9を得る。有機金属試薬(グリニャール試薬または有機リチウム試薬等)と反応させて、アミノール10を得る。アミノール10の自発的な環化および酸性化によって、塩11を得る。
【0042】
(b)RがHであり、Rがアルキル、アリール、またはベンジルであり、RがH、アルキル、アリール、またはベンジルである化合物7〜11
ベンジルアミンを水素化分解し、トリ−イソプロピルシリル−、t−ブチルジメチルシリル−、またはt−ブチルジフェニルシリル−トリフルオロメタンスルホン酸塩を用いて、シリルエーテルとして保護された第二級アミンを得る。アミドベンジル置換体を液体アンモニア中でナトリウムによって開裂させ、第二級アミド7(RPrSi、BuMeSi、またはBuPhSi)を得る。以降の反応は、工程9で求核フッ化物源による脱保護が必要になる以外は、(a)で概説した手順と同様である。フッ化物源は、通常は、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化セシウム、または既知の同様の試薬である。
【0043】
(c)Rがアルキル、アリール、またはベンジルであり、Rがアルキル、アリール、またはベンジルであり、RがH、アルキル、アリールまたはベンジルである化合物7〜11
この合成経路は、工程6bにおいて、アルキル化剤(例えば、ハロアルカンまたはハロゲン化ベンジル)またはアリール化剤(例えば、ArBr、CuまたはArCl、PdCl(PArとアミノスタナン)との反応によって第二級アミンを第三級アミンに転換させること以外は上記(b)の手順と同様である。工程9では脱保護は不要である。
【0044】
AがCHであり、BがOであり、Rが4−メチルオキサゾール−2−イルまたは−CH−O−Meである化合物は、以下の代替合成経路に従って製造することができる。
【0045】
[反応スキーム2]
−ムスカリン受容体アゴニストの合成経路
【化32】

スキーム1.試薬:i.Br、MeOH;ii.KCOH、MeOH;iii.TBSCl、イミダゾール、DCM;iv.(EtO)PCHCOEt、NaH、THF;v.DIBAL−H、THF;vi.CFCN、NaH、THF;vii.キシレン;viii.NaBH、EtOH;ix.CbzCl、EtN、DCM;x.O、PPh、DCM;xi.CH=CMeMgBr、THF;xii.mCPBA、DCM;xiii.TMP、n−BuLi、THF;xiv.BnBr、NaH、THF;xv.RI、NaH、THF;xvi.CBr、PPh、MeCN;xvii.RLiまたはRNa、THF;xviii.a.BH、THF;b.EtOH、NaOAc、H;xix.TBAF、THF;xx.MsCl、EtN、DCM;xxi.BnNH;xxii.Pd/C、HCOH、MeOH;xxiii.CH=CMeMgBr、THF;xxiv.BnBr、NaH、THF;xxv.O、PPh、DCM;xxvi.KHMDS、PhN(Tf)、THF;xxvii.HC=CXLiまたはHC=CXMgBr、THF;xxviii.R’X、Pd(0)、THF;xxix.デス・マーチン・ペリオジナン、DCM;xxx.2−メチル−2−ブテン、NaClO、NaHPO、t−BuOH/水;xxxi.i−BuOCOCl、NMM、2−アミノプロパノール、THF;xxxii.デス・マーチン・ペリオジナン、DCM;xxxiii.2,6−di−t−ブチル−4−メチルピリジン、PPh、ClBrCCClBr、DBU、DCM、CHCN。
【0046】
(M−ムスカリン受容体アゴニストの合成)
保護されたα−アミノ−アルデヒド4は、立体選択性ビニルグリニャールを添加し、官能基修飾および環化を行うことによって所望のピペリジンが得られるため、目的とする分子7および10の合成における重要な中間物質であることが確認された。アルデヒド4への第三級アミノ基の導入は合成における重要な工程であり、トリフルオロアセトイミド酸アリルの転位によって行われた。
【0047】
保護されたヒドロキシケトン2は、市販のシクロブチルメチルケトン1を臭素化し、得られたブロモケトンを加水分解し、保護することによって調製された。ケトン2をホスホノ酢酸トリエチルと縮合させ、水素化ジイソブチルアルミニウムを使用して還元することによって、対応するアリルアルコールを得、トリフルオロアセトニトリルを使用してトリフルオロアセトイミド酸塩3に転換させた。キシレン中で還流することにより、このトリフルオロアセトイミド酸塩は異性体のターシャリートリフルオロアセトアミドに転位し、水素化ホウ素ナトリウムによるトリフルオロアセチル基の除去、N−保護、およびオゾン分解によってアルデヒド4となる。
【0048】
プロペン−2−イルマグネシウムブロミドの付加は立体選択的であり、環化が生じてカルバミン酸塩を得、エポキシ化、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジドに誘発されたエポキシド−アリルアルコール転位、ならびに、水酸化ナトリウムおよび臭化ベンジルを使用したN−保護によって、該カルバミン酸を中間体5に転換させた。
【0049】
次の工程は、水酸基の修飾による種々の側鎖の導入を含む。したがって、例えば、ヨウ化メチルおよび水素化ナトリウムを使用したO−メチル化によってメチルエーテル6(R=OMe)を得、酸化反応を組み合わせたヒドロホウ素化、シリル保護基の除去、両水酸基のメシル化、メシラートの転位、およびN−ベンジル基の水素化分解によって目的物質7(R=OMe)を得た。
【0050】
4−メチルオキサゾール−2−イル側鎖10(R’=4−メチルオキサゾール−2−イル)を有する類似体を得る場合には、アルコール5を2工程で対応する酸に酸化させ、2−アミノプロパノールを使用してこの酸をアミドに転換させる。環化はデス・マーチン・ペリオジナンを使用してアルデヒドに酸化することによって行い、次に脱水を行って9(R’=4−メチルオキサゾール−2−イル)を得た。しかしながら、この場合、ヒドロホウ素化後のカルバミン酸塩の除去と競合するため、目的物質10(R’=4−メチルオキサゾール−2−イル)への転換は非効率的である。アルケン8(X=Me)のオゾン分解によって、対応するケトンを得、ハロゲン化アリールとのパラジウム触媒カップリングのために、該ケトンをエノールトリフラート8(X=OTf)に転換させた。
【0051】
AがCHであり、BがNであり、Rが−CH−O−Meである化合物は、以下の合成経路にしたがって製造することができる。
【0052】
[反応スキーム3]
【化33】

【0053】
(工程1)
水素化ナトリウムおよび炭酸ジメチルを使用したピペリジノン1(R=Bn、R=H)のアルキル化はすでに報告されている(S.Singh、G.P.Basnadjian、K.S.Avor、B.Pouw、T.W.Seale、「ドーパミン輸送体のトロパンとピペリジンの4’−ヨードベンゾイルエステルの合成と配位子結合に関する研究(Synthesis and ligand binding studies of 4’−iodobenzoyl esters of tropanes and piperidines at the dopamine transporter)」、J.Med.Chem.、1997、40、2474〜2481)。また、化合物2(R=Bn、R=H)は商業的に入手可能であることが報告されており(H.J.Altenbach、G.Blanda、「isofagomin類似体の合成のための新規な結合ブロック(A novel building block for the synthesis of isofagomin analogues)」、Tetrahedron:Asymmetry、1998、9、1519〜1524)、化合物2は化合物4(R=Bn、R=H)に転換されている。これらの化合物に既知の経路を適用することにより、Rがアルキル、ベンジル、CH−複素芳香族である化合物1および2を合成することができる。
【0054】
(工程2)
LDA(リチウムジイソプロピルアミド)または同様な強塩基を使用し、求電子性アルキル化剤(RX、X=Cl、Br、I、OTs、OMs、または同様の脱離基)で処理して、β−ケトエステル2のジアニオンを生成することにより、化合物3(R=n−アルキル、ベンジル、CH−複素芳香族、アリル、またはそれらの誘導体)を合成することができる。Rが適切なアルキル化剤およびとして機能できない場合(例えば、Rがシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、イソプロピル、その他のsec−およびtert−置換基である場合)、別の経路によって所望の化合物を調製する。そこで、ケトン(CHCOCH)をホルムアルデヒド(または合成等価体)およびアンモニアまたは適当なアミン(例えば、RNH)で処理することによって、ピペリジノン1を直接得る。
【0055】
(工程3)
p−トルエンスルホニルヒドラジンを3当量の塩基で処理してp−トルエンスルホニルヒドラゾンを生成し、水素化リチウムアルミニウムで還元し、所望の化合物4(R=H;シャピロ反応、上記Altenbach & Blandaを参照)を得る。ただし、Rが水素ではない場合は、ケトンを水素化ホウ素ナトリウムで還元し、p−トルエンスルホニルクロライドを使用してβ−脱離を生じさせてα,β−不飽和エステルを得ることが有利である。LDAで処理するとエノラートが生成し、臭化t−ブチル(または類似のプロトン源)を使用してエノラートをa−位で再プロトン化するとβ,γ−不飽和エステルが得られ、水素化リチウムアルミニウムで還元すればホモアリルアルコール4が得られる。
【0056】
(工程4および5)
ホモアリルアルコール4を非極性溶剤中において低温でカリウムt−ブトキシドおよびブチルリチウムで処理し、カリウムアルコキシドを得る。カリウムアルコキシドをホスゲンとアルカリまたはアルカリ金属アジド塩のトルエン溶液と反応させ、アシルアジド5を得る。または、ホモアリルアルコール4のカリウムアルコキシドをアジドカルボン酸メチルエステルで処理する。室温または室温よりもやや高い温度に昇温して環化させ、トリアゾリン6を得る。
【0057】
(工程6)
トリアゾリン6のアミノウレタン7への還元的開裂は、様々な条件を使用して行うことができる。パラジウムまたは白金を触媒として水素を使用する水素化分解が最も安価で最も効果の高い方法であるが、RがBnであり、この基を維持することが望ましい場合には、トリフェニルホスフィンまたは同様な3価のリン試薬およびおよび水または水酸化アンモニウムまたは水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。水素化リチウムアルミニウムによって還元し、10(RおよびおよびRは6と同じ;R=H;R=CH)を得る。
【0058】
(工程7)
アミノウレタン7は、通常の反応によって求電子試薬RXを使用して第一級アミノ基をアルキル化することができる(R=n−アルキル、ベンジル、CH−複素芳香族、アリルまたはそれらの誘導体;X=Cl、Br、I、OTs、OMs、または同様の脱離基)。
【0059】
(工程8および9)
濃水酸化ナトリウム、または、微量のp−トルエンスルホン酸を含む濃塩酸の還流によってウレタン基を開裂させて第一級アミン9を得、工程7と同様にアルキル化(R)する。この場合、位置選択性が低く、複数のアルキル化物が形成される。
【0060】
(工程10)
カリウムt−ブトキシドおよび1当量を超えない硫酸ジメチルで処理し、メチルエーテル11を得る。
【0061】
(工程11)
ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、またはこれらの多くの合成等価体のいずれかと塩基で処理することによって尿素体を得、該尿素体を酸で処理することによって塩12に転換させる。必要であれば、水素とパラジウムまたは白金触媒とを使用した水素化分解によってベンジル基(R)を除去することができ、生成された第二級アミンを通常の反応によって求電子試薬RXを使用してアルキル化する(R=n−アルキル、ベンジル、CH−複素芳香族、アリルまたはそれらの誘導体;X=Cl、Br、I、OTs、OMs、または同様な脱離基)。
【0062】
AがCHであり、BがNであり、Rが5員複素環である化合物は上記の反応経路に従って製造することができ、AがCHであり、BがNであり、Rが−CH−O−Rである化合物の場合は、化合物10を出発原料とし、工程11を適用して、最下位の置換基がメチルエーテルの代わりに水酸基である化合物12を得る。この水酸基はカルボン酸へと酸化されて、上述したようにエステルに転換させることができる。ここで、工程11の実用性は、アミン基上の置換基R、R、Rに依存する。化合物10はアルコキシドの反応によって一時的に保護することができるが(本来の経路における工程10)、臭化ベンジルを使用してベンジルエーテル(11 Me=Bn)を得ることができる。工程11は上述したように行い、12(Me=Bn)を得る。次に、水素および活性炭担持白金を使用してベンジル基を除去して12(Me=H)を得、12は上述したように酸化することができる。この代替経路では、12はスキームに示すアンモニウム塩ではなくむしろ遊離アミンを示しており、R、RまたはR=Bnの場合にはこの手順は適用することができない。
【0063】
同様に、AがCHであり、BがOであり、GがOであり、Rがベンジルであり、RがHであり、Rが−CH−O−CHまたはオキサゾールであり、Rがフェニルである化合物は、以下の反応スキームによって製造することができる。
【0064】
[反応スキーム4]
【化34】

【0065】
上記反応スキームは、本発明の第1実施形態に係る別の化合物を製造するのに相応しいように一般化したり、あるいは適宜変更したりこともできる。このような変形は当業者の能力の範囲内である。
【0066】
本発明の化合物のM受容体活性は、以前に示された方法(Dorje F、Rettenmayr N、Mutschler E、Lambrecht G、Eur J Pharmacol 1991,203,417〜420)を発展させた方法を使用し、ウサギ精管を使用して調べることができる。組織に電気的に刺激を与えて収縮させ、M受容体アゴニストが収縮高さの濃度関連抑制性を示すように条件を最適化する。M受容体の活性は収縮高さの増加で示される。また、M受容体の活性は、パルスを与えたモルモットの左心房の収縮の増加からも記録することができる。M受容体活性は、モルモットの回腸の収縮から測定される。M受容体活性を分析するための方法として、欧州特許第336555号および欧州特許第384288号に記載されている方法などを使用することもできる(これらの文献の開示内容は、関係国の法律で可能な限りにおいて、この参照によって本明細書の一部として援用する)。
【0067】
第2実施形態によれば、本発明の化合物は、従来の助剤、担体または希釈剤とともに、必要な場合には薬学的に許容される酸付加塩として、医薬組成物およびそれらの単位用量形態とすることができる。経口用としては、錠剤または充填カプセルなどの固体、溶液、懸濁液、乳化液、エリキシルなどの液体、またはそれらを充填したカプセル、直腸投与用としては座薬、非経口用(皮下投与を含む)としては、滅菌した注射溶液とすることができる。そのような医薬組成物およびそれらの単位用量形態は、従来の成分を任意の他の活性化合物や主成分とともに従来の比率で含むことができ、単位用量形態は、採用する日量投与範囲に合わせてムスカリンコリン性アゴニストとして有効な量の活性成分を含むことができる。1錠当たり10ミリグラム、より広い範囲では1〜100ミリグラムの活性成分を含む錠剤が好適で代表的な単位用量形態である。このように、本発明の化合物は、従来の製剤学的方法にしたがって、例えば、ヒトを含むほ乳類に対する経口・非経口投与用の医薬製剤の調製に使用することができる。
【0068】
従来の賦形剤は、活性成分と有害な反応を起こさない、非経口または経腸投与用に適した薬学的に許容される有機または無機担体物質である。
【0069】
そのような担体の例としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエトキシ化ヒマシ油、ゼラチン、乳糖、アミラーゼ、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、脂肪酸モノグリセリド・ジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0070】
医薬製剤は、滅菌し、必要であれば、活性化合物と有害な反応を起こさない助剤、乳化剤、浸透圧を調節する塩、緩衝剤、および/または着色物質等と混合することができる。
【0071】
非経口用途では、注射溶液または懸濁液が特に適しており、活性化合物をポリヒドロキシ化ヒマシ油に溶解させた水溶液が好ましい。
【0072】
アンプルは簡便な単位用量形態である。
【0073】
タルクおよび/または炭水化物担体または結合剤等を含み、担体が好ましくはラクトースおよび/またはコーンスターチおよび/または馬鈴薯デンプンである錠剤、糖衣錠またはカプセルが経口投与に特に適している。甘味づけした賦形剤を使用することができる場合には、シロップ、エリキシル等を使用することができる。
【0074】
通常、本発明の化合物は、単位用量当たり1〜100mgの化合物を薬学的に許容される担体中に含む単位用量形態に調合する。
【0075】
本発明に係る化合物の投与量は、ヒトなどの患者に医薬として投与する場合は、1〜100mg/日、好ましくは10〜70mg/日である。
【0076】
従来の錠剤形成技術によって調製することができる典型的な錠剤は以下の成分を含む。
活性化合物:5.0mg
Lactosum:67.8mg(欧州薬局方)
Avicel(登録商標):31.5mg
Amberlite(登録商標):1.0
Magnesli stearas:0.25mg(欧州薬局方)
【0077】
第3、第4、および第5実施形態によれば、本発明の化合物は、前脳および海馬の認知機能を刺激するための有効量を投与する場合、ほ乳類の脳の認知機能の減退に関連する症状の治療および治療用薬剤の製造に有用である。本発明の化合物の重要な刺激活性は、病態生理学的疾患およびアルツハイマー病に対する活性と、脳機能の正常な退化に対する活性とを含む。
【0078】
したがって、本発明の化合物は、前脳および海馬の認知機能の刺激が必要な場合に、ヒトを含む動物等の患者に投与することができる。必要な場合には、それらの薬学的に許容される酸付加塩(臭化水素、塩化水素、または硫酸塩等、例えば溶液中の遊離塩基を酸とともに蒸発乾燥させるなどの通常または従来の方法で調製されるもの)の形態で投与することができる。通常は、並行的に、同時に、または薬学的に許容される担体または希釈剤とともに、特に好ましくはそれらの医薬組成物として、経口、経腸または非経口(皮下投与を含む)経路によって、前脳および海馬刺激に有効な量であって、ムスカリンコリン性受容体アゴニスト活性によるほ乳類の認知機能の改善に有効な量を投与する。
【0079】
適切な投与量は、投与形態、投与形状、投与部位、投与する患者、投与する患者の体重、ならびに担当する医師または獣医師の選好および経験に応じて、1〜100mg/日、10〜100mg/日、特に30〜70mg/日の範囲である。
【実施例】
【0080】
本発明を実施例によってさらに説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
[実施例1]
【化35】

3−ベンジル−3a−シクロブチル−7−メトキシメチル−2−オキソ−オクタヒドロ−オキサゾロ[4,5−c]ピリジン−5−イウム
【0082】
上記化合物を上述した反応スキーム2の方法によって合成した。該化合物はIR分光法によって同定された。
【0083】
(薬理学的特性)
<M受容体活性の機能的評価>
試験化合物の初期評価は機能的な組織反応の評価によって行う。この方法は、アゴニスト、部分的アゴニスト、アゴニスト活性を容易に識別できるという利点を有する。
【0084】
<M−精管の調製>
雄のニュージーランド白ウサギ(1.47〜3.4Kg)を後頭部を殴打することによって殺し、精管を取り出し、結合組織を切り離し、前立腺と精巣上体部分とに切り分けた。各切片を組織ホルダに載せ、2つの環状電極(間隔:5mm)を通過させた。組織を32±0.5℃の低Ca2+クレブス液に浸漬し、5%のCOを含む酸素を吹き込んだ。Yohimibine(1.0mM)で未接合a2−アドレナリン受容体をブロックした。組織の上端を木綿糸でアイソメトリック・トランスデューサー(MLT020、ADInstruments)に取り付けた。組織を少なくとも45分間にわたって0.75〜1gの静止張力で平衡させた。次に、単一パルス(30V,0.05Hz,0.5ms)を繰り返し与えることによって電場刺激を与えた。Powerlab/200(ADInstruments)ソフトウェアおよびMacLabブリッジ増幅器を使用して、100Hzのサンプリングレートで等尺性張力をコンピュータによって記録した。
【0085】
<M−モルモット心房>
後頭部を殴打してモルモットを殺し、左心房を取り出した。心房を木綿糸で一対のステンレス鋼電極に取り付け、ガスを吹き込んだ標準Ca2+クレブス液を満たした32±0.5℃の臓器浴(organ bath)に浸漬した。心房には0.5msパルス幅で矩形波パルスを2Hzで与えた。等尺性収縮をコンピュータまたはポリグラフで記録した。
【0086】
<M−モルモット回腸>
殺したモルモットの腸骨部(回腸−盲腸接合部から10cmの箇所)から組織片(2cm)を切り出した。一端を組織ホルダ/通気装置に取り付け、他端を木綿糸でアイソメトリック・トランスデューサーに取り付けた。ガスを吹き込んだ32±0.5℃の標準Ca2+クレブス液に該組織を浸漬した。0.5gの静止張力を与え、等尺性収縮をコンピュータまたはポリグラフで測定した。
【0087】
<アゴニスト濃度−応答曲線>
攣縮または張力を安定させるために少なくとも30分間平衡させた後、ムスカリンアゴニストの累積濃度−応答曲線を作成した。各濃度における収縮が安定した後、濃度を半対数的に増加させた。各濃度における定常状態の収縮を測定し、抑制効果を心房および精管については基準攣縮高さに対する割合で、回腸については最大収縮に対する割合で表した。ムスカリンアゴニストのEC50値を、攣縮高さを50%抑制するために必要なモル濃度、または、回腸の最大収縮を50%抑制するために必要なモル濃度として各曲線から求めた。幾何学平均EC50値およびそれらの95%信頼性限界を計算した。実施例1の化合物は、10−7Mの有効性(EC50値)を有する50%部分的Mアゴニストであることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される化合物またはその薬学的に許容される塩:
【化1】

式中、
AはCHまたは窒素であり、
Bは−CH−、−CHF−、−CF−、NRまたはOであり、AがNである場合には、Bは−CH−、−CHF−、または−CF−であり、
Gは酸素または=N−CNであり、
は水素またはC−Cアルキルであり、
は水素;C−Cアルコキシまたはハロゲンで任意に置換されたC−C10アルキル;ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C2−ハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換されていてもよいアラルキル、−CH−複素環、または−CH−Cシクロアルキル環であり、
は水素、炭素数3〜6の環状アルキルラジカルまたはC−Cアルキルであり、
は水素または低級アルキルであり、
は以下の構造の1つを有する5員不飽和複素環であり、
【化2】

式中、LおよびMは互いに独立してOまたはN(または必要な場合にはNH)であり、LとMの両方がOであることはできず、
YはS、CH、OまたはN(または必要な場合にはNH)であり、
XはCまたはNであり、
は低級アルキル;水素;ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換されたアリールアミノ;ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換されたアラルキル;または、下記式で表される基であり、
【化3】

式中、nは1〜4の整数であり、HETはハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換された複素環基であり、または
はC−Cアラルキルまたは―CH−O−R(式中、Rはフッ素またはヒドロキシで任意に置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアラルキルである)であってもよく、
は水素または(ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換された)アリールであり、
およびRの一方が水素ではない場合、他方は水素である。
【請求項2】
請求項1において、
GがOであり、
が水素または低級アルキルであり、
がハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換されたC−Cアルキル、−CH−アリール、または−CH−置換複素環であり、
が水素、シクロブチル、シクロプロピル、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、またはsec−ブチルであり、
が水素であり、
が以下の5員不飽和複素環構造の1つであり、
【化4】

がメチル、アラルキル、アリールアミノ、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するメチレン基を有するアラルキル、または、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するエチレン基を有するアラルキルであり、
が水素、フェニル、またはハロゲン置換フェニルである、化合物。
【請求項3】
請求項2において、
が水素であり、
がハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換された−CH−アリールであり、
が水素またはシクロブチルであり、
が以下の5員不飽和複素環構造の1つであり、
【化5】

がフェニル、1以上のハロゲンによって置換されたフェニルアミノ、1以上のハロゲンによって置換されたフェニルメチル、または1以上のハロゲンによって置換されたフェネチルであり、
が水素またはフッ素置換フェニルである、化合物。
【請求項4】
請求項3において、
がハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換されていてもよい−CH−Cまたは−CH−複素環アリールであり、
がHであり、
が以下の5員不飽和複素環構造の1つであり、
【化6】

がメタ塩素置換フェニルアミノ、メタ塩素置換フェニルメチル、またはメタ塩素置換フェネチルであり、
が3,5−ジフルオロフェニルである、化合物。
【請求項5】
請求項1において、
AがCHであり、
Bが−CH−であり、
Gが酸素であり、
が水素であり、
が(ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換された)C−C10アルキルまたは−CH−アリールであり、
がシクロブチルまたは水素であり、
が以下の5員不飽和複素環構造の1つであり、
【化7】

がメチル、アラルキル、アリールアミノ、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するメチレン基を有するアラルキル、または、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するエチレン基を有するアラルキルであり、
が水素または(ハロゲンで任意に置換された)フェニルである、化合物。
【請求項6】
請求項1において、
AがCHであり、
BがOであり、
Gが酸素であり、
が水素であり、
がC−C10アルキルまたは(ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換された)−CH−アリールであり、
がシクロブチルまたはHであり、
が−CH−O−CH、−CH−O−CH−CH−C、または以下の5員不飽和複素環構造の1つであり、
【化8】

がメチル、アラルキル、アリールアミノ、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するメチレン基を有するアラルキル、または、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するエチレン基を有するアラルキルであり、
が水素または(ハロゲンで任意に置換された)フェニルである、化合物。
【請求項7】
請求項1において、
AがCHであり、
BがNHであり、
Gが酸素であり、
が水素であり、
が(ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換された)C−C10アルキル、−CH−アリール、−CH−複素環基、または−CH−置換Cシクロアルキルであり、
がシクロブチルまたはHであり、
が水素であり、
が−CH−O−CH、−CH−O−CH−CH−C、または以下の5員不飽和複素環構造の1つであり、
【化9】

がメチル、アラルキル、アリールアミノ、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するメチレン基を有するアラルキル、または、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するエチレン基を有するアラルキルであり、
がHまたは(ハロゲンで任意に置換された)フェニルである、化合物。
【請求項8】
請求項1において、
AがNであり、
Bが−CH−であり、
Gが酸素であり、
が水素であり、
が(ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換された)C−C10アルキル、−CH−アリール、−CH−複素環基、または−CH−置換Cシクロアルキルであり、
がシクロブチルまたはHであり、
が以下の5員不飽和複素環構造の1つであり、
【化10】

がメチル、アラルキル、アリールアミノ、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するメチレン基を有するアラルキル、または、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するエチレン基を有するアラルキルであり、
が水素または(ハロゲンで任意に置換された)フェニルである、化合物。
【請求項9】
請求項1において、
AがNであり、
Bが−CH−であり、
Gが酸素であり、
が水素であり、
が(ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換された)C−C10アルキル、−CH−アリール、−CH−複素環基、または−CH−置換Cシクロアルキルであり、
がシクロブチルまたは水素であり、
が−CH−O−CHであり、
が水素または(ハロゲンで任意に置換された)フェニルである、化合物。
【請求項10】
請求項1において、
AがNであり、
Bが−CH−であり、
Gが酸素であり、
が水素であり、
が(ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキニルの1以上で任意に置換された)C−C10アルキル、−CH−アリール、または−CH−複素環基であり、
が水素またはシクロブチルであり、
が以下の5員不飽和複素環構造の1つであり、
【化11】

がメチル、アラルキル、アリールアミノ、1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するメチレン基を有するアラルキル、または1以上のハロゲンによって置換され、アリールを不飽和5員環に結合するエチレン基を有するアラルキルであり、
がフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、または水素である、化合物。
【請求項11】
請求項1において、下記式で表される化合物。
【化12】

【請求項12】
治療上有効な量の請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項13】
薬剤として使用される請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
アセチルコリンまたはムスカリン系の異常によって生じる疾患を治療するための薬剤の製造における、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
請求項14において、前記疾患がアルツハイマー病である使用。
【請求項16】
アセチルコリンまたはムスカリン系の異常によって生じる疾患を治療、予防および/または抑制するための方法であって、治療上有効な量の請求項1〜11のいずれかに記載の化合物を患者に投与することを含む方法。

【公表番号】特表2007−513136(P2007−513136A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542022(P2006−542022)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005096
【国際公開番号】WO2005/054242
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506189478)ムスカゲン リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】MUSCAGEN LIMITED
【住所又は居所原語表記】12 Belgrave Court, 25 Cowbridge Road East, Cardiff CF1 9BJ, United Kingdom
【Fターム(参考)】