説明

治療薬を送達するためのリポソーム組成物

中性のカチオン性脂質および中性のカチオン性脂質から調製されたリポソームが記載されている。脂質から構成されたリポソームは、核酸のようなポリアニオン性化合物の送達に適している。送達はインビボまたはエクスビボで行うことができる。生理学的pHで電荷が中性であり、そして生理学的pH未満のpHで正に荷電する中性のカチオン性脂質は脂質に溶解性を与える極性のヘッド基を含み、そしてリポソーム脂質二重層へのパッキングを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、治療薬、特にポリアニオン性化合物、そして特に核酸を送達するためのリポソーム組成物に関する。さらに詳細には本発明は、弱カチオン性脂質および場合により親水性ポリマー鎖の表面コーティングおよび/またはポリヌクレオチドのようなポリアニオン性化合物を含む治療薬のインビボもしくはエクスビボ送達に使用するための標的化リガンドを含むリポソーム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
特定の細胞への遺伝子物質の輸送を促進するために、種々の方法が開発されてきた。これらの方法は、インビボまたはエクスビボの両方の遺伝子輸送に有用である。前者では、遺伝子は(静脈内、腹腔内、エアロゾルなどで)被験体に直接導入される。エクスビボ(またはインビトロ)の遺伝子転移では、遺伝子は、個体の特定組織から細胞を取り出した後、細胞に導入される。次いでトランスフェクトされた細胞は被験体に戻して導入される。
【0003】
インビボおよびエクスビボの遺伝子療法を達成する送達系には、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクターまたはアデノウイルスベクター)、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウムおよびリポソームが挙げられる(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。
【0004】
リポソーム脂質二重層成分として、負に荷電した生体分子(オリゴヌクレオチドおよびDNAフラグメントのような)を送達するために、カチオン性脂質(例えば、正荷電アンモニウムイオンまたはスルホニウムイオンを含むヘッド基(headgroup)を持つ脂質の誘導体)を使用することは広く報告されている。この脂質の正荷電ヘッド基は、負荷電細胞表面と相互作用して、生体分子の細胞への接触および送達を促進する。このカチオン性脂質の正電荷は、核酸の複合化にさらに重要である。
【0005】
しかしながら、このようなカチオン性リポソーム/核酸複合体を全身に投与すると、それらは容易に肺に取り込まれる。この肺への局在化は、通常のカチオン性複合体の強力な正の表面電荷により引き起こされる。レポーター遺伝子を持つ通常のカチオン性複合体のインビボ遺伝子発現は、静脈内投与に続いて、肺、心臓、肝臓、腎臓および脾臓で実証されてきた。しかしながら形態学的検査により、その発現の大部分が肺の血管の内側にある内皮細胞にあることが明らかとなっている。この所見の有力な説明としては、肺が静脈注射後にカチオン性リポソーム/核酸複合体が遭遇する最初の臓器であることがある。さらに、肺には大きな表面積の内皮細胞があり、これがカチオン性リポソーム/核酸複合体に容易に接近できる標的を提供する。
【0006】
初期の結果は有望であるものの、簡単なカチオン性リポソームを静脈内注射しても、疾患(肺癌以外の充実性腫瘍のような)の全身部位または臨床関連遺伝子発現(例えば、p53またはHSV−tk)の所望部位への遺伝子の送達に有用であるとは判明していない。カチオン性リポソームは、あまりに急速に排除され、ホストに多くの安全性の問題が生じる。例えば非特許文献4は、ステアリルアミン含有リポソームが荷電および濃度依存的様式で血漿および単離された赤血球と相互作用することを報告した。凝血様の塊の形成および赤血球のヘモリシスを含む血漿成分と赤血球との間で観察されるおおざっぱな相互作用は、インビボでの迅速なクリアランスおよび肺の毛細管でのリポソームのトラッピングを示唆している。
【0007】
さらにFilion et al.(非特許文献5)は、カチオン性リポソームがマクロファージのような食細胞に対する毒性の危険性を引き起こすことを報告した。非毒性条件下でのインビトロで、またはインビボでマクロファージとカチオン性リポソームとのインキュベーションは、活性化マクロファージによるプロテインキナーゼC依存的メディエーターである硝酸の合成、腫瘍壊死因子−αおよびプロスタグランジンEのダウンレギュレーションをもたらした。マクロファージをカチオン性リポソームに3時間以上暴露すると、高レベルの毒性(ED50<50ナノモル/ml)を生じた。
【0008】
カチオン性リポソームの別の使用には、リポソームにパルミトイルホモシステインのようなpH感受性脂質を含有させることがある(非特許文献6;非特許文献7)。そのようなpH感受性脂質は、中性pHでは負に荷電しており、そしてリポソーム脂質二重層に安全に取り込まれる。しかしながら、弱酸性のpH(pH<6.8)では、この脂質は電荷が中性となり、そしてリポソーム二重層を不安定化するのに十分な構造に変わる。この脂質は、pHが5.0〜6.0の間であると報告されているエンドソームに取り込まれたリポソームに包含される場合、不安定化し、そしてリポソーム内容物の放出を引き起こす。
【0009】
別の取り組みでは、核酸のような会合する作用物質を送達するために中性のカチオン性質をリポソームに包含させた。特許文献1に記載されているように、そのようなリポソームは生理学的pHで減少した表面電荷を有し、すなわち肺または他の臓器に閉じ込められるようになる見込みが低い。しかし前記特許出願明細書に記載されている脂質は、幾つかの溶媒中では減少した溶解性を導くことができる極性のヘッド基を欠いている。
【0010】
加えて、腫瘍細胞に向ける標的化は、血管形成内皮細胞の標的化よりも一層難しい。細胞は血液区画に直接暴露されるので、リポソーム/DNA複合体は腫瘍血管系の血管形成内皮細胞に比較的に容易に接近する。腫瘍細胞を標的化するために、リポソーム/DNA複合体は、漏れやすい腫瘍血管を通って血管外遊出して腫瘍細胞に到達できる必要がある。したがって複合体の安定性、サイズ、表面電荷、血液循環時間、および複合体のトランスフェクション効率は、全て、腫瘍細胞のトランスフェクションおよび発現の因子である。
【参考文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願第2003/0031764号明細書
【非特許文献1】Felgner,J.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413−7417,1987
【非特許文献2】Mulligan,R.S.,Science 260:926−932,1993
【非特許文献3】Morishita,R.,et al.,J.Clin.Invest.91:2580−2585,1993
【非特許文献4】Senior et al.,Biochim.Biophys.Acta.1070,173−179,1991
【非特許文献5】Filion,M.C.and Phillips,N.C.,Int.J.Pharmaceutics 162:159−170,1998
【非特許文献6】Connor,J.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1715,1984
【非特許文献7】Chu,C.−J.and Szoka,F.,J.Liposome Res.4(1):361,1994
【発明の開示】
【0012】
発明の要約
従って本発明の目的は、核酸のようなポリアニオン性化合物の細胞への全身送達用組成物を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、中性カチオン性脂質を含んでなるリポソームを提供することであり、ここでリポソームは、核酸を細胞または組織に引き続いて送達するために核酸と会合している。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、親水性ポリマーで誘導化された脂質を含んでなるリポソームを提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、標的組織または細胞の遺伝子送達または遺伝的モジュレーションのためのリポソーム組成物を提供することであり、リポソームは患者の血液中で延長した循環時間を有する。
【0016】
従って1つの観点では、本発明は
(i)式(I)
【0017】
【化1】

【0018】
[式中、各RおよびRは6から24個の間の炭素原子を有する分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖であり;
n=1〜20;
m=1〜20;
p=1〜3:
LおよびQは独立してC1−アルキル、−X−(C=O)−Y−CH−、−X−(C=O)−、−X−CH−からなる群から選択され、ここでXおよびYは独立して酸素、NHおよび直接結合から選択され;
Wはアミノ、グアニジノまたはアミジノ部分であり;そして
Zは7.4未満、そして約4.0より大きいpKを有する弱塩基性部分である]
の構造を有する中性のカチオン性脂質、および
(ii)ポリアニオン性化合物、
を含んでなるリポソーム、
を含んでなるポリアニオン性化合物を投与するための組成物を包含する。
【0019】
1つの態様では、LおよびQがC1−6アルキルである。別の態様ではpが1であり、そしてWが−NR−であり、ここで各Rは独立してHまたはC1−5アルキルから選択される。別の態様ではpが2であり、そしてWが−NR−である。
【0020】
特定の態様ではn=1〜10またはn=1〜5である。別の態様ではm=1〜10または1〜5である。
【0021】
特定の態様では、ZのpKが6.5未満、そして約5.0より大きい。他の特定の態様ではZのpKが6.0未満、そして約5.0より大きい。特定の態様ではZが環式または非環式アミンであり、そして特にZがイミダゾールである、
1つの態様では、ポリアニオン性化合物がポリヌクレオチド、負に荷電したタンパク質または多糖である。特定の態様ではポリヌクレオチドがプラスミドDNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉(small interfering)RNA、代用リンカーを有するポリヌクレオチド類似体、五価のホスフェートリンカーおよび代用リンカーを含んでなるハイブリッドポリヌクレオチド、またはそれらの混合物である。ポリヌクレオチドは修飾されたヌクレオチド、天然には存在しないヌクレオチド、タンパク質−核酸複合体またはポリヌクレオチド−薬剤結合体を含んでなることもできる。好ましくはポリヌクレオチドはリポソームの少なくとも一部に封入されている。
【0022】
さらなる態様では、組成物はさらにリポソームに封入された治療薬を含む。
【0023】
リポソームは、親水性ポリマー鎖の表面コーティングを形成するために、リポポリマー(例えば親水性ポリマーで誘導化された脂質)を含むことができる。特にリポポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリアスパルタミドおよびポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド、それらのコポリマー、およびそれらの混合物のよう親水性ポリマーを含んでなる。親水性ポリマーは脂質に共有結合され、そして幾つかの態様では、共有結合は開裂可能でありリポソームからポリマーの脱着を可能とする。開裂は酸、塩基、チオール、酵素作用(例えばプロテアーゼ、エステラーゼまたはグリコシダーゼ)、酸化、還元または光により行うことができる。開裂可能な結合には限定するわけではないが、エステル、ヒドラゾン、ジスルフィド、アミドおよびエーテルを含む。
【0024】
さらなる態様では、リポソームはさらにリポソームを標的部位を標的とするためのリガンドを含んでなる。標的化リガンドは直接的に、または当該技術分野で知られている結合を介してリポソーム形成脂質の極性のヘッド基に結合することができる。標的化リガンドはリポポリマーの親水性ポリマーの遠位末端に共有結合することもできる。特に標的化リガンドは例えば内皮細胞、腫瘍細胞または遺伝子治療が望まれる細胞に対する結合親和性を、そのような細胞によるインターナリゼーションのために有する。標的細胞には限定するわけではないが本明細書に挙げるものがあり、そして当業者は意図する処置に望ましい標的細胞を選択することができる。特定の態様では、標的化リガンドはペプチド、サッカリド、ビタミン(例えば葉酸塩、ビオチン、シアノコバラミン)、抗体、レクチンまたはその模倣物である。別の態様では、標的化リガンドは増殖因子受容体の細胞外ドメインに特異的に結合する。そのような受容体はHER2/neuガン遺伝子のc−erbB−2タンパク質産物、上皮増殖因子受容体、塩基性繊維芽細胞増殖因子受容体および血管内皮増殖因子受容体から選択される。別の態様では、標的化リガンドはE−セレクチン受容体、L−セレクチン受容体、P−セレクチン受容体、葉酸容体、CD4受容体、CD19受容体、αβインテグリン受容体およびケモカイン受容体から選択される受容体に結合する。また標的化リガンドは例えば葉酸、ピリドキサールリン酸、ビタミンB12、シアリルルイス、トランスフェリン、上皮増殖因子、塩基性繊維芽細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、VCAM−1、ICAM−1、PECAM−1、RGDペプチドまたはNGRペプチドであることができる。
【0025】
特定の態様では、リポソームは5〜80モルパーセントの間の式Iの脂質を含む。別の態様では、小胞形成脂質が上に列挙したような親水性ポリマーを含んでなる1から30モルパーセントの間のリポポリマーを含んでなる。リポポリマーの添加はリポポリマーを欠くリポソームと比べた場合、リポソームの循環時間の延長に効果的である。さらに別の態様では、リポソームはカチオン性脂質も含む。
【0026】
別の観点では、ポリカチオン性化合物を投与するためのリポソームの調製法が提供され、ここでリポソームは延長された血液循環時間を特徴とする。この方法は、上記式(I)の構造を有する中性のカチオン性脂質を含んでなる小胞形成脂質からリポソームを形成し、そしてポリアニオン性化合物を加えることを含んでなる。リポソームは約0.05〜0.5ミクロンの間の範囲の選択したサイズにふるい分けられる。中性のカチオン性脂質は、中性のカチオン性脂質を欠くリポソームと比べた場合、リポソームの循環時間の延長に効果的である。
【0027】
さらに別の観点では、細胞を本明細書に記載するリポソーム組成物と接触させることを含んでなる、細胞のトランスフェクション法が提供される。別の観点では、細胞を本明細書に記載するリポソーム組成物と接触させる、ポリアニオン性化合物を細胞に送達する方法が提供される。
【0028】
発明の詳細な説明
I.定義
本発明を詳細に説明する前に、特に示さない限り、本発明はそれ自体が変動できるような具体的な脂質または合成法に限定されるとは理解されない。また本明細書で使用する用語は、特定の態様のみを記載する目的であり、そして限定することを意図していないと理解すべきである。本明細書および添付する特許請求の範囲で使用されるように、単数形“a”、“an“および“the”は、内容が他を明確に示さない限り複数を含む。すなわち例えば「ポリヌクレオチド」には単一のポリヌクレオチドだけでなく、2以上の異なるポリヌクレオチドの組み合わせまたは混合物等も含む。
【0029】
値の範囲が提供される場合、それぞれ中に入る値、内容が明らかに他を示さない限り下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限の間、およびその言及した範囲の任意に他に言及するかまたは中の値を本発明に包含すると理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して小さな範囲で含めてもよく、そしてまた本発明に包含され、言及した範囲において特別に除いた(excluded)限界に当てる。言及する範囲が1もしくは両方の限界を含む場合、それらの限界に含まれるいずれか、または両方を除く範囲も本発明に包含する。
【0030】
本発明の記載および特許請求において、以下の用語を以下に説明する定義に従い使用する。
【0031】
「カチオン性」の定義は、正味の正電荷を有する特性を指し、そして存在する電荷の和が正である限り負電荷の存在を含む。
【0032】
用語「アニオン性」は、正味の負電荷を有する特性を指し、そして存在する電荷の和が負である限り負電荷の存在を含む。
【0033】
用語「ポリアニオン性」は、1個より多くの負電荷を有する特性を持つ化合物を指す。
【0034】
用語「ポリヌクレオチド」は、少なくとも6ヌクレオチド長である核酸配列を指し、そしてポリヌクレオチドがポリアニオン性を保持する限り、DNA、RNA、RNA/DN
Aハイブリッド、触媒的RNA、天然には存在しないヌクレオチドまたは修飾されたヌクレオチドを含む核酸、低分子干渉RNA、三重結合核酸配列、代用非ホスホジエステルリンカーを含むポリ−またはオリゴヌクレオチド類似体、例えばペプチド核酸−核酸ハイブリッドのような五価のホスフェートリンカーおよび代用リンカー含有するハイブリッドポリヌクレオチド、タンパク質−核酸複合体またはポリヌクレオチド(またはオリゴヌクレオチド)−薬剤結合体等を含む。
【0035】
本明細書で使用する「中性」脂質は、中性pHで荷電していないものであり、そして中性pHで等しい数の正および負電荷を有する両イオン性脂質を含む。
【0036】
「荷電した」脂質は、正味の正または負電荷を有するものである。
【0037】
「リポポリマー」は、親水性ポリマーで誘導化された脂質である。
【0038】
「中性のカチオン性脂質」は、一般に約pH7〜約7.5のpH範囲で正味の電荷を持たず、そして弱塩基部分のpKよりも低いpHで主にカチオン性となる弱塩基性部分を含む脂質である。すなわち中性のカチオン性脂質は、生理学的pHでは中性であるが、塩基性基のpK未満のpHでカチオン性である。
【0039】
用語「リポソーム」は、脂質小胞を指すその通常の意味で使用し、そして従来の脂質小胞とは異なる形態を有する脂質−ポリヌクレオチド粒子も含む。
【0040】
用語「小胞形成脂質」とは、疎水性および極性ヘッド基部分を有し、そして水中で二重層小胞を自発的に形成することができる両親媒性脂質を指す。小胞形成脂質は、二重層小胞状態である時、疎水性部分が内部と接触しており、二重層膜の疎水性領域があり、そして極性のヘッド基残基が膜の外側の極性表面に向いて配向し、二重膜の極性表面があるリン脂質に例示される。この種の小胞形成脂質は典型的に1または2本の疎水性アシル炭化水素鎖またはステロイド基を含み、そして極性ヘッド基にアミン、酸、エステル、アルデヒドまたはアルコールのような化学的に反応性の基を含んでいてもよい。この種には、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、およびスフィンゴミエリン(SM)のようなリン脂質であって、2本の炭化水素鎖は典型的には長さが約14〜約22個の炭素原子であり、しかも様々な程度の不飽和を有するものが包含される。
【0041】
「アルキル」とは、炭素と水素を含む完全に飽和した一価基を指し、そしてこれは分岐していてもまたは直鎖であってもよい。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘプチルおよびイソプロピルである。「低級アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を指し、例えばメチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、イソアミル、n−ペンチルおよびイソペンチルが例示される。
【0042】
「アルケニル」とは、1もしくは複数の二重結合を含み、炭素と水素を含む一価基を指し、これは分岐していてもまたは直鎖であってもよい。
【0043】
本明細書で使用する「親水性ポリマー」は、ポリマーに室温である程度の水溶性を導く水溶性部分を有するポリマーを指す。親水性ポリマーの例には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド−アクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド、ポリエチレ
ンオキシド−ポリプロピレンオキシドコポリマー、上に挙げたポリマーのコポリマーおよびそれらの混合物を含む。多くのこれらのポリマーの性質、およびそれを用いた反応は米国特許第5,395,619号および同第5,631,018号明細書に記載されている。
【0044】
「官能化ポリマー」は、1もしくは複数の反応性官能基を含むポリマーであり、そして典型的には、しかし必ずしもそうではないが、共有結合を形成するための他の化合物との反応に、末端部分が修飾されたポリマーを指す。そのような反応性の官能基部分を有するようにポリマーを官能化するための反応スキームは、当業者により容易に決定され、かつ/または例えば米国特許第5,631,018号明細書およびZalipsky,et al.,Eur,Polymer.J.19(12):1177−1183(1983);Bioconj.Chem.,4(4):296−299(1993)に記載されている。
【0045】
略号:PEG:ポリエチレングリコール;mPEG:メトキシ末端ポリエチレングリコール;Chol:コレステロール;PC:ホスファチジルコリン;PHPC:部分水素化ホスファチジルコリン;PHEPC:部分水素化卵ホスファチジルコリン;HSPC:水素化大豆ホスファチジルコリン;DSPE:ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン;DSPEI:ジステアロイルホスホエタノールアミン;APD:1−アミノ−2,3−プロパンジオール;DTPA:ジエチレンテトラミン五酢酸;Bn:ベンジル;NCL:中性カチオン性リポソーム;FGF:繊維芽細胞増殖因子;HDSG:ヒスタミンジステアロイルグリセロール;FC−PEG:急速開裂性PEG;SC−PEG:遅延開裂性PEG;DDAB:ジメチルジオクタノイルアンモニウム;EtDTB、エチルジチオベンジル;DOPE、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン;BHK、ベビーハムスターの腎臓。
【0046】
II.リポソーム
1つの観点では、本発明はリポソームおよびポリアニオン性化合物、好ましくはポリヌクレオチドから構成されるリポソーム組成物を含む。リポソームは中性のカチオン性脂質、そして場合により任意に放出可能な結合を介して誘導化されたリポポリマーを含んでなる。またリポソームは、標的化リガンドを含んでなることもできる。これらのリポソーム成分をこれから記載する。
【0047】
A.中性のカチオン性脂質
本発明のリポソームに含まれる中性のカチオン性脂質は、一般に式(I):
【0048】
【化2】

【0049】
[式中、各RおよびRは6から24個の間の炭素原子を有する分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖であり;
n=1〜20;
m=1〜20;
p=1〜3:
LおよびQは独立してC1−アルキル、−X−(C=O)−Y−CH−、−X−(C=O)−、−X−CH−からなる群から選択され、ここでXおよびYは独立して酸素、NHおよび直接結合から選択され;
Wはアミノ、グアニジノまたはアミジノ部分であり;そして
Zは7.4未満、そして約4.0より大きいpKを有する弱塩基性部分である]
の構造により表される脂質である。
【0050】
別の態様では、Zは4.5〜7.0、より好ましくは5〜6.5の間、そして最も好ましくは5〜6の間のpK値を有する部分である。
【0051】
弱塩基性部分Zは、7.4の生理学的pHでは主として例えば50%より多くの量で電荷が中性であるが、pKより低い選択されたpHでは主に正電荷を有する傾向がある脂質を生じる。例えば、そして好適な態様ではZはイミダゾール部分であり、これは約6.0のpKを有する。7.4の生理学的pHでは、この部分は主として中性であるが、6.0未満のpH値では、この部分は主として正になる。本発明を支持するために、以下に説明するようにイミダゾール部分を有する脂質を調製し、そしてリポソームの調製に使用した。
【0052】
イミダゾールに加えて、置換イミダゾールのような他の環式アミン、ならびにベンズイミダゾールおよびナフトイミダゾールもまた、その置換がpKを所望範囲外の値に変えない限り、上で示した構造内のZ部分として使用することができる。適当な置換基は、典型的にはアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、ハロアルキル、アミノおよびアミノアルキルを含む。5.0〜6.0の範囲のpKを有すると報告されたこのような化合物の例には、限定するわけではないが種々のメチル置換イミダゾールおよびベンズイミダゾール、ヒスタミン、ナフト[1,2−d]イミダゾール、1H−ナフト[2,3−d]イミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ベンジルベンズイミダゾール、2,4−ジフェニル−1H−イミダゾール、4,5−ジフェニル−1H−イミダゾール、3−メチル−4(5)−クロロ−1H−イミダゾール、5(6)−フルオロ−1H−ベンズイミダゾールおよび5−クロロ−2−メチル−1H−ベンズイミダゾールを含む。
【0053】
ヘテロ芳香族化合物(ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピリミジン、フェナントロリンおよびピラゾールを含む)のような他の窒素含有環式アミンもまた、Z基として使用できる。この場合もやはり、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリール、ハロ、アルキル、アミノ、アミノアルキルおよびヒドロキシから選択される置換基を有する多くのこのような化合物は、所望範囲にpKを有することが報告されている。これらには、ピリジン類の中で、2−ベンジルピリジン、種々のメチル−およびジメチルピリジンならびに、他の低級アルキルおよびヒドロキシルアルキルピリジン、3−アミノピリジン、4−(4−アミノフェニル)ピリジン、2−(2−メトキシエチル)ピリジン、2−(4−アミノフェニル)ピリジン、2−アミノ−4−クロロピリジン、4−(3−フラニル)ピリジン、4−ビニルピリジンおよび4,4’−ジアミノ−2,2’−ビピリジンを含み、これらの全てが、5.0と6.0の間にpKを有することが報告されている。所望範囲にpKを有することが報告されているキノリノイド化合物には、限定するわけではないが3−,4−,5−,6−,7−および8−アミノイソキノリン、種々の低級アルキル−およびヒドロキシ−置換キノリンおよびイソキノリン、4−,5−,7−および8−イソキノリノール、5−,6−,7−および8−キノリノール、8−ヒドラジノキノリン、2−アミノ−4−メチルキナゾリン、1,2,3,4−テトラヒドロ−8−キノリノール、1,3−イソキノリンジアミン、2,4−キノリンジオール、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリンおよびキヌクリジンを含む。また、所望範囲にpKを有するものには、幾つかのアミン置換ピリミジン、例えば4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリミジン、4−(N−メチルアミノ)ピリミジン、4,5−ピリミジンジアミン、2−アミノ−4−メトキシピリミジン、2,4−ジアミノ−5−クロロピリミジン、4−アミノ−6−メチルピリミジン、4−アミノピリミジンおよび4,6−ピリミジンジアミンならびに4,6−ピリミジンジオールも含む。種々のフェナントロリン(例えば、1,10−、1,8−、1,9−、2,8−、2,9−および3,7−フェナントロリン)は、それらの低級アルキル−、ヒドロキシル−およびアリール−置換した誘導体の大部分と同様に、所望範囲にpKを有する。使用され得るピラゾールには、限定するわけではないが4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール、4,5−ジヒドロ−4−メチル−3H−ピラゾール、1−ヒドロキシ−1H−ピラゾールおよび4−アミノピラゾールがある。
【0054】
多くの窒素置換芳香族化合物(例えばアニリンおよびナフチルアミン)もまた、Z基の適当な態様である。メチルまたは他の低級アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、追加アミン基、アミノアルキル、ハロゲンおよびハロアルキルから選択された基でさらに置換されたアニリンおよびナフチルアミンは、一般に、所望範囲にpKを有すると報告されている。使用できる他のアミン置換芳香族化合物には、2−アミノフェナジン、2,3−ピラジンジアミン、4−および5−アミノアセナフテン、3−および4−アミノピリダジン、2−アミノ−4−メチルキナゾリン、5−アミノインダン、5−アミノインダゾール、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラミンおよび1,2−および2,3−ジアミノアントラキノンがある。
【0055】
Zの態様として、ある種の非環式アミン化合物、例えば種々の置換ヒドラジン類(トリメチルヒドラジン、テトラメチルヒドラジン、1−メチル−1−フェニルヒドラジン、1−ナフタレニルヒドラジンおよび2−、3−および4−メチルフェニルヒドラジンを含む)があり、これらの全ては、4.5と7.0の間のpKを有することが報告されている。この範囲にpKを有する非環式化合物には、1−ピロリジンエタンアミン、1−ピペリジンエタンアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよび1,5−ジアザビシクロ[3.3.3]ウンデカンがある。
【0056】
また、上で示した構造内のZ部分としては、同時継続中の米国特許出願第2003/0031764号明細書に記載されているようなある種のアミノ糖が適切である。
【0057】
上記リストは、4.5と7.0の間のpKを有する化合物の例を与え、これらは、本発明の脂質結合体にて、pH応答性基として使用され得る;これらのリストは、限定を意図するものではない。選択した態様では、Z基はイミダゾール、アニリン、アミノ糖またはそれらの誘導体である。好ましくは、Z基の有効pKは、その脂質基との結合により著しく影響を受けない。連結した結合体の例を以下に示す。
【0058】
本発明の脂質は、中性結合Lを含み、これはZ部分および四級アンモニウム部分、Wを結合する。または脂質は中性の結合Qを四級アンモニウム部分、Wとリン脂質のヘッド基のホスフェート部分との間に含む。結合LおよびQは可変であり、好適な態様では、各々がメチレン、カルバメート、エステル、アミド、カーボネート、ウレア、アミンおよびエーテルから選択される。本発明を支持して調製した好ましい脂質では、LおよびQが−CH−であるメチレン結合を調製した。
【0059】
この脂質の尾部(tail portion)では、RおよびRは同一または異なり、6個〜24個の間の炭素原子を有する分枝もしくは非分枝のアルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖であり得る。さらに好ましくはRおよびR基は、長さが12個〜22個の間の炭素原子であり、R=R=C1735(この基がステアリル基となるよ
うに)またはR=R=C1733(この基がオレオイル基となるように)、またはR=R=C1533(パルミトイル鎖を含んでなる)である。
【0060】
本発明の脂質は、標準的な合成方法を使用して調製できる。上述のように、本発明を支持して行った実験では、上で示した構造を有する脂質(ここで、Zは、イミダゾールであり、n=1、p=1、m=1であり、Lはメチレンであり、Qはメチレンであり、Wはアミノであり、そしてR=R=C1735である)を調製した。例示的な脂質を調製する反応スキームは図1で具体的に説明し、その合成の詳細は実施例1に提供する。簡単に説明すると、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンイミダゾールを、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンおよび4(5)−イミダゾールカルボキシアルデヒドから調製し、そしてピリジン/ボランの存在下で反応させて、メチレン結合を介してホスファチジルエタノールアミンのアミノ部分に連結したイミダゾール部分を有する脂質を得た。過剰なアルデヒドを使用する場合、2つのイミダゾールがホスファチジルエタノールアミンに結合されるようになり、ジイミダゾールを生じる。4(5)−イミダゾールカルボキシアルデヒドの代わりにベンズイミダゾールカルボキシアルデヒドを使用する類似の経路を使用して、ホスファチジルエタノールアミンに結合されたベンズイミダゾールを生成することができる。
【0061】
他の結合を有する脂質の調製は、通常の方法を使用して当業者に容易に行われる。他の結合には、エーテル(L=−O−CH−)およびエステル結合(L=−O−(C=O)−)、ならびにアミド、ウレアおよびアミン結合(すなわち、ここで、L=−NH−(C=O)−NH−、−NH−(C=O)−CH−、−NH−(C=O)−NH−CH−または−NH−である)がある。合成手法のさらなる詳細は、従来の方法を使用して、そして例えば同時継続中の共有する米国特許出願第2003/0031764号明細書から得ることができる。
【0062】
本発明を支持するために行った実験では、DSPEIから構成されるリポソームを実施例3に記載するように調製した。比較のために、同時継続出願中の米国特許出願第2003/0031764号明細書に記載された中性のカチオン性脂質、ヒスタミン−ジステアロイルグリセロール(HDSG)からも調製した。ヒスタミンのイミダゾールは6のpKを有する。HDSGは生理学的pH(pH7.4)で中性となる傾向があり、そして6未満のpHで主に正に荷電する。HDSGからなるリポソームは、従来のカチオン性リポソームと同様に約pH4〜5でDNAをカプセル化する。HDSGリポソーム/複合体の表面電荷は、血液循環の生理学的pH下で減る。HDSGの表面電荷はpH5〜6で主に正であり(エンドソームおよびリソソームで一致したpH)、複合体とリソソーム膜との相互作用および核酸内容物の細胞質への放出を促進する。
【0063】
実施例5で検討するように、ゼータ電位測定をDSPEIを含有するリポソーム、およびHDSGを含有するリポソームについて得た。結果を図2に示す。DSPEI含有リポソームに関するゼータ電位(三角)は、生理学的pH付近でゼロであり、DSPEI含有リポソームがpH7付近で中性であることを示す。DSPEI含有リポソームについて、pHの上昇に伴うゼータ電位の低下は、他のリポソーム調製物について観察されたものよりも大変大きい。HDSG含有リポソーム(四角)に関するゼータ電位は、浅いゼータ電位対pHの傾斜により示されるように、pH変化に対する応答が低い。これは、より高いpKおよび生理学的pHでのより大きな変化を示す。これらの結果は、DSPEI含有リポソームが中性のカチオン性脂質であるヒスタミンジステアロイルグリセロール(HDSG)を含有するリポソームよりも低いpK、および生理学的pHで、より大きな中性を有することを示す。HDSGと比較してDSPEIについて、ゼータ電位対pHに関して、より鋭い傾斜も、DSPEIがHDSGよりも低いpKを有し、すなわちDSPEI含有リポソームがHDSG含有リポソームよりも生理学的pH下でさらに一層中性であ
ることを示す。このDSPEI含有リポソームの大きな中性(neutrality)は、インビボの条件下で血漿タンパク質および細胞との非特異的相互作用を最小とし、すなわち血中での長い循環に重要であり、これは全身用の薬剤および遺伝子治療、ならびに遺伝子モジュレーターの疾患組織への送達に必要である。
【0064】
さらに続いて図2を参照にして、ゼータ電位測定はジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)(菱形)を使用して調製したリポソームについても決定した。DDAB含有リポソームの比較的平らな傾斜は、pHを変動させてもゼータ電位に変化がほとんどなく、そしてDDABに関するpKがHDSGまたはDSPEIのいずれよりも高いことを示す。したがって、DDAB含有リポソームは生理学的pHでそれらのカチオン性を維持し、そしてインビボの条件下で血漿タンパク質との非特異的相互作用に参加する可能性がある。この結果、DDAB含有リポソームは循環から迅速に排除され、そして疾患組織への薬剤または遺伝子送達にはそれほど適していない。
【0065】
式(I)の中性のカチオン性リポソームにより与えられるさらなる利点は、極性のヘッド基の存在によるこれら脂質のより大きな溶解性に関する。より大きな溶解性によりリポソームDNA製剤を生理学的pHに近いpH値にすることができる。また極性ヘッド基を有する脂質は、従来のリン脂質からなる脂質二重層に、より良く包み込まれる傾向がある。このより良い包み込みは、リポソームに安定性を付与する。
【0066】
理論に拘束されることを望まないが、式(I)の中性のカチオン性脂質は、インビボへの投与に上昇した安定性を有するリポソームを提供し、そしてさらにポリアニオン性化合物を封入そして送達し、さらに非特異的相互作用(例えば血漿タンパク質との)を回避するために効果的である生理学的pHで非電荷のリポソームを提供し、すなわち血漿中でのより長い循環を提供すると仮定される。このように本明細書に記載する中性のカチオン性脂質は、従来のカチオン性脂質およびそれらに付随する毒性の危険性が改善されている。
【0067】
B.小胞形成脂質
小胞形成脂質は、好ましくは2つの炭化水素鎖、典型的にはアシル鎖、および極性ヘッド基を有するものである。この種に含まれるのは、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびスフィンゴミエリン(SM)のようなリン脂質であって、2本の炭化水素鎖は典型的には長さが約14〜約22個の炭素原子であり、しかも様々な程度の不飽和を有するものが包含される。場合により、分枝炭化水素鎖を有する小胞形成脂質を含むことが望ましい。
【0068】
アシル鎖が種々の飽和度を有する上記の脂質およびリン脂質は市販されており、または公開されている方法に従い調製される。本発明に含むことができる他の脂質は、コレステロールのような糖脂質およびステロールである。卵または大豆ホォスファチジルコリンのような市販されている生成物は、一部水素化された状態または天然状態で利用することができる。以下の実施例では、部分的に水素化された大豆ホォスファチジルコリン(PHSPC)を使用した。
【0069】
例えばリポソームが、種々のモル画分で存在する広い様々な脂質を使用して調製できるように、異なる種類の小胞形成脂質を混合することができる。例えばリポソームは通常、PE、PCおよびコレステロールの混合物から調製される。
【0070】
C.リポポリマー:親水性ポリマーで誘導化された脂質
任意にリポソーム組成物に含めることができる第2成分はリポポリマー、または親水性ポリマーで誘導化された脂質である。リポポリマーとして使用することができる小胞形成脂質は、小胞形成脂質成分について記載した任意のものである。リン脂質のようなジアシ
ル鎖を持つ小胞形成脂質が好適である。リン脂質の1例は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)であり、これは活性なポリマーにカップリングするために都合が良い反応性アミノ基を提供する。PEの1例は、ジステアリルPE(DSPE)である。ポリエチレングリコールでの誘導化により好適なリポポリマーである、好ましくはウレタン結合で誘導化されたメトキシ−PEG−DSPEを生じる。
【0071】
リポポリマーのリポソームへの取り込みは、カプセル化された薬剤の漏出の低減といった重要な利点を与えることができる。さらに別の利点は、リポソーム表面と標的細胞、およびRESとの相互作用のモジュレーションにおける、より大きな柔軟性である(Miller et al.,Biochemistry,37:12875−12883(1998))。PEG−置換合成セラミドは、空間的に安定化されたリポソームの非荷電成分として使用されてきた(Webb et al.,Biochim.Biophysis.Acta,1372:272−282(1998));しかしこれらの分子は複雑であり、そして調製するには高価であり、そしてそれらは一般にリン脂質二重層ならびにジアシルグリセロリン脂質に包み込まれない。
【0072】
Zalipskyに対する米国特許第6,586,001号明細書に記載されているリポポリマーも利用することができ、そして調製の容易さ、および経費の面で、PEG−置換合成セラミドに優るある種の利点を提示する。米国特許第6,586,001号明細書に記載されているリポポリマーは、PEG−リン脂質の荷電したホスフェート結合の代わりに、空間的に安定化されたリポソームに頻繁に使用されているPEG−DSPEのような中性の結合を含む。この中性の結合は典型的にはカルバメート、エステル、アミド、カーボネート、ウレア、アミンおよびエーテルから選択される。加水分解可能な、または他の開裂可能な結合、例えばジスルフィド、ヒドラゾン、ペプチド、カーボネートおよびエステルは、インビボで所定の循環時間の後にPEG鎖を除去することが望まれる場合の応用に好適である。この特徴は、リポソームがその標的に達した後、薬剤の放出または細胞への取り込みを促進すること(Martin et al.,米国特許第5,891,468号明細書;Zalipsky et al.,国際公開第98/18813号パンフレット(1998))、または標的化リガンドの一時的なマスキングに有用となり得る。
【0073】
親水性ポリマーの例には、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチル−アクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルタミド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドコポリマー、上に挙げたポリマーのコポリマーおよびそれらの混合物を含む。多くのこれらのポリマーの性質、およびそれを用いた反応は米国特許第5,395,619号および同第5,631,018号明細書に記載されている。適当である他のポリマーには、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびそれらのコポリマー、ならびにヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースのような誘導化セルロースを含む。さらにこれらポリマーのブロックコポリマーまたはランダムコポリマー、特にPEGセグメントを含むものが適当であるかもしれない。PEGのような親水性ポリマーで誘導化された脂質の調製法は、例えば共有する米国特許第5,013,556号明細書に記載されているように周知である。
【0074】
誘導化脂質において好適なポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、好ましくは1,000〜15,000ダルトンの間、さらに好ましくは1,000から5,000ダルトンの間の分子量を有するPEG鎖である。
【0075】
特定の態様では、親水性ポリマーは米国特許出願第2003/0031764号明細書およびZalipskyへの米国特許第6,342,244号明細書に記載されているジチオベンジル部分のような放出可能な結合を介して結合されている。
【0076】
以下に記載するように、中性のカチオン性脂質から構成されるリポソームが本発明を支持する実験で調製された。リポポリマーは特定の実施例に含めた。
【0077】
D.標的化リガンド
リポソームは、特定の細胞集団に対する所望の標的結合特性を達成するために、抗体もしくは抗体のフラグメント、細胞表面レセプターと相互作用するための低分子エフェクター分子、抗原、および他の類似の化合物のような表面基を含むように調製され得る。このようなリガンドは、リポソーム脂質に、標的分子で誘導体化された脂質、または予め形成されたリポソーム中に標的分子で誘導体化され得る極性ヘッド化学基(例えば反応性のアミノ部分を有するホスファチジルエタノールアミン)を有する脂質を含めることにより、リポソームに含むことができる。あるいは、標的化部分は、予め形成されたリポソームをリガンド−ポリマー−脂質結合体と共にインキュベーションすることによって、予め形成されたリポソーム内に挿入することができる。
【0078】
脂質は、リガンドを親水性ポリマー鎖(これは、その近位端において小胞形成脂質に結合する)の遠位自由端に共有結合させ、そして標的化リガンドをリポソームに包含させることによって、標的化リガンドで誘導体化され得る(Zalipsky,S.,(1997)Bioconjugate Chem.,8(2):111−118)。あるいは標的化リガンドは直接的または連結基を介して脂質に誘導化され(例えばホスファチジルエタノールアミン)、これにより親水性ポリマー鎖が除去されまでマスクされたままとなる。もちろん、当業者はリポポリマーの存在無しで標的化リガンドをリポソームに包含することが時には望ましいと考えるだろう。
【0079】
選択された親水性ポリマーを選択された脂質に付着させ、そしてポリマーの遊離した、付着していない末端を、選択されたリガンドとの反応のために活性化させるための、広範な種々の技術が存在し、そして具体的には親水性ポリマーであるポリエチレングリコール(PEG)が広範に研究されている(Zalipsky,S.,(1997)Bioconjugate Chem.,8(2):111−118;Allen,T.M.et al.,(1995)Biochemicia et Biophysica Acta
1237:99−108;Zalipsky,S.,(1993)Bioconjugate Chem.,4(4):296−299;Zalipsky,S.et al.,(1994)FEBS Lett.353:71−74;Zalipsky,S.et al.,(1995)Bioconjugate Chemistry,705−708;Zalipsky,S.,STEALTH LIPOSOMES(D.LassicおよびF.Martin編)第9章、CRC出版、ボカラトン、フロリダ州(1995))。
【0080】
標的化リガンドは当業者に周知であり、そして本発明の好ましい態様において、リガンドは、内皮腫瘍細胞に対する結合親和性を有するリガンドであり、そしてこれは1態様では、細胞によってインターナライズされ得る。このようなリガンドはしばしば、増殖因子受容体の細胞外ドメインに結合する。標的化リガンドには、限定するわけではないがペプチド、サッカリド、ビタミン、抗体もしくは抗体フラグメント、レシチン、受容体リガンド、またはそれらの模倣物である。特定の態様では標的化リガンドは増殖因子受容体の細胞外ドメインに特異的に結合する。そのような受容体は、HER2/neu癌遺伝子のc−erb−2タンパク質産物、上皮増殖因子(EGF)受容体、塩基性線維芽細胞増殖受容体および血管内皮増殖因子受容体から選択される。別の態様では、標的化リガンドはE
−セレクチン、L−セレクチン受容体およびP−セレクチン受容体、葉酸受容体、CD4受容体、CD19受容体、αβインテグリン受容体およびケモカイン受容体から選択される。また標的化リガンドは、葉酸、ビオチン、ピリドキサールリン酸、ビタミンB12(シアノコバラミン)、シアリルルルス、トランスフェリン、上皮増殖因子、塩基性繊維芽細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、VCAM−1、ICAM−1、PECAM−1、RGEペプチドまたはNGRペプチドであることができる。特定の他の態様では、リガンドはE−セレクチン、Her−2またはFGFである。
【0081】
III.ポリアニオン性化合物
本明細書に記載する組成物に含むことができるポリアニオン性化合物には、ポリヌクレオチド、代用リンカーを有するポリヌクレオチド類似体、負に荷電したタンパク質、または多糖を含む。
【0082】
A.ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチド類似体
ポリヌクレオチドはプラスミド、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、または五価のホスフェートリンカーならびに代用リンカーを含んでなるハイブリッドポリヌクレオチドであることができる。またポリヌクレオチドは修飾されたヌクレオチド、天然には存在しないヌクレオチド、タンパク質−核酸複合体、またはポリヌクレオチド−薬剤結合体を含んでなることもできる。好ましくはポリヌクレオチドはリポソームの少なくとも一部に封入される。
【0083】
本明細書で使用する用語「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」は、通例のプリンおよびピリミジン塩基、すなわちアデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)およびウラシル(U)だけでなく、修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドも含有するヌクレオシドおよびヌクレオチドを指す。そのような修飾には限定するわけではないが、プリンもしくはピリミジン部分のメチル化またはアシル化、ピリミジン環の、またはプリン環系の1もしくは両方の環の種々の複素環構造の置換、および例えばアセチル、ジフルオロアセチル、トリフルオロアセチル、イソブチリル、ベンゾイル等のような保護を使用した1もしくは複数の官能基の保護を含む。修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドには糖部分の修飾も含み、例えばここで1もしくは複数のヒドロキシル基がハライドおよび/またはヒドロカルビル置換基(後者の場合、典型的には脂肪族基)に置き換えられるか、またはエーテル、アミン等として官能化される。通常の類似体には限定するわけではないが、1−メチルアデニン、2−メチルアデニン、N−メチルアデニン、N−イソペンチルアデニン、2−メチルチオ−N−イソペンチルアデニン、N,N−ジメチルアデニン、8−ブロモアデニン、2−チオシトシン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、5−エチルシトシン、4−アセチルシトシン、1−メチルグアニン、2−メチルグアニン、7−メチルグアニン、2,2−シキメチルグアニン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン、8−アミノグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、5−フルオロ−ウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、5−エチルウラシル、5−プロピルウラシル、5−メトキシウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−(メチル−アミノメチル)ウラシル、5−(カルボキシメチルアミノメチル)−ウラシル、2−チオウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、5−(2−ブロモビニル)ウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、プソイドウラシル、1−メチルプソイドウラシル、ケオシン(queosine)、イノシン、1−メチルイノシン、ハイポキサンチン、キサンチン、2−アミノプリン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−チオプリンおよび2,6−ジアミノプリンを含む。イソグアニンおよびイソ−シトシンは、ハイブリダイゼーションが望ましくない場合に、配列間の潜在的な交差反応性を下げるためにオリゴヌクレオチドに包含させることができる。
【0084】
また本明細書で使用する「ポリヌクレオチド」は、ポリマーがDNAおよびRNAに見られるような塩基の対合および塩基のスタッキングを可能にする配置の核塩基を含むことを条件に、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む)、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシド、および非ヌクレオチド骨格を含む他のポリマー(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ペプチド核酸、およびアンチ−ジーンデベロップメントグループ(Anti−Gene Development Group)、コルバリス、オレゴン州、からNeugene(商標)ポリマーとして販売されている合成配列特異的核酸配列)のような代用リンカー、または他の代用リンカーを有する他の種類のポリヌクレオチド類似体を包含する。すなわち本明細書の「オリゴヌクレオチド」は、二本鎖および一本鎖のDNA、ならびに二本鎖および一本鎖のRNAおよびDNA/RNAハイブリッドを含み、そしてまた既知の種類の修飾オリゴヌクレオチド、例えば1もしくは複数の天然に存在するヌクレオチドが類似体に置換されているオリゴヌクレオチド;例えば非荷電結合(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメート等)、および負に荷電した結合(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート等)、および正に荷電した結合(例えばアミノアルキルホスホルアミデート、アミノアルキルホスホロトリエステル)を含むもの、例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、トキシン、抗体、ペプチドを含む)、インターカレーター(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレーター(例えば金属、放射性金属、ボロン、酸化性金属等)、アルキル化剤、色素または蛍光標識のようなペンダント部分を含むもののような代用結合を含むオリゴヌクレオチド、またはByrn,S.R.,et al.,(1991),「薬剤−オリゴヌクレオチド結合体(Drug−oligonucleotide conjugates)」、Adv.Drug.Delivery Reviews 6:287−308に記載されているオリゴヌクレオチド−薬剤結合体を含む。
【0085】
用語「ポリヌクレオチド」と「オリゴヌクレオチド」との間の長さを識別する意図はなく、そしてこれらの用語は互換的に使用される。本明細書で使用するように、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに関する記号は、生化学命名法のIUPAC−IUB委員会の推薦に従う(Biochemistry 9:4022,1970)。
【0086】
オリゴヌクレオチドは既知の方法により合成することができる。一般にオリゴヌクレオチドを合成するための方法に関連する背景の参照文献は、β−シアノエチルホスフェート保護基の使用に基づく5’−から3’−合成に関するものであり(例えばde Napoli et al.,(1984)Gazz.Chim.Ital.114:65,Rosenthal et al.(1983) Tetrahedron Lett.24:1691,Belagaje and Brush(1977)Nucleic Acids Res.10:6295)、液相での5’−から3’合成を記載する参考文献には、Hayatsu and Khorana(1957)J.Am.Chem.Soc.89:3880、Gait and Sheppard(1977)Nucleic Acids Res.4:1135,Cramer and Koster(1968)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.7:473およびBlackburn et al.(1967)J.Chem.Soc.Part C,2438を含む。さらにMatteucci and Caruthers(1981)J.Am.Chem.Soc.103:3185−91は、オリゴヌクレオチドの調製におけるホスホクロライドの使用を記載した。Beaucage and Caruthers(1981)Tetrahedron Lett.22:1859−62および米国特許第4,415,732号明細書は、オリゴヌクレオチドの調製にホスホルアミダイトの使用を記載した。Smith,ABL15−24(1983年12月)は、自動化固相オリゴデオキシリボヌクレオチド合成を記載する。またそこに引用されている参考文献、およびWarner et al.(1984)DNA3:401−11も参照にされたい。Horn and M.S.Urdea(1986)DNA5:421−25は、ビス(シアノエトキシ)−N,N−ジイソプロピルアミノホスフィンを使用した固体支持DNAフラグメントのリン酸化を記載した。またT.Horn and M.S.Urdea(1986)Tetrahedron Lett.27:4705−08も参照にされたい。
【0087】
上記の脂質から形成されたリポソームを、核酸と会合させる。「会合させる(associated)」とは、核酸のような治療薬がリポソームの中央区分および/または脂質二重層空間に封入され、外側のリポソーム表面に会合し、または内部に封入され、かつ外側でリポソームと会合していることを意味する。治療薬は核酸または薬剤化合物でよいと考えられる。薬剤化合物がリポソームに封入され、かつ核酸がリポソームと外側で会合し、またはその逆であることができる。封入および会合という用語は、本明細書では互換的に使用する。
【0088】
核酸は、様々なDNAおよびRNAに基づく核酸から選択され、これらのフラグメントおよび類似体を含む。種々の状態の処置のための様々な遺伝子が記載され、そして目的とする特異的な遺伝子のコード配列をGenBankまたはEMBLのようなDNA配列データーバンクから容易に取り寄せることができる。例えば、嚢胞性繊維症、アデノシンデアミナーゼ欠損症およびAIDSのようなウイルス性、悪性、および炎症性疾患および状態の処置用のポリヌクレオチドが記載された。APC、DPC4、NF−1、NF−2、MTS1、RB、p53、WT1、BRCA1、BRCA2、およびVHLのような腫瘍抑制遺伝子の投与による癌の処置が考えられる。
【0089】
示した疾患の処置のための特異的核酸の例には、HLA−B7、腫瘍、結直腸癌、黒色腫;IL−2、癌、特に乳癌、肺癌、および腫瘍;IL−4、癌;TNF、癌;IGF−1アンチセンス、脳腫瘍;IFN、神経芽細胞腫;GM−CSF、腎細胞癌;MDR−1、癌、特に進行癌、乳および卵巣癌;およびHSVチミジンキナーゼ、脳腫瘍、頭部および頸部腫瘍、中皮腫、卵巣癌が挙げられる。
【0090】
ポリヌクレオチドは、それらのターゲット、通常はメッセンジャーRNA(mRNA)またはmRNA前駆体に対して相補的な配列をからなるアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドであることができる。mRNAは機能的またはセンス方向に遺伝情報を含み、そしてアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合が意図するmRNAを不活性化し、タンパク質への翻訳を防止する。このようなアンチセンス分子は、タンパク質が特異的RNAから翻訳されることを示す生化学実験に基づいて決定され、そしていったんRNAの配列がわかれば、相補的なワトソン−クリック塩基対を介してそれに結合するアンチセンス分子を設計することができる。このようなアンチセンス分子は典型的には10から30個の塩基対を含み、より好ましくは約10〜約25個の塩基対、最も好ましくは約15〜約20個の塩基対を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、耐ヌクレアーゼ加水分解性を改良する目的で修飾することができ、そのような類似体には、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロセレノエート、ホスホジエステルおよびp−エトキシオリゴヌクレオチドが含まれる(国際公開第97/07784号パンフレット)。
【0091】
封じ込められた薬剤は、リボザイム、DNAzyme、触媒性RNAまたはRNA干渉を誘導する低分子干渉RNA(siRNA)であることもできる。RNA干渉とは、二本鎖RNAを介して媒介されるRNA干渉(RNAi)と呼ばれるプロセスを通して誘導される強力かつ特異的な遺伝子サイレンシングを指す。RNAiは、サイレンシングトリガー(silensing trigger)にホモロガスなメッセンジャーRNAを破壊するRNA誘導化サイレンシング複合体(RNA−induced silencing complex:RISC)、配列特異的なマルチコンポーネントヌクレアーゼにより媒介される。RISCは、二本鎖RNAトリガーから誘導化された短いRNA(約22ヌクレオチド)を含むことが知られている。RNAiは線虫(C.elegance)、ショウジョウバエ、真菌、植物、そしてさらに哺乳動物細胞株を含む多数の系で、機能損失の調査に選択される方法となった。多くの哺乳動物細胞株で、遺伝子を特異的に抑制する(silence)ために、大きなdsRNA(>30bp)ではインターフェロンの応答を誘発し、そして非特異的な遺伝子のサイレンシングを引き起こすので、低分子干渉RNA(siRNA)が使用されている。
【0092】
RNA干渉に関するさらなる背景は、関連する参考文献の総説から得ることができる。国際公開第01/68836号パンフレット;
【0093】
【表1】

【0094】
RNA干渉の分野で興味深い米国特許第号明細書には、米国特許第5,985,847号および同第5,922,687号明細書がある。また興味深いのは、国際公開第WO/11092号パンフレットである。さらに興味深い文献には:
【0095】
【表2】

【0096】
がある。
【0097】
ポリアニオン性化合物は好ましくはポリヌクレオチドであり、そして限定するわけではないが、プラスミド(例えば遺伝子をコードする)、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、修飾ヌクレオチド、天然に存在しないヌクレオチド、またはタンパク質−核酸複合を含む。
【0098】
1つの態様では、ポリヌクレオチドはプラスミド、好ましくはサイズが5〜40Kbp(キロ塩基対)の範囲である環状化または閉じた二本鎖分子であるプラスミドに挿入することもできる。そのようなプラスミドは周知の方法によって構築され、治療用遺伝子、すなわち遺伝子治療において適当なプロモーターおよびエンハンサー、および宿主細胞内での複製および/または宿主細胞ゲノムへの組込みに必要な他の要素の制御下で発現される遺伝子を包含する。遺伝子治療に有用なプラスミドの調製法は広く知られており、参考とする。
【0099】
上記のようなポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよび他の核酸は、脂質フィルムの水和の際に受動封じ込めによってリポソームに封じ込めることができる。ポリヌクレオチドを封じ込めるための他の手法には、核酸を単一分子形に縮合することを含み、ここで核酸は核酸を小さな粒子へと縮合するのに有効な条件下で、プロタミンサルフェート、スペルミン、スペルミジン、ヒストン、リシン、カチオン性ペプチドまたはそれらの混合物、または他の適切なポリカチオン性縮合剤を含む水性媒質に懸濁させる。縮合した核酸分子の溶液を用いて、乾燥した脂質フィルムを再水和して、封じ込められた形態の縮合核酸を有するリポソームを形成する。
【0100】
B.負に荷電したタンパク質
負に荷電したタンパク質には、タンパク質が中性のカチオン性脂質を含んでなるリポソームと相互作用できる限り、最も広い意味でのアニオン性タンパク質を含む。負に荷電したタンパク質は、任意の長さであることができるが、現実的には溶解性に拘束される。好適な態様は薬剤−タンパク質結合体であり、ここで負に荷電したタンパク質は中性のカチオン性脂質を含んでなるリポソームと相互作用する手段を提供する。負に荷電したタンパク質には限定するわけではないが、ポリグルタメートまたはポリアスパルテートファミリーのペプチド、すなわち主にグルタミン酸またはアスパラギン酸残基である1もしくは複数の配列モチーフを含むもの;コラーゲンおよびアルブミンがある。ポリグルタミン酸およびポリアスパラギン酸薬剤担体または結合体は、Li,C.,(2002)Adv.Drug Delivery Reviews 54,695−713およびPeterson,R.V.,「生物活性ポリマー系:総説(Bioactive Polymer Systems;An Overview)」の「ポリペプチドに基づく生分解性薬剤送達系(Biodegradable Drug Selivery System Based on Polypeptides)」、Gerberin,C.G & Carraher,C.R.,編集、プレナム出版、ニューヨーク、(1985)に記載された。例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、ara−C、ウラシルおよびウリジン誘導体、シクロホスファミド、メルファラン、マイトマイシンC、パクリタキセルおよびカンプトテシンのポリグルタミン酸結合体を調製し、そして本明細書に記載する中性のカチオン性脂質を含んでなるリポソームを使用して送達することができる。
【0101】
C.多糖
負に荷電した多糖も、中性のカチオン性脂質を含んでなるリポソームを含む本組成物に使用することができるポリアニオン性化合物に含まれる。硫酸化された多糖は負に荷電した多糖の種類の例であり、それには限定するわけではないがヘパリン硫酸、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、D−グルコサミンおよびL−イズロン酸またはD−グルクロン酸のいずれかの反復単位からなる硫酸化の程度が変動した多糖鎖の混合物、または任意の前記物質の塩もしくは誘導体がある。
【0102】
また負に荷電したキトサン誘導体、アルギン酸ナトリウム、化学的に修飾されたデキスタン等を含む。
【0103】
III.組成物の調製
A.リポソーム成分
上記脂質、すなわち中性のカチオン性脂質およびリポポリマーを含むリポソームは、種々の技術(Szoka,F.Jr.et al.,Ann,Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980)に記載される技術のような)により調製することができ、そして本発明を支持して調製されるリポソームの具体的な例を、以下に記載する。典型的には、リポソームは多重ラメラ小胞(MLV)であり、これは単純な脂質フィルム水和技術によって形成され得る。この手順において、以下に詳述する型のリポソーム形成脂質の混合物が適切な有機溶媒に溶解され、次いでこれが容器内で蒸発されて、薄いフィルムを形成する。次いでこの脂質フィルムは水性媒体で覆われ、そして水和して多くは約0.1〜10ミクロンの間のサイズを有するMLVを形成する。次いでMLVは所望により超音波処理されて、さらにリポソームのサイズ分布を下げることができる。
【0104】
本発明の組成物において使用するためのリポソームは、(i)式(I)の中性のカチオン性脂質を含み、そしてさらにリポソーム脂質二重層に安定に取り込まれる小胞形成脂質または脂質、例えばジアシルグリセロール、リソ−リン脂質、脂肪酸、糖脂質、セレブロシドおよびコレステロールのようなステロールを含むことができる。さらにカチオン性または中性のカチオン性脂質を所望により含むことができる。リポポリマーも含むことができる。特定の好適な態様では、親水性ポリマーが開裂可能な結合を介して連結している。
【0105】
典型的にリポソームは、約5〜80モル%の間の式(I)の中性のカチオン性脂質、より好ましくは、約10〜60モル%の間、そしてさらにより好ましくは、約20〜45モル%の間の中性のカチオン性脂質から構成される。リポポリマーは、典型的には約1〜30の間のモル%、より好ましくは約2〜15モル%の間、そしてさらにより好ましくは、約4〜12モル%の間で含まれる。本発明を支持して行われる実験(以下に記載する)において、リポソームは30〜60モル%の中性のカチオン性脂質および最高5モル%のリポポリマーが使用された。
【0106】
本発明に従い調製されるリポソームは、選択されるサイズの範囲内、典型的には約0.01〜0.5ミクロンの間、より好ましくは、0.03から0.40ミクロンの間で実質的に均一なサイズを有するようなサイズにされ得る。REVおよびMLVのための効果的なサイズの決め方には、リポソームの水性懸濁液を、0.03〜0.2ミクロンの範囲、典型的には0.05、0.08、0.1または0.2ミクロンの選択された均質な孔サイズを有する一連のポリカーボネート膜を通して押し出すことが含まれる。この膜の孔サイズは、この膜を通して押し出すことによって生成されるリポソームの最大のサイズにおよそ対応する(特に、調製物が同じ膜を通して2回以上押し出される場合)。また均一化方法もまた、リポソームのサイズを100nm以下のサイズに減少させるために有用である(Martin,F.J.,特殊化された薬剤送達系−製造および生産技術(SPECIALIZED DRUG DELIVERY SYSTEMS−MANUFACTURING AND PRODUCTION TECHNOLOGY)、(P.Tyle編)、マルセルデッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク、267−316頁(1990))。
【0107】
B.例示的な組成物の調製および特徴付け
本発明を支持して行った実験において、CMVプロモーターを有するpNSLルシフェラーゼプラスミドDNAが、中性のカチオン性脂質から構成されるリポソーム中に封入された。幾つかの実験では、Zalipsky,S.,et al.,(2001)「カチオン性脂質−DNA複合体の可逆的ペグ化により媒介される遺伝子送達に対する新たな取り組み(New approach to gene delivery mediated by reversible PEGylation of cationic lipid−DNA complexes)」、Proceed.Intl.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.28:1177(#7066)に記載されているように、開裂可能なリポポリマーがリポソームに包含された。複合体の標的化は、葉酸塩またはFGFのいずれかを標的化リガンドとして含めることにより達成された。典型的に標的化リガンドは、当該分野において公知であり、そして例えば米国特許第6,180,134号明細書およびKlibanov,A.L.,(2003)「長く循環する立体的に保護されたリポソーム(Long−circulating sterically protected liposomes)」、リポソーム:実践的方法(Liposomes:A Practical Approach)、第2版、Tor
chilin,V.P.,et al.編集、オックスフォード大学出版、第231−265頁に記載される従来の化学技術に従い、リポポリマーのPEG鎖の遠位端に共有結合された。
【0108】
実施例8はDSPEIリポソームを使用して、BHK細胞のインビトロトランスフェクションおよび発現を具体的に説明する。ルシフェラーゼを発現するBHK細胞が同定され、そして遺伝子発現、したがってトランスフェクション効率がDSPEIおよびHDSG含有リポソームについて比較された。図3に示すように、HSDGを含有するリポソームと比べて大量の遺伝子発現がDSPEI含有リポソームを使用して達成された。遺伝子発現の強化は、DSPEI含有リポソームを使用してほぼ3倍高かった。
【0109】
実施例9は、Lewis肺癌腫細胞腫瘍を保有するマウスにインビボ投与するための、製剤番号(9−1)、(9−2)、(9−3)、(9−4)、および(9−5)の調製を記載する。製剤番号2および3は、HDSGおよび米国特許出願第2003/0031764号明細書に記載されているmPEG−DTB−脂質(ここでRはHである。本明細書で「FC PEGF」または「急速開裂性PEG」ともまた称される)を含んだ。この製剤はまた、FGF標的化リガンドを含んだ。製剤番号1、4および5は、比較対照として役立てた。リポソーム−DNA複合体は試験マウスの静脈内に投与した。24時間後、腫瘍組織および他の組織を収集し、そしてルシフェラーゼ発現について分析した。これらの結果を表1に示す。
【0110】
【表3】

【0111】
DDABからなるリポソーム(製剤番号9−5)(これは、カチオン性リポソームである)に関する肺におけるルシフェラーゼ発現は、他の製剤よりほぼ100倍高い。この製剤中の標的化リガンドは他の製剤とは異なるが、製剤番号9−5に関する高い肺の発現は、主に肺における大きい表面積および正に荷電したプラスミド−リポソーム複合体と負に荷電した肺中の内皮細胞表面との間の静電荷相互作用に起因する。中性のカチオン性脂質HDSGを使用したリポソーム組成物は(製剤番号9−1)、カチオン性脂質DDABよりもこの問題を克服する。製剤9−1、9−2、9−3および9−4は全て、HDSG中性−カチオン性脂質を含む。脂質は生理学的pH(7.4)において中性であるので、リポソームは、肺の表面に固着せず、これらのリポソームが全身に分布することを可能にする。この改善された生体分布は、製剤9−1および9−2について、腫瘍組織におけるルシフェラーゼのより高い発現に反映される。
【0112】
実施例10はさらなる実験を記載し、ここでFGF標的化リポソーム/DNA複合体が、Lewis肺腫瘍を接種したマウス、およびMatrigel(腫瘍脈管標的化のためのFGF脈管形成内皮細胞モデル)を注射したマウスに投与された。これらの実験において、腫瘍細胞およびMatrigelは同じマウスの反対の側腹に移植した。リポソームは、中性のカチオン性脂質HDSGおよびコレステロールまたはPHSPCのいずれかから調製された。PEG−DTB−脂質もまた、本発明による製剤に含まれた。カチオン性脂質もまた、複合体安定性およびトランスフェクション効率に及ぼすカチオン性脂質の効果を測定するために複合体に含まれた。2種のカチオン性脂質(DOTAPおよびN−[N,N−ビス(3−アミノプロピル)−L−オルミチル]−N,N−ジオクタデシル−L−グルタミンテトラヒドロトリフルオロアセテート(本明細書中で「GC33」と称する)が利用された。
【0113】
この製剤を、腫瘍保有マウスまたはMatrigel保有マウスに静脈内投与し、そしてルシフェラーゼ発現を、Matrigelまたは腫瘍において、肺で、および肝臓で、投与から24時間後に測定した。結果を、表2に示す。
【0114】
【表4】

【0115】
同様に実施例11および12は、式(I)の中性のカチオン性脂質を使用して調製されたリポソーム製剤のインビボ効率を評価することを支持するために、DSPEI含有リポソームのインビボ投与を記載する。HDSGを含有するリポソーム組成物と比較して、DSPEI含有リポソームは、標的腫瘍組織との、より特異的かつ標的化された相互作用を提供することが期待される。
【実施例】
【0116】
IV.実施例
本発明をその好適な具体的態様に関連して記載てきたが、前述の説明ならびに以下の実施例は、本発明を具体的説明することを意図し、そして本発明の範囲を限定するとは解釈されない。他の観点、利点および修飾は、本発明に関与する当業者に容易に明白となるだろう。
【0117】
本明細書に引用したすべての特許、特許出願、雑誌の記事および他の参考文献は、それらの内容を全部、参照により編入する。
【0118】
以下の実施例は、当業者に本発明の化合物をどのように作成および使用するかの完全な
開示および説明を提供するために載せ、そして発明者が考える彼らの発明の範囲を限定するものではない。数値(例えば量、温度等)に関する正確さを確実にするために努めたが、いくらかの誤差および逸脱も説明されるべきである。他に示さない限り、部は重量部であり、そして温度は摂氏の度であり(℃)、そして圧は大気圧またはその付近である。
【0119】
以下に説明する手順および本明細書を通して、使用した略号は以下のようにそれらが一般的に受け入れられている意味を有する:
C 摂氏(すなわちCentigrade)
mM ミリモル
μM マイクロモル
pmol ピコモル(10−12モル)
mg ミリグラム
μg マイクログラム
mL ミリリットル
μL マイクロリットル
μm マイクロメートル
Tm 融解温度
FBS ウシ胎児血清
DMEM ダルベッコの改良イーグル培地
DOTAP 1,2−ジオレイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン
DSPE ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン
GC33 N−[N,N−ビス(3−アミノプロピル)−L−オルミチル]−N,N−ジオクタデシル−L−グルタミンテトラヒドロトリフルオロアセテート
【0120】
材料:以下の材料は、示した供給源から得た:部分水素化大豆ホスファチジルコリン(ベロナン ヴァルデン社(Vernon Walden Inc.)、グリーンヴィレッジ、ニュージャージー州);コレステロール(ソルベイ ファルマシューティカル(Solvay Pharmaceuticals)、オランダ);ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)およびジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)(アバンティ ポーラー リピッド社(Avanti Polar Lipids,Inc.)、バーミンガム、アラバマ州)。
方法 ダイナミック光散乱は、コールター(Coulter)N4−MD(コールター、マイアミ、フロリダ州)を使用して実行した。
【0121】
実施例1
例示的な中性のカチオン性脂質の調製
A.イミダゾリルで誘導化したジステアロイルホスファチジルエタノールアミンの調製
【0122】
【化3】

【0123】
4(5)−イミダゾールカルボキシアルデヒド(アルドリッチ(Aldrich)、0.06g、0.6ミリモル)およびジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)(0.39g、0.52ミリモル)を、CHCl:CHOH(1:1容量/容量、16ml)の混合物に、50℃で15分間溶解した。上記混合物にボロン−ピリジン錯体(0.05ml、0.6ミリモル)を滴下し、そして反応混合物を50℃で3時間撹拌し、次いで室温で18時間撹拌した。反応混合物のTLC(CHCl:CHOH:HO 80:18:2)は反応が完了したことを示した。溶媒を蒸発させ、そして得られた粗混合物はシリカゲルを使用してクロマトグラフィーにかけた。CHCl:CHOH(80:18)の溶出液として使用して、上の不純物を除き、続いてCHCl:CHOH:HO(80:18:2)の溶媒系で白色固体生成物を溶出し、これを3級ブタノールから凍結乾燥した。生成物の収量は0.37g(86%)であった。
【0124】
【表5】

【0125】
実施例2
ジイミダゾールホスファチジルエタノールアミンの調製
2倍量のイミダゾールカルボキシアルデヒド(1ミリモル)およびボラン−ピリジン(1.1ミリモル)を用いて実施例1に記載したものと同じ手順を使用して、表題の誘導体を生成した。ジイミダゾール生成物はシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製し、そしてMALDI−TOF質量分析法により特性決定した。生成物は907g/モルの分子量を有し、ホスファチジルエタノールアミンの四級アミンに2個のイミダゾール部分が結合したことを示した。この反応を図1に概略的に表す。実施例1に記載したものと同じH NMRスペクトルが見られ、積分で2個のイミダゾール部分の存在を確認した。
【0126】
実施例3
DSPEIおよびPHSPCを含有するリポソームの調製
DSPEIおよびPHSPCを40:60のモル比で混合し、そしてクロロホルムに溶解した。クロロホルムは脂質の薄いフィルムを形成するためにロータリーエバポレーションで蒸発させた。脂質の薄いフィルムはpH〜4.5の水で30分間、〜40℃で水和した。生じた多層リポソームを〜10分間、超音波処理し、そして最終的なリポソームのサイズは約80nmであった。
【0127】
実施例4
DSPEI、DOTAPおよびコレステロールを含有するリポソームの調製
DSPEI、DOTAPおよびCHOLを、35:30:35(モル比)のモル比で混合し、そしてクロロホルムに溶解した。クロロホルムは脂質の薄いフィルムを形成するためにロータリーエバポレーションで蒸発させた。脂質の薄いフィルムはpH3〜3.5の水で30分間、〜40℃で水和した。生じた多層リポソームを〜20分間、超音波処理し、そして最終的なリポソームのサイズは約100nmであった。
【0128】
【表6】

【0129】
実施例5
中性のカチオン性脂質を含むリポソームのゼータ電位測定
ゼータ電位は、モルヴァー インストゥルメント社(Malver Instruments,Inc.)(サウスボロー、マサチューセッツ州)製のZETASIZER 2000を使用して測定した。この機器は以下のようにして操作した:測定数:3;測定間の遅延:5秒;温度:25℃;粘度:0.89cP;比誘電率:79;セル型:毛細管流;ゼータ限界:−150mV〜150mV。ゼータ電位測定は、実施例3に記載したように調製したDSPEIおよびPHSPCを含有するリポソーム、およびHDSGおよびDDABからなる比較リポソームについて得た。結果を表2に示す。
【0130】
実施例6
核酸を含むリポソームの調製
DSPEIを含有するリポソームは、上記実施例3および4に記載したように調製した。中性のカチオン性脂質であるHDSGを含有するリポソームは、有機溶媒中、所望のモル比の所望の脂質成分溶液を調製することにより調製し、次いで5%グルコース、pH4〜5で水和させた。この脂質成分およびこの成分のモル比は、以下の実施例で特定されている。
【0131】
ルシフェラーゼをコードするpNSLプラスミドを、米国特許第5,851,818号明細書に記載されるように、2つの市販のプラスミド(pGFP−N1プラスミド(クロンテック(Clontech)、パロアルト、カリフォルニア州)およびpGL3−C(プロメガ社(Promega Corporation)、マジソン、ウィスコンシン州)から構築した。DNA−リポソーム複合体は、ルシフェラーゼ遺伝子をもつプラスミドをリポソーム(1μgのDNAあたり、14ナノモルのDSPEIまたはHDSG、DOTAPおよびコレステロールの総脂質から構成されている)に移すことにより調製した。ルシフェラーゼレポータープラスミドDNA溶液を、酸性リポソーム溶液に連続的に撹拌しながら10分間にわたってゆっくりと添加した。
【0132】
実施例7
標的化リガンドを含有するDNA−リポソームの調製
FGFまたは葉酸リガンドを、マレイミド−PEG−DSPE(mPEG−DSPE)に、当該分野において公知である手順(Gabizon,A.et al.,Bioconjugate Chem.,10:289(1999))に従って結合した。
【0133】
リポソームは実施例3および4に記載されているように調製した。DNA−リポソーム複合体を、mPEG−DSPE、FGF−PEG−DSPEまたは葉酸−PEG−DSPEのミセル溶液と2〜3時間インキュベーションして、予め形成されたリポソームへのリガンド−PEG−脂質の挿入を達成した。
【0134】
実施例8
DSPEIおよびHDSGリポソームを使用したインビトロでのトランスフェクションおよび発現
ベビーハムスターの腎臓(BHK)細胞を、6ウェルプレートに〜1×10細胞/ウェルで播き、そして2日間インキュベーションした。BHK細胞は、1μgのプラスミドDNA/ウェルでDSPEI含有リポソームまたはHDSG含有リポソームのいずれかを使用して、実施例6に記載のように調製したDNA−リポソーム複合体を用いて、細胞をDNA−リポソーム複合体の存在下で5時間インキュベーションすることによりトランスフェクトし、続いてDNA−リポソーム複合体を通常の培地と交換した。細胞は20時間後に回収し、そしてレポーター遺伝子であるルシフェラーゼの発現についてアッセイし、これをピコグラムのルシフェラーゼ/mgタンパク質で表した。結果を図3に示す。
【0135】
実施例9
HDSG−リポソームおよびFGF−または葉酸標的化リガンドを使用した腫瘍組織におけるインビボでのトランスフェクションおよび発現
【0136】
A.腫瘍モデル
KB腫瘍細胞(100万個の細胞)を、ヌードマウスの側腹部に皮下接種した。これらのマウスに減少した葉酸食餌を与え、KB腫瘍細胞上の葉酸レセプターの発現をアップレギュレートした。このモデルは、葉酸結合化リポソーム−DNA複合体が腫瘍脈管の血管形成内皮細胞を標的にするために使用した。
【0137】
Lewis肺癌腫細胞(100万個の細胞)を、B6C3−F1マウスの側腹部に皮下接種した。FGFレセプターを、血管形成内皮細胞の表面または腫瘍細胞の表面のいずれかに発現させた。このモデルは、FGF結合化リポソーム−DNA複合体が腫瘍脈管の血管形成内皮細胞を標的にするために使用した。
【0138】
B.リポソーム製剤
5種類のリポソーム製剤を、以下の脂質成分を用いて実施例6に記載のように調製した:
【0139】
【表7】

【0140】
【表8】

【0141】
【表9】

【0142】
【表10】

【0143】
【表11】

【0144】
C.インビボ投与
Lewis肺癌腫細胞を注射した15匹の試験マウスを、4つの試験群に無作為に割りあて、製剤1〜5のうちの1つを与えた。リポソーム−DNA複合体を、200μgDNAプラスミドの用量で静脈内投与した。腫瘍組織および他の組織を処置の24時間後に回収し、そしてルシフェラーゼ発現を組織抽出物からのルシフェラーゼアッセイによって測定した。これらの結果を表1に示す。
【0145】
実施例10
FGF標的化HDSG−リポソーム−DNA複合体のインビボ投与
【0146】
A.Matrigel腫瘍モデル
マウスにおけるMatrigel(商標)モデルを、FGF血管形成内皮細胞の腫瘍脈管標的化のために使用した。Matrigel(商標)における血管形成内皮細胞は、腫瘍における脈管の血管形成内皮細胞と類似であり、Matrigel(商標)中のこれらの内皮細胞(腫瘍細胞なしの、内皮細胞のみ)を使用して、インビボでのFGF標的化リポソーム/核酸複合体のトランスフェクションおよび発現試験用腫瘍における内皮細胞を模倣した。Matrigel(商標)は、マウスに皮下注射されると、固体のゲルを形成し、そして迅速かつ強力な血管形成反応を誘導する。
【0147】
B.リポソーム製剤
9種類のリポソーム製剤を、実施例6に記載したように、以下の脂質成分を用いて調製した:
【0148】
【表12】

【0149】
【表13】

【0150】
【表14】

【0151】
【表15】

【0152】
【表16】

【0153】
【表17】

【0154】
【表18】

【0155】
【表19】

【0156】
【表20】

【0157】
C.インビボ投与
27匹のマウスに、Matrigelを注射した。Matrigelの移植から6日後に、これらのマウスを上記B章において記載した9種類の製剤のうちの1つでの処理のために処置群(n=3)に無作為に割り当てた。リポソーム−DNA複合体を、200μgのDNAプラスミドの用量で静脈内投与した。FGF標的化リポソーム−DNA複合体の投与から24時間後、matrigel、肺および肝臓におけるルシフェラーゼ発現を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0158】
実施例11
FGF標的化DSPEI−リポソーム−DNA複合体のインビボ投与
【0159】
A.試験動物
マウスを、実施例9Aに記載されるように、Lewis肺癌腫細胞で接種した。
【0160】
B.リポソーム製剤
9種類のリポソーム製剤を、実施例6および7に記載したように、以下の脂質成分を用いて調製した:
【0161】
【表21】

【0162】
【表22】

【0163】
【表23】

【0164】
【表24】

【0165】
【表25】

【0166】
【表26】

【0167】
【表27】

【0168】
【表28】

【0169】
【表29】

【0170】
C.インビボ投与
腫瘍細胞の接種から9日後、27匹の腫瘍保有マウスを9種類の製剤番号(11−1)〜製剤番号(11−9)のうちの1つでの処理のために、処置群(n=3)に無作為に割り当てた。リポソーム−DNA複合体を、200μgのDNAプラスミドの用量で静脈内投与した。FGF標的化リポソーム−DNA複合体の投与から24時間後、腫瘍、肺、および肝臓におけるルシフェラーゼ発現を測定した。
【0171】
実施例12
FGF標的化リポソーム−DNA複合体のインビボ投与
【0172】
A.試験動物
マウスを、実施例9Aに記載したようにLewis肺癌腫細胞で接種した。反対側の側腹部で、Matrigelを実施例10Aに記載したように注射した。
【0173】
B.リポソーム製剤
7種類のリポソーム製剤を、実施例6および7に記載したように以下の脂質成分を用いて調製した:
【0174】
【表30】

【0175】
【表31】

【0176】
【表32】

【0177】
【表33】

【0178】
【表34】

【0179】
【表35】

【0180】
【表36】

【0181】
C.インビボ投与
腫瘍細胞の接種から9日後、21匹の腫瘍保有マウスを製剤番号(12−1)〜製剤番号(12−7))のうちの1つでの処理のために、処置群(n=3)に無作為に割り当てた。リポソーム−DNA複合体を、200μgのDNAプラスミドの用量で静脈内投与した。FGF標的化リポソーム−DNA複合体の投与から24時間後、matrigel、腫瘍、肺および肝臓のルシフェラーゼ発現を測定した。
【0182】
本発明を特定の態様について記載してきたが、当業者には種々の変更および修飾を本発明から逸脱せずに行うことができることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンイミダゾール(DSPEI)およびジステアロイルホスファチジルエタノールアミンジイミダゾール(DSPEDI)の調製に関する合成スキームを示す。
【図2】DSPEIから、ヒスタミンジステアロイルグリセロール(HDSG)を含有する中性のカチオン性脂質(NCI)から、およびジメチルジオクタデシルアンモニウムから調製したリポソームに関して、pHの関数として測定したゼータ電位を示す。
【図3】ベビーハムスターの腎臓細胞の、DNA−リポソーム複合体でのトランスフェクションを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、各RおよびRは独立して、Hまたは6から24個の間の炭素原子を有する分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖から選択され;
n=1〜20;
m=1〜20;
p=1〜3:
LおよびQは独立してC1−アルキル、−X−(C=O)−Y−CH−、−X−(C=O)−、−X−CH−からなる群から選択され、ここでXおよびYは独立して酸素、NHおよび直接結合から選択され;
Wはアミノ、グアニジノまたはアミジノ部分であり;そして
Zは7.4未満、そして約4.0より大きいpKを有する弱塩基性部分である]
の化合物。
【請求項2】
pが1であり、そしてWが−NR−であり、ここで各Rは独立してHまたはC1−6アルキルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
pが2であり、そしてWが−NR−であり、ここでRがHまたはC1−6アルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
n=1〜10である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
n=1〜5である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
ZのpKが6.5未満、そして約5.0より大きい請求項1ないし5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
Zが環式または非環式アミンである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
Zがイミダゾールである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
およびRの各々がC1735である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の中性のカチオン性脂質、およびポリアニオン性化合物を含んでなるリポソームを含んでなる組成物。
【請求項11】
ポリアニオン性化合物がポリヌクレオチド、多糖または負に荷電したタンパク質である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ポリヌクレオチドがプラスミドDNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、タンパク質−核酸複合体、ポリヌクレオチド−薬剤結合体またはそれらの混合物を含んでなる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ポリヌクレオチドが修飾されたヌクレオチド、天然には存在しないヌクレオチド、代用リンカーを有するポリヌクレオチド類似体、五価のホスフェートリンカーおよび代用リンカーを含んでなるハイブリッドポリヌクレオチド、またはそれらの混合物を含んでなる、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
さらにリポポリマーを含んでなる請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
上記リポポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリアスパルタミドおよびポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド、それらのコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される親水性ポリマーから構成される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
親水性ポリマーがリポポリマーの脂質部分に開裂可能な連結を介して結合されている、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
リポポリマーがポリエチレングリコールを含んでなる請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
上記リポソームが5から80モルパーセントの間の式Iの脂質を含んでなる、請求項10に記載の組成物。
【請求項19】
上記リポソームが約1から30モルパーセントのリポポリマーを含んでなる、請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
さらにリポソームに封入された治療薬を含む請求項10に記載の組成物。
【請求項21】
上記ポリアニオン性化合物が上記リポソームの少なくとも一部に封入されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項22】
リポソームを標的部位に標的するための標的化リガンドをさらに含んでなる請求項10に記載の組成物。
【請求項23】
標的化リガンドが内皮細胞または腫瘍細胞に対する結合親和性を有する請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
標的化リガンドが、HER2/neuガン遺伝子のc−erbB−2タンパク質産物、上皮増殖因子(EGF)、塩基性繊維芽細胞増殖(塩基性FGF)、血管内皮増殖因子、E−セレクチン、L−セレクチン、P−セレクチン、葉酸塩、CD4、CD19、αβインテグリンまたはケモカインである、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の式(I)の構造を有する中性のカチオン性脂質を含んでなる小胞形成脂質からリポソームを形成し;
ポリアニオン性化合物を加え;そして
約0.05〜0.5ミクロンの間のサイズ範囲の選択したサイズにリポソームをふるい分ける、
ことを含んでなる、延長された血液循環時間を特徴とするポリアニオン性化合物を投与するためのリポソームの調製法。
【請求項26】
リポソームがさらに治療薬を封入された形態で含んでなる請求項25に記載の方法。
【請求項27】
細胞を請求項10ないし24のいずれか1項に記載の組成物と接触させることを含んでなる、細胞のトランスフェクション法。
【請求項28】
(i) 式(I)
【化2】

[式中、各RおよびRは、6から24個の間の炭素原子を有する分枝もしくは非分枝アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖であり;
n=1;
m=1;
p=1:
LおよびQは独立してC1−アルキルからなる群から選択され、Wは−NR−であり、ここで各Rは独立してHまたはC1−6アルキルから選択され;そして
Zはイミダゾールである]
の構造を有する中性のカチオン性脂質;および
(ii)プラスミド、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、代用リンカーを有するポリヌクレオチド類似体、または五価のホスフェートリンカーおよび代用リンカーを含んでなるハイブリッドポリヌクレオチドの少なくとも1つ、および
(iii)リポポリマーまたは標的化リガンド、
を含んでなるリポソームを含んでなるポリアニオン性化合物を投与するための組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−520481(P2007−520481A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549659(P2006−549659)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/001398
【国際公開番号】WO2005/070466
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】