法面の修景方法並びにこれに用いるスポットアンカー
【課題】 老朽化等によってモルタル施工面に脆弱部が生じた場合や施工面が崩落してしまった場合等、このような法面の補修にあたり、工期やコスト等を極力抑えるようにした新規な法面の修景方法と、これに用いるスポットアンカーを提供する。
【解決手段】 本発明は、例えば岩盤に吹きつけられた既存のモルタル施工面Mを補修する手法であって、岩盤面Gとの密着力が低下した脆弱部Mwにスポットアンカー1を打ち込み、このスポットアンカー1によって脆弱部Mwを岩盤側に押圧し、脆弱部Mwを岩盤面Gに密着させるようにしたことを特徴とする。また補修後の法面上には、更に緑化処理を施し、苗木Pの植生や客土Sの吹き付けを行うようにしたことを特徴とする。
【解決手段】 本発明は、例えば岩盤に吹きつけられた既存のモルタル施工面Mを補修する手法であって、岩盤面Gとの密着力が低下した脆弱部Mwにスポットアンカー1を打ち込み、このスポットアンカー1によって脆弱部Mwを岩盤側に押圧し、脆弱部Mwを岩盤面Gに密着させるようにしたことを特徴とする。また補修後の法面上には、更に緑化処理を施し、苗木Pの植生や客土Sの吹き付けを行うようにしたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば老朽化によりクラック等が生じたモルタル施工面や、このような施工面が既に崩れ落ちてしまった崩落面等の法面の修景に関するものであり、特に法面に複数のスポットアンカーを打ち込むことにより、法面を表面側から岩盤側に密着させるようにし、補修に掛かる工期やコスト等を極力抑えるようにした新規な修景方法と、これに用いるスポットアンカーに係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば山裾に建設された道路には、その側脇部に面した法面(傾斜面)等に、災害防止を目的として、岩盤面(露出岩盤)にモルタルが吹き付けられていることが多く、このようなモルタル施工は過去20年以上にもわたって行われてきた。また、近年では、環境や景観が社会的に求められており、このため既存のモルタル施工面には、その上から草本や木本等を植生する緑化処理(緑化工法)が盛んに行われつつある。
本出願人も、このような緑化工法の開発に取り組み、実用新案登録、意匠登録、特許等の取得に至っている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
ところで、既存のモルタル施工面に緑化処理を施すにあっては、モルタル施工面が施工後、既に20年以上経過していることも少なくなく、このため、モルタル面にクラック等が発生していることがある。このような場合、通常は、クラック等が発生している部分のモルタルを一旦剥がし、再度モルタルの吹き付けを行ってから、植生等によって緑化処理を施すのが一般的であった。
しかしながら、モルタル施工を新たにやり直す上記手法では、たとえ再施工が部分的であっても既存のモルタル施工面を一旦剥がすため、必然的に工期が長期化し、またコストも過大なものとなる傾向があり、この点において改善の余地が残されていた。
【特許文献1】登録実用新案第2541425号公報
【特許文献2】意匠登録第938005号公報
【特許文献3】特許第2660315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、老朽化等によって既存のモルタル施工面が脆弱化した場合や、このような施工面が既に崩落してしまった場合等に、このような法面に複数のスポットアンカー(地圧盤)を打ち込むことにより、法面を岩盤側に押圧するようにした新規な法面の修景方法と、これに用いるスポットアンカーの開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載の法面の修景方法は、脆弱な法面を補修する方法であって、法面に複数のスポットアンカーを打ち込み、このスポットアンカーによって法面を岩盤側に押圧するようにしたことを特徴として成るものである。
【0006】
また請求項2記載の法面の修景方法は、前記請求項1記載の要件に加え、前記複数のスポットアンカーは、法面に打ち込まれた後、一部または全てが互いに連結され、これによりスポットアンカーの局所的な押圧作用を、連結範囲のほぼ全面に波及させ、法面を面状態で岩盤側に押圧するようにしたことを特徴として成るものである。
【0007】
更にまた請求項3記載の法面の修景方法は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記法面は、岩盤に吹き付けられた既存のモルタル施工面であり、またスポットアンカーは、主に岩盤面との密着力が低下した脆弱部に打ち込まれ、このスポットアンカーによって脆弱部を岩盤面に密着させるようにしたことを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項4記載の法面の修景方法は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記スポットアンカーによって補修した法面上には、更に緑化処理を施し、苗木の植生や客土の吹き付けを行うようにしたことを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項5記載の法面の修景方法は、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、前記スポットアンカーは、法面を実質的に押圧するアンカー本体と、アンカー本体を法面上に固定するアンカーピンとを具え、アンカー本体に挿通したアンカーピンを岩盤に達するように打ち込み、スポットアンカーの固定を図るものであり、この際、主に岩盤の地質によって、長さの異なるアンカーピンを選択して使用するようにしたことを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項6記載の法面の修景方法は、前記請求項4または5記載の要件に加え、前記補修後の法面に緑化処理を施すにあたっては、客土の流下や剥離を防止するための土留め用ストッパを用い、この土留め用ストッパによって苗木等を収容した植生袋を支持するものであり、前記土留め用ストッパの設置にあたっては、前記スポットアンカーを固定するアンカーピンにより行い、土留め用ストッパの設置作業をスポットアンカーの固定作業と同時に行うようにしたことを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項7記載の法面の修景方法は、前記請求項3、4、5または6記載の要件に加え、前記モルタル施工面にスポットアンカーを打ち込むにあたっては、打ち込みに先立ち、モルタル施工面に下孔を開けておくようにしたことを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項8記載の、法面の修景に用いるスポットアンカーは、脆弱な法面に複数打ち込まれ、法面を表面側から岩盤側に押圧して、法面を補修するようにしたことを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項9記載の、法面の修景に用いるスポットアンカーは、前記請求項8記載の要件に加え、前記複数のスポットアンカーは、法面に打ち込まれた後、一部または全てが互いに連結され、これによりスポットアンカーの局所的な押圧作用を、連結範囲のほぼ全面に波及させ、法面を面状態で岩盤側に押圧するようにしたことを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項10記載の、法面の修景に用いるスポットアンカーは、前記請求項8または9記載の要件に加え、前記スポットアンカーは、法面を実質的に押圧するアンカー本体と、アンカー本体を法面上に固定するアンカーピンとを具え、アンカー本体に挿通したアンカーピンを岩盤に達するように打ち込み、スポットアンカーの固定を図るものであり、前記アンカーピンは、岩盤内に打ち込まれる部位に掛止部が形成され、この掛止部の逆爪作用によって打ち込み後の抜け止めを図るようにしたことを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項11記載の、法面の修景に用いるスポットアンカーは、前記請求項 8、9または10記載の要件に加え、前記スポットアンカーは、アンカー本体を法面上に固定した後、アンカー本体の微動を抑える構造を有していることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0016】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
まず請求項1または8記載の発明によれば、スポットアンカーの打ち込み、すなわちスポット的な押さえによって脆弱化したモルタル施工面や崩落面の補修を行うため、このような法面の補修が比較的容易に行える。
【0017】
また請求項2または9記載の発明によれば、法面に打ち込まれた複数のスポットアンカーは、少なくとも一部が互いに連結されるため、スポットアンカー一本一本のピンポイント状の押圧作用を、連結範囲に全体的に波及させることができる。このため法面を比較的広範囲にわたって均等に且つ面の状態で押圧することができ、効果的に法面を保護、補強することができる。
【0018】
更にまた請求項3記載の発明によれば、モルタル施工面にスポットアンカーを打ち込み、岩盤面との密着力が低下した脆弱部を補強するため、脆弱部を全体的に剥離してモルタル施工をやり直す従来手法に比べ、工期やコストを大幅に短縮できる。
【0019】
また請求項4記載の発明によれば、スポットアンカーによって補修した法面上に、更に緑化処理を施すため、植生した苗木(草木)が根付くことにより、法面の密着力が、より一層強化され得る。また、法面に施す緑化処理が短期間且つ低コストで行える。
【0020】
また請求項5記載の発明によれば、主に岩盤の地質(法質)によってスポットアンカーを固定するピンの長さを選択(変更)するため、スポットアンカーの打ち込み作業がスムーズに行える。また岩盤の地質に合ったアンカーピンが使用できるため、法面を適度に岩盤側に押圧することができる。
【0021】
また請求項6記載の発明によれば、緑化処理に用いる土留め用ストッパを設置するストッパーピンを利用して、スポットアンカーを固定するため、土留め用ストッパを設置しながらスポットアンカーを固定することができ、部材点数の減少化にも寄与する。
【0022】
また請求項7記載の発明によれば、モルタル施工面に下孔を開けておいてから、アンカーピンを打ち込むため、例えばクラックの端部にアンカーピンを打ち込む場合も、クラックを不用意に拡げてしまうことがない。
【0023】
また請求項10記載の発明によれば、アンカーピンそのものによって打ち込み後の抜け止めを図るため、法面を岩盤側に強固に密着させることができ、なお且つ、この密着力を長期にわたって継続させることができる。
【0024】
また請求項11記載の発明によれば、法面上に固定したスポットアンカーのガタつきを防止できるため、スポットアンカーの固定状態を安定化させることができ、強化した法面の密着力を、より一層長期にわたって持続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の最良の形態は、以下の実施例に述べる通りである。なお本発明では、後述するスポットアンカー(地圧盤)を法面に打ち込むことにより、例えば既存のモルタル施工面の修景(補修)を行うものであるが、他にも、このような施工面が既に崩落してしまった法面(これを崩落面とする)の修景も行える。このため以下の説明においては、既存のモルタル施工面に対する修景手法を実施例1、崩落面に対する修景手法を実施例2として説明する。
【実施例1】
【0026】
例えば山のふもとを通る道路には、一例として図1に示すように、崩落防止等の目的から傾斜面(岩盤面G)にモルタルが吹き付けられていることが多い。このような法面等へのモルタル施工は、20年以上も前から実施されてきたため、老朽化によってモルタル施工面Mが脆弱化し、例えば表面にクラック(亀裂、ヒビ)や部分的な剥がれが生じることがあった。また、外観上、目に見えるクラック等はなくても、内部ではモルタル施工面Mが岩盤面Gから浮き上がっていることもあり、その場合には、水漏れ等を生じることがあった。
【0027】
実施例1は、既存のモルタル施工面Mに、このようなクラック等が見つかった場合、このモルタル施工面Mをそのまま活かして保護や強化するようにした補修手法である。具体的には、脆弱したモルタル施工面Mに部分的にスポットアンカー1を打ち込むことにより、岩盤面Gとの密着力を強化させるようにしたモルタル施工面Mの補強手法である。因みに従来は、脆弱したモルタル施工面Mは、全体的に剥離して、モルタル施工(吹き付け)から、やり直すのが一般的であった。
なお図1に示す実施例では、スポットアンカー1によって補修したモルタル施工面M上に、更に緑化処理を施す場合を図示したが、この緑化処理は必ずしも必要な処理ではない。また、これに因み、実施例1における「修景」とは、モルタル施工面Mを補修(補強)した後、この上に緑化処理を施す場合はもちろん、緑化処理を施さずにモルタル施工面Mを補修した段階でとどめる場合も含むものである。
【0028】
ここで老朽化等により既存のモルタル施工面Mにおいて亀裂等が発生した部位を脆弱部Mwとする。この脆弱部Mwは、モルタル表面に実際に出現した目視可能なクラックや部分的な剥がれ等に限らず、表面には表出しないが内部の岩盤面Gから相対的に浮き上がった部位(岩盤面G自体の沈降を含む)も含み、言い換えれば岩盤面Gとの密着力が低下した部分である。なお脆弱部Mwに対し、岩盤面Gと強固に密着している部位を固着部Mfとする。
【0029】
以下、モルタル施工面の修景方法の説明に先立ち、まずスポットアンカー1について説明する。スポットアンカー1は、一例として図1に併せ示すように、脆弱部Mwを直接押圧するアンカー本体10と、このアンカー本体10を脆弱部Mwの表面に固定するアンカーピン20とを具えて成るものである。以下、これらアンカー本体10と、アンカーピン20とについて更に詳細に説明する。
【0030】
まずアンカー本体10について説明する。このものは、モルタル施工面Mの脆弱部Mwを表面側から岩盤面G側に押圧する作用を担い、一例として円盤状を成し、中央部にアンカーピン20を通すための挿通孔11が開口されている。このアンカー本体10は、本実施例では、直径が約20cmと30cmの二種類、厚さが約10mm、挿通孔11の直径(孔径)が約17〜18mm程度の丸型鋼板を適用する。ここで本実施例において二種類の大きさのアンカー本体10を適用したのは、モルタル施工面M(脆弱部Mw)が必ずしも平滑ではないためである(曲面である方が多いと考えられる)。
【0031】
すなわち、ここでは曲面を呈することが多いモルタル施工面M(脆弱部Mw)を、平滑なアンカー本体10によって押さえるため、アンカー本体10と脆弱部Mwとの間には多少の間隙(スキ)が生じることは、ほぼ避けられない。このため、脆弱部Mwの曲がり(曲面Rの大きさ)に応じて、アンカー本体10の大きさを適宜選択できるようにし、極力、双方の間に形成される間隙を減少させ、アンカー本体10による押さえ付けを確実にするものである。具体的には、脆弱部Mwが比較的平滑であれば、大きなアンカー本体10で押さえ、脆弱部Mwが曲面を呈する場合には、小さなアンカー本体10で押さえるものである。
【0032】
次にアンカーピン20について説明する。このものは、アンカー本体10を脆弱部Mwの表面に固定するものであり、アンカー本体10の挿通孔11を通して岩盤に打ち込まれる。なお、ピンの形態としては、ねじ込みによって取付けを図るボルト様のものであっても構わないし、打ち込みによって取付けを図るクギ様のものでも構わない。なお、アンカーピン20は、長さ(岩盤に打ち込む長さ)が異なるものを、数種用意しておき、岩盤の地質(法質)等により、使い分けることが好ましい。具体的には岩盤が硬い場合に短寸のアンカーピン20を用い、岩盤が軟らかい場合に長寸のアンカーピン20を使用する。因みに本実施例では、一例として長さ(いわゆる首下長さ)が40cm、50cm、100cmの三種類を用意し、これらを適宜選択して用いるものである。
【0033】
スポットアンカー1は、上述した基本構造を有し、以下このスポットアンカー1を適用したモルタル施工面の修景方法について説明する。
(1)脆弱部の検出
脆弱部Mwを検出するにあたっては、作業員の目視の他、ハンマー打音による検出、超音波や赤外線照射による検出等が可能である。もちろん、これらの方法は、併用することも可能であり、例えばクラックは主に目視により検出し、目視し難い内部の浮き上がり等は、主にハンマー打音や超音波等の照射によって検出することが可能である。なお、このような検出(調査)により、脆弱部Mwの範囲のみならず、脆弱部Mwの岩盤面Gからの浮き上がり寸法等も把握できるものである。
【0034】
(2)修景方法の検討
その後、脆弱部Mwの検出データとともに岩盤の地質等を兼ね合わせて考慮し、実際の補修方法を決定する。具体的には、脆弱部Mwに対するスポットアンカー1の打込部位、すなわちモルタル施工面Mのどの位置にスポットアンカー1を打ち込めば脆弱部Mwを効果的に押さえられるかや、使用するアンカー本体10の大きさ、あるいは使用するアンカーピン20の長さ等を決定する。
この際、脆弱部Mwの調査によって、脆弱部Mwが広過ぎたり、浮き上がり寸法が過大であった場合、すなわち事前調査の結果、脆弱部Mwをスポット的に押さえるよりも全体的な面で押さえる補強方法が好ましいと判断された場合には、打ち込み後のスポットアンカー1を互いに連結することが可能である。これは、一本毎のスポットアンカー1の局所的な押さえを、連結範囲に波及させ、脆弱部Mwを岩盤面G側に面の状態で押圧するものである。なお、このようなスポットアンカー1の連結手法については、後述する実施例2において詳細に説明する。
【0035】
(3)実質的な修景作業
以上のようにして、具体的な修景方法が決定した後、これに基づいてモルタル施工面M(脆弱部Mw)にスポットアンカー1を打ち込むものである。この際、予めモルタル施工面Mにはアンカーピン20を打ち込むための下孔を、ドリル等で開けておくことが好ましい。これは、特にクラック端部に下孔を開けずに、スポットアンカー1を打ち込んだ場合、打ち込みによりクラックを拡げてしまうことが懸念されるためである。
このようにしてスポットアンカー1が打ち込まれた脆弱部Mwは、アンカー本体10によって、岩盤表面に密着するように保持され、これにより脆弱部Mwと岩盤面Gとの固着力が強化されるものである。
なおスポットアンカー1は、上述したように、クラック等が生じた脆弱部Mwに主に打ち込まれるものであるが、打込部位は必ずしも脆弱部Mwに限定されるものではなく、脆弱部Mwの大きさや、岩盤の地質、あるいはモルタル施工面Mの曲面状況等によっては、固着部Mfから脆弱部Mwに至る範囲にわたってスポットアンカー1を打ち込み、固着部Mfの密着力を脆弱部Mwの保持(押さえ)に利用することも可能である。
【0036】
(4)緑化処理(緑化工法)
次に、補強したモルタル施工面Mの上に、更に緑化処理を施す場合について説明する。
緑化処理は、一例として図1に併せて示すように、スポットアンカー1によって補強したモルタル施工面M上に、例えばヤシマット40、ラス網41を張設した後、土留め用ストッパ42を設置してから客土Sを吹き付けるものである。なお図1では、ヤシマット40とラス網41の間にスペーサ43を介在させている。以下、このような緑化処理に用いる主要部材について説明する。
【0037】
まずヤシマット40について説明する。このものは、ヤシ繊維を平らに広げ、接着剤を付着させたり、機械的に絡ませたりして得られる、一例として厚さが10mm程度、一辺(短辺)が数m〜数十mの矩形シート状のマット部材である。このヤシマット40は、水分を吸収し、日照り続きの際には、法面に植生した草木(苗木P)に水分を供給するものである。またヤシマット40は、集中豪雨時や長雨時などには、雨水を法面の表層からだけでなく、ヤシマット40の層からも排水するものであり、雨水等を効果的に排出し、これにより客土Sの浸食や流出が防止できる。更にヤシマット40は、夏季の断熱性、冬季の保温性に効果があり、苗木Pの根の窒息防止にも寄与する。
このようにヤシマット40は、保水や排水等を担うものであり、同様の性状を有するものであれば、他の素材で形成することも可能であり、例えばヤシ以外の植物性長繊維や合成樹脂製の長繊維を用いてマット状に形成したり、あるいは軟性の発泡合成樹脂を用いてマット状に形成することも可能である。なお、ヤシマット40は、ヤシマット用ピン(いわゆるコンクリート釘)の打ち込みによって固定される。また、このヤシマット40は、緑化処理において必ずしも必須の部材ではない。
【0038】
次に土留め用ストッパ42について説明する。このものは、草本や木本等、モルタル施工面Mを緑化するための苗木Pや土等を収容した植生袋45を支持する部材であり、客土Sの吹き付けを確実にして、客土Sの流下や崩落を防止するものである。この土留め用ストッパ42は、一例として図2に示すように、ストッパー本体47と、スリーブ48と、ストッパーピン49とを具えて成り、スリーブ48に挿通したストッパーピン49を岩盤(モルタル施工面M)に打ち込むことにより、ストッパー本体47を固定設置するものである。なおストッパー本体47は、苗木Pを客土Sに確実に定着させるべく、根の通りを抜けを許容する、通り抜け構造(例えば網体)を具えるものである。またストッパー本体47と植生袋45の間にもストッパー本体47とほぼ同じサイズにカットしたヤシマット50を介在させることが好ましい(図3参照)。
因みに、このような土留め用ストッパ42としては、本出願人による意匠登録第938005号並びに実用新案登録第2541425号の土留め用ストッパを適用することが望ましい。
【0039】
次に植生袋45について説明する。このものは、苗木P等とともに、これに適した混合土壌を収容するものである。これに因み、植生袋45は、通気性及び通水性を有することはもちろん、根が通過できるよう、樹脂繊維等の繊網体によって形成される。なお繊網体の素材としては、樹脂繊維の他、生分解性樹脂または麻、木綿等の植物繊維の使用も可能である。
以上のような部材によってモルタル施工面M上に緑化処理が施されるが、緑化処理を行うにあたっては、モルタル施工面Mの全面(例えば傾斜面の全て)に緑化処理を施す必要はなく、例えば路肩(側溝)に近い部位については、あえて緑化しない修景方法も採り得る。その場合、路肩に近い部分には苗木Pの植生は行わず、周囲の景観にマッチした色相の客土Sを吹き付けることが可能である(図1参照)。なお、路肩付近に植生を行わないのは、路肩付近に根付いた苗木Pが成長した際、道路の見通しを悪化させたり、歩行者の通路(歩道)を阻害することが考えられるためである。
〔実施例1に関する他の形態〕
【0040】
実施例1は以上述べた態様を基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。すなわち上述した基本の実施例1では、補強したモルタル施工面M上に緑化処理を施す場合、土留め用ストッパ42を固定するストッパーピン49は、スポットアンカー1を固定するアンカーピン20とは別のものを用いるように説明したが、例えば図3に示すように、アンカーピン20とストッパーピン49とは共通化させることが可能である。この場合、作業としては、土留め用ストッパ42の取り付けと、スポットアンカー1の打ち込みとを一挙に行うことになる。また、この場合、モルタル施工面M上にヤシマット40を設けると、スポットアンカー1を打ち込む部位が判断できなくなることが考えられるため、ヤシマット40を設けない緑化処理が望ましい。
このようにモルタル施工面M上に緑化処理を施す場合には、スポットアンカー1を固定するアンカーピン20として、他にもラス網41を止めるピンの流用(兼用)が可能だが、この種のピンは一般に径が細いため、ピンを共通化する場合には、土留め用ストッパ42を固定するストッパーピン49の流用が現実的と考えられる。
【0041】
また上述した基本の実施例1では、スポットアンカー1(アンカー本体10)の平面形状は、円状のものを主に示したが、例えば図4に示すように種々異ならせることが可能である。これにより例えば形状や大きさが種々異なる脆弱部Mwに応じて、異なった形状のアンカー本体10で押さえることができる。
なお、アンカー本体10に開口する挿通孔11は必ずしも本体の中央部に形成する必要はなく、特にアンカー本体10の平面形状を長円状や星形などにした場合には、その位置を適宜変更することが可能である(図4(a)(c)参照)。
【0042】
更にまた、スポットアンカー1によって補強した脆弱部Mwを、岩盤面Gに長期にわたって密着させるには、一旦、岩盤に打ち込んだアンカーピン20を抜け難くすることが好ましい。このためアンカーピン20には、例えば図5に示すように、掛止部21を形成しておき、掛止部21の逆爪作用によって、打ち込み後のピンの抜け止めを図ることが可能であり(いわゆる逆目ボルトや逆目釘)、これにより補強した脆弱部Mwの密着力が強化でき、この状態を持続させることができる。
【0043】
また、上述したようにアンカー本体10としては、大きさ(径)が異なるものを幾つか用意しておき、脆弱部Mwの面状態に応じて使い分けることが好ましい。しかしながら、脆弱部Mwが平らであることは極めて稀であるため、小さいアンカー本体10を用いても、脆弱部Mwとアンカー本体10との間隙を完全になくすことは困難と考えられる。そして、このような間隙は、アンカー本体10の微動(いわゆるガタ)につながり、脆弱部Mwの押さえを不安定にするため、間隙はできる限りなくし、ガタつきを防止することが好ましい。このようなことから、例えば図6(a)に示すように、アンカー本体10の周縁部に何カ所か調整ボルト12を設けておき、この調整ボルト12を適宜ねじ込んで、固定したスポットアンカー1のガタつきを防止することが可能である。
【0044】
もちろんスポットアンカー1のガタつきを防止するのは、このような調整ボルト12に限らず、例えば図6(b)に示すように、ピン状部材13を用いることも可能である。この場合、ピン状部材13を挿通する保持孔14は、打込方向に突出させ(いわゆるバーリング)、ピン状部材13を突出状の保持孔14に掛止させて、嵌め込み後のピン状部材13の戻りを防止することが可能である。
【0045】
また図6(c)に示す実施例は、アンカー本体10と脆弱部Mwとの間に介在させる場合の座体30を示すものであり、これによりアンカー本体10の載置安定性を高め、ガタつきを防止するものである。なお座体30は、合成ゴムや合成樹脂等、素材そのものに弾性を有するものが好ましく、これはアンカー本体10と脆弱部Mwとが適合しない形状でも、座体30の弾性変形によって双方間の間隙をほぼ解消することができるためである。因みに環境面での配慮を重視した場合、座体30は、生分解生樹脂等によって形成することが可能である。
【0046】
なお、図6(c)では、アンカー本体10の周縁部にスキが発生する図6(a)の状態を想定して、中央部がやや凹陥した座体30を示したが、例えば図7(a)に示すように、周縁部が脆弱部Mwに接し、中央付近にスキの発生が考えられる場合には、中央部が突出した座体30を介在させて、アンカー本体10を固定することが可能である。
また、このようにアンカー本体10の中央部が大きく空く場合には、例えば図7(b)に示すように、サイズの異なる二つのアンカー本体10を重ねる形態、すなわち前記座体30の代わりに小サイズのアンカー本体10を介在させ、大きいアンカー本体10のガタつきを抑えることも可能である。
【0047】
また上述した基本の実施例1では、基本的に断面がほぼ平らなアンカー本体10により脆弱部Mwを押圧するように説明したが、アンカー本体10の断面は必ずしも平らである必要はなく、例えば図8(a)に示すように、曲面状に形成することも可能である。この場合、アンカー本体10は、概ね椀形状に形成することができ、また椀形の最底部(通常ここに挿通孔11が形成される)も中央から偏心させた位置に適宜形成することが可能である。
なお、この場合、アンカー本体10の素材や厚み等を考慮し、アンカー本体10そのものが幾らか撓み得るように形成しておけば、アンカー本体10の椀状曲面が脆弱部Mw(岩盤面G)の曲面に合致していなくても、アンカー本体10自身の可撓性によって脆弱部Mwにフィットさせることができ、脆弱部Mwを岩盤面Gに密着させることが可能である。
また、このような椀形状のアンカー本体10は、図8(b)に示すように、脆弱部Mwの曲面の形成状態によっては、押圧面を反転させて用いることが可能であり、より少ないバリエーションで多くの脆弱部Mwにフィットさせることができる。
【0048】
また、先に述べた基本の実施例1では、アンカー本体10を主に単一部材で構成したが、アンカー本体10は必ずしも一部材で形成する必要がなく、例えば図9に示すように、複数の要素を組み合わせて構成することが可能である。ここで図示した要素が、ほぼ短冊状であることに因み、これらをストリップ要素10aとする。この実施例は、図9(a)に示すように、曲率や形状等が異なるストリップ要素10aを、予め複数パターン用意しておき、脆弱部Mwを押さえる際には、図9(b)に示すように、このうちの幾つかのストリップ要素10aを交差させてモルタル施工面Mに取り付けるものである。もちろん、交差させるストリップ要素10aは、同じものを複数組み合わせても構わないし、曲率や形状の異なるものを組み合わせても構わない。また、この場合、各ストリップ要素10aの交差角度(例えば図示したα1、α2)を適宜調節することにより、種々の押圧面(形状)が再現できるため、ストリップ要素10aとしては、それ程バリエーションを増やさなくても、種々の脆弱部Mwにフィットさせることができ、実用的と考えられる。
【実施例2】
【0049】
次に実施例2について説明する。実施例2は、上述したように崩落面G(実施例1の岩盤面Gに相当するため同一の符号Gを付す)の修景手法であり、上記実施例1と同様にスポットアンカー1を崩落面Gに打ち込んで法面の補修を行うものである。因みに、崩落面Gは、比較的急斜面であることが多く、逆に言えば、急傾斜であるために、一旦、法面が脆弱化した場合には、モルタル施工面M等が崩落し易いものと考えられる(図10(b)参照)。
なお、ここでの補修とは、モルタル施工面M等が既に崩落していて存在しないため、法面(表面)を補強するというよりは、むしろ法面がそれ以上崩落しないように整備することを意味する。もちろん、整備後の法面には、更に緑化処理を施すことが可能である。このように実施例2における「修景」とは、崩落面Gの整備の他、整備後の法面に緑化処理を施す場合を包含するものである。因みに、緑化処理は実質的に実施例1と同様であるため、ここでは省略し、主に崩落面Gの整備について説明する。
【0050】
崩落面Gは、例えばモルタル施工面Mが崩れ落ち、岩盤が表出(露出)した部位であるため、表面全体が脆弱化していると考えられ、崩落面G全体が脆弱部Mwと言える。このため、本実施例2では、一例として図10に示すように、まず崩落面Gに対して多数のスポットアンカー1を、ほぼ一定の間隔で満遍なく打ち込むとともに、近隣に位置し合う各スポットアンカー1を連結体25によって接続(固定)し、連結体25を崩落面G上にクモの巣状(ウェブ状)に張りめぐらせるものである。具体的には、スポットアンカー1を上下・左右方向に約1mずつ間隔をあけて打ち込み、また連結体25としては、この間隔に相当する約1m程度の長さの鉄筋を各スポットアンカー1に溶接して連結するものである。
このように崩落面Gの整備は、隣合うスポットアンカー1同士を、互いに連結するものであり、これによりスポットアンカー1による局部的(ピンポイント的)な押圧作用を、崩落面Gのほぼ全面に波及させ、崩落面Gを全体的な面として岩盤側に押圧するものである。
【0051】
なお、スポットアンカー1の連結にあたっては、アンカーピン20同士を連結体25によって接続してもよいし、アンカー本体10同士を連結体25によって接続しても構わない。因みに、修景面を正面から視た図10(a)では、アンカーピン20の頭部同士を連結体25によって連結した状態を示し、修景面を側面から視た図10(b)の断面図では、主にアンカー本体10同士を連結した状態を示している。
また連結体25とスポットアンカー1の固定(取り付け)にあたっては、必ずしも溶接に限定されるものではなく、ボルトとナットによるネジ止め等を採用しても構わない。また、連結体25の先端にピン状等の差込部26(図11参照)を形成しておき、これをスポットアンカー1(アンカー本体10)の孔27に差し込んで、スポットアンカー1同士を連結することも可能である。因みに図10(b)の拡大図では、アンカー本体10の周縁に四カ所、連結体25を取り付けるための孔27を形成している。
〔実施例2に関する他の形態〕
【0052】
実施例2は、以上述べた態様を基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。すなわち上述した基本の実施例2では、スポットアンカー1を等間隔に打ち込むように説明したが、崩落面Gは例えば既存のモルタル施工面Mが崩れ落ちた部位であるため、斜面の状態としては急勾配であり、しかも急激な凹凸部位を伴うことが考えられる(図10(b)参照)。従って、例えば正面から視て、等間隔にスポットアンカー1を打ち込んでも、その実際の間隔(距離)は、崩落面Gの凹凸によって幾らか異なることが考えられる。すなわち、上述した崩落面Gでは、正面から視た場合の距離と、側面から視た場合の距離とでは、大きな差を生じることが考えられる。このため、例えば図11に示すように、連結体25の途中にターンバックル28を設けておき、適宜これを回転させることにより、現場においても連結体25の長さを手軽に調整できるようにすることが可能である。
【0053】
また崩落面Gの表面の凹凸状態によっては、必ずしも真っ直ぐな連結体25(例えば鉄筋)では、スポットアンカー1をつなげない(接続できない)ことも考えられるため、連結体25は崩落面Gの凹凸状態に合わせて曲げたり、予め湾曲させたものを数種用意しておくことが好ましい。
更に上述した基本の実施例2では、崩落面Gに対して、多数のスポットアンカー1を格子点状に打ち込み、またこれを接続する連結体25を上下・左右方向に設けたが、例えば図12(a)に示すように、スポットアンカー1を、崩落面Gに対して互い違いの千鳥状に打ち込むことも可能であり、またこのような場合、連結体25はジグザグ状、言わばトラス構造状に配設することが可能である。
【0054】
また上述した基本の実施例2では、ほぼ一定長さの連結体25を一本ずつスポットアンカー1に固定(溶接)するように説明したが、例えば図12(b)に示すように、予め幾つかの連結体25を一体化させ、V字状やW字状等のものを用意しておけば(これをユニット状連結体25Uとする)、連結体25の固定作業がより能率的に行える。なお、この場合、一つ一つの連結体25の途中に、上述したターンバックル28等を設けておけば、ユニット状連結体25Uの適宜の部位で長さ調整が行え、崩落面Gの凹凸が色々異なっても対応でき、より一層、合理的に連結体25(ユニット状連結体25U)の取り付けが行える。
【0055】
因みに図12(a)のように、連結体25をトラス構造状に配設する場合には、V字状やW字状等のユニット状連結体25Uを形成することが可能であるが、連結体25を格子状に配設した上記図10の場合には、例えば三本の連結体25をコ字状に接続したユニット状連結体25Uを形成することが可能である。
また例えば図13に示すように、連結体25が種々の方向で取り付けられるように、スポットアンカー1における連結体25の接続部29を、予め種々の方向に形成しておくことも、現場での作業効率を高める点で、効果的と考えられる。
【0056】
なお、上述した実施例2の補修手法は、必ずしも既存のモルタル施工面Mが崩れ落ちた法面(崩落面G)に限定されるものではなく、例えば山裾に新たに道路等を建設するために、斜面の一部を新規に切り崩した場合においても採用できる手法である。すなわち、何らかの目的で切り開かれた山肌は、岩盤が直接外部に露出し、そのままでは表面が脆弱であることから崩落することもあるため、通常、表面が補強される。このため、このような新規に切り崩した法面の整備にも上記実施例2の手法が適用できるものである。
なお請求項1及び8に記載した「脆弱な法面」とは、脆弱化した既存のモルタル施工面Mや、このような施工面が崩れ落ちてしまった崩落面G、あるいは上述した新規に切り崩した法面等を総称するものである。
〔実施例2を実施例1に適用した他の形態〕
【0057】
以上述べたように、実施例2では崩落面G(表面)の密着力が弱く、全体的に脆弱化していると考えられ、これを考慮して、崩落面Gのほぼ全面に均一に多数のスポットアンカー1を打ち込み、且つこのスポットアンカー1を互いに連結するようにした。そして、このような補修により、各スポットアンカー1のピンポイント的な押圧作用を、法面に全体的に波及させることができ、崩落面Gを広い面として押圧でき、以降の崩落を効果的に防止することができる。なお、このような補修手法自体は、例えば図14に示すように、上記実施例1のモルタル施工面Mの修景手法にも適用することが可能である。具体的には、例えば既存のモルタル施工面Mを事前に調査した結果、クラックが多く脆弱部Mwとしては広すぎたり、脆弱部Mwの浮き上がり寸法が過大であったりして、スポットアンカー1によるピンポイント的な押さえでは、補強(脆弱部Mwを岩盤面Gに密着させること)が難しいと判断された場合に、このような補強手法が特に有効と考えられる。
【0058】
なお本発明は、脆弱化したモルタル施工面Mや、このような施工面が既に崩れてしまった崩落面等の修景に関する発明であり、特許請求の範囲で定義した技術思想を、出願の主題とする。しかしながら、このうち、上記実施例1で述べたモルタル施工面Mの修景手法は、脆弱部Mwを全体的に剥離するのではなく、逆に脆弱部Mwをそのまま活かしながら固着力を強化するという極めて斬新且つ新規な発想であり、これにより補修工事に掛かる工期や費用を格段に抑えることができる等、極めて顕著な効果をもたらす。従って、モルタル施工面Mの修景手法は、本出願とは別途、独立的に評価し得るものであり、本出願を原出願とした、新たな分割出願を考慮し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1の修景手法によって既存のモルタル施工面の補強が成された法面を部分的に破断して示す斜視図である。
【図2】土留め用ストッパを示す斜視図である。
【図3】土留め用ストッパを固定するストッパーピンによってスポットアンカーを固定するようにした実施例を示す側面断面図である。
【図4】平面形状を種々異ならせたアンカー本体を示す説明図である。
【図5】スポットアンカーを固定するアンカーピンに抜け止めを施した実施例を示す側面断面図である。
【図6】固定後のスポットアンカーのガタつきを抑えるようにした種々の実施例を示す説明図である。
【図7】アンカー本体の周縁部に対して、中央部が突出した座体を介在させ、スポットアンカーのガタつきを抑えるようにした実施例を示す側面断面図(a)、並びにサイズの異なる二つのアンカー本体を重ねてスポットアンカーのガタつきを抑えるようにした実施例を示す側面断面図(b)である。
【図8】アンカー本体の断面を曲面状にし、椀形状の外観を呈するようにした、スポットアンカーを示す説明図である。
【図9】複数のストリップ要素を交差させてアンカー本体を構成するようにした、スポットアンカーを示す説明図である。
【図10】実施例2の崩落面の修景手法を示す説明図であり、(a)は法面を正面から視た図であり、(b)は法面を側面から視た断面図である。
【図11】スポットアンカーを連結する連結体に、長さ調整用のターンバックルを介在させた状態を示す斜視図である。
【図12】スポットアンカーを崩落面に千鳥状に打ち込むとともに、連結体をトラス構造状に配設した実施例を示す正面図(a)、並びに、図(a)の実施例において、幾つかの連結体を予め一体化したユニット状連結体を示す斜視図(b)である。
【図13】予め連結体を種々の方向から取り付けられるようにしたスポットアンカーを示す斜視図である。
【図14】実施例2の補修手法を実施例1に適用した修景手法を示す正面図(a)、並びに側面断面図(b)である。
【符号の説明】
【0060】
1 スポットアンカー(地圧盤)
10 アンカー本体
10a ストリップ要素
11 挿通孔
12 調整ボルト
13 ピン状部材
14 保持孔
20 アンカーピン
21 掛止部
25 連結体
25U ユニット状連結体
26 差込部
27 孔
28 ターンバックル
29 接続部
30 座体
40 ヤシマット
41 ラス網
42 土留め用ストッパ
43 スペーサ
45 植生袋
47 ストッパー本体
48 スリーブ
49 ストッパーピン
50 ヤシマット
G 岩盤面(崩落面)
M モルタル施工面
Mw 脆弱部
Mf 固着部
P 苗木
S 客土
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば老朽化によりクラック等が生じたモルタル施工面や、このような施工面が既に崩れ落ちてしまった崩落面等の法面の修景に関するものであり、特に法面に複数のスポットアンカーを打ち込むことにより、法面を表面側から岩盤側に密着させるようにし、補修に掛かる工期やコスト等を極力抑えるようにした新規な修景方法と、これに用いるスポットアンカーに係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば山裾に建設された道路には、その側脇部に面した法面(傾斜面)等に、災害防止を目的として、岩盤面(露出岩盤)にモルタルが吹き付けられていることが多く、このようなモルタル施工は過去20年以上にもわたって行われてきた。また、近年では、環境や景観が社会的に求められており、このため既存のモルタル施工面には、その上から草本や木本等を植生する緑化処理(緑化工法)が盛んに行われつつある。
本出願人も、このような緑化工法の開発に取り組み、実用新案登録、意匠登録、特許等の取得に至っている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
ところで、既存のモルタル施工面に緑化処理を施すにあっては、モルタル施工面が施工後、既に20年以上経過していることも少なくなく、このため、モルタル面にクラック等が発生していることがある。このような場合、通常は、クラック等が発生している部分のモルタルを一旦剥がし、再度モルタルの吹き付けを行ってから、植生等によって緑化処理を施すのが一般的であった。
しかしながら、モルタル施工を新たにやり直す上記手法では、たとえ再施工が部分的であっても既存のモルタル施工面を一旦剥がすため、必然的に工期が長期化し、またコストも過大なものとなる傾向があり、この点において改善の余地が残されていた。
【特許文献1】登録実用新案第2541425号公報
【特許文献2】意匠登録第938005号公報
【特許文献3】特許第2660315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、老朽化等によって既存のモルタル施工面が脆弱化した場合や、このような施工面が既に崩落してしまった場合等に、このような法面に複数のスポットアンカー(地圧盤)を打ち込むことにより、法面を岩盤側に押圧するようにした新規な法面の修景方法と、これに用いるスポットアンカーの開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載の法面の修景方法は、脆弱な法面を補修する方法であって、法面に複数のスポットアンカーを打ち込み、このスポットアンカーによって法面を岩盤側に押圧するようにしたことを特徴として成るものである。
【0006】
また請求項2記載の法面の修景方法は、前記請求項1記載の要件に加え、前記複数のスポットアンカーは、法面に打ち込まれた後、一部または全てが互いに連結され、これによりスポットアンカーの局所的な押圧作用を、連結範囲のほぼ全面に波及させ、法面を面状態で岩盤側に押圧するようにしたことを特徴として成るものである。
【0007】
更にまた請求項3記載の法面の修景方法は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記法面は、岩盤に吹き付けられた既存のモルタル施工面であり、またスポットアンカーは、主に岩盤面との密着力が低下した脆弱部に打ち込まれ、このスポットアンカーによって脆弱部を岩盤面に密着させるようにしたことを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項4記載の法面の修景方法は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記スポットアンカーによって補修した法面上には、更に緑化処理を施し、苗木の植生や客土の吹き付けを行うようにしたことを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項5記載の法面の修景方法は、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、前記スポットアンカーは、法面を実質的に押圧するアンカー本体と、アンカー本体を法面上に固定するアンカーピンとを具え、アンカー本体に挿通したアンカーピンを岩盤に達するように打ち込み、スポットアンカーの固定を図るものであり、この際、主に岩盤の地質によって、長さの異なるアンカーピンを選択して使用するようにしたことを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項6記載の法面の修景方法は、前記請求項4または5記載の要件に加え、前記補修後の法面に緑化処理を施すにあたっては、客土の流下や剥離を防止するための土留め用ストッパを用い、この土留め用ストッパによって苗木等を収容した植生袋を支持するものであり、前記土留め用ストッパの設置にあたっては、前記スポットアンカーを固定するアンカーピンにより行い、土留め用ストッパの設置作業をスポットアンカーの固定作業と同時に行うようにしたことを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項7記載の法面の修景方法は、前記請求項3、4、5または6記載の要件に加え、前記モルタル施工面にスポットアンカーを打ち込むにあたっては、打ち込みに先立ち、モルタル施工面に下孔を開けておくようにしたことを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項8記載の、法面の修景に用いるスポットアンカーは、脆弱な法面に複数打ち込まれ、法面を表面側から岩盤側に押圧して、法面を補修するようにしたことを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項9記載の、法面の修景に用いるスポットアンカーは、前記請求項8記載の要件に加え、前記複数のスポットアンカーは、法面に打ち込まれた後、一部または全てが互いに連結され、これによりスポットアンカーの局所的な押圧作用を、連結範囲のほぼ全面に波及させ、法面を面状態で岩盤側に押圧するようにしたことを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項10記載の、法面の修景に用いるスポットアンカーは、前記請求項8または9記載の要件に加え、前記スポットアンカーは、法面を実質的に押圧するアンカー本体と、アンカー本体を法面上に固定するアンカーピンとを具え、アンカー本体に挿通したアンカーピンを岩盤に達するように打ち込み、スポットアンカーの固定を図るものであり、前記アンカーピンは、岩盤内に打ち込まれる部位に掛止部が形成され、この掛止部の逆爪作用によって打ち込み後の抜け止めを図るようにしたことを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項11記載の、法面の修景に用いるスポットアンカーは、前記請求項 8、9または10記載の要件に加え、前記スポットアンカーは、アンカー本体を法面上に固定した後、アンカー本体の微動を抑える構造を有していることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0016】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
まず請求項1または8記載の発明によれば、スポットアンカーの打ち込み、すなわちスポット的な押さえによって脆弱化したモルタル施工面や崩落面の補修を行うため、このような法面の補修が比較的容易に行える。
【0017】
また請求項2または9記載の発明によれば、法面に打ち込まれた複数のスポットアンカーは、少なくとも一部が互いに連結されるため、スポットアンカー一本一本のピンポイント状の押圧作用を、連結範囲に全体的に波及させることができる。このため法面を比較的広範囲にわたって均等に且つ面の状態で押圧することができ、効果的に法面を保護、補強することができる。
【0018】
更にまた請求項3記載の発明によれば、モルタル施工面にスポットアンカーを打ち込み、岩盤面との密着力が低下した脆弱部を補強するため、脆弱部を全体的に剥離してモルタル施工をやり直す従来手法に比べ、工期やコストを大幅に短縮できる。
【0019】
また請求項4記載の発明によれば、スポットアンカーによって補修した法面上に、更に緑化処理を施すため、植生した苗木(草木)が根付くことにより、法面の密着力が、より一層強化され得る。また、法面に施す緑化処理が短期間且つ低コストで行える。
【0020】
また請求項5記載の発明によれば、主に岩盤の地質(法質)によってスポットアンカーを固定するピンの長さを選択(変更)するため、スポットアンカーの打ち込み作業がスムーズに行える。また岩盤の地質に合ったアンカーピンが使用できるため、法面を適度に岩盤側に押圧することができる。
【0021】
また請求項6記載の発明によれば、緑化処理に用いる土留め用ストッパを設置するストッパーピンを利用して、スポットアンカーを固定するため、土留め用ストッパを設置しながらスポットアンカーを固定することができ、部材点数の減少化にも寄与する。
【0022】
また請求項7記載の発明によれば、モルタル施工面に下孔を開けておいてから、アンカーピンを打ち込むため、例えばクラックの端部にアンカーピンを打ち込む場合も、クラックを不用意に拡げてしまうことがない。
【0023】
また請求項10記載の発明によれば、アンカーピンそのものによって打ち込み後の抜け止めを図るため、法面を岩盤側に強固に密着させることができ、なお且つ、この密着力を長期にわたって継続させることができる。
【0024】
また請求項11記載の発明によれば、法面上に固定したスポットアンカーのガタつきを防止できるため、スポットアンカーの固定状態を安定化させることができ、強化した法面の密着力を、より一層長期にわたって持続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の最良の形態は、以下の実施例に述べる通りである。なお本発明では、後述するスポットアンカー(地圧盤)を法面に打ち込むことにより、例えば既存のモルタル施工面の修景(補修)を行うものであるが、他にも、このような施工面が既に崩落してしまった法面(これを崩落面とする)の修景も行える。このため以下の説明においては、既存のモルタル施工面に対する修景手法を実施例1、崩落面に対する修景手法を実施例2として説明する。
【実施例1】
【0026】
例えば山のふもとを通る道路には、一例として図1に示すように、崩落防止等の目的から傾斜面(岩盤面G)にモルタルが吹き付けられていることが多い。このような法面等へのモルタル施工は、20年以上も前から実施されてきたため、老朽化によってモルタル施工面Mが脆弱化し、例えば表面にクラック(亀裂、ヒビ)や部分的な剥がれが生じることがあった。また、外観上、目に見えるクラック等はなくても、内部ではモルタル施工面Mが岩盤面Gから浮き上がっていることもあり、その場合には、水漏れ等を生じることがあった。
【0027】
実施例1は、既存のモルタル施工面Mに、このようなクラック等が見つかった場合、このモルタル施工面Mをそのまま活かして保護や強化するようにした補修手法である。具体的には、脆弱したモルタル施工面Mに部分的にスポットアンカー1を打ち込むことにより、岩盤面Gとの密着力を強化させるようにしたモルタル施工面Mの補強手法である。因みに従来は、脆弱したモルタル施工面Mは、全体的に剥離して、モルタル施工(吹き付け)から、やり直すのが一般的であった。
なお図1に示す実施例では、スポットアンカー1によって補修したモルタル施工面M上に、更に緑化処理を施す場合を図示したが、この緑化処理は必ずしも必要な処理ではない。また、これに因み、実施例1における「修景」とは、モルタル施工面Mを補修(補強)した後、この上に緑化処理を施す場合はもちろん、緑化処理を施さずにモルタル施工面Mを補修した段階でとどめる場合も含むものである。
【0028】
ここで老朽化等により既存のモルタル施工面Mにおいて亀裂等が発生した部位を脆弱部Mwとする。この脆弱部Mwは、モルタル表面に実際に出現した目視可能なクラックや部分的な剥がれ等に限らず、表面には表出しないが内部の岩盤面Gから相対的に浮き上がった部位(岩盤面G自体の沈降を含む)も含み、言い換えれば岩盤面Gとの密着力が低下した部分である。なお脆弱部Mwに対し、岩盤面Gと強固に密着している部位を固着部Mfとする。
【0029】
以下、モルタル施工面の修景方法の説明に先立ち、まずスポットアンカー1について説明する。スポットアンカー1は、一例として図1に併せ示すように、脆弱部Mwを直接押圧するアンカー本体10と、このアンカー本体10を脆弱部Mwの表面に固定するアンカーピン20とを具えて成るものである。以下、これらアンカー本体10と、アンカーピン20とについて更に詳細に説明する。
【0030】
まずアンカー本体10について説明する。このものは、モルタル施工面Mの脆弱部Mwを表面側から岩盤面G側に押圧する作用を担い、一例として円盤状を成し、中央部にアンカーピン20を通すための挿通孔11が開口されている。このアンカー本体10は、本実施例では、直径が約20cmと30cmの二種類、厚さが約10mm、挿通孔11の直径(孔径)が約17〜18mm程度の丸型鋼板を適用する。ここで本実施例において二種類の大きさのアンカー本体10を適用したのは、モルタル施工面M(脆弱部Mw)が必ずしも平滑ではないためである(曲面である方が多いと考えられる)。
【0031】
すなわち、ここでは曲面を呈することが多いモルタル施工面M(脆弱部Mw)を、平滑なアンカー本体10によって押さえるため、アンカー本体10と脆弱部Mwとの間には多少の間隙(スキ)が生じることは、ほぼ避けられない。このため、脆弱部Mwの曲がり(曲面Rの大きさ)に応じて、アンカー本体10の大きさを適宜選択できるようにし、極力、双方の間に形成される間隙を減少させ、アンカー本体10による押さえ付けを確実にするものである。具体的には、脆弱部Mwが比較的平滑であれば、大きなアンカー本体10で押さえ、脆弱部Mwが曲面を呈する場合には、小さなアンカー本体10で押さえるものである。
【0032】
次にアンカーピン20について説明する。このものは、アンカー本体10を脆弱部Mwの表面に固定するものであり、アンカー本体10の挿通孔11を通して岩盤に打ち込まれる。なお、ピンの形態としては、ねじ込みによって取付けを図るボルト様のものであっても構わないし、打ち込みによって取付けを図るクギ様のものでも構わない。なお、アンカーピン20は、長さ(岩盤に打ち込む長さ)が異なるものを、数種用意しておき、岩盤の地質(法質)等により、使い分けることが好ましい。具体的には岩盤が硬い場合に短寸のアンカーピン20を用い、岩盤が軟らかい場合に長寸のアンカーピン20を使用する。因みに本実施例では、一例として長さ(いわゆる首下長さ)が40cm、50cm、100cmの三種類を用意し、これらを適宜選択して用いるものである。
【0033】
スポットアンカー1は、上述した基本構造を有し、以下このスポットアンカー1を適用したモルタル施工面の修景方法について説明する。
(1)脆弱部の検出
脆弱部Mwを検出するにあたっては、作業員の目視の他、ハンマー打音による検出、超音波や赤外線照射による検出等が可能である。もちろん、これらの方法は、併用することも可能であり、例えばクラックは主に目視により検出し、目視し難い内部の浮き上がり等は、主にハンマー打音や超音波等の照射によって検出することが可能である。なお、このような検出(調査)により、脆弱部Mwの範囲のみならず、脆弱部Mwの岩盤面Gからの浮き上がり寸法等も把握できるものである。
【0034】
(2)修景方法の検討
その後、脆弱部Mwの検出データとともに岩盤の地質等を兼ね合わせて考慮し、実際の補修方法を決定する。具体的には、脆弱部Mwに対するスポットアンカー1の打込部位、すなわちモルタル施工面Mのどの位置にスポットアンカー1を打ち込めば脆弱部Mwを効果的に押さえられるかや、使用するアンカー本体10の大きさ、あるいは使用するアンカーピン20の長さ等を決定する。
この際、脆弱部Mwの調査によって、脆弱部Mwが広過ぎたり、浮き上がり寸法が過大であった場合、すなわち事前調査の結果、脆弱部Mwをスポット的に押さえるよりも全体的な面で押さえる補強方法が好ましいと判断された場合には、打ち込み後のスポットアンカー1を互いに連結することが可能である。これは、一本毎のスポットアンカー1の局所的な押さえを、連結範囲に波及させ、脆弱部Mwを岩盤面G側に面の状態で押圧するものである。なお、このようなスポットアンカー1の連結手法については、後述する実施例2において詳細に説明する。
【0035】
(3)実質的な修景作業
以上のようにして、具体的な修景方法が決定した後、これに基づいてモルタル施工面M(脆弱部Mw)にスポットアンカー1を打ち込むものである。この際、予めモルタル施工面Mにはアンカーピン20を打ち込むための下孔を、ドリル等で開けておくことが好ましい。これは、特にクラック端部に下孔を開けずに、スポットアンカー1を打ち込んだ場合、打ち込みによりクラックを拡げてしまうことが懸念されるためである。
このようにしてスポットアンカー1が打ち込まれた脆弱部Mwは、アンカー本体10によって、岩盤表面に密着するように保持され、これにより脆弱部Mwと岩盤面Gとの固着力が強化されるものである。
なおスポットアンカー1は、上述したように、クラック等が生じた脆弱部Mwに主に打ち込まれるものであるが、打込部位は必ずしも脆弱部Mwに限定されるものではなく、脆弱部Mwの大きさや、岩盤の地質、あるいはモルタル施工面Mの曲面状況等によっては、固着部Mfから脆弱部Mwに至る範囲にわたってスポットアンカー1を打ち込み、固着部Mfの密着力を脆弱部Mwの保持(押さえ)に利用することも可能である。
【0036】
(4)緑化処理(緑化工法)
次に、補強したモルタル施工面Mの上に、更に緑化処理を施す場合について説明する。
緑化処理は、一例として図1に併せて示すように、スポットアンカー1によって補強したモルタル施工面M上に、例えばヤシマット40、ラス網41を張設した後、土留め用ストッパ42を設置してから客土Sを吹き付けるものである。なお図1では、ヤシマット40とラス網41の間にスペーサ43を介在させている。以下、このような緑化処理に用いる主要部材について説明する。
【0037】
まずヤシマット40について説明する。このものは、ヤシ繊維を平らに広げ、接着剤を付着させたり、機械的に絡ませたりして得られる、一例として厚さが10mm程度、一辺(短辺)が数m〜数十mの矩形シート状のマット部材である。このヤシマット40は、水分を吸収し、日照り続きの際には、法面に植生した草木(苗木P)に水分を供給するものである。またヤシマット40は、集中豪雨時や長雨時などには、雨水を法面の表層からだけでなく、ヤシマット40の層からも排水するものであり、雨水等を効果的に排出し、これにより客土Sの浸食や流出が防止できる。更にヤシマット40は、夏季の断熱性、冬季の保温性に効果があり、苗木Pの根の窒息防止にも寄与する。
このようにヤシマット40は、保水や排水等を担うものであり、同様の性状を有するものであれば、他の素材で形成することも可能であり、例えばヤシ以外の植物性長繊維や合成樹脂製の長繊維を用いてマット状に形成したり、あるいは軟性の発泡合成樹脂を用いてマット状に形成することも可能である。なお、ヤシマット40は、ヤシマット用ピン(いわゆるコンクリート釘)の打ち込みによって固定される。また、このヤシマット40は、緑化処理において必ずしも必須の部材ではない。
【0038】
次に土留め用ストッパ42について説明する。このものは、草本や木本等、モルタル施工面Mを緑化するための苗木Pや土等を収容した植生袋45を支持する部材であり、客土Sの吹き付けを確実にして、客土Sの流下や崩落を防止するものである。この土留め用ストッパ42は、一例として図2に示すように、ストッパー本体47と、スリーブ48と、ストッパーピン49とを具えて成り、スリーブ48に挿通したストッパーピン49を岩盤(モルタル施工面M)に打ち込むことにより、ストッパー本体47を固定設置するものである。なおストッパー本体47は、苗木Pを客土Sに確実に定着させるべく、根の通りを抜けを許容する、通り抜け構造(例えば網体)を具えるものである。またストッパー本体47と植生袋45の間にもストッパー本体47とほぼ同じサイズにカットしたヤシマット50を介在させることが好ましい(図3参照)。
因みに、このような土留め用ストッパ42としては、本出願人による意匠登録第938005号並びに実用新案登録第2541425号の土留め用ストッパを適用することが望ましい。
【0039】
次に植生袋45について説明する。このものは、苗木P等とともに、これに適した混合土壌を収容するものである。これに因み、植生袋45は、通気性及び通水性を有することはもちろん、根が通過できるよう、樹脂繊維等の繊網体によって形成される。なお繊網体の素材としては、樹脂繊維の他、生分解性樹脂または麻、木綿等の植物繊維の使用も可能である。
以上のような部材によってモルタル施工面M上に緑化処理が施されるが、緑化処理を行うにあたっては、モルタル施工面Mの全面(例えば傾斜面の全て)に緑化処理を施す必要はなく、例えば路肩(側溝)に近い部位については、あえて緑化しない修景方法も採り得る。その場合、路肩に近い部分には苗木Pの植生は行わず、周囲の景観にマッチした色相の客土Sを吹き付けることが可能である(図1参照)。なお、路肩付近に植生を行わないのは、路肩付近に根付いた苗木Pが成長した際、道路の見通しを悪化させたり、歩行者の通路(歩道)を阻害することが考えられるためである。
〔実施例1に関する他の形態〕
【0040】
実施例1は以上述べた態様を基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。すなわち上述した基本の実施例1では、補強したモルタル施工面M上に緑化処理を施す場合、土留め用ストッパ42を固定するストッパーピン49は、スポットアンカー1を固定するアンカーピン20とは別のものを用いるように説明したが、例えば図3に示すように、アンカーピン20とストッパーピン49とは共通化させることが可能である。この場合、作業としては、土留め用ストッパ42の取り付けと、スポットアンカー1の打ち込みとを一挙に行うことになる。また、この場合、モルタル施工面M上にヤシマット40を設けると、スポットアンカー1を打ち込む部位が判断できなくなることが考えられるため、ヤシマット40を設けない緑化処理が望ましい。
このようにモルタル施工面M上に緑化処理を施す場合には、スポットアンカー1を固定するアンカーピン20として、他にもラス網41を止めるピンの流用(兼用)が可能だが、この種のピンは一般に径が細いため、ピンを共通化する場合には、土留め用ストッパ42を固定するストッパーピン49の流用が現実的と考えられる。
【0041】
また上述した基本の実施例1では、スポットアンカー1(アンカー本体10)の平面形状は、円状のものを主に示したが、例えば図4に示すように種々異ならせることが可能である。これにより例えば形状や大きさが種々異なる脆弱部Mwに応じて、異なった形状のアンカー本体10で押さえることができる。
なお、アンカー本体10に開口する挿通孔11は必ずしも本体の中央部に形成する必要はなく、特にアンカー本体10の平面形状を長円状や星形などにした場合には、その位置を適宜変更することが可能である(図4(a)(c)参照)。
【0042】
更にまた、スポットアンカー1によって補強した脆弱部Mwを、岩盤面Gに長期にわたって密着させるには、一旦、岩盤に打ち込んだアンカーピン20を抜け難くすることが好ましい。このためアンカーピン20には、例えば図5に示すように、掛止部21を形成しておき、掛止部21の逆爪作用によって、打ち込み後のピンの抜け止めを図ることが可能であり(いわゆる逆目ボルトや逆目釘)、これにより補強した脆弱部Mwの密着力が強化でき、この状態を持続させることができる。
【0043】
また、上述したようにアンカー本体10としては、大きさ(径)が異なるものを幾つか用意しておき、脆弱部Mwの面状態に応じて使い分けることが好ましい。しかしながら、脆弱部Mwが平らであることは極めて稀であるため、小さいアンカー本体10を用いても、脆弱部Mwとアンカー本体10との間隙を完全になくすことは困難と考えられる。そして、このような間隙は、アンカー本体10の微動(いわゆるガタ)につながり、脆弱部Mwの押さえを不安定にするため、間隙はできる限りなくし、ガタつきを防止することが好ましい。このようなことから、例えば図6(a)に示すように、アンカー本体10の周縁部に何カ所か調整ボルト12を設けておき、この調整ボルト12を適宜ねじ込んで、固定したスポットアンカー1のガタつきを防止することが可能である。
【0044】
もちろんスポットアンカー1のガタつきを防止するのは、このような調整ボルト12に限らず、例えば図6(b)に示すように、ピン状部材13を用いることも可能である。この場合、ピン状部材13を挿通する保持孔14は、打込方向に突出させ(いわゆるバーリング)、ピン状部材13を突出状の保持孔14に掛止させて、嵌め込み後のピン状部材13の戻りを防止することが可能である。
【0045】
また図6(c)に示す実施例は、アンカー本体10と脆弱部Mwとの間に介在させる場合の座体30を示すものであり、これによりアンカー本体10の載置安定性を高め、ガタつきを防止するものである。なお座体30は、合成ゴムや合成樹脂等、素材そのものに弾性を有するものが好ましく、これはアンカー本体10と脆弱部Mwとが適合しない形状でも、座体30の弾性変形によって双方間の間隙をほぼ解消することができるためである。因みに環境面での配慮を重視した場合、座体30は、生分解生樹脂等によって形成することが可能である。
【0046】
なお、図6(c)では、アンカー本体10の周縁部にスキが発生する図6(a)の状態を想定して、中央部がやや凹陥した座体30を示したが、例えば図7(a)に示すように、周縁部が脆弱部Mwに接し、中央付近にスキの発生が考えられる場合には、中央部が突出した座体30を介在させて、アンカー本体10を固定することが可能である。
また、このようにアンカー本体10の中央部が大きく空く場合には、例えば図7(b)に示すように、サイズの異なる二つのアンカー本体10を重ねる形態、すなわち前記座体30の代わりに小サイズのアンカー本体10を介在させ、大きいアンカー本体10のガタつきを抑えることも可能である。
【0047】
また上述した基本の実施例1では、基本的に断面がほぼ平らなアンカー本体10により脆弱部Mwを押圧するように説明したが、アンカー本体10の断面は必ずしも平らである必要はなく、例えば図8(a)に示すように、曲面状に形成することも可能である。この場合、アンカー本体10は、概ね椀形状に形成することができ、また椀形の最底部(通常ここに挿通孔11が形成される)も中央から偏心させた位置に適宜形成することが可能である。
なお、この場合、アンカー本体10の素材や厚み等を考慮し、アンカー本体10そのものが幾らか撓み得るように形成しておけば、アンカー本体10の椀状曲面が脆弱部Mw(岩盤面G)の曲面に合致していなくても、アンカー本体10自身の可撓性によって脆弱部Mwにフィットさせることができ、脆弱部Mwを岩盤面Gに密着させることが可能である。
また、このような椀形状のアンカー本体10は、図8(b)に示すように、脆弱部Mwの曲面の形成状態によっては、押圧面を反転させて用いることが可能であり、より少ないバリエーションで多くの脆弱部Mwにフィットさせることができる。
【0048】
また、先に述べた基本の実施例1では、アンカー本体10を主に単一部材で構成したが、アンカー本体10は必ずしも一部材で形成する必要がなく、例えば図9に示すように、複数の要素を組み合わせて構成することが可能である。ここで図示した要素が、ほぼ短冊状であることに因み、これらをストリップ要素10aとする。この実施例は、図9(a)に示すように、曲率や形状等が異なるストリップ要素10aを、予め複数パターン用意しておき、脆弱部Mwを押さえる際には、図9(b)に示すように、このうちの幾つかのストリップ要素10aを交差させてモルタル施工面Mに取り付けるものである。もちろん、交差させるストリップ要素10aは、同じものを複数組み合わせても構わないし、曲率や形状の異なるものを組み合わせても構わない。また、この場合、各ストリップ要素10aの交差角度(例えば図示したα1、α2)を適宜調節することにより、種々の押圧面(形状)が再現できるため、ストリップ要素10aとしては、それ程バリエーションを増やさなくても、種々の脆弱部Mwにフィットさせることができ、実用的と考えられる。
【実施例2】
【0049】
次に実施例2について説明する。実施例2は、上述したように崩落面G(実施例1の岩盤面Gに相当するため同一の符号Gを付す)の修景手法であり、上記実施例1と同様にスポットアンカー1を崩落面Gに打ち込んで法面の補修を行うものである。因みに、崩落面Gは、比較的急斜面であることが多く、逆に言えば、急傾斜であるために、一旦、法面が脆弱化した場合には、モルタル施工面M等が崩落し易いものと考えられる(図10(b)参照)。
なお、ここでの補修とは、モルタル施工面M等が既に崩落していて存在しないため、法面(表面)を補強するというよりは、むしろ法面がそれ以上崩落しないように整備することを意味する。もちろん、整備後の法面には、更に緑化処理を施すことが可能である。このように実施例2における「修景」とは、崩落面Gの整備の他、整備後の法面に緑化処理を施す場合を包含するものである。因みに、緑化処理は実質的に実施例1と同様であるため、ここでは省略し、主に崩落面Gの整備について説明する。
【0050】
崩落面Gは、例えばモルタル施工面Mが崩れ落ち、岩盤が表出(露出)した部位であるため、表面全体が脆弱化していると考えられ、崩落面G全体が脆弱部Mwと言える。このため、本実施例2では、一例として図10に示すように、まず崩落面Gに対して多数のスポットアンカー1を、ほぼ一定の間隔で満遍なく打ち込むとともに、近隣に位置し合う各スポットアンカー1を連結体25によって接続(固定)し、連結体25を崩落面G上にクモの巣状(ウェブ状)に張りめぐらせるものである。具体的には、スポットアンカー1を上下・左右方向に約1mずつ間隔をあけて打ち込み、また連結体25としては、この間隔に相当する約1m程度の長さの鉄筋を各スポットアンカー1に溶接して連結するものである。
このように崩落面Gの整備は、隣合うスポットアンカー1同士を、互いに連結するものであり、これによりスポットアンカー1による局部的(ピンポイント的)な押圧作用を、崩落面Gのほぼ全面に波及させ、崩落面Gを全体的な面として岩盤側に押圧するものである。
【0051】
なお、スポットアンカー1の連結にあたっては、アンカーピン20同士を連結体25によって接続してもよいし、アンカー本体10同士を連結体25によって接続しても構わない。因みに、修景面を正面から視た図10(a)では、アンカーピン20の頭部同士を連結体25によって連結した状態を示し、修景面を側面から視た図10(b)の断面図では、主にアンカー本体10同士を連結した状態を示している。
また連結体25とスポットアンカー1の固定(取り付け)にあたっては、必ずしも溶接に限定されるものではなく、ボルトとナットによるネジ止め等を採用しても構わない。また、連結体25の先端にピン状等の差込部26(図11参照)を形成しておき、これをスポットアンカー1(アンカー本体10)の孔27に差し込んで、スポットアンカー1同士を連結することも可能である。因みに図10(b)の拡大図では、アンカー本体10の周縁に四カ所、連結体25を取り付けるための孔27を形成している。
〔実施例2に関する他の形態〕
【0052】
実施例2は、以上述べた態様を基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。すなわち上述した基本の実施例2では、スポットアンカー1を等間隔に打ち込むように説明したが、崩落面Gは例えば既存のモルタル施工面Mが崩れ落ちた部位であるため、斜面の状態としては急勾配であり、しかも急激な凹凸部位を伴うことが考えられる(図10(b)参照)。従って、例えば正面から視て、等間隔にスポットアンカー1を打ち込んでも、その実際の間隔(距離)は、崩落面Gの凹凸によって幾らか異なることが考えられる。すなわち、上述した崩落面Gでは、正面から視た場合の距離と、側面から視た場合の距離とでは、大きな差を生じることが考えられる。このため、例えば図11に示すように、連結体25の途中にターンバックル28を設けておき、適宜これを回転させることにより、現場においても連結体25の長さを手軽に調整できるようにすることが可能である。
【0053】
また崩落面Gの表面の凹凸状態によっては、必ずしも真っ直ぐな連結体25(例えば鉄筋)では、スポットアンカー1をつなげない(接続できない)ことも考えられるため、連結体25は崩落面Gの凹凸状態に合わせて曲げたり、予め湾曲させたものを数種用意しておくことが好ましい。
更に上述した基本の実施例2では、崩落面Gに対して、多数のスポットアンカー1を格子点状に打ち込み、またこれを接続する連結体25を上下・左右方向に設けたが、例えば図12(a)に示すように、スポットアンカー1を、崩落面Gに対して互い違いの千鳥状に打ち込むことも可能であり、またこのような場合、連結体25はジグザグ状、言わばトラス構造状に配設することが可能である。
【0054】
また上述した基本の実施例2では、ほぼ一定長さの連結体25を一本ずつスポットアンカー1に固定(溶接)するように説明したが、例えば図12(b)に示すように、予め幾つかの連結体25を一体化させ、V字状やW字状等のものを用意しておけば(これをユニット状連結体25Uとする)、連結体25の固定作業がより能率的に行える。なお、この場合、一つ一つの連結体25の途中に、上述したターンバックル28等を設けておけば、ユニット状連結体25Uの適宜の部位で長さ調整が行え、崩落面Gの凹凸が色々異なっても対応でき、より一層、合理的に連結体25(ユニット状連結体25U)の取り付けが行える。
【0055】
因みに図12(a)のように、連結体25をトラス構造状に配設する場合には、V字状やW字状等のユニット状連結体25Uを形成することが可能であるが、連結体25を格子状に配設した上記図10の場合には、例えば三本の連結体25をコ字状に接続したユニット状連結体25Uを形成することが可能である。
また例えば図13に示すように、連結体25が種々の方向で取り付けられるように、スポットアンカー1における連結体25の接続部29を、予め種々の方向に形成しておくことも、現場での作業効率を高める点で、効果的と考えられる。
【0056】
なお、上述した実施例2の補修手法は、必ずしも既存のモルタル施工面Mが崩れ落ちた法面(崩落面G)に限定されるものではなく、例えば山裾に新たに道路等を建設するために、斜面の一部を新規に切り崩した場合においても採用できる手法である。すなわち、何らかの目的で切り開かれた山肌は、岩盤が直接外部に露出し、そのままでは表面が脆弱であることから崩落することもあるため、通常、表面が補強される。このため、このような新規に切り崩した法面の整備にも上記実施例2の手法が適用できるものである。
なお請求項1及び8に記載した「脆弱な法面」とは、脆弱化した既存のモルタル施工面Mや、このような施工面が崩れ落ちてしまった崩落面G、あるいは上述した新規に切り崩した法面等を総称するものである。
〔実施例2を実施例1に適用した他の形態〕
【0057】
以上述べたように、実施例2では崩落面G(表面)の密着力が弱く、全体的に脆弱化していると考えられ、これを考慮して、崩落面Gのほぼ全面に均一に多数のスポットアンカー1を打ち込み、且つこのスポットアンカー1を互いに連結するようにした。そして、このような補修により、各スポットアンカー1のピンポイント的な押圧作用を、法面に全体的に波及させることができ、崩落面Gを広い面として押圧でき、以降の崩落を効果的に防止することができる。なお、このような補修手法自体は、例えば図14に示すように、上記実施例1のモルタル施工面Mの修景手法にも適用することが可能である。具体的には、例えば既存のモルタル施工面Mを事前に調査した結果、クラックが多く脆弱部Mwとしては広すぎたり、脆弱部Mwの浮き上がり寸法が過大であったりして、スポットアンカー1によるピンポイント的な押さえでは、補強(脆弱部Mwを岩盤面Gに密着させること)が難しいと判断された場合に、このような補強手法が特に有効と考えられる。
【0058】
なお本発明は、脆弱化したモルタル施工面Mや、このような施工面が既に崩れてしまった崩落面等の修景に関する発明であり、特許請求の範囲で定義した技術思想を、出願の主題とする。しかしながら、このうち、上記実施例1で述べたモルタル施工面Mの修景手法は、脆弱部Mwを全体的に剥離するのではなく、逆に脆弱部Mwをそのまま活かしながら固着力を強化するという極めて斬新且つ新規な発想であり、これにより補修工事に掛かる工期や費用を格段に抑えることができる等、極めて顕著な効果をもたらす。従って、モルタル施工面Mの修景手法は、本出願とは別途、独立的に評価し得るものであり、本出願を原出願とした、新たな分割出願を考慮し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1の修景手法によって既存のモルタル施工面の補強が成された法面を部分的に破断して示す斜視図である。
【図2】土留め用ストッパを示す斜視図である。
【図3】土留め用ストッパを固定するストッパーピンによってスポットアンカーを固定するようにした実施例を示す側面断面図である。
【図4】平面形状を種々異ならせたアンカー本体を示す説明図である。
【図5】スポットアンカーを固定するアンカーピンに抜け止めを施した実施例を示す側面断面図である。
【図6】固定後のスポットアンカーのガタつきを抑えるようにした種々の実施例を示す説明図である。
【図7】アンカー本体の周縁部に対して、中央部が突出した座体を介在させ、スポットアンカーのガタつきを抑えるようにした実施例を示す側面断面図(a)、並びにサイズの異なる二つのアンカー本体を重ねてスポットアンカーのガタつきを抑えるようにした実施例を示す側面断面図(b)である。
【図8】アンカー本体の断面を曲面状にし、椀形状の外観を呈するようにした、スポットアンカーを示す説明図である。
【図9】複数のストリップ要素を交差させてアンカー本体を構成するようにした、スポットアンカーを示す説明図である。
【図10】実施例2の崩落面の修景手法を示す説明図であり、(a)は法面を正面から視た図であり、(b)は法面を側面から視た断面図である。
【図11】スポットアンカーを連結する連結体に、長さ調整用のターンバックルを介在させた状態を示す斜視図である。
【図12】スポットアンカーを崩落面に千鳥状に打ち込むとともに、連結体をトラス構造状に配設した実施例を示す正面図(a)、並びに、図(a)の実施例において、幾つかの連結体を予め一体化したユニット状連結体を示す斜視図(b)である。
【図13】予め連結体を種々の方向から取り付けられるようにしたスポットアンカーを示す斜視図である。
【図14】実施例2の補修手法を実施例1に適用した修景手法を示す正面図(a)、並びに側面断面図(b)である。
【符号の説明】
【0060】
1 スポットアンカー(地圧盤)
10 アンカー本体
10a ストリップ要素
11 挿通孔
12 調整ボルト
13 ピン状部材
14 保持孔
20 アンカーピン
21 掛止部
25 連結体
25U ユニット状連結体
26 差込部
27 孔
28 ターンバックル
29 接続部
30 座体
40 ヤシマット
41 ラス網
42 土留め用ストッパ
43 スペーサ
45 植生袋
47 ストッパー本体
48 スリーブ
49 ストッパーピン
50 ヤシマット
G 岩盤面(崩落面)
M モルタル施工面
Mw 脆弱部
Mf 固着部
P 苗木
S 客土
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆弱な法面を補修する方法であって、法面に複数のスポットアンカーを打ち込み、このスポットアンカーによって法面を岩盤側に押圧するようにしたことを特徴とする法面の修景方法。
【請求項2】
前記複数のスポットアンカーは、法面に打ち込まれた後、一部または全てが互いに連結され、これによりスポットアンカーの局所的な押圧作用を、連結範囲のほぼ全面に波及させ、法面を面状態で岩盤側に押圧するようにしたことを特徴とする請求項1記載の法面の修景方法。
【請求項3】
前記法面は、岩盤に吹き付けられた既存のモルタル施工面であり、またスポットアンカーは、主に岩盤面との密着力が低下した脆弱部に打ち込まれ、このスポットアンカーによって脆弱部を岩盤面に密着させるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の法面の修景方法。
【請求項4】
前記スポットアンカーによって補修した法面上には、更に緑化処理を施し、苗木の植生や客土の吹き付けを行うようにしたことを特徴とする請求項1、2または3記載の法面の修景方法。
【請求項5】
前記スポットアンカーは、法面を実質的に押圧するアンカー本体と、アンカー本体を法面上に固定するアンカーピンとを具え、アンカー本体に挿通したアンカーピンを岩盤に達するように打ち込み、スポットアンカーの固定を図るものであり、
この際、主に岩盤の地質によって、長さの異なるアンカーピンを選択して使用するようにしたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の法面の修景方法。
【請求項6】
前記補修後の法面に緑化処理を施すにあたっては、客土の流下や剥離を防止するための土留め用ストッパを用い、この土留め用ストッパによって苗木等を収容した植生袋を支持するものであり、
前記土留め用ストッパの設置にあたっては、前記スポットアンカーを固定するアンカーピンにより行い、土留め用ストッパの設置作業をスポットアンカーの固定作業と同時に行うようにしたことを特徴とする請求項4または5記載の法面の修景方法。
【請求項7】
前記モルタル施工面にスポットアンカーを打ち込むにあたっては、打ち込みに先立ち、モルタル施工面に下孔を開けておくようにしたことを特徴とする請求項3、4、5または6記載の法面の修景方法。
【請求項8】
脆弱な法面に複数打ち込まれ、法面を表面側から岩盤側に押圧して、法面を補修するようにしたことを特徴とする、法面の修景に用いるスポットアンカー。
【請求項9】
前記複数のスポットアンカーは、法面に打ち込まれた後、一部または全てが互いに連結され、これによりスポットアンカーの局所的な押圧作用を、連結範囲のほぼ全面に波及させ、法面を面状態で岩盤側に押圧するようにしたことを特徴とする請求項8記載の、法面の修景に用いるスポットアンカー。
【請求項10】
前記スポットアンカーは、法面を実質的に押圧するアンカー本体と、アンカー本体を法面上に固定するアンカーピンとを具え、アンカー本体に挿通したアンカーピンを岩盤に達するように打ち込み、スポットアンカーの固定を図るものであり、
前記アンカーピンは、岩盤内に打ち込まれる部位に掛止部が形成され、この掛止部の逆爪作用によって打ち込み後の抜け止めを図るようにしたことを特徴とする請求項8または9記載の、法面の修景に用いるスポットアンカー。
【請求項11】
前記スポットアンカーは、アンカー本体を法面上に固定した後、アンカー本体の微動を抑える構造を有していることを特徴とする請求項8、9または10記載の、法面の修景に用いるスポットアンカー。
【請求項1】
脆弱な法面を補修する方法であって、法面に複数のスポットアンカーを打ち込み、このスポットアンカーによって法面を岩盤側に押圧するようにしたことを特徴とする法面の修景方法。
【請求項2】
前記複数のスポットアンカーは、法面に打ち込まれた後、一部または全てが互いに連結され、これによりスポットアンカーの局所的な押圧作用を、連結範囲のほぼ全面に波及させ、法面を面状態で岩盤側に押圧するようにしたことを特徴とする請求項1記載の法面の修景方法。
【請求項3】
前記法面は、岩盤に吹き付けられた既存のモルタル施工面であり、またスポットアンカーは、主に岩盤面との密着力が低下した脆弱部に打ち込まれ、このスポットアンカーによって脆弱部を岩盤面に密着させるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の法面の修景方法。
【請求項4】
前記スポットアンカーによって補修した法面上には、更に緑化処理を施し、苗木の植生や客土の吹き付けを行うようにしたことを特徴とする請求項1、2または3記載の法面の修景方法。
【請求項5】
前記スポットアンカーは、法面を実質的に押圧するアンカー本体と、アンカー本体を法面上に固定するアンカーピンとを具え、アンカー本体に挿通したアンカーピンを岩盤に達するように打ち込み、スポットアンカーの固定を図るものであり、
この際、主に岩盤の地質によって、長さの異なるアンカーピンを選択して使用するようにしたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の法面の修景方法。
【請求項6】
前記補修後の法面に緑化処理を施すにあたっては、客土の流下や剥離を防止するための土留め用ストッパを用い、この土留め用ストッパによって苗木等を収容した植生袋を支持するものであり、
前記土留め用ストッパの設置にあたっては、前記スポットアンカーを固定するアンカーピンにより行い、土留め用ストッパの設置作業をスポットアンカーの固定作業と同時に行うようにしたことを特徴とする請求項4または5記載の法面の修景方法。
【請求項7】
前記モルタル施工面にスポットアンカーを打ち込むにあたっては、打ち込みに先立ち、モルタル施工面に下孔を開けておくようにしたことを特徴とする請求項3、4、5または6記載の法面の修景方法。
【請求項8】
脆弱な法面に複数打ち込まれ、法面を表面側から岩盤側に押圧して、法面を補修するようにしたことを特徴とする、法面の修景に用いるスポットアンカー。
【請求項9】
前記複数のスポットアンカーは、法面に打ち込まれた後、一部または全てが互いに連結され、これによりスポットアンカーの局所的な押圧作用を、連結範囲のほぼ全面に波及させ、法面を面状態で岩盤側に押圧するようにしたことを特徴とする請求項8記載の、法面の修景に用いるスポットアンカー。
【請求項10】
前記スポットアンカーは、法面を実質的に押圧するアンカー本体と、アンカー本体を法面上に固定するアンカーピンとを具え、アンカー本体に挿通したアンカーピンを岩盤に達するように打ち込み、スポットアンカーの固定を図るものであり、
前記アンカーピンは、岩盤内に打ち込まれる部位に掛止部が形成され、この掛止部の逆爪作用によって打ち込み後の抜け止めを図るようにしたことを特徴とする請求項8または9記載の、法面の修景に用いるスポットアンカー。
【請求項11】
前記スポットアンカーは、アンカー本体を法面上に固定した後、アンカー本体の微動を抑える構造を有していることを特徴とする請求項8、9または10記載の、法面の修景に用いるスポットアンカー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−233561(P2006−233561A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49157(P2005−49157)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390037268)富士見緑化株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390037268)富士見緑化株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]