説明

泡吐出器

【課題】ベースキャップ部の内側に水が浸入したとしても、エアピストン部材に設けられた外気取込み孔に至らせないようにして、空気室に水が侵入するのを回避できる泡吐出器を提供する。
【解決手段】空気室24及び液導入室28からなるシリンダ部17と、液導入室28の内周面に沿って摺動する筒状ピストン部材15及び空気室24の内周面に沿って摺動するエアピストン部材16からなるピストン部39と、ポンプヘッド部19と筒状ピストン部材15との間に介在するカバー体11とを有しており、エアピストン部材16の張出し部16bに、外気取込み孔12と、これの外側に配置された重ね合せ環状壁20が設けられている。カバー体11には、張出し板部11cの周縁部から下方に延設して、外気取込み孔12を開放した状態で重ね合せ環状壁20の少なくとも中間部まで外側に重ねて配置される、環状オーバーラップ壁11eが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡吐出器に関し、特に、容器本体の口首部に取り付けて用いられ、収容された内容液を空気と混合することにより泡状にして吐出する泡吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液状の洗浄剤や毛髪剤等を収容し、容器を置いたままの状態でポンプヘッド部を押圧操作することにより、手等による撹拌などを使用者がおこなわずとも内容液を泡状にして吐出させるポンプフォーマー容器等の泡吐出容器が種々開発されている。このような泡吐出容器では、容器本体の口首部に、内容液を空気と混合することにより泡状にして吐出する泡吐出器が装着されている。泡吐出器には、例えば容器本体の口首部に装着されるベースキャップ部に、内容液の吸引、加圧、排出を行うピストン(液ピストン)と、空気の吸引、加圧、排出を行うピストン(エアピストン)とをそれぞれ同心状の直列配置にして組み入れた単一のシリンダ部からなるポンプが設けられている。そして、ベースキャップ部の上方に突出するポンプヘッド部の押し込みによりポンプの各ピストンを作動させ、内容液と空気をそれぞれシリンダ部内で加圧、排出して合流空間で相互に混合し、メッシュリング等の泡生成部材を通過させることで泡状にして内容液を外部に吐出させる構造となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ポンプフォーマー容器等の泡吐出容器は、例えば浴室や洗面台等の水周りで使用される機会が多いため、水に濡れることが多い。特に浴室においては、シャワー等の水が容器に直接かかる場合がある。さらに、ポンプヘッド部は、濡れた手で押すことが多いため、ポンプヘッド部の周囲は水に濡れる機会が多い。そして、泡吐出器は、ポンプヘッド部を押圧して内容液を泡状に吐出した後にこれの押圧を解除した際に、ポンプヘッド部が上方に押し戻されるのに伴って、シリンダ部の内部が負圧になり、例えばポンプヘッド部の縦方向流路となる中空パイプとベースキャップ部のガイドステムとの間の隙間、及び空気を送り出すピストンに設けられた外気取込み孔を介して、ポンプヘッド部やベースキャップ部の周囲の水が、外気と共にベースキャップ部の内側のシリンダ部内の空気室に吸引されやすくなる。吸引された水が空気室に溜まると、雑菌を発生させたり、空気室内部が腐敗したりする要因になりやすい。特に、容器本体の内部に内容液が詰替え等により繰り返し収容されて、長期間に亘って使用される泡吐出容器においては、空気室に溜まった水が腐敗する確率が高くなる。
【0004】
このようなことから、ポンプヘッド部の中空パイプとベースキャップ部のガイドステムとの間の隙間から、水が侵入しないように工夫した泡吐容器が種々開発されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。特許文献2に記載のポンプフォーマーでは、ポンプヘッド部の中空パイプの外側に、ガイドステムの外周面に沿って摺動可能なスカート状カバーを設けて中空パイプとガイドステムとの間の隙間を覆うと共に、ポンプヘッド部の頭部をスカート状カバーの外側に大きく張り出させて、空気室への水の侵入を防止するようになっている。また、特許文献3に記載の泡噴出器では、ポンプヘッド部の中空パイプの外側に、ガイドステムの外周面に沿って摺動可能なスカート状カバーを設けて中空パイプとガイドステムとの間の隙間を覆うと共に、ガイドステムの最上端外面と、スカート状カバーの最下端内面のそれぞれに、ポンプヘッド部の初期姿勢において互いに近接して極僅かな微小隙間を形成する環状凸部を設けることにより、空気室への水の侵入を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−315463号公報
【特許文献2】特開2005−193972号公報
【特許文献3】特開2004−121898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の空気室への水の侵入を防止できるようにしたポンプフォーマー等の泡吐出器では、吸い込みによる水の侵入を完全には遮断することができず、特に容器を倒してしまったり、容器の周囲を洗浄したりする環境下におかれると、空気室への水の侵入を回避することは困難である。したがって、このような空気室への水の侵入を回避できるようにするための、新たな技術の開発が望まれている。
【0007】
一方、例えばポンプヘッド部の中空パイプとベースキャップ部のガイドステムとの間の隙間からベースキャップ部の内側に水が浸入したとしても、浸入した水を、空気を送り出すピストン(エアピストン)に設けられた外気取込み孔に至らせないように工夫することで、空気室への水の侵入を効果的に回避できるものと考えられる。
【0008】
本発明は、ポンプヘッド部の中空パイプとベースキャップ部のガイドステムとの間の隙間からベースキャップ部の内側に水が浸入したとしても、浸入した水を、エアピストンに設けられた外気取込み孔に至らせないようにして、空気室に水が侵入するのを効果的に回避することのできる泡吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、容器本体の口首部に装着したキャップ部に対して往復動可能に設けられたポンプヘッド部を有し、該ポンプヘッド部が押圧されることにより、加圧された液室から混合室に内容液を送る第1流路と、加圧された空気室から前記混合室に空気を送る第2流路とを開放し、前記混合室に送られた前記内容液を前記混合室から吐出口に至る発泡流路において前記空気と混合し発泡させて吐出する泡吐出器であって、前記容器本体の口首部の内側に配置された、大径の前記空気室及び小径の液導入室からなるシリンダ部と、前記液導入室の内周面に沿って摺動する筒状ピストン部材及び該筒状ピストン部材から径方向外側に張り出して設けられて前記空気室の内周面に沿って摺動するエアピストン部材からなるピストン部と、前記ポンプヘッド部と前記筒状ピストン部材との間に介在してこれらと一体として上下動すると共に、前記エアピストン部材の上方に配置されたカバー体とを備えており、前記エアピストン部材は、前記筒状ピストン部材の外周面に遊嵌する円筒部を介して前記筒状ピストン部材に装着されていると共に、前記円筒部から外側に張り出す張出し部に、外気取込み孔と、該外気取込み孔に外側に配置された重ね合せ環状壁が設けられており、前記カバー体は、前記筒状ピストン部材の上端部分が嵌合装着された有天円筒形状の装着接合部と、該装着接合部の下端部分から径方向外側に張り出して、円環形状に設けられた張出し板部とを含んでおり、且つ、前記張出し板部の周縁部から下方に延設して、前記外気取込み孔を介した前記空気室への外気の流路を開放した状態で前記重ね合せ環状壁の少なくとも中間部まで外側に重ねて配置される、環状オーバーラップ壁が設けられている泡吐出器を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の泡吐出器によれば、ポンプヘッド部の中空パイプとベースキャップ部のガイドステムとの間の隙間からベースキャップ部の内側に水が浸入したとしても、浸入した水を、エアピストンに設けられた外気取込み孔に至らせないようにして、空気室に水が侵入するのを効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る泡吐出器の、(a)はポンプヘッド部を押圧する前の状態の断面図、(b)はポンプヘッド部の押圧を開始した直後の状態の断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る泡吐出器の、(a)はポンプヘッド部を最後まで押圧した状態の断面図、(b)はポンプヘッド部の押圧を開放した直後の状態の断面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る泡吐出器の、(a)はポンプヘッド部を押圧して筒状ピストン部材及びエアピストン部材が下降している状態の拡大断面図、(b)はポンプヘッド部の押圧を開放して筒状ピストン部材及びエアピストン部材が上昇している状態の拡大断面図である。
【図4】図3(b)のA部拡大断面図である。
【図5】エアピストン部材の重ね合せ環状壁の外側に、カバー体の環状オーバーラップ壁を重ねて配置した他の形態を例示する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1(a)、(b)及び図2(a)、(b)に示す本発明の好ましい一実施形態に係る泡吐出器10は、いわゆるポンプフォーマー容器に取り付けて用いるポンプフォーマーであって、従来のポンプフォーマーと同様に、容器本体(図示せず。)の口首部に装着されて、内容液を空気と混合することにより泡状にして吐出する機能を備える。すなわち、泡吐出器10は、容器本体の口首部に装着されるベースキャップ部14に取り付けられた、内容液の吸引、加圧、排出を行う液ピストンとしての筒状ピストン部材15と、空気の吸引、加圧、排出を行うエアピストンとしてのエアピストン部材16とをそれぞれ同心状の直列配置にして組み入れた単一のシリンダ部17を含むポンプ18を有している。そしてベースキャップ部14の上方に突出するポンプヘッド部19の押し込みによりポンプ18の各ピストン部材15,16を作動させ、内容液と空気をそれぞれシリンダ部17内で加圧、排出して、これらをポンプ出側に合流空間として設けた混合室13で混合し、泡状にして吐出口26から外部に吐出させる。
【0013】
また、本実施形態の泡吐出器10は、ポンプヘッド部19の押し込みを解除してシリンダ部17の空気室24の内部が負圧になった際に(図3(b)参照)、ポンプヘッド部19の中空パイプ22とベースキャップ部14のガイドステム23との間の隙間からベースキャップ部14の内側に水が浸入したとしても、浸入した水を、エアピストン部材16に設けられた外気取込み孔12に至らせないようにして、空気室24に水が侵入するのを効果的に回避できるようにする機能を備えている。
【0014】
そして、本実施形態の泡吐出器10は、図1(a)、(b)、図2(a)、(b)、及び図3(a)、(b)に示すように、容器本体(図示せず。)の口首部に装着したベースキャップ部14に対して往復動可能に設けられたポンプヘッド部19を有し、ポンプヘッド部19が押圧されることにより、加圧減容された液室30から混合室13に内容液を送る第1流路32と、加圧減容された空気室24から混合室13に空気を送る第2流路33とを開放し、混合室13に送られた内容液を混合室13から吐出口26に至る発泡流路21において空気と混合し発泡させて吐出するポンプフォーマーである。本実施形態の泡吐出器10は、容器本体の口首部の内側に配置された、大径の空気室24及び小径の液導入室28からなるシリンダ部17と、液導入室28の内周面に沿って摺動する筒状ピストン部材15及び筒状ピストン部材15から径方向外側に張り出して設けられて空気室24の内周面に沿って摺動するエアピストン部材16からなるピストン部39と、ポンプヘッド部19と筒状ピストン部材16との間に介在してこれらと一体として上下動すると共に、エアピストン部材16の上方に配置されたカバー体11とを備えている。
【0015】
ここで、筒状ピストン部材15は、本実施形態では、上部円筒部15b、下部円筒部15c及び密着摺動部15aから構成されている(図1(a)、図2(a)参照)。下部円筒部15cは、その上部外周面で上部円筒部15bの下部内周面と嵌合で一体化されている。また、密着摺動部15aは下部円筒部15cの下端から径方向外側に張り出して一体化して設けられていて、液導入室28の内周面に沿って上部円筒部15b及び下部円筒部15cと一体として上下に摺動する。
【0016】
エアピストン部材16は、筒状ピストン部材15の外周面に0.1〜0.2mm程度の隙間を持って相対変位可能に遊嵌する円筒部16aを介して筒状ピストン部材15に装着されていると共に、円筒部16aから外側に張り出す張出し部16bに、外気取込み孔12と、外気取込み孔12の外側に配置された重ね合せ環状壁20が設けられている。また、カバー体11は、筒状ピストン部材15の上部円筒部15bの上端部分が嵌合装着された有天円筒形状の装着接合部11bと、装着接合部11bの下端部分から径方向外側に張り出して、円環形状に設けられた張出し板部11cとからなる山高帽形状部分を含んでおり、且つ、張出し板部11cの周縁部から下方に延設して、外気取込み孔12を介した空気室24への外気の流路を開放した状態で重ね合せ環状壁20の少なくとも中間部まで外側に重ねて配置される、環状オーバーラップ壁11eが設けられている。
【0017】
また、本実施形態では、カバー体11の装着接合部11bの天面部には、泡生成部11aが一体として設けられており、張出し板部11cは、下面部をエアピストン部材16の張出し部16bに形成された外気取込み孔12の外側(径方向外側)の密着面20aに接触離間可能に気密に密着させることで、外気取込み孔12を介した空気室24への外気の流路を開閉可能に遮断する、開閉弁として機能するようになっている。すなわち、カバー体11は、泡生成機能及び空気弁機能を備えている。
【0018】
本実施形態では、ベースキャップ部14は、円筒状のガイドステム23を天井部14aから立設させて、容器本体の口首部に装着されている。ポンプヘッド部19は、このベースキャップ部14のガイドステム23に相対変位可能に挿入される中空パイプ22を有しており、また上部先端部分には、泡状にした内容液を吐出する吐出口26を備えている。ポンプヘッド部19は、中空パイプ22の下端部に嵌め込まれて一体として連結されたカバー体11、及びカバー体11に上端部分が一体として装着された筒状ピストン部材15を介して、シリンダ部17の液導入室28に設けられたスプリング部材29の作用によって、上方に付勢されるようになっている。
【0019】
本実施形態では、スプリング部材29の付勢力に抗してポンプヘッド部19を下方に押圧することにより、ポンプ18の筒状ピストン部材15及びエアピストン部材16が、カバー体11と共に押し下げられ、筒状ピストン部材15の内部に形成された液室30の内容液の液圧によってボール弁31aが上方に移動して、第1流路32が開放される(図3(a)参照)。これによって、液室30から、内容液が中空パイプ22内の発泡流路21に向けて加圧、排出される。また筒状ピストン部材15とエアピストン部材16との前述の遊嵌部分、及び筒状ピストン部材15とカバー体11との接合部分に沿って軸方向に延設して、例えばこれらの内周面や外周面に設けられた線状切欠き溝等による第2流路33が、空気流路として形成されている。後述する閉塞部36を開放することにより第2流路33を流通可能として、空気室24の空気が中空パイプ22内の発泡流路21に向けて加圧、排出される。発泡流路21に向けて排出された内容液と空気は、合流空間としての混合室13において混合されることにより混合液を形成し、混合室13の下流側に設けられたカバー体11の天面部の泡生成部11aを通過して発泡した後に、ポンプヘッド部19の吐出口26から泡状に吐出される。
【0020】
ここで、ポンプヘッド部19の押圧を解除すれば、スプリング部材29の付勢力によってポンプヘッド部19が上方に押し上げられ、筒状ピストン部材15及びエアピストン部材16も、カバー体11と共に押し上げられて、ボール弁31aが自重によって下方に移動することにより第1流路32が閉塞する(図3(b)参照)。また、ボール弁31aの閉塞によって筒状ピストン部材15の内部の液室30が負圧になるので、ポペット弁30bが上方に移動することにより導入流路30cが開放されて、容器本体内の内容液が吸引管27及び液導入室28に吸引供給される(図2(b)参照)。さらに、エアピストン部材16の上昇により、空気室24が負圧になって吸引力を生じることになり、この吸引力によって、カバー体11で閉塞された状態から開放された外気取込み孔12を介して、中空パイプ22とガイドステム23との間の隙間を通過した外気が、空気室24に取り込まれる(図3(b)参照)。さらにまた、ポンプヘッド部19の上昇、及びこれに伴う筒状ピストン部材15とカバー体11のエアピストン部材16に対する相対的な上昇により、後述するように閉塞部36が閉塞されて、第2流路33を介した空気の流通が遮断される。
【0021】
なお、本実施形態では、泡吐出器10には、ポンプヘッド部19の中空パイプ22の外側に、これと同心状に配置されたスカート状カバー25が、中空パイプ22とガイドステム23との間の隙間を覆うように設けられている。スカート状カバー25が設けられていることにより、中空パイプ22とガイドステム23との間の隙間を介して外気が吸引される際に、外気の吸引に伴ってこれらの隙間から、外気と共にポンプヘッド部19やベースキャップ部14の周囲の水が空気室24に流入するのを、相当程度防止することが可能になる。
【0022】
本実施形態では、筒状ピストン部材15とエアピストン部材16との装着部分に、空気流路である第2流路33を開閉する閉塞部36が設けられている。すなわち、本実施形態では、筒状ピストン部材15は、ポンプヘッド部19の中空パイプ22に嵌め込まれて一体として連結されたカバー体11の装着接合部11bに上端部分が一体として嵌合装着されて、中空パイプ22と一体となって上下動するようになっている。一方、エアピストン部材16は、図3(a)、(b)に示すように、筒状ピストン部材15の外周面に0.1〜0.2mm程度の隙間を有した状態で相対的変位可能に遊嵌する円筒部16aと、円筒部16aの上端部から外側に張り出して円環状に設けられた張出し部16bと、張出し部16bの外周先端部分に設けられ、空気室24の内周面に密着状態で摺動可能に接する外周ピストン部16cとからなる。
【0023】
また、筒状ピストン部材15の外周面には、エアピストン部材16の円筒部16aが装着された部分の下方に配置されて、閉塞用凹状リブ37が、外側に張り出すように突出して当該外周面に沿って円環状に設けられている(図3(a)、(b)参照)。この閉塞用凹状リブ37に、エアピストン部材16の円筒部16aの下端部38を挿入して当接させることにより、空気流路である第2流路33を、その下端部において閉塞することが可能になる。すなわち、閉塞用凹状リブ37とエアピストン部材16の円筒部16aの下端部38とによって、閉塞部36が構成される。
【0024】
本実施形態では、図1(a)に示すポンプヘッド部19の押圧前の状態から、ポンプヘッド部19を押圧して下方に押し下げれば、エアピストン部材16の円筒部16aと筒状ピストン部材15とが遊嵌状態で装着されていて、外周ピストン部16cの空気室24の内周面への密着力の方が大きくなっていることから、まず図1(b)に示すように、中空パイプ22及びカバー体11と共に、筒状ピストン部材15が、カバー体11の張出し板部11cの下面部がエアピストン部材16の外気取込み孔12の外側の密着面20aに当接して密着するまで、エアピストン部材16に対して相対的に下方にスライド移動する。これに伴って、エアピストン部材16の円筒部16aの下端部38の、筒状ピストン部材15の閉塞用凹状リブ37への密着状態が解除されるので、閉塞部36が開放されて、第2流路33に空気を流通させることが可能な状態となる(図3(a)参照)。
【0025】
ポンプヘッド部19をさらに下方に押し下げれば、中空パイプ22及びカバー体11と共に、筒状ピストン部材15及びエアピストン部材16が一体として下方に押し下げられることになる。これによって、筒状ピストン部材15の内部に形成された液室30から、内容液が第1流路32を介して中空パイプ22内の発泡流路21に向けて加圧、排出されると共に、空気室24の空気が第2流路33を介して中空パイプ22内の発泡流路21に向けて排出される。また混合室13において加圧混合された内容液と空気との混合液がカバー体11の天面部の泡生成部11aを通過して発泡した後に、ポンプヘッド部19の吐出口26から泡状に吐出される。
【0026】
図2(a)に示すように、エアピストン部材16の外周ピストン部16cが空気室24の底部近傍まで至る、1ストロークの最後までポンプヘッド部19を押圧したら、ポンプヘッド部19の押圧を解除する。ポンプヘッド部19の押圧を解除すると、まず図2(b)に示すように、エアピストン部材16の円筒部16aと筒状ピストン部材15とが遊嵌状態で装着されているので、外周ピストン部16cの空気室24の内周面への密着力の方が大きくなっていることから、スプリング部材29の付勢力によって、中空パイプ22及びカバー体11と共に、筒状ピストン部材15がエアピストン部材16に対して相対的に上方にスライド移動する。これに伴って、筒状ピストン部材15の閉塞用凹状リブ37は、エアピストン部材16に対して上方に移動するので、円筒部16aの下端部38を閉塞用凹状リブ37へ密着当接させることにより、閉塞部36を閉塞して、第2流路33を介した空気の流通を遮断する(図3(b)参照)。また、カバー体11の張出し板部11cの下面部による、エアピストン部材16の外気取込み孔12の外側の密着面20aへの密着状態が開放されるので、外気取込み孔12を介して空気室24の内部に外気を取り込むことが可能になる。
【0027】
そして、本実施形態では、ポンプヘッド部19と筒状ピストン部材15との間に介在して設けられるカバー体11は、図3(a)、(b)に示すように、好ましくは合成樹脂製の成形品であって、泡生成部11aが天面部に設けられた有天円筒形状の装着接合部11bと、装着接合部11bの下端部分から径方向外側に張り出して円環形状に設けられた張出し板部11cとからなる山高帽形状部分を含んで形成されている。
【0028】
本実施形態では、カバー体11の装着接合部11bの天面部に設けられた泡生成部11aは、カバー体11と一体成形されて天面部に設けられた成形メッシュとなっている。泡生成部11aをカバー体11と一体成形された成形メッシュとすることで、部品点数を少なくして、泡吐出器10の構造をさらに効率良く簡素化することが可能になると共に、組立工程をより一層簡素化することが可能になる。
【0029】
本実施形態では、カバー体11の装着接合部11bの天面部における泡生成部11aの周囲を囲う部分から下方に突出して、環状誘導壁11dが設けられている。環状誘導壁11dが設けられていることにより、第2流路33を介して混合室13に流入する空気を、環状誘導壁11dを回り込ませるようにして下方に誘導した後に、混合室13において、内容液と空気とを対向させることにより、さらに効果的に混合させて、泡生成部11aによって発泡する泡状の内容液の品質を向上させることが可能になる。
【0030】
本実施形態では、カバー体11の張出し板部11cの周縁部から下方に延設して、外気取込み孔12を介した空気室24への外気の流路を開放した状態で、後述するエアピストン部材16の外気取込み孔12の外側に設けられた重ね合せ環状壁20の少なくとも中間部まで外側(径方向外側)に重ねて配置される、環状オーバーラップ壁11eが、周方向に連続して設けられている。カバー体11に、エアピストン部材16の重ね合せ環状壁20の外側に重ねて配置される環状オーバーラップ壁11eが、重ね合せ環状壁20と所定の間隔をおいて設けられていることで、空気室24の外気が吸引されるのに伴って、ポンプヘッド部19やベースキャップ部14の周囲の水が空気室24に流入するのを、さらに効果的に回避することが可能になる。環状オーバーラップ壁11eと重ね合せ環状壁20との間隔は、水が空気室24に流入するのを防止する観点から広い方が好ましい(狭くし過ぎると負圧になりやすくなって、却って水を吸引しやすくなると考えられる)。実用的には1〜2mm程度以上の間隔を保つことが好ましい。
【0031】
本実施形態では、環状オーバーラップ壁11eの内側にこれと同心状に配置されて、張出し板部11cの装着接合部11bと近接する部位から下方に突出する環状内側当接壁11fが、周方向に連続して設けられている。この環状内側当接壁11fには、後述するエアピストン部材16の円筒部16a又は円筒部16aの近傍部分から上方に突出するベンディング弁16dが、内側(径方向内側)から密着状態で当接できるようになっている(図4参照)。
【0032】
また、本実施形態では、エアピストン部材16は、上述のように、筒状ピストン部材15の外周面に相対変位可能に遊嵌する円筒部16aと、円筒部16aの上端部から外側に張り出して設けられた張出し部16bと、張出し部16bの外周先端部分に設けられた外周ピストン部16cとからなり、張出し部16bは、さらに、円筒部16aとの接合基端部である環状平板部16eと、環状平板部16eの外周縁部に垂直に立設して接合された重ね合せ環状壁20と、重ね合せ環状壁20の下端部から径方向外側に向って下方に傾斜して接合された下り勾配面部16fとを含んで構成されている。下り勾配面部16fの外周縁部に外周ピストン部16cが延設されている。
【0033】
本実施形態では、環状平板部16eの重ね合せ環状壁20と近接する部位に、当該環状平板部16eを上下に貫通して、外気取込み孔12が、周方向に間隔をおいて複数箇所(例えば、周方向90度ごとに1個の外気取込み孔を合計4箇所)に開口形成されている。また環状平板部16eと円筒部16aとの境目部分から上方に突出して、ベンディング弁16dが、円環状に連続して設けられている。ベンディング弁16dは、カバー体11の弁板部11cから下方に突出して当該ベンディング弁16dと同心状に配置される環状内側当接壁11fに、当該ベンディング弁16dの内側の圧力が外側の圧力よりも高くなった際に、内側から密着状態で当接できるようになっている。本実施形態では、ベンディング弁16dは、エアピストン部材16と一体成形することによって設けられていて、環状内側当接壁11fに密着状態で当接できるように、その厚みが適宜設定されている。
【0034】
これによって、図4に示すように、ポンプヘッド部19の押圧を開放することで空気室24が負圧になった際に、外気取込み孔12を介して外気が空気室24に吸引される吸引力によって、ベンディング弁16dが外側に押し付けられるように変形することで、環状内側当接壁11fに内側から強固に密着して、外気が空気室24に吸引される際の吸引力によって混合室13に残った混合液が、外気取込み孔12を介して空気室24に逆流するのを、効果的に回避することが可能になる。
【0035】
また、ポンプヘッド部19を押圧することで空気室24から空気を第2流路33を介して混合室13に送り出す際には、第2流路33を通過する空気の圧力によって、ベンディング弁16dが外側に押し付けられるように変形することで、環状内側当接壁11fに内側から強固に密着して、送り出される空気が外気取込み孔12側に漏れ出るのを効果的に回避することが可能になる。
【0036】
本実施形態では、環状平板部16eの外周縁部に接合された重ね合せ環状壁20は、環状平板部16eを挟んだ上方部分から下方部分まで連続して、相当の高さを備えるように立設して設けられている。重ね合せ環状壁20が相当の高さを備えるように立設して設けられていることで、カバー体11の張出し板部11cの周縁部から下方に延設して設けられた環状オーバーラップ壁11eとの間に、外気が吸引されるのに伴ってポンプヘッド部19やベースキャップ部14の周囲の水が空気室24に流入するの効果的に防止するのに十分な長さの重ねしろを、容易に保持することが可能になる。重ね合せ環状壁20の上端面は、外気取込み孔12を介した空気室24への外気の流路を遮断する際に、開閉弁として機能するカバー体11の張出し板部11cの下面部を気密に密着させる、密着面20aを形成している。本実施形態では、重ね合せ環状壁20の上端面による密着面20aには、当該上端面の前周に亘って連続して、環状密着リブ20bが突出して設けられている。この環状密着リブ20bを介することで、張出し板部11cの下面部を、密着面20aにより安定した状態で気密に密着させることが可能になる。
【0037】
さらに、本実施形態では、図1(a)、(b)、図2(a)、(b)、及び図3(a)、(b)に示すように、空気室24の周面に、容器本体の内部と連通する換気口31が設けられている。換気口31は、ポンプヘッド部19が押圧される前の状態では、空気室24の内周面に沿って摺動するエアピストン部材16の外周ピストン部16cによって内側から覆われた状態となっている。空気室24の周面に換気口31が設けられていることにより、ポンプヘッド部19の押圧を開放して、内容液を容器本体から筒状ピストン部材15の内部の液室30に吸引する際に、換気口31を介して外気を容器本体に送り込むことで、容器本体の内部の内容液が減少して容器本体が収縮変形するのを、効果的に回避することが可能になる。ポンプヘッド部19が押圧される前の状態で換気口31がエアピストン部材16の外周ピストン部16cによって覆われて閉塞されていることにより、例えばポンプフォーマー容器の非使用時に容器が転倒等した際に、内容液が換気口31を介して容器本体から空気室24に流入するのを、効果的に回避することが可能になる。
【0038】
また、本実施形態では、中空パイプ22とガイドステム23との間の隙間等を介してシリンダ部17の内部に侵入して、エアピストン部材16の上方に滞留している水を、ポンプヘッド部19を押圧したり押圧を解除する操作の中で、換気口31を介して容器本体に排出することもできる。本実施形態では、エアピストン部材16の張出し部16bは、径方向外側に向って下方に傾斜している下り勾配面部16fを含んで構成されているので、水をエアピストン部材16の外周部分に滞留させて、これらをよりスムーズに容器本体に排出させることが可能になる。
【0039】
そして、上述の構成を備える本実施形態の泡吐出器10によれば、ポンプヘッド部19の中空パイプ22とベースキャップ部14のガイドステム23との間の隙間からベースキャップ部14の内側に水が浸入したとしても、浸入した水を、エアピストン部材16に設けられた外気取込み孔12に至らせないようにして、空気室24に水が侵入するのを効果的に回避することが可能になる。
【0040】
すなわち、本実施形態によれば、カバー体11の張出し板部11cの周縁部から下方に延設して、張出し板部11cの下面部を密着面20aから離間させて外気取込み孔12を介した空気室24への外気の流路を開放した状態で、エアピストン部材16の外気取込み孔12の外側に設けられた重ね合せ環状壁20の少なくとも中間部まで外側に重ねて配置される、環状オーバーラップ壁11eが設けられている。重ね合せ環状壁20の少なくとも中間部まで外側に重ねて配置される環状オーバーラップ壁11eが設けられていることで、空気室24が負圧になって、中空パイプ22とガイドステム23との間の隙間を介してベースキャップ部14の内側に外気と共に水が浸入したとしても、外気取込み孔12を経て空気室24に吸引される外気の、ベースキャップ部14の内側において外気取込み孔12に至るまでの流路を長くすることが可能になるので、これによって、空気室24の外気が吸引されるのに伴って、ベースキャップ部14の内側に侵入したポンプヘッド部19やベースキャップ部14の周囲の水が、さらに空気室24に流入するのを効果的に回避することが可能になる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、泡生成部は、カバー体の天面部に一体成形されて設けられた成形メッシュである必要は必ずしも無く、カバー体に一体として、又は別部材として取り付けられたその他の種々の泡生成部材であっても良い。また、カバー体の環状オーバーラップ壁が重ね合わされるエアピストン部材の重ね合せ環状壁は、エアピストン部材の環状平板部から上方に立設して設けられる必要は必ずしも無く、例えば図5に示すように、環状平板部16eの下方にのみ立設するものであって良い。この場合には、カバー体11の張出し板部11cは、環状平板部16eにおける外気取込み孔12よりも外側部分を密着面20aとして、当該密着面20aにその下面部を密着させることができる。カバー体は、外気取込み孔12を介した外気の流路を開閉する空気弁としての機能を兼ね備えている必要は必ずしも無く、外気取込み孔12は、カバー体とは別部材として取り付けられた空気バルブによって開閉されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0042】
10 泡吐出器
11 カバー体
11a 泡生成部
11b 装着接合部
11c 張出し板部
11e 環状オーバーラップ壁
12 外気取込み孔
13 混合室
14 ベースキャップ部
15 筒状ピストン部材
15a 密着摺動部
15b 上部円筒部
15c 下部円筒部
16 エアピストン部材
16a 円筒部
16b 張出し部
16c 外周ピストン部
16d ベンディング弁
17 シリンダ部
18 ポンプ
19 ポンプヘッド部
20 重ね合せ環状壁
20a 密着面
21 発泡流路
22 中空パイプ
23 ガイドステム
24 空気室
26 吐出口
28 液導入室
30 液室
32 第1流路
33 第2流路
36 閉塞部
39 ピストン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口首部に装着したキャップ部に対して往復動可能に設けられたポンプヘッド部を有し、該ポンプヘッド部が押圧されることにより、加圧された液室から混合室に内容液を送る第1流路と、加圧された空気室から前記混合室に空気を送る第2流路とを開放し、前記混合室に送られた前記内容液を前記混合室から吐出口に至る発泡流路において前記空気と混合し発泡させて吐出する泡吐出器であって、
前記容器本体の口首部の内側に配置された、大径の前記空気室及び小径の液導入室からなるシリンダ部と、前記液導入室の内周面に沿って摺動する筒状ピストン部材及び該筒状ピストン部材から径方向外側に張り出して設けられて前記空気室の内周面に沿って摺動するエアピストン部材からなるピストン部と、前記ポンプヘッド部と前記筒状ピストン部材との間に介在してこれらと一体として上下動すると共に、前記エアピストン部材の上方に配置されたカバー体とを備えており、
前記エアピストン部材は、前記筒状ピストン部材の外周面に遊嵌する円筒部を介して前記筒状ピストン部材に装着されていると共に、前記円筒部から外側に張り出す張出し部に、外気取込み孔と、該外気取込み孔に外側に配置された重ね合せ環状壁が設けられており、
前記カバー体は、前記筒状ピストン部材の上端部分が嵌合装着された有天円筒形状の装着接合部と、該装着接合部の下端部分から径方向外側に張り出して、円環形状に設けられた張出し板部とを含んでおり、
且つ、前記張出し板部の周縁部から下方に延設して、前記外気取込み孔を介した前記空気室への外気の流路を開放した状態で前記重ね合せ環状壁の少なくとも中間部まで外側に重ねて配置される、環状オーバーラップ壁が設けられている泡吐出器。
【請求項2】
前記カバー体の前記装着接合部の天面部には、泡生成部が一体として設けられており、前記張出し板部は、下面部を前記エアピストン部材の張出し部に形成された前記外気取込み孔の外側の密着面に着脱可能に気密に密着させることで、前記外気取込み孔を介した前記空気室への外気の流路を開閉可能に遮断する、開閉弁として機能するようになっている請求項1記載の泡吐出器。
【請求項3】
前記重ね合せ環状壁が、前記外気取込み孔よりも上方に立設して設けられており、これの上端面が、前記張出し板部の下面部を気密に密着させる密着面となっている請求項1又は2に記載の泡吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35570(P2013−35570A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173320(P2011−173320)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】